説明

液体石油精製留分の鉄分除去方法及びその装置

【課題】輸送管の外部に永久磁石を設置し、管内の磁力線の方向についても検討した、新規な液体石油精製留分の鉄分除去方法及び装置の提供。
【解決手段】石油精製留分を輸送するための非磁性材料により構成される輸送管11の外壁に、外側が円筒状強磁性材料からなるヨーク14が、石油精製留分の油送管外周にそって湾曲されており、円周方向に複数個に分割されて収納されている永久磁石15が円周方向に沿ってN極とS極が交互に入れ替わる状態で収納されて輸送管11に取り付けられており、前記輸送管11内に鉄分を含有する液体石油留分を通過させ、その際に永久磁石15の磁力線を輸送管11の円周方向に向けることができ、磁力線は中心部より周辺部が強くすることができることにより、石油精製留分に含まれる鉄分を石油精製留分の油送管の外壁に付着させる方法及び装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体石油精製留分中に含まれる鉄分の除去方法及び除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原油を分留処理し、揮発油成分、灯油成分、軽油成分及び重油成分として取り出される。これらの重油成分には、鉄、ニッケル、バナジウム等の重金属が含まれることがある。鉄分は装置を構成する材料の一部が油中に含まれるようになったものとされている。重油成分は触媒の存在下に高い圧力と温度条件下で水素化精製する方法がとられる。前記したように、処理対象となる石油留分などには鉄分や重金属成分を含んでいる場合に、これをそのまま水素化精製装置に供給すると、触媒に好ましくない影響を及ぼし、トラブルの原因となる。石油成分中に鉄分などを含有する場合には、鉄分などを除去する必要があり、その方法が開発されている。例えば、装置を耐食性の材料で製作するとか、耐食性の内張りを施して鉄分の混入をなくそうとするもの、水素化精製装置の上流にガードリアクターと呼ばれる化学反応装置内で鉄分を除去するもの、水酸化ナトリウム水溶液で処理して除去する、硫化水素やアンモニアと接触させて鉱油中の鉄分を油に不溶性の鉄化合物に変化させるもの、遠心分離機を用いる方法が知られている。又、低水素過電圧金属カソードに接触させるなどの方法もある。しかしながら、いずれも決定的な解決方法にはなっていない。
又、ナフサ分解により得られる分解ガスを蒸留操作により軽質炭化水素蒸留成分と燃料油成分に分離する蒸留搭において蒸留搭の中間部より一部を取り出してマグネットストレーナを通過させ鉄分を除去することが知られている。石油化学の分野では重油成分より軽質の炭化水素中にも鉄分が含まれ、それを除去することが必要であることが指摘されているが、根本的な解決策にはなっていない。
【0003】
以上の技術背景のもとで石油中に含まれる鉄分などを除去する方法又は装置の開発が行われたなかで、鉄分を除去するために磁気を使用する方法が開発されている。具体的には、永久磁石に換えて電磁フイルターからなる高勾配磁気分離装置が法用いられている(特許文献1)。これを石油留分の処理に関しては、鉄分を5ppm以上含有する石油系鉱油留分を、500から25,000ガウスの磁場強度、室温〜400℃、0.1〜50cm/秒の線速度の条件下で電磁石性や永久磁石を用いた高勾配磁気分離機に処理して分離除去することが行われる(特許文献2)。ここで、高勾配磁気分離機とは、均一な高磁場空間内に強磁性の充填物を置き、磁場をかけ充填物の周囲に通常100×10〜20,000×10ガウス/cmもの高い磁場勾配を生じさせることにより、充填物の表面に強磁性あるいは常磁性微粒子を着磁させて、弱常磁性微粒子あるいは反磁性微粒子から分離するものである。
強磁性充填物は、1〜1000μmの径をもつスチールウール或いはスチールネットのような強磁性細線の集合体或いはエキスパンドメタル或いはスチールビーズが用いられる。
