説明

液晶パネルの製造方法

【課題】真空注入法によって空セルに液晶材料を注入する場合でも、液晶材料の注入量を適正化することのできる液晶パネルの製造方法を提供すること。
【解決手段】液晶パネルを製造するにあたって、空セル形成工程で液晶パネル用の空セル3eを形成する際、大型基板10xの素子基板10が切り出される領域の外側に、空セル3eと内容積が相違するダミー空セル3gを形成しておき、液晶封入工程では、空セル3e内およびダミー空セル3g内に液晶材料50aの注入を行う。その際、ダミー空セル3gにおける液晶材料50aの充填率に伴う形状変化を監視すれば、空セル3eでの充填状態を把握することができるので、ダミー空セル3gの監視結果に基づいて、液晶パネル3用の空セル3e内への液晶材料50aの注入を終了するタイミングを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材の液晶注入口から空セル内に液晶材料を真空注入する液晶パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶装置は、画素トランジスターおよび画素電極等が形成された素子基板がシール材によって対向基板と貼り合わされた液晶パネルを有しており、素子基板と対向基板との間でシール材により囲まれた領域に液晶層が保持されている。このため、液晶パネルの製造工程では、素子基板と対向基板とをシール材で貼り合わせて、液晶注入口を備えた空セルを形成した後、真空注入法により液晶注入口から空セル内に液晶材料を注入することになる(特許文献1参照)。
【0003】
真空注入法による液晶材料の注入は、例えば、空セルが配置された雰囲気を真空状態から常圧に戻すことによって、素子基板上に塗布された液晶材料の注入を開始する。そして、空セル内に液晶材料が過剰に注入されてセルがわずかに膨らんだ時点で、セルの厚さが所定の寸法になるようにセルを加圧して過剰な液晶材料を液晶注入口から押し出し、この状態で、液晶注入口を封止材で塞ぐ。このような方法の場合、空セル内への液晶の注入を停止するタイミングは、セルを加圧するタイミングによって規定される。
【0004】
また、真空注入法による液晶材料の注入は、槽内に貯留された液晶材料に空セルの液晶注入口を真空雰囲気下で浸漬した後、常圧に戻すことによって行われる場合があり、この場合、空セル内への液晶の注入を停止するタイミングは、セルを槽から引き上げるタイミングによって規定される。
【0005】
一方、液晶封入工程として液晶滴下法を利用した工程が提案されており、かかる方法では、大型基板の素子基板が切り出される領域にシール材を塗布した後、シール材で囲まれた領域内に液晶材料を滴下し、その後、シール材によって対向基板を貼り合わせる(特許文献2参照)。かかる方法を採用した場合には、シール材に液晶注入口が設けられておらず、また、空セル内への液晶材料の注入量は、液晶材料の滴下量によって定まるため、空セル内への液晶の注入を停止するという概念が存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−107811号公報
【特許文献2】特開2005−107175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
真空注入法により液晶材料を注入する場合、空セル内に注入される液晶材料の量は、空セル内への液晶の注入を停止するタイミングによって制御されるが、かかるタイミングを適正に決定する方法がないため、空セル内に注入される液晶材料の量がばらつきやすいという問題点がある。すなわち、液晶の注入速度は、真空度や液晶材料の粘度等によって変動するため、処理時間だけの管理では、空セル内に注入される液晶材料の量を適正に管理することが困難である。
【0008】
かかる問題点は、真空注入法を採用した場合に特有の問題点であり、液晶滴下法を利用した場合、このような問題は発生しない。それ故、特許文献2には、真空注入法を採用した場合の上記の問題点については一切、記載されていない。
【0009】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、真空注入法によって空セルに液晶材料を注入する場合でも、液晶材料の注入量を適正化することのできる液晶パネルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、大型基板の素子基板が切り出される領域と対向基板とをシール材で貼り合わせて液晶注入口を備えた液晶パネル用の空セルを形成する空セル形成工程と、真空注入法により前記液晶注入口から前記空セル内に液晶材料を注入した後、前記液晶注入口を封止材で塞ぐ液晶封入工程と、前記大型基板を切断する切断工程と、を有する液晶パネルの製造方法において、前記空セル形成工程では、前記大型基板の前記素子基板が切り出される領域の外側に前記空セルと内容積の異なるダミー空セルを形成し、前記液晶封入工程では、前記空セル内および前記ダミー空セル内に前記液晶材料の注入を開始した後、前記ダミー空セルに対する監視結果に基づいて、前記空セル内への前記液晶材料の注入を終了するタイミングを決定することを特徴とする。
