液晶表示装置、及び液晶表示装置の駆動方法
【課題】下方向階調反転の軽減。
【解決手段】R画素、G画素及びB画素それぞれを構成する電極間に実質的に等しい電圧VRGBを印加するグレイスケール階調において、階調L(但しLは、0≦L≦1を満足する)に応じて、下記(ia)及び(iia)を満足する電圧VRGB及び電圧Vwを、G画素を構成する電極間及びW画素を構成する電極間にそれぞれ印加する駆動手段を備えたことを特徴とする液晶表示装置である。但し、TG及びTWはそれぞれ、G画素及びW画素それぞれの透過率を、液晶表示装置の表示面法線方向における白の輝度を1として規格化した規格化透過率である。
(ia)0<L≦0.03の時、TG=0で且つTW=2×L
(iia)0.03<L≦0.3の時、0.05<TW/(TG−0.03)<0.86
【解決手段】R画素、G画素及びB画素それぞれを構成する電極間に実質的に等しい電圧VRGBを印加するグレイスケール階調において、階調L(但しLは、0≦L≦1を満足する)に応じて、下記(ia)及び(iia)を満足する電圧VRGB及び電圧Vwを、G画素を構成する電極間及びW画素を構成する電極間にそれぞれ印加する駆動手段を備えたことを特徴とする液晶表示装置である。但し、TG及びTWはそれぞれ、G画素及びW画素それぞれの透過率を、液晶表示装置の表示面法線方向における白の輝度を1として規格化した規格化透過率である。
(ia)0<L≦0.03の時、TG=0で且つTW=2×L
(iia)0.03<L≦0.3の時、0.05<TW/(TG−0.03)<0.86
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度で且つ下方向における階調反転が軽減された液晶表示装置、及びその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高輝度の液晶表示装置として、RGBW型液晶表示装置が提案されている(例えば特許文献1)。RGBW型液晶表示装置は、RGBWの4色の画素によりカラー表示を行うものであり、白(W)画素が追加されたことにより、従来のRGB型と比較して、表示面法線方向(以下、「正面方向」という)における輝度を高めることができるという特長がある。高透過率が特長のTN型液晶表示装置に採用すれば、その特長がさらに強められることが期待される。
【0003】
一方、TN型液晶表示装置には、下方向において階調反転が生じるという問題がある。従来は、光学補償フィルムにより、黒表示時の残留レターデーションを補償することで、階調反転についてもある程度良化しているのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−241551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決することを課題とする。
具体的には、RGBW型液晶表示装置の高透過率を損なうことなく、下方向における階調反転を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 一対の偏光子;少なくとも一方の対向面に画素を構成する電極を有する一対の基板と、該一対の基板間に配置され、90°以下のツイスト角でツイスト配向する液晶層とを少なくとも有する液晶セル;及び前記一対の偏光子のそれぞれと前記液晶セルとの間に配置される位相差フィルム;を含み、前記液晶セルの一画素が、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素、及び白(W)画素からなる液晶表示装置であって、
R画素、G画素及びB画素それぞれを構成する電極間に実質的に等しい電圧VRGBを印加するグレイスケール階調において、階調L(但しLは、0≦L≦1を満足する)に応じて、下記(ia)及び(iia)又は(ib)及び(iib)を満足する電圧VRGB及び電圧Vwを、G画素を構成する電極間及びW画素を構成する電極間にそれぞれ印加する駆動手段を備えたことを特徴とする液晶表示装置:
(ia)0<L≦0.03の時、TG=0で且つTW=2×L
(iia)0.03<L≦0.3の時、0.05<TW/(TG−0.03)<0.86
又は
(ib)0<L≦0.03の時、TW=0で且つTG=2×L
(iib)0.03<L≦0.3の時、0.05<TG/(TW−0.03)<0.86
但し、TG及びTWはそれぞれ、G画素及びW画素それぞれの透過率を、液晶表示装置の表示面法線方向における白の輝度を1として規格化した規格化透過率である。
[2] 前記位相差フィルムが、支持体と、ハイブリッド配向状態に固定された円盤状液晶を含む光学異方性層とを少なくとも有する積層フィルムである[1]の液晶表示装置。
[3] 前記液晶層のツイスト角が、90°である[1]又は[2]の液晶表示装置。
[4] 前記液晶表示装置が面光源と集光シートからなるバックライトユニットを有し、前記バックライトユニットが出射した光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線に対して、観察者が前記液晶表示画面を視認するときの鉛直方向または水平方向に傾けられた出射角度50°から85°の範囲の光量の平均値が、該法線方向の光量に対して12%以下である[1]〜[3]のいずれかの液晶表示装置。
[5] 前記位相差フィルムがポリマーフィルム単体からなり、面内最大方向をnx、nxと垂直方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとした場合、nx>ny>nzを満足する[1]の液晶表示装置。
[6] 前記集光シートが、凸部を液晶セル側へ向けたプリズムシートである[4]または[5]の液晶表示装置。
[7] 一対の偏光子;少なくとも一方の対向面に画素を構成する電極を有する一対の基板と、該一対の基板間に配置され、90°以下のツイスト角でツイスト配向する液晶層とを少なくとも有する液晶セル;及び前記一対の偏光子のそれぞれと前記液晶セルとの間に配置される位相差フィルム;を含み、前記液晶セルの一画素が、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素、及び白(W)画素からなる液晶表示装置の駆動方法であって、
R画素、G画素及びB画素それぞれを構成する電極間に実質的に等しい電圧VRGBを印加するグレイスケール階調において、階調L(但しLは、0≦L≦1を満足する)に応じて、下記(ia)及び(iia)又は(ib)及び(iib)を満足する電圧VRGB及び電圧Vwを、G画素を構成する電極間及びW画素を構成する電極間にそれぞれ印加することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法:
(ia)0<L≦0.03の時、TG=0で且つTW=2×L
(iia)0.03<L≦0.3の時、0.05<TW/(TG−0.03)<0.86
又は
(ib)0<L≦0.03の時、TW=0で且つTG=2×L
(iib)0.03<L≦0.3の時、0.05<TG/(TW−0.03)<0.86
但し、TG及びTWはそれぞれ、G画素及びW画素それぞれの透過率を、液晶表示装置の表示面法線方向における白の輝度を1として規格化した規格化透過率である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、RGBW型液晶表示装置の高透過率を損なうことなく、下方向における階調反転を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1−1】本発明に係わる駆動方法を説明するために用いた、RGBW型TNモード液晶表示装置の一例の、G画素の階調LG及びW画素の階調LWそれぞれの寄与率と、透過率との関係を3次元マップの一例である。
【図1−2】本発明に係わる駆動方法を説明するために用いた、RGBW型TNモード液晶表示装置の他の例の、G画素の階調LG及びW画素の階調LWそれぞれの寄与率と、透過率との関係を3次元マップの一例である。
【図1−3】本発明に係わる駆動方法を説明するために用いた、RGBW型TNモード液晶表示装置の他の例の、G画素の階調LG及びW画素の階調LWそれぞれの寄与率と、透過率との関係を3次元マップの一例である。
【図2】本発明に係わる駆動方法を説明するために用いた、階調と規格化透過率との関係を示すグラフの一例である。
【図3】本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図である。
【図4】本発明に利用可能なRGBWカラーフィルタの一例の上面模式図である。
【図5】実施例の液晶表示装置の駆動電圧−階調との関係を示すグラフである。
【図6】光学シートにおける光路の一例を示す断面図である。
【図7】プリズムシートの製造装置の一例を示す概略図である。
【図8A】支持体2の第二の表面4上にポジ型感光層8を形成したプリズムシートAの模式断面図である。
【図8B】支持体2の第二の表面4上にポジ型感光層8を形成したプリズムシートAを露光した様子を示した模式断面図である。
【図8C】図8Bの露光後、露光部を洗い流した様子を示した模式断面図である。
【図8D】支持体2に白色反射シート10を配置した様子を示した模式断面図である。
【図8E】白色反射シートを支持体2から剥離した様子を示した模式断面図である。
【図9】光度と出射角度の関係を各プリズムシートについて正面(0°)で測定した光度(cd)を基準に規格化したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。尚、本願明細書中、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。なお、本明細書中、数値範囲や数値については、本発明の属する技術分野で許容される誤差を含む数値範囲及び数値として解釈されるべきである。
また、本明細書中、極角を表示面法線方向からの傾き角と定義し、表示画面の右・上・左、下方向をそれぞれ方位角0度、90度、180度、270度と定義した場合に、「下方向」とは、方位角270度の方向を意味し、例えば、「下方向30°」は、方位角270度、極角30度の方向を意味する。
【0010】
本発明の液晶表示装置は、液晶セルの一画素が、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素、及び白(W)画素からなる、RGBW型TNモード液晶表示装置であって、R画素、G画素及びB画素それぞれを構成する電極間に実質的に等しい電圧VRGBを印加するグレイスケール階調において、階調L(但しLは、0≦L≦1を満足する)に応じて、各画素を構成する電極間に印加する電圧を決定し、該電圧を各画素に印加する駆動電圧手段を備えたことを特徴とする。なお、グレイスケール階調は無彩色状態であり、即ち、R画素、G画素及びB画素を構成する電極間に実質的に等しい電圧VRGBが印加されている状態をいう。以下では、本発明に係わる駆動手段及び駆動方法を、G画素及びW画素それぞれを構成する電極間に印加する電圧の関係で説明するが、以下に説明する関係は、G画素を、R画素又はB画素に置き換えても成立する関係である。
なお、実質的に等しい電圧とは、電圧の差が±1V以内のことをいう。
【0011】
本発明の特徴の一つは、グレイスケール階調Lに対する、G画素の階調LG及びW画素の階調LWそれぞれの寄与率と、透過率との関係を3次元マップ化し、あらかじめ階調反転が始まる階調変化の経路を予測し、当該経路を避けるために、階調Lに応じて、G画素及びW画素それぞれを構成する電極間に印加する電圧を決定していることにある。
【0012】
上記3次元マップの一例を図1に示す。図1−1は、TNモード液晶セル(ツイスト角=90°、Δnd=410nm)の上下に富士フイルム社製の「WV−EAフィルム」を配置したRGBW型TNモード液晶表示装置について、G画素の階調LG及びW画素の階調LWそれぞれの寄与率と、下方向30度における透過率との関係を3次元マップ化した図である。なお、透過率は、白輝度の透過率を1として規格化した規格化透過率として示した。
規格化透過率は、R、G,B,Wの各画素において各々求められる。最初に、正面の規格化透過率について説明する。正面の規格化透過率とは、正面における電圧−透過率との関係から、白の透過率(通常、最大透過率付近を用いる)を1として規格化した透過率である。規格化透過率は0〜1の値になるが、この規格化透過率の値が略0(通常、最小値付近を用いる)のときが階調L0(黒)、規格化透過率の値が1のときが階調L1(白)になり、その中間は中間階調になる。階調L0〜1に対応して印加する電圧は、正面の電圧−規格化透過率の関係(例えば図5の関係)から得られ、例えば階調L0(黒)に対応する電圧がV0、L1(白)に対応する電圧がV1となり、中間階調ではV0とV1の間の電圧になる。
【0013】
次に、下30度における規格化透過率について説明する。正面の電圧−規格化透過率の関係から求めたV0〜V1を印加したときの下方向30度における電圧−透過率との関係を求め、この関係を、V1(すなわち白の電圧)のときの下方向30度における透過率を1として規格化した透過率が、下方向30度における電圧−規格化透過率の関係になる。
この関係を用いて、各階調での下方向30度における規格化透過率が得られる。
このようにして、R、G,B,Wの各画素において、各階調での正面および下方向30度における規格化透過率が得られる。
【0014】
図1に示す3次元マップでは、透過率の大小が、白黒の濃淡で示されているが、実際には、透過率の大小が色変化で示されている。例えば、G画素及びW画素それぞれを構成する電極間に最大駆動電圧がそれぞれ印加されれば、LG及びLWの階調はいずれも0(黒)になる。LW及びLGがそれぞれの寄与が同一になる様に、G画素及びW画素へ電圧を印加して、グレイスケール階調Lを0(黒)〜1(白)まで変化させると、透過率は、直線bに沿って0〜1に変化する。階調Lが0〜1に変化する間に、直線bに沿った透過率の変化が、谷→山→谷への変化を含んでいると、階調反転として認識される。
【0015】
図1−1に示す例では、直線bに沿った透過率の変化において、階調Lが0〜0.03に変化するまでは透過率が上昇するが、その後低下する、即ち、谷→山→谷の変化が存在することが理解できる。これを、階調Lと下方向30°の透過率との関係として示せば、図2に示すグラフ中の曲線bになり、0.03で階調反転が生じていることが理解できる。
【0016】
再び、図1−1において、本発明では、階調Lを0〜1に変化させる際に、直線a1−a2−a3で囲んだ範囲内の経路で変化するように、G画素及びW画素のそれぞれに電圧を印加して駆動する。それにより、階調反転の原因となる階調L=0.03に存在する透過率の山と、その後に存在する透過率の谷を避けることができ、階調反転の問題を解決できる。直線a1−a2−a3で囲んだ範囲内で階調Lを変化させた場合の、階調と下方向30°の透過率との関係の一例を示せば、図2に示すグラフの曲線aの通りになり、階調反転が解消できていることが理解できる。なお、下方向20°〜40°の透過率についても、曲線aと同様な特性になることを確認している。
【0017】
具体的には、本発明では、R画素、G画素及びB画素を構成する電極間に実質的に等しい電圧VRGBを印加するグレイスケール階調において、階調L(但しLは、0≦L≦1を満足する)に応じて、下記(ia)及び(iia)、又は(ib)及び(iib)を満足する電圧VRGB及び電圧Vwを、G画素を構成する電極間及びW画素を構成する電極間にそれぞれ印加することを特徴とする。
(ia)0<L≦0.03の時、TG=0で且つTW=2×L
(iia)0.03<L≦0.3の時、0.05<TW/(TG−0.03)<0.86
又は
(ib)0<L≦0.03の時、TW=0で且つTG=2×L
(iib)0.03<L≦0.3の時、0.05<TG/(TW−0.03)<0.86
但し、TG及びTWはそれぞれ、G画素及びW画素それぞれの透過率を、液晶表示装置の表示面法線方向における白の輝度を1として規格化した規格化透過率である。
【0018】
即ち、階調Lが0を超え0.03以下の範囲では、G画素及びW画素の一方のみに電圧を印加し、一方の画素の透過率が正面における黒状態の透過率であり、他方の透過率が正面における透過率の全てになるように駆動する。即ち、TG=0で且つTW=2×L、又はTW=0で且つTG=2×Lを満足する電圧を印加して駆動する。階調Lが0を超え0.03以下の範囲においては、図1−1中の直線a1に沿ってLが変化するように、G画素及びW画素にそれぞれ電圧を印加する。
【0019】
次に、階調Lが0.03を超え0.3以下の範囲では、G画素及びW画素のそれぞれに、
0.05<TW/(TG−0.03)<0.86、又は
0.05<TG/(TW−0.03)<0.86
を満足する条件で電圧を印加する。即ち、
TW>0.05TG−1.5×10-3且つTW<0.86TG−2.55×10-3の範囲、又は、
TG>0.05TW−1.5×10-3且つTG<0.86TW−2.55×10-3の範囲で、即ち、図1−1中の直線a2及びa3で囲む範囲内で、階調Lが変化する電圧をG画素及びW画素のそれぞれに印加する。
0.05<TW/(TG−0.03)<0.5、又は
0.05<TG/(TW−0.03)<0.5
の条件で、G画素及びW画素のそれぞれに電圧印加するのが好ましく、
0.06<TW/(TG−0.03)<0.2、又は
0.06<TG/(TW−0.03)<0.2
の条件で、G画素及びW画素のそれぞれに電圧印加するのがより好ましい。
【0020】
階調Lが0.03を超え0.3以下の範囲の階調Lを表示する際の、G画素及びW画素のそれぞれに印加する電圧は、上記関係式を満足する限り、特に制限はない。好ましくは、階調Lが0.03を超え0.3以下の範囲において、TW/(TG−0.03)又はTG/(TW−0.03)が同一になる電圧を、G画素及びW画素のそれぞれに印加するのが好ましい。例えば、階調Lが0.05、0.1、0.2及び0.3において、TW/(TG−0.03)又はTG/(TW−0.03)が上記関係式を満足するとともに、互いに同一の値になる様に、G画素及びW画素のそれぞれに電圧を印加するのが好ましい。
【0021】
階調Lが0.3を超えると、透過率が反転する領域は存在しないので、階調Lが0.3を超え1.0以下の範囲においては、階調反転の解消の観点では、電圧の印加条件は特に制限されない。データ処理の簡易性の観点から、TG=TWになる電圧をG画素及びW画素にそれぞれ印加し、駆動するのが一般的である。
【0022】
図3に、本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図を示す。図3に示す液晶表示装置は、互いの吸収軸を直交にして配置された一対の偏光子16と、その間に配置されたTNモード液晶セル10とを有し、一対の偏光子16のそれぞれと、液晶セル10との間に、光学補償フィルム15を有する。光学補償フィルム15は、支持体14と、液晶組成物からなる光学異方性層12とを有する。図中に省略したが、偏光子16の外側表面には、セルロースアシレートフィルム等からなる保護フィルムが配置されている。
【0023】
液晶セル10は、ツイスト角90°でツイスト配向するTNモード液晶セルである。図中省略するが、少なくとも一方の対向面に画素を構成する電極を有する一対の基板と、該一対の基板間に配置され、ツイスト角90°でツイスト配向する液晶層とを少なくとも有する。ツイスト角が90°であると、高い正面コントラストを得る点で好ましい。
【0024】
前記液晶セル10の一画素は、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素、及び白(W)画素からなる。例えば、液晶セル10には、その一方の基板の対向面上に、図4に示、RGBWカラーフィルタが配置され、RGBWの画素を構成している。但し、RGBWのカラーフィルタの構成は、この例に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない限り、従来提案されている構成のRGBWカラーフィルタのいずれも用いることができる。
