説明

液体性状検出装置

【課題】コスト上昇を必要最小限度に抑え且つ設置スペースを節約することができる液体性状検出装置を提供する。
【解決手段】燃料ポンプ9の運転状態、すなわち燃料ポンプ9駆動用電動機の運転状態としての駆動電流I、印加電圧Eおよび回転速度Nと、燃料温度Tを計測し、電動機の運転状態としての駆動電流I、印加電圧Eおよび回転速度Nから算出した駆動効率ηが燃料中のエタノール濃度Dに応じて変化することを利用して燃料中のエタノール濃度Dを判定している。これにより、コスト上昇を必要最小限度に抑え且つ設置スペースを節約しつつ、燃料中のエタノール濃度を判定可能なエタノール濃度検出機構Aを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、性状に応じて動粘性率が変化する液体の性状を検出する液体性状検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体の性状を検出する液体性状検出装置として、たとえば、自動車等のエンジンの燃料性状検出のために用いられているものがある。原油消費量低減、環境汚染抑止のために、自動車用燃料においても代替燃料としてガソリンとアルコールの混合液体の使用が拡大されつつある。この場合、液体性状検出装置は、燃料中のアルコール濃度検出のために用いられている。これは、ガソリンとアルコールとでは、理論空燃費、引火点、発熱量等が異なるので、エンジンを常に最適燃焼状態で運転するためには、燃料中のアルコール濃度を検出してそれに対応して空燃費や点火時期を調節する必要があるからである。
【0003】
このような目的に使用される液体性状検出装置としては、たとえば、燃料中に浸漬された一対の電極の静電容量値を測定して燃料の比誘電率を算出し、算出された燃料の比誘電率に基づいてアルコール濃度を検出するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−111669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される液体性状検出装置は、液体性状検出のために新たに装置を準備する必要があるためコスト上昇を招いてしまう。さらに、車両側において新規の液体性状検出装置を設置するスペースを確保する必要がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、新設部品点数を少なくして、コスト上昇を必要最小限度に抑え且つ設置スペースを節約することができる液体性状検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段およびその作用効果について以下に説明する。
【0008】
本発明の請求項1に記載の液体性状検出装置は、性状に応じて動粘性率が変化する液体を吸入し加圧して吐出するための電動機駆動式ポンプと、電動機の運転状態を検出する計測手段と、計測手段が検出した前記電動機の運転状態に基づいて液体の性状を算出する計算手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
性状に応じて動粘性率が変化する液体として、たとえばガソリンとアルコールの混合液体が考えられる。ガソリンの動粘性率は0.71mm/sであるのに対して、アルコールの動粘性率は1.35mm/sであり、両者は大きく異なっている。したがって、ガソリンとアルコールとを混合して生成された混合液体の動粘性率は、ガソリンとアルコールとの混合比率、すなわち液体の性状としてのアルコール濃度によって変化することになる。
【0010】
電動機駆動式ポンプを用いて液体を圧送する場合、ポンプの負荷としての仕事量、つまり電動機の仕事量、言い換えると電動機の運転状態は、ポンプの水頭、液体の動粘性率等に依存している。ここで、水頭が一定であると仮定した場合、電動機の運転状態、すなわち電動機の仕事量は、圧送する液体の動粘性率に依存している。このため、動粘性率の高い液体をポンプで圧送するときの電動機の仕事量は、動粘性率の低い液体をポンプで圧送するときの電動機の仕事量よりも大きくなる。
【0011】
