説明

液体気化装置

【課題】 気化対象溶液を安価に安定して気化させる装置を提供すること。
【解決手段】
空気を吸引するために用いられる軸流ファン(7)と、気化対象溶液(13)を貯蔵する水槽(12)と、軸流ファン7により発生した渦巻き風(14)を絞り込み、速度を上げて水槽(12)の周辺部に誘導してするための風洞(9)とを含み、風洞(9)による渦巻き風(15)により気化対象溶液(13)の表面に渦巻き波浪(16)を発生させて気化を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦巻き風力を利用して、液体を気化させるための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を気化させるには超音波による方法、空気圧を利用したノズルによる方法、加熱蒸発方法などが存在している。しかし、超音波とノズルの場合、ミストサイズが大きく溶液の消費が大きく無駄が大きい。加熱蒸発方法では多くのエネルギーが必要であり温風による環境への影響もある。加湿フィルターに風を当て、フィルターが吸い上げた溶液を気化させる方法もある。
【特許文献1】特許公開2008−219026
【特許文献2】特許公開2006−272120
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
比較的高い濃度の溶液の微細ミストを発生させるには、対象溶液を希釈してから前記各種方法で行っている。そのため、必要な量をミスト化するのに多くの無駄なエネルギーを要している。高濃度溶液のままでのミスト化は装置の耐久性などの点から困難であった。
【0004】
また、加湿フィルターに風を当る方法では、分子レベルの微細ミストを少ないエネルギーで得ることができるが、加湿フィルターが気化対象溶液を毛細管現象で吸い上げるため、高濃度溶液の場合、加湿フィルターの毛細管を詰まらせて気化能力を低下させるため、気化対象溶液が制限される問題があった。
【0005】
また、常温状態で液面に風を当て液表面から気化させる場合、気化量を増やすためには広い液表面積を必要とし、装置が大きくなり実用的ではなかった。
【0006】
また、ファンの停止時に、気化した気体によりファンの駆動部や電子回路が腐食などの損傷を受け易すかった。そのため、ファンを防水構造にするとか、ファンの羽根とモーターを分離したベルト駆動方式にするなど高価格化に問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1に記載の発明は、液体気化装置に係わり、空気を吸引するために用いられる軸流ファンと、気化対象溶液を貯蔵する水槽と、軸流ファンにより発生した渦巻き風を誘導して渦巻き波浪を発生させる風洞とを含むことを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、風洞の形状はファンによる渦巻き風を絞り込み、さらに水槽の周辺部に誘導するように作られている。渦巻き風は気化対象溶液面に渦巻き波浪を発生させ、気化対象溶液の気化面積を増加させて気化量増やし、さらに渦巻き波浪が気化対象溶液を回転させて攪拌することができる。気化された気体は排気ダクト11を通り排気口10から放出される。
【0009】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、軸流ファンを定常運転時以外に弱運転にして送風を持続させ、気化化された気体がファンに付着して損傷を与えることを防ぐことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、オン・オフタイマーを組み込んだコントローラーを使用することで、オン時には軸流ファンを強運転、オフ時には軸流ファンを停止せずに弱運転で送風を持続するため、気化した気体がファンに付着しないので、ファンの損傷を防ぐことができる。
【0011】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、水槽を透明な材料にし、さらに風洞に気化対象溶液面を照射するように発光ダイオードを備え、気化対象溶液と水槽を通過した陰影を下方向に写し出すことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、水槽を透明な材料にすることで、気化対象溶液の消費状況を外部から目視で確認ができる。さらに、風洞に備えた発光ダイオードが気化対象溶液と水槽を通過した揺らぎのある陰影を下方に写し出し、癒し効果を提供できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液体気化装置にあっては、風洞を使用した渦巻き風力による渦巻き波浪による気化量は、同一条件の風洞の無い場合に比べ50%以上多いことが測定された。(図4)
また、風洞により気化対象溶液の波浪による回転が風洞の無い場合に比べて早いことも測定された。また、エネルギー源はコントローラーの電子回路と小型の軸流ファンだけのため、従来のノズル方式や熱放散の消費電力に比べて数分の1と大幅に少なく、省エネルギーを実現できる。
【0014】