【0025】
液晶セル10は、駆動電圧が印加されていない状態ではネマチック液晶層がツイスト配向し、白状態になり、駆動電圧が印加されると、ツイスト配向が解消され、ネマチック液晶が基板に対して垂直配向して、黒状態になる。例えば、図5に示す駆動電圧−規格化透過率特性を示す、ノーマリーホワイトモードの液晶セルである。
【0026】
光学補償フィルム15は、液晶セル10の黒表示時の残留レターデーションを補償する作用を有する。一例は、光学異方性層12が、ハイブリッド配向状態に固定された円盤状液晶を含有する光学異方性層である態様である。当該態様の光学異方性層12は、液晶セル10中の基板近傍に存在する棒状液晶分子が、黒表示時に基板に対して傾斜配向していることによって生じる残留レターデーションを補償することができる。支持体14は、光学補償に寄与していても寄与していなくともよい。前者の態様では、支持体14は、Re(550)が0〜30nm、Rth(550)が0〜200nmの光学特性を示しているのが好ましい。
【0027】
一般的に、ハイブリッド配向状態に固定された円盤状液晶を含有する光学異方性層を、TNモード液晶表示装置の光学補償に利用する場合には、該光学異方性層の面内遅相軸を、近接する偏光子の透過軸に対して0°にして配置するのが一般的である。本発明でも、前記光学異方性層の面内遅相軸を近接する偏光子の透過軸に対して0°にして配置してもよい。
【0028】
光学補償フィルム15としては、富士フイルム社製の「WV−EAフィルム」等を用いることができる。「WV−EAフィルム」は、ハイブリッド配向状態に固定された円盤状液晶を含有する光学異方性層と支持体とからなる積層フィルムである。
【0029】
図中省略したが、液晶表示装置は、駆動制御手段により、外部からの信号に基づいて、RGB画素にはそれぞれ実質的に等しいVRBGを印加し、W画素にVGを印加して、グレイスケール階調Lを表示するように制御されている。駆動制御手段は、外部からの信号から階調Lの情報を検出する検出部と、検出された階調Lが0〜0.3の範囲においては、階調Lに応じて、上記式(ia)及び(iia)又は(ib)及び(iib)を満足する条件で、G画素及びW画素それぞれへの印加電圧を決定する演算部と、決定された電圧をG画素及びW画素それぞれに印加する駆動部とを含んで構成される。
【0030】
本発明の液晶表示装置において、一対の偏光子のそれぞれと前記液晶セルとの間に配置される光学補償フィルム15としては、ハイブリッド配向状態に固定された円盤状液晶を含む光学異方性層を支持体上に有する前述の積層フィルムが好ましいが、特定の光学特性を有し、光学異方性層を有しないポリマーフィルム単体からなる位相差フィルムもまた好ましい。
【0031】
《ポリマーフィルム単体からなる位相差フィルム》
〈光学特性〉
ポリマーフィルム単体からなる位相差フィルムの3方向の屈折率において、面内最大方向をnx、nxと垂直方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとした場合、nx>ny>nzを満足する位相差フィルムは、視認者から液晶表示装置を見て水平方向の視野角コントラストを拡大するという点で好ましい。
前記位相差フィルムの面内レターデーションRe(=(nx−ny)×d;dはフィルムの膜厚を表す。)は、波長590nmにおいて1〜200nmが好ましく、より好ましくは5〜100nm、さらに好ましくは15〜80nm、特に好ましくは30〜60nmである。また、前記位相差フィルムの厚み方向レターデーションRth(={(nx+ny)/2−nz}×d;dはフィルムの膜厚を表す。)は、波長590nmにおいて、80〜400nmが好ましく、より好ましくは75nm〜200nm、さらに好ましくは80〜150nm、特に好ましくは90〜140nmである。
【0032】
〈フィルムを形成するポリマー材料〉
位相差フィルムを形成するポリマー材料としては、特に限定されないが、例えば、セルロースエステル、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー等を利用することができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ノルボルネン等のシクロポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマー等から1種又は2種以上のポリマーを選択し、主成分として用いてポリマーフィルムを作製し利用することができる。また汎用されている市販品のポリマーフィルムを用いることもできる。
【0033】
この中で、セルロースエステルを用いることが好ましく、偏光板加工適正、光学発現性、透明性、機械特性、耐久性、コスト等の観点から、アセチル基等のアシル基を有するセルロースアシレートを用いることが特に好ましい。
【0034】
〈セルロースアシレート〉
前記位相差フィルムの材料としてセルロースアシレートを使用する場合、前記位相差フィルムは、1種又は2種以上のセルロースアシレートを主成分として含有する。ここで「主成分として含有する」とは、フィルムの材料として用いられているセルロースアシレートが1種である場合は、当該セルロースアシレートをいい、複数種である場合は、最も高い割合で含有されるセルロースアシレートをいう。
セルロースには、β−1,4結合しているグルコース単位当り、2位、3位及び6位に遊離の水酸基がある。セルロースアシレートは特に限定はされないが、セルロースアセテート、またはアセチル基と他のアシル基を有するセルロースアシレートを用いることが好ましい。
これらの3つの水酸基のうち平均で2.00〜2.80の水酸基の水素原子がアシル基に置換され、好ましい第一の態様としては、全てがアセチル基であることである。
また、好ましい第二の態様としては、3つの水酸基のうち平均で2.00〜2.80の水酸基の水素原子がアシル基に置換され、且つそのうち0.50〜1.50がプロピオニル基及び/又はブチリル基で置換されているセルロースアセテート・プロピオネート、セルロースアセテート・ブチレート、又はセルロースアセテート・プロピオネート・ブチレートを用いることである。
好ましい第二の態様としては、セルロースアセテート・プロピオネートを用いることが特に好ましい。
【0035】
総アシル基置換度が2.00未満であると、無置換のヒドロキシ基が多く存在し、フィルムの湿度依存性が大きくなり、液晶表示装置の光学部材としての用途等、湿度に対する耐久性を必要とされる用途には適さなくなる。一方、総アシル基置換度が、2.80を超えてしまうと、Re及びRthの発現性が低下し、好ましくない。双方の観点では、好ましい第一の態様、第二の態様ともに総アシル基置換度は、2.20〜2.70であるのがより好ましく、2.40〜2.60であるのがさらに好ましい。
3層共流延法により製造する場合は、コア層のセルロースアシレートの総アシル基置換度が上記範囲であることが好ましく、それより外側の層(以下ではスキン層という)のセルロースアシレートの総アシル置換度は、2.70を超え3.00以下であることが好ましく、2.75〜2.90であることが特に好ましい。
【0036】
一方、好ましい第二の態様としてセルロースアシレートのプロピオニル基及び/又はブチリル基の置換度は、フィルムのRe及びRthの発現性に影響するとともに、フィルムの湿度依存性及び弾性率にも影響する。プロピオニル基及び/又はブチリル基の置換度を0.5〜1.5とすることで、これらの両立した好ましい特性を得ることができる。プロピオニル基及び/又はブチリル基置換度は0.60〜1.10がより好ましく、0.80〜1.00であるのがさらに好ましい。
なお、本明細書では、セルロースアシレートのアシル基置換度は、セルロースの構成単位質量当りの結合脂肪酸量を測定して算出することができる。測定方法は、「ASTM D817−91」に準じて実施する。
【0037】
前記セルロースアシレートは、350〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、370〜600の質量平均重合度を有することがさらに好ましい。また本発明に用いるセルロースアシレートは、60000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、70000〜230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することがよりさらに好ましい。
【0038】
〈可塑剤〉
前記位相差フィルムは、可塑剤を含有していてもよい。前記位相差フィルムの主成分(例えばセルロースアシレート)との相溶性が良い可塑剤は、ブリードアウトが生じ難く、低ヘイズであり、更に含水率及び透湿度を低減させるので、高品質で高耐久性を有するフィルムを得るのに有効である。
【0039】
前記位相差フィルムに使用可能な可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤などが挙げられる。
好ましくはリン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系化合物、多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤であり、より好ましくは多価アルコール系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤であり、さらに好ましくは糖エステル系可塑剤である。
特に多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、及びエチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤はセルロースアシレートとの相溶性が高く、ブリードアウト低減、低ヘイズ及び低透湿度の効果が高く、また温湿度変化や経時による可塑剤の分解及びフィルムの変質や変形が生じ難いため、好ましい。
【0040】
位相差フィルムとして二軸性フィルムを用いる態様では、中でも、可塑剤として、糖エステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、及び多価アルコール系可塑剤は、光学発現性に優れるために特に好ましく、糖エステル系可塑剤はさらにセルロースアシレートと構造が近いために、非常に低ヘイズなフィルムの作製が可能となるため、最も好ましい。
【0041】
本発明において、可塑剤は1種のみで用いてもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。可塑剤を2種類以上混合して使用する場合、1種類のみを用いることよりも相溶性が良好となり、ブリードアウト低減、低ヘイズとなる可能性が高い。これは、セルロースアシレートフィルムとの1種の可塑剤との相溶性を、他の1種の可塑剤が相溶化剤的に働くことで改善させるからであると推定している。
可塑剤を2種類以上混合して使用する場合、少なくとも1種は糖エステル系可塑剤、またはポリエステルオリゴマー系可塑剤であることが好ましく、糖エステル系可塑剤であることがさらに好ましい。
【0042】
前記位相差フィルムにおいて、可塑剤の含有量は、主成分ポリマー(例えばセルロースアシレート)に対して0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが更に好ましく、7〜15質量%であることが特に好ましい。
【0043】
〈多価アルコールエステル系可塑剤〉
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
【0044】
本発明に好ましく用いることのできる多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。
特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0045】
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
【0046】
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基或いはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
【0047】
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量がこの範囲であると、低揮散で、透湿性、セルロースエステルとの相溶性も良好であって好ましい。
【0048】
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化されていてもよいし、一部がOH基のままのこっていてもよい。
【0049】
〈ポリエステルオリゴマー系可塑剤〉
本発明におけるポリエステルオリゴマーは、ジオールとジカルボン酸とから、例えば、混合して得られる重縮合体である。
ポリエステルオリゴマーの数平均分子量は300〜3000であることが好ましい。
ポリエステルオリゴマーの数平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて通常の方法で測定することができる。
例えば、カラム(東ソー(株)製 TSKgel Super HZM−H、TSKgel Super HZ4000及びTSKgel Super HZ2000)の温度を40℃として、溶離液としてTHFを用い、流速を0.35ml/minとし、検出をRI、注入量を10μl、試料濃度を1g/lとし、また標準試料としてポリスチレンを用いて行うことができる。
【0050】
ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。これらジカルボン酸は、ポリエステルオリゴマー中には、ジオール残基とのエステル結合するジカルボン酸残基として含まれる。
【0051】
芳香族ジカルボン酸残基:
芳香族ジカルボン酸残基は、ジオールと芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合体に含まれる。
芳香族ジカルボン酸残基とはポリエステルオリゴマーの部分構造で、ポリエステルオリゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−COーである。
本発明に用いるポリエステルオリゴマーを構成する全ジカルボン酸残基中の芳香族ジカルボン酸残基比率は特に限定されないが、40mol%〜100mol%であることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示すセルロースアシレートフィルムが得られる。
【0052】
本発明に用いる芳香族ジカルボン酸は、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。
ポリエステルオリゴマーには混合に用いた芳香族ジカルボン酸により芳香族ジカルボン酸残基が形成される。
【0053】
芳香族ジカルボン酸は、平均炭素数が8.0〜12.0であることが好ましく、8.0〜10.0であることがより好ましく、8.0であることが更に好ましい。この範囲であれば、セルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。また、光学用途として位相差フィルムに用いるに適した異方性を十分に発現し得るセルロースアシレートフィルムとすることができるため好ましい。
【0054】
具体的には、芳香族ジカルボン酸は、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸の少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくはフタル酸、テレフタル酸の少なくとも1種を含み、更に好ましくはテレフタル酸を含む。すなわち、ポリエステルオリゴマーの形成における混合に、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸を用いることで、よりセルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいセルロースアシレートフィルムとすることができる。また、芳香族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよい。2種用いる場合は、フタル酸とテレフタル酸を用いることが好ましい。
【0055】
脂肪族ジカルボン酸残基:
脂肪族ジカルボン酸残基は、ジオールと脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合体に含まれる。
本明細書中では、脂肪族ジカルボン酸残基とはポリエステルオリゴマーの部分構造で、ポリエステルオリゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−CO−である。
本発明で好ましく用いられる脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
重縮合体には混合に用いた脂肪族ジカルボン酸より脂肪族ジカルボン酸残基が形成される。
脂肪族ジカルボン酸残基は、平均炭素数は特に限定されないが、4.0〜6.0であることが好ましく、4.0〜5.0であることがより好ましく、4.0〜4.8であることが更に好ましい。この範囲であれば、セルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。
具体的には、コハク酸残基を含むことが好ましく、2種用いる場合は、コハク酸残基とアジピン酸残基を含むことが好ましい。
すなわち、ポリエステルオリゴマーの形成における混合に、脂肪族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよく、2種用いる場合は、コハク酸とアジピン酸を用いることが好ましい。
コハク酸とアジピン酸の2種の脂肪族ジカルボン酸を用いることにより、ジオール残基の平均炭素数を少なくすることができ、セルロースアシレートとの相溶性の点で好ましい。
また、脂肪族ジカルボン酸残基の平均炭素数が4.0未満では合成が困難となるため、使用できない。
【0056】
ジオール:
ジオール残基は、ジオールとジカルボン酸とから得られたポリエステルオリゴマーに含まれる。
本明細書中では、ジオール残基とはポリエステルオリゴマーの部分構造で、ポリエステルオリオゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジオールHO−R−OHより形成されるジカルボン酸残基は−O−R−O−である。
ポリエステルオリゴマーを形成するジオールとしては芳香族ジオール及び脂肪族ジオールが挙げられ、特に限定はされないが、脂肪族ジオールが好ましい。
ポリエステルオリゴマーのジオールは特に限定はされないが、平均炭素数が2.0以上3.0以下の脂肪族ジオール残基を含むことが好ましい。脂肪族ジオール残基の平均炭素数が3.0より大きいとセルロースアシレートとの相溶性が低く、ブリードアウトが生じやすくなり、また、化合物の加熱減量が増大し、セルロースアシレートェブの乾燥時の工程汚染が原因と考えられる面状故障が発生する可能性が高まる。また、脂肪族ジオール残基の平均炭素数が2.0未満では合成が困難となるため、使用できない。
【0057】
前記脂肪族ジオールとしては、アルキルジオール又は脂環式ジオール類を挙げることができ、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール等があり、これらはエチレングリコールとともに1種又は2種以上の混合物として使用されることが好ましい。
【0058】