【0011】
本発明においては、素子基板が大型基板の状態で空セル形成工程および液晶封入工程が実施されることから、空セル形成工程で液晶パネル用の空セルを形成する際、大型基板の素子基板が切り出される領域の外側にダミー空セルを形成しておき、液晶封入工程では、空セル内およびダミー空セル内に液晶材料の注入を行う。その際、注入の進行にともなって、空セルおよびダミー空セルは、形状等が変化していく。ここで、空セルとダミー空セルとでは、内容積が異なるため、いずれのタイミングでも、空セルとダミー空セルとでは、液晶材料の充填率が相違する。それ故、空セルとダミー空セルとでは形状変化の度合い等も異なり、空セルでは、形状変化等を明確に確認できないタイミングでも、ダミー空セルで明確に監視することができる。従って、大型基板1枚毎に、ダミー空セルにおける液晶材料の充填率に伴う形状変化等を監視すれば、空セルでの充填状態を把握することができるので、ダミー空セルの監視結果に基づいて、液晶パネル用の空セル内への液晶材料の注入を終了するタイミングを適正に決定することができる。よって、真空注入法によって空セルに液晶材料を注入する場合でも、空セルへの液晶材料の注入量を適正化することができる。
【0012】
本発明において、前記ダミー空セルとして、少なくとも、前記空セルより内容積の小さなダミー空セルを形成することが好ましい。かかる構成によれば、ダミー空セルは、空セルよりも形状変化等が確実に先行するので、空セルでは監視できない形状変化等をダミー空セルで監視することができる。従って、ダミー空セルにおける液晶材料の充填率に伴う形状変化等を監視すれば、空セルでの充填状態を先行して把握することができる。それ故、大型基板1枚毎に、ダミー空セルの監視結果に基づいて、液晶パネル用の空セル内への液晶材料の注入を終了するタイミングを、より適正に決定することができるので、真空注入法によって空セルに液晶材料を注入する場合でも、空セルへの液晶材料の注入量をより適正化することができる。
【0013】
本発明において、前記ダミー空セルとして、内容積が異なる複数のダミー空セルを形成することが好ましい。かかる構成によれば、内容積が異なる複数のダミー空セルの監視結果に基づいて、液晶パネル用の空セル内への液晶材料の注入を終了するタイミングを、より適正に決定することができるので、真空注入法によって空セルに液晶材料を注入する場合でも、空セルへの液晶材料の注入量をより適正化することができる。
【0014】
本発明において、前記液晶封入工程では、例えば、前記ダミー空セルの形状変化を監視する。液晶材料の充填が進行すれば、空セルおよびダミー空セルが膨らんでいくので、液晶材料の充填状態を容易に把握することができる。
【0015】
この場合、前記液晶封入工程では、前記ダミー空セルで発生するニュートンリングの監視結果に基づいて、前記ダミー空セルの形状変化を監視することが好ましい。ニュートンリングであれば、目視等でも容易に監視することができるので、液晶パネル用の空セル内への液晶材料の注入を終了するタイミングを、容易に決定することができる。
【0016】
本発明において、前記液晶封入工程では、前記空セルおよび前記ダミー空セルが配置された雰囲気を真空状態から真空度を低下させた状態に変化させて前記大型基板上に塗布された前記液晶材料の注入を開始した後、前記大型基板および前記対向基板のうちの少なくとも一方を加圧して前記液晶材料の注入を終了する構成を採用することができる。
【0017】
本発明において、前記液晶封入工程では、真空雰囲気中で前記液晶注入口を槽に貯留された前記液晶材料に浸漬した後、真空度を低下させて前記液晶材料の注入を開始し、前記液晶注入口を前記液晶材料の液面から離間させて前記液晶材料の注入を終了する構成を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る液晶装置に用いた液晶パネルの説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る液晶パネルの製造工程を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る液晶パネルの製造工程で用いる大型基板等の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る液晶パネルの製造工程で形成した空セル等の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る液晶パネルの製造工程で形成した空セルの形状変化等の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る液晶パネルの製造工程において、液晶材料の注入を別のタイミングで停止する場合の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る液晶パネルの製造工程のうち、液晶封入工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0020】
