説明

液体噴射装置

【課題】液体噴射ヘッドからの液体の飛翔精度が低下することを抑制しつつ、液体噴射ヘッドが加熱されることを抑制することができる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】シートSを支持する支持面を有する支持板27と、支持面に支持されたシートSに対して支持面に対向する位置からインクを噴射する記録ヘッド33と、支持板27を取り付けられる開口部42が記録ヘッドと対向する壁部に貫通形成されるとともに、外部から空気を取り込む吸気口48,49が支持面と直交する方向において支持面よりも記録ヘッド33から離れた位置に形成された筐体28と、筐体28の内側から空気を排気する吸引ファン30とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットに対して液体を噴射する液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体噴射装置の一種として、液体噴射ヘッドから液体を用紙等の記録媒体に噴射して画像を形成するインクジェット式のプリンターが知られている。こうしたプリンターのうちには、画像形成のために媒体に付着させたインク(液体)を加熱して定着させる定着手段を備えたプリンターがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のプリンターは、インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)による記録媒体に対する描画動作が行われる描画部を囲う描画部ケースを備えており、この描画部ケースの外側に定着手段が設けられている。そのため、定着手段で発生した熱によって描画部ケースの内部に収容されたインクジェットヘッドが加熱されることが抑制される。
【0004】
また、描画部ケースには、記録媒体の搬入口となる開口と排出口となる開口とが形成されると共に、これらの開口とは別の外気導入口を介して外部の空気を描画部ケースの内部へ導入する外気導入手段が接続されている。そのため、外気導入手段により外気導入口から描画部ケースの内部に空気が導入されると、描画部ケースの内部から外部に向かう気流が生成され、この外部に向かう気流によって、各開口を介して描画部ケース内から昇温した空気が外部に排気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−175645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のプリンターでは、外気導入手段により外部から描画部ケースの内部に導入された空気は、描画部ケース内に気流を発生させるため、記録時にインクジェットヘッドと記録媒体とが対向する空間域にも気流を生じさせる。そして、この気流は、インクジェットヘッドから記録媒体に向けて噴射されたインク(液体)の飛翔精度に影響を及ぼし得る。そのため、インクジェットヘッドが加熱されることは抑制できるものの、そのインクジェットヘッドが記録媒体に形成する画像の品質を低下させてしまう虞があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体噴射ヘッドからの液体の飛翔精度が低下することを抑制しつつ、液体噴射ヘッドが加熱されることを抑制することができる液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、ターゲットを支持する支持面を有する支持部と、前記支持面に支持された前記ターゲットに対して前記支持面に対向する位置から液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記支持部を前記液体噴射ヘッドと対向する壁部に備えるとともに、外部から気体を取り込む吸気口が前記支持面と直交する方向において前記支持面よりも前記液体噴射ヘッドから離れた位置に形成された筐体と、前記筐体の内側から気体を排気する排気手段とを備えた。
【0009】
