説明

液晶組成物、液晶素子、反射型表示材料、調光材料および化合物

【課題】液晶に対する高い溶解性と、高いオーダーパラメーターと、高い耐光性とを両立できる液晶組成物、化合物、液晶素子、反射型表示材料、調光材料を提供する。
【解決手段】下式(1)で表される化合物と、液晶と、を含む。式中、R〜Rのうち少なくとも一つが液晶性置換基であり、液晶性置換基以外のR〜RはH又は置換基、X及びYはアルキル基など、ZはC3以上のアルキル基など、Aは酸素原子など、nは0又は1を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶組成物、液晶素子、反射型表示材料、調光材料および化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶素子(液晶表示素子)については、既に多くの方式が提案されており、ゲスト−ホスト方式の液晶素子は、偏光板を用いないことから、反射型においては、明るい画像表示、透過型においては、透明時が明るい調光用などに適した液晶素子として期待されている。ゲスト−ホスト方式の液晶素子では、二色性色素を液晶中に溶解させ、電場による液晶の動きに合わせた二色性色素の配向変化によって、着色、消色を切り替える。
【0003】
ゲストホスト方式については、各種文献(例えば、非特許文献1参照)に記載がある。ゲスト−ホスト方式の液晶素子に用いられる二色性色素には、適切な吸収特性、高いオーダーパラメーター、高いホスト液晶に対する溶解性、耐久性などが要求されている。
【0004】
二色性色素として、二色比、溶解性、耐久性の観点から、特にアゾ系とアントラキノン系が広く研究されてきたが、アゾ系は、オーダーパラメーター、溶解性は良好なものの、耐光性が低いという欠点があった。
【0005】
一方、アントラキノン色素は、耐光性は高いが、ホスト液晶に対する溶解性が低いという欠点があった。溶解性とオーダーパラメーターを両立させるべく、液晶性置換基をアントラキノン骨格に導入し、液晶との相溶性を上げるなど、多くの研究者により鋭意研究されてきた(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。しかしながら、それでもまだ溶解性は十分ではなかった。
【特許文献1】特開昭58−57488号公報
【特許文献2】特開平1−252691号公報
【特許文献3】特開昭62−277471号公報
【非特許文献1】B. Bahadur著、D. Demus, J. Goodby, G. W. Gray, H. W. Spiess, V. Vill編、Handbook of Liquid Crystals, Vol. 2A, Wiley-VCH社、1998年、第3.4章、第257〜302頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第一の課題は、液晶に対する高い溶解性と、高いオーダーパラメーターと、高い耐光性とを両立できる液晶組成物、化合物を提供することである。
更に、本発明の第二の課題は、高いオーダーパラメーターと高い耐光性とを両立できるゲストホスト方式による液晶素子、反射型表示材料、調光材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
下記一般式(1)の化合物のように、3,4,5位に置換基を有するフェニル基を、アントラキノン骨格の二色性色素の2位の位置に直接結合させることで、アントラキノン母核から僅かに離れた位置が、立体的に嵩高くなる。これとともに、アントラキノン骨格に液晶性基を導入することにより、飛躍的に、オーダーパラメーターが向上するだけでなく、液晶に対する溶解性が向上することを見出した。さらに、この二色性色素を、液晶に高濃度で溶解させても、粘性の上昇が小さいという予期せぬ効果が得られた。
したがって、上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0008】
[1] 下記一般式(1)で表される化合物と、液晶と、を含むことを特徴とする液晶組成物である。
【0009】
【化1】

【0010】
一般式(1)中、R、R、R、R、R、R及びRのうち少なくとも一つが液晶性置換基であり、液晶性置換基以外のR、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。X及びYは、各々独立に、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、又はアルキルチオ基を表す。Zは、炭素数3以上のアルキル基、アシル基、又はアリール基を表す。Aは、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表す。nは0又は1を表す。
【0011】
[2] 前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする前記[1]に記載の液晶組成物である。
【0012】
【化2】

【0013】
一般式(2)中、R、R、R、R、R、R及びRのうち少なくとも一つが液晶性置換基であり、液晶性置換基以外のR、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。X及びYは、各々独立に、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、又はアルキルチオ基を表す。Zは、炭素数3以上のアルキル基、アシル基、又はアリール基を表す。
【0014】
[3] 前記一般式(2)で表される化合物において、X及びYが、各々独立にアルキル基又は塩素原子であることを特徴とする前記[2]に記載の液晶組成物である。
【0015】
[4] 前記一般式(2)で表される化合物において、Zが、炭素数3以上のアルキル基であることを特徴とする前記[2]又は[3]に記載の液晶組成物である。
【0016】
[5] 少なくとも一方が透明電極である一対の電極と、
前記一対の電極の間に、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶層と、
を有する液晶素子である。
【0017】
[6] 前記[5]に記載の液晶素子を有する反射型表示材料である。
【0018】
[7] 前記[5]に記載の液晶素子を有する調光材料である。
【0019】
[8] 下記一般式(1)で表される化合物である。
【0020】
【化3】

【0021】
一般式(1)中、R、R、R、R、R、R及びRのうち少なくとも一つが液晶性置換基であり、液晶性置換基以外のR、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。X及びYは、各々独立に、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、又はアルキルチオ基を表す。Zは、炭素数3以上のアルキル基、アシル基、又はアリール基を表す。Aは、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表す。nは0又は1を表す。
【0022】
[9] 下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする前記[8]に記載の化合物である。
【0023】
【化4】

【0024】
一般式(3)中、R及びRは、各々独立にアルキル基を表す。R10は、炭素数3以上のアルキル基を表す。Jは、液晶性置換基を表す。
【0025】
[10] 下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする前記[8]に記載の化合物である。
【0026】
【化5】