この分離方法は確かに有効な方法とされているものの、細線により取り除かれた物質の除去に手間がかかるとされ、問題点とされている。具体的な対策としては、重質油に芳香族基材を混合して固形分を除去する発明(特許文献3)、及び鉱油を高速撹拌した後に、高速勾配磁気分離装置で固形分を除去する発明(特許文献4)などがある。高勾配磁気分離装置を用いるときには、高分子量アスフアルテン等の高分子量の炭化水素が付着し、磁化率の低下を避けることができないという問題点がある。また、石油系常圧残渣油の鉄分を除去するために使用される高勾配磁気分離機内に強磁性充填物を、石油系蒸留残渣油、当該残渣油の水素化精製油及び当該水素化精製油残留ボトム油の1種で間歇的に洗浄することが行われている(特許文献5)。このような高勾配磁気分離機内処理を行った後に、水素化処理装置に送っている(特許文献6)。
高勾配磁気分離装置を用いる場合には、除去に伴って起こる付着成分に起因するトラブルの解決が重要であり、定常的に安定な操作を必要とされるプラントでは、困難が予想される。
【0004】
前記高勾配磁気分離装置を用いる方法より前から、輸送管の外部に置かれた磁石の磁界による重油の処理方法の発明がある(特許文献7)。この場合には膨大な磁石を必要とすること、又除去が十分に行われないので、現実的でないとされている。その後、断面方形長尺の金属角筒において、角筒主体とその両側部を絞搾した縮小部とからなり、前記角筒主体の各外壁に複数の永久磁石を、磁極を交互に変えて等間隔に並列し、かつ隣接する外壁相互の永久磁石を互いにちぐはぐ状となるごとく着脱自在に固着するとともに、角筒主体の両側縮小部にフランジを介してブロー弁を装着した装置が、原油又は精製油から希少金属を回収する装置が知られている(特許文献8)。しかしながら、輸送管の形状が取り扱ううえで不便であり、磁力線の方向から見て磁石は十分な性能を発揮できないものであるなど問題点を有するものである。又、磁石の組み合わせについても検討がなされているが(特許文献9)、この場合についても磁力線の方向などを見てみても、十分な磁石の性能を発揮できなかったものと考えられる。
鋼製の管体の内周部に固定されたリング状の永久磁石であり、永久磁石はラジアル着磁された希土類コバルト磁石を用いる。磁性粉は内周面に吸着されるものが知られている(特許文献10)。この場合についても、磁力線の方向など検討してみると、十分な磁石の性能を発揮できなかったものと考えられる。
また、本発明とは相違する方法において、本発明者は周囲に、管状体の周囲に永久磁石を張り巡らした装置を発明したが(特許文献14)、この場合にも磁力線の方向は直径方向にNとSを対峙して直径方向に磁力線を出すことを意図して配置する(図7)ものであり、永久磁石を用いるものの、磁力線の方向などについて十分な検討がなされていないので、十分な効果を期待できるものになっていない。
【0005】
配送管の外部に置かれた磁石に換えて配送管内部に磁石を施設することが行われている(特許文献11)。高粘度性の流体を対象とするためにバーマグネットの外筒をスクリューシャフトとすることも行われる(特許文献12)。又、鉄粉などを含む物質から鉄粉などの異物を除去する棒磁石として、筒状の容器、前記容器に内装される複数の希土類磁石、希土類磁石間にヨークを配置し、容器をチタン合金としたものも知られている(特許文献13)。これらも磁力線の方向などについては十分に検討されていないものであるから、十分な結果が期待できるものになっていない。
【0006】
以上の従来技術を整理すると、石油精製工程において、石油留分に含まれる鉄分などを除去する場合には、外部から永久磁石による磁界を形成し、内部に強磁性充填物を存在させた高勾配磁気分離装置を用いると十分に鉄分などを除去できるものの、目詰まりがおこり再生工程を必要とすること、又外部に永久磁石を存在させる状態で処理する場合には輸送管の形状や磁石の取り付け方、磁石の磁力線の検討が十分に行われていなかったために、鉄分の除去が十分に行われなかったと言う問題点がある。
これらのことから管の外部に永久磁石を設置し、管内の磁力線の方向についても検討されたうえで新規な液体石油精製留分の鉄分除去方法及びその装置の開発が望まれている。
【特許文献1】特開昭59−115716号公報
【特許文献2】特開昭62−54790号公報、特公平5−35754号公報
【特許文献3】特開昭63−17989号公報
【特許文献4】特開昭63−44911号公報
【特許文献5】特開平5−179259号公報
【特許文献6】特開平10−310781号公報