好ましい脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンジオールの少なくとも1種であり、特に好ましくはエチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールの少なくとも1種である。2種用いる場合は、エチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールを用いることが好ましい。
ポリエステルオリゴマーには混合に用いたジオールによりジオール残基が形成される。
【0059】
封止:
前記ポリエステルオリゴマーの両末端は封止、未封止を問わないが、より好ましくは封止しているものである。
ポリエステルオリゴマーの両末端が未封止の場合、重縮合体はポリエステルポリオールであることが好ましい。
ポリエステルオリゴマーの両末端が封止されている場合、モノカルボン酸と反応させて封止することが好ましい。このとき、該重縮合体の両末端はモノカルボン酸残基となっている。
【0060】
本明細書中では、モノカルボン酸残基とはポリエステルオリゴマーの部分構造で、ポリエステルオリゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばモノカルボン酸R−COOHより形成されるモノカルボン酸残基はR−CO−である。モノカルボン酸封止は芳香族モノカルボン酸、脂肪族カルボン酸のどちらを用いてもよい。モノカルボン酸は、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸及びその誘導体等が好ましい。封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。
【0061】
本発明に係るポリエステルオリゴマーの合成は、常法によりジオールとジカルボン酸とのポリエステル化反応又はエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。また、本発明に係るポリエステルオリゴマーについては、村井孝一編者「可塑剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
【0062】
本発明のポリエステルオリゴマーが含有する原料の脂肪族ジオール、ジカルボン酸エステル、又はジオールエステルのセルロースアシレートフィルム中の含有量は、1質量%未満が好ましく、0.5質量%未満がより好ましい。ジカルボン酸エステルとしては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、アジピン酸ジ(ヒドロキシエチル)、コハク酸ジ(ヒドロキシエチル)等が挙げられる。ジオールエステルとしては、エチレンジアセテート、プロピレンジアセテート等が挙げられる。
【0063】
ポリエステルオリゴマーの水酸基価の測定は、日本工業規格 JIS K3342(廃止)に記載の無水酢酸法当を適用できる。ポリエステルオリゴマーがポリエステルポリオールである場合は、水酸基価が55以上220以下であることが好ましく、100以上140以下であることが更に好ましい。
【0064】
以下に、本発明に利用可能なポリエステルオリゴマー系可塑剤の具体例を示すが、以下の具体例に限定されるものではない。
【0065】
【表1】
【0066】
〈糖エステル系可塑剤〉
糖エステル系可塑剤で好ましいものとしては、フラノース構造又はピラノース構造を1個以上12個以下有する化合物中の水酸基の少なくとも1つをエステル化したエステル化合物が挙げられる。
【0067】
フラノース構造又はピラノース構造を1個以上12個以下有する化合物中の水酸基の少なくとも1つをエステル化したエステル化合物としては、
フラノース構造又はピラノース構造を1個有する化合物(化合物(A))中の水酸基の全てもしくは一部をエステル化したエステル化化合物;及び
フラノース構造又はピラノース構造の少なくとも1種を2個以上12個以下結合した化合物(化合物(B))中の水酸基の全てもしくは一部をエステル化したエステル化化合物;が挙げられる。
以下、化合物(A)のエステル化化合物、及び化合物(B)のエステル化化合物を総称して、糖エステル化合物とも称す。
また、前記エステル化化合物が単糖類(α−グルコース、β−フルクトース)の安息香酸エステル、若しくは下記一般式(5)で表される単糖類の−OR512、−OR515、−OR522、−OR525の任意の2つ以上が脱水縮合して生成したm5+n5=2〜12の多糖類の安息香酸エステルであることが好ましい。
【0068】
【化1】
【0069】
前記一般式中の安息香酸は更に置換基を有していてもよく、例えばアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、フェニル基が挙げられ、更にこれらのアルキル基、アルケニル基、フェニル基は置換基を有していてもよい。
好ましい化合物(A)及び化合物(B)の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
化合物(A)の例としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、或いはアラビノースが挙げられる。
化合物(B)の例としては、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース或いはケストース挙げられる。このほか、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
これらの化合物(A)及び化合物(B)の中で、特にフラノース構造とピラノース構造を両方有する化合物が好ましい。例としてはスクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、更に好ましくは、スクロースである。また、化合物(B)において、フラノース構造若しくはピラノース構造の少なくとも1種を2個以上3個以下結合した化合物であることも、好ましい態様の1つである。
【0070】
本発明における化合物(A)及び化合物(B)中の水酸基の全て若しくは一部をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。
【0071】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
【0072】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
【0073】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができ、より、具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、クレオソート酸、o−ホモサリチル酸、m−ホモサリチル酸、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
【0074】
上記化合物(A)及び化合物(B)をエステル化したエステル化化合物の中では、エステル化によりアセチル基が導入されたアセチル化化合物またはベンゾイル基が導入されたベンゾイル化化合物、またはアセチル基とベンジル基の両方が導入された化合物が好ましい。
【0075】
上記化合物(A)及び化合物(B)のエステル化化合物に加えて、オリゴ糖のエステル化化合物を、フラノース構造若しくはピラノース構造の少なくとも1種を3〜12個結合した化合物として適用できる。
オリゴ糖は、澱粉、ショ糖等にアミラーゼ等の酵素を作用させて製造されるもので、本発明に適用できるオリゴ糖としては、例えば、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖が挙げられる。
【0076】
〈位相差フィルムの製造方法〉
前記位相差フィルムとして用いられるセルロースアシレートフィルムは、溶液製膜法(ソルベントキャスト法)によって製膜されたフィルムであるのが好ましい。以下、具体例として、セルロースアシレートフィルムの製造方法について説明するが、本発明に用いられる位相差フィルムは、セルロースアシレートフィルムに限定されるものではない。
【0077】
(ソルベントキャスト法)
ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解して調製されたドープを、金属等からなる支持体の表面にキャストして、乾燥して製膜し、その後、膜を支持体面から剥ぎ取り、所望により延伸処理することで製造される。
【0078】
ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。該ドープの調製に用いられる溶媒は、有機溶媒から選択することができる。有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、及び炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を少なくとも含むことが好ましい。
エーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する溶媒の上記した好ましい炭素原子数範囲内であることが好ましい。
【0079】
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが含まれる。
【0080】
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることがよりさらに好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0081】
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造する。ドープには前記の可塑剤等の添加剤を添加することが好ましい。
【0082】
ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が10℃以下のドラム又はバンド上に流延することが好ましい。
【0083】
ドープ(セルロースアシレート溶液)をバンド上に流延する場合、剥ぎ取り前乾燥の前半において10秒以上90秒以下、好ましくは15秒以上90秒以下の時間、実質的に無風で乾燥する工程を行う。また、ドラム上に流延する場合、剥ぎ取り前乾燥の前半において1秒以上10秒以下、好ましくは2秒以上5秒以下の時間、実質的に無風で乾燥する工程を行うことが好ましい。
【0084】
本明細書において、「剥ぎ取り前乾燥」とはバンドもしくはドラム上にドープが塗布されてからフィルムとして剥ぎ取られるまでの乾燥を指すものとする。また、「前半」とはドープ塗布から剥ぎ取りまでに要する全時間の半分より前の工程を指すものとする。「実質的に無風」であるとは、バンド表面もしくはドラム表面から200mm以内の距離において0.5m/s以上の風速が検出されない(風速が0.5m/s未満である)ことである。
剥ぎ取り前乾燥の前半は、バンド上の場合通常30〜300秒程度の時間であるが、その内の10秒以上90秒以下、好ましくは15秒以上90秒以下の時間、無風で乾燥する。ドラム上の場合は通常5〜30秒程度の時間であるが、その内の1秒以上10秒以下、好ましくは2秒以上5秒以下の時間、無風で乾燥する。雰囲気温度は0℃〜180℃が好ましく、40℃〜150℃がさらに好ましい。無風で乾燥する操作は剥ぎ取り前乾燥の前半の任意の段階で行うことができるが、好ましくは流延直後から行うことが好ましい。無風で乾燥する時間が、バンド上の場合に10秒未満(ドラム上の場合に1秒未満)であると、添加剤がフィルム内に均一に分布することが難しく、90秒を超えると(ドラム上の場合10秒を超えると)乾燥不十分で剥ぎ取られることになり、フィルムの面状が悪化する。
剥ぎ取り前乾燥における無風で乾燥する以外の時間は、不活性ガスを送風することにより乾燥を行なうことができる。このときの風温は0℃〜180℃が好ましく、40℃〜150℃がさらに好ましい。
【0085】
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて二層以上の流延を行いフィルム化することもできる。この場合、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製することが好ましい。ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40%の範囲となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
【0086】
二層以上の複数のセルロースアシレート液を流延する場合、複数のセルロースアシレート溶液を流延することが可能で、支持体の進行方向に間隔をおいて設けられた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよい。例えば、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、及び、特開平11−198285号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することができる。例えば、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、及び、特開平6−134933号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押し出すセルロースアシレートフィルムの流延方法を用いることもできる。
【0087】
また、二個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成形したフィルムを剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第二の流延を行うことにより、フィルムを作製することもできる。例えば、特公昭44−20235号公報に記載の方法を挙げることができる。
流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液を用いてもよいし、異なるセルロースアシレート溶液を用いてもよい。複数のセルロースアシレート層に機能をもたせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押し出せばよい。さらに本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、紫外線吸収層、偏光層など)と同時に流延することもできる。
【0088】
従来の単層液では、必要なフィルムの厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押し出すことが必要である。その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良となったりして問題となることが多かった。この問題の解決方法として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に支持体上に押し出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。
【0089】
とりわけ、3層以上の積層構造を有していることが、寸法安定性や環境湿熱変化に伴うカール量低減の観点から好ましい。また、前記低置換度層の両面に前記高置換度層を有する場合、所望の光学特性を実現させる工程における自由度向上の観点から好ましい。
なお、3層以上の積層構造を有している場合に限り、フィルム製膜時に支持体と接していない側の表面層のことをスキンA層とも言う。
【0090】
特に、スキンB層/コア層/スキンA層の3層構造であることが好ましい。3層構造の場合、高置換度層/低置換度層/高置換度層という構成であっても低置換度層/高置換度層/低置換度層という構成であってもよいが、高置換度層/低置換度層/高置換度層の構成であることが、溶液製膜時の支持体からの剥離性を改善する観点および寸法安定性の観点から好ましい。
3層構造であるとき、両面の表面層に含まれるセルロースアシレートは同じアシル置換度のセルロースアシレートを用いることが、製造コスト、寸法安定性および環境湿熱変化に伴うカール量低減の観点から好ましい。
【0091】
前記セルロースアシレートフィルムは、例えば、幅は0.5〜5mであり、より好ましくは0.7〜3mの形態として作製されてもよい。また、前記セルロースアシレートフィルムは、巻長300〜30000m、より好ましくは500〜10000m、さらに好ましくは1000〜7000mの形態として作製されてもよい。
【0092】
〈延伸〉
前記位相差フィルムとして、上記方法で作製されたセルロースアシレートフィルムに、さらに延伸処理を施し、そのレターデーションを調整した延伸フィルムを用いてもよい。積極的に幅方向(製膜時の流延方向と直交する方向)に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、及び特開平11−48271号の各公報などに記載されている。フィルムの延伸は、常温又は加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度を挟む±20℃であることが好ましい。これは、ガラス転移温度より極端に低い温度で延伸すると、破断しやすくなり所望の光学特性を発現させることができない。また、ガラス転移温度より極端に高い温度で延伸すると、延伸により分子配向したものが熱固定される前に、延伸時の熱で緩和し配向を固定化することができず、光学特性の発現性が悪くなる。
【0093】
さらに、延伸ゾーン(例えばテンターゾーン)において、フィルムを噛み込み、搬送し最大拡幅率を経た後に、通常緩和させるゾーンを設ける。これは軸ずれを低減するのに必要なゾーンである。通常の延伸ではこの最大拡幅率を経た後の緩和率ゾーンでは、テンターゾーンを通過させるまでの時間は1分より短く、フィルムの延伸は、搬送方向あるいは幅方向だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよいが、幅方向により多く延伸することが好ましい。幅方向、即ち製膜時の流延方向と直交する方向、に1.4倍〜2倍の倍率で延伸処理するのが好ましく、より好ましくは延伸倍率は1.4倍〜1.6倍であり、さらに好ましくは延伸倍率は1.4倍〜1.5倍である。
【0094】
延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶剤量(残留溶剤量/(残留溶剤量+固形分量))が0.05〜50%で好ましく延伸することができる。残留溶剤量が0.05〜5%の状態で5〜80%延伸を行うことが特に好ましい。
【0095】
また、前記位相差フィルムとして、上記方法で作製されたセルロースアシレートフィルムに二軸延伸処理を施した二軸延伸処理フィルムを用いてもよい。
二軸延伸には、同時二軸延伸法と逐次二軸延伸法があるが、連続製造の観点から逐次二軸延伸方法が好ましく、ドープを流延した後、バンドもしくはドラムよりフィルムを剥ぎ取り、幅方向(長手方法)に延伸した後、長手方向(幅方向)に延伸される。
【0096】
〈膜厚〉
前記位相差フィルムの膜厚は、特に限定されないが、10〜200μmであることが好ましい。薄型化の観点では、膜厚は薄いほどよいが、10μm未満であると、取り扱い性が損なわれる傾向がある。より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは10〜60μm、特に好ましくは10〜50μm、最も好ましくは10〜40μmである。
【0097】
スキンB層/コア層/スキンA層の3層構造であって、順に高置換度層/低置換度層/高置換度層という好ましい態様においては、前記高置換度層の平均膜厚が0.1μm以上10μm未満の範囲が好ましく、0.5μm以上5μm未満の範囲がより好ましい。スキン層が0.1μm未満になると、剥離性が不十分となり、スジ状のムラ、フィルムの膜厚不均一あるいは光学特性不均一を招きやすい。