【0027】
一般式(4)中、R及びRは、各々独立にアルキル基を表す。R10は、炭素数3以上のアルキル基を表す。Jは、液晶性置換基を表す。Gは、ヒドロキシ基又はアミノ基を表す。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、液晶に対する高い溶解性と、高いオーダーパラメーターと、高い耐光性とを両立できる液晶組成物、化合物を提供できる。
更に、本発明によれば、高いオーダーパラメーターと高い耐光性とを両立できるゲストホスト方式による液晶素子、反射型表示材料、調光材料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
<液晶組成物>
本発明の液晶組成物は、下記一般式(1)で表される化合物(以下「本発明にかかる化合物」又は「本発明の二色性色素」と称する場合がある。)と、液晶と、を含む。
【0030】
(二色性色素)
本発明の二色性色素は、アントラキノン骨格の二色性色素の2位の位置に、3,4,5位に置換基を有するフェニル基(以下「特定のフェニル基」と称する場合がある。)を有し、更に分子内に少なくとも1つの液晶性置換基を有する、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0031】
【化6】

【0032】
一般式(1)中、R、R、R、R、R、R及びRのうち少なくとも一つが液晶性置換基であり、液晶性置換基以外のR、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。X及びYは、各々独立に、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、又はアルキルチオ基を表す。Zは、炭素数3以上のアルキル基、アシル基、又はアリール基を表す。Aは、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表す。nは0又は1を表す。
【0033】
一般式(1)において、アントラキノン骨格の二色性色素の2位の位置に特定のフェニル基を有し、且つ液晶性置換基が分子内に存在すると、アントラキノン骨格の見かけの分子長軸が長くなり、棒状性が高くなることで液晶中における揺らぎが小さくなり、オーダーパラメーターが上がったと考えられる。それと同時に、適切な位置に、立体的にかさ高い置換基が導入されることで、オーダーパラメーターを下げることなく、色素間の会合を抑制でき、溶解性が向上したと推測される。しかし、本発明はこのような推測によって限定されない。
また、アントラキノン骨格の二色性色素の利点である耐光性の高さも維持される。
【0034】
一般式(1)で表される化合物は、好ましくは対称軸を有さない構造である。対称軸を有さないことにより、色素の結晶化速度が著しく遅くなることが予想され、これにより溶解性が向上すると思われる。
【0035】
一般式(1)における液晶性置換基以外のR〜Rの置換基としては、各々独立に、以下の記載の置換基群Rがあげられる。
【0036】
−置換基群R−
ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
【0037】
更に詳しくは、ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があげられる。
アルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシルが挙げられる。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イルが挙げられる。更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含する。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。
【0038】
アルケニル基としては、好ましくは炭素数2〜30のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイルが挙げられる。アルケニル基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。シクロアルケニル基としては、好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基(つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基)であり、例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)が挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
アルキニル基としては、好ましくは、炭素数2〜30のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基が挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
アリール基としては、好ましくは炭素数6〜30のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、p−ニトロフェニル、p−シアノフェニル、p−フルオロフェニル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニルが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0039】
ヘテロ環基としては、好ましくは5又は6員のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、芳香族性であっても非芳香族性であってもよい。更に好ましくは、炭素数3〜30のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル、キノリル、チアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリルが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
アルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1〜30のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0040】
アリールオキシ基としては、好ましくは、炭素数6〜30のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0041】
ヘテロ環オキシ基としては、好ましくは、炭素数2〜30のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0042】
アシルオキシ基としては、好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30のアリールカルボニルオキシ基である。例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0043】
カルバモイルオキシ基としては、好ましくは、炭素数1〜30のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0044】
アミノ基としては、好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30のアルキルアミノ基、炭素数6〜30のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0045】
アシルアミノ基としては、好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30のアリールカルボニルアミノ基であり、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0046】
アミノカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1〜30のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0047】
アルコキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは炭素数2〜30のアルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0048】
アリールオキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−(n−オクチルオキシ)フェノキシカルボニルアミノが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0049】
アルキル及びアリールスルホニルアミノ基としては、好ましくは炭素数1〜30のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0050】
アルキルチオ基としては、好ましくは、炭素数1〜30のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0051】
アリールチオ基としては、好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0052】
ヘテロ環チオ基としては、好ましくは炭素数2〜30のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
スルファモイル基としては、好ましくは炭素数0〜30のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイルが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0053】
アルキル及びアリールスルフィニル基としては、好ましくは、炭素数1〜30のアルキルスルフィニル基、6〜30のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニルが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0054】
アルキル及びアリールスルホニル基としては、好ましくは、炭素数1〜30のアルキルスルホニル基、6〜30のアリールスルホニル基であり、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニルが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0055】
アシル基としては、好ましくはホルミル基、炭素数2〜30のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基であり、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニルが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0056】
アリールオキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニルが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0057】
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニルが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0058】
アリール及びヘテロ環アゾ基としては、好ましくは炭素数6〜30のアリールアゾ基、炭素数3〜30のヘテロ環アゾ基であり、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0059】
イミド基としては、好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミドが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0060】
ホスフィノ基としては、好ましくは、炭素数2〜30のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0061】
ホスフィニル基としては、好ましくは、炭素数2〜30のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニルが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0062】
ホスフィニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数2〜30のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0063】
ホスフィニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数2〜30のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0064】
シリル基としては、好ましくは、炭素数3〜30の有機基(アルキル基及び/又はアリール基)を含むシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリルが挙げられる。これらは置換基を有していても、無置換であってもよい。
【0065】
上記の置換基群Rの中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0066】
一般式(1)中、液晶性置換基以外のR、R、R、及びRとしては、好ましくは、水素原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルボニルオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基が挙げられる。より好ましくは、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、アリールチオ基が挙げられる。
【0067】
一般式(1)中、液晶性置換基以外のRとしては、好ましくは、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、カルボニルオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基が挙げられる。より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基が挙げられる。
【0068】
一般式(1)中、液晶性置換基以外のRとしては、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アリール基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルボニルオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基が挙げられる。より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アリール基が挙げられる。
【0069】
一般式(1)中、液晶性置換基以外のRとしては、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アリール基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルボニルオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基が挙げられる。より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アリール基が挙げられる。
【0070】
一般式(1)において、液晶性置換基は1個以上有していればその個数は特に制限されないが、1〜4個であることが好ましく、1〜2個であることがより好ましい。
一般式(1)におけるR、R、R、R、R、R及びRのうち、液晶性置換基は、R、R、R、R又はRであることが好ましく、R、R、R又はRであることがより好ましい。
【0071】
一般式(1)中に2個の液晶性置換基を有する場合には、RとR、又はRとR、RとR、RとR、の組み合わせで液晶性置換基を有することが好ましい。
一般式(1)中に3個の液晶性置換基を有する場合には、RとRとR、又はRとRとR、の組み合わせで液晶性置換基を有することが好ましい。
【0072】
一般式(1)におけるR、R、R、R、R、R及びRのうち、液晶性ではない置換基は、RまたはRであることが好ましく、Rであることがより好ましい。
【0073】
液晶性置換基とは、2つ以上の環状構造を有する置換基であり、ここで環状構造とは、アリーレン基、ヘテロアリーレン基または2価の環状脂肪族炭化水素基を意味する。
【0074】
液晶性置換基とは、好ましくは、下記一般式(5)で表される置換基である。
【0075】
【化7】

