説明

液体石鹸用ディスペンサー

【課題】設置場所を自由に変更でき、子供でも使い勝手の良い安価な液体石鹸用ディスペンサーを提供する。
【解決手段】液体石鹸Sを収納する液体石鹸用ディスペンサー1において、弾性変形自在なドーム状部分2及びこのドーム状部分2とで内部に液体石鹸収納空間3を形成する容器部分4よりなる容器5と、容器部分4をその背面4a側から嵌込み可能な大きさの開口6を有し、ドーム状部分2が膨出した状態で容器部分4を覆う有底筒状のカバー7及びこのカバー7の背面R側にカバー7と一体に形成された吸盤8よりなる本体9とを備え、カバー7は、吸盤8により容器5及びカバー7が壁面13等の取付面に保持された状態で、ねじれが生じたときに壁面13等の取付面に直接あるいは間接的に当接することによって、吸盤8内に空気が流入するのを防止するため壁面13等の取付面から外向きに働く力を発生させうる突起14を背面R側に有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体石鹸を収納する液体石鹸用ディスペンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の液体石鹸用ディスペンサーとして、下記特許文献1,2に示すように、例えば洗面化粧台や多数の洗面器が併設された洗面カウンター等に設置されているものがある。
【0003】
【特許文献1】特開平9−173239号公報
【特許文献2】実開平6−81390号公報
【0004】
上記特許文献1,2のものは、吐出管及び操作部が洗面カウンターの上に設置され、その他の空間を大きく占有する液体石鹸貯留タンク等の部材は洗面カウンターの下方に設置されたタイプのものである。
また、別のタイプとして吐出管、操作部および液体石鹸貯留タンク等の部材の全部が洗面カウンターの上に設置されたものがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、いずれのタイプの液体石鹸用ディスペンサーでも洗面カウンターに固定設置されているため、一度設置すると設置位置の変更を行うのが難しかった。
また、特に洗面カウンターの上に設置されるタイプのものでは操作部材や液体石鹸注出ヘッドに子供の手が届き難いという問題もあった。
さらに、洗面カウンターへの設置に手間がかかり易く、場合によっては施工が複雑であり、このことが商品製造のコストアップに繋がっていた。
【0006】
この発明は、上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、据え置きタイプのものではなく設置場所を自由に変更でき、子供でも使い勝手の良い安価な液体石鹸用ディスペンサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の液体石鹸用ディスペンサーは、液体石鹸を収納する液体石鹸用ディスペンサーにおいて、弾性変形自在なドーム状部分及びこのドーム状部分とで内部に液体石鹸収納空間を形成する容器部分よりなる容器と、前記容器部分をその背面側から嵌込み可能な大きさの開口を有し、ドーム状部分が膨出した状態で前記容器部分を覆う有底筒状のカバー及びこのカバーの背面側に前記カバーと一体に形成された吸盤よりなる本体とを備え、さらに、前記容器部分に設けた注出穴を介して容器内に挿入されるパイプと、このパイプの下流側に接続されるノズルとを有する一方、前記カバーは、前記吸盤により前記容器及びカバーが壁面等の取付面に保持された状態で、ねじれが生じたときに壁面等の取付面に直接あるいは間接的に当接することによって、吸盤内に空気が流入するのを防止するため壁面等の取付面から外向きに働く力を発生させうる突起を背面側に有している。
【0008】
この発明において、壁面等の取付面から外向きに働く力とは、吸盤を壁面等の取付面とは直角な外向き方向に引き上げる力のことで、この力は壁面等の取付面に直接あるいは間接的に当接した突起を支点として発生する力である。これにより、吸盤の中央部に吸着力を発生させることができ、ねじれが生じても液体石鹸用ディスペンサーが壁面等の取付面から離れ落ち難くできる。
【0009】
この発明における壁面等の取付面とは、例えば洗面室、浴室、シャワー室またはトイレの壁面以外に、例えばステンレス製で、直方体形状のキャビネットの側面である縦面(垂直面)のように、各種の物品の、吸盤が吸着しうる材料よりなる縦面(垂直面)を含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