また、スキン層が10μm以上になると、全体の膜厚を薄形する上でコア層の厚みが制限されるため、コア層の光学発現性を有効に利用することが難しくなる。
【0098】
《集光シート》
本発明において特に好ましい態様として、液晶表示装置が面光源と集光シートとからなるバックライトユニットを有し、前記バックライトユニットが出射した光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線に対して、観察者が前記液晶表示画面を視認するときの鉛直方向または水平方向に傾けられた出射角度50°から85°の範囲の光量の平均値が、該法線方向の光量に対して12%以下であることが好ましい。
集光シートとしては、プリズムシートやレンズシートが挙げられ、表面に凹凸が形成されたシートであって、その材料や作製方法はさまざまなものを用いることができる。
【0099】
[集光シートの材料及び製法]
集光シートを構成する材料及び製法について説明する。
【0100】
本発明に係る集光シートを製造する方法に関しては、微細な凹凸パターンのプリズムシートを形成することができる方法であればよく、製造方法は限定されない。
【0101】
例えば、ダイより押し出したシート状の樹脂材料を、この樹脂材料の押し出し速度と略同速度で回転する転写ローラ(例えばプリズムシートに形成される凹凸パターンと反転パターンが表面に形成されている)と、この転写ローラに対向配置され同速度で回転するニップローラ板とで挟圧し、転写ローラ表面の凹凸パターンを樹脂材料に転写する製造方法を用いることができる。
【0102】
上記製造方法に使用されるプリズムシートを構成する樹脂材料としては、熱可塑性樹脂が用いられる。具体的には、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、MS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、セルロースアシレート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースダイアセテート、熱可塑性エラストマー、又はこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマー等を使用することができる。
【0103】
[プリズムシート]
本発明に用いられる集光シートとして、特に好ましいプリズムシートについて詳述する。
本発明の液晶表示装置は、面光源と集光シートからなるバックライトユニットが出射した光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線に対して、観察者が前記液晶表示画面を視認するときの鉛直方向に傾けられた出射角度50°から85°の範囲の光量の平均値が、該法線方向の光量に対して12%以下であることが好ましい。
【0104】
図6は、集光シート(光学シート)41における光路を示す断面図である。図6に示すように、入射した光は、光学シート41を屈折透過する際に、正面方向に屈折する成分Aと、正面方向ではなく、正面から離れる方向に屈折する成分Bと、表面で反射する成分Cに分けられる。これらの光の成分のうち、前記成分Aは、正面方向即ち観察方向に出射されるものであり、実際に利用される光である。前記反射される成分Cは、底面で拡散反射して、プリズムシートに入射する角度を変え、一部は成分Aに変換され正面方向に出射する。この反射を繰り返すことにより、成分Cの多くは成分Aに変換され、出射面の正面方向の輝度を増加させる。
これに対して、図6のX部分を通過する光の成分Bは、液晶表示装置等の有効な視野角外に広角度で出射する光(以下、サイドローブ光と称する)であり、正面輝度の増加には寄与しない。
さらに、サイドローブ光は、画面の法線方向から極端にかけ離れた角度で液晶パネルに入射し、液晶セルの液晶分子、カラーフィルター、位相差フィルム等により正面に散乱された光成分は、黒表示輝度の著しい増加させ、コントラスト低下の原因となっていた。
【0105】
本発明の液晶表示装置に好ましく用いられるプリズムシートは、サイドローブ光を少なくすることができ、黒表示の輝度上昇を防止し、コントラストが向上する効果を奏する。
前記反射型偏光板と前記位相差フィルムと前記集光シート及び前記面光源からなるバックライトユニットから出射された光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線に対して、観察者が前記液晶表示画面を視認するときの鉛直方向または水平方向に傾けられた出射角度50°から85°の範囲の光量の平均値が、該法線方向の光量に対して12%以下であることが好ましく、8%以下であることがさらに好ましく、4%以下であることがコントラストの観点で最も好ましい。
【0106】
特に本発明の液晶表示装置がTNモード液晶セルを用いる場合、視認者側から見てTNモード液晶セルの表示画面は、通常、横長画面の長辺を水平方向として、液晶セル内の液晶分子の配向方向を45°から135°にツイストし、前記TNモード液晶セルの面内位相差が最大となる方向が鉛直方向となるよう画面を配置するが、用途によっては逆に配置した液晶表示装置であってもよい。
特に本発明の液晶表示装置がTNモード液晶セルを用いる場合、上記集光シートが前記TNモード液晶セルの面内位相差が最大となる方向に集光し、且つその方向のサイドローブ光が少ない場合に顕著な効果を奏し、好ましいが、液晶セルの画素とのモアレを防止するためにプリズムの稜線を画素のブラックマトリックスに対して1〜20°の範囲で傾けてもよい。
【0107】
前記プリズム断面の凹凸パターンとしては、三角形状が好ましく、とりわけ二等辺三角形状がより好ましく、凸部を液晶セル側へ向けたプリズムシートであることが好ましい。
形状の特徴としては、三角形状の頂角が95〜130°が好ましく、100〜120°がより好ましい。前記頂角が95°未満であると、サイドローブ光の影響により、黒表示輝度の著しい増加の原因となりやすい。
一方、前記頂角が130°を超えると、集光効果が低下し、正面方向の輝度が低下することがある。
【0108】
また、該プリズム断面の三角形状の頂角が95°未満であっても、プリズム部とは別に光学調整部を支持体に設けることにより、サイドローブ光を低減することができ、もう一つの好ましい態様である。
また、前記支持体上の面内に所定の間隔をもって光学調整部が複数に配設されたプリズムシートも好ましい態様であり、該光学調整部としては、光反射性を有するもの、光拡散性を有するもの、屈折率差を利用するものがあり、特に光反射性を有する光学調整部であることが好ましい。
これら光学調整部は、特開2008−003515号公報、特開2008−176197号公報に記載された光学シートの光学調整部と同義である。
【0109】
なお、本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定するができる。
測定されるフィルムが一軸または二軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。
【0110】
【数1】
上記式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわし、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
【0111】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、本明細書では、特に付記がない限りは屈折率の測定波長は550nmとする。
【実施例】
【0112】
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0113】
実施例I
1.位相差フィルム1〜3の準備
(1)位相差フィルム1
下記の通り、透明支持体用フィルムを作製後、その上に、配向膜、及び光学異方性層をそれぞれ形成して位相差フィルムを作製し、位相差フィルム1として用いた。
(透明支持体の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、30℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
───────────────────────────────────
セルロースアセテート溶液組成(質量部) 内層 外層
───────────────────────────────────
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100 100
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8 7.8
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9 3.9
メチレンクロライド(第1溶媒) 293 314
メタノール(第2溶媒) 71 76
1−ブタノール(第3溶媒) 1.5 1.6
シリカ微粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
0 0.8
下記レターデーション上昇剤 1.7 0
───────────────────────────────────
【0114】
【化2】
【0115】
得られた内層用ドープおよび外層用ドープを、三層共流延ダイを用いて、0℃に冷却したドラム上に流延した。残留溶剤量が70質量%のフィルムをドラムから剥ぎ取り、両端をピンテンターにて固定して搬送方向のドロー比を110%として搬送しながら80℃で乾燥させ、残留溶剤量が10%となったところで、110℃で乾燥させた。その後、140℃の温度で30分乾燥し、残留溶剤が0.3質量%のセルロースアセテートフィルム(厚み80μm(外層:3μm、内層:74μm、外層:3μm))を製造した。作製したセルロースアセテートフィルムの波長550nmにおける面内レターデーションReは−10nm、厚さ方向のレターデーションRthは90nmであった。
【0116】
作製したセルロースアセテートフィルムを、2.0Nの水酸化カリウム溶液(25℃)に2分間浸漬した後、硫酸で中和し、純水で水洗、乾燥した。
【0117】
(配向膜の形成)
このセルロースアセテートフィルム上に、下記組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28mL/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150
秒乾燥した。形成された膜表面に、ラビングロールで搬送方向に平行な方向に500回転/分で回転させてラビング処理を行い、配向膜を形成した。
───────────────────────────────────
(配向膜塗布液組成)
───────────────────────────────────
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 370質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
───────────────────────────────────
【0118】
【化3】
【0119】
(光学異方性層の形成)
下記組成の塗布液を調製し、#3.2のワイヤーバーを用いて、フィルムの配向膜面に連続的に塗布した。室温から100℃に連続的に加温する工程で、溶媒を乾燥させ、その後、135℃の乾燥ゾーンで約90秒間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置により、照度600mWの紫外線を10秒間照射し、架橋反応を進行させ、ディスコティック液晶化合物を重合した。その後、室温まで放冷し、光学異方性層を形成し、光学補償フィルムを作製した。
(光学異方性層塗布液組成)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
メチルエチルケトン 98質量部
下記のディスコティック液晶性化合物(1) 41.01質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製 4.06質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製) 0.34質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB531−1、イーストマンケミカル社製) 0.11質量部
下記フルオロ脂肪族基含有ポリマー1 0.13質量部
下記フルオロ脂肪族基含有ポリマー2 0.03質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.45質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0120】
【化4】
【0121】
【化5】
【0122】
【化6】
【0123】
(光学特性の測定)
作製した各光学補償フィルムについて、KOBRA−WR(王子計測器(株)製)を用いて、波長550nmの面内レターデーションRe(550)を測定した。また、各光学補償フィルムの遅相軸に直交する面内において、法線方向から±40度に傾斜した方向から波長550nmの光を入射させてレターデーションR[+40°]及びR[−40°]を測定し、R[−40°]/R[+40°]を算出した。
結果、Re(550)=44nm、R[−40°]/R[+40°]=3.0であった。
【0124】
(2)位相差フィルム2
下記の通り、透明支持体を作製後、その上に、配向膜、及び光学異方性層を形成し、位相差フィルムを作製し、位相差フィルム2として用いた。
(透明支持体の作製)
ドープの調製
下記表に示す組成、且つ数平均分子量のオリゴマーを、下記表に示す添加量で含む、セルロースアセテート溶液をそれぞれ調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアセテート溶液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
・平均置換度2.86のセルロースアセテート 100.0質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 475.9質量部
・メタノール(第2溶媒) 113.0質量部
・ブタノール (第3溶媒) 5.9質量部
・平均粒子サイズ16nmのシリカ粒子 0.13質量部
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
・オリゴマー(下記表に示す)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0125】
調製し溶液を、流延ギーサーを通して直径3mのドラムである鏡面ステンレス支持体上に、下記表に示すPITドロー条件で、流延した。
次に、支持体上のウェブの残留溶媒量及び膜面温度が、下記表に示す値になった時に、下記表に示す延伸倍率で、ウェブをTD方向に延伸処理した。延伸処理は、ウェブの両端をピン状テンターで把持して搬送方向と直交する方向に広げることによりTD方向に延伸した。延伸後、ウェブの残留溶媒量が下記表に示す値になった時、下記表に示す膜面温度で、ウェブを熱処理した。熱処理は、乾燥ゾーンの温度を乾燥風によって制御することにより行った。また、熱処理は、ピン状テンターを固定した条件で行った。
この様にして、セルロースアセテートフィルムを作製した。
【0126】
【表2】
【0127】
作製したセルロースアセテートフィルムを2.0Nの水酸化カリウム溶液(25℃)に2分間浸漬した後、硫酸で中和し、純水で水洗、乾燥した。
【0128】
(配向膜の形成)
このセルロースアセテートフィルム上に、下記の組成の塗布液を#14のワイヤーバーコーターで24mL/m2塗布した。100℃の温風で120秒で乾燥した。形成された膜表面に、ラビングロールで搬送方向から2°の方向に500回転/分で回転させてラビング処理を行い、配向膜を形成した。
───────────────────────────────────
(配向膜塗布液組成)
───────────────────────────────────
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 364質量部
メタノール 114質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 1.0質量部
クエン酸エステル(AS3、三共化学(株)) 0.35質量部
───────────────────────────────────
【0129】
【化7】
【0130】
(光学異方性層の作製)
下記組成の塗布液を調製し、#2.4のワイヤーバーを用いて、フィルムの配向膜面に連続的に塗布した。その後、80℃の乾燥ゾーンで約120秒間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、紫外線照射装置により、照度600mWの紫外線を10秒間照射し、架橋反応を進行させ、ディスコティック液晶化合物を重合した。その後、室温まで放冷し、光学異方性層を形成し、位相差フィルム2を作製した。
(光学異方性層塗布液組成)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記に示す液晶化合物(2) 100.0質量部
下記に示すピリジニウム塩化合物II-1 1.0質量部
下記に示すトリアジン環含有化合物III-1 0.2質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3.0質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 341.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0131】
【化8】
【0132】
(光学特性の測定)
作製した各光学補償フィルムについて、KOBRA−WR(王子計測器(株)製)を用いて、波長550nmの面内レターデーションRe(550)を測定した。また、各光学補償フィルムの遅相軸に直交する面内において、法線方向から±40度に傾斜した方向から波長550nmの光を入射させてレターデーションR[+40°]及びR[−40°]を測定し、R[−40°]/R[+40°]を算出した。
結果、Re(550)=66nm、R[−40°]/R[+40°]=2.3であった。
また、位相差フィルム2の規格化透過率特性は、図1−1の位相差フィルム1の特性とほぼ同じであった。
【0133】
(3)位相差フィルム3
富士フイルム社製のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム「TF80」光学補償フィルム3として用いたレターデーションを測定したところ、Re(550)=2nm、Rth(550)=40nmであった。
また、位相差フィルム3の規格化透過率特性を図1−2に示す。
【0134】
2.偏光板の作製
偏光膜の一方の表面に、上記フィルム1〜3のいずれか1つを貼合し、他方の表面に富士フイルム社製のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム「TF80」を貼合し、偏光板をそれぞれ作製した。なお、液晶セルと貼合する際は、上記位相差フィルムをそれぞれ液晶セル側にして貼合した。
なお、下記表の実施例では、位相差フィルム1又は2を偏光子に貼合する際に、面内遅相軸と偏光子の吸収軸を直交させ貼合した。
【0135】
3.液晶表示装置の作製と評価
