説明

液体回収フロート装置

【課題】装置全体の小型化と消費電力の抑制ならびに回収効率のアップを図った液体回収フロート装置の提供を図る。
【解決手段】液体回収装置の回収ポンプに接続される液体回収フロート装置であって、該液体回収フロート装置を構成する摺動パイプ部と、流入堰調整部と、フロート部と、掻き寄せ回転装置と、を垂直軸上に配置すると共に、フロート部の回収液収納凹部と排水パイプの吸入口を、流入堰調整部の流入堰に対して下方に分離して設けた手段を採る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面に浮遊する浮上油やスラムを回収する液体回収装置に接続される液体回収フロート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の食品製造工場や工業製品製造工場で使用される洗浄液や加工液の液槽内に浮遊する浮上油やスラムなどを回収する手段としては、排出パイプの吸入口を上方に向けてフロート装置に連結し、液面から一定の浸水位置を維持することによって液面に浮遊する浮上油やスラムを液体回収装置で回収する手段が知られている。
【0003】
例えば、「油の回収分離装置における回収部と回収ポンプとの連携構造」(特許文献1)が提案されている。しかしながら該提案は、液面に浮遊する浮上油やスラム等を回収する排出パイプの向きが上向きになっている構造を採用していることから、下記の問題点が指摘されるものである。
(1)排出パイプの径に対して上向きの吸入口が小径なことから、液面に浮遊する浮上油やスラム等を連続して大量に回収することができない。
(2)液面が波立っている場合、排出パイプの吸入口に浮上油やスラム等以外の使用液が流れ込んでしまう。
(3)排出パイプならびにフロート浮体が装置本体より側面に突出しているため、取り付け位置が限定されると共に、一定の設置スペースを必要とすることから、小型の液槽に設置することができない。
(4)掻き寄せ回収羽根が排出パイプの吸入口中心位置の液面上で回転しているため、中心からの渦流が発生して浮遊する浮上油やスラムを拡散する力と、浮上油やスラムが吸入口付近に押し寄せてくる力と、が一部相殺されるため、回収効率が悪い。(一定量以上の浮上油やスラムが発生する場合は、押し寄せてくる力の方が勝るため問題はない)
(5)液体回収装置の回収ポンプが、浮上油やスラムの発生度合いに関係なく常時稼動しているため、多くの消費電力を消費する。
(6)ジャイロタイプの液体回収装置の場合、排出パイプが装置本体の水面下ならびに周辺に位置するため、排出パイプの配管工事を含む取り廻しを必要とし、回収稼動時の排出パイプの剛性の影響を受けて装置本体のフロートバランスが悪い。
【0004】
一方、海面に流出した浮遊油を自然現象を利用して回収する「浮遊油の回収タンク」(特許文献1)が提案されている。しかしながら該提案は、流入した浮遊油の重量によりジャバラ部が伸び、その重量と押し退けた海水量に相当する浮力とがほぼ均等にされて油流入入口の位置が浮遊油層に臨むように保持されるものではあるが、タンク本体の設置位置の管理の問題、回収状態の目視管理の問題、回収作業の手作業の問題、油流入堰付近のゴミやスラムによる詰りの問題など、製造工場で使用される液体回収装置に応用するには問題があるものだった。
【0005】
本出願人は、以上のような従来の液体回収装置の現状を鑑み、摺動パイプ部と、流入堰調整部と、フロート部と、掻き寄せ回転装置と、を垂直軸上に配置すると共に、フロート部の回収液収納凹部と排水パイプの吸入口を、流入堰調整部の流入堰に対して下方に分離して設けたことによって、液体回収装置の小型化と消費電力の抑制ならびに回収効率のアップが図れることに着目し、本発明における「液体回収フロート装置」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-5758号公報