以上のことから、電動機駆動式ポンプを用いて液体、たとえばガソリンとアルコールの混合液体を圧送する場合、ポンプの仕事量を表す指標としての電動機の運転状態がわかれば、それに基づいて液体の動粘性率を推定することができる。そして、推定した動粘性率に基づいて液体の性状としてのガソリンとアルコールの混合比率、すなわちアルコール濃度を算出することができる。
【0012】
本発明の請求項1に記載の液体性状検出装置は、電動機の運転状態を検出する計測手段と、計測手段が検出した前記電動機の運転状態に基づいて液体の性状を算出する計算手段と、を備えており、液体の性状を確実に検出することができる。
【0013】
また、本発明の請求項1に記載の液体性状検出装置は、液体を圧送するためのポンプの電動機の運転状態を検出することにより液体の性状を検出するものである。したがって、従来の液体性状検出装置のように、液体圧送用のポンプとは別に新規に検出装置を設置する必要がない。したがって、コスト上昇を必要最小限度に抑え且つ設置スペースを節約しつつ液体性状を検出可能な液体性状検出装置を提供することができる。
【0014】
本発明の請求項2に記載の液体性状検出装置は、ポンプから吐出される液体の圧力を一定に調節するための圧力調整手段を備え、電動機の運転状態は、電動機の電流、電圧および回転速度であることを特徴としている。
【0015】
上述の構成において、電動機の電流Iに電動機の電圧Eを乗ずると電動機が消費している電力、すなわち、ポンプによる全仕事量Winが得られる。一方、ポンプとしての正味仕事量Woutは、ポンプから吐出される液体の圧力をP、ポンプから吐出される液体の流量をQとすると、Wout=P×Qで表される。ここで、ポンプから吐出される液体の流量Qは電動機の回転速度Nとほぼ正比例関係にある。したがって、ポンプとしての正味仕事量Woutは、P×Nと表すことができる。ここで、[ポンプの正味仕事量Wout/ポンプの全仕事量Win]をポンプの駆動効率ηと定義すると、η=Wout/Win=(P×N)/(I×E)と表せる。ところで、請求項2に記載の液体性状検出装置は、ポンプから吐出される液体の圧力を一定に調節するための圧力調整手段を備えているので、ポンプから吐出される液体の圧力Pは常に一定であり定数と見做すことができる。したがって、ポンプの駆動効率η∝N/(I×E)と表すことができる。
【0016】
電動機駆動式のポンプにおいて、吸入・吐出する液体の動粘性率が変化した場合を考える。電動機に印加される電圧Eが一定の場合には、液体の動粘性率の大きさに応じて、電動機の電流Iおよび回転速度Nが変化する。したがって、液体の動粘性率の変化に応じて、ポンプの駆動効率η∝N/(I×E)が変化することになる。すなわち、電動機の電流、電圧および回転速度を計測し、それに基づいてポンプの駆動効率ηを算出することにより液体の動粘性率をも算出することができる。先に説明したように、液体の動粘性率は液体の性状に依存しているから、算出した動粘性率に基づいて液体の性状を検出することができる。
【0017】
以上により、電動機駆動式のポンプにおいて、電動機の電流、電圧および回転速度を計測することにより、それらに基づいて液体の性状を検出することができる。
【0018】
したがって、本発明の請求項2に記載の液体性状検出装置によれば、コスト上昇を必要最小限度に抑え且つ設置スペースを節約しつつ、液体の性状を正確に検出することが可能な液体性状検出装置を実現できる。
【0019】
本発明の請求項3に記載の液体性状検出装置は、液体の温度を検出する温度検出手段を備え、温度検出手段により検出された温度に基づいて、計算手段により算出された液体の性状を補正することを特徴としている。
【0020】
一般に、液体の動粘性率は液体の温度により変化する。そこで、上述した構成のように、液体の温度を温度検出手段により検出し、算出した液体の性状を液体の温度に基づいて補正すれば、液体の性状をより正確に検出することができる。
【0021】
本発明の請求項4に記載の液体性状検出装置は、液体はエタノールおよびガソリンの混合液であり、且つ前記性状はエタノール濃度であることを特徴としている。
【0022】