[実施の形態1]
(液晶装置の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る液晶装置に用いた液晶パネルの説明図であり、図1(a)、(b)は各々、液晶パネルを各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図、およびそのH−H′断面図である。
【0021】
図1(a)、(b)に示すように、液晶装置1は、素子基板10と対向基板20とが所定の隙間を介してシール材107によって貼り合わされた液晶パネル3を有している。液晶パネル3において、シール材107は対向基板20の外縁に沿うように枠状に設けられており、素子基板10と対向基板20との間においてシール材107により囲まれた領域内に液晶層50が保持されている。シール材107は、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー、あるいはガラスビーズ等のギャップ材が配合されている。シール材107は、途切れ部分からなる液晶注入口107aを有しており、液晶注入口107aは封止材106によって塞がれている。
【0022】
本形態において、素子基板10および対向基板20はいずれも四角形であり、素子基板10は、X方向に延在するとともにY方向で互いに対向する2つの端部10a、10bと、Y方向に延在するとともにX方向で互いに対向する2つの端部10c、10dとを備えている。また、対向基板20は、X方向に延在するとともにY方向で互いに対向する2つの端部20a、20bと、Y方向に延在するとともにX方向で互いに対向する2つの端部20c、20dとを備えている。液晶パネル3の略中央には、画素領域1a(画像表示領域)が四角形の領域として設けられている。かかる形状に対応して、シール材107も略四角形に設けられ、シール材107の内周縁と画素領域1aの外周縁との間には、略四角形の周辺領域1bが額縁状に設けられている。素子基板10の一方側の基板面において、画素領域1aには、画素トランジスター(図示せず)や画素電極9aがマトリクス状に形成されており、かかる画素電極9aの上層側には配向膜16が形成されている。また、素子基板10の一方面側において、周辺領域1bには、画素電極9aと同時形成されたダミー画素電極9bが形成されている。
【0023】
素子基板10は、対向基板20の端部20aから一方側(Y方向)に張り出した張出領域105を備えており、かかる張出領域105には、素子基板10の一方側の端部10aに沿って複数の端子102が形成されている。張出領域105では、端子102が配列されている領域に対して端部10aが位置する側とは反対側にデータ線駆動回路101が形成されている。また、素子基板10には、X方向で対向する端部10c、10dに沿って走査線駆動回路104が形成されている。なお、端子102には、フレキシブル配線基板(図示せず)が接続されており、素子基板10には、フレキシブル配線基板を介して各種電位や各種信号が入力される。
【0024】
対向基板20において素子基板10と対向する一方面側には共通電極21が形成されており、共通電極21の上層には配向膜26が形成されている。共通電極21は、対向基板20の略全面あるいは複数の帯状電極として複数の画素に跨って形成されている。本形態において、共通電極21は対向基板20の全面に形成されている。また、対向基板20において素子基板10と対向する一方面側には、共通電極21の下層側に遮光層108が形成されている。本形態において、遮光層108は、画素領域1aの外周縁に沿って延在する額縁状に形成されており、見切りとして機能する。ここで、遮光層108の外周縁は、シール材107の内周縁との間に隙間を隔てた位置にあり、遮光層108とシール材107とは重なっていない。なお、対向基板20において、遮光層108は、隣り合う画素電極9aにより挟まれた領域と重なる位置等にも形成されることがある。
【0025】
このように構成した液晶パネル3において、素子基板10には、シール材107より外側において対向基板20の角部分と重なる位置に、素子基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通用電極109が形成されている。かかる基板間導通用電極109には、導電粒子を含んだ基板間導通材109aが配置されており、対向基板20の共通電極21は、基板間導通材109aおよび基板間導通用電極109を介して、素子基板10側に電気的に接続されている。
