説明

液体容器の液吐出装置

【課題】 内容器の底と外ケースの底との間の部品取付けスペースから電動ポンプを除くことにより、製品の全高を低くすると共に、電動ポンプのモータの耐久性を向上させることにある。
【解決手段】 液通路の直状立上がり部23の上方で、かつ外ケース11の肩部20の外部において電動ポンプのモータを設置し、そのモータのシャフト38を上記立上り部23の下方に達する長さに形成し、該シャフト38の下端にスクリューインペラ46を取付けた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電気湯沸しポットのような液体容器の液吐出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電気湯沸しポットにおける従来の液吐出装置は、図6(a)(b)に示すように、外ケース1内に収納した内容器2の下端部に液通路3を連通せしめ、その液通路3の途中に直状の立上がり部4を設け、上記立上がり部4の上端に外ケース1の外部に開放された吐出口5を設けている。また、内容器2の底と外ケース1の底との間において、上記液通路3の下端部に遠心ポンプ等の電動ポンプ6を設け、外部からの操作により上記の電動ポンプ6を駆動させると、内容器2の液体を汲み出して液通路3を経て吐出口5から吐出させる。
【0003】なお、図6において7は制御基板を示す。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のように従来の液吐出装置においては、電動ポンプ6が、内容器2の底と外ケース1の底との間に設けられていたので、内容器2の底と外ケース1の底との間に該電動ポンプ6を設置するスペースが必要であり、このために上記の底相互間の高さHが大きくなり、製品の全高に影響を及ぼす問題があった。
【0005】また、電動ポンプ6のインペラの収納部分が液通路3の最も低い位置に設置されるので、水から出る析出物(水酸化カルシウム)が溜りやすく、その析出物がインペラの回転に支障をもたらす原因となっていた。
【0006】更に、ポットで湯を沸かす際に、液通路3内にある水は加熱されないため、吐出の初期に吐出口5から吐出されるコップ一杯分程度の湯がぬるいという問題もあった。
【0007】一方、製品の全高に影響を与えないようにするため、実開昭61−67637号公報に示されているように、電動ポンプのモータを液体容器の中栓と一体の蓋内部に設け、その蓋と一体の通水管を内容器の底面まで延ばし、その通水管内に通したモータのシャフトの下端にインペラを取付けた構成を採用することが知られている。
【0008】しかし、上記のように蓋内部にモータを設けた場合は、蓋を外す際に常にこれと一体の電動ポンプと通水管を内容器から外さなければならない不便があった。また内容器内から立上る蒸気や、沸騰時にとび跳ねる湯がモータやそのスイッチ等に接触し、腐食の原因になるおそれがあった。
【0009】この発明は以上のごとき問題を解決した液吐出装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段及び作用】上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、外ケース内に収納した内容器の下方部に上記内容器の外部に設けた液通路を連通せしめ、上記液通路の途中に直状の立上がり部を設け、上記立上がり部に外ケース外部に開放された吐出口を連通せしめ、上記液通路の途中に電動ポンプのインペラを設置してなる液体容器の液吐出装置において、上記電動ポンプのモータを上記立上がり部上方の外ケースの一部に設置し、上記モータのシャフトを該立上がり部下方に達する長さに形成し、該シャフトの下端に上記のインペラを設けた構成としたものである。
【0011】上記構成の液吐出装置は、従来の場合と同様に、電動ポンプを駆動させることにより、内容器内の液体を吐出口から外部に吐出させることができる。電動ポンプを構成するモータ、シャフト及びインペラは、液通路の直状立上がり部に設けられるため、内容器の底と外ケースの底との間のスペースは従来に比べて小さくなる。また電動ポンプは液体容器の蓋とは無関係な位置において外ケースの例えば肩部の外方に設置されるので、蒸気やとび跳ねる湯に接触することがなく、また蓋の開閉の妨げになることもない。
