説明

液体循環式スプレーガン

【課題】 液体循環式スプレーガンにおける微粒子の沈殿を防止する。
【解決手段】 スプレーガン本体1に液入口1aと液出口1bとを開口し、これらを直通流路6にて連通し、該直通流路6と略直交する流路孔7を穿設し、中芯部にニードル5を挿入し、その周囲に直通流路6からノズルa先端部まで至る液体供給流路7を構成した液体循環式スプレーガンであって、前記直通流路6内に仕切り体3を内挿し、中芯部にニードル5を摺動可能に挿通し、同仕切り体3の後部に形成した仕切り部3bより上流側と下流側とに仕切り、該軸状部3aに沿って直通流路6上流側からノズル5先端部5aに至る往流路7aと、ノズルa先端部から直通流路6下流側に至る帰流路7bとを形成して液体供給流路と成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体循環式のスプレーガンに関し、さらに詳しくは、メタリック塗装等に使用する液体循環式スプレーガンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主にメタリック塗料等を噴霧する液体循環式のスプレーガンは自動スプレーガン等とも称され、図4にて示すように構成されている。この液体循環式スプレーガン100は、スプレーガン本体101にメタリック塗料等の微粒子材料の混入した液体が循環する循環流路に接続される液入口105と、液出口106とを開口し、これらを直通流路107により連通せしめてある。上記直通流路107は循環流路の一部として機能し、作動の際にはメタリック塗料等の液体が常時流れて通過することになる。また、直通流路107にはこれと直交する形でノズル部103に通ずる供給流路104を穿設してある。
供給流路104は、直通流路107の上流側からノズル103のノズル部流路104cに至る供給流路上流部104aと、ノズル部流路104cから直通流路107の下流側に至る供給流路下流部104bとして機能する。
上記した供給流路104の折り返し部となるノズル部流路104cは円錐状の中空部として形成され、その中心部にニードル102の先端部102‘が挿入してある。そして、このニードル102を後退させることにより、直通流路107を通過するメタリック塗料等が供給路104上流部104a内に流れ込み、ノズル部流路104cに至ってノズル103から噴霧されるように構成してある。
【0003】
ところで上記したように噴霧されるメタリック塗料は流れが止まると混入される金属微粒子が沈降する性質を有するが、ノズル103から連続的に噴霧される状態では供給流路104内を流れているので金属微粒子が沈降することはない。しかし、噴霧が停止して塗料の供給流れが滞ると直ぐに微粒子の沈降が生じ、供給流路104内に微粒子が沈殿する。このように微粒子が沈殿すると供給路104中の塗料の流れが阻害されるため、ノズルの詰まりや噴霧状態に乱れを生じ、塗装作業に支障をきたす結果となる。
【0004】
従来の液体循環式スプレーガンの中には、上記したような不具合を回避するための工夫を施したものもある。例えば、特許文献1に示す塗付材料循環供給型スプレーガンは、液体の供給路の上流側と下流側とをノズル部に対して傾斜する形で形成し、供給される液体が滞って沈殿する可能性を低減せしめたものもある。しかしながら、上記したスプレーガンは従来のものと比較して構造が複雑となり、さらに部品の共通性がなくなるので、製造コストの高騰は否めない。
【0005】
【特許文献1】特許第314846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、液体循環式スプレーガンに生じる微粒子の沈殿を、従来の液体循環式スプレーガンの構造を利用しつつ防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために第一の発明は、液体の循環流路に接続されるスプレーガン本体に、同循環流路の接続口となる液入口と液出口とを開口し、これらを直通流路にて連通せしめ、該直通流路と略直交する流路孔を穿設すると共に、先端部にノズルを設けると共に先端部にノズルを取付け、その流路孔の中芯部に沿ってニードルを挿入し、該ニードルの周囲に沿って直通流路からノズル先端部まで至る液体供給流路を構成した液体循環式スプレーガンであって、前記流路孔内に略軸状の仕切り体を内挿すると共にその中芯部に上記ニードルを摺動可能に挿通し、同仕切り体の後部に形成した仕切り部より上記直通流路を直交部にて上流側と下流側とに仕切ると共に、その軸状部に沿って切り欠き部を形成して、直通流路上流側からノズル先端部に至る往流路と、ノズル先端部から直通流路下流側に至る帰流路とを形成し、上記液体供給流路と成したものである。