この発明では、吸盤によって容器及びカバーが壁面等の取付面に保持された状態で容器のドーム状部分を押し込むことにより、容器内の液体石鹸収納空間の内圧を高め、容器内に挿入されているパイプから適宜量の液体石鹸を注出できる。
【0011】
この発明では、持ち運び自在なハンディタイプのものであり、家の中は勿論のこと、キャンプや旅先などの外出時にも自由に持ち運びできるというように、設置場所を自由に変更できる。
【0012】
そして、設置場所を自由に変更できるので、使い勝手が良く、子供でもいろんな場所で使用できる。
【0013】
また、この発明では、液体石鹸を収納する容器を覆うカバーに吸盤を一体に設けることにより本体としたので、例えばカバーと吸盤を別体にして両者を凹凸構造等の機械的な着脱手段で着脱自在に強固に取り付けるといったものでは使用による着脱部の磨耗により着脱できなくなるおそれがあるという事態を回避でき、長期にわたって使用できるとともに、強度的に強く形成できる。そして、この発明では、カバーに吸盤を一体に設けることにより製造上のコストダウンを実現できる。
【0014】
さらに、この発明の液体石鹸用ディスペンサーは、吸盤に発生する吸着力により壁面等の取付面に取り付けられるものであるが、カバーが背面側に突起を有していることにより、容器のドーム状部分を押し込むことによる使用状態において発生するねじれに対して吸盤が容易に壁面等の取付面から外れ難くできる。すなわち、ねじれが生じたときに、突起が壁面等の取付面に直接あるいは間接的に当接することで吸盤の中央部に吸着力を発生させるための、壁面等の取付面から外向きに働く力を生じるからである。
【0015】
また、この発明では、液体石鹸が固着したり小さな異物の混入があっても、例えばパイプ、ノズルを容器の注出穴から取り外すとともに、本体の開口から容器を取り外して注出穴を介して容器内を水洗いできるので、液体石鹸補充動作も含めてメンテナンスは容易である。また、この発明では、ドーム状部分を押し込むことにより、容器内の液体石鹸収納空間の内圧を高めるという構造的に簡易な注出手法を採用しているので、上記従来例のような操作部材や液体石鹸注出ヘッドを用いた場合では部材が劣化し易く、故障し易いが、この発明では、上記従来例に比べて、用いる部材も少なく、また、部材が劣化し難いとともに、故障し難いといった利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を、図を参照しながら説明する。なお、それによってこの発明は限定されるものではない。
【0017】
図1〜図14は、この発明の第1の実施の形態を示し、図1〜図8は、液体石鹸用ディスペンサーを示し、図9〜図12は、カバー及びカバーと一体に形成された吸盤よりなる本体を示し、図13、図14は、カバーに覆われる容器部分とドーム状部分よりなる容器を示す。
【0018】
図1〜図18において、液体石鹸Sを収納する液体石鹸用ディスペンサー1は、合成樹脂製である。この液体石鹸用ディスペンサー1は、弾性変形自在なドーム状部分2及びこのドーム状部分2とで内部に液体石鹸収納空間3を形成する容器部分4よりなる容器5と、前記容器部分4をその背面4a側から嵌込み可能な大きさで正面視円形の開口6を有し、ドーム状部分2が膨出した状態で容器部分4を覆う有底筒状のカバー7及びこのカバー7の背面R側にカバー7と同一素材で一体成形された吸盤8よりなる本体9とを主として備えている。
前記吸盤8およびカバー7は、柔軟性を持たせるため、シリコン系のゴム材や軟質塩化ビニール等の合成樹脂よりなる半硬質部材で構成されている。そして吸盤8は、後述するように、中央部が周縁部よりも若干厚く構成して厚みに変化をつけることにより、略同一肉厚のカバー7に比してさらに柔軟性を持たせている。また、前記容器部分4は、開口6を介してカバー7内に強制的に収納し易くなるように、例えばポリプロピレンのような素材を用いたカバー7よりは硬質の硬質部材で構成されている。そして、容器部分4とドーム状部分2は例えば前記ポリプロピレンのような同一部材で一体に形成されているが、ドーム状部分2は形状が自然状態では凸レンズ形状をしているので、ドーム状部分2が前記前記ポリプロピレンのような硬質部材で構成されていても、弾性変形することには支障はない。