【0076】
一般式(5)中、*は、前記一般式(1)中、R、R、R、R、R、R及びRのいずれかの結合位置を表し、D及びDは各々独立にアリーレン基、ヘテロアリーレン基または2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、L及びLは2価の連結基を表し、Tは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。eは1〜3の整数を表し、fは0〜3の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、kは1〜2の整数を表し、gは0〜1の整数を表し、iは0〜20の整数を表し、tは1〜4を表し、DとDで表される基の総数が2〜5の整数である。e及びkがそれぞれ2以上のとき、2以上のD及びDはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。mが2以上のとき、2以上の((L−(D)は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。fが2以上のとき、2以上のLは異なる連結基を示す。(g+i)×tは、0〜40の整数である。tが2以上のとき、2以上の((L−(CH)は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0077】
一般式(5)において、D及びDで表されるアリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜10のアリーレン基である。好ましいアリーレン基の具体例を挙げると、フェニレン基及びナフタレン基であり、例えば、1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基が挙げられる。
【0078】
一般式(5)において、D及びDで表されるヘテロアリーレン基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数2〜9のヘテロアリーレン基である。好ましいヘテロアリーレン基の具体例には、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピリミジン環、ピラジン環、チオフェン環、フラン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環及びトリアゾール環からなる基、及びこれらが縮環して形成される縮環の2個の炭素原子から水素をそれぞれ1個ずつ除いて得られるヘテロアリーレン基が含まれる。
【0079】
一般式(5)において、D及びDで表される2価の環状脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数4〜12の2価の環状脂肪族炭化水素基である。好ましい2価の環状脂肪族炭化水素基の具体例は、シクロヘキサンジイル、デカヒドロナフタレンジイル、スピロ[5.5]ウンデシレンであり、より好ましくはシクロヘキサン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、3,9−スピロ[5.5]ウンデシレン基である。
【0080】
一般式(5)において、D及びDの表すアリーレン基、ヘテロアリーレン基及び2価の環状脂肪族炭化水素基は、置換基を有していても、無置換であってもよい。また、式(5)中、e、m又はkが、2以上の場合、複数のD、Dは、各々独立に置換基を有していてもよく、同一の置換基を有していても、異なる置換基を有していても、或いは、無置換であってもよい。
【0081】
及びDの表す2価のアリーレン基、2価のヘテロアリーレン基及び2価の環状脂肪族炭化水素基の置換基として、好ましい置換基は、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基である。
【0082】
一般式(5)中、Lは2価の連結基を表す。好ましくは、アルカンジイル基、アルケニレン基、アルキニレン基、エーテル基、エステル基(−COO−,−OCO−)、カルボニル基、アゾ基(−CH=N−,−N=CH−)、アゾキシ基、アルキレンオキシ基であり、より好ましくは、アルカンジイル基(例えば、エチレン基)、アルキニレン基(例えば、エチニレン基)、エステル基、アルキレンオキシ基(例えば、メチレンオキシ基)である。
【0083】
一般式(5)中、Tは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。
として好ましくは、炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜20、更に好ましくは炭素数3〜10のアルキル基(例えば、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、ヒドロキシメチル、トリフルオロメチル、ベンジル、カルボキシエチル、エトキシカルボニルメチル、アセチルアミノメチル、またここでは炭素数2〜18、好ましくは炭素数3〜10の不飽和炭化水素基(例えばビニル基、エチニル基1−シクロヘキセニル基、ベンジリジン基、ベンジリデン基)も置換アルキル基に含まれる)をあげることができる);炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜20、更に好ましくは炭素数3〜10のアルコキシ基(例えば、n−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシロキシ基をあげることができる);ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子)である。
【0084】
一般式(5)中のTで表される上記アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基及びアシルオキシ基は、置換基を有していてもいなくてもよく、置換基としては、上記置換基群Vが挙げられる。
で表されるアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基及びアシルオキシ基の置換基としては、ハロゲン原子(特に塩素原子、フッ素原子)、シアノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はアシル基であることが好ましい。
【0085】
一般式(5)中、eは1〜3の整数を表し、好ましくは1又は2である。eが2又は3を表す場合、複数のDはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
一般式(5)中、mは1〜3の整数を表し、好ましくは1又は2である。mが2又は3を表す場合、複数のDはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよく、複数のLはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
一般式(5)中、kは1又は2である。kが2の場合、複数のDはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
一般式(5)中、fは0〜3の整数を表し、好ましくは0〜2である。fが2以上の場合、複数のLはそれぞれ異なる連結基を表す。
【0086】
一般式(5)中、DとDで表される基の総数、すなわちe×m+kが2〜5の整数であり、より好ましくは2〜4の整数であり、特に好ましくは2〜3の整数である。e及びkがそれぞれ2以上のとき、2以上のD及びDはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、mが2以上のとき、2以上の(L−(Dは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
【0087】
特に好ましいe、f、m、kの組み合わせを以下に記す。
(I)e=1、f=0、m=1、k=1
(II)e=1、f=2、m=1、k=1
(III)e=2、f=0、m=1、k=1
(IV)e=1、f=0、m=1、k=2
(V)e=1、f=2、m=1、k=2
(VI)e=1、f=1、m=1、k=1
(VII)e=2、f=2、m=1、k=1
【0088】
一般式(5)中、Lは2価の連結基を表す。好ましくは、エーテル基、チオエーテル基、エステル基(−COO−,−OCO−)、カルボニル基である。
【0089】
一般式(5)中、gは0又は1である。gが2以上のとき、2以上のLはそれぞれ異なる連結基を表す。
一般式(5)中、iは0〜20の整数を表し、好ましくは0〜11である。
一般式(5)中、tは1〜4を表し、好ましくは1〜3である。tが2以上の場合、複数の((L−(CH)は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、iは同数であっても、異なる数であってもよい。
ここで、(g+i)×tは、0〜40の整数であり、0〜30の整数であることが好ましく、0〜20の整数であることがより好ましい。
【0090】
一般式(1)中、nは、0又は1であり、好ましくは1である。
【0091】
一般式(1)中、X及びYは、各々独立に、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基であり、好ましくは、アルキル基、塩素原子であり、より好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0092】
一般式(1)中、Zは、炭素数3以上のアルキル基、アシル基、アリール基である。Zで表されるアルキル基及びアリール基は、水素原子を取り去り更に上記の前記置換基群Rの置換基で置換されていてもよい。
一般式(1)におけるZは、好ましくは炭素数3以上のアルキル基であり、立体障害による溶解性向上と、長軸方向の棒状性による高いオーダーパラメーターの観点からより好ましくは炭素数3〜40のアルキル基である。
【0093】
Zで表される炭素数3以上のアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。一般式(1)におけるZの好適な態様の一つとして、下記構造式(A)で表されるアルキル基を挙げることができる。
【0094】
【化8】