液体がエタノールおよびガソリンの混合液である場合、両液体成分の動粘性率が大きく異なっているので、液体の性状であるエタノール濃度の変化に対応した混合液の動粘性率の変化が顕著になる。したがって、エタノールおよびガソリンの混合液におけるエタノール濃度検出に、本発明による液体性状検出装置を適用すれば、本発明による液体性状検出装置の効果、すなわち、コスト上昇を必要最小限度に抑え且つ設置スペースを節約しつつ、確実に液体の動粘性率を算出できること、を確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態による液体性状検出装置であるエタノール濃度検出機構Aを備えているエンジン1の構成を示す模式図である。
【図2】駆動効率ηとエタノール濃度Dとの関係を示すグラフである。
【図3】タノール濃度検出機構Aによるエタノール濃度Dの判定処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明に係る液体性状検出装置を、自動車に搭載され内燃機関であるエンジン1に適用した場合を例に、各図に基づいて説明する。
【0025】
エンジン1は、燃料としてガソリンおよびエタノールの混合液体を用いて運転される火花着火機関である。エンジン1が搭載された自動車の運転者は、燃料補給時にガソリン、エタノール、および定められた混合比のガソリンおよびエタノールの混合液体のいずれかを自由に選択して給油できる。このため、当該自動車の燃料タンク8内の燃料中におけるエタノール濃度は、当該自動車の燃料補給前後で変化する。たとえば、燃料タンク8内へガソリンが補給された場合、給油後の燃料中のエタノール濃度は低下する。一方、燃料タンク8内へエタノールが補給された場合、給油後の燃料中のエタノール濃度は上昇する。すなわち、燃料タンク8内の燃料中のエタノール濃度は、0%、つまりガソリンのみ、からエタノール濃度100%、つまりエタノールのみ、までの範囲で変化する。
【0026】
ところで、ガソリンとエタノールとでは、理論空燃費、発熱量等が異なっている。このため、ガソリンおよびエタノールの混合液の理論空燃費および発熱量も、燃料のエタノール濃度に応じて変化することになる。したがって、ガソリンおよびエタノールの混合液体を燃料とするエンジンの場合、燃料中のエタノール濃度如何によらず燃焼状態を最適化する、つまり燃焼効率を高めつつ排気に含まれる有害成分量を少なくするためには、エンジンの制御パラメータ、たとえば空燃比、点火時期等を使用中の燃料の性状であるエタノール濃度に適合にさせる必要がある。本発明の一実施形態による液体性状検出装置は、上述したような必要性に基づいて燃料中のエタノール濃度検出を行うためのものである。本発明の一実施形態による液体性状検出装置であるエタノール濃度検出機構Aは、エンジン1において、エンジン1への燃料供給量および吸入空気量を制御するエンジン制御システム2に組み込まれている。
【0027】
先ず、エンジン制御システム2の構成について説明する。エンジン制御システム2は、エンジン1への燃料供給量および吸入空気量を運転条件に対応して最適に制御するものである。すなわち所望のトルクを発生しつつ燃費を良好に且つ排気中の有害成分量を少なくするように制御するものである。エンジン制御システム2は、図1に示すように、燃料を貯蔵する燃料タンク8、燃料タンク8内の燃料をエンジン1圧送するポンプモジュールM、ポンプモジュールMから送出された燃料を燃料レール13へ供給する配管である燃料ライン12、ポンプモジュールMから送出された所定圧力の燃料を蓄えると共にエンジン1の気筒ごとに対応してエンジン1の吸気管17に取り付けられたインジェクタ14へ分配する燃料レール13、燃料レール13から供給された燃料を吸気管17内へ噴射するインジェクタ14、吸気管17の途中に配置されエンジン1の吸入空気量を調節するスロットルバルブ15、スロットルバルブ15の開度を制御するスロットルバルブアクチュエータ16、エンジン1の燃焼室内に望んで配置された点火プラグ18、マイクロコンピュータ等から構成された制御装置3等から構成されている。制御装置3は、各種センサから送られてくる検出信号からエンジン1の運転状態および燃料中のエタノール濃度Dを判定し、それらに基づいて、インジェクタ14の燃料噴射量および噴射時期制御、点火プラグ18の点火時期制御、スロットルバルブアクチュエータ16による吸入空気量制御等を行っている。
【0028】