【0026】
かかる構成の液晶装置1において、画素電極9aおよび共通電極21を透光性導電膜により形成すると、透過型の液晶装置を構成することができる。これに対して、共通電極21を透光性導電膜により形成し、画素電極9aを反射性電極として構成すると、反射型の液晶装置を構成することができる。液晶装置1は、モバイルコンピューター、携帯電話機等といった電子機器のカラー表示装置として用いることができ、この場合、対向基板20には、カラーフィルター(図示せず)や保護膜が形成される。また、液晶装置1では、使用する液晶層50の種類や、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板等が液晶パネル3に対して所定の向きに配置される。さらに、液晶装置1は、投射型表示装置(液晶プロジェクター)において、RGB用のライトバルブとして用いることができる。この場合、RGB用の各液晶装置1の各々には、RGB色分解用のダイクロイックミラーを介して分解された各色の光が投射光として各々入射されることになるので、カラーフィルターは形成されない。
【0027】
(液晶パネル3の製造方法の概要)
図2は、本発明の実施の形態1に係る液晶パネル3の製造工程を示す説明図である。図1および図2に示すように、液晶パネル3を製造するには、まず、素子基板10に対して画素電極9a等の形成工程S1を行った後、斜方蒸着法、印刷法、スピンコート法等により配向膜16を形成する配向膜形成工程S2を行う。配向膜16がポリイミド膜からなる場合には、配向膜形成工程S2の後、配向膜16に対するラビング工程S3を行う。一方、対向基板20に対しては、共通電極21等の形成工程S11を行った後、斜方蒸着法、印刷法、スピンコート法等により配向膜26を形成する配向膜形成工程S12を行う。配向膜26がポリイミド膜からなる場合には、配向膜形成工程S12の後、配向膜26に対するラビング工程S13を行う。
【0028】
次に、空セル形成工程S20では、素子基板10と対向基板20とをシール材107で貼り合わせて液晶注入口107aを備えた液晶パネル3用の空セル3eを形成する。より具体的には、まず、素子基板10に対してシール材107を塗布するシール印刷工程S21を行う。かかるシール材107の塗布は、ノズルからシール材を突出しながら、ノズルと素子基板10とを相対移動させて、シール材107を矩形枠状に描画する。次に、シール材107によって素子基板10と対向基板20とを貼り合わせる貼り合わせ工程S25を行う。かかる貼り合わせ工程S25では、まず、重ね合わせ工程S22において、シール材107を間に挟んで素子基板10と対向基板20とを重ね合わせ、その後に、シール硬化工程S23においてシール材107を硬化させ、空セル3eを構成する。かかるシール硬化工程S23では、例えば、対向基板20側からUV光等を照射してシール材107を硬化させる。
【0029】
次に、液晶封入工程S30では、空セル3e内に液晶材料50aを注入した後、液晶注入口107aを封止材106で塞ぐ。かかる液晶封入工程S30では、まず、液晶注入工程S31において、真空注入法により、液晶注入口107aから空セル3e内に液晶材料50aを注入した後、封止工程S32において、液晶注入口107aに光硬化性樹脂からなる封止材106を塗布し、その後、封止材106を光硬化させて液晶注入口107aを封止材106で塞ぐ。
【0030】
本形態では、かかる工程までは、素子基板10として、後述する大型基板を用い、液晶封入工程S30の後、切断工程S40において、大型基板を単品サイズの素子基板10に切断して、単品サイズの液晶パネル3を得る。
【0031】
(液晶パネル3の製造方法の具体的構成)
図3は、本発明の実施の形態1に係る液晶パネル3の製造工程で用いる大型基板等の説明図である。図4は、本発明の実施の形態1に係る液晶パネル3の製造工程で形成した空セル等の説明図である。図5は、本発明の実施の形態1に係る液晶パネル3の製造工程で形成した空セルの形状変化等の説明図である。図6は、本発明の実施の形態1に係る液晶パネル3の製造工程において、液晶材料50aの注入を別のタイミングで停止する場合の説明図である。なお、図6(a−1)〜(a−4)および図6(b−1)〜(b−4)に示す各時点は、図5(a−1)〜(a−4)および図5(b−1)〜(b−4)に示す各時点と各々対応しており、図6(a−5)〜(a−7)および図6(b−5)には、図5(a−4)および図5(b−4)を参照して説明する工程以降の様子を示してある。また、以下の説明では、空セル3e側とダミー空セル3gとを区別するにあたって、液晶材料50aの注入前後のいずれにおいても「空セル3e」「ダミー空セル3g」として説明する。
【0032】