【特許文献2】特開平7-26538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、装置全体の小型化と消費電力の抑制ならびに回収効率のアップを図った液体回収フロート装置の提供を図る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体回収フロート装置は、液体回収装置の回収ポンプに接続される液体回収フロート装置であって、前記液体回収フロート装置は、摺動パイプ部と、流入堰調整部と、フロート部と、掻き寄せ回転装置と、で構成され、前記摺動パイプ部と、前記流入堰調整部と、前記フロート部と、前記掻き寄せ回転装置と、を垂直軸上に配置すると共に、前記フロート部の回収液収納凹部と前記排水パイプの吸入口を、前記流入堰調整部の流入堰に対して下方に分離して設けた手段を採る。
【0009】
また本発明の液体回収フロート装置は、前記液体回収フロート装置における前記摺動パイプ部は、液面の変化量に追従して上下摺動可能に形成され、前記回収ポンプと前記流入堰調整部に連結されて成り、前記流入堰調整部は、前記フロート部の開口を塞ぐ蓋体部と、前記フロート部の回収液収納凹部に回収された浮上油やスラムを回収する排出パイプ部と、で構成されて成り、前記蓋体部は、上面には、任意箇所に前記回収液収納凹部に回収された浮上油やスラムの回収液面を監視するフロートセンサーを設け、中央部には、前記排出パイプ部が貫通する貫通穴を設け、周縁部には、下方に延設する外周壁面を設け、該外周壁面には、液面の変化量の高さ寸法を有して等間隔に周設する複数の流入堰を設け、該内側には、流入堰調整機構を設けて前記フロート部の流入堰調整機構と連結して成り、前記排出パイプ部は、先端部の吸引口には、取り付け位置が調整可能な吸引管を取り付けて、前記摺動パイプ部と、前記蓋体部と、を連結して成り、前記フロート部は、上方が開口する筒状体の回収室を形成し、内側底部には、中央部がテーパ状に縮形する擂鉢状の斜面部と、さらに下方には、底部がホール状に凹む回収液収納凹部を形成し、下方部には、浮体構造を有するフロート体を形成し、外側周縁上部には、前記蓋体部の流入堰調整機構に連結する流入堰調整機構を設け、外側下端部には、前記流入堰調整機構と調整手段を共有する液面調整用錘を付設して成り、前記掻き寄せ回転装置は、前記摺動パイプ部の上端部に、前記蓋体部の外周壁面に周設される複数の流入堰の外側を周回する掻き寄せ羽根を有する伝達機構を設け、該伝達機構を介して駆動装置を上部基台に設けて成る手段を採る。
【0010】
また本発明の液体回収フロート装置は、前記摺動パイプ部を、伸縮自在のフレキブルパイプとした手段を採る。
【0011】
また本発明の液体回収フロート装置は、前記液体回収フロート装置が、三点支持のフロート体によって支持される手段を採る。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液体回収フロート装置によれば、摺動パイプ部と、流入堰調整部と、フロート部と、掻き寄せ回転装置と、を垂直軸上に配置することによって、回収液の流動路が最短となるため、液体回収フロート装置の回収効率のアップと、小型化が図れる優れた効果を奏する。
【0013】
また本発明の液体回収フロート装置によれば、摺動パイプ部と、流入堰調整部と、フロート部と、掻き寄せ回転装置と、を垂直軸上に設けて上方に吸い上げる省スペース構造から、液体回収フロート装置自体を設置するユーザーのレイアウトなどによる液槽の取り付け手段が自由に選択できると共に、液槽の液面管理や、タンク液交換ならびに清掃作業が容易にできる優れた効果を奏する。
【0014】
また本発明の液体回収フロート装置によれば、摺動パイプ部と、流入堰調整部と、フロート部と、掻き寄せ回転装置と、を垂直軸上に配置することによって小型化が図れることから、最小面積で設置できる上、取り付けならびに設置位置を自由に設定できるもので、従来の排出パイプが装置本体の側面に設けられている液体回収装置では対応できなかった特殊形状の小型精密タンクから大型球体貯留タンクに至るまで様々な形状の液槽タンクに取り付けることができる優れた効果を奏する。