【0012】請求項2に記載の発明は、上記シャフトが上記液通路の壁部を貫通する部分に所要のシールを施した内部開口を設け、上記内部開口上方の外ケースに外部開口を設け、上記内部開口及び外部開口を上記のインペラが抜き出せる大きさに形成すると共に、上記外部開口を上記インペラ及びモータが抜き出せる大きさに形成し、上記内部開口のシール上に上記モータを設置し、上記外部開口に閉塞蓋を設けた構成とした。
【0013】上記構成の液吐出装置は、必要に応じて閉塞蓋を開け、モータ、シャフト及びインペラから成る電動ポンプを、上方に引抜くことにより外ケース外部に抜き出し、清掃や保守点検を行うことができる。
【0014】請求項3の発明は、上記内容器の下方部と液通路の立上がり部との間に、該立上がり部下端より低い内底面を有する中継通路を設けた構成としたものである。
【0015】上記構成の液吐出装置は、内容器の水から析出した水酸化カルシウムの溜りやすい中継通路を避けた位置にインペラが設置されるので、インペラの回転に支障を来たしにくい。
【0016】請求項4に記載の発明は、上記インペラがスクリューインペラのように正逆両回転方向に揚程を生じるタイプであり、かつ上記モータが正逆回転可能である構成とした。
【0017】上記構成の液吐出装置は、給湯ポットに利用した場合において、所要の温度に加熱された湯を吐出させるに際し、電動ポンプを逆回転させて液通路内の水を内容器内に逆流させ、その後正回転させて吐出させると吐出の初期から熱い湯を吐出させることができる。また、インペラの洗浄時に、内容器の湯の中に洗浄剤を入れたうえで、モータを正逆回転させると、洗浄剤の混った湯がインペラに接触し、洗浄効果を高める。
【0018】
【実施の形態】以下、図1から図5に基づいてこの発明の実施形態について説明する。この実施形態は電気湯沸しポットに関するものである。
【0019】この電気湯沸しポットは、図1に示すように、外ケース11の内部に内容器12を収納し、その内容器12上の外ケース11の開口部に蓋13を開閉自在に取付けている。また、内容器12の上端周縁は外ケース11の肩部20の内周縁により支持される。
【0020】上記外ケース11の前面の上部中央部分に口ばし部14が設けられ、この口ばし部14の下方の若干左方へ寄った位置に水位表示窓15が設けられる。
【0021】上記内容器12の下面には図3に示すようにヒータ16が設けられる。また該内容器12の底面のポット前面側の周縁部分に下口17が設けられ、エルボ形の継手18を介して、L形に屈曲したインペラ収納管19が内容器12の外部において接続され、そのインペラ収納管19の上端に水位管を兼ねた透明な給水管21が継手22により接続される。上記のインペラ収納管19の立上がり部分と、その上端に接続された給水管21とにより、直状の立上がり部23が構成され、その立上がり部23は内容器12と外容器11との間を上向きに延びる。また、この場合継手18が「特許請求の範囲」にいう中継通路を構成する。
【0022】上記の給水管21の上端は、外ケース11の上端内周に形成された肩部20と、外ケース11の上端から前方に突き出した口ばし部14に囲まれた部分において、水平方向の通水路24に連通される(図1、図4R>4参照)。上記通水路24の端部には、安全弁装置25が設けられ、その安全弁装置25の弁ケース26の上部に、吐出口27が接続される。吐出口27は、図3に示すように、口ばし部14の内部を通り、逆L形に屈曲した先端部が口ばし部14のアンダーカバー28に設けられた吐出開口29に臨む。
【0023】上記の安全弁装置25は、その弁ケース26内に転倒時に液通路を閉塞する転倒時安全弁31が収納され、また、吐出口27の後端部に傾斜時に液通路を閉塞する傾斜時安全弁32が収納される。
【0024】なお、上記の継手18から吐出口27までの一連の通路が「特許請求の範囲」でいう液通路を構成する。
【0025】上記の給水管21の上端に対向した通水路24の上壁に、図4に示すような内部開口33が設けられ、更に、その内部開口33に対向した外部開口34が外ケース11に設けられる。
【0026】上記の内部開口33の上端周縁にシール部材35が装着され、そのシール部材35上にモータケース36が搭載される。