【0008】
また、第二の発明では、請求項1記載の液体循環式スプレーガンにおいて、仕仕切体軸状部の外周面が液体供給流路の内周面に密接するように構成し、且つ切り欠き部を同軸状部の一側と他側とに切欠形成して、ノズル先端部に通ずる断面略円弧型の上流路及び下流路を構成すると共に、同仕切り体の後端部に略板状の仕切り部を一体形成したものである。
【0009】
また、第三の発明では、請求項1及び2記載の液体循環式スプレーガンにおいて、仕切り体を一個の部品として構成し、スプレーガン本体に対して着脱可能且つ換装可能に構成して成るものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような作用効果を奏する。
第一の発明の液体循環式スプレーガンは、仕切り体の仕切り部により、直通流路を上流側と下流側とに仕切り、液入口から直通流路の上流側に流れ込んだ液体を、仕切り体軸状部の切欠により構成した液体供給流路の往流路内に導入し、同往流路からノズル先端部に供給し、さらにノズル先端部から帰流路を通過して直通流路の下流側に導いて循環流路を作ることができる。したがって従来、流れの滞りにより微粒子の沈殿を生じ易かった液体供給流路内、特にノズル先端部を液体の流れの中に常時置くことができ、同流路内における微粒子の沈降、沈殿を確実に防止し、ノズルの詰まりや噴霧状態の乱れの発生を無くすことができる。
【0011】
また、第二の発明では、仕切り体の軸状部外周面の一側と他側とを切欠形成して、ノズル先端部に通ずる断面略円弧型の上流路及び下流路を構成し、また、仕切り体後端部に略板状の仕切り部を一体形成したものであるから、直通流路を上流側と下流側とに仕切り、液入口から直通流流の路上流側に流れ込んだ液体をノズル部へ導入し、且つ下流側を通過させて液体流路内に常時循環流を作る機能を簡素な形態の仕切り体一つにより得ることができる。
また、上記仕切り体は、従来の液体循環式スプレーガンに装着することが可能となるから、上記したように液体流路内に常時循環流を作る機能を既存のスプレーガンに具備せしめることができる。
【0012】
さらに、第三の発明では、仕切り体の軸状部と仕切り部とを一体化して、一個の部品として構成し、これをスプレーガン本体に着脱可能且つ換装可能に構成したので、スプレーガン本体の液体流路内に循環流を作る機能を極めて簡素な構造の仕切り体により具備することができ、さらに、既存の液体循環式スプレーガンにも簡単に装着したり、特性の異なる仕切り体を換装して性質の異なる複数の液体に対応して噴霧状態の最適化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明を実施したメタリック塗装等に用いる液体循環式スプレーガンAを示している。このスプレーガンAは主にメタリック塗装等に使用する自動スプレーガンである。スプレーガンAは、略ブロック状に形成したスプレーガン本体1に、メタリック塗料等の液体が循環する循環路(図示せず)に対して接続する液入口1aと液出口1bとを開口してある。液入口1aと液出口1bとはスプレーガン本体1の一側面と他側面とに中芯同士が突き当たるように開口し(図2)、これらを略くの字形に屈曲する通路6にて連絡する形になっている。スプレーガン本体1の中心部には上記通路6と直交する形でニードル5を挿入し、その先端部5aがノズルa部において進退するように構成してある。尚、上記した通路6は中芯を直線状となるよう完全に同芯させた状態で構成してもよい。
【0014】