ポンプモジュールMは、図1に示すように、燃料タンク8内に配置されている。ポンプモジュールMは、上面が開口している容器であるサブタンク11内に、燃料ポンプ9、燃料ポンプ9から吐出される燃料の圧力を所定圧力に調節する圧力調節手段であるプレッシャレギュレータ10、燃料温度を検出する温度検出手段である温度センサ7、および燃料ポンプ9から吐出された燃料を濾過して異物を捕集除去するための図示しない燃料フィルタ等を一体的に収容して形成されている。
【0029】
燃料ポンプ9は、電動機(図示せず)によりインペラ(図示せず)を回転させる遠心式ポンプとして形成されている。燃料ポンプ9駆動用電動機としては、たとえば整流子式直流モータが用いられている。燃料ポンプ9は、電動機(図示せず)の回転速度を検出する回転センサ6を備えている。回転センサ6は、たとえば電磁ピックアップ式のものが用いられている。
【0030】
ポンプ9の電動機(図示せず)に電力を供給する電気回路中には、図1に示すように、電流センサ4および電圧センサ5が接続されている。電流センサ4は、燃料ポンプ9の電動機(図示せず)を流れる電流を測定するものであり、電圧センサ5は、燃料ポンプ9の電動機(図示せず)に印加される電圧を測定するものである。
【0031】
電流センサ4、電圧センサ5、回転センサ6および温度センサ7からの各検出信号は、図1に示すように、制御回路3へ入力されている。
【0032】
次に、本発明の一実施形態による液体性状検出装置であるエタノール濃度検出機構Aについて説明する。エタノール濃度検出機構Aは、従来の静電容量式エタノール濃度センサや透過光式エタノール濃度センサのような独立した専用機能部品として形成されるのではなく、燃料ポンプ9を駆動する電動機の運転状態に係る各種パラメータを検出し、それらに基づいてエタノール濃度Dを検出するものである。
【0033】
以下に、本発明の一実施形態による液体性状検出装置であるエタノール濃度検出機構Aによるエタノール濃度Dの判定原理、および判定プロセスについて説明する。
【0034】
初めに、エタノール濃度検出機構Aによるエタノール濃度Dの判定原理について説明する。電動機駆動式の燃料ポンプ9を用いて液体を圧送する場合、燃料ポンプ9への入力、つまり燃料ポンプ9が作動するために必要な仕事量である全仕事量Winは、電動機の消費電力であり、消費電流Iと印加電圧Eとの積となり、
(数1) Win=I×E
と表される。一方、燃料ポンプ9としての出力、つまり正味仕事量Woutは、燃料ポンプ9から吐出される燃料の圧力Pと燃料ポンプ9から吐出される燃料の流量Qとの積となり、Wout=P×Qと表される。ところで、燃料ポンプ9はインペラ式の遠心式ポンプであることから、燃料ポンプ9から吐出される燃料の流量Qは電動機の回転速度Nとほぼ正比例関係にある。したがって、燃料ポンプ9の正味仕事量Woutは、
(数2) Wout=P×N
と表すことができる。ここで、ポンプの正味仕事量Woutとポンプの全仕事量Winとの比を燃料ポンプ9の駆動効率ηと定義すると、駆動効率ηは、
(数3) η=Wout/Win=(P×N)/(I×E)
と表せる。エタノール濃度検出機構Aが適用されているエンジン1では、ポンプモジュールMがプレッシャレギュレータ10を備えており、燃料ポンプ9から吐出される燃料圧力は常に一定値に維持されている。したがって、燃料の圧力Pは変数ではなく定数として扱えるので、
(数4) η∝N/(I×E)
なる関係が成り立つことになる。
【0035】
一方、燃料ポンプ9への入力である全仕事量Win、および燃料ポンプ9の出力である正味仕事量Woutは、燃料の動粘性率νに依存しており、燃料の動粘性率νが変化すると、それに応じて全仕事量Win、および正味仕事量Woutも変化し、駆動効率ηが変化する。また、エタノール濃度検出機構Aが適用されているエンジン1では、燃料としてガソリンとエタノールの混合液体を用いているので、燃料の動粘性率νは燃料中のエタノール濃度Dによって変動する。したがって、予め、駆動効率ηと燃料の動粘性率との関係、および燃料の動粘性率ηと燃料のアルコール濃度Dとの関係を調べてマップを作成しておけば、燃料ポンプ9の運転状態データ(I,E,N)に基づいて駆動効率ηを算出し、上述のマップを参照して、燃料中のエタノール濃度Dを判定することができる。あるいは、直接、駆動効率ηとエタノール濃度Dとの関係を調べてマップを作成しておけば、燃料ポンプ9の運転状態データ(I,E,N)に基づいて算出された駆動効率ηと、駆動効率ηとエタノール濃度Dとの関係を表すマップとによりエタノール濃度Dを判定することができる。