【0027】上記の内部開口33は後述するスクリューインペラ46(図3参照)より大径であり、また、外部開口34はスクリューインペラ46及びモータケース36より大径である。
【0028】上記のモータケース36の内部には電動ポンプ40のモータ37が収納されると共に、そのモータ37のシャフト38がモータケース36の底面、内部開口33を貫通し、更に給水管21を経て、前記のインペラ収納管19の下端のスラスト軸受39(図3参照)にまで達している。また、モータケース36の底面をシャフト38が貫通する部分にはラジアル軸受41が設けられる。
【0029】また、上記外部開口34の上方の外ケース11には、閉塞蓋42が設けられ、その閉塞蓋42にリード線43(図4参照)に通じた一対の可動側接点44が取付けられ、上記閉塞蓋42を閉じた際に、上記の可動側接点44がモータ37上端面の固定側接点45に接触するようになっている。上記のリード線43は制御盤に接続され、外部から吐出ボタンが操作された際に、制御盤からの信号によりモータ37を駆動する。
【0030】上記シャフト38の下端部にはスクリューインペラ46が取付けられている。このスクリューインペラ46に代えて、図5(a)(b)に示すごとき軸流インペラ47、図5(c)(d)に示すごとき遠心インペラ48を使用することができる。
【0031】実施形態の電気湯沸しポットは以上のごときものであり、内容器12内に水を入れ(そのときの水位が給水管21及び水位表示窓15を通して外部から確認できる。)、ヒータ16に通電して湯を沸かす。湯の沸騰に伴って発生する蒸気は、蓋13に設けた蒸気孔(図示省略)から外部に排出され、モータ37や接点44、45の収納部分へは肩部20に遮断され、侵入することが防止される。また沸騰時にとび跳ねる湯も、同様に肩部20により遮断される。
【0032】湯を吐出させるときは、吐出ボタンを操作することにより、電動ポンプ40のモータ37を駆動し、スクリューインペラ46の作用により内容器12内の湯を吐出口27から外部に吐出させる。
【0033】このとき、内容器12内の湯が沸騰前後の温度にまで加熱された時点で、まず吐出ボタンの操作により、モータ37を逆回転させると、給水管21を含む液通路内にある加熱されない水が、内容器12側に逆流して内容器12内の湯と混じる。次に正回転に戻して吐出させると、熱い湯が吐出する。1回の正逆回転で十分に湯水が混合しない場合は、複数回繰返えしてもよい。
【0034】上記のスクリューインペラ46は、キャビテーションを起し難い構造であるが、他の形式のインペラの場合も、インペラ周辺で発生した気泡がその上方の直状の給水管21に抜けやすいので、キャビテーションが生じにくい。
【0035】また、スクリューインペラ46の清掃時にはモータ37を停止させた状態で閉塞蓋42を開け、モータケース36をつまみ出すと、モータ37及びそのモータ37と一体のシャフト38及びスクリューインペラ46が給水管21の上端及び内部開口33及び外部開口34から抜け出し、電動ポンプ40の全体を外ケース11の外部に取出す。これによりスクリューインペラ46の部分その他必要な部分を清掃することができる。
【0036】インペラの清掃は、前述のようにポンプ全体を外部に取出して行うことによってもできるが、内容器12の湯にクエン酸等の洗浄剤を入れたうえで、モータ37の正逆回転を繰返すことで、スクリューインペラ46及びその周辺に付着した汚れや析出物を洗浄することができる。但し、モータ37の逆回転により給水管21内の水を内容器12に逆流させる使用方法は、インペラが正逆両回転方向に揚程を生じさせるスクリューインペラ46、軸流インペラ47などの場合に限る。
【0037】以上の実施形態は、給水管21が水位管を兼ねる形成のものであったが、この発明は給水管と水位管を独立に設けた場合にも適用することができる。また、電動ポンプ40のモータケース36を省略し、モータ37を直接外部開口34上に設置する場合もある。「特許請求の範囲」にいう「モータ」はモータ37単独の場合と、モータ37とモータケース36の組合せの場合の両方を含む。
【0038】