図4に示す構成のRGBWカラーフィルタを有するTNモード液晶セル(Δnd=410nm)を準備し、上記で作製した偏光板のいずれか同一のものを、該液晶セルの上下に一枚ずつ貼合して、図3と同様の構成の液晶表示装置を作製した。
なお、比較例用に、RGBカラーフィルタを有するTNモード液晶セル(Δnd=410)も準備し、同様にして、液晶表示装置を作製した。
【0136】
下記表に記載の通り、グレイスケール階調Lのそれぞれにおいて、G画素及びW画素のそれぞれにTG及びTWが下記表に示す値となる電圧を印加して、各液晶表示装置を駆動した。
このとき、R画素およびB画素には、TRおよびTBがTGと同じになるようにそれぞれ電圧を印加し、即ち、RGB画素をあわせて見たときに無彩色にしている。
R,G,B,Wの画素をあわせたものを1つの表示素子と見なして以下の測定を行った。R,G,B,Wをあわせてみると無彩色になっている。
【0137】
正面方向透過率、及び下方向階調反転をそれぞれ、以下の方法で測定した。なお、各液晶表示装置を、ノーマリーホワイトモードで駆動した。駆動電圧と規格化透過率との関係の例を図5に示す。
【0138】
(正面方向透過率)
作製した実施例及び比較例の液晶表示装置のそれぞれについて、白表示時の表示面法線方向(正面方向)の輝度を、トプコン社のBM−5Aを用いて測定した。下記表は、比較例1の正面方向輝度を基準にして相対的な透過率を算出し、それぞれの液晶表示装置の透過率を示す。透過率の値が高いほど、良好である。
【0139】
(下方向階調反転)
作製した実施例及び比較例の液晶表示装置のそれぞれについて、グレイスケール階調表示させ、L=0.03のときの下方向30°の輝度をUL0.03、L=0.1のときの下方向30°の輝度をUL0.1としたとき、UL0.1/UL0.03で定義されるR値を求めた。
R値は大きい値であるほど、階調反転が目立たないか、又は反転が見えなくなる。R値の数値範囲を下記のランクに分類した。
下方向階調反転はEランクならば実用上許容されるレベルである。
ランク
A: 1.00≦ R
B: 0.95≦ R <1.00
C: 0.90≦ R <0.95
D: 0.85≦ R <0.90
E: 0.80≦ R <0.85
F: R <0.80
画素構成、位相差フィルム、及び印加電圧制御の設定、さらに正面方向の透過率と下方向階調反転の各評価結果を、表3,4,5に整理した。
【0140】
なお、以上の測定を下記表におけるTGとTWとを入れ替え、同じ評価を行なった結果、下記表の評価結果と同じ結果が得られた。
【表3】
【0141】
【表4】
【0142】
【表5】
【0143】
(実施例II)
(位相差フィルム4の作製)
<セルロースアシレート溶液1Cの調製>
セルロースアシレートおよび下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液1Cを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液1Cの組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレートCE−1 100.0質量部
ポリエステルオリゴマーA−1 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 403.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0144】
<セルロースアシレート溶液1Sの調製>
セルロースアシレートおよび下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液1Sを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液1Sの組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレートCE−2 100.0質量部
ポリエステルオリゴマーA−1 5.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 403.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0145】
<マット剤溶液1の調製>
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液1を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ16nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、 日本アエロジル(株)製) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 72.4質量部
メタノール(第2溶媒) 10.8質量部
セルロースアシレート溶液1S 10.3質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0146】
CE−1:アセチル置換度2.42、全置換度2.42
CE−2:アセチル置換度2.81、全置換度2.81
【0147】
【表6】
【0148】
流延方法としては、ドープを金属製のバンド流涎機で外層(バンド層)用ドープ/コア層用ドープ/外層(エア層)用ドープの順に三層共流延を行い、乾燥させた後、剥ぎ取りドラムによりフィルムをバンドから剥ぎ取った。
コア層用ドープはセルロースアシレート溶液1C、外層用ドープは、セルロースアシレート溶液1Sの100質量部に対して、上記マット剤溶液1を1.35質量部を混合したものとした。
185℃の雰囲気温度で残留溶媒含量1%未満の上記フィルムを固定端一軸延伸で延伸倍率1.05倍のMD延伸を行った後、185℃の雰囲気温度で残留溶媒含量1%未満の上記フィルムをテンターゾーンで延伸倍率1.30倍のTD延伸を行った。
その後、クリップを外して乾燥させ、幅2000mmの位相差フィルム1を製造した。作製された位相差フィルム4の残留溶媒量は0.1%であり、膜厚は50μmであった。
【0149】
得られた位相差フィルムの面内位相差Re、厚さ方向位相差Rth、全ヘイズ、を本願に記載の方法で測定した。測定条件は25℃60%相対湿度で、フィルムをこの環境に十分な時間置いた後で測定を行った。
その結果を表7に記載する。
また、位相差フィルム4の規格化透過率特性を図1−3に示す。
【0150】
(偏光板1の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。
次に、作製した位相差フィルム4を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光膜の片側に貼り付け、さらに偏光膜の反対側に保護用TACフィルムを貼り付けた。このとき、ポリビニルアルコールの長手方向と位相差フィルム4の長手方向が一致するように貼り付け、位相差フィルム4の遅相軸および偏光膜の透過軸が平行になるように配置した。
この様にして、偏光板1を作製した。
【0151】
【表7】
【0152】
さらにバックライトに用いるための下記のプリズムシートを作製した。
【0153】
<実施例IIに用いる集光シートの作製>
下記のようにしてプリズムシートを作製した。
〔プリズム層塗布液の調整〕
下記処方のプリズム層塗布液を調整した。
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、50℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、塗布液を調製した。なお、硬化後のプリズム層の屈折率は1.59であった。前記プリズム層の屈折率は、同一の液を平坦な塗布膜として形成し、プリズムカプラー屈折率測定機(SPA4000 Sairon Technology Inc.)により測定した。
・エベクリル3700(ダイセルUBC(株)製) 2.55質量部
・NKエステルBPE−200(新中村化学(株)製) 0.85質量部
・アロニックスM−110(東亞合成(株)製) 0.85質量部
・ニューフロンティアBR−31(第一工業製薬(株)製) 4.25質量部
・メチルエチルケトン 2.89質量部
・ルシリンTPO−L(BASF(株)製) 0.17質量部
【0154】
〔プリズムシートAの作製〕
両面に易接着処理を施した厚み25μmの透明PET製の支持体の第一の表面に、前記で調製したプリズム層塗布液を乾燥質量で14g/m2となるように塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、該プリズム層を、断面形状が頂角90°の二等辺三角形であり、ピッチ(底辺の長さ)50μmのストライプ状にプリズム形状が彫刻された金属の型(金型)に押し当てた。この押し当て状態で、前記支持体の第二の表面側から、高圧水銀灯により露光し、膜を硬化させ、金型から剥離し、プリズムシートA(凹凸部を形成した支持体)を得た。
【0155】
<白色反射層用塗布液の調製>
下記処方で、光学調整部形成用の白色反射層用塗布液を調整した。
[ホワイト顔料分散母液の組成]
・ポリビニルブチラール(エスレックB BL−SH、積水化学工業(株)製)
2.7質量部
・ルチル型酸化チタン(JR805、テイカ(株)製、質量平均粒子径0.29μm) 35.0質量部
・分散助剤(ソルスパース20000、アビシア(株)製) 0.35質量部
・n−プロピルアルコール 62.0質量部
上記組成物を、アイガー社製モーターミルM50によりジルコニアビーズを用いて分散し、ホワイト顔料分散母液を調製した。
【0156】
[白色反射層塗布液の組成]
・上記で調製されたホワイト顔料分散母液 1,200質量部
・ワックス系化合物
ステアリン酸アミド(ニュートロン2、日本精化(株)製) 5.7質量部
ベヘン酸アミド(ダイヤミッドBM、日本化成(株)製) 5.7質量部
ラウリン酸アミド(ダイヤミッドY、日本化成(株)製) 5.7質量部
パルミチン酸アミド(ダイヤミンドKP、日本化成(株)製) 5.7質量部
エルカ酸アミド(ダイヤミッドL−200、日本化成(株)製) 5.7質量部
オレイン酸アミド(ダイヤミッドO−200、日本化成(株)製) 5.7質量部
・ロジン(KE−311、荒川化学(株)製、成分:樹脂酸80〜97%;樹脂酸成分:アビエチン酸30〜40%、ネオアビエチン酸10〜20%、ジヒドロアビエチン酸14%、テトラヒドロアビエチン酸14%) 80.0質量部
・界面活性剤(メガファックF−780F、固形分30%、大日本インキ化学工業社製) 16.0質量部
・n−プロピルアルコール 1,600質量部
・メチルエチルケトン 580質量部
【0157】
<白色反射シートの作製>
厚み25μmのPET製支持体上に、前記で調製した白色反射層塗布液を、乾燥膜厚が2μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥させ、白色反射シートを作製した。
【0158】
<ポジ型感光層用塗布液の調製>
下記処方のポジ型感光層用塗布液を調製した。
・フェノールノボラック樹脂(住友デュレズ株式会社製、PR−50716、融点:76℃) 2.5質量部
・フェノールノボラック樹脂(住友デュレズ株式会社製、PR−51600B、融点:55℃) 3.5質量部
・1,2−ナフトキノン(2)ジアジド−4−スルフォン酸クミルフェノールエステル 2.0質量部
・メチルエチルケトン 40質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 20質量部
・界面活性剤(大日本インキ株式会社製、メガファックF−176PF)0.1質量部
【0159】
<アルカリ現像液の調製>
下記組成のアルカリ現像液を調製した。
・炭酸ナトリウム 59質量部
・重炭酸ナトリウム 32質量部
・水 720質量部
・ブチルセロソルブ 1質量部
【0160】
<集光性の光学シート:プリズムシートBの作製>
図8Aに示すように、前記で作製したプリズムシートA(凹凸部5を形成した支持体2)の平坦な第二の表面4側に、前記で調製したポジ型感光層用塗布液を、乾燥膜厚が0.5μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥させ、前記支持体2の第二の表面4上にポジ型感光層8を形成した。
次に、図8Bに示すように、前記支持体2の凹凸部5を形成した第一の表面3側から、平行光線照射機(マスクアライメント装置M−2L、ミカサ(株)製)を用いて、平坦な前記第二の表面4の法線方向に平行に紫外線照射し、前記ポジ型感光層を露光した。図8Bに符号6で示す部分が、光の不通過部(光束密度の低い部分)である。
【0161】
次いで、前記で調製したアルカリ現像液を用いて、ポジ型感光層の露光部を洗い流し、図8Cに示すように、支持体2の第二の表面4であって光の不通過部6に、部分的にポジ型感光層8を有する支持体2を得た。
上記部分的にポジ型感光層8を有する支持体2の、前記ポジ感光層8が形成された第二の表面4に、図8Dに示すように、前記で作製した白色反射層9を設けた白色反射シート10を、粘着性を有する前記ポジ型感光層8に第二の表面4に白色反射層9が接触するように配置し、ラミネート装置にて熱ラミネート(速度:0.5m/min.加熱温度:80℃)した。その後、図8Eに示すように、白色反射シート10を支持体2から剥離することにより、前記ポジ型感光層8の形成部に12μm巾のストライプ状に、白色反射層9が転写された支持体2を得て、プリズムシートBを形成した。該白色反射層9が、サイドローブ防止部7であり、その光反射率は、70%であった。
【0162】
〔プリズムシートCの作製〕
両面に易接着処理を施した厚み25μmの透明PET製の支持体の第一の表面に、前記で調製したプリズム層塗布液を乾燥質量で14g/m2となるように塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、該プリズム層を、断面形状が頂角110°の二等辺三角形であり、ピッチ(底辺の長さ)50μmのストライプ状にプリズム形状が彫刻された金属の型(金型)に押し当てた。この押し当て状態で、前記支持体の第二の表面側から、高圧水銀灯により露光し、膜を硬化させ、金型から剥離し、プリズムシートC(凹凸部を形成した支持体)を得た。
【0163】
<バックライトユニットの作製>
市販品の液晶表示装置から取り外した面光源上に上記の各プリズムシートを配置したバックライトユニットを作製した。
作製した頂角が90°であるプリズムシートA、頂角が90°であるプリズムシートであって、さらに部分的に光反射性を有するサイドローブ防止部7が複数形成された集光性の光学シートであるプリズムシートB、頂角が110°であるプリズムシートCを、表9の内容となるように配置した。
【0164】
<正面輝度の評価方法>
実施例Iの正面方向透過率に相当する評価である。
上記プリズムシートを設置した各バックライトユニット平面光源上に、輝度計(BM−7:トプコン(株))を設置し、光度の測定を行った。プリズムシートのないバックライト平面光源のみの正面輝度を1としたときの、光学シートを敷いた場合の正面輝度の倍率を用いて輝度評価を行い、以下のように分類した。
A: 1.3以上
B: 1.1以上、1.3未満
C: 1.1未満
【0165】
<バックライト光の出射角度分布の測定>
上記プリズムシートを設置したバックライトユニットについて、輝度計(BM−7:トプコン(株))にて、光度の測定を行った。
正面を0°として、プリズムシートの集光方向に対して受光機を5°刻みで±85°走査し、プリズムシートから出射される光度の角度分布を測定し、出射角度50°から85°の範囲で測定した光量の平均値を求め、表9に記載した。
なお、光度と出射角度の関係を各プリズムシートについて正面(0°)で測定した光度(cd)を基準に規格化して図9に示す。
【0166】
<液晶表示装置の作製>
液晶セルと偏光板が表8に記載した内容となるように、さらに各プリズムシートを組み込んだバックライトユニットが表9に記載した内容となるように液晶表示装置(ディスプレイ20〜24)を組み立てた。
なお、液晶セルは図4に示す構成のRGBWカラーフィルタを有するTNモード液晶セル(Δnd=410nm、液晶ツイスト角90°)を準備し、上記で作製した偏光板のいずれか同一のものを、該液晶セルの上下に一枚ずつ貼合して、図3と同様の構成の液晶表示装置を作製した。その際、各偏光板はEモード配置にした。
各プリズムシートは、凸部を液晶セル側へ向けてあり、その集光方向は、表7、表8に記載するように鉛直方向、又は水平方向となるように配置した。
【0167】
正面輝度、及び実施例Iの下階調反転の評価結果を表9に示した。
【0168】
【表8】
【0169】
【表9】
【0170】
表から、集光方向が鉛直方向であってプリズムシートB、Cを使用したディスプレイ22及び23の性能が特に優れている。
図9に示したプリズムシートB、Cの効果により、ディスプレイ22及び23は、下方向30°、即ち方位角270°、極角30°から極角をさらに大きく傾けた側の光量が大幅に減少しているため、拡散性のバックライト光のときよりも下階調反転のレベルが向上したものと考えられる。
【符号の説明】
【0171】
10 液晶セル
12 光学異方性層
14 支持体
16 偏光子
1 プリズムシート
2 支持体
3 第一の表面
4 第二の表面
5 凹凸部
6 不通過部
7 サイドローブ防止部
8 ポジ型感光層
9 白色反射層
80 プリズムシート製造装置
81 シート供給手段
82 塗布手段
83 エンボスロール
84 ニップロール
85 樹脂硬化手段
86 剥離ロール
87 保護フィルム供給手段
88 シート巻取り手段
89 乾燥手段
W 支持体
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度で且つ下方向における階調反転が軽減された液晶表示装置、及びその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高輝度の液晶表示装置として、RGBW型液晶表示装置が提案されている(例えば特許文献1)。RGBW型液晶表示装置は、RGBWの4色の画素によりカラー表示を行うものであり、白(W)画素が追加されたことにより、従来のRGB型と比較して、表示面法線方向(以下、「正面方向」という)における輝度を高めることができるという特長がある。高透過率が特長のTN型液晶表示装置に採用すれば、その特長がさらに強められることが期待される。
【0003】
一方、TN型液晶表示装置には、下方向において階調反転が生じるという問題がある。従来は、光学補償フィルムにより、黒表示時の残留レターデーションを補償することで、階調反転についてもある程度良化しているのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−241551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決することを課題とする。
具体的には、RGBW型液晶表示装置の高透過率を損なうことなく、下方向における階調反転を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 一対の偏光子;少なくとも一方の対向面に画素を構成する電極を有する一対の基板と、該一対の基板間に配置され、90°以下のツイスト角でツイスト配向する液晶層とを少なくとも有する液晶セル;及び前記一対の偏光子のそれぞれと前記液晶セルとの間に配置される位相差フィルム;を含み、前記液晶セルの一画素が、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素、及び白(W)画素からなる液晶表示装置であって、