【0095】
構造式(A)中、nは0〜40の整数を表し、好ましくは0〜30の整数であり、より好ましくは0〜20の整数である。
mは、0〜5の整数を表し、好ましくは、0〜3の整数であり、より好ましくは1である。
は、前記置換基群Rの置換基を表し、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基であり、より好ましくは炭素数1〜30のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。
【0096】
更に構造式(A)で表されるアルキル基として好ましくは、構造式(B)で表されるアルキル基である。
【0097】
【化9】

【0098】
構造式(B)中、nは前記構造式(A)におけるnと同義であり、Rは、炭素数1〜30のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。
【0099】
一般式(1)におけるZで表されるアシル基としては、更にアルコキシ基、アルキル基基が連結していることが好ましい。
Zで表されるアシル基に連結するアルコキシ基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基が好ましく、具体的には、シクロヘキシルオキシ基、トランス−n−ペンチルシクロヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基などである。
Zで表されるアシル基に連結するアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、シクロヘキシル基、トランス−n−ブチルシクロヘキシル基、n−オクチル基などである。
【0100】
Zで表されるアリール基としては、フェニル基が好ましく、該フェニル基は更にアルキル基、アルコキシ基基で置換されていることが好ましい。フェニル基に置換する置換位置は特に問わないが、2、3,であることが好ましい。
該フェニル基に置換するアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、具体的には、n−ブチル基、n−オクチル基、i−ペンチル基、シクロヘキシル基などである。
該フェニル基に置換するアルコキシ基としては、炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、具体的には、n−ブトキシ基、n−オクチロキシ基、シクロヘキシルオキシ基などである。
【0101】
一般式(1)中、Aは、酸素原子、硫黄原子、窒素原子であり、好ましくは、酸素原子である。つまり、前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0102】
【化10】

【0103】
一般式(2)中、R、R、R、R、R、R及びRのうち少なくとも一つが液晶性置換基であり、液晶性置換基以外のR、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。X及びYは、各々独立に、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、又はアルキルチオ基を表す。Zは、炭素数3以上のアルキル基、アシル基、又はアリール基を表す。
、R、R、R、R、R、R、X、Y、及びZは、前記一般式(1)におけるR、R、R、R、R、R、R、X、Y、及びZと、それぞれ同義である。
【0104】
一般式(1)で表される化合物のうち、より好ましい態様として、下記一般式(3)及び一般式(4)で表される化合物を挙げることができる。
【0105】
【化11】

【0106】
一般式(3)及び(4)におけるR及びRは、各々独立にアルキル基を表す。好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
10は、炭素数3以上のアルキル基を表す。好ましくは、一般式(1)におけるZで説明した炭素数3以上のアルキル基が好ましく、好適な範囲も同義である。
Jは、液晶性置換基を表す。この液晶性置換基は、一般式(1)における液晶性置換基と同義である。
Gは、ヒドロキシ基又はアミノ基を表す。該アミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のいずれであってもよいが、1級アミノ基であることが好ましい。
【0107】
一般式(1)で表される化合物(一般式(2)〜(4)を含む)の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0108】
【化12】