上記構成によれば、排気手段は、支持部からの放熱によって加熱された筐体内の気体を排気することにより、支持部からの放熱を促進して支持部を冷却する。すると、冷却された支持部が支持面と液体噴射ヘッドとの間に介在する気体を介して液体噴射ヘッドを間接的に冷却するため、液体噴射ヘッドが加熱されることが抑制される。なお、排気手段の排気動作に伴って、吸気口を通じて筐体内に気体が吸入される場合、吸気口は、支持部の支持面よりも液体噴射ヘッドから離れた位置に形成されているため、吸気口を通じて筐体内に吸入される気体が液体噴射ヘッドと支持部の支持面との間に気流を生じさせることが抑制される。そのため、排気手段の排気動作に伴って、支持部の支持面上に支持されたターゲットに対する液体噴射ヘッドからの液体の飛翔精度が低下することが抑制される。したがって、液体噴射ヘッドからの液体の飛翔精度が低下することを抑制しつつ、液体噴射ヘッドが加熱されることを抑制することができる。
【0010】
また、本発明の液体噴射装置は、前記支持部よりも前記ターゲットの搬送方向の下流側に設けられ、前記ターゲットを加熱する加熱手段を更に備え、前記筐体は、前記排気手段によって前記気体が排気される排気口を有し、前記排気口は、前記吸気口の搬送方向の下流側に配置されている。
【0011】
上記構成によれば、排気手段によって気体を排気する排気口をターゲットの搬送方向において吸気口から見て搬送方向の下流側に設けたので、吸気口からは、搬送方向において加熱手段とは反対側となる搬送方向上流側の比較的低温の気体が筐体内に吸入される。そのため、筐体および筐体内に備えられた支持部を効率よく冷却することができる。
【0012】
また、本発明の液体噴射装置において、前記支持部よりも前記ターゲットの搬送方向の上流側には、前記吸気口として上流側吸気口が設けられている。
上記構成によれば、ターゲットの搬送方向において支持部から見て加熱手段とは反対側に設けられた上流側吸気口を通じ、比較的低温の気体が筐体内に吸入される。そのため、筐体および筐体内に備えられた支持部をより効率よく冷却することができる。
【0013】
また、本発明の液体噴射装置において、前記支持部は、前記上流側吸気口と前記排気口とを結ぶ直線上に配置される。
上記構成によれば、排気手段の排気動作に伴って、上流側吸気口を通じて筐体内に吸入される気体の流路上に支持部が配置される。そのため、上流側吸気口から筐体内に吸入される比較的低温の気体が支持部に吹きつけられるので、筐体内に備えられた支持部をより効率よく冷却することができる。
【0014】
また、本発明の液体噴射装置は、前記支持部の前記支持面に開口する吸引孔内を前記支持面とは反対側から吸引することにより、前記支持面上に位置する前記ターゲットを吸着する吸着手段を更に備えた。
【0015】
上記構成によれば、ターゲットが支持部材の支持面上に位置しない場合には、吸着手段の吸引動作に伴って、液体噴射ヘッドと支持部の支持面との間に滞留する気体が吸着手段によって吸引されるため、液体噴射ヘッドが加熱されることがより確実に抑制される。また、ターゲットが支持部の支持面上に位置する場合には、吸引孔における支持面上の開口はターゲットによって閉塞される。そのため、液体噴射ヘッドからターゲットへの液体の噴射時には、吸引孔を通じて筐体内に気体が吸引されることはほとんどなく、液体噴射ヘッドと支持部の支持面との間に気流を生じさせることが抑制される。したがって、液体噴射ヘッドからの液体の飛翔精度が低下することを抑制しつつ、液体噴射ヘッドが加熱されることをより確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る実施形態のプリンターの概略断面図。
【図2】同実施形態の印刷部の側面図。
【図3】同実施形態の印刷部の平面図。
【図4】印刷部における吸気口を通じた空気の流れを示す側面図。
【図5】印刷部における吸気口を通じた空気の流れを示す平面図。
【図6】支持板の吸引孔が閉塞される前の印刷部を示す側面図。
【図7】支持板の吸引孔が閉塞された後の印刷部を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を液体噴射装置の一種であるインクジェット式のプリンターに具体化した一実施形態を図1〜図7に従って説明する。
図1に示すように、液体噴射装置としてのプリンター11において筐体状をなす装置本体12は、その上面12aが水平方向に沿った略矩形の平面状をなすように形成されている。また、装置本体12の後方側には、ロール体収容部14が回動軸15を介して回動自在に取り付けられている。ロール体収容部14は、下方に向かって開口する箱体状に形成された上側ケース部16aと、上方に向かって開口する箱体状に形成された下側ケース部16bとを備えている。そして、両ケース部16a,16bが互いに当接することにより、ロール体収容部14の内部には長尺状のターゲットとしてのシートSをロール状に巻き重ねたロール体Rを収容する収容空間が形成されている。また、下側ケース部16bの後端には、取手部17が後方に向かって延びるように設けられている。