【特許文献7】特公昭53−25971号公報
【特許文献8】特開昭62−277492号公報
【特許文献9】特開平11−253963号公報
【特許文献10】特開昭60−129148号公報
【特許文献11】特開昭56―108547号公報、実開昭58−108156号公報
【特許文献12】特開2004−255249号公報
【特許文献13】特開2003−303714号公報
【特許文献14】特開2003−326156号公報
【特許文献15】特開2003−117302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は、輸送管の外部に永久磁石を設置した輸送管内に、石石油留分を通過させることにより鉄分を除去する際に、管の外部に永久磁石を設置し、管内の磁力線の方向と強度と、流れる石油留分に含まれる鉄分を油送管の管壁に付着させることができる関係を調べ、最も効果的な結果が得られるようにする液体石油精製留分の鉄分除去方法及びその装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題について鋭意研究し、以下の知見を得て、本発明を完成させた。
(1)石油精製留分を輸送するための非磁性材料により構成される輸送管の外壁に、外側が円筒状強磁性材料からなるヨークが石油精製留分の油送管外周にそって湾曲されて輸送管に取り付けられており、ヨーク内に円周方向に複数個に分割されて収納されている永久磁石が円周方向に沿ってN極とS極が交互に入れ替わる状態で収納されており、前記輸送管内に鉄分を含有する液体石油留分を通過させ、その際に永久磁石の磁力線を、隣接する永久磁石の影響により輸送管の円周方向に向けることができ、輸送管壁に近い又は比較的に近く流れる石油留分中の鉄分を油送管壁に向かって進めることができ、液体石油精製留分に含まれる鉄分を石油精製留分の輸送管の外壁に付着させることができ、これにより液体石油精製留分に含まれる鉄分を除去することができることを見出した。
【0009】
(2)前記(1)記載の前記輸送管の両端が連結手段により前記輸送管に接続する他の輸送管に連結固定することにより、前記輸送管を液体石油精製留分の反応装置に輸送する輸送管(他の輸送管)に接続し、石油精製の一部に鉄分を除去する方法を組み込むことができることを見出した。
【0010】
(3)前記他の輸送管に弁が設けられており、この弁の操作により非磁性材料により構成される液体石油精製留分の輸送管内に鉄分を含有する液体石油留分を通過させることなく、輸送管の経路が設けられていることにより、鉄分を除去するための部分を石油精製システムから取り外して、蓄積された鉄分を除去するなど清掃工事や保全工事をすることができることを見出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、石油精製で得られる鉄分を含有する液体石油留分を、水素化処理反応などの触媒反応に供給しても触媒などに悪影響を及ぼさない程度にまで鉄分を除去することができる、液体石油精製留分より鉄分を除去する方法及びその装置が得られ。この方法及びその装置は、石油精製装置の一部として組みこむことが可能であり、その保守及び保全に十分に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で対象とする液体石油留分は、原油の蒸留によって得られる重質の液体石油精製留分である。本発明の処理装置により処理した後、水素化精製装置などの触媒による装置に供給する重質の石油留分である。触媒反応を行う場合には、反応に供給する石油留分に鉄分やニッケル、バナジウムが含まれることは触媒が劣化するので、このような石油留分は嫌われる。重質の石油留分には鉄分を場合によっては100ppm以上も含有することが知られている。これは蒸留装置や、貯蔵タンク、輸送管などが石油留分に含まれる酸性物質などによる腐食物質により腐食された結果、一部が鉄分となって含まれることが指摘されている。また、鉱油中には可溶性の鉄分として5〜200ppm程度含まれることも指摘されている。また、ニッケル、バナジウムなどの金属も含まれていることが指摘されている。
これらは微粒子であり、粒径は0.1〜100μ程度とされるが、多くのものは20μ以下であるとされている。このような金属成分、とりわけ鉄分を含有する液体石油留分が処理の対象となる。