また、本体9あるいは容器5を着色材を用いて着色し、両者にコントラストを生み出すよう構成してもよい。本体9を例えば着色材を用いて青色にし、容器5の白色にすれば、白色のドーム状部分2が浮き立ち鮮明になり、ドーム状部分2の位置が分かりやすくできる機能的な効果以外に意匠的効果も生み出す。
そして、前記容器部分4には、上部の適宜の位置に注出穴10が設けられており、この注出穴10を介して容器5内に適宜長さのパイプ11が挿入されている。このパイプ11の下流側にはノズル12が接続されている。また、前記カバー7は、吸盤8により容器5及びカバー7が例えば洗面室の壁面13に保持された状態で、ねじれが生じたときに壁面13に間接的に当接することによって、吸盤8内に空気iが流入するのを防止するため壁面13から外向きに働く力F(図6に仮想線で示す)を発生させうる突起14を背面R側に有している。この突起14は、横長の略直方体形状で、吸盤8の容器部分4に対向する裏面8aにおける周縁部分8bに対向配置されている。突起14は、カバー7の背面Rにおける下部位置に設けられている。図12に示すように、突起14の横幅aは、吸盤8と容器部分4の連設部分Aの横幅よりも若干短く設定されており、突起14の縦幅bは突起14の上側と下側に位置する連設部分Aと周縁部分8b間の距離よりも短く、かつ、横幅aよりも短く設定されている。この突起14は、ねじれが生じたときに、壁面13に直接に当接することなく、図6に仮想線で示すように、吸盤8の周縁部分8bを介して間接的に壁面13に当接する位置に設けられている。しかし、この発明は突起14の設置位置、形状、大きさを限定されるものではなく、要は、ねじれが生じたときに壁面13に直接、あるいは間接的に当接することによって、吸盤8内に空気が流入するのを防止するため壁面13から外向きに働く力Fを発生させるように設けられるものであればよい。
【0019】
さらに、吸盤8は、自然状態では、その中央部が盛り上がるように(いわゆるコンタクトレンズの形状に近い形状となるように)構成されており、かつ、中央部が周縁部よりも若干厚くなっている。吸盤8は、自然状態では、図6に示すように、カバー7の正面視円形の背面Rと略同じ大きさの正面視円形形状を有する。また、吸盤8は、その周縁部に連設された略舌状の引っ張り片8aを有する。この引っ張り片8aは、壁面13に装着した前記ディスペンサー1を壁面13から取り外すために引っ張られるもので、その引っ張りを容易に行える形状になっている。
ノズル12は、注出流路15を介して前記注出穴10に連通する吐出口16を最下流側に有し、上流側に注出穴10に嵌め込まれる着脱自在な嵌込部17を有するノズル本体18と、このノズル本体18を上方側から覆うノズル蓋19とより構成されている。一方、パイプ11は、下流側の小径筒部20と上流側の大径筒部21よりなる。そして、前記嵌込部17は、前記小径筒部20の一端が着脱可能に接続されて注出流路15に連通するパイプ接続筒22と、これより大径で前記注出穴10に嵌め込まれる環状筒23とよりなる。
カバー7は、開口6の中央上部位置に正面側に開いた切欠き25を有する。そして、この切欠き25の内側に前記注出穴10が位置する形となる。
【0020】
而して、吸盤8によって容器5及びカバー7が壁面13に保持された状態で容器5のドーム状部分2を押し込むことにより、容器7内の液体石鹸収納空間3の内圧を高め、容器7内に挿入されているパイプ11から適宜量の液体石鹸Sを注出できる。
この場合、液体石鹸用ディスペンサー1は、持ち運び自在なハンディタイプのものであり、家の中は勿論のこと、キャンプや旅先などの外出時にも自由に持ち運びできるというように、設置場所を自由に変更できる。
そして、設置場所を自由に変更できるので、液体石鹸用ディスペンサー1を使い勝手が良く、子供でもいろんな場所で使用できる。
また、液体石鹸用ディスペンサー1では、液体石鹸Sを収納する容器7を覆うカバー7に吸盤8を一体に設けることにより本体9としたので、例えばカバーと吸盤を別体にして両者を凹凸構造等の機械的な着脱手段で着脱自在に強固に取り付けるといったものでは使用による着脱部の磨耗により着脱できなくなるおそれがあるという事態を回避でき、長期にわたって使用できるとともに、強度的に強く形成できる。
そして、液体石鹸用ディスペンサー1では、カバー7に吸盤8を一体に設けることにより製造上のコストダウンを実現できる。