図2を参照して説明した工程により液晶パネル3を得るにあたって、本形態では、画素電極9a等の形成工程S1から液晶封入工程S30までは、図3(a)に示すように、実線L11で示す素子基板10を多数取りできる大型基板10xの状態で行う。本形態において、大型基板10xをシリコンウェーハと同様、円板状であり、かかる大型基板10xにおいて、複数の素子基板10が切り出される領域(一点鎖線Lyで囲んだ領域)が有効領域10yであり、それ以外の領域は、図2に示す切断工程S40で除去される無効領域10z(除材領域/一点鎖線Lyで囲んだ領域の外側)である。かかる無効領域10zでは、素子基板10を切り出そうにも幅寸法が狭く、点線Lzで示すように、一部が欠けた素子基板しか得ることができない。
【0033】
かかる大型基板10xを用いて液晶パネル3を製造するには、図2を参照して説明した空セル形成工程S20において、シール印刷工程S21では、図3(b)に示すように、大型基板10xのうち、素子基板10を切り出す複数の領域の各々にシール材107を枠状に印刷する。その際、シール材107に途切れ部分からなる液晶注入口107aを形成する。
【0034】
また、本形態では、シール印刷工程S21において、無効領域10zにもシール材107を枠状に塗布する。その際、無効領域10zに形成したシール材107にも液晶注入口107aを設ける。ここで、無効領域10zにおいてシール材107で囲んだ領域107gは、有効領域10yにおいてシール材107で囲んだ領域107eと平面積が相違する。本形態では、無効領域10zにおいてシール材107で囲んだ領域107gは、有効領域10yにおいてシール材107で囲んだ領域107eより平面積が小さい。また、無効領域10zにおいては、シール材107で囲んだ領域107gが3個所あり、本形態では、3つの領域107g1、107g2、107g3における平面積が相違する。従って、領域107e、107g(領域107g1、107g2、107g3)の平面積は以下の関係にある。
領域107g1<領域107g2<領域107g3<領域1e
【0035】
次に、貼り合わせ工程S25では、図4(a)に示すように、大型基板10xの素子基板10として切り出される複数の領域の各々に対して対向基板20を重ねた後、シール材107を硬化させる。本形態では、対向基板20は単品サイズの大きさであり、大型基板10xの素子基板10として切り出される領域(有効領域10y)には、液晶注入口107aを備えた複数の空セル3eが形成される。その際、大型基板10xの無効領域10zのうち、シール材107が設けられている領域にも対向基板20gを重ね、シール材107を硬化させる。その結果、無効領域10zには、液晶注入口107aを備えたダミー空セル3gが形成される。ここで、ダミー空セル3gは、平面積が異なる3つのダミー空セル3g1、3g2、3g3として形成され、3つのダミー空セル3g1、3g2、3g3の内容積、および空セル3eの内容積は、以下の関係にあり、内容積が相違する。
ダミー空セル3g1<ダミー空セル3g2<ダミー空セル3g3<空セル3e
【0036】
また、ダミー空セル3gに用いた対向基板20gは、空セル3eに用いた対向基板20と厚さや材質が同じであり、形状のみが相違する。
【0037】
次に、図2を参照して説明した液晶封入工程S30において、液晶注入工程S31では、図4(b)に示すように、真空注入法により、液晶注入口107aから空セル3e内に液晶材料50aを注入するとともに、ダミー空セル3g内にも液晶材料50aを注入する。
【0038】
かかる液晶封入工程S30では、空セル3eおよびダミー空セル3gが配置された雰囲気を真空状態から真空度を低下させた状態(常圧状態)に変化させて大型基板10x上に塗布された液晶材料50aの注入を開始した後、対向基板20、20gおよび大型基板10xのうちの少なくとも一方を加圧して液晶材料50aの注入を終了する。
【0039】
より具体的には、空セル3eおよびダミー空セル3gを真空雰囲気に配置し、この状態で大型基板10xの空セル3eおよびダミー空セル3gの近傍に液晶材料50aを滴下すると、液晶材料50aは対向基板20、20gの端部を伝って液晶注入口107aに向けて流れる。従って、空セル3eおよびダミー空セル3gが配置されている領域を常圧に戻すと、その差圧によって、液晶材料50aは液晶注入口107aから空セル3eおよびダミー空セル3gの内部に注入される。しかる後には、液晶注入口107aを封止材106で塞ぎ、その後、図2を参照して説明した切断工程S40において大型基板10xの有効領域10yを素子基板10のサイズに切断し、複数の液晶パネル3を得る。
【0040】
かかる液晶封入工程S30において、本形態では、ダミー空セル3gに対する監視結果に基づいて、空セル3e内への液晶材料50aの注入を終了するタイミングを決定する。より具体的には、空セル3eおよびダミー空セル3gを真空雰囲気状態から常圧に戻した際、図5(a−1)、(b−1)に示すように、空セル3eおよびダミー空セル3gは内側に凹んだ状態にあり、その後、液晶材料50aの注入が進行するに伴い、図5(a−1)〜(a−4)、(b−1)〜(b−4)に示すように、空セル3eおよびダミー空セル3gは徐々に膨らんでいく。