【0109】
【化13】

【0110】
【化14】

【0111】
【化15】

【0112】
【化16】

【0113】
【化17】

【0114】
前記一般式(1)で表される化合物は、公知の合成方法により合成できる。公知の合成方法は、例えば特開2003-192664、Galevskaya, T. P.; Moroz, A. A.; Myasnikova, R. N.; Shvartsberg, M. S. Zhurnal Organicheskoi Khimii, 1988, 24(2), 405.に記載があり、上記具体化合物(1)〜(30)もこれらの文献を参考に合成できる。
【0115】
本発明の液晶組成物に用いられる二色性色素は、単独で使用してもよいが、複数を混合したものであってもよい。複数の色素を混合する場合には、本発明にかかる色素同士を混合してもよいし、本発明にかかる色素と公知の二色性色素を混合してもよい。公知の二色性色素としては、例えば、A. V. Ivashchenko著、Diachronic Dyes for Liquid Crystal Display、CRC社、1994年に記載のものが挙げられる。黒色表示のためには可視域全体の光を吸収することが必要であり、複数の二色性色素を混合することが好ましい。
【0116】
(液晶)
本発明の液晶組成物に用いられる液晶は、本発明の二色性色素と共存しうるものであれば特に制限はないが、たとえば、ネマチック相あるいはスメクチック相を示す液晶化合物が利用できる。その具体例としては、アゾメチン化合物、シアノビフェニル化合物、シアノフェニルエステル、フッ素置換フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、フッ素置換シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、シアノフェニルシクロヘキサン、フッ素置換フェニルシクロヘキサン、シアノ置換フェニルピリミジン、フッ素置換フェニルピリミジン、アルコキシ置換フェニルピリミジン、フッ素置換アルコキシ置換フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、トラン系化合物、フッ素置換トラン系化合物、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリルなどが挙げられる。日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第154〜192頁ならびに第715〜722頁に詳しい。TFT駆動に適したフッ素置換されたホスト液晶を使用することもできる。
【0117】
本発明の液晶組成物に、液晶の物性を変化させる目的(例えば,液晶相の温度範囲)で液晶性を示さない化合物を添加してもよい。また、カイラル化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの化合物を含有してもよい。そのような添加剤は、たとえば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第199〜202頁に記載のTN、STN用カイラル剤が挙げられる。
【0118】
本発明の液晶組成物における液晶に対する二色性色素の比率は、いかなる割合であってもよいが、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、3質量%以上8質量%以下がより好ましい。
【0119】
液晶への二色性色素の溶解は、機械的攪拌、加熱、超音波、あるいはその組合せなどを利用することができる。
【0120】
<液晶素子>
本発明の液晶素子は、少なくとも一方が透明電極である一対の電極の間に、前記液晶組成物を含有する液晶層を挟持させることにより構成することができる。
【0121】
本発明の液晶素子に用いられる電極基板としては、通常ガラスあるいはプラスチック基板が用いられ、プラスチック基板としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ポリイミド(PI)などが挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0122】
プラスチック基板の厚みには、特に規定されないが30μm以上700μm以下が好ましく、より好ましくは40μm以上200μm以下、さらに好ましくは50μm以上150μm以下である。さらにいずれの場合もヘイズは3%以下が好ましく、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下、全光透過率は70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0123】
プラスチック基板には、必要により本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、染顔料、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機微粒子、剥離促進剤、レベリング剤及び潤滑剤などの樹脂改質剤を添加しても良い。
【0124】
前記プラスチック基板は光透過性及び非光透過性のいずれであってもよい。前記支持体として、非光透過性支持体を用いる場合には、光反射性を有する白色の支持体を用いることができる。白色支持体としては、酸化チタン、酸化亜鉛などの無機顔料を添加したプラスチック基板が挙げられる。なお、前記支持体が表示面を構成する場合は、少なくとも可視域の光に対して光透過性を有することが必要である。
【0125】
基板については、たとえば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第218〜231頁に詳しい。その基板上には、電極層が形成され、好ましくは透明電極である。その電極層としては、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズなどが用いられる。透明電極については、たとえば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第232〜239頁に記載のものが用いられる。
【0126】
本発明の液晶素子は液晶を配向させる目的で、液晶と基板の接する表面に配向処理を施した層を形成することが好ましい。該配向処理としては、たとえば、4級アンモニウム塩を塗布し配向させる方法、ポリイミドを塗布しラビング処理により配向する方法、SiOxを斜め方向から蒸着して配向する方法、さらには、光異性化を利用した光照射による配向方法などが挙げられる。配向膜については、たとえば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第240〜256頁に記載のものが用いられる。
【0127】
本発明の液晶素子は、スペーサーなどを介して基板同士を1〜50μmの間隔を設け、その空間に注入することができる。スペーサーについては、たとえば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第257〜262頁に記載のものが用いられる。
【0128】
本発明の液晶素子は、単純マトリックス駆動方式あるいは薄膜トランジスタ(TFT)などを用いたアクテイブマトリックス駆動方式を用いて駆動することができる。駆動方式については、たとえば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第387〜460頁に記載のものが用いられる。
【0129】
<反射型表示材料、調光材料>
本発明の液晶素子は、高い表示性能・調光性能を与えることができる為、反射型表示材料、調光、セキュリテイー、インテリア、広告、情報表示板として好適に利用することができる。
【0130】
反射型表示材料として使用する場合には、一対の電極基板のうち少なくとも一方が透明電極であればよい。その一対の電極の間に上記液晶組成物を含む液晶層を設け、更に反射板を設ける。反射型表示材料では、観察者側から入射した光が反射板によって反射され、その反射光を観察者は観察することになる。
その他、反射型表示材料では、位相差板など公知の部材を適宜設けることができる。
【0131】
調光材料として使用する場合には、一対の電極基板はいずれも透明である。調光材料では、観察者の反対側から入射した光を、調光材料を介して反対側から観察する。
調光材料は、屋外に曝されて使用されることがあるため、バリア膜、紫外線吸収層、反射防止層、ハードコート層、汚れ防止層、紫外線吸収層などを設けることが好ましい。
【0132】
本発明の液晶素子を用いた液晶デイスプレイは、いかなる方式であってもよいが、例えば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第309頁に記載のゲストホスト方式に記載されている(1)ホモジニアス配向、(2)ホメオトロピック配向、White−Taylor型(相転移)として(3)フォーカルコニック配向及び(4)ホメオトロピック配向、(5)Super Twisted Nematic(STN)との組合せ、(6)強誘電性液晶(FLC)との組合せ、また、内田龍男監修、反射型カラーLCD総合技術、シーエムシー社、1999年、第2−1章(GHモード反射型カラーLCD)、第15〜16頁に記載されている、(1)Heilmeier型GHモード、(2)1/4波長板型GHモード、(3)2層型GHモード、(4)相転移型GHモード、(5)高分子分散液晶(PDLC)型GHモードなどが挙げられる。
さらに、本発明の液晶素子は特開平10−67990号、同10−239702号、同10−133223号、同10−339881号、同11−52411号、同11−64880号、特開2000−221538号などに記載されている積層型GHモード、特開平11−24090号などに記載されているマイクロカプセルを利用したGHモードに用いることができる。さらに、特開平6−235931号、同6−235940号、同6−265859号、同7−56174号、同9−146124号、同9−197388号、同10−20346号、同10−31207号、同10−31216号、同10−31231号、同10−31232号、同10−31233号、同10−31234号、同10−82986号、同10−90674号、同10−111513号、同10−111523号、同10−123509号、同10−123510号、同10−206851号、同10−253993号、同10−268300号、同11−149252号、特開2000−2874などに記載されている反射型液晶デイスプレイに用いることができる。また、特開平5−61025号、同5−265053号、同6−3691号、同6−23061号、同5−203940号、同6−242423号、同6−289376号、同8−278490号、同9−813174号に記載されている高分子分散液晶型GHモードに用いることができる。
【0133】
次に本発明をより詳細に説明するため、以下に実施例を示すが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0134】
[実施例1]
<化合物例(1)の合成>
以下のスキームに従って、化合物例(1)を合成した。
【0135】
【化18】