【0015】
また本発明の液体回収フロート装置によれば、浮上油やスラムが回収される流入堰と吸入口を分離する構造によって、蓋体部の外周壁面に周設される複数の流入堰の外側を周回する掻き寄せ回転装置が設けられ、前述の流入堰付近に浮遊する浮上油やスラムがフロート内に強制的に取り込まれることで、流入堰付近の障害物が取り除かれる状態になることから、比較的比重の軽い浮上油が流入堰から流入しやすい液面環境を形成することによって、比較的軽い比重の油成分の回収効果を高めることができるものである。またフロート内に流入した浮上油やスラムが、フロート内の回収室に形成される斜面部に沿って回収液収納凹部に降下し、回収されることで回収効率のアップが図られる優れた効果を奏する。
【0016】
また本発明の液体回収フロート装置によれば、回収液収納凹部に流入した浮上油やスラムの回収量がフロートセンサーで管理されることによって、液体回収装置の回収ポンプの稼動制御が無駄なく作動し、浮上油やスラムの回収効率のアップならびに消費電力の抑制が図られる優れた効果を奏する。
【0017】
また本発明の液体回収フロート装置によれば、流入堰調整部の蓋体部に流入堰を複数且つ大口に形成して設けることができることから、浮上油やスラムを連続して大量に回収することができる優れた効果を奏する。
【0018】
また本発明の液体回収フロート装置によれば、回収処理が全て自動制御されるため回収状態の目視管理、回収作業の手作業などの人件費を削減することができる優れた効果を奏する。
【0019】
また本発明の液体回収フロート装置によれば、液体回収フロート装置が三点支持のフロート体によって支持されることによって、装置全体を安定的に支持する構造と、排出パイプの吸入口の上方部が蓋体部で覆われて海水が流れ込まない構造を有しているため、波形が高い海洋でのオイル流出事故においても有効に利用される優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の液体回収フロート装置の実施形態を示す全体説明図である。(実施例1)
【図2】本発明の液体回収フロート装置の実施形態を示す断面説明図である。
【図3】本発明の液体回収フロート装置の別の実施形態を示す説明図である。(実施例2)
【図4】本発明の液体回収フロート装置の別の実施形態を示す説明図である。(実施例3)
【図5】本発明の液体回収フロート装置の使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の液体回収フロート装置は、液体回収装置の回収ポンプに接続される液体回収フロート装置であって、摺動パイプ部と、流入堰調整部と、フロート部と、掻き寄せ回転装置と、を垂直軸上に配置すると共に、フロート部の回収液収納凹部と排水パイプの吸入口を、流入堰調整部の流入堰に対して下方に分離して設けたことを最大の特徴とするもので、以下、実施例を図面を元に説明する。
【0022】
また、本発明の液体回収フロート装置の形状は、下記に述べる実施例に特に限定されるものでなく、本発明の技術的思想に逸脱しない範囲で任意に変更することができる。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の液体回収フロート装置の実施形態を示す全体説明図である。
図(a)は全体斜視図を示し、図(b)は拡散分解図を示す。(ビスの取付は不表示)
本発明の液体回収フロート装置1は、液体回収装置Kの回収ポンプ2に接続される液体回収フロート装置1であって、該液体回収フロート装置1は、摺動パイプ部10と、流入堰調整部20と、フロート部30と、掻き寄せ回転装置50と、を垂直軸上に配置すると共に、フロート部30の回収液収納凹部37と排水パイプ41の吸入口42を、流入堰調整部20の流入堰25に対して下方に分離して設けられるものである。
【0024】