【0018】
装置本体12の内部には、搬送部20と、印刷部21と、排紙部22とが設けられている。搬送部20には、シートSの搬送経路に沿って複数の搬送ローラー23〜26が設けられている。これらの搬送ローラー23〜26は、ロール体収容部14内のロール体Rから巻き解かれて繰り出されるシートSを印刷部21に向けて搬送する。
【0019】
印刷部21には、ロール体Rから巻き解かれて搬送されるシートSを支持可能な支持面(図1では上面)を有する支持板27が設けられている。支持板27は、金属材料からなる筐体28の上壁部に取り付けられ、その支持面が上壁部の表面の一部を構成している。筐体28には、排気チューブ29を介して排気手段としての吸引ファン30が接続されている。また、支持板27の支持面に対して上下方向で対向する位置には、キャリッジ31が設けられている。キャリッジ31は、支持板27の上方をシートSの搬送方向と交差する幅方向(図1では左右方向)に延びるガイド軸32に移動自在に支持されている。そして、キャリッジ31は、図示しない駆動手段によってガイド軸32の軸線方向に沿って往復移動可能に構成されている。また、キャリッジ31の下面には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド33が支持されると共に、この記録ヘッド33の下面には、インクを噴射するための複数のノズル(図示略)が形成されている。そして、記録ヘッド33は、支持板27との間を通って搬送されるシートSに対してインクを噴射することにより、シートSに対して印刷処理を施す。
【0020】
また、印刷部21には、シートSの搬送経路上における支持板27よりも下流側であって搬送ローラー対34,35の間となる位置に、印刷処理が施されたシートSに温風を吹きつけて乾燥処理を施す加熱手段としてのヒーターユニット36が設けられている。
【0021】
また、印刷部21には、シートSの搬送経路上におけるヒーターユニット36よりも下流側となる位置に、シートSを搬送方向と交差する幅方向(左右方向)に切断可能なカッター37が設けられている。そして、シートSは、カッター37により連続紙の状態から単票紙の状態に切断される。
【0022】
排紙部22には、印刷部21においてカッター37によって単票紙となるように切断されたシートSに対して搬送方向の下流側に向かう搬送力を付与する搬送ローラー対38a,38bと、当該搬送ローラー対38a,38bによって搬送力が付与されたシートSを反転させる反転部39とを備えている。反転部39は、断面略円弧状をなす2枚の案内板40によって構成されると共に、両案内板40は前後方向に間隔を隔てて平行に配置されている。そして、両案内板40の間には、湾曲した反転経路が形成されている。そして、搬送ローラー対38aは、反転部39に形成された反転経路の上流端の近傍位置に配置される一方で、搬送ローラー対38bは、反転部39に形成された反転経路の下流端の近傍位置に配置されている。なお、反転部39は、その上端部分が装置本体12の上面12aよりも上方に位置している。
【0023】
そして、記録ヘッド33により印刷処理が施されたシートSは、下流側に搬送されるとともに反転部39の反転経路を通過することによって表裏両面が反転される。また、反転されたシートSは、装置本体12の前側であって且つ上面12aよりも上方に位置する排出口41からロール体収容部14側となる装置本体12の後側に向かって排出される。なお、排出口41から排出されたシートSは、インクが付着した印刷面を下方に向けた状態で装置本体12の上面12aに対して載置される。
【0024】
次に、支持板27及び筐体28の構成について説明する。
図2及び図3に示すように、支持板27は、筐体28の上壁部において記録ヘッド33の移動領域と対向する領域部位を上下方向に貫通する開口部42に対して取り付けられている。筐体28の開口部42は、支持板27の平面視形状と略同一形状をなしている。そのため、開口部42の内側縁と支持板27の外側縁とはほぼ隙間なく密着している。また、支持板27の支持面は、筐体28の上壁部の上面(表面)と面一となっており、支持板27の支持面は筐体28の表面の一部を構成している。