また、石油精製や石油化学などの分野において、軽質であるナフサ等の液体石油精製留分中にも、場合によっては同様に鉄分が含有するが知られており、又、これを除去する必要とされており、このような軽質の炭化水素成分も本発明の処理対象に含まれる。含有量などについては前記の場合と同様である。
【0013】
本発明の鉄分除去装置を図面により説明する。
図1は、本発明の鉄分除去装置側面の部分断面図である。
処理対象となる液体石油精製留分の炭化水素の油送管に接続して以下の鉄分除去装置1が設けられている。
非磁性材料により構成される液体石油精製留分の処理装置の輸送管11の両端に連結固定手段となるフランジ12を設け、前記油送管に接続する輸送管13の端に設けたフランジ部分とをボルトにより両者を結合固定できるようになっている。連結固定部分には漏洩防止などを考慮して、ガスケットなどを介在させる。
液体石油精製留分の鉄分除去装置の輸送管11は、非磁性体で形成されている。非磁性体とすることで磁力線の透磁を妨げない結果、磁石による磁力線の通過を邪魔しないようになっている。非磁性材料としては、例えば、SUS304などが採用されている。
前記液体石油精製留分の鉄分除去装置の輸送管11の外壁に、その外側が強磁性材料による円筒状ヨーク14により囲まれて永久磁石15が収納されている。永久磁石から出される磁力線は、輸送管11を通り抜け、輸送管11内を通る液体石油精製留分に含まれる鉄分に作用する。
永久磁石が円周方向に沿ってN極とS極が交互に入れ替わる状態で収納されているので、おり、前記輸送管内を流れる鉄分を含有する液体石油留分に対して磁力線を作用する際に、N極から出る磁力線は隣接するS極に向かって進み、永久磁石の磁力線を輸送管の円周方向に向けることができる。その結果、輸送管壁に近い又は比較的に近く流れる石油留分中の鉄分を油送管壁に向かって進めることができ、液体石油精製留分に含まれる鉄分を石油精製留分の輸送管の外壁に付着させることができ、これにより液体石油精製留分に含まれる鉄分を除去することができることとなる。
又、円筒状ヨークは永久磁石による輸送管と反対側に出て行こうとする磁力線を輸送管内部である中心部に向かって反射させる作用をするものであり、磁力線が周囲に向かって散乱することを防止し、輸送管内部の中心部に向けて輸送管内部に磁力線を出すこととしている。その結果、磁石による磁力線は前記の直接石油精製留分の鉄分に直接働きかけるほか、前記反射されて輸送管内部に送り込まれる磁力線の作用が加わって液体石油精製留分の鉄分に作用し、一そう効果的に鉄分の除去を可能とする。
【0014】
円筒状ヨーク14の外側は、ホルダー16を設けることができる。これは、必ず必要というものではなく、円筒状ヨークを外部環境から十分に保護して安全を図ろうとする場合に設置される。ホルダー16は固定器具17により輸送管11に固定される。ホルダー16を用いない場合には、円筒状ヨーク14を固定器具17により輸送管11に固定する。
【0015】
永久磁石15は、円周方向に湾曲されて配置される。円周方向に湾曲されるようにすることにより、磁力線をより輸送管の形状に合致させて輸送管の内部方向に向けさせることができるので良好な結果が得られる。この場合に磁石の加工ということを考慮して、磁石を円周方向に向かって僅かに湾曲するようにして、これを複数枚円周方向に並べて全体として輸送管円周方向に設置することもできる(図2)。これらをひとまとめにして、一枚の磁石として輸送管円周方向に配置することもできる(図3)。このように一枚の磁石とすることは製造加工という点から見ると前者のほうが簡単である。設備上の敷設という点から見ると、後者のほうが円周にそって配置できるので便利な方法となる。これらのいずれを採用するかについては、輸送管の径に関係する事柄でもあり、総合的に検討して決めることがらである。
【0016】
