説明

液体現像剤

【課題】本発明の目的は、オフセットの防止と定着強度の向上とを両立させた液体現像剤を提供することにある。
【解決手段】本発明の液体現像剤は、トナー粒子と絶縁性液体とを少なくとも含み、該トナー粒子は、樹脂と該樹脂中に分散された色材とを含み、該絶縁性液体は、炭素数11〜16の脂肪族飽和炭化水素が90質量%以上を占め、かつ炭素数11〜12の脂肪族飽和炭化水素が20〜60質量%を占めることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、デジタル印刷機等の電子写真方式の画像形成装置に用いられる液体現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、感光体等の静電潜像担持体に原稿画像や画像データに基づいた画像を露光させることによって静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーで現像して可視トナー像とし、そのトナー像を記録材に転写しこれを定着させることにより、目的とする画像を形成する。
【0003】
このような電子写真方式による現像方式は、乾式現像法と湿式現像法とに分けることができる。乾式現像法は、トナー粒子のみを用いて現像を行なうのに対し、湿式現像法では、電気絶縁性液体(単に「絶縁性液体」と記す。なお、このような絶縁性液体はキャリア液とも呼ばれる)にトナー粒子を分散させた液体現像剤(湿式現像剤とも呼ばれる)を用いて現像が行なわれる。湿式現像法によれば、乾式現像法に比べてより小粒径なトナー粒子を使用できるので、高精細な画像を得ることができる。
【0004】
たとえば、乾式現像法のトナー粒子の粒径は、5μm程度が限界であるが、湿式現像法では、トナー粒子の粒径をサブミクロンオーダーまで小粒径化することが可能である。また、湿式現像法では、トナー粒子の消費量の低減化も期待できる。
【0005】
一方、湿式現像法の液体現像剤に用いられる絶縁性液体は、静電潜像を乱さない程度の抵抗値(1011〜1016Ω・cm程度)のものが良く、さらに、臭気および毒性が無い溶媒が好ましい。一般的に、このような絶縁性液体としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン等が挙げられるが、特に臭気、無害性、コストの観点から、直鎖状または分岐状の脂肪族飽和炭化水素(ノルマルパラフィン系溶媒またはイソパラフィン系溶媒)が好適に用いられている。
【0006】
たとえば、特開2007−041162号公報(特許文献1)は、実施例において重量平均分子量250(炭素数18相当)の第1の流動パラフィン(脂肪族飽和炭化水素)と重量平均分子量800(炭素数57相当)の第2の流動パラフィンを混合して液体現像剤の絶縁性液体として用いており、定着強度が良好であるという結果を示している。しかしながら、この定着は、オーブンを用いて120℃で30分間熱定着するという条件が採用されており、極めて大きなエネルギーが用いられることから現実的な定着を行なったものではない。したがって、現実的な定着エネルギーでは、この絶縁性液体は十分に揮発できないために、その定着強度が弱くなることが予想される。
【0007】
また、特表平07−502604号公報(特許文献2)は、実施例において脂肪族炭化水素の市販品であるアイソパーG(炭素数10:44%、炭素数11−12:56%)に少量の鉱物性オイル(炭素数18以上)を添加して液体現像剤の絶縁性液体としている。この絶縁性液体は、非常に揮発性が高いアイソパーGと、非常に揮発性の低い鉱物性オイルとの組み合わせとなっており、鉱物性オイルが存在しないかその添加量が極微量だとオフセットが発生し、また鉱物性オイルの添加量を増やすと定着強度が弱くなり、両者を両立させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−041162号公報
【特許文献2】特表平07−502604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電子写真方式の画像形成装置において、画像は、記録材上に液体現像剤を熱定着させることにより形成される。液体現像剤を熱定着させる場合、絶縁性液体がトナー粒子表面に介在することによりオフセット(トナー粒子が定着ローラに転写され定着ローラを汚染する現象)の防止の作用を奏する反面、絶縁性液体がトナー粒子の内部もしくは紙との界面に介在すると、定着強度を弱めることになる。したがって、液体現像剤においては、オフセットの防止と定着強度の向上とを両立させることが要求されているが、この要求を十分に満たす液体現像剤は未だ知られていない。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、オフセットの防止と定着強度の向上とを両立させた液体現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者の研究によれば、炭素数15以上の直鎖状または分岐状の脂肪族飽和炭化水素からなる絶縁性液体を用いた液体現像剤では、熱定着でトナー粒子内部の絶縁性液体が十分に揮発できないために定着強度を低下させる傾向を示すことが明らかとなった。一方、炭素数12以下の直鎖状または分岐状の脂肪族飽和炭化水素からなる絶縁性液体を用いた液体現像剤では、熱定着でトナー粒子表面の絶縁性液体が揮発してなくなるためにオフセットが発生する傾向を示すことも明らかとなった。本発明は、このような知見に基づき、さらに鋭意検討を重ねることにより完成されたものである。
【0012】
すなわち、本発明の液体現像剤は、トナー粒子と絶縁性液体とを少なくとも含み、該トナー粒子は、樹脂と該樹脂中に分散された色材とを含み、該絶縁性液体は、炭素数11〜16の脂肪族飽和炭化水素が90質量%以上を占め、かつ炭素数11〜12の脂肪族飽和炭化水素が20〜60質量%を占めることを特徴とする。
【0013】
また、上記絶縁性液体は、炭素数15〜16の脂肪族飽和炭化水素が40〜70質量%を占めることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液体現像剤は、上記のような構成を有することにより、オフセットの防止と定着強度の向上とを両立させることができるという優れた効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電子写真方式の画像形成装置の概略概念図である。