【0025】
支持板27の支持面には、支持板27を厚さ方向となる上下方向に貫通する多数の吸引孔43が形成されている。また、支持板27の下面側には、有底略四角筒状をなす流路形成部材44がその開口端を支持板27の下面に当接させた状態で配置されている。流路形成部材44は、筐体28の内側に収容される大きさに形成されている。そして、本実施形態では、支持板27及び流路形成部材44によって、シートSを支持する支持部が構成されている。なお、流路形成部材44の平面視形状と支持板27の平面視形状とは略同一形状をなしている、そして、流路形成部材44の開口端が支持板27の下面の外縁部に対して当接することにより、支持板27の下面と流路形成部材44との間には閉塞された空間域45が形成されている。
【0026】
また、流路形成部材44の下面中央部には、空間域45の内外を連通する開口部46が形成されると共に、この開口部46を塞ぐように吸引ファン47が設けられている。この吸引ファン47も、流路形成部材44と共に筐体28の内側に収容される大きさに形成されている。そして、吸引ファン47の駆動に伴って、開口部46を介して流路形成部材44の空間域45内が吸引されて吸引孔43内に負圧が発生すると、この負圧の発生によって支持板27の支持面上にシートSが吸着される。すなわち、吸引ファン47は、支持板27の支持面に開口する吸引孔43内を支持面とは反対側から吸引することにより、支持面上に位置するシートSを吸着する吸着手段として機能する。
【0027】
なお、筐体28の後壁部は、筐体28の左右両側の側壁部、及び、筐体28の前壁部よりも高さが低くなっている。そのため、筐体28の後壁部の上端部と筐体28の上壁部との間には、筐体28の左右方向の全域に亘って延びる上流側吸気口としての吸気口48が形成されており、筐体28の内外は吸気口48を通じて連通している。
【0028】
また、筐体28の左右両側の側壁部には、シートSの搬送経路における支持板27よりも下流側であって且つ支持板27の支持面よりも下方となる位置に、筐体28の内外を連通する矩形状の吸気口49が形成されている。すなわち、吸気口49は、シートSの搬送方向における支持板27とヒーターユニット36との間に位置している。本実施形態では、吸気口49は、筐体28の左右両側の側壁部における上方寄りの位置に2つずつ形成されている。そして、各々の側壁部の吸気口49は、シートSの搬送方向となる前後方向に間隔を隔てて互いに同一の高さに位置している。
【0029】
また、筐体28の前壁部における左端寄りの位置には、筐体28の内外を連通する排気口50が形成されている。この排気口50は、筐体28の底面の近傍に位置している。そして、筐体28の内部に収容された流路形成部材44は、筐体28の排気口50と吸気口48とを結ぶ直線上に位置している。また、排気チューブ29の一端側は、排気口50を筐体28の外側から塞ぐように筐体28に対して接続されている。すなわち、排気チューブ29の内部に形成される排気流路は、排気口50を介して筐体28の内部に連通している。また、排気チューブ29の他端側には吸引ファン30が接続されており、吸引ファン30は、シートSの搬送方向におけるヒーターユニット36よりも下流側に位置している。そして、吸引ファン30が駆動すると、排気チューブ29を通じて筐体28の内部から気体が吸引され、吸引ファン30が吸引した空気は装置本体12の外部に排気される。
【0030】
次に、上記のように構成されたプリンター11の作用について、特に、吸引ファン30が吸気口48,49を通じて筐体28の内部に空気を取り込む際の作用に着目して以下説明する。
【0031】
さて、図4及び図5に示すように、吸引ファン30が作動すると、吸引ファン30が排気チューブ29を通じて筐体28の内部から空気を排気する。すると、筐体28における下流側の吸気口48,49を通じて筐体28の内部に空気が取り込まれる。そして、筐体28の内部には、図4及び図5において点線で示すように、吸気口48,49から排気口50に向かう気流が生成される。
【0032】