また、気化量は気化対象溶液の濃度に影響され難くい。さらに、フィルターなどの消耗媒体を使用していないため、気化対象溶液の種類に影響されずに装置の耐久性が高い。
【0015】
また、コントローラーがファンの定常運転時(強運転)以外を弱運転にして送風を持続させることで、気化した腐食性の気体によるファンの損傷を防ぐことができる。
【0016】
また、水槽を透明なガラス製にすることで、気化対象溶液の消費状況を外部から目視で確認ができる。
【0017】
また、本気化装置を高所に設置することで、風洞内に取り付けた発光ダイオードの光が気化対象溶液と透明な水槽を通過して床面に揺らぎのある陰影を映し出し癒し効果を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明に係わる液体気化装置の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係わる液体気化装置を模擬的に示す概略断面図であり、装置のカバー1の頂部に空気を取り込むための吸気口3と吸気フィルター2を備え、さらに電源の取り込み用の電源コネクター4とファンを制御するコントローラー5を備えている。
【0019】
ファン取付板6は軸流ファン7と吸気ダクト8と排気ダクト11を備え、また軸流ファン7の風下側に取り込んだ空気を誘導する風洞9を配置している。
【0020】
ファン取付板6はカバー1にネジで固定され、水槽12にのせる。水槽12には気化対象溶液13を規定の量だけ入れる。規定の量とは水槽12の気化対象溶液13の液面と風洞9の下端との間に風洞9の高さ程度の空間を残す量を指す。
【0021】
電源が入ると軸流ファン7が回転し、ファンの羽根の形状と回転方向により右又は左回転の渦巻き風14が発生する。風洞9はこの渦巻き風を絞り込み、速度を上げながら水槽12の周辺部に渦巻き風15を誘導し、気化対象溶液13に渦巻き波浪16を発生させる。この波浪が気化対象溶液13を回転させる。溶液の回転17は混合溶液の場合には気化対象溶液13を攪拌して溶液の分離を防ぐことができる。
【0022】
図2は、風洞の働きを模擬的に示したもので、風洞9は風洞取付板91に固定された風洞外筒92と、風洞内筒支持板94により風洞外筒92に固定された風洞内筒93から構成されている。軸流ファン7による渦巻き風15が風洞9の外筒92と内筒93との間を通る際に速度を増し、水槽の周辺部に広がっていき、気化対象溶液13に衝突し渦巻き波浪16を発生させる。
【0023】
図3は、本発明の液体気化装置を透明な設置台19にのせて、発光ダイオード96による揺らぎのある陰影の発生を模擬的に示したもので、風洞の内筒93の内側に下向に発光ダイオード96を配置し、発光ダイオード96の光が気化対象溶液13の波浪を通過し、さらに透明な水槽12の底を通過して設置台19の底部に、発光ダイオードによる揺らぎのある陰影を写し、癒しを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係わる液体気化装置を模擬的に示す概略断面図である。
【図2】本発明に係わる風洞の働きを示す風洞の概略断面図である。
【図3】本発明に係わる発光ダイオードの光による波浪の陰影の発生を模擬的に示す概略断面図である。
【図4】本発明装置による気化量を風洞の有無による気化量の差を測定した結果である。
【符号の説明】
【0025】
1 カバー
2 吸気フィルター
3 吸気口
4 電源コネクター
5 コントローラー
6 ファン取付板
7 軸流ファン
8 吸気ダクト
9 風洞
10 排気口
11 排気ダクト
12 水槽
13 気化対象溶液
14 ファンによる渦巻き風
15 風洞により発生した渦巻き風
16 渦巻き風により発生した波浪
17 波浪により発生した溶液の回転
18 気化した液体分子
19 透明な設置台
91 風洞取付板
92 風洞外筒
93 風洞内筒
94 風洞内筒支持板
95 渦巻き風の広がり方向
96 発光ダイオード
97 灯かりの広がり
98 波浪の揺らぎを写す陰影

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を吸引するために用いられる軸流ファンと、気化対象溶液を貯蔵する水槽と、軸流ファンにより発生した渦巻き風を誘導して渦巻き波浪を発生させる風洞とを含むことを特徴とする液体気化装置。
【請求項2】
軸流ファンを定常運転時以外は弱運転にして送風を持続させ、気化化された気体がファンに付着して損傷を与えることを防ぐことを特徴とする請求項1に記載の液体気化装置。
【請求項3】
水槽を透明な材料にし、さらに風洞に気化対象溶液面を照射するように発光ダイオードを備え、気化対象溶液と水槽を通過した陰影を下方向に写し出すことを特徴とする請求項1に記載の液体気化装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−110674(P2010−110674A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283933(P2008−283933)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(304031553)
【Fターム(参考)】