【0041】
ここで、空セル3eとダミー空セル3gとでは、内容積が異なるため、いずれのタイミングでも、空セル3eとダミー空セル3gとでは、液晶材料50aの充填率が相違する。従って、空セル3eとダミー空セル3gとでは形状変化の度合いも異なり、空セル3eでは監視できない形状変化をダミー空セル3gで監視することができる。それ故、図4(c)に示すように、空セル3eとダミー空セル3gとでは、背後から光源光を照射した際に観察されるニュートンリングの様子が相違する。
【0042】
より具体的には、ダミー空セル3gは、空セル3eより内容積が小さいので、ダミー空セル3gは、空セル3eより先行して形状が変化する。例えば、ダミー空セル3gは、図5(b−2)に示す時点までは凹んだ状態にあって、図5(b−3)に示す時点で大型基板10xおよび対向基板20の凹みが解消される。その後、ダミー空セル3gは、図5(b−4)に示す時点で膨らむことになる。これに対して、空セル3eは、図5(a−3)に示す時点までは凹んだ状態にあって、図5(a−4)に示す時点で大型基板10xおよび対向基板20の撓みが解消される。
【0043】
そこで、本形態では、ダミー空セル3gの形状に対する監視結果に基づいて、空セル3e内への液晶材料50aの注入を終了するタイミングを決定する。より具体的には、本形態では、ダミー空セル3gで発生するニュートンリングを監視することによって、ダミー空セル3gの形状を監視し、かかる監視結果に基づいて、空セル3e内への液晶材料50aの注入を終了する。すなわち、ダミー空セル3gは、図5(b−2)に示す時点まではニュートンリングが発生し、図5(b−3)に示す時点で大型基板10xおよび対向基板20の撓みが解消されるので、ニュートンリングが消失する。その後、ダミー空セル3gは、図5(b−4)に示す時点で膨らむことになるので、ニュートンリングが再び発生する。これに対して、空セル3eは、図5(a−3)に示す時点まではニュートンリングが発生し、図5(a−4)に示す時点で大型基板10xおよび対向基板20の撓みが解消されるので、ニュートンリングが消失する。
【0044】
従って、例えば、ダミー空セル3gにニュートンリングが再び発生したことを確認した時点(図5(b−4)に示す時点)において、図5(a−4)に矢印Fで示すように、空セル3eの対向基板20を大型基板10xに向けて加圧して液晶材料50aの注入を停止し、この状態で、図5(a−5)に示すように、封止材106によって液晶注入口107aを塞ぐ。その結果、液晶パネル3では、液晶材料50aが適正な量が充填されることになる。
【0045】
また、ダミー空セル3gの側でニュートンリングが消失したことを確認した時点(図5(b−3)に示す時点)から一定の時間が経過した時点(図5(b−4)に示す時点)において、図5(a−4)に矢印Fで示すように、空セル3eの対向基板20を大型基板10xに向けて加圧し、液晶材料50aの注入を停止するとともにセル厚を調整してもよい。この場合も、空セル3eの対向基板20を大型基板10xに向けて加圧した状態で、図5(a−5)に示すように、封止材106によって液晶注入口107aを塞ぐことになる。
【0046】
さらに、図6において、ダミー空セル3gの側でニュートンリングが再び発生したことを確認した時点(図6(b−4)に示す時点)から一定の時間が経過した時点(図6(b−5)に示す時点)において、図6(a−5)に矢印Fで示すように、空セル3eの対向基板20を大型基板10xに向けて加圧して液晶材料50aの注入を停止してもよい。また、ダミー空セル3gの側でニュートンリングが明確に確認できた時点(図6(b−5)に示す時点)で、図5(a−5)に矢印Fで示すように、空セル3eの対向基板20を大型基板10xに向けて加圧して液晶材料50aの注入を停止してもよい。これらの場合、図6(a−6)に示すように、空セル3eの対向基板20を大型基板10xに向けて加圧して液晶材料50aの一部を液晶注入口107aから抜いてセル厚を調整した後、図6(a−7)に示すように、封止材106によって液晶注入口107aを塞ぐことになる。
【0047】
このようにして、ダミー空セル3gの監視結果に基づいて、空セル3eの側で液晶材料50aの注入を停止するタイミングを決定するにあたって、本形態では、ダミー空セル3gとして、内容積が異なる3つのダミー空セル3g1、3g2、3g3が設けられており、液晶材料50aの注入にともなって発生する形状変化(ニュートンリングの変化)は、内容積が小さなダミー空セル3gで先行して発生する。それ故、ダミー空セル3g1、3g2、3g3での形状変化(ニュートンリングの変化)の監視結果を比較し、その比較結果に基づいて、空セル3eの側で液晶材料50aの注入を停止するタイミングを決定してもよい。かかる構成によれば、内容積が1種類のダミー空セル3gに対する監視結果を利用する場合よりも、空セル3eに液晶材料50aが適正な量で注入されるタイミングを確実に予測することができるので、液晶材料50aの注入を停止するタイミングを適正に決定することができる。