【0136】
(化合物1aの合成)
氷冷下、1M LAHのTHF溶液(100ml)に、trans−4−ペンチルシクロヘキサンカルボン酸(15.9g)のTHF溶液(50ml)を滴下し、滴下終了後、徐々に加熱し、還流下で9時間攪拌した。反応終了後、放冷した後、反応溶液を氷−1N−塩酸水に、攪拌しながらゆっくりと滴下した。これに酢酸エチルを加え、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した、減圧にて濃縮した。これを減圧蒸留することで、化合物1a(12.4g)を得た。
【0137】
(化合物1bの合成)
化合物1a(12.0g)を、脱水アセトニトリル(230ml)に溶かし、三臭化リン(13.5ml)を加え、60℃で2.5時間攪拌した。放冷後、氷に注ぎ、酢酸エチルを加えて抽出を行った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧にて濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:ノルマルヘキサン)することにより、化合物1b(12.9g)を得た。
【0138】
(化合物1cの合成)
化合物1b(8.0g)、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニルホウ酸エステル(8.0g)、炭酸カリウム(8.9g)を脱水N−メチルピロリドンに加え、120℃に加熱した。1時間攪拌した後、放冷し、1N−塩酸水、酢酸エチルを加えた。有機層を1N−塩酸水で2度洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧にて濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:ノルマルヘキサン/酢酸エチル=9/1)することにより、化合物1c(6.9g)を得た。
【0139】
(化合物1dの合成)
酢酸(200ml)に、1,5−ジヒドロキシアントラキノン(5.0g)、ヨウ素(16.9g)、及びヨウ素酸(5.9g)を加えて、110℃に加熱し、2時間撹拌した。反応液に水を加え、析出した結晶を濾取した後、メタノール、ノルマルヘキサンで洗浄することにより、化合物1d(6.3g)を得た。
【0140】
(化合物1eの合成)
化合物1d(2.0g)及び化合物1c(2.0g)のトルエン(100ml)/HO(50ml)溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.09g)と炭酸カリウム(3.4g)を加え、加熱還流下で、18時間撹拌した。放冷後、1N塩酸水/クロロホルムを加え、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム/ノルマルヘキサン=7/3)することにより、化合物1e(0.8g)を得た。
【0141】
(例示化合物(1)の合成)
化合物1e(100mg)及び4−(4−n−プロピルシクロヘキシルメチレンオキシ)フェニルホウ酸(56mg)のトルエン(5ml)/HO(2.5ml)溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(3.5mg)と炭酸カリウム(127mg)を加え、加熱還流下で、18時間撹拌した。反応液に1N塩酸水/クロロホルムを加え、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム/ノルマルヘキサン=6/4)することにより、例示化合物(1)(34mg)を得た。化合物の同定は、H−NMRにより行った。
【0142】
H−NMR(CDCl
δ:0.90(6H,t),0.94−1.41(22H,m),1.60−2.04(10H,m),2.36(6H,s),3.62(2H,d),3.83(2H,d),7.01(2H,d),7.33(2H,s),7.64(2H,d),7.72(1H,d),7.75(1H,d),7.91(1H,d),7.94(1H,d),13.51(1H,s),13.52(1H,s)
【0143】
<化合物例(3)の合成>
化合物例(1)と同様の合成法で、化合物例(3)を合成した。
【0144】
(例示化合物(3))
H−NMR(CDCl
δ:0.87−1.63(23H,m),1.78−2.01(6H,m),1.37(6H,s),2.50−2.61(1H,m),7.34(2H,s),7.34(2H,d),7.62(2H,d),7.75(1H,d),7.77(1H,d),7.92(1H,d),7.95(1H,d),13.49(1H,s),13.50(1H,s)
【0145】
<化合物例(17)の合成>
以下のスキームに従って、化合物例(17)を合成した。
【0146】
【化19】