上記スプレーガン本体1の前面軸芯部にはノズル体2の後部2‘を螺合して一体的に接続してある。ノズル体2は中間部外周に鍔部2aを周設した軸状体であり、その軸芯部に沿って上記通路6と直交若しくは直交に近い角度を介して通ずる流路孔7を穿設し、その中芯部に上記したニードル5を挿通してある。また、流路孔7の先端には円錐状に絞った絞り部2dを形成し、該絞り部2d先端の中芯に、ニードル5の先端部5aを進退可能に嵌入する細管状の噴霧孔3a’を形成してあり、上記ニードル先端部5aと共にノズルaを構成する。
【0015】
また、流路孔7内の軸芯部にはニードル5を密接した状態で嵌挿する合成樹脂性の仕切り体3を内装してある。仕切り体3は後で詳細に説明する。
上述したように、ノズル体2の外周部には鍔部2aと鍔部2bとを周設してある。鍔部2a及び鍔部2bの外周部には各々テ−パ状に形成した気密部2a‘,気密部2b’を形成してある。ノズル体2は鍔部2aの気密部2a‘をスプレーガン本体1の前面に突出する形で形成した環状部1dに対してガスケット51を介して密着せしめることにより、スプレーガン本体1前部との間に輪状の気道52を形成してある。また、これと同時にノズル体2後端に周設した鍔部2bを通路6に連通する開口部内周1cに密接することにより、同通路6と流路孔7との間の水密を維持すると共に同鍔部2bの前面側に沿って気道53を周設してある。
これらの気道52,53はそれぞれ圧搾空気の供給源に連絡し、噴霧時にはその圧搾空気をノズルa及び後述する吹き出し孔4cに向けて供給する。
【0016】
一方、上記ノズル体2には先端側からエアーキャップ4を嵌装し、該エアーキャップ4をリング状の接続ネジ8を介してスプレーガン本体1の環状部1dに螺合する。これによりエアーキャップ4は、ノズル体2と共にスプレーガン本体1に接続され、その内部に環状の気道54を形成してある。この気道54は前記した気道53とノズル体2に穿設した連通孔55を介して連通してある。
エアーキャップ4は平吹き用のノズルに用いるものであり、蝶ナット状の突出部4aの中に通孔4bを穿設し、その先端部にノズルa中心側へ向けて吹き出し孔4cを穿孔し、上記した気道54から供給される圧搾空気をノズルaの延長線上へ向けてエアーを吹き出すように構成してある。
【0017】
装着状態のエアーキャップ4とノズル体2の先端部との間には環状の間隙56を形成し、ここに供給された圧搾空気がノズル体2噴霧孔3a‘部の外周とエアーキャップ4中心部に開口した開口孔57との間に形成される小円状の吹き出し孔a1から吹き出すように構成してある。この吹き出し孔a1から吹き出した空気は、ニードル5の後退により開く噴霧孔3a‘から出る塗料を吸い出して微細に噴霧する。また、上記エアーキャップ4のノズルa部には補助気孔58をノズルa中心から上下に所定の間隔を置いて穿設してある。
【0018】
上記したように構成したスプレーガンAは、ノズル体2の流路孔7の中にはフッ素樹脂から成る仕切り体3を嵌装してある。図3にて示すように、仕切り体3は軸状部3aと、その後端側に一体成形される仕切り部3bとから構成し、その中芯部に沿ってニードル5を挿通する挿通孔3cを穿設してある。仕切り体3の軸状部3aは一側と他側を平らに切欠してあり、同軸状部3aをノズル体2の流路孔7内に適宜な嵌め合いを持って嵌挿した際に同流路孔7の一側に断面円弧形の往流路7aと帰流路7bを形成すると共に、これら両流路7a,7bをニードル5の先端部5aに形成した流路折り返し部7cにより連絡する。これにより、上流側の往流路7aに流入した塗料がニードル5先端部5aを通過して折り返し、下流側の帰流路7b内に流れ込むようになる。
【0019】
上記した仕切り体3の軸状部3aの後端には仕切り部3bを一体に形成してある。仕切り部3bは通路6を仕切って液入口1aから通路6に流入した塗料を上流側の往流路7aに導くものである。また仕切り部3bは軸状部3aの両側面3a‘を延長する形で略板状に形成し、通路6内周の中間部に形成した凹溝1eに嵌入して装着し、同通路6を上流側と下流側とに仕切る(図2)。さらに、仕切り部3bと軸状部3aとの間にはテーパー部3dを形成し、装着状態において同テーパー部3dがノズル体2の往流路7a入口口縁に形成した面取り部2eに密着して同部分の水密を維持し、塗料の流れが上流側の往流路7a内に漏れることなく導かれるように構成してある。