摺動パイプ部10は、浮遊油F1やスラムF2などが浮遊する液面Lの変化量に追従して上下摺動可能に形成され、上部は回収ポンプ2に連結され、下部は排出パイプ部40の排出パイプ41に連結されるものである。詳しくは、上下にフランジを形成し、その上部のフランジの側面にOリング13を装着した摺動パイプ11に二つ割りにした摺動分割パイプ12を被嵌して摺動可能に組み立てられるもので、組み立てられた摺動パイプ部10の全長は、流入堰調整機構26,34の調整ストローク距離と同調して設けられ、この摺動パイプ部10を境界として、上部が固定され、下部が液面Lに追従して浮沈する構造を有するものである。
【0025】
流入堰調整部20は、フロート部30の開口を塞ぐ蓋体部21と、フロート部30の回収液収納凹部37に回収された浮遊油F1やスラムF2などを回収する排出パイプ部40で構成される。
【0026】
蓋体部21は、上面には任意箇所にフロート部30の回収液収納凹部37に回収された回収液面Sを監視するフロートセンサー22を設け、中央部には排出パイプ41が貫通する貫通穴23を設け、周縁部には下方に延設する外周壁面24を設け、該外周壁面24に複数の流入堰25を液面Lの変化量の高さ寸法(流入堰調整機構26,34の調整ストローク距離)内で等間隔に周設すると共に、該内側には流入堰調整機構26となるネジ部を設けてフロート部30の流入堰調整機構34となるネジ部に連結して形成される。
【0027】
フロートセンサー22は、蓋体部21の上面に設置され、フロート部30の回収液収納凹部37に回収された浮遊油F1やスラムF2の回収液面Sを検出するもので、フロートスイッチ、赤外線感知センサーなどが使われる。さらにフロートセンサー22の重量分だけ対向位置にバランスウエイトBが配設される。尚、液体回収装置Kならびに回収ポンプ2を常時稼動させる場合は、本フロートセンサー22は不要となる。
【0028】
流入堰25は、蓋体部21の周縁下方に延設する外周壁面24に液面Lの変化量の高さ寸法を有して等間隔に複数設けられるもので、液面Lに浮遊する浮遊油F1やスラムF2などをフロート部30の回収室31に取り込むゲート口である。また該流入堰25は、流入堰調整機構26の調整ストローク距離(液面の変化量)分だけ下方に延設され、内側に設けられている流入堰調整機構26の調節量によってフロート部30の上端部36が下降することによって流入堰下辺25a(フロート部30の上端部36)が下がって液槽内の液面Lに追従するものである。
【0029】
フロート部30は、上方が開口する筒状体の回収室31を形成し、内側底部には、中央部がテーパ状に縮形する擂鉢状の斜面部32を形成し、さらに下方に底部がホール状に凹む回収液収納凹部37を形成し、下方部には、浮体構造を有するフロート体33を形成し、外側周縁上部には、蓋体部21の流入堰調整機構26に連結する流入堰調整機構34を設け、外側下端部には、流入堰調整機構34と調整手段を共有する液面調整用錘35を付設して形成される。
【0030】
回収室31は、液槽内に浮遊する浮遊油F1やスラムF2が、掻き寄せ回転装置50の掻き寄せ羽根53によってフロート部30内に斜面部32を形成して回収される空間である。
【0031】
フロート体33は、液体回収フロート装置1全体を浮上させるフロート性能を備えるもので、本装置の下方部にエアーを装填して設けられるものである。また、フロート性能を上げる場合は、フロート体33のそのものの容積を大きくするか、また図2の吹き出し部に示すようにフロート体33の外側下端部に液面調整用錘35を取り付ける螺合部を利用してフロート体33を連続して複数取り付けることもできるものである。
【0032】
流入堰調整機構34は、フロート部30の上端に流入堰調整部20の蓋体部21の内側に設けられている流入堰調整機構26と螺合して連結されるもので、連結手段は、螺合式、スライド式、嵌め込み穴式などが考えられる。また流入堰調整機構26の調節によってフロート部30の上端部36が下降することで流入堰下辺部25a(フロート部30の上端部36)が下がって液槽内の液面Lに追従するものである。
【0033】