【図2】電子写真方式の画像形成装置の定着部を示す概略概念図である。
【図3】電子写真方式の画像形成装置の定着部を示す別の概略概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態ついて、さらに詳細に説明する。
<液体現像剤>
本実施の形態の液体現像剤は、トナー粒子と絶縁性液体とを少なくとも含む。かかる液体現像剤は、これらの成分を含む限り、他の任意の成分を含むことができる。他の成分としては、たとえば分散剤、荷電制御剤、増粘剤等を挙げることができる。
【0017】
液体現像剤の配合割合は、たとえばトナー粒子を10〜50質量%とし、残部を絶縁性液体等とすることができる。トナー粒子の配合量が10質量%未満では、トナー粒子の沈降が生じやすく、長期保管時の経時的な安定性が低下する傾向を示し、また必要な画像濃度を得るためには多量の液体現像剤を供給する必要があり、紙等の記録材上に付着する絶縁性液体の量が増加し、定着時にそれを乾燥させる必要が生じるとともに発生したその蒸気により環境上の問題が生じる可能性がある。一方、トナー粒子の配合量が50質量%を超えると、液体現像剤の粘度が高くなりすぎ、製造上および取り扱い上、困難になる傾向を示す。
【0018】
また、液体現像剤の粘度は、25℃において0.1mPa・s以上10000mPa・s以下とすることが好ましい。10000mPa・sを超えると、液体現像剤を撹拌することが困難となり、絶縁性液体中にトナー粒子を均一に分散させることができず液体現像剤を得るための装置面での負担が大きくなる場合がある。一方、0.1mPa・s未満では、トナー粒子の沈降が生じやすく、長期保管時の経時的な安定性が低下し、画像濃度が不安定となる場合がある。
【0019】
このような液体現像剤は、電子写真方式の画像形成装置用の現像剤として有用である。
<トナー粒子>
本実施の形態の液体現像剤に含まれるトナー粒子は、樹脂と該樹脂中に分散された色材とを含む。かかるトナー粒子は、これらの成分を含む限り、他の任意の成分を含むことができる。他の成分としては、たとえばワックス、分散剤(顔料分散剤)、荷電制御剤等を挙げることができる。
【0020】
上記樹脂は、バインダー樹脂とも呼ばれ、熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、その組成は特に限定されず、この種の用途に使用される従来公知の樹脂を特に限定なく使用することができる。たとえばポリエステル樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン共重合体(特にエチレン系共重合体)、エポキシ樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等を用いることができる。
【0021】
また、上記樹脂は、その酸価が高い方が好ましく、たとえば20mgKOH/g〜100mgKOH/g程度が好ましい。酸価が高いと、紙との接着性が向上するだけでなく、3次元的な構造を形成することにより絶縁性液体による可塑化が防止できるためである。絶縁性液体により可塑化されると、定着強度が低下する恐れがあるが、これを防止することが可能となる。
【0022】
一方、上記色材としては、公知の顔料や染料を用いることができる。たとえば、顔料のうち有機顔料としては、カーボンブラック、フタロシアニン系、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ系等のアゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ペリノン系、チオインジゴ系、イソインドリン系等を挙げることができる。より具体的には、オルトアニリンブラック、トルイジンオレンジ、パーマネントカーミンFB、ファーストイエローAAA、ジスアゾオレンジPMP、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、キナクリドンレッド、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、60、62、66、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、209、220、221、254、255、268、269、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、138、139、147、150、168、174、176、180、181、191、ジオキサンバイオレット、ピクトリアピュアブルー、アルカリブルートナー、アルカリブルーRトナー、ファーストイエロー10G、オルトニトロアニリンオレンジ、トルイジンレッド等が挙げられる。また無機顔料としては、ファーネストブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、C.I.ピグメントブラック及びオルトアニリンブラック、バリウムレッド2B、カルシウムレッド2B、ピグメントスカーレッド3Bレーキ、アンソシン3Bレーキ、ローダミン6Bレーキ、メチルバイオレットレーキ、ベーシックブルー6Bレーキ、ファーストスカイブルー、レフレックスブルーG、ブリリアントグリーンレーキ、フタロシアニングリーンG、紺青、群青、酸化鉄粉、亜鉛華、炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、アルミナホワイト、アルミニウム粉、昼光蛍光顔料、パール顔料等を挙げることができる。
【0023】
なお、顔料の分散性を向上させるために、塩基性もしくは酸性に処理した顔料誘導体を用いても良い。このような顔料は、上記樹脂に分散され、その粒径を50〜300nmとして分散することが好ましい。その粒径が300nmを超えると、一定の付着量で十分な着色力および隠ぺい力を得ることが困難な場合があり、定着後において透明性が低下する場合がある。一方、その粒径が50nm未満では、製造が困難となる場合がある。
【0024】