R画素、G画素及びB画素それぞれを構成する電極間に実質的に等しい電圧VRGBを印加するグレイスケール階調において、階調L(但しLは、0≦L≦1を満足する)に応じて、下記(ia)及び(iia)又は(ib)及び(iib)を満足する電圧VRGB及び電圧Vwを、G画素を構成する電極間及びW画素を構成する電極間にそれぞれ印加する駆動手段を備えたことを特徴とする液晶表示装置:
(ia)0<L≦0.03の時、TG=0で且つTW=2×L
(iia)0.03<L≦0.3の時、0.05<TW/(TG−0.03)<0.86
又は
(ib)0<L≦0.03の時、TW=0で且つTG=2×L
(iib)0.03<L≦0.3の時、0.05<TG/(TW−0.03)<0.86
但し、TG及びTWはそれぞれ、G画素及びW画素それぞれの透過率を、液晶表示装置の表示面法線方向における白の輝度を1として規格化した規格化透過率である。
[2] 前記位相差フィルムが、支持体と、ハイブリッド配向状態に固定された円盤状液晶を含む光学異方性層とを少なくとも有する積層フィルムである[1]の液晶表示装置。
[3] 前記液晶層のツイスト角が、90°である[1]又は[2]の液晶表示装置。
[4] 前記液晶表示装置が面光源と集光シートからなるバックライトユニットを有し、前記バックライトユニットが出射した光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線に対して、観察者が前記液晶表示画面を視認するときの鉛直方向または水平方向に傾けられた出射角度50°から85°の範囲の光量の平均値が、該法線方向の光量に対して12%以下である[1]〜[3]のいずれかの液晶表示装置。
[5] 前記位相差フィルムがポリマーフィルム単体からなり、面内最大方向をnx、nxと垂直方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとした場合、nx>ny>nzを満足する[1]の液晶表示装置。
[6] 前記集光シートが、凸部を液晶セル側へ向けたプリズムシートである[4]または[5]の液晶表示装置。
[7] 一対の偏光子;少なくとも一方の対向面に画素を構成する電極を有する一対の基板と、該一対の基板間に配置され、90°以下のツイスト角でツイスト配向する液晶層とを少なくとも有する液晶セル;及び前記一対の偏光子のそれぞれと前記液晶セルとの間に配置される位相差フィルム;を含み、前記液晶セルの一画素が、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素、及び白(W)画素からなる液晶表示装置の駆動方法であって、
R画素、G画素及びB画素それぞれを構成する電極間に実質的に等しい電圧VRGBを印加するグレイスケール階調において、階調L(但しLは、0≦L≦1を満足する)に応じて、下記(ia)及び(iia)又は(ib)及び(iib)を満足する電圧VRGB及び電圧Vwを、G画素を構成する電極間及びW画素を構成する電極間にそれぞれ印加することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法:
(ia)0<L≦0.03の時、TG=0で且つTW=2×L
(iia)0.03<L≦0.3の時、0.05<TW/(TG−0.03)<0.86
又は
(ib)0<L≦0.03の時、TW=0で且つTG=2×L
(iib)0.03<L≦0.3の時、0.05<TG/(TW−0.03)<0.86
但し、TG及びTWはそれぞれ、G画素及びW画素それぞれの透過率を、液晶表示装置の表示面法線方向における白の輝度を1として規格化した規格化透過率である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、RGBW型液晶表示装置の高透過率を損なうことなく、下方向における階調反転を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1−1】本発明に係わる駆動方法を説明するために用いた、RGBW型TNモード液晶表示装置の一例の、G画素の階調LG及びW画素の階調LWそれぞれの寄与率と、透過率との関係を3次元マップの一例である。
【図1−2】本発明に係わる駆動方法を説明するために用いた、RGBW型TNモード液晶表示装置の他の例の、G画素の階調LG及びW画素の階調LWそれぞれの寄与率と、透過率との関係を3次元マップの一例である。
【図1−3】本発明に係わる駆動方法を説明するために用いた、RGBW型TNモード液晶表示装置の他の例の、G画素の階調LG及びW画素の階調LWそれぞれの寄与率と、透過率との関係を3次元マップの一例である。
【図2】本発明に係わる駆動方法を説明するために用いた、階調と規格化透過率との関係を示すグラフの一例である。
【図3】本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図である。
【図4】本発明に利用可能なRGBWカラーフィルタの一例の上面模式図である。
【図5】実施例の液晶表示装置の駆動電圧−階調との関係を示すグラフである。
【図6】光学シートにおける光路の一例を示す断面図である。
【図7】プリズムシートの製造装置の一例を示す概略図である。
【図8A】支持体2の第二の表面4上にポジ型感光層8を形成したプリズムシートAの模式断面図である。
【図8B】支持体2の第二の表面4上にポジ型感光層8を形成したプリズムシートAを露光した様子を示した模式断面図である。
【図8C】図8Bの露光後、露光部を洗い流した様子を示した模式断面図である。
【図8D】支持体2に白色反射シート10を配置した様子を示した模式断面図である。
【図8E】白色反射シートを支持体2から剥離した様子を示した模式断面図である。
【図9】光度と出射角度の関係を各プリズムシートについて正面(0°)で測定した光度(cd)を基準に規格化したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。尚、本願明細書中、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。なお、本明細書中、数値範囲や数値については、本発明の属する技術分野で許容される誤差を含む数値範囲及び数値として解釈されるべきである。
また、本明細書中、極角を表示面法線方向からの傾き角と定義し、表示画面の右・上・左、下方向をそれぞれ方位角0度、90度、180度、270度と定義した場合に、「下方向」とは、方位角270度の方向を意味し、例えば、「下方向30°」は、方位角270度、極角30度の方向を意味する。
【0010】
本発明の液晶表示装置は、液晶セルの一画素が、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素、及び白(W)画素からなる、RGBW型TNモード液晶表示装置であって、R画素、G画素及びB画素それぞれを構成する電極間に実質的に等しい電圧VRGBを印加するグレイスケール階調において、階調L(但しLは、0≦L≦1を満足する)に応じて、各画素を構成する電極間に印加する電圧を決定し、該電圧を各画素に印加する駆動電圧手段を備えたことを特徴とする。なお、グレイスケール階調は無彩色状態であり、即ち、R画素、G画素及びB画素を構成する電極間に実質的に等しい電圧VRGBが印加されている状態をいう。以下では、本発明に係わる駆動手段及び駆動方法を、G画素及びW画素それぞれを構成する電極間に印加する電圧の関係で説明するが、以下に説明する関係は、G画素を、R画素又はB画素に置き換えても成立する関係である。
なお、実質的に等しい電圧とは、電圧の差が±1V以内のことをいう。
【0011】
本発明の特徴の一つは、グレイスケール階調Lに対する、G画素の階調LG及びW画素の階調LWそれぞれの寄与率と、透過率との関係を3次元マップ化し、あらかじめ階調反転が始まる階調変化の経路を予測し、当該経路を避けるために、階調Lに応じて、G画素及びW画素それぞれを構成する電極間に印加する電圧を決定していることにある。
【0012】
上記3次元マップの一例を図1に示す。図1−1は、TNモード液晶セル(ツイスト角=90°、Δnd=410nm)の上下に富士フイルム社製の「WV−EAフィルム」を配置したRGBW型TNモード液晶表示装置について、G画素の階調LG及びW画素の階調LWそれぞれの寄与率と、下方向30度における透過率との関係を3次元マップ化した図である。なお、透過率は、白輝度の透過率を1として規格化した規格化透過率として示した。
規格化透過率は、R、G,B,Wの各画素において各々求められる。最初に、正面の規格化透過率について説明する。正面の規格化透過率とは、正面における電圧−透過率との関係から、白の透過率(通常、最大透過率付近を用いる)を1として規格化した透過率である。規格化透過率は0〜1の値になるが、この規格化透過率の値が略0(通常、最小値付近を用いる)のときが階調L0(黒)、規格化透過率の値が1のときが階調L1(白)になり、その中間は中間階調になる。階調L0〜1に対応して印加する電圧は、正面の電圧−規格化透過率の関係(例えば図5の関係)から得られ、例えば階調L0(黒)に対応する電圧がV0、L1(白)に対応する電圧がV1となり、中間階調ではV0とV1の間の電圧になる。
【0013】
次に、下30度における規格化透過率について説明する。正面の電圧−規格化透過率の関係から求めたV0〜V1を印加したときの下方向30度における電圧−透過率との関係を求め、この関係を、V1(すなわち白の電圧)のときの下方向30度における透過率を1として規格化した透過率が、下方向30度における電圧−規格化透過率の関係になる。
この関係を用いて、各階調での下方向30度における規格化透過率が得られる。
このようにして、R、G,B,Wの各画素において、各階調での正面および下方向30度における規格化透過率が得られる。
【0014】
図1に示す3次元マップでは、透過率の大小が、白黒の濃淡で示されているが、実際には、透過率の大小が色変化で示されている。例えば、G画素及びW画素それぞれを構成する電極間に最大駆動電圧がそれぞれ印加されれば、LG及びLWの階調はいずれも0(黒)になる。LW及びLGがそれぞれの寄与が同一になる様に、G画素及びW画素へ電圧を印加して、グレイスケール階調Lを0(黒)〜1(白)まで変化させると、透過率は、直線bに沿って0〜1に変化する。階調Lが0〜1に変化する間に、直線bに沿った透過率の変化が、谷→山→谷への変化を含んでいると、階調反転として認識される。
【0015】
図1−1に示す例では、直線bに沿った透過率の変化において、階調Lが0〜0.03に変化するまでは透過率が上昇するが、その後低下する、即ち、谷→山→谷の変化が存在することが理解できる。これを、階調Lと下方向30°の透過率との関係として示せば、図2に示すグラフ中の曲線bになり、0.03で階調反転が生じていることが理解できる。
【0016】
再び、図1−1において、本発明では、階調Lを0〜1に変化させる際に、直線a1−a2−a3で囲んだ範囲内の経路で変化するように、G画素及びW画素のそれぞれに電圧を印加して駆動する。それにより、階調反転の原因となる階調L=0.03に存在する透過率の山と、その後に存在する透過率の谷を避けることができ、階調反転の問題を解決できる。直線a1−a2−a3で囲んだ範囲内で階調Lを変化させた場合の、階調と下方向30°の透過率との関係の一例を示せば、図2に示すグラフの曲線aの通りになり、階調反転が解消できていることが理解できる。なお、下方向20°〜40°の透過率についても、曲線aと同様な特性になることを確認している。
【0017】
具体的には、本発明では、R画素、G画素及びB画素を構成する電極間に実質的に等しい電圧VRGBを印加するグレイスケール階調において、階調L(但しLは、0≦L≦1を満足する)に応じて、下記(ia)及び(iia)、又は(ib)及び(iib)を満足する電圧VRGB及び電圧Vwを、G画素を構成する電極間及びW画素を構成する電極間にそれぞれ印加することを特徴とする。
(ia)0<L≦0.03の時、TG=0で且つTW=2×L
(iia)0.03<L≦0.3の時、0.05<TW/(TG−0.03)<0.86
又は
(ib)0<L≦0.03の時、TW=0で且つTG=2×L
(iib)0.03<L≦0.3の時、0.05<TG/(TW−0.03)<0.86
但し、TG及びTWはそれぞれ、G画素及びW画素それぞれの透過率を、液晶表示装置の表示面法線方向における白の輝度を1として規格化した規格化透過率である。
【0018】
即ち、階調Lが0を超え0.03以下の範囲では、G画素及びW画素の一方のみに電圧を印加し、一方の画素の透過率が正面における黒状態の透過率であり、他方の透過率が正面における透過率の全てになるように駆動する。即ち、TG=0で且つTW=2×L、又はTW=0で且つTG=2×Lを満足する電圧を印加して駆動する。階調Lが0を超え0.03以下の範囲においては、図1−1中の直線a1に沿ってLが変化するように、G画素及びW画素にそれぞれ電圧を印加する。
【0019】
次に、階調Lが0.03を超え0.3以下の範囲では、G画素及びW画素のそれぞれに、
0.05<TW/(TG−0.03)<0.86、又は
0.05<TG/(TW−0.03)<0.86
を満足する条件で電圧を印加する。即ち、
TW>0.05TG−1.5×10-3且つTW<0.86TG−2.55×10-3の範囲、又は、
TG>0.05TW−1.5×10-3且つTG<0.86TW−2.55×10-3の範囲で、即ち、図1−1中の直線a2及びa3で囲む範囲内で、階調Lが変化する電圧をG画素及びW画素のそれぞれに印加する。
0.05<TW/(TG−0.03)<0.5、又は
0.05<TG/(TW−0.03)<0.5
の条件で、G画素及びW画素のそれぞれに電圧印加するのが好ましく、
0.06<TW/(TG−0.03)<0.2、又は
0.06<TG/(TW−0.03)<0.2
の条件で、G画素及びW画素のそれぞれに電圧印加するのがより好ましい。
【0020】
階調Lが0.03を超え0.3以下の範囲の階調Lを表示する際の、G画素及びW画素のそれぞれに印加する電圧は、上記関係式を満足する限り、特に制限はない。好ましくは、階調Lが0.03を超え0.3以下の範囲において、TW/(TG−0.03)又はTG/(TW−0.03)が同一になる電圧を、G画素及びW画素のそれぞれに印加するのが好ましい。例えば、階調Lが0.05、0.1、0.2及び0.3において、TW/(TG−0.03)又はTG/(TW−0.03)が上記関係式を満足するとともに、互いに同一の値になる様に、G画素及びW画素のそれぞれに電圧を印加するのが好ましい。
【0021】
階調Lが0.3を超えると、透過率が反転する領域は存在しないので、階調Lが0.3を超え1.0以下の範囲においては、階調反転の解消の観点では、電圧の印加条件は特に制限されない。データ処理の簡易性の観点から、TG=TWになる電圧をG画素及びW画素にそれぞれ印加し、駆動するのが一般的である。
【0022】
図3に、本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図を示す。図3に示す液晶表示装置は、互いの吸収軸を直交にして配置された一対の偏光子16と、その間に配置されたTNモード液晶セル10とを有し、一対の偏光子16のそれぞれと、液晶セル10との間に、光学補償フィルム15を有する。光学補償フィルム15は、支持体14と、液晶組成物からなる光学異方性層12とを有する。図中に省略したが、偏光子16の外側表面には、セルロースアシレートフィルム等からなる保護フィルムが配置されている。
【0023】
液晶セル10は、ツイスト角90°でツイスト配向するTNモード液晶セルである。図中省略するが、少なくとも一方の対向面に画素を構成する電極を有する一対の基板と、該一対の基板間に配置され、ツイスト角90°でツイスト配向する液晶層とを少なくとも有する。ツイスト角が90°であると、高い正面コントラストを得る点で好ましい。
【0024】
前記液晶セル10の一画素は、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素、及び白(W)画素からなる。例えば、液晶セル10には、その一方の基板の対向面上に、図4に示、RGBWカラーフィルタが配置され、RGBWの画素を構成している。但し、RGBWのカラーフィルタの構成は、この例に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない限り、従来提案されている構成のRGBWカラーフィルタのいずれも用いることができる。
【0025】
液晶セル10は、駆動電圧が印加されていない状態ではネマチック液晶層がツイスト配向し、白状態になり、駆動電圧が印加されると、ツイスト配向が解消され、ネマチック液晶が基板に対して垂直配向して、黒状態になる。例えば、図5に示す駆動電圧−規格化透過率特性を示す、ノーマリーホワイトモードの液晶セルである。
【0026】
光学補償フィルム15は、液晶セル10の黒表示時の残留レターデーションを補償する作用を有する。一例は、光学異方性層12が、ハイブリッド配向状態に固定された円盤状液晶を含有する光学異方性層である態様である。当該態様の光学異方性層12は、液晶セル10中の基板近傍に存在する棒状液晶分子が、黒表示時に基板に対して傾斜配向していることによって生じる残留レターデーションを補償することができる。支持体14は、光学補償に寄与していても寄与していなくともよい。前者の態様では、支持体14は、Re(550)が0〜30nm、Rth(550)が0〜200nmの光学特性を示しているのが好ましい。
【0027】
一般的に、ハイブリッド配向状態に固定された円盤状液晶を含有する光学異方性層を、TNモード液晶表示装置の光学補償に利用する場合には、該光学異方性層の面内遅相軸を、近接する偏光子の透過軸に対して0°にして配置するのが一般的である。本発明でも、前記光学異方性層の面内遅相軸を近接する偏光子の透過軸に対して0°にして配置してもよい。
【0028】
光学補償フィルム15としては、富士フイルム社製の「WV−EAフィルム」等を用いることができる。「WV−EAフィルム」は、ハイブリッド配向状態に固定された円盤状液晶を含有する光学異方性層と支持体とからなる積層フィルムである。
【0029】
図中省略したが、液晶表示装置は、駆動制御手段により、外部からの信号に基づいて、RGB画素にはそれぞれ実質的に等しいVRBGを印加し、W画素にVGを印加して、グレイスケール階調Lを表示するように制御されている。駆動制御手段は、外部からの信号から階調Lの情報を検出する検出部と、検出された階調Lが0〜0.3の範囲においては、階調Lに応じて、上記式(ia)及び(iia)又は(ib)及び(iib)を満足する条件で、G画素及びW画素それぞれへの印加電圧を決定する演算部と、決定された電圧をG画素及びW画素それぞれに印加する駆動部とを含んで構成される。
【0030】
本発明の液晶表示装置において、一対の偏光子のそれぞれと前記液晶セルとの間に配置される光学補償フィルム15としては、ハイブリッド配向状態に固定された円盤状液晶を含む光学異方性層を支持体上に有する前述の積層フィルムが好ましいが、特定の光学特性を有し、光学異方性層を有しないポリマーフィルム単体からなる位相差フィルムもまた好ましい。
【0031】
《ポリマーフィルム単体からなる位相差フィルム》
〈光学特性〉
ポリマーフィルム単体からなる位相差フィルムの3方向の屈折率において、面内最大方向をnx、nxと垂直方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとした場合、nx>ny>nzを満足する位相差フィルムは、視認者から液晶表示装置を見て水平方向の視野角コントラストを拡大するという点で好ましい。
前記位相差フィルムの面内レターデーションRe(=(nx−ny)×d;dはフィルムの膜厚を表す。)は、波長590nmにおいて1〜200nmが好ましく、より好ましくは5〜100nm、さらに好ましくは15〜80nm、特に好ましくは30〜60nmである。また、前記位相差フィルムの厚み方向レターデーションRth(={(nx+ny)/2−nz}×d;dはフィルムの膜厚を表す。)は、波長590nmにおいて、80〜400nmが好ましく、より好ましくは75nm〜200nm、さらに好ましくは80〜150nm、特に好ましくは90〜140nmである。