【0036】
図2には、発明者が調査した駆動効率ηとエタノール濃度Dとの関係の一例を示す。図2において、縦軸には駆動効率ηを、横軸にはエタノール濃度Dを示している。駆動効率ηとエタノール濃度Dとの間には、図2に示すように、明確な相関関係がある。すなわち、エタノール濃度Dが0%のときに駆動効率ηは最大となり、エタノール濃度Dが高くなるに連れて駆動効率ηが減少していく。
【0037】
燃料の動粘性率νは燃料の温度によっても変化する。そこで、エタノール濃度検出機構Aでは、温度センサ7により検出した燃料温度に基づいて動粘性率νを補正し、補正した動粘性率νに基づいて燃料中のエタノール濃度Dを検出している。これにより、エタノール濃度Dをより正確に検出することができる。エタノール濃度Dの温度補正は、たとえば、駆動効率ηとエタノール濃度Dとの関係を表すマップを、燃料温度ごとに作成しておき、測定された燃料温度を挟む2つのマップにより補間することにより行われる。
【0038】
なお、図1では、分かり易さのために、電流センサ4および電圧センサ5を制御装置3から独立して表示しているが、本発明の一実施形態による液体性状検出装置であるエタノール濃度検出機構Aにおいては、電流センサ4および電圧センサ5は制御装置3内に組み込まれている。
【0039】
また、本発明の一実施形態による液体性状検出装置であるエタノール濃度検出機構Aにおいては、燃料ポンプ9への印加電圧Eは一定となるように、たとえば12Vとなるように制御装置3により制御されている。
【0040】
次に、本発明の一実施形態による液体性状検出装置であるエタノール濃度検出機構A
によるエタノール濃度Dの判定プロセスについて説明する。エタノール濃度検出機構A
によるエタノール濃度Dの判定プロセスは、制御装置3内において制御装置3を構成するマイクロコンピュータにより実行される。なお、制御装置3は、エタノール濃度Dの判定だけではなく、エンジン1の運転制御も行っている。すなわち、判定したエタノール濃度Dや、アクセルポジションセンサ(図示せず)からの検出信号、エンジン回転センサ(図示せず)からの検出信号、トランスミッションのシフトポジションセンサ(図示せず)からの検出信号等に基づいて、インジェクタ14の燃料噴射量および噴射時期制御、点火プラグ18の点火時期制御、スロットルバルブアクチュエータ16による吸入空気量制御等を行っている。
【0041】
以下に、エタノール濃度検出機構Aによるエタノール濃度Dの判定処理について、図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0042】
ステップ101において、各種データを初期化する。
【0043】
ステップ102において、燃料ポンプ9駆動電動機(図示せず)の電流I、電圧Eおよび回転速度Nを読み込むとともに、燃料温度Tを読み込む。
【0044】
ステップ103において、η=N/(I×E)により駆動効率ηを算出する。
【0045】
ステップ104において、駆動効率ηおよび燃料温度Tから、駆動効率ηとエタノール濃度Dとの関係を表すマップを参照してエタノール濃度Dを判定する。以上でエタノール濃度検出機構Aによるエタノール濃度Dの判定処理が終了する。
【0046】
以上説明した本発明の一実施形態による液体性状検出装置であるエタノール濃度検出機構Aは、燃料ポンプ9の運転状態、すなわち燃料ポンプ9駆動用電動機の運転状態としての駆動電流I、印加電圧Eおよび回転速度Nと、燃料温度Tを計測し、それらに基づいて燃料中のエタノール濃度Dを判定している。すなわち、電動機の運転状態としての駆動電流I、印加電圧Eおよび回転速度Nから算出した駆動効率ηが燃料中のエタノール濃度Dに応じて変化することを利用して燃料中のエタノール濃度Dを判定している。
【0047】
従来の液体性状検出装置としてのエタノール濃度センサとしては、エタノール濃度によって特定の波長光の透過率が変化することを利用した透過光式センサ、あるいは、エタノール濃度によって電極間の静電容量が特定の波長光の透過率が変化することを利用した静電容量式センサ等が用いられている。これらは、新たにセンサを製作する必要があること、エンジンの燃料供給経路途中に液体性状検出装置を設置するスペースを確保しなければならないことから、製作コスト増大を招とともに、取付けスペースを確保するのが困難である等の問題点があった。