このような顔料の配合量は、上記樹脂に対して8〜50質量%、好ましくは10〜30質量%とすることが好適である。8質量%未満では所望の濃度が得られない場合があり、また50質量%を超えると上記樹脂への分散性や定着性を損なう恐れがある。好適な配合量は色種によって異なり、上記樹脂に対してたとえばシアン顔料では10〜40質量%、マゼンタ顔料では15〜50質量%、イエロー顔料では10〜40質量%とすることが好ましい。また、好適な配合量は粒径によっても異なり、小粒径になるほど顔料の配合量を高くすることができる。
【0025】
このようなトナー粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、高画質の画像を得ることを目的として、0.1〜5μm、より好ましくは1〜3μmとすることが好適である。トナー粒子の粒径が0.1μm未満では現像性が大きく低下し、粒径が5μmを超えると画像の品質が低下する傾向を示す。なお、本実施の形態でいう粒径とは、平均粒径を意味し、各種の粒度分布計により体積平均粒径として特定することができる。
【0026】
<絶縁性液体>
本実施の形態の液体現像剤に含まれる絶縁性液体は、炭素数11〜16の脂肪族飽和炭化水素が90質量%以上を占め、かつ炭素数11〜12の脂肪族飽和炭化水素が20〜60質量%(20質量%以上60質量%以下)を占めることを特徴とする。液体現像剤がこのような絶縁性液体を含むことにより、この液体現像剤を熱定着させる際に、オフセットの防止と定着強度の向上とを両立させることができるという優れた効果が示される。これは、炭素数11〜12の脂肪族飽和炭化水素が上記の割合で含まれることにより、主として熱定着時に適度に揮発して定着強度を向上させるという機能を担い、またその残部を炭素数13〜16の脂肪族飽和炭化水素が占めることにより、主として熱定着時において適度にトナー粒子を被覆することによりオフセットを防止するという機能を担い、これら両者が相乗的に作用することにより上記のような優れた効果が示されるものと推測される。
【0027】
本実施の形態の絶縁性液体は、不可避不純物を除き炭素数11〜16の脂肪族飽和炭化水素のみにより構成されることが好ましい。ここで、本実施の形態でいう脂肪族飽和炭化水素は絶縁性、臭気、無害性、コスト等の観点から、直鎖状または分岐状の脂肪族飽和炭化水素(すなわちノルマルパラフィン系溶媒またはイソパラフィン系溶媒)であることが好ましい。なお、このような絶縁性液体において、炭素数11〜16の脂肪族飽和炭化水素の占める割合が90質量%未満になると、オフセットの防止と定着強度の向上という効果が示されなくなる。
【0028】
さらに、このような絶縁性液体は、炭素数11〜12の脂肪族飽和炭化水素が20〜60質量%を占めることを要する。この含有量が20質量%未満になると、絶縁性液体の揮発が不十分となって定着強度が弱くなる傾向があるという不都合を生じる。また、その含有量が60質量%を超えると、絶縁性液体が揮発して少なくなることによってオフセットが発生する傾向があるという不都合を生じる。このような炭素数11〜12の脂肪族飽和炭化水素のより好ましい含有量は、30〜50質量%である。
【0029】
一方、上記のような構成の絶縁性液体において、炭素数15〜16の脂肪族飽和炭化水素は40〜70質量%を占めことが好ましい。炭素数15〜16の脂肪族飽和炭化水素をこのような割合で含むことにより、上記の効果をより顕著に示すことができる。炭素数15〜16の脂肪族飽和炭化水素の含有量が40質量%未満の場合、定着温度が高い時にオフセットが発生しやすくなる場合がある。また、炭素数15〜16の脂肪族飽和炭化水素の含有量が70質量%を超えると、定着温度が低い時に定着強度が弱くなりやすくなる場合がある。
【0030】
なお、このような脂肪族飽和炭化水素は、上記のように直鎖状または分岐状の構造を有することが好ましいが、分岐状の構造を有する場合、その構造は特に限定されるものではなく、いずれの異性体をも含むことができる。
【0031】
このような構成の絶縁性液体は、高純度の単一構造の脂肪族飽和炭化水素を2種以上混合して用いることも可能であるが、経済性および入手の容易性等の観点から各種の市販品を用いることも可能である。直鎖状または分岐状の炭素数11〜16の脂肪族飽和炭化水素を主成分とする市販品としては、たとえばエクソンモービル社製の「アイソパーH」(商品名)、「アイソパーL」(商品名)、「アイソパーM」(商品名)、出光興産社製の「IP1620」(商品名)、「IP2028」(商品名)、「IPクリーンLX」(商品名)、「IPクリーンHX」(商品名)、昭和シェル石油社製の「シェルゾールTK」(商品名)、「シェルゾールTM」(商品名)、丸善社製の「マルカゾール」(商品名)を挙げることができる。市販品を単独で用いることにより、上記のような構成の絶縁性液体が得られる場合は、そのような市販品を単独で用いることも可能であるが、通常は上記のような市販品を2種以上混合することにより上記のような構成の絶縁性液体を得ることができる。
【0032】
なお、絶縁性液体が、炭素数11〜16の脂肪族飽和炭化水素のみにより構成されない場合、他の成分としては、炭素数が11〜16以外の炭素数である脂肪族飽和炭化水素、脂環式炭化水素、植物油、鉱物油等を含むことができる。
【0033】
<分散剤>
本実施の形態の液体現像剤は、分散剤を必要に応じて少量添加することができる。たとえば、上記トナー粒子に対して、分散剤を0.01〜10質量%添加することが好ましい。
【0034】
このような分散剤は、トナー粒子を絶縁性液体中に安定に分散させる作用を有し、この作用を十分に発揮するためには絶縁性液体に可溶な分散剤を用いることが好ましい。かかる分散剤は、トナー粒子を安定に分散させるものであれば、その種類は特に限定されないが、上記樹脂(特にポリエステル樹脂)の酸価が比較的高い場合は、塩基性の高分子分散剤を用いることが好ましい。その中でも長期に亘り保管安定性を満足するものとしては、N−ビニルピロリドン基を有する塩基性高分子分散剤などを挙げることができる。
【0035】
このようなN−ビニルピロリドン基を有する塩基性高分子分散剤としては、N−ビニル−2−ピロリドンとメタクリル酸エステルとのランダム共重合体またはグラフト共重合体などを挙げることができる。また、上記のメタクリル酸エステルに代えて、アクリル酸エステルやアルキレン化合物を用いることもできる。また、上記で用いられるメタクリル酸エステルやアクリル酸エステルのアルキル基の炭素数は10〜20程度が好ましい。また、上記で用いられるアルキレン化合物はアルキル基を含み、そのアルキル基の炭素数は10〜30程度が好ましい。
【0036】