【0020】
よって、上記した如く構成したスプレーガンAは、塗料等の循環流路に接続される液入口1aから供給された塗料が、ノズルaの開閉に係わらず通路6内の仕切り部3bに突き当たり、上流側の往流路7a内に流れ込む。往流路7a内を流れる液状塗料はニードル5先端部5aが覗く流路折り返し部7cにて折り返して下流側の帰流路7bから下流側の通路6通過して液出口1bに至り、再び塗料の循環流路に戻る循環流が維持される。
したがって、上記したスプレーガンAは、ノズルaの開閉に関係することなく常時塗料が流動し、例えばメタリック塗料に含まれる金属微粒子が両流路7a,7b及び流路折り返し部7c内にて沈降することを防止し、且つ混合物の沈殿により流路が詰まって塗料の流れが低下し、塗料の噴霧に支障を来たす不具合を効果的に防止できる。
【0021】
上記した仕切り体は本実施例のようにフッ素樹脂等の合成樹脂若しくはアルミ等の金属から形成するが、一個の部品として比較的簡単に製造することができるので、上記したような効果を考えると大変コストパフォーマンスが高い。また、図4にて示すような従来の循環式スプレーガンにも同様な仕切り体を装着することにより、上記した実施例のスプレーガンAと同様な効果を奏する利点がある。また、寸法の異なる機種であっても、仕切り体各部の寸法を少し変更するだけで簡単に対応することができる。さらに、噴霧する液体の変更に伴って目的別に構成した複数種類の仕切り体を交換して噴霧の最適化を実現することも可能である。
尚、上記した仕切り体は2部材以上の部品から構成しても良い。また、軸状部切り欠きや仕切り部の形状,寸法は任意に変更してもよい。
また、使用液体もメタリック塗料に限定するものではなく、微粒子が混合する液体の吹付けに使用するスプレーガンであればどのような用途に使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を実施した液体循環式スプレーガンを示す横断平面図。
【図2】図1におけるII-II線断面図。
【図3】仕切り体を示す斜視図。
【図4】従来の液体循環式スプレーガンを示す横断平面図。
【符号の説明】
【0023】
A・・・液体循環式スプレーガン
a・・・ノズル
1・・・スプレーガン本体
1a・・・液入口
1b・・・液出口
2・・・ノズル体
3・・・仕切り体
3a・・・軸状部
3b・・・仕切り部
4・・・エアーキャップ
5・・・ニードル
6・・・通路
7・・・流路孔
7a・・・往流路
7b・・・帰流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の循環流路に接続されるスプレーガン本体に、同循環流路の接続口となる液入口と液出口とを開口し、これらを直通流路にて連通せしめ、該直通流路と略直交する流路孔を穿設すると共に、先端部にノズルを設け、その流路孔の中芯部に沿ってニードルを挿入し、該ニードルの周囲に沿って直通流路からノズル先端部まで至る液体供給流路を構成した液体循環式スプレーガンであって、前記流路孔内に略軸状の仕切り体を内挿すると共にその中芯部に上記ニードルを摺動可能に挿通し、同仕切り体の後部に形成した仕切り部より上記直通流路を直交部にて上流側と下流側とに仕切ると共に、その軸状部に沿って切り欠き部を形成して、直通流路上流側からノズル先端部に至る往流路と、ノズル先端部から直通流路下流側に至る帰流路とを形成し、上記液体供給流路と成した液体循環式スプレーガン。
【請求項2】
仕切り体は軸状部の外周面が液体供給流路の内周面に密接するように構成し、且つ切り欠き部を同軸状部の一側と他側とに切欠形成して、ノズル先端部に通ずる断面略円弧型の上流路及び下流路を構成すると共に、同仕切り体の後端部に略板状の仕切り部を一体形成して成る請求項1記載の液体循環式スプレーガン。
【請求項3】
仕切り体を一個の部品として構成し、スプレーガン本体に対して着脱可能且つ換装可能に構成してなる請求項1又は2記載の液体循環式スプレーガン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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