ここで、本実施形態では、支持板27及びヒーターユニット36は、シートSの搬送方向に隣り合うように配置されている。そのため、ヒーターユニット36が配置される支持板27より搬送方向下流側の領域の空気は加熱されている。ヒーターユニット36によって加熱された空気がシートSの搬送方向の上流側に流動して支持板27の配設位置の近傍まで到達する。
【0033】
この場合、本実施形態では、吸気口48は、支持板27を挟んでヒーターユニット36とは反対側の空間域に臨んでいる。そして、吸気口48を通じて筐体28の内部に取り込まれる空気は、吸気口49を通じて筐体28の内部に取り込まれる空気よりも比較的低温となっている。その結果、流路形成部材44は、比較的低温の空気が吹きつけられることにより効率よく冷却され、支持板27から流路形成部材44への熱の伝播が促進される。そのため、記録ヘッド33は、記録ヘッド33と支持板27との間の空間域を通じた支持板27への放熱が促進される。したがって、記録ヘッド33が支持板27によって間接的に冷却されることにより、記録ヘッド33が加熱されることが抑制される。
【0034】
また、吸気口49は、シートSの搬送方向において排気口50の上流側に設けられている。そのため、吸気口49からは、搬送方向において吸気口49よりも上流側の空気を取り込み易く、筐体28の内部に取り込まれる空気は、吸気口49よりも下流側のヒーターユニット36によって加熱された空気よりも低温となっている。その結果、筐体28および流路形成部材44は、筐体28の内部に取り込まれた比較的低温の空気により効率よく冷却され、支持板27から流路形成部材44への熱の伝播が促進される。そのため、記録ヘッド33は、記録ヘッド33と支持板27との間の空間域を通じた支持板27への放熱が促進される。したがって、記録ヘッド33が支持板27によって間接的に冷却されることにより、記録ヘッド33が加熱されることが抑制される。
【0035】
また、吸気口48および吸気口49は、支持板27の支持面よりも下方に形成されている。そのため、吸気口48および吸気口49を通じて筐体28の内部に取り込まれる空気は、記録ヘッド33のノズル形成面と支持板27の支持面との間の空間域に気流を生じさせることがほとんどない。したがって、吸引ファン30の作動に伴って、記録ヘッド33から支持板27の支持面上に支持されたシートSに向けて噴射されるインクの飛翔精度に影響を及ぼすことが抑制される。
【0036】
また、本実施形態では、図4に示すように、側面視において吸気口48と排気口50とを結ぶ直線上に流路形成部材44が配置されている。また、図5に示すように、吸気口48は、平面視において流路形成部材44を挟んで排気口50とは対角に配置された部分を含む筐体28の左右方向の全域に亘って開口している。そのため、筐体28の内部では、吸気口48から排気口50に向かう気流が流路形成部材44に対して吹きつけられることにより、流路形成部材44からの放熱が促進される。また、流路形成部材44からの放熱によって加熱された空気は、流路形成部材44の側面に沿うように流動した後に排気口50を通じて筐体28の内部から排気される。
【0037】
ところで、図6に示すように、交換直後のロール体Rから繰り出されたシートSの先端(下流端)が支持板27の支持面上に到達していない状態では、流路形成部材44内の空間域45は、記録ヘッド33と支持板27との間の空間域に対して吸引孔43を通じて連通している。そのため、吸引ファン47は、記録ヘッド33と支持板27との間の空間域から吸引孔43を通じて流路形成部材44内の空間域45に空気を引き込む。その結果、ヒーターユニット36から支持板27に向けて流動する比較的高温の空気の一部が記録ヘッド33と支持板27との間の空間域まで到達したとしても、かかる空気が記録ヘッド33と支持板27との間の空間域に滞留することが抑制される。したがって、ヒーターユニット36から支持板27に向けて流動する空気によって記録ヘッド33が加熱されることが抑制される。
【0038】
また、図7に示すように、ロール体Rから繰り出されたシートSの先端が支持板27の支持面上に到達すると、支持板27の支持面上における吸引孔43の開口がシートSによって閉塞される。そのため、吸引ファン47が作動したとしても、記録ヘッド33と支持板27との間の空間域から流路形成部材44内の空間域45に空気が引き込まれることはほとんどない。したがって、吸引ファン47の作動に伴って、記録ヘッド33から支持板27の支持面上に支持されたシートSに向けて噴射されるインクの飛翔精度に影響を及ぼすことはほとんどない。