なお、N−ビニルピロリドン基を有する塩基性高分子分散剤としては、市販品を用いることも可能である。このような市販品としては、たとえばGAF/ISP Chemicals社製の「Antaron V−216」(商品名)、「Antaron V−220」(商品名)等を挙げることができる。
【0037】
<製造方法>
本実施の形態の液体現像剤は、従来公知の方法により製造することができ、特にその製造方法が限定されるものではない。たとえば、樹脂と色材である顔料とを所定の配合比で、加圧ニーダやロールミルなどを用いて溶融混練し、樹脂中に顔料を均一に分散させることにより、分散体を得る。次いで、得られた分散体を、たとえばジェットミルによって微粉砕することにより微粉末を得る。続いて、得られた微粉末を、たとえば風力分級機などにより分級することにより、所定の粒径のトナー粒子を得る。
【0038】
続いて、得られたトナー粒子を絶縁性液体と所定の配合比で混合することにより、混合物を得る。次いで、この混合物をボールミル等の分散手段により均一に分散させることにより、液体現像剤が得られる。
【0039】
なお、上記では分散体を粉砕する方法を採用したが、トナー粒子となる微粉末を得る方法はこのような方法のみに限定されず、たとえば絶縁性液体中でトナー粒子を造粒する方法や、極性溶媒中でトナー粒子を造粒し、その極性溶媒を絶縁性液体で置換する方法等を採用することも可能である。
【0040】
<画像形成方法>
本発明の液体現像剤は、複写機、プリンタ、デジタル印刷機、簡易印刷機などの電子写真方式の画像形成装置において用いられ、画像が形成される。これらの画像形成装置は、一般的に電子写真方式の画像形成プロセスが共通して用いられている。以下、図1を参照して、本発明の液体現像剤を用いた画像形成方法を説明する。
【0041】
図1は、画像形成装置の全体構成例を示す。なお、図1は、主として画像形成プロセスに関わる構成要素のみを示し、記録材の給紙、搬送、排紙に関わる構成要素は簡略的に示した。
【0042】
図1の画像形成装置10は、像担持体としての感光体ドラム1、帯電装置2、露光装置3、湿式現像装置4、クリーニング装置6を備える。さらに、画像形成装置10は、中間転写体としての中間転写ローラ5と、二次転写ローラ7をも備えている。
【0043】
なお、図1においては、湿式現像装置4が一台のみ配置されているが、カラー画像形成のために複数台配置されていてもよい。カラー現像の方式、中間転写の有無などは任意に設定すればよく、それに合わせた任意の配置構成をとることができる。
【0044】
本画像形成装置では中間転写ローラ5を用いているが、中間転写ベルトの形態であってもよい。感光体ドラム1は、表面に感光体層(不図示)が形成された円筒形状であって、図1における矢印A方向に回転する。感光体ドラム1の外周には、クリーニング装置6、帯電装置2、露光装置3、湿式現像装置4、および中間転写ローラ5が、その感光体ドラム1の回転方向に沿って順次配置されている。なお、このようなシステムは通常100〜1000mm/secで作動することができる。
【0045】
帯電装置2は、感光体ドラム1の表面を所定電位に帯電させる。露光装置3は、感光体ドラム1の表面に光を照射し照射領域内の帯電レベルを低下させて静電潜像を形成する。
【0046】
湿式現像装置4は、感光体ドラム1上に形成された潜像を現像する。すなわち、感光体ドラム1の現像領域へ液体現像剤を搬送し、その液体現像剤に含まれるトナー粒子を感光体ドラム1の表面の静電潜像に供給してトナー画像を形成する。
【0047】
湿式現像装置4は、一般的には、表面に液体現像剤の薄層を担持し、像担持体である感光体ドラム1上の潜像を現像する現像ローラ41、現像ローラ41に当接して、その表面に液量調整された液体現像剤を転移させる搬送ローラ42、そしてその搬送ローラ42に当接して、その表面に現像剤槽44内の液体現像剤8を供給する供給ローラ43、および液体現像剤8の供給量を調整する規制ブレード45を備える。
【0048】
現像のプロセスにおいては、湿式現像装置4の現像ローラ41に電源(不図示)からトナー粒子と同極性の現像バイアス電圧が印加される。同じくトナー粒子と同極性の感光体ドラム1上の潜像の電位とのバランスで電界の大小差が形成され、潜像に従って現像剤中のトナーが感光体ドラム1に静電吸着され、感光体ドラム1上の潜像が現像される。
【0049】
中間転写ローラ5は、感光体ドラム1と対向するように配置されており、感光体ドラム1と接触しながら矢印B方向に回転する。これら中間転写ローラ5と感光体ドラム1とのニップ部で、感光体ドラム1から中間転写ローラ5への一次転写が行なわれる。
【0050】
一次転写プロセスにおいては、中間転写ローラ5に、電源(不図示)からトナー粒子と逆極性の転写バイアス電圧が印加される。これにより、一次転写位置における中間転写ローラ5と感光体ドラム1との間に電界が形成され、感光体ドラム1上のトナー像が、中間転写ローラ5に静電吸着され、中間転写ローラ5上に転写される。
【0051】
トナー画像が中間転写ローラ5に転写されると、クリーニング装置6が感光体ドラム1上の残存トナー粒子を除去し、次の画像形成が行なわれる。中間転写ローラ5と二次転写ローラ7とは、記録材11を挟んで対向するように配置されており、記録材11を介して接触回転する。これら中間転写ローラ5と二次転写ローラ7とのニップ部で、中間転写ローラ5から記録材11への二次転写が行なわれる。
【0052】
記録材11は、二次転写のタイミングに合わせて二次転写位置へ矢印C方向に搬送される。二次転写プロセスにおいては、二次転写ローラ7に、電源(不図示)からトナー粒子と逆極性の転写バイアス電圧が印加される。これにより、中間転写ローラ5と二次転写ローラ7との間に電界が形成され、中間転写ローラ5と二次転写ローラ7との間を通過させた記録材11上へ中間転写ローラ5上のトナー画像が静電吸着され、記録材11上に転写される。
【0053】
定着部9は、図2および図3にさらに詳細に示され、対向配置され接触回転する少なくとも一対のローラを備え、記録材11が高温下で加圧される。これにより、記録材11上でトナー画像12を形成するトナー粒子が記録材11に融着し定着する。
【0054】
図2に示されるように、定着部9は定着ローラ901、905、加熱ローラ902、906、ヒーター903、904、907、908を備えている。システム速度は100〜1000mm/secである。