液面調整用錘35は、上記の流入堰調整機構26,34の調節段階で浸水方向に微調整が必要な場合にフロート部30の外側下端部に取り付けて調節するものである。(大きく調整が必要な場合は、図2の吹き出し部に示すようにフロート体33の容積の異なったものを装着することができる。)
【0034】
回収液収納凹部37は、液槽内に浮遊する浮遊油F1やスラムF2がフロート部30内の回収室31に回収され、その斜面部32に沿って下降して回収される底部がホール状に凹む収納凹部である。その回収された浮遊油F1やスラムF2をフロートセンサー22で感知することで、液体回収装置K本体の回収ポンプ2の稼動の効率化が図られ、消費電力の抑制ならびに装置の機械的磨耗度を減少させることができるものである。また、フロート部30全体が大径になった場合は、段階的に斜面部32を有して形状を小さくして行き、最終的には排出パイプ41の吸引力が劣らず、目詰まりしないホール形状の凹みとすることが望ましい。また、回収液収納凹部37は、排水パイプ41との組み合わせで、従来のU字形に曲げられた上向きの排水パイプの役目を果たすもので、U字形排水パイプによる多くの問題点を解決することができるものである。
【0035】
排出パイプ部40は、排出パイプ41を貫通穴23に挿入し、摺動パイプ部10と、蓋体部21と、を共締めにして連結するものである。フロート部30の回収液収納凹部37に回収された浮遊油F1やスラムF2を吸い上げるパイプである。
【0036】
吸引管43は、排出パイプ41の先端部の吸引口42に取り付け位置が調整可能に取り付けられるもので、浮上油F1の種類や粘性の状態に合わせてその吸引口42の先端形状変えてを交換することができる着脱自在のアタッチメントである。吸引管43と回収液収納凹部37の底部との隙間距離を調節して吸引力や目詰まり具合を調整するものである。
【0037】
掻き寄せ回転装置50は、摺動分割パイプ12の上端フランジ部に装着可能に取り付けられるもので、ギヤホイールの噛み合いによって駆動モータ52を駆動源とする駆動装置51によって駆動されるものである。また、摺動分割パイプ12の上端フランジ部に連結されるベアリングと掻き寄せ羽根53を付設した掻き寄せギヤホイール54に連結される略L型に折曲され、先端部が平板状で内向きに変形している(図示は棒状)掻き寄せ羽根53は、蓋体部21の外周壁面24に周設される複数の流入堰25の外側を周回して流入堰調整部20の流入堰25付近に浮遊する浮遊油F1やスラムF2を積極的にフロート部30の回収室31に掻き寄せることによって流入堰25の詰まりを防止し、浮遊油F1やスラムF2の回収効率を高めるものである。尚、掻き寄せ回転装置50は流動性の高い浮遊油や、海洋などで波形が高く波圧が高い時に使用される場合は不要となるものである。
【0038】
駆動装置51は、ギヤホイールの噛み合いによって駆動モータ52を駆動源として駆動するもので、回転数20〜30rpm程度の低速回転で運転される。また、掻き寄せ回転装置50側への伝達手段は、中継ギヤホイール55が間接的に連結される構造を採用するもので、詳しくは駆動モータ52の角径のシャフトにスプリング56でスライド可能に押圧される連結コマ57が、そのシャフトにフリーの状態で遊嵌し、Wナット58で係止される中継ギヤホイール55の山形噛み合い溝59と連結コマ57の山形噛み合い溝59を介して連結され、さらに掻き寄せ回転装置50に連結される掻き寄せギヤホイール54に噛み合わされるもので、ゴミなどが流入堰25に挟まって駆動モータ52が焼き切れることを防ぐ伝達手段を採るものである。またその他の伝達手段としては、ラチェットストッパービスやマグネット磁着によるものが考えられる。尚、駆動装置51は流動性の高い浮遊油や、海洋などで波形が高く、波圧が高い時に使用される場合は不要となるものである。
【0039】
図2は、本発明の液体回収フロート装置の実施形態を示す断面説明図である。
液面Lに浮遊する浮上油F1やスラムF2は、下記のような順序で液体回収装置Kに回収される。
(1)液面調整部20の流入堰調整機構26とフロート部30の流入堰調整機構34を螺合調節して、フロート部30の上端部36(流入堰下辺部25a)を液槽内の液面L下の所定の浸水位置に来るように合わせる。