さらに、液体石鹸用ディスペンサー1は、吸盤8に発生する吸着力により壁面13に取り付けられるものであるが、カバー7が背面R側に突起14を有していることにより、容器5のドーム状部分2を押し込むことによる使用状態において発生するねじれに対して吸盤8が容易に壁面13から外れ難くできる。すなわち、ねじれが生じたときに突起14が壁面13に吸盤8の周縁部分8bを介して間接的に当接することで吸盤8の中央部に吸着力を発生させるための、壁面13から外向きに働く力Fを生じるからである。
また、液体石鹸用ディスペンサー1では、液体石鹸Sが固着したり小さな異物の混入があっても、例えばパイプ11、ノズル12を容器5の注出穴10から取り外すとともに、本体9の開口6から容器9を取り外して注出穴10を介して容器9内を水洗いできるので、液体石鹸補充動作も含めてメンテナンスは容易である。また、液体石鹸用ディスペンサー1では、ドーム状部分2を押し込むことにより、容器9内の液体石鹸収納空間3の内圧を高めるという構造的に簡易な注出手法を採用しているので、上記従来例のような操作部材や液体石鹸注出ヘッドを用いた場合では部材が劣化し易く、故障し易いが、この液体石鹸用ディスペンサー1では、上記従来例に比べて、用いる部材も少なく、また、部材が劣化し難いとともに、故障し難いといった利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施の形態における液体石鹸用ディスペンサーの正面図である。
【図2】上記実施の形態における液体石鹸用ディスペンサーの背面図である。
【図3】上記実施の形態における液体石鹸用ディスペンサーの平面図である。
【図4】上記実施の形態における液体石鹸用ディスペンサーの底面図である。
【図5】上記実施の形態における液体石鹸用ディスペンサーの右側面図である。
【図6】上記実施の形態における液体石鹸用ディスペンサーの縦断面図である。
【図7】上記実施の形態における液体石鹸用ディスペンサーにおいて、正面側向かって右上側から見た斜視図である。
【図8】上記実施の形態における液体石鹸用ディスペンサーにおいて、正面側向かって右下側から見た斜視図である。
【図9】上記実施の形態における本体を示す斜視図である。
【図10】上記実施の形態における本体を示す上面図である。
【図11】上記実施の形態における本体を示す正面図である。
【図12】上記実施の形態における本体を示す底面図である。
【図13】上記実施の形態における容器を示す斜視図である。
【図14】上記実施の形態における容器を示す上面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 液体石鹸用ディスペンサー
2 ドーム状部分
3 液体石鹸収納空間
4 容器部分
4a 容器部分の背面
5 容器
6 開口
7 カバー
8 吸盤
9 本体
10 注出穴
11 パイプ
12 ノズル
13 壁面
14 突起
R カバーの背面
S 液体石鹸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体石鹸を収納する液体石鹸用ディスペンサーにおいて、弾性変形自在なドーム状部分及びこのドーム状部分とで内部に液体石鹸収納空間を形成する容器部分よりなる容器と、前記容器部分をその背面側から嵌込み可能な大きさの開口を有し、ドーム状部分が膨出した状態で前記容器部分を覆う有底筒状のカバー及びこのカバーの背面側に前記カバーと一体に形成された吸盤よりなる本体とを備え、さらに、前記容器部分に設けた注出穴を介して容器内に挿入されるパイプと、このパイプの下流側に接続されるノズルとを有する一方、前記カバーは、前記吸盤により前記容器及びカバーが壁面等の取付面に保持された状態で、ねじれが生じたときに壁面等の取付面に直接あるいは間接的に当接することによって、吸盤内に空気が流入するのを防止するため壁面等の取付面から外向きに働く力を発生させうる突起を背面側に有していることを特徴とする液体石鹸用ディスペンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−307052(P2007−307052A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137832(P2006−137832)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000144072)株式会社三栄水栓製作所 (111)