【0055】
定着ローラ901、905は、芯金の外周面上に弾性層が形成されている。芯金は外径がたとえば35mmである。また、弾性層はたとえば厚さ15mmのシリコーンゴム層上にポリテトラフルオロエチレンが被覆されている。定着ローラ901、905の全体の外径はたとえば80mmである。
【0056】
加熱ローラ902、906は、芯金の外周面上にたとえば1mmのシリコーンゴム層とさらにポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)が被覆されている。この加熱ローラ902、906はたとえば外径80mmである。
【0057】
ヒーター903、904、907、908は、たとえばハロゲンランプである。定着ローラおよび加熱ローラは必要な紙温度になるように加熱されている。紙の種類や厚さ、および通紙速度により適宜加熱条件を決めることができる。なお、上流側、下流側の定着器の前後に必要に応じて加熱手段を設けてもかまわない。
【0058】
図3は、図2の定着部のローラが一段であることを除き、他は図2と同じである。なお、定着部9の構成は図2および図3に限定されない。たとえば、ローラ加熱ではなく、ベルト加熱でも良いし、非接触加熱や熱風を併用しても良い。但し、安定した光沢を得るために、ローラ加熱やベルト加熱のように、面圧がかかる定着部材を通過することが必要であり、その為にはオフセットを防止する必要がある。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
1.樹脂の製造
<ポリエステル樹脂A>
還流冷却器、水・アルコール分離装置、窒素ガス導入管、温度計および攪拌装置を備えた丸底フラスコに、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物(商品名:「BA2グリコール」、日本乳化剤株式会社製)を1600質量部(多価アルコール)、テレフタル酸を550質量部、そしてトリメリット酸を340質量部入れ、攪拌しながら窒素ガスを導入し、200〜240℃の温度で脱水重縮合または脱アルコール重縮合を行なった。
【0061】
その後、生成物の分子量が所望の値になったところで反応系の温度を100℃以下に下げ、重縮合を停止させた。このようにして熱可塑性ポリエステル樹脂を得た。この熱可塑性ポリエステル樹脂を「ポリエステル樹脂A」とする。ポリエステル樹脂Aの分子量を測定したところ、Mw=15000、Mn=4000であった。なお、MwおよびMnは、それぞれゲルパーミエーションクロマトグラフィーの結果から算出した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフポンプ(TRI ROTAR−V型(日本分光社製))、紫外分光検出器(UVIDEC−100−V型(日本分光社製))、50cm長さのカラム(Shodex GPC A−803(昭和電工社製))を用いて行ない、そのクロマトグラフィーの結果から、被検試料の分子量をポリスチレンを標準物質として算出することにより、ポリスチレン換算MwおよびMnとして求めた。なお、被検試料は樹脂0.05gを20mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させたものを用いた。
【0062】
<ポリエステル樹脂B>
上記と同様の丸底フラスコに、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物(上記と同じ)を1600質量部(多価アルコール)、およびテレフタル酸を690質量部、そしてトリメリット酸を200重量部入れ、攪拌しながら窒素ガスを導入し、200〜240℃の温度で脱水重縮合または脱アルコール重縮合を行なった。
【0063】
その後、生成物の分子量が所望の値になったところで反応系の温度を100℃以下に下げ、重縮合を停止させた。このようにして熱可塑性ポリエステル樹脂を得た。この熱可塑性ポリエステル樹脂を「ポリエステル樹脂B」とする。ポリエステル樹脂Bは、ポリエステル樹脂Aと同様にして測定したところ、Mw=4800、Mn=2000であった。
【0064】
<ポリエステル樹脂C>
上記と同様の丸底フラスコに、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物(上記と同じ)を1600質量部(多価アルコール)、およびテレフタル酸を890質量部入れ、攪拌しながら窒素ガスを導入し、200〜240℃の温度で脱水重縮合または脱アルコール重縮合を行なった。
【0065】
その後、生成物の分子量が所望の値になったところで反応系の温度を100℃以下に下げ、重縮合を停止させた。このようにして熱可塑性ポリエステル樹脂を得た。この熱可塑性ポリエステル樹脂を「ポリエステル樹脂C」とする。ポリエステル樹脂Cは、ポリエステル樹脂Aと同様にして測定したところ、Mw=2500、Mn=1200であった。
【0066】
2.トナー粒子の製造
<トナー粒子A>
樹脂としてポリエステル樹脂Aを100質量部、および色材(顔料)として銅フタロシアニンブルーを15質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、ロール内加熱温度100℃の同方向回転二軸押出し機を用い溶融混練を行なうことにより混合物を得た。次いで、得られた混合物を冷却した後、フェザーミル(ホソカワミクロン社製)を用いて粗粉砕することにより粗粉砕トナー粒子を得た。
【0067】
続いて、カウンタジェットミル(商品名:「200AFG」、ホソカワミクロン社製)を用いて上記で得られた粗粉砕トナー粒子を微粉砕することにより、トナー粒子を得た。このトナー粒子を「トナー粒子A」とする。トナー粒子Aの体積平均粒径を粒度分布計(商品名:「SALD−2200」、島津製作所社製)により測定したところ2.6μmであった。また、Tm(溶融温度)は155℃であった。なお、Tm(溶融温度)は、後述の方法により測定した。
【0068】
<トナー粒子B>
ポリエステル樹脂Aをポリエステル樹脂Bに置き換えることを除き、他は全てトナー粒子Aと同様にしてトナー粒子を得た。このトナー粒子を「トナー粒子B」とする。トナー粒子Bの体積平均粒径は1.9μm、Tmは131℃であった。
【0069】
<トナー粒子C>