いずれの形状の磁石を使用するにしても、永久磁石の複数枚が輸送管円周方向内側に向けて、又は永久磁石の複数枚が一まとめとされた形状による一枚とされた形状で輸送管円周方向内側に向けて、N極が配置される。これに隣接する磁石では、S極が同じく永久磁石の複数枚が内側に向けて、又は永久磁石の複数枚が一まとめとされて一枚とされた形状で内側に向けて、これらのN極が輸送管内部に向かって配置される。いずれにしても、これらは輸送管内部に向けてS極とN極が組み合わされた設置された形状となる。この場合に、永久磁石のヨーク側の面は逆にN極とS極となる。永久磁石による磁力線が円周方向に進むことを考慮すると、S極とN極は組み合わせとなることが必要である。
【0017】
図2は、以上説明の磁石の配置を示すものであり、輸送管の中心軸に対する垂直面の断面図である。
石油精製留分の処理装置の輸送管11の外側には、円筒状ヨーク14により囲まれて永久磁石15が収納されている。永久磁石の輸送管円周方向に円全体の4分の1の円周面がS極又はN極の場合である。この場合には複数枚の永久磁石がわずかに円周方向に湾曲している状態である。又、一枚の永久磁石が円周方向に設置される場合とは、前記の複数の永久磁石により構成される永久磁石が一枚の永久磁石によりが製造される場合をさしている場合である(図3)。いずれにしても、永久磁石のS極かN極は複数枚か(図2)又は1枚が(図3)、輸送管の円周方向に向かって、円周4分の1の円周面が構成されている。ヨーク側にはこれとは反対にN極とS極が並べられることとなる。
又、前記S極かN極に隣接する永久磁石はこれとは反対の極となるN極かS極となる。
【0018】
図4は、磁力線を流体に作用させる場合の従来例である(水処理及び石油留分に作用させて活性化を図るものである。これは鉄分を除去しようとするものではない。特許文献14)。
永久磁石のN極から出た磁力線は、油送管の中心部に向かい、相対する永久磁石のS極に向かう。この場合には,永久磁石のN極に相対する反対側にはこれと反対のS極が設置されていることが特徴であり、これに向かって磁力線が進む事ことが特徴である。
磁力線は満遍なく輸送管中心部に向かうものの、輸送管を流れる液体石油精製留分に含まれる鉄分を輸送管壁に導き付着させるためには,磁力線の方向である相対する油送管の管壁にまで輸送しなければならず、輸送する距離は長くなること,流れは速度があることなどから、前記本発明の場合と比較して劣る結果となる。
【0019】
図5は、輸送管円周部を1/4に区切り、複数枚の永久磁石をN極又はS極に配置する場合(図2及び3の場合)の磁力線の分布をシュミレーションした結果を示している。磁石は、ネオジウム−鉄―ホウ素の希土類磁石を用いたものである。この図はカラーで表現されており、磁力線の強さはカラーによって表現されている。この図面は、カラーを白黒図面にしてあるので、この点が明確ではないので、この点を記述により補う。磁石は、45度を中心にして左下半分がN極であり、右上半分がS極である。磁力線はNからSに向かって流れる。磁石は5.90〜6.29Kガウス、磁石に接する輸送管部分では4.3〜4.7Kガウスである。磁力線はNとSの境目部分のN極右斜め上に向かって4.0Kガウスの磁力線が出ている。このようにして出ている磁力線はS極部分に入ると更に右斜め方向に進み、やがて、S極部分の輸送管部分に入る。この部分より更に中心部分においては、3.8Kガウス程度の磁力線がN極側の右斜め上方向より右斜め方向に向かい、やがて、やがて、S極部分の輸送管部分に入る。更に、その上では、前記した磁力線と同様の方向に向かい1.9Kガウスの磁力線がNからS極に向かっている。更に、その上では、前記した磁力線と同様の方向に向かい1.7Kガウスの磁力線がNからS極に向かっている。その上では、前記した磁力線と同様の方向に向かい1.5Kガウスの磁力線がNからS極に向かっている。その上では、前記した磁力線と同様の方向に向かい1.0Kガウスの磁力線がNからS極に向かっている。磁力線については、その進む方向を矢印で示すとともに、長さによって磁力線の強さを表現している。輸送管の中心部になるに従い、磁力線の存在は少なくなっている。右側の数字は、カラー表示における磁場強度を示している。
輸送管周辺部で4.0Kガウス、輸送管の中心から2/3位のところで1.8Kガウス、中心部のところで、1.0Kガウスを示している。
【0020】
輸送管円周部分を1/6、1/8、更に1/10に区切り、それがS極とN極が交互に組み合わされていることができる。