【0032】
〈フィルムを形成するポリマー材料〉
位相差フィルムを形成するポリマー材料としては、特に限定されないが、例えば、セルロースエステル、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー等を利用することができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ノルボルネン等のシクロポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマー等から1種又は2種以上のポリマーを選択し、主成分として用いてポリマーフィルムを作製し利用することができる。また汎用されている市販品のポリマーフィルムを用いることもできる。
【0033】
この中で、セルロースエステルを用いることが好ましく、偏光板加工適正、光学発現性、透明性、機械特性、耐久性、コスト等の観点から、アセチル基等のアシル基を有するセルロースアシレートを用いることが特に好ましい。
【0034】
〈セルロースアシレート〉
前記位相差フィルムの材料としてセルロースアシレートを使用する場合、前記位相差フィルムは、1種又は2種以上のセルロースアシレートを主成分として含有する。ここで「主成分として含有する」とは、フィルムの材料として用いられているセルロースアシレートが1種である場合は、当該セルロースアシレートをいい、複数種である場合は、最も高い割合で含有されるセルロースアシレートをいう。
セルロースには、β−1,4結合しているグルコース単位当り、2位、3位及び6位に遊離の水酸基がある。セルロースアシレートは特に限定はされないが、セルロースアセテート、またはアセチル基と他のアシル基を有するセルロースアシレートを用いることが好ましい。
これらの3つの水酸基のうち平均で2.00〜2.80の水酸基の水素原子がアシル基に置換され、好ましい第一の態様としては、全てがアセチル基であることである。
また、好ましい第二の態様としては、3つの水酸基のうち平均で2.00〜2.80の水酸基の水素原子がアシル基に置換され、且つそのうち0.50〜1.50がプロピオニル基及び/又はブチリル基で置換されているセルロースアセテート・プロピオネート、セルロースアセテート・ブチレート、又はセルロースアセテート・プロピオネート・ブチレートを用いることである。
好ましい第二の態様としては、セルロースアセテート・プロピオネートを用いることが特に好ましい。
【0035】
総アシル基置換度が2.00未満であると、無置換のヒドロキシ基が多く存在し、フィルムの湿度依存性が大きくなり、液晶表示装置の光学部材としての用途等、湿度に対する耐久性を必要とされる用途には適さなくなる。一方、総アシル基置換度が、2.80を超えてしまうと、Re及びRthの発現性が低下し、好ましくない。双方の観点では、好ましい第一の態様、第二の態様ともに総アシル基置換度は、2.20〜2.70であるのがより好ましく、2.40〜2.60であるのがさらに好ましい。
3層共流延法により製造する場合は、コア層のセルロースアシレートの総アシル基置換度が上記範囲であることが好ましく、それより外側の層(以下ではスキン層という)のセルロースアシレートの総アシル置換度は、2.70を超え3.00以下であることが好ましく、2.75〜2.90であることが特に好ましい。
【0036】
一方、好ましい第二の態様としてセルロースアシレートのプロピオニル基及び/又はブチリル基の置換度は、フィルムのRe及びRthの発現性に影響するとともに、フィルムの湿度依存性及び弾性率にも影響する。プロピオニル基及び/又はブチリル基の置換度を0.5〜1.5とすることで、これらの両立した好ましい特性を得ることができる。プロピオニル基及び/又はブチリル基置換度は0.60〜1.10がより好ましく、0.80〜1.00であるのがさらに好ましい。
なお、本明細書では、セルロースアシレートのアシル基置換度は、セルロースの構成単位質量当りの結合脂肪酸量を測定して算出することができる。測定方法は、「ASTM D817−91」に準じて実施する。
【0037】
前記セルロースアシレートは、350〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、370〜600の質量平均重合度を有することがさらに好ましい。また本発明に用いるセルロースアシレートは、60000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、70000〜230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することがよりさらに好ましい。
【0038】
〈可塑剤〉
前記位相差フィルムは、可塑剤を含有していてもよい。前記位相差フィルムの主成分(例えばセルロースアシレート)との相溶性が良い可塑剤は、ブリードアウトが生じ難く、低ヘイズであり、更に含水率及び透湿度を低減させるので、高品質で高耐久性を有するフィルムを得るのに有効である。
【0039】
前記位相差フィルムに使用可能な可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤などが挙げられる。
好ましくはリン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系化合物、多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤であり、より好ましくは多価アルコール系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤であり、さらに好ましくは糖エステル系可塑剤である。
特に多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、及びエチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤はセルロースアシレートとの相溶性が高く、ブリードアウト低減、低ヘイズ及び低透湿度の効果が高く、また温湿度変化や経時による可塑剤の分解及びフィルムの変質や変形が生じ難いため、好ましい。
【0040】
位相差フィルムとして二軸性フィルムを用いる態様では、中でも、可塑剤として、糖エステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、及び多価アルコール系可塑剤は、光学発現性に優れるために特に好ましく、糖エステル系可塑剤はさらにセルロースアシレートと構造が近いために、非常に低ヘイズなフィルムの作製が可能となるため、最も好ましい。
【0041】
本発明において、可塑剤は1種のみで用いてもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。可塑剤を2種類以上混合して使用する場合、1種類のみを用いることよりも相溶性が良好となり、ブリードアウト低減、低ヘイズとなる可能性が高い。これは、セルロースアシレートフィルムとの1種の可塑剤との相溶性を、他の1種の可塑剤が相溶化剤的に働くことで改善させるからであると推定している。
可塑剤を2種類以上混合して使用する場合、少なくとも1種は糖エステル系可塑剤、またはポリエステルオリゴマー系可塑剤であることが好ましく、糖エステル系可塑剤であることがさらに好ましい。
【0042】
前記位相差フィルムにおいて、可塑剤の含有量は、主成分ポリマー(例えばセルロースアシレート)に対して0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが更に好ましく、7〜15質量%であることが特に好ましい。
【0043】
〈多価アルコールエステル系可塑剤〉
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
【0044】
本発明に好ましく用いることのできる多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。
特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0045】
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
【0046】
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基或いはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
【0047】
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量がこの範囲であると、低揮散で、透湿性、セルロースエステルとの相溶性も良好であって好ましい。
【0048】
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化されていてもよいし、一部がOH基のままのこっていてもよい。
【0049】
〈ポリエステルオリゴマー系可塑剤〉
本発明におけるポリエステルオリゴマーは、ジオールとジカルボン酸とから、例えば、混合して得られる重縮合体である。
ポリエステルオリゴマーの数平均分子量は300〜3000であることが好ましい。
ポリエステルオリゴマーの数平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて通常の方法で測定することができる。
例えば、カラム(東ソー(株)製 TSKgel Super HZM−H、TSKgel Super HZ4000及びTSKgel Super HZ2000)の温度を40℃として、溶離液としてTHFを用い、流速を0.35ml/minとし、検出をRI、注入量を10μl、試料濃度を1g/lとし、また標準試料としてポリスチレンを用いて行うことができる。
【0050】
ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。これらジカルボン酸は、ポリエステルオリゴマー中には、ジオール残基とのエステル結合するジカルボン酸残基として含まれる。
【0051】
芳香族ジカルボン酸残基:
芳香族ジカルボン酸残基は、ジオールと芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合体に含まれる。
芳香族ジカルボン酸残基とはポリエステルオリゴマーの部分構造で、ポリエステルオリゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−COーである。
本発明に用いるポリエステルオリゴマーを構成する全ジカルボン酸残基中の芳香族ジカルボン酸残基比率は特に限定されないが、40mol%〜100mol%であることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示すセルロースアシレートフィルムが得られる。
【0052】
本発明に用いる芳香族ジカルボン酸は、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。
ポリエステルオリゴマーには混合に用いた芳香族ジカルボン酸により芳香族ジカルボン酸残基が形成される。
【0053】
芳香族ジカルボン酸は、平均炭素数が8.0〜12.0であることが好ましく、8.0〜10.0であることがより好ましく、8.0であることが更に好ましい。この範囲であれば、セルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。また、光学用途として位相差フィルムに用いるに適した異方性を十分に発現し得るセルロースアシレートフィルムとすることができるため好ましい。
【0054】
具体的には、芳香族ジカルボン酸は、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸の少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくはフタル酸、テレフタル酸の少なくとも1種を含み、更に好ましくはテレフタル酸を含む。すなわち、ポリエステルオリゴマーの形成における混合に、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸を用いることで、よりセルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいセルロースアシレートフィルムとすることができる。また、芳香族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよい。2種用いる場合は、フタル酸とテレフタル酸を用いることが好ましい。
【0055】
脂肪族ジカルボン酸残基:
脂肪族ジカルボン酸残基は、ジオールと脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合体に含まれる。
本明細書中では、脂肪族ジカルボン酸残基とはポリエステルオリゴマーの部分構造で、ポリエステルオリゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−CO−である。
本発明で好ましく用いられる脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
重縮合体には混合に用いた脂肪族ジカルボン酸より脂肪族ジカルボン酸残基が形成される。
脂肪族ジカルボン酸残基は、平均炭素数は特に限定されないが、4.0〜6.0であることが好ましく、4.0〜5.0であることがより好ましく、4.0〜4.8であることが更に好ましい。この範囲であれば、セルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。
具体的には、コハク酸残基を含むことが好ましく、2種用いる場合は、コハク酸残基とアジピン酸残基を含むことが好ましい。
すなわち、ポリエステルオリゴマーの形成における混合に、脂肪族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよく、2種用いる場合は、コハク酸とアジピン酸を用いることが好ましい。
コハク酸とアジピン酸の2種の脂肪族ジカルボン酸を用いることにより、ジオール残基の平均炭素数を少なくすることができ、セルロースアシレートとの相溶性の点で好ましい。
また、脂肪族ジカルボン酸残基の平均炭素数が4.0未満では合成が困難となるため、使用できない。
【0056】
ジオール:
ジオール残基は、ジオールとジカルボン酸とから得られたポリエステルオリゴマーに含まれる。
本明細書中では、ジオール残基とはポリエステルオリゴマーの部分構造で、ポリエステルオリオゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジオールHO−R−OHより形成されるジカルボン酸残基は−O−R−O−である。
ポリエステルオリゴマーを形成するジオールとしては芳香族ジオール及び脂肪族ジオールが挙げられ、特に限定はされないが、脂肪族ジオールが好ましい。
ポリエステルオリゴマーのジオールは特に限定はされないが、平均炭素数が2.0以上3.0以下の脂肪族ジオール残基を含むことが好ましい。脂肪族ジオール残基の平均炭素数が3.0より大きいとセルロースアシレートとの相溶性が低く、ブリードアウトが生じやすくなり、また、化合物の加熱減量が増大し、セルロースアシレートェブの乾燥時の工程汚染が原因と考えられる面状故障が発生する可能性が高まる。また、脂肪族ジオール残基の平均炭素数が2.0未満では合成が困難となるため、使用できない。
【0057】
前記脂肪族ジオールとしては、アルキルジオール又は脂環式ジオール類を挙げることができ、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール等があり、これらはエチレングリコールとともに1種又は2種以上の混合物として使用されることが好ましい。
【0058】
好ましい脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンジオールの少なくとも1種であり、特に好ましくはエチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールの少なくとも1種である。2種用いる場合は、エチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールを用いることが好ましい。
ポリエステルオリゴマーには混合に用いたジオールによりジオール残基が形成される。
【0059】
封止:
前記ポリエステルオリゴマーの両末端は封止、未封止を問わないが、より好ましくは封止しているものである。
ポリエステルオリゴマーの両末端が未封止の場合、重縮合体はポリエステルポリオールであることが好ましい。
ポリエステルオリゴマーの両末端が封止されている場合、モノカルボン酸と反応させて封止することが好ましい。このとき、該重縮合体の両末端はモノカルボン酸残基となっている。
【0060】
本明細書中では、モノカルボン酸残基とはポリエステルオリゴマーの部分構造で、ポリエステルオリゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばモノカルボン酸R−COOHより形成されるモノカルボン酸残基はR−CO−である。モノカルボン酸封止は芳香族モノカルボン酸、脂肪族カルボン酸のどちらを用いてもよい。モノカルボン酸は、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸及びその誘導体等が好ましい。封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。
【0061】
本発明に係るポリエステルオリゴマーの合成は、常法によりジオールとジカルボン酸とのポリエステル化反応又はエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。また、本発明に係るポリエステルオリゴマーについては、村井孝一編者「可塑剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
【0062】
本発明のポリエステルオリゴマーが含有する原料の脂肪族ジオール、ジカルボン酸エステル、又はジオールエステルのセルロースアシレートフィルム中の含有量は、1質量%未満が好ましく、0.5質量%未満がより好ましい。ジカルボン酸エステルとしては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、アジピン酸ジ(ヒドロキシエチル)、コハク酸ジ(ヒドロキシエチル)等が挙げられる。ジオールエステルとしては、エチレンジアセテート、プロピレンジアセテート等が挙げられる。
【0063】
ポリエステルオリゴマーの水酸基価の測定は、日本工業規格 JIS K3342(廃止)に記載の無水酢酸法当を適用できる。ポリエステルオリゴマーがポリエステルポリオールである場合は、水酸基価が55以上220以下であることが好ましく、100以上140以下であることが更に好ましい。
【0064】
以下に、本発明に利用可能なポリエステルオリゴマー系可塑剤の具体例を示すが、以下の具体例に限定されるものではない。
【0065】
【表1】
【0066】
〈糖エステル系可塑剤〉
糖エステル系可塑剤で好ましいものとしては、フラノース構造又はピラノース構造を1個以上12個以下有する化合物中の水酸基の少なくとも1つをエステル化したエステル化合物が挙げられる。
【0067】
フラノース構造又はピラノース構造を1個以上12個以下有する化合物中の水酸基の少なくとも1つをエステル化したエステル化合物としては、