ポリエステル樹脂Aをポリエステル樹脂Cに置き換えることを除き、他は全てトナー粒子Aと同様にしてトナー粒子を得た。このトナー粒子を「トナー粒子C」とする。トナー粒子Cの体積平均粒径は2.1μm、Tmは97℃であった。
【0070】
3.液体現像剤の製造
以下のようにして、本発明の実施例の液体現像剤A1〜A4、B1〜B4、C1〜C4、および比較例の液体現像剤A5〜A8、B5〜B8、C5〜C8を製造した。
【0071】
<液体現像剤A1>
トナー粒子としてトナー粒子Aを43質量部、絶縁性液体としてアイソパーH(商品名、エクソンモービル社製)を50質量部およびシェルゾールTM(商品名、昭和シェル石油社製)を50質量部、分散剤としてN−ビニルピロリドン/アルキレン共重合体(商品名:「Antaron V−216」、GAF/ISP Chemicals社製)1質量部を混合し、ペイントシェーカーにて1時間処理することにより、液体現像剤A1を得た。
【0072】
<液体現像剤A2>
液体現像剤A1において用いた絶縁性液体を、アイソパーL(商品名、エクソンモービル社製)50質量部およびIP2028(商品名、出光興産社製)50質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤A1と同様にして液体現像剤A2を得た。
【0073】
<液体現像剤A3>
液体現像剤A1において用いた絶縁性液体を、IP1620(商品名、出光興産社製)20質量部およびIP2028(商品名、出光興産社製)80質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤A1と同様にして液体現像剤A3を得た。
【0074】
<液体現像剤A4>
液体現像剤A1において用いた絶縁性液体を、アイソパーG(商品名、エクソンモービル社製)10質量部およびIP2028(商品名、出光興産社製)90質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤A1と同様にして液体現像剤A4を得た。
【0075】
<液体現像剤B1>
トナー粒子としてトナー粒子Bを43質量部、絶縁性液体としてアイソパーH(商品名、エクソンモービル社製)を50質量部およびシェルゾールTM(商品名、昭和シェル石油社製)を50質量部、分散剤としてN−ビニルピロリドン/アルキレン共重合体(商品名:「Antaron V−216」、GAF/ISP Chemicals社製)1質量部を混合し、ペイントシェーカーにて1時間処理することにより、液体現像剤B1を得た。
【0076】
<液体現像剤B2>
液体現像剤B1において用いた絶縁性液体を、アイソパーL(商品名、エクソンモービル社製)50質量部およびIP2028(商品名、出光興産社製)50質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤B1と同様にして液体現像剤B2を得た。
【0077】
<液体現像剤B3>
液体現像剤B1において用いた絶縁性液体を、IP1620(商品名、出光興産社製)20質量部およびIP2028(商品名、出光興産社製)80質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤B1と同様にして液体現像剤B3を得た。
【0078】
<液体現像剤B4>
液体現像剤B1において用いた絶縁性液体を、アイソパーG(商品名、エクソンモービル社製)10質量部およびIP2028(商品名、出光興産社製)90質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤B1と同様にして液体現像剤B4を得た。
【0079】
<液体現像剤C1>
トナー粒子としてトナー粒子Cを43質量部、絶縁性液体としてアイソパーH(商品名、エクソンモービル社製)を50質量部およびシェルゾールTM(商品名、昭和シェル石油社製)を50質量部、分散剤としてN−ビニルピロリドン/アルキレン共重合体(商品名:「Antaron V−216」、GAF/ISP Chemicals社製)1質量部を混合し、ペイントシェーカーにて1時間処理することにより、液体現像剤C1を得た。
【0080】
<液体現像剤C2>
液体現像剤C1において用いた絶縁性液体を、アイソパーL(商品名、エクソンモービル社製)50質量部およびIP2028(商品名、出光興産社製)50質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤C1と同様にして液体現像剤C2を得た。
【0081】
<液体現像剤C3>
液体現像剤C1において用いた絶縁性液体を、IP1620(商品名、出光興産社製)20質量部およびIP2028(商品名、出光興産社製)80質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤C1と同様にして液体現像剤C3を得た。
【0082】
<液体現像剤C4>
液体現像剤C1において用いた絶縁性液体を、アイソパーG(商品名、エクソンモービル社製)10質量部およびIP2028(商品名、出光興産社製)90質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤C1と同様にして液体現像剤C4を得た。
【0083】
<液体現像剤A5>
液体現像剤A1において用いた絶縁性液体を、アイソパーG(商品名、エクソンモービル社製)100質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤A1と同様にして液体現像剤A5を得た。
【0084】
<液体現像剤A6>
液体現像剤A1において用いた絶縁性液体を、IP1620(商品名、出光興産社製)100質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤A1と同様にして液体現像剤A6を得た。
【0085】
<液体現像剤A7>
液体現像剤A1において用いた絶縁性液体を、IP2028(商品名、出光興産社製)100質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤A1と同様にして液体現像剤A7を得た。
【0086】
<液体現像剤A8>
液体現像剤A1において用いた絶縁性液体を、モレスコホワイトP−60(商品名、松村石油社製)100質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤A1と同様にして液体現像剤A8を得た。