S極とN極の組み合わせの数を多くすることにより、磁力線は、直径方向の中心の手前で、途中で隣接した他の極に向かって進み、分割する数が多くなるに従い、円の中心部から離れた地点より周辺部に向かう傾向が多くなる。周縁部を流れる液体石油精製留分に対して作用することが多くなり、中心部を流れる液体石油精製留分に対しては作用することが少なくなる傾向がある。
【0021】
磁力線は隣接する他の極に向かい円弧状態となる。そして、中心部には磁力線は多く存在しない状態となり、輸送管の外側に、磁力線が多く存在することになる。図6は、円周を4分割した場合と8分割した場合の磁力線の進む方向を示している。8分割した場合には中心部からわずかに離れることがわかる。これらのことを検討すると、4分割から10分割程度が適当である。これ以上に数を増加させることは周辺部を流れる石油留分については問題がないことを示している。中心部を流れる石油留分に対してはそれほど不十分ではないことがわかる。
永久磁石は、強力な磁石であることが望ましく、希土類磁石などのほかフエライト磁石などのその他の磁石も用いることができる。
【0022】
前記の金属成分を含有する石油留分は、十分に攪拌された状態を保ちつつ、鉄分除去装置である輸送管に供給される。
液温は、やや加温された状態で供給される。重油であれば、80から220℃程度である。軽質のナフサなどの油であれば、これらよりやや低く、40から80℃程度である。
供給速度は、0.310m/sec程度である。
磁石は、5.0〜10.0Kガウス
磁力線は、1.0〜10.0ガウス
鉄分除去装置の管径及び長さは、流れの速度、処理量などを考慮して適宜定めることができる。
【0023】
前記他の輸送管に弁が設けられており、この弁の操作により非磁性材料により構成される石油精製留分の輸送管内に鉄分を含有する液体石油留分を通過させることなく、輸送管の経路が設けられている。図7にその状態を示した。
ライン27より供給される液体石油精製留分は、鉄分除去装置1に供給される。このとき、バルブ24、25、26は閉じられ、バルブ2、3が開かれている。鉄分除去装置内の鉄分の付着が多くなったときには、バルブ2,3を閉じて、バルブ4を開けて石油精製留分をバイパスする。その後、バルブ5、6を開けて、通常のラインより処理時と逆方向に洗浄油を速い速度で流してライン10より排出する。前記のバルブが閉じられると、輸送管は取り外され、付着した鉄分を除去することができる。又バルブを閉じた後に鉄分除去装置を取り外し、付着した鉄分は刷毛やブラシなどの物理的な手段により除去することができる。清掃や保全のためにこのような操作が行われる。
図8は水素化装置に結びつける場合の流れを示している。処理操作は前記と同様である。
【実施例1】
【0024】
重油の線速度0.5m/sec
液温 150℃
磁石 6.0Kガウス
磁力線 1.0〜4.0Kガウス
原料油中の鉄分 (wtppm) 60.0
処理後の油中の鉄分(wtppm) 10.0
輸送管の内径 10cm
輸送管の長さ 1m
原料油と処理後の油鉄分の含有量を求めた結果である。
鉄分は輸送管の管壁に付着した。輸送管底部から下部に多く付着する状況が認められた。
【実施例2】
【0025】
重油の線速度 1.0m/sec
液温200℃
磁石 6.0Kガウス
磁力線 1.0〜4.0Kガウス
原料油中の鉄分 (wtppm) 60.0
処理後の油中の鉄分(wtppm) 13.0
輸送管の内径 10cm
輸送管の長さ 1m
原料油と処理後の油鉄分の含有量を求めた結果である。
鉄分は輸送管の管壁に付着した。輸送管底部から下部に多く付着する状況が認められた。
【0026】
比較例1(図4に示された装置を使用して実施例1の重油を処理した場合)
重油の線速度0.5m/sec
液温 150℃
磁石 6.0Kガウス
磁力線 0.8〜3.2Kガウス
原料油中の鉄分 (wtppm) 60.0
処理後の油中の鉄分(wtppm) 20.0
輸送管の内径 10cm
輸送管の長さ 1m
原料油と処理後の油鉄分の含有量を求めた結果である。
【0027】
比較例2((図4に示された装置を使用して実施例2の重油を処理した場合)
重油の線速度 1.0m/sec
液温 200℃
磁石 6.0Kガウス
磁力線 0.8〜3.2Kガウス