(2)液槽内の液面Lに浮遊する浮上油F
1やスラムF2が蓋体部21の流入堰25付近に流されてくる。
(3)掻き寄せ回転装置50の掻き寄せ羽根53によって流入堰25の入り口付近を浮遊する浮上油F1やスラムF2がフロート部30の回収室31に掻き寄せられる。
(4)フロート部30の回収室31に流入した浮上油F1やスラムF2は、斜面部32に沿って降下し、回収液収納凹部37に溜まる。
(5)回収液収納凹部37に浮上油F1やスラムFが一定量溜まるとフロートセンサー22が作動し、液体回収装置Kの回収ポンプ2が作動する。
(6)回収液収納凹部37に溜まった浮上油F1やスラムF2が排出パイプ41によって吸入され、回収される。
(7)回収された浮上油F1やスラムF2は、液体回収装置Kの分離装置によって分離されて処理される。
【0040】
以上のように液体回収フロート装置1を構成する摺動パイプ部10と、流入堰調整部20と、フロート部30と、掻き寄せ回転装置50と、を垂直軸上に配置すると共に、フロート部30の回収液収納凹部37と排水パイプ41の吸入口42を、流入堰調整部20の流入堰25に対して下方に分離して設けた手段を採ることによって、液体回収フロート装置1の小型化と消費電力の抑制ならびに回収効率のアップを図ることができるものである。
また、フロート体33の外側下端部に液面調整用錘35を取り付ける螺合部を利用してフロート体33を連続して複数取り付けることができるものである。
【実施例2】
【0041】
図3は、本発明の液体回収フロート装置の別の実施形態を示す説明図である。
図(a)は全体斜視図を示し、図(b)は拡散分解図を示す。(ビスの取付は不表示)
本発明の液体回収フロート装置1の請求項1の摺動パイプ11をフレキブルパイプ14で形成したものである。
【0042】
フレキブルパイプ14は、本装置における各構成部品が垂直軸上に配置されることによって初めて実現できるジャバラを形成する伸縮自在の連結パイプであって、摺動機構が伸縮自在の機能に代わるもので、部品コストならびに部品重量を大幅に軽減することができるものである。また、伸縮作動の正確性を得るためにフレキブルパイプ14内にスライド軸を内蔵することも考えられる。
【0043】
以上のように構成された液体回収フロート装置1は、据置き直下型の液体回収装置Kとして、小型化ならびに回収機能の効率化を図ることができるものである。
【実施例3】
【0044】
図4は、本発明の液体回収フロート装置の別の実施形態を示す説明図である。
本発明の液体回収フロート装置1の液面L上の安定度を増すために三点支持のフロート体60による液体回収フロート装置1としたもので、三点支持のフロート体60による直径2〜3m程度のたらい桶状の吊持式液体回収フロート装置とすることで、流入堰25が大型化され、且つ多数設けられることで波形が大きい海洋の流出オイル回収装置として有効に利用されるものである。
【0045】
図5は、本発明の液体回収フロート装置の使用例を示す説明図である。
回収ボートMにクレーンCを搭載して湖面のアオコや浮草の回収用としたものである。フロート部30を直径2〜3m程度の大型化することで広範囲の回収効果が期待できるものである。また、図示される液体回収フロート装置1Aは、掻き寄せ回転装置50を装着しない実施例を示すもので、流動性の高いオイルの流出事故などの場合には、イカ釣り漁船の集魚灯アームのような複数のクレーンCを使って回収することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の液体回収フロート装置は、小型化することで製造工場などの液体回収装置として利用でき、大型化することで海面に流出したオイルや湖面に浮遊するアオコや浮草の液体回収装置として巾広く利用することができるもので、本発明における液体回収フロート装置の産業上の利用可能性は大とするものと解する。
【符号の説明】
【0047】
1 液体回収フロート装置
2 回収ポンプ