【0087】
<液体現像剤B5>
液体現像剤B1において用いた絶縁性液体を、アイソパーG(商品名、エクソンモービル社製)100質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤B1と同様にして液体現像剤B5を得た。
【0088】
<液体現像剤B6>
液体現像剤B1において用いた絶縁性液体を、IP1620(商品名、出光興産社製)100質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤B1と同様にして液体現像剤B6を得た。
【0089】
<液体現像剤B7>
液体現像剤B1において用いた絶縁性液体を、IP2028(商品名、出光興産社製)100質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤B1と同様にして液体現像剤B7を得た。
【0090】
<液体現像剤B8>
液体現像剤B1において用いた絶縁性液体を、モレスコホワイトP−60(商品名、松村石油社製)100質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤B1と同様にして液体現像剤B8を得た。
【0091】
<液体現像剤C5>
液体現像剤C1において用いた絶縁性液体を、アイソパーG(商品名、エクソンモービル社製)100質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤C1と同様にして液体現像剤C5を得た。
【0092】
<液体現像剤C6>
液体現像剤C1において用いた絶縁性液体を、IP1620(商品名、出光興産社製)100質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤C1と同様にして液体現像剤C6を得た。
【0093】
<液体現像剤C7>
液体現像剤C1において用いた絶縁性液体を、IP2028(商品名、出光興産社製)100質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤C1と同様にして液体現像剤C7を得た。
【0094】
<液体現像剤C8>
液体現像剤C1において用いた絶縁性液体を、モレスコホワイトP−60(商品名、松村石油社製)100質量部に置き換えることを除き、他は全て液体現像剤C1と同様にして液体現像剤C8を得た。
【0095】
4.トナー粒子のTm(溶融温度)の測定
トナー粒子A〜CのTmを島津製作所社製のフローテスター(商品名:「CFT−500D」)を用いて測定した。測定条件は以下の通りである。
【0096】
<測定条件>
測定開始温度:50℃
測定終了温度:200℃
重り:0.5kg
昇温速度:5℃/min
ダイ穴径:0.5mm
ダイ穴長さ:1mm
余熱時間:60秒
評価:ピストンストロークの位置を「S」とし、流出終了点Smaxと最低値Sminの差の1/2のときの温度をTm(=T1/2温度)とした。
【0097】
<測定方法>
各トナー粒子を含むいずれかの液体現像剤5mlを25℃、2000rpmで20分間遠心分離した後、上澄み液を捨てる。そして、沈殿物にヘキサンを加え攪拌し洗浄後、30秒間超音波により分散し、引き続き25℃、2000rpmで20分間遠心分離を行なう。
【0098】
その後、上澄み液(ヘキサン)を捨て、沈殿物にヘキサンを加え攪拌し再度洗浄し、30秒間超音波により分散し、引き続き25℃、2000rpmで20分間遠心分離する。この工程をさらに2回繰り返す。
【0099】
次いで、上澄み液を捨て、沈殿物を濾紙上に掻き出し、掻き出したサンプルを真空乾燥機で25℃、1時間乾燥することにより、乾燥状態のトナー粒子サンプル約1gを得る。
【0100】
そして、この乾燥状態のトナー粒子を上記の測定条件により測定し、Tmを求めた。なお、このようにして測定したTmは、液体現像剤とする前のトナー粒子について測定したTmとほぼ同一の数値を示した。
【0101】
5.液体現像剤中の絶縁性液体の炭素数の測定
液体現像剤中の絶縁性液体が、どのような炭素数の脂肪族飽和炭化水素を含むかをGC−TOFMS法(ガスクロマトグラフ−飛行時間質量分析法)により確認した。その測定条件は、以下の通りである。結果を表1〜表4に示す。なお、表1〜表4の「絶縁性液体の炭素数」の項における「C11−16」の欄は、その左欄に記載の液体現像剤に含まれる絶縁性液体に占める炭素数11〜16の脂肪族飽和炭化水素の割合(質量%)を示し、「C11−12」の欄は、同絶縁性液体に占める炭素数11〜12の脂肪族飽和炭化水素の割合(質量%)を示し、「C15−16」の欄は、同絶縁性液体に占める炭素数15〜16の脂肪族飽和炭化水素の割合(質量%)を示す。なお、「C11−16」の欄が100.0(質量%)となっていないものは、炭素数11〜16以外の脂肪族飽和炭化水素を含んでいた。
【0102】
<ガスクロマトグラフ>
装置:6890N(Agilent社製)
注入条件:温度280℃、Split(1:200)
使用カラム:DB−5ms(長さ30mm 内径0.25mm 膜厚0.25μm)
オーブン:50℃から昇温速度15℃/minで280℃まで昇温して5min維持
試料:各液体現像剤に含まれる絶縁性液体と同組成の絶縁性液体
試料注入量:0.1μL
キャリヤガス:ヘリウム(1ml/min)
インターフェース温度:250℃
<飛行時間質量分析>
装置:飛行時間型質量分析装置JMS−T100GC(日本電子株式会社製)
イオン化:電界イオン化法(カソード電圧:−10kV)
質量範囲:m/z35〜500
6.定着強度およびオフセットの評価
上記で作製した各液体現像剤を用いて、前述の図1(定着部は図2または図3)に示した装置により、それぞれの定着サンプルを作製した。定着プロセスの概略は後述のとおりである。
【0103】