【発明の効果】請求項1の発明は、電動ポンプが内容器の底と外ケースの底との間のスペースから外れた部分に設置されるので、上記のスペースを狭くすることができ、製品の全高を低くすることができる。また、モータや接点等が蒸気や湯に触れないので、耐久性を向上することができる。更に、液体容器の蓋の開閉を電動ポンプの出し入れを伴うことなく、これと無関係に行うことができる。
【0039】請求項2の発明は液体容器の蓋の開閉と無関係に、電動ポンプ全体を外ケースの外部に取出せるので、インペラ部分その他の部分の洗浄を容易に行うことができる。
【0040】請求項3の発明は、インペラが析出物の影響を受けにくい位置に設けられるので、インペラの支障が少なくなる。
【0041】請求項4の発明は、所要の温度に加熱された湯を吐出させるに際し、インペラを正逆回転させることにより、最初から高温の液体を吐出させることができる。また、インペラの清掃時にも洗浄剤を内容器の湯に混ぜた上で、インペラの正逆回転を繰返えすことにより、インペラを外部に取外すことなく洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の電気湯沸しポットの斜視図
【図2】同上の平面図
【図3】同上の一部断面図
【図4】同上の一部拡大断面図
【図5】(a)〜(d)同上のインペラの各種を示す斜視図
【図6】(a)従来例の概略図
(b)同上の平面図
【符号の説明】
11 外ケース
12 内容器
13 蓋
14 口ばし部
15 水位表示窓
16 ヒータ
17 下口
18 継手
19 インペラ収納管
20 肩部
21 給水管
22 継手
23 立上がり部
24 通水路
25 安全弁装置
26 弁ケース
27 吐出口
28 アンダーカバー
29 吐出開口
31 転倒時安全弁
32 傾斜時安全弁
33 内部開口
34 外部開口
35 シール部材
36 モータケース
37 モータ
38 シャフト
39 スラスト軸受
40 電動ポンプ
41 ラジアル軸受
42 閉塞蓋
43 リード線
44 可動側接点
45 固定側接点
46 スクリューインペラ
47 軸流インペラ
48 遠心インペラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 外ケース内に収納した内容器の下方部に上記内容器の外部に設けた液通路を連通せしめ、上記液通路の途中に直状の立上がり部を設け、上記立上がり部に外ケース外部に開放された吐出口を連通せしめ、上記液通路の途中に電動ポンプのインペラを設置してなる液体容器の液吐出装置において、上記電動ポンプのモータを上記立上がり部上方の外ケースの一部に設置し、上記モータのシャフトを該立上がり部下方に達する長さに形成し、該シャフトの下端に上記のインペラを設けたことを特徴とする液体容器の液吐出装置。
【請求項2】 上記シャフトが上記液通路の壁部を貫通する部分に所要のシールを施した内部開口を設け、上記内部開口上方の外ケースに外部開口を設け、上記内部開口及び外部開口を上記のインペラが抜き出せる大きさに形成すると共に、上記外部開口を上記インペラ及びモータが抜き出せる大きさに形成し、上記内部開口のシール上に上記モータを設置し、上記外部開口に閉塞蓋を設けたことを特徴とする請求項1に記載の液体容器の液吐出装置。
【請求項3】 上記内容器の下方部と液通路の立上がり部との間に、該立上がり部下端より低い内底面を有する中継通路を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体容器の液吐出装置。
【請求項4】 上記インペラがスクリューインペラのように正逆両回転方向に揚程を生じるタイプであり、かつ上記モータが正逆回転可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液体容器の液吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平10−179396
【公開日】平成10年(1998)7月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−343871
【出願日】平成8年(1996)12月24日
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【出願人】(000002233)株式会社三協精機製作所 (1,337)