原料油中の鉄分 (wtppm) 60.0
処理後の油中の鉄分(wtppm) 25.0
原料油と処理後の油鉄分の含有量を求めた結果である。
輸送管の内径 10cm
輸送管の長さ 1m
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の鉄分除去装置の側面の部分断面図
【図2】図1のA―A断面の図(複数枚の磁石を用いる場合)
【図3】図1のA―A断面の図
【図4】従来の磁力線の方向を示す図
【図5】図2及び3の磁力線のシュミレーションの結果を示す図
【図6】円周方向を4分割してN極とS極を入れ替えて配置した場合の作用する磁力線が存在する部分と8分割してN極とS極を入れ替えて配置した場合の作用する磁力線が存在する部分を示す図
【図7】鉄分除去装置の部分の配管設置を示す図
【図8】鉄分除去装置と水素生成装置の組み合わせを示す図
【符号の説明】
【0029】
1 鉄分除去装置
11 石油精製留分の処理装置の輸送管11
12 フランジ
13 接続する輸送管
14 円筒状ヨーク
15 永久磁石
16 ホルダー
17 固定器具
18 石油精製留分
22から26 開閉バルブ
27から31 ライン
32 水素化処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油精製留分を輸送するための非磁性材料により構成される輸送管の外壁に、外側が円筒状強磁性材料からなるヨークが石油精製留分の油送管外周にそって湾曲されて輸送管に取り付けられており、ヨーク内に円周方向に複数個に分割されて収納されている永久磁石が円周方向に沿ってN極とS極が交互に入れ替わる状態で収納されており、前記輸送管内に鉄分を含有する液体石油留分を通過させ、隣接する永久磁石の影響により永久磁石の磁力線を輸送管の円周方向に向けさせ、液体石油精製留分に含まれる鉄分を石油精製留分の輸送管の外壁に付着させることを特徴とする液体石油精製留分より鉄分を除去する方法。
【請求項2】
前記輸送管の両端が連結手段により前記輸送管に接続する他の輸送管に連結固定されていることを特徴とする請求項1記載の液体石油精製留分より鉄分を除去する方法。
【請求項3】
前記他の輸送管に弁が設けられており、この弁の操作により非磁性材料により構成される石油精製留分の輸送管内に鉄分を含有する液体石油留分を通過させることなく、輸送管の経路が設けられていることを特徴とする請求項1から2いずれか記載の液体石油精製留分より鉄分を除去する方法。
【請求項4】
石油精製留分を輸送するための非磁性材料により構成される輸送管の外壁に、外側が円筒状強磁性材料からなるヨークが石油精製留分の油送管外周にそって湾曲されて輸送管に取り付けられており、ヨーク内に円周方向に複数個に分割されて収納されている永久磁石が円周方向に沿ってN極とS極が交互に入れ替わる状態で収納されており、前記輸送管内に鉄分を含有する液体石油留分を通過させ、隣接する永久磁石の影響により永久磁石の磁力線を輸送管の円周方向に向けさせることにより、液体石油精製留分に含まれる鉄分を石油精製留分の輸送管の外壁に付着させることを特徴とする液体石油精製留分の鉄分除去装置。
【請求項5】
前記ヨークはさらにホルダー内に収容されており、ホルダーは前記輸送管の外壁に固定されており、又、輸送管の両端が連結手段により前記輸送管に接続する他の輸送管に連結固定されていることを特徴とする請求項4記載の液体石油精製留分の鉄分除去装置。
【請求項6】
前記他の輸送管に弁が設けられており、この弁の操作により非磁性材料により構成される石油精製留分の輸送管内に鉄分を含有する液体石油留分を通過させることなく、輸送管の経路が設けられていることを特徴とする請求項4又は5いずれか記載の液体石油精製留分の鉄分除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−335812(P2006−335812A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159757(P2005−159757)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(390021485)株式会社相模化学金属 (9)