【0039】
上記実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)吸引ファン30は、支持板27からの放熱によって加熱された筐体28内の空気を排気することにより、支持板27からの放熱を促進して支持板27を冷却する。すると、冷却された支持板27が支持面と記録ヘッド33との間に介在する空気を介して記録ヘッド33を間接的に冷却するため、記録ヘッド33が加熱されることが抑制される。なお、吸引ファン30の排気動作に伴って、筐体28の吸気口48,49を通じて筐体28内に空気が吸入される。この場合、吸気口48,49は、支持板27の支持面よりも記録ヘッド33から離れた位置に形成されているため、吸気口48,49を通じて筐体28内に吸入される空気が記録ヘッド33と支持板27の支持面との間に気流を生じさせることが抑制される。そのため、吸引ファン30の排気動作に伴って、支持板27の支持面上に支持されたシートSに対する記録ヘッド33からのインクの飛翔精度が低下することが抑制される。したがって、記録ヘッド33からのインクの飛翔精度が低下することを抑制しつつ、記録ヘッド33が加熱されることを抑制することができる。
【0040】
(2)シートSの搬送方向において排気口50より上流側に配置された吸気口49を通じ、吸気口49より上流側の下流側より比較的低温の気体を筐体28内に吸入する。そのため、筐体28および筐体28内に収容された支持板27を効率よく冷却することができる。
【0041】
(3)シートSの搬送方向において支持板27から見てヒーターユニット36とは反対側に設けられた吸気口48を通じ、比較的低温の気体を筐体28内に吸入する。そのため、筐体28および筐体28内に収容された支持板27をより効率よく冷却することができる。
【0042】
(4)吸引ファン30の排気動作に伴って、吸気口48を通じて筐体28内に吸入される空気の流路上に流路形成部材44が配置される。そのため、吸気口48から筐体28内に吸入される比較的低温の気体が流路形成部材44に吹きつけられるため、筐体28内に収容された支持板27をより効率よく冷却することができる。
【0043】
(5)シートSが支持板27の支持面上に位置しない場合には、吸引ファン47の吸引動作に伴って、記録ヘッド33と支持板27の支持面との間に滞留する気体が吸引ファン47によって吸引されるため、記録ヘッド33が加熱されることがより確実に抑制される。また、シートSが支持板27の支持面上に位置する場合には、吸引孔43における支持面上の開口はシートSによって閉塞される。そのため、記録ヘッド33からシートSへのインクの噴射時には、吸引孔43を通じて筐体28内に空気が吸引されることはほとんどなく、記録ヘッド33と支持板27の支持面との間に気流を生じさせることが抑制される。したがって、記録ヘッド33からのインクの飛翔精度が低下することを抑制しつつ、記録ヘッド33が加熱されることをより確実に抑制することができる。
【0044】
なお、上記実施形態は、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、シートSを支持板27の支持面に吸着させる吸引ファン47を省略すると共に、支持板27の支持面に開口する吸引孔43を省略した構成としてもよい。
【0045】
・上記実施形態において、筐体28の後壁部を筐体28の左右両側の側壁部、及び、筐体28の前壁部と同じ高さに形成し、筐体28の後壁部に吸気口48を貫通形成してもよい。この場合、吸気口48は、筐体28の後壁部における任意の位置に形成してもよい。また、吸気口48は、筐体28の左右両側の側壁部に形成してもよいし、筐体28の前壁部に形成してもよい。ただし、吸気口48と排気口50とを結ぶ直線上に流路形成部材44が位置することが望ましい。
【0046】
・上記実施形態において、吸気口49は、筐体28の両側壁部のシートSの搬送方向における支持板27の上流側や並ぶ位置に形成してもよい。
・上記実施形態において、吸気口49は、筐体28の前壁部に形成してもよい。
【0047】
・上記実施形態において、筐体28は、支持板27よりもシートSの搬送方向の上流側に位置する吸気口48、及び、支持板27よりもシートSの搬送方向の下流側に位置する吸気口49のうち何れか一方を省略した構成としてもよい。
【0048】