【0048】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、素子基板10が大型基板10xの状態で空セル形成工程および液晶封入工程が実施されることから、空セル形成工程で液晶パネル3用の空セル3eを形成する際、大型基板10xの素子基板10が切り出される領域の外側にダミー空セル3gを形成しておき、液晶封入工程では、空セル3e内およびダミー空セル3g内に液晶材料50aの注入を行う。その際、注入の進行にともなって、空セル3eおよびダミー空セル3gは、形状が変化していく。ここで、空セル3eとダミー空セル3gとでは、内容積が異なるため、いずれのタイミングでも、空セル3eとダミー空セル3gとでは、液晶材料の充填率が相違する。それ故、空セル3eとダミー空セル3gとでは形状変化の度合いも異なり、空セル3eでは監視できない形状変化をダミー空セル3gで監視することができる。従って、大型基板10x毎に、ダミー空セル3gにおける液晶材料50aの充填率に伴う形状変化を監視すれば、空セル3eでの充填状態を把握することができる。それ故、大型基板10x毎に、ダミー空セル3gの監視結果に基づいて、液晶パネル3用の空セル3e内への液晶材料50aの注入を終了するタイミングを適正に決定することができる。よって、真空注入法によって空セル3eに液晶材料50aを注入する場合でも、空セル3eへの液晶材料50aの注入量を適正化することができる。
【0049】
また、本形態では、ダミー空セル3gとして、空セル3eより内容積の小さなダミー空セルを形成してあり、ダミー空セル3gは、空セル3eよりも形状変化が確実に先行する。従って、空セル3eでは監視できない形状変化をダミー空セル3gで先に監視することができる。従って、ダミー空セル3gにおける液晶材料50aの充填率に伴う形状変化を監視すれば、空セル3eでの充填状態を事前に確実に把握することができる。また、ダミー空セル3gとして、空セル3eより内容積の小さなダミー空セルを形成する場合であれば、大型基板10xの無効領域10zが狭くても、必要な数のダミー空セル3gを形成することができる。
【0050】
しかも、本形態では、ダミー空セル3gとして、内容積が異なる複数のダミー空セル3g1、3g2、3g3を形成したため、ダミー空セル3g1、3g2、3g3の監視結果を比較した結果に基づいて、空セル3e内への液晶材料50aの注入を終了するタイミングを、より適正に決定することができる。よって、それ故、真空注入法によって空セル3eに液晶材料50aを注入する場合でも、空セル3eへの液晶材料50aの注入量をより適正化することができる。
【0051】
[実施の形態1の変形例]
実施の形態1では、大型基板10xの素子基板10が切り出される領域と、単品サイズの対向基板20とをシール材107で貼り合わせたが、対向基板として、単品サイズの対向基板20を複数取りできる大型基板を用いた場合に実施の形態1の構成を採用してもよい。この場合、切断工程において、大型基板10xを切断する際、対向基板20用の大型基板も切断することになる。
【0052】
[実施の形態2]
図7は、本発明の実施の形態2に係る液晶パネル3の製造工程のうち、液晶封入工程を示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0053】
実施の形態1では、大型基板10xに液晶材料50aを滴下して空セル3e内への液晶材料50aの注入を行ったが、本形態では、図7に示すように、張出領域105が位置する側とは反対側に液晶注入口107aを設け、真空雰囲気中で液晶注入口107aを槽50eに貯留された液晶材料50aに浸漬した後、真空度を低下させて液晶材料50aの注入を開始する。かかる注入方法の場合、液晶注入口107aを液晶材料50aの液面から離間させて液晶材料50aの注入を終了することになる。
【0054】
かかる構成でも、本形態では、大型基板10xの素子基板10が切り出される領域の外側にダミー空セル3gを形成しておき、液晶封入工程では、空セル3e内およびダミー空セル3g内に液晶材料50aの注入を行う。このため、ダミー空セル3gの監視結果に基づいて、液晶パネル3用の空セル3e内への液晶材料50aの注入を終了するタイミングを適正に決定することができるので、真空注入法によって空セル3eに液晶材料50aを注入する場合でも、空セル3eへの液晶材料50aの注入量を適正化することができる等、実施の形態1と同様な効果を奏することができる。
【0055】