【0147】
(化合物17aの合成)
酢酸(40ml)に、1−ヒドロキシ−4−ニトロアントラキノン(1.0g)、ヨウ素(2.8g)、ヨウ素酸(1.3g)を加えて110℃に加熱し、3時間撹拌した。さらに、ヨウ素(1.4g)、ヨウ素酸(0.7g)を追加し、110℃で3時間撹拌した。反応液に水を加え、析出した結晶を濾取した後、メタノール、ノルマルヘキサンで洗浄することによって、化合物17a(1.4g)を得た。
【0148】
(化合物17bの合成)
化合物17a(500mg)、トシルクロリド(360mg)、炭酸カリウム(530mg)を脱水N−メチルピロリドン(20ml)に加え、80℃に加熱した。2時間攪拌した後、さらにトシルクロリド(120mg)加え、1時間攪拌した。放冷後、1N−塩酸水、酢酸エチルを加え、有機層を1N−塩酸水で2度洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧にて濃縮した。残渣を少量のクロロホルムに溶かし、メタノールを加えて再結晶させた。析出してきた結晶を吸引濾過することにより、化合物17b(430mg)を得た。
【0149】
(化合物17cの合成)
化合物17b(100mg)を脱水N−メチルピロリドン(5ml)に溶かし、室温中で、7N−NHメタノール溶液(1ml)を加えた。徐々に加熱し、60℃で1時間攪拌した。放冷後、1N−塩酸水、酢酸エチルを加え、有機層を1N−塩酸水で2度洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧にて濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム)することにより、化合物17c(20mg)を得た。
【0150】
(化合物17dの合成)
化合物17c(200mg)及び前記化合物1c(250mg)のトルエン(20ml)/HO(10ml)溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(12mg)と炭酸カリウム(423mg)を加え、加熱還流下で、18時間撹拌した。放冷後、1N塩酸水/クロロホルムを加え、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。残渣を少量のクロロホルムに溶かし、メタノールを加えて再結晶させ、析出した結晶を、吸引濾過することにより、化合物17d(90mg)を得た。
【0151】
(例示化合物(17)の合成)
化合物17d(100mg)、及びペンチルシクロヘキシルビフェニルチオール(80mg)、炭酸カリウム(70mg)を脱水N−メチルピロリドン(7ml)に加え、100℃に加熱し、1時間撹拌した。放冷後、1N塩酸水/クロロホルムを加え、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム/ノルマルヘキサン=7/3)することにより、例示化合物(17)(50mg)を得た。化合物の同定は、H−NMRにより行った。
【0152】
H−NMR(CDCl
δ:0.87−2.00(,m),2.22(6H,s),2.48−2.59(1H,m),3.56(2H,d),6.87(2H,s),6.96(1H,s),7.30(2H,d),7.52(2H,d),7.59−7.67(4H,m),7.76−7.81(2H,m),8.32−8.41(2H,m)
【0153】
<化合物例(19)の合成>
以下のスキームに従って、化合物例(19)を合成した。
【0154】
【化20】

【0155】
(化合物19aの合成)
前記化合物17a(2.0g)及び前記化合物1c(2.5g)のトルエン(100ml)/HO(50ml)溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(117mg)と炭酸カリウム(4.2g)を加え、加熱還流下で、18時間撹拌した。放冷後、1N塩酸水/クロロホルムを加え、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。残渣を少量のクロロホルムに溶かし、メタノールを加えて再結晶させ、析出した結晶を、吸引濾過することにより化合物19a(1.5g)を得た。
【0156】
(例示化合物(19)の合成)
化合物19a(200mg)、及びペンチルシクロヘキシルビフェニルチオール(160mg)、炭酸カリウム(150mg)を脱水N−メチルピロリドン(10ml)に加え、80℃に加熱し、1時間撹拌した。放冷後、1N塩酸水/クロロホルムを加え、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:クロロホルム/ノルマルヘキサン=7/3)することにより、例示化合物(19)(100mg)を得た。化合物の同定は、H−NMRにより行った。
【0157】
H−NMR(CDCl
δ:0.87−1.59(32H,m),1.66−2.00(9H,m),2.20(6H,s),2.48−2.60(1H,m),7.07(2H,s),7.19(1H,s),7.33(2H,d),7.53(2H,d),7.78−7.91(2H,m),8.37(1H,dd),8.43(1H,dd),14.08(1H,s)
【0158】
<溶解度測定>
本発明にかかる化合物1、3、17、19、Mol.Cryst.Liq.Cryst.Vol.91,1983年、第327〜340頁記載の比較用の色素A−1、特開昭58−57488記載の比較用色素A−2を個別にZLI-2806(E.Merck社製)液晶に飽和溶解させ、長期経時後、上澄み部分を液晶セル(ポリイミド配向膜+ラビング処理+パラレル配列付き、ガラス板0.7mm、セルギャップ8μm、エポキシ樹脂シール付き、E.H.C.社製)に注入し、評価セルを作製した。これとは別に、色素を完全に溶ける低濃度で溶かした、参照用セルをそれぞれ作製した。
【0159】
それぞれのセルに対し、ラビング方向と平行な偏光及び垂直な偏光を各々照射し、それぞれの吸収スペクトル(A‖及びA⊥)を(株)島津製作所製の紫外可視分光光度計(UV2400PC)を用いて測定し、極大吸収波長におけるA‖及びA⊥から、下式1に従い、溶解度を求めた。測定結果を表1に示す。
【0160】
式1: 溶解度(質量%)=(参照用液晶組成物の重量濃度)・(評価用セルの(A‖+A⊥))/(参照用セルの(A‖+A⊥))
【0161】
<オーダーパラメーター測定>
本発明にかかる化合物1、3、17、19、前記比較用色素A−1、A−2を、個別に商品名ZLI−2806(E.Merck社製)に溶解させ、液晶組成物を調製した。色素の含有量は、それぞれ、0.5質量%、0.5質量%、1.0質量%、1.0質量%、0.1質量%、及び0.5質量%とした。
得られた液晶組成物を、液晶セル(ポリイミド配向膜+ラビング処理+パラレル配列付き、ガラス板0.7mm、セルギャップ25μm、エポキシ樹脂シール付き、E.H.C.社製)に注入し、評価セルを作製した。
【0162】
このセルに、ラビング方向と平行な偏光及び垂直な偏光を各々照射し、それぞれの吸収スペクトル(A‖及びA⊥)を(株)島津製作所製の紫外可視分光光度計(UV2400PC)にて測定した。極大吸収波長におけるA‖及びA⊥から、オーダーパラメーターSを下式2に従い求めた。測定結果を表1に示す。
【0163】
式2: S = ( A‖−A⊥)/( A‖+2・A⊥)
【0164】
【表1】