3 回収パイプ
4 回収ホース
5 上部基台
10 摺動パイプ部
11 摺動パイプ
12 摺動分割パイプ
13 Oリング
14 フレキブルパイプ
20 流入堰調整部
21 蓋体部
22 フロートセンサー
23 貫通穴
24 外周壁面
25 流入堰
25a 流入堰下辺
26 流入堰調整機構
30 フロート部
31 回収室
32 斜面部
33 フロート体
34 流入堰調整機構
35 液面調整用錘
36 上端部
37 回収液収納凹部
40 排出パイプ部
41 排出パイプ
42 吸引口
43 吸引管
50 掻き寄せ回転装置
51 駆動装置
52 駆動モータ
53 掻き寄せ羽根
54 掻き寄せギヤホイール
55 中継ギヤホイール
56 スプリング
57 連結コマ
58 Wナット
59 噛み合い溝
60 三点支持のフロート体
K 液体回収装置
F1 浮上油
F2 スラム
L 液面
B バランスウエイト
M 回収ボート
C クレーン
S 回収液面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体回収装置の回収ポンプに接続される液体回収フロート装置であって、
前記液体回収フロート装置は、
摺動パイプ部と、流入堰調整部と、フロート部と、掻き寄せ回転装置と、で構成され、
前記摺動パイプ部と、前記流入堰調整部と、前記フロート部と、前記掻き寄せ回転装置と、を垂直軸上に配置すると共に、
前記フロート部の回収液収納凹部と前記排水パイプの吸入口を、前記流入堰調整部の流入堰に対して下方に分離して設けたことを特徴とする液体回収フロート装置。
【請求項2】
前記液体回収フロート装置における前記摺動パイプ部は、
液面の変化量に追従して上下摺動可能に形成され、
前記回収ポンプと前記流入堰調整部に連結されて成り、
前記流入堰調整部は、
前記フロート部の開口を塞ぐ蓋体部と、
前記フロート部の回収液収納凹部に回収された浮上油やスラムを回収する排出パイプ部と、で構成されて成り、
前記蓋体部は、
上面には、任意箇所に前記回収液収納凹部に回収された浮上油やスラムの回収液面を監視するフロートセンサーを設け、
中央部には、前記排出パイプ部が貫通する貫通穴を設け、
周縁部には、下方に延設する外周壁面を設け、
該外周壁面には、液面の変化量の高さ寸法を有して等間隔に周設する複数の流入堰を設け、該内側には、流入堰調整機構を設けて前記フロート部の流入堰調整機構と連結して成り、
前記排出パイプ部は、
先端部の吸引口には、取り付け位置が調整可能な吸引管を取り付けて、前記摺動パイプ部と、前記蓋体部と、を連結して成り、
前記フロート部は、
上方が開口する筒状体の回収室を形成し、
内側底部には、中央部がテーパ状に縮形する擂鉢状の斜面部と、
さらに下方には、底部がホール状に凹む回収液収納凹部を形成し、
下方部には、浮体構造を有するフロート体を形成し、
外側周縁上部には、前記蓋体部の流入堰調整機構に連結する流入堰調整機構を設け、
外側下端部には、前記流入堰調整機構と調整手段を共有する液面調整用錘を付設して成り、
前記掻き寄せ回転装置は、
前記摺動パイプ部の上端部に、前記蓋体部の外周壁面に周設される複数の流入堰の外側を周回する掻き寄せ羽根を有する伝達機構を設け、
該伝達機構を介して駆動装置を上部基台に設けて成ることを特徴とする請求項1記載の液体回収フロート装置。
【請求項3】
前記摺動パイプ部を、伸縮自在のフレキブルパイプとしたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の液体回収フロート装置。
【請求項4】
前記液体回収フロート装置が、三点支持のフロート体によって支持されることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか記載の液体回収フロート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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