なお、図7に示す形態では、大型基板10xに対して大型の対向基板20xをシール材107で貼り合わせて複数の空セル3eを形成したため、図2を参照して切断工程S40では、大型基板10xを切断するとともに、大型の対向基板20xも切断する。また、大型の対向基板20xを切断して張出領域105を露出させることになる。
【0056】
なお、大型基板10xの素子基板10が切り出される領域と単品サイズの対向基板20とをシール材107で貼り合わせて、図7に示す真空注入を行う場合に本発明を適用してもよい。
【0057】
[他の液晶装置]
上記実施の形態では、ダミー空セル3gの形状変化を監視するにあたって、ニュートンリングを監視したが、レーザー光等を利用した測定装置によって、ダミー空セル3gの厚さを監視し、その監視結果に基づいて、液晶材料50aの注入を終了するタイミングを決定してもよい。
【0058】
上記実施の形態では、空セル3eより内容積が小さなダミー空セル3gを形成したが、空セル3eより内容積が大きなダミー空セル3gを形成し、ダミー空セル3gの形状変化の監視結果に基づいて、液晶材料50aの注入を停止するタイミングを決定してもよい。この場合、例えば、大きなダミー空セル3gでニュートンリングが消失した際に液晶材料50aの注入を停止すれば、空セル3eが膨らんだ状態にある。従って、空セル3eの対向基板20を加圧してセル厚を調整した後、封止材106によって液晶注入口107aを塞ぐことになる。
【0059】
上記実施の形態では、液晶パネル3として透過型の液晶パネル3を例示したが、反射型の液晶パネル3の製造方法に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1・・液晶装置、3・・液晶パネル、3e・・空セル、3g・・ダミー空セル、9a・・画素電極、10・・素子基板、10x・・大型基板、20・・対向基板、21・・共通電極、50・・液晶層、50a・・液晶材料、106・・封止材、107・・シール材、107a・・液晶注入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型基板の素子基板が切り出される領域と対向基板とをシール材で貼り合わせて液晶注入口を備えた液晶パネル用の空セルを形成する空セル形成工程と、
真空注入法により前記液晶注入口から前記空セル内に液晶材料を注入した後、前記液晶注入口を封止材で塞ぐ液晶封入工程と、
前記大型基板を切断する切断工程と、
を有する液晶パネルの製造方法において、
前記空セル形成工程では、前記大型基板の前記素子基板が切り出される領域の外側に前記空セルと内容積の異なるダミー空セルを形成し、
前記液晶封入工程では、前記空セル内および前記ダミー空セル内に前記液晶材料の注入を開始した後、前記ダミー空セルに対する監視結果に基づいて、前記空セル内への前記液晶材料の注入を終了するタイミングを決定することを特徴とする液晶パネルの製造方法。
【請求項2】
前記ダミー空セルとして、少なくとも、前記空セルより内容積の小さなダミー空セルを形成することを特徴とする請求項1に記載の液晶パネルの製造方法。
【請求項3】
前記ダミー空セルとして、内容積が異なる複数のダミー空セルを形成することを特徴とする請求項1または2に記載の液晶パネルの製造方法。
【請求項4】
前記液晶封入工程では、前記ダミー空セルの形状変化を監視することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の液晶パネルの製造方法。
【請求項5】
前記液晶封入工程では、前記ダミー空セルで発生するニュートンリングの監視結果に基づいて、前記ダミー空セルの形状変化を監視することを特徴とする請求項4に記載の液晶パネルの製造方法。
【請求項6】
前記液晶封入工程では、前記空セルおよび前記ダミー空セルが配置された雰囲気を真空状態から真空度を低下させた状態に変化させて前記大型基板上に塗布された前記液晶材料の注入を開始した後、前記大型基板および前記対向基板のうちの少なくとも一方を加圧して前記液晶材料の注入を終了することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の液晶パネルの製造方法。
【請求項7】
前記液晶封入工程では、真空雰囲気中で前記液晶注入口を槽に貯留された前記液晶材料に浸漬した後、真空度を低下させて前記液晶材料の注入を開始し、前記液晶注入口を前記液晶材料の液面から離間させて前記液晶材料の注入を終了することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の液晶パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−109260(P2013−109260A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255859(P2011−255859)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】