参考とした、下記文献記載のオーダーパラメーターを表2に示す。
【表2】

【0165】
【化21】

【0166】
表1、表2から明らかなように、本発明にかかる化合物1、3、17、19によって溶解度が飛躍的に向上し、且つ、液晶性置換基を1つ有する比較用化合物A−2、A−3、A−4や、溶解性を改良した液晶性置換基を有さない比較用化合物A−5よりも、はるかに高いオーダーパラメーターを示すことが分かった。
【0167】
[実施例2]
<液晶素子の作製>
(液晶組成物の作製)
二色性色素(3)3.3mg、ホスト液晶として、商品名ZLI-2806(E.Merck社製)100mg、カイラル剤として、R-1011(E.Merck社製)(0.36mg)の混合物を、150℃のホットプレート上で1時間加熱した。該液晶組成物を室温にまで、冷却させ、1晩放置させた。
【0168】
(液晶素子の作製)
上記の液晶組成物を、ニッポ電機製の液晶セル(ITO透明電極付き、日産化学製ポリイミド配向膜SE−1211(垂直配向)、ガラス板1.1mm、セルギャップ8μm、エポキシ樹脂シール付き)に注入し、液晶素子を作製した。
【0169】
(電界駆動)
得られた液晶素子は、電圧無印加時に無色透明状態であった。信号発生器(テクトロニクス株式会社製)を用いて、電圧(20V、100Hz)を印加した場合には、液晶層は着色状態となった。
また、二色性色素の極大吸収波長における着色状態と無色透明状態におけるUV/vis吸収スペクトル測定(島津製UV2400)を行い、着色状態と無色透明状態の透過率を測定したところ、着色状態と透明状態における透過率の比(T(透明)/T(着色時))は6であり、本発明の液晶素子は高いコントラスト比を示し、調光材料や電子ペーパーに好適に用いられることが確認された。
【0170】
(粘性の確認)
比較用の色素A−1、A−2、及び本発明にかかる化合物3、17、19を、ZLI-2806(E.Merck社製)液晶に加え、150℃のホットプレート上で加熱して、それぞれ液晶組成物中で8質量%となるように溶解させた。但し、A−1、A−2は完溶しなかった。
1日放置した後、サンプル瓶を傾けたところ、化合物3、17、19を含有する液晶組成物は、いずれも良好な流動性を示した。これに対して、A−1、A−2を含有する液晶組成物は全く流動性を示さなかった。
【0171】
上記のことから、本発明にかかる化合物3、17、19は、ホスト液晶に対する相溶性が高く、色素添加による液晶組成物の増粘効果が小さいことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物と、液晶と、を含むことを特徴とする液晶組成物。
【化1】


〔一般式(1)中、R、R、R、R、R、R及びRのうち少なくとも一つが液晶性置換基であり、液晶性置換基以外のR、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。X及びYは、各々独立に、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、又はアルキルチオ基を表す。Zは、炭素数3以上のアルキル基、アシル基、又はアリール基を表す。Aは、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表す。nは0又は1を表す。〕
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。
【化2】


〔一般式(2)中、R、R、R、R、R、R及びRのうち少なくとも一つが液晶性置換基であり、液晶性置換基以外のR、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。X及びYは、各々独立に、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、又はアルキルチオ基を表す。Zは、炭素数3以上のアルキル基、アシル基、又はアリール基を表す。〕
【請求項3】
前記一般式(2)で表される化合物において、X及びYが、各々独立にアルキル基又は塩素原子であることを特徴とする請求項2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
前記一般式(2)で表される化合物において、Zが、炭素数3以上のアルキル基であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の液晶組成物。
【請求項5】
少なくとも一方が透明電極である一対の電極と、
前記一対の電極の間に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶層と、
を有する液晶素子。
【請求項6】
請求項5に記載の液晶素子を有する反射型表示材料。
【請求項7】
請求項5に記載の液晶素子を有する調光材料。
【請求項8】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化3】


〔一般式(1)中、R、R、R、R、R、R及びRのうち少なくとも一つが液晶性置換基であり、液晶性置換基以外のR、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。X及びYは、各々独立に、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、又はアルキルチオ基を表す。Zは、炭素数3以上のアルキル基、アシル基、又はアリール基を表す。Aは、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表す。nは0又は1を表す。〕
【請求項9】
下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項8に記載の化合物。
【化4】


〔一般式(3)中、R及びRは、各々独立にアルキル基を表す。R10は、炭素数3以上のアルキル基を表す。Jは、液晶性置換基を表す。〕
【請求項10】
下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項8に記載の化合物。
【化5】


〔一般式(4)中、R及びRは、各々独立にアルキル基を表す。R10は、炭素数3以上のアルキル基を表す。Jは、液晶性置換基を表す。Gは、ヒドロキシ基又はアミノ基を表す。〕

【公開番号】特開2009−73868(P2009−73868A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241472(P2007−241472)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】