なお、記録材である紙としては、三菱製紙社製の金菱128g/m2紙(商品名)を用いた。定着部の温度は所望の紙温度を得るために適度調整した。すなわち、表1〜表2に示す実施例および比較例は、定着部として前述の図2に示す装置を用いて定着されており、地点T2の記録材の温度が120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃の6通りに設定され、各設定温度毎に以下の方法により定着強度とオフセットを評価した。また、表3に示す実施例および比較例は、表1〜表2と同様に定着部として図2に示す装置を用いて定着されており、地点T2の記録材の温度が100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃の6通りに設定され、各設定温度毎に以下の方法により定着強度とオフセットを評価した。一方、表4に示す実施例および比較例は、定着部として前述の図3に示す装置を用いて定着されており、地点T1の記録材の温度が120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃の6通りに設定され、各設定温度毎に以下の方法により定着強度とオフセットを評価した。なお、定着された紙(記録材)上のトナー粒子の量は固形分で4g/m2のべタ画像とした。
【0104】
<定着強度の評価>
各定着サンプルの定着強度は、テープ剥離試験により行なった。すなわち、各定着サンプルにテープを貼り付け、剥離後にテープに移ったトナー粒子の量を画像濃度(ID)として測定した。
【0105】
具体的には、幅20mmのテープ(商品名:「スコッチメンディングテープ 810」、3M社製)を定着サンプルの画像面(長さ約50mm)に貼り、指で十分テープ面に力を与えた後、テープを剥がし、その剥離したテープをコニカミノルタ社製のペーパー「CF−80」(商品名)に貼り付けた。引き続き、テープを貼り付けた「CF−80」において、トナー粒子が付着していない部分のIDをゼロに校正するとともに、トナー粒子が付着している部分のIDをID測定機(商品名:「スペクトロアイLT」、X−Rite社製)を用いて測定した。そして、IDが0.05未満のものを「A」、0.05以上0.1未満のものを「B」、0.1以上のものを「C」として評価した。IDの数値が低いものほど定着強度に優れていることを示している。結果を表1〜表4に示す。
【0106】
<オフセットの評価>
図2および図3の定着ローラ901、905および加熱ローラ902、906にオフセット(汚れ)が発生しているか否かを観察することにより、オフセットを評価した。なお、この評価は、各定着サンプルがこれらのローラを通過後に別途「CF−80」を通過させ、この「CF−80」の汚れの有無を目視にて観察することにより評価した。
【0107】
そして、汚れが発生していないものを「A」、わずかに汚れが発生したものを「B」、明らかに汚れが発生したものを「C」として評価した。汚れが発生していないものほど、オフセットが防止されていることを示す。結果を表1〜表4に示す。
【0108】
<定着プロセスの概略>
上記で得られた各液体現像剤(表1〜表4の各実施例および各比較例は同表記載の液体現像剤(たとえば「A1」との表記は上記の液体現像剤A1を示す)を用いたことを示す)をそれぞれ図1に示した画像形成装置10の現像剤槽44に充填することにより作動させ、記録材11上に画像を形成し、定着部9(図2または図3)によりその画像を定着した。画像の形成条件の詳細は、以下の通りである。
【0109】
システム速度を400mm/secとし、感光体は負帯電のOPC(有機感光体)を用いた。感光体の帯電電位は−700Vとし、現像電圧は−450Vとし、中間転写ローラ電圧は+300Vとし、二次転写ローラ電圧は+1000Vとした。
【0110】
なお、図2および図3のT1およびT2は、ニップ出口から10mm離れた地点に位置し(すなわちシステム速度は400mm/secであるからニップ出口から0.025秒後の記録材の通過位置)、サーモパイル(商品名:「FT−H10」、キーエンス社製)を用いて記録材の温度を測定した地点である。測定条件は、焦点距離を35mm、放射率を0.95、応答時間を0.03秒とした。
【0111】
【表1】

【0112】
【表2】

【0113】
【表3】

【0114】
【表4】

【0115】
表1〜表4において、「定着強度/オフセット」の項は、各設定温度毎に定着強度の評価およびオフセットの評価の順に結果が示されている。たとえば「C/A」との評価は、定着強度の評価が「C」であり、オフセットの評価が「A」であることを示している。
【0116】
表1〜表4より明らかなとおり、実施例の液体現像剤(すなわち絶縁性液体が、炭素数11〜16の脂肪族飽和炭化水素が90質量%以上を占め、かつ炭素数11〜12の脂肪族飽和炭化水素が20〜60質量%を占める液体現像剤)は、比較例の液体現像剤に比し、定着部の複数の設定温度においてオフセットの防止と定着強度の向上とを両立させており(すなわち「A/A」との評価が得られており)、本発明の液体現像剤がオフセットの防止と定着強度の向上とを両立させることができるという優れた効果を示すことが確認できた。
【0117】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0118】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0119】
1 感光体ドラム、2 帯電装置、3 露光装置、4 湿式現像装置、5 中間転写ローラ、6 クリーニング装置、7 二次転写ローラ、8 液体現像剤、9 定着部、10 画像形成装置、11 記録材、12 トナー画像、41 現像ローラ、42 搬送ローラ、43 供給ローラ、44 現像剤槽、45 規制ブレード、901,905 定着ローラ、902,906 加熱ローラ、903,904,907,908 ヒーター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子と絶縁性液体とを少なくとも含む液体現像剤であって、
前記トナー粒子は、樹脂と該樹脂中に分散された色材とを含み、
前記絶縁性液体は、炭素数11〜16の脂肪族飽和炭化水素が90質量%以上を占め、かつ炭素数11〜12の脂肪族飽和炭化水素が20〜60質量%を占める、液体現像剤。
【請求項2】
前記絶縁性液体は、炭素数15〜16の脂肪族飽和炭化水素が40〜70質量%を占める、請求項1記載の液体現像剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−57890(P2013−57890A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197380(P2011−197380)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】