・上記実施形態において、ヒーターユニット36は、必ずしも、シートSの搬送方向において支持板27に隣り合う位置に設ける必要はない。また、ヒーターユニット36を省略した構成としてもよい。これらの構成においては、ヒーターユニット36から支持板27に向けて比較的高温の空気が流動することはないものの、キャリッジ31の発熱等の要因によって記録ヘッド33が加熱されることがあり得る。このような場合であっても、吸引ファン30が筐体28の内部から空気を吸引して流路形成部材44からの放熱を促進することにより、支持板27から流路形成部材44への放熱が促進される。その結果、支持板27が記録ヘッド33を間接的に冷却することにより、記録ヘッド33が加熱されることを抑制できる。
【0049】
・上記実施形態において、支持板27は、必ずしも筐体28の表面の一部を構成する必要はなく、例えば、支持板27の支持面が筐体28の上壁部の上面よりも上方に突出した構成としてもよい。
【0050】
・上記実施形態において、加熱手段は、シートSに温風を送風する構成に限らず、シートSに対して熱を輻射して加熱する構成を採用してもよい。また、乾燥処理を目的とする構成に限らず、シートSの温度を制御することを目的とするものであってもよい。
【0051】
・上記実施形態において、液体噴射ヘッドとして、シートSの幅方向の全域に亘って延びるフルラインタイプのラインヘッドを採用してもよい。
・上記実施形態において、ターゲットは、ロール状に巻かれた長尺状のターゲットに限定されず、単票状のターゲットを採用してもよい。
【0052】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式のプリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
11…液体噴射装置としてのプリンター、27…支持部を構成する支持板、28…筐体、30…排気手段としての吸引ファン、33…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、36…加熱手段としてのヒーターユニット、43…吸引孔、44…支持部を構成する流路形成部材、47…吸着手段としての吸引ファン、48…吸気口(上流側吸気口)、49…吸気口、50…排気口、S…ターゲットとしてのシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットを支持する支持面を有する支持部と、
前記支持面に支持された前記ターゲットに対して前記支持面に対向する位置から液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記支持部を前記液体噴射ヘッドと対向する壁部に備えるとともに、外部から気体を取り込む吸気口が前記支持面と直交する方向において前記支持面よりも前記液体噴射ヘッドから離れた位置に形成された筐体と、
前記筐体の内側から気体を排気する排気手段と
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
前記支持部よりも前記ターゲットの搬送方向の下流側に設けられ、前記ターゲットを加熱する加熱手段を更に備え、
前記筐体は、前記排気手段によって前記気体が排気される排気口を有し、
前記排気口は、前記吸気口の搬送方向の下流側に配置されることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射装置において、
前記支持部よりも前記ターゲットの搬送方向の上流側には、前記吸気口として上流側吸気口が設けられていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体噴射装置において、
前記支持部は、前記上流側吸気口と前記排気口とを結ぶ直線上に配置されることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の液体噴射装置において、
前記支持部の前記支持面に開口する吸引孔内を前記支持面とは反対側から吸引することにより、前記支持面上に位置する前記ターゲットを吸着する吸着手段を更に備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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