【0048】
これに対して、本発明の一実施形態による液体性状検出装置であるエタノール濃度検出機構Aは、もともとエンジンが必ず備えている部品である燃料ポンプを用い、その運転状態を計測し、それに基づいてエタノール濃度を判定するものである。このため、エンジン側に新たな設置スペースを見つけることは不要であり、コスト上昇もわずかである。したがって、コスト上昇を必要最小限度に抑え且つ設置スペースを節約しつつ、燃料中のエタノール濃度を判定可能なエタノール濃度検出機構Aを実現することができる。
【0049】
なお、以上説明した本発明の一実施形態によるエタノール濃度検出機構Aにおいては、燃料ポンプ9駆動用電動機を、整流子式直流モータとしているが、この方式の電動機に限る必要は無く、他の方式の電動機を適用しても良い。たとえば、ブラシレスモータを用いても良い。この場合、ブラシレスモータはパルス電圧により駆動されるが、燃料ポンプ駆動用電動機の全仕事量Winは、平均電流および平均電圧に基づいて算出しても良いし、あるいはブラシレスモータ駆動回路の消費電力としてもよい。
【0050】
また、以上説明した、本発明の一実施形態による液体性状検出装置であるエタノール濃度検出機構Aでは、液体をガソリンとエタノールの混合液体とし、性状をエタノール濃度としているが、このような組み合わせに限る必要はない。液体の性状の変化に応じて、液体を圧送するポンプの運転状態が変化するような液体に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 エンジン
2 燃料供給システム
3 制御装置(エタノール濃度検出機構A、液体性状検出装置)
4 電流センサ(エタノール濃度検出機構A、液体性状検出装置)
5 電圧センサ(エタノール濃度検出機構A、液体性状検出装置)
6 回転センサ(エタノール濃度検出機構A、液体性状検出装置)
7 温度センサ(エタノール濃度検出機構A、液体性状検出装置)
8 燃料タンク
9 燃料ポンプ(液体性状検出装置)
10 プレッシャレギュレータ(圧力調整手段)
11 サブタンク
12 燃料ライン
13 燃料レール
14 インジェクタ
15 スロットルバルブ
16 スロットルバルブアクチュエータ
17 吸気管
18 点火プラグ
19 イグニッションスイッチ
20 バッテリ
A エタノール濃度検出機構
D エタノール濃度
E 電圧
I 電流
M ポンプモジュール
N 回転速度
P 圧力
Q 流量
Win 全仕事量
Wout 正味仕事量
η 駆動効率
ν 動粘性率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
性状に応じて動粘性率が変化する液体を吸入し加圧して吐出するための電動機駆動式のポンプと、
前記電動機の運転状態を検出する計測手段と、
前記計測手段が検出した前記電動機の前記運転状態に基づいて前記液体の前記性状を算出する計算手段と、を備えることを特徴とする液体性状検出装置。
【請求項2】
前記ポンプから吐出される液体の圧力を一定に調節するための圧力調整手段を備え、
前記電動機の前記運転状態は、前記電動機の電流、電圧および回転速度であることを特徴とする請求項1に記載の液体性状検出装置。
【請求項3】
前記液体の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記温度検出手段により検出された前記温度に基づいて、前記計算手段により算出された前記液体の前記性状を補正することを特徴とする請求項1または請求項2のどちらか一つに記載の液体性状検出装置。
【請求項4】
前記液体はエタノールおよびガソリンの混合液であり、且つ前記性状はエタノール濃度であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の液体性状検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−181284(P2010−181284A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25209(P2009−25209)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)