フラノース構造又はピラノース構造を1個有する化合物(化合物(A))中の水酸基の全てもしくは一部をエステル化したエステル化化合物;及び
フラノース構造又はピラノース構造の少なくとも1種を2個以上12個以下結合した化合物(化合物(B))中の水酸基の全てもしくは一部をエステル化したエステル化化合物;が挙げられる。
以下、化合物(A)のエステル化化合物、及び化合物(B)のエステル化化合物を総称して、糖エステル化合物とも称す。
また、前記エステル化化合物が単糖類(α−グルコース、β−フルクトース)の安息香酸エステル、若しくは下記一般式(5)で表される単糖類の−OR512、−OR515、−OR522、−OR525の任意の2つ以上が脱水縮合して生成したm5+n5=2〜12の多糖類の安息香酸エステルであることが好ましい。
【0068】
【化1】
【0069】
前記一般式中の安息香酸は更に置換基を有していてもよく、例えばアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、フェニル基が挙げられ、更にこれらのアルキル基、アルケニル基、フェニル基は置換基を有していてもよい。
好ましい化合物(A)及び化合物(B)の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
化合物(A)の例としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、或いはアラビノースが挙げられる。
化合物(B)の例としては、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース或いはケストース挙げられる。このほか、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
これらの化合物(A)及び化合物(B)の中で、特にフラノース構造とピラノース構造を両方有する化合物が好ましい。例としてはスクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、更に好ましくは、スクロースである。また、化合物(B)において、フラノース構造若しくはピラノース構造の少なくとも1種を2個以上3個以下結合した化合物であることも、好ましい態様の1つである。
【0070】
本発明における化合物(A)及び化合物(B)中の水酸基の全て若しくは一部をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。
【0071】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
【0072】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
【0073】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができ、より、具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、クレオソート酸、o−ホモサリチル酸、m−ホモサリチル酸、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
【0074】
上記化合物(A)及び化合物(B)をエステル化したエステル化化合物の中では、エステル化によりアセチル基が導入されたアセチル化化合物またはベンゾイル基が導入されたベンゾイル化化合物、またはアセチル基とベンジル基の両方が導入された化合物が好ましい。
【0075】
上記化合物(A)及び化合物(B)のエステル化化合物に加えて、オリゴ糖のエステル化化合物を、フラノース構造若しくはピラノース構造の少なくとも1種を3〜12個結合した化合物として適用できる。
オリゴ糖は、澱粉、ショ糖等にアミラーゼ等の酵素を作用させて製造されるもので、本発明に適用できるオリゴ糖としては、例えば、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖が挙げられる。
【0076】
〈位相差フィルムの製造方法〉
前記位相差フィルムとして用いられるセルロースアシレートフィルムは、溶液製膜法(ソルベントキャスト法)によって製膜されたフィルムであるのが好ましい。以下、具体例として、セルロースアシレートフィルムの製造方法について説明するが、本発明に用いられる位相差フィルムは、セルロースアシレートフィルムに限定されるものではない。
【0077】
(ソルベントキャスト法)
ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解して調製されたドープを、金属等からなる支持体の表面にキャストして、乾燥して製膜し、その後、膜を支持体面から剥ぎ取り、所望により延伸処理することで製造される。
【0078】
ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。該ドープの調製に用いられる溶媒は、有機溶媒から選択することができる。有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、及び炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を少なくとも含むことが好ましい。
エーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する溶媒の上記した好ましい炭素原子数範囲内であることが好ましい。
【0079】
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが含まれる。
【0080】
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることがよりさらに好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0081】
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造する。ドープには前記の可塑剤等の添加剤を添加することが好ましい。
【0082】
ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が10℃以下のドラム又はバンド上に流延することが好ましい。
【0083】
ドープ(セルロースアシレート溶液)をバンド上に流延する場合、剥ぎ取り前乾燥の前半において10秒以上90秒以下、好ましくは15秒以上90秒以下の時間、実質的に無風で乾燥する工程を行う。また、ドラム上に流延する場合、剥ぎ取り前乾燥の前半において1秒以上10秒以下、好ましくは2秒以上5秒以下の時間、実質的に無風で乾燥する工程を行うことが好ましい。
【0084】
本明細書において、「剥ぎ取り前乾燥」とはバンドもしくはドラム上にドープが塗布されてからフィルムとして剥ぎ取られるまでの乾燥を指すものとする。また、「前半」とはドープ塗布から剥ぎ取りまでに要する全時間の半分より前の工程を指すものとする。「実質的に無風」であるとは、バンド表面もしくはドラム表面から200mm以内の距離において0.5m/s以上の風速が検出されない(風速が0.5m/s未満である)ことである。
剥ぎ取り前乾燥の前半は、バンド上の場合通常30〜300秒程度の時間であるが、その内の10秒以上90秒以下、好ましくは15秒以上90秒以下の時間、無風で乾燥する。ドラム上の場合は通常5〜30秒程度の時間であるが、その内の1秒以上10秒以下、好ましくは2秒以上5秒以下の時間、無風で乾燥する。雰囲気温度は0℃〜180℃が好ましく、40℃〜150℃がさらに好ましい。無風で乾燥する操作は剥ぎ取り前乾燥の前半の任意の段階で行うことができるが、好ましくは流延直後から行うことが好ましい。無風で乾燥する時間が、バンド上の場合に10秒未満(ドラム上の場合に1秒未満)であると、添加剤がフィルム内に均一に分布することが難しく、90秒を超えると(ドラム上の場合10秒を超えると)乾燥不十分で剥ぎ取られることになり、フィルムの面状が悪化する。
剥ぎ取り前乾燥における無風で乾燥する以外の時間は、不活性ガスを送風することにより乾燥を行なうことができる。このときの風温は0℃〜180℃が好ましく、40℃〜150℃がさらに好ましい。
【0085】
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて二層以上の流延を行いフィルム化することもできる。この場合、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製することが好ましい。ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40%の範囲となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
【0086】
二層以上の複数のセルロースアシレート液を流延する場合、複数のセルロースアシレート溶液を流延することが可能で、支持体の進行方向に間隔をおいて設けられた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよい。例えば、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、及び、特開平11−198285号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することができる。例えば、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、及び、特開平6−134933号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押し出すセルロースアシレートフィルムの流延方法を用いることもできる。
【0087】
また、二個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成形したフィルムを剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第二の流延を行うことにより、フィルムを作製することもできる。例えば、特公昭44−20235号公報に記載の方法を挙げることができる。
流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液を用いてもよいし、異なるセルロースアシレート溶液を用いてもよい。複数のセルロースアシレート層に機能をもたせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押し出せばよい。さらに本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、紫外線吸収層、偏光層など)と同時に流延することもできる。
【0088】
従来の単層液では、必要なフィルムの厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押し出すことが必要である。その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良となったりして問題となることが多かった。この問題の解決方法として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に支持体上に押し出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。
【0089】
とりわけ、3層以上の積層構造を有していることが、寸法安定性や環境湿熱変化に伴うカール量低減の観点から好ましい。また、前記低置換度層の両面に前記高置換度層を有する場合、所望の光学特性を実現させる工程における自由度向上の観点から好ましい。
なお、3層以上の積層構造を有している場合に限り、フィルム製膜時に支持体と接していない側の表面層のことをスキンA層とも言う。
【0090】
特に、スキンB層/コア層/スキンA層の3層構造であることが好ましい。3層構造の場合、高置換度層/低置換度層/高置換度層という構成であっても低置換度層/高置換度層/低置換度層という構成であってもよいが、高置換度層/低置換度層/高置換度層の構成であることが、溶液製膜時の支持体からの剥離性を改善する観点および寸法安定性の観点から好ましい。
3層構造であるとき、両面の表面層に含まれるセルロースアシレートは同じアシル置換度のセルロースアシレートを用いることが、製造コスト、寸法安定性および環境湿熱変化に伴うカール量低減の観点から好ましい。
【0091】
前記セルロースアシレートフィルムは、例えば、幅は0.5〜5mであり、より好ましくは0.7〜3mの形態として作製されてもよい。また、前記セルロースアシレートフィルムは、巻長300〜30000m、より好ましくは500〜10000m、さらに好ましくは1000〜7000mの形態として作製されてもよい。
【0092】
〈延伸〉
前記位相差フィルムとして、上記方法で作製されたセルロースアシレートフィルムに、さらに延伸処理を施し、そのレターデーションを調整した延伸フィルムを用いてもよい。積極的に幅方向(製膜時の流延方向と直交する方向)に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、及び特開平11−48271号の各公報などに記載されている。フィルムの延伸は、常温又は加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度を挟む±20℃であることが好ましい。これは、ガラス転移温度より極端に低い温度で延伸すると、破断しやすくなり所望の光学特性を発現させることができない。また、ガラス転移温度より極端に高い温度で延伸すると、延伸により分子配向したものが熱固定される前に、延伸時の熱で緩和し配向を固定化することができず、光学特性の発現性が悪くなる。
【0093】
さらに、延伸ゾーン(例えばテンターゾーン)において、フィルムを噛み込み、搬送し最大拡幅率を経た後に、通常緩和させるゾーンを設ける。これは軸ずれを低減するのに必要なゾーンである。通常の延伸ではこの最大拡幅率を経た後の緩和率ゾーンでは、テンターゾーンを通過させるまでの時間は1分より短く、フィルムの延伸は、搬送方向あるいは幅方向だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよいが、幅方向により多く延伸することが好ましい。幅方向、即ち製膜時の流延方向と直交する方向、に1.4倍〜2倍の倍率で延伸処理するのが好ましく、より好ましくは延伸倍率は1.4倍〜1.6倍であり、さらに好ましくは延伸倍率は1.4倍〜1.5倍である。
【0094】
延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶剤量(残留溶剤量/(残留溶剤量+固形分量))が0.05〜50%で好ましく延伸することができる。残留溶剤量が0.05〜5%の状態で5〜80%延伸を行うことが特に好ましい。
【0095】
また、前記位相差フィルムとして、上記方法で作製されたセルロースアシレートフィルムに二軸延伸処理を施した二軸延伸処理フィルムを用いてもよい。
二軸延伸には、同時二軸延伸法と逐次二軸延伸法があるが、連続製造の観点から逐次二軸延伸方法が好ましく、ドープを流延した後、バンドもしくはドラムよりフィルムを剥ぎ取り、幅方向(長手方法)に延伸した後、長手方向(幅方向)に延伸される。
【0096】
〈膜厚〉
前記位相差フィルムの膜厚は、特に限定されないが、10〜200μmであることが好ましい。薄型化の観点では、膜厚は薄いほどよいが、10μm未満であると、取り扱い性が損なわれる傾向がある。より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは10〜60μm、特に好ましくは10〜50μm、最も好ましくは10〜40μmである。
【0097】
スキンB層/コア層/スキンA層の3層構造であって、順に高置換度層/低置換度層/高置換度層という好ましい態様においては、前記高置換度層の平均膜厚が0.1μm以上10μm未満の範囲が好ましく、0.5μm以上5μm未満の範囲がより好ましい。スキン層が0.1μm未満になると、剥離性が不十分となり、スジ状のムラ、フィルムの膜厚不均一あるいは光学特性不均一を招きやすい。
また、スキン層が10μm以上になると、全体の膜厚を薄形する上でコア層の厚みが制限されるため、コア層の光学発現性を有効に利用することが難しくなる。
【0098】
《集光シート》
本発明において特に好ましい態様として、液晶表示装置が面光源と集光シートとからなるバックライトユニットを有し、前記バックライトユニットが出射した光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線に対して、観察者が前記液晶表示画面を視認するときの鉛直方向または水平方向に傾けられた出射角度50°から85°の範囲の光量の平均値が、該法線方向の光量に対して12%以下であることが好ましい。
集光シートとしては、プリズムシートやレンズシートが挙げられ、表面に凹凸が形成されたシートであって、その材料や作製方法はさまざまなものを用いることができる。
【0099】
[集光シートの材料及び製法]
集光シートを構成する材料及び製法について説明する。
【0100】
本発明に係る集光シートを製造する方法に関しては、微細な凹凸パターンのプリズムシートを形成することができる方法であればよく、製造方法は限定されない。
【0101】
例えば、ダイより押し出したシート状の樹脂材料を、この樹脂材料の押し出し速度と略同速度で回転する転写ローラ(例えばプリズムシートに形成される凹凸パターンと反転パターンが表面に形成されている)と、この転写ローラに対向配置され同速度で回転するニップローラ板とで挟圧し、転写ローラ表面の凹凸パターンを樹脂材料に転写する製造方法を用いることができる。
【0102】
上記製造方法に使用されるプリズムシートを構成する樹脂材料としては、熱可塑性樹脂が用いられる。具体的には、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、MS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、セルロースアシレート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースダイアセテート、熱可塑性エラストマー、又はこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマー等を使用することができる。
【0103】
[プリズムシート]
本発明に用いられる集光シートとして、特に好ましいプリズムシートについて詳述する。
本発明の液晶表示装置は、面光源と集光シートからなるバックライトユニットが出射した光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線に対して、観察者が前記液晶表示画面を視認するときの鉛直方向に傾けられた出射角度50°から85°の範囲の光量の平均値が、該法線方向の光量に対して12%以下であることが好ましい。
【0104】
図6は、集光シート(光学シート)41における光路を示す断面図である。図6に示すように、入射した光は、光学シート41を屈折透過する際に、正面方向に屈折する成分Aと、正面方向ではなく、正面から離れる方向に屈折する成分Bと、表面で反射する成分Cに分けられる。これらの光の成分のうち、前記成分Aは、正面方向即ち観察方向に出射されるものであり、実際に利用される光である。前記反射される成分Cは、底面で拡散反射して、プリズムシートに入射する角度を変え、一部は成分Aに変換され正面方向に出射する。この反射を繰り返すことにより、成分Cの多くは成分Aに変換され、出射面の正面方向の輝度を増加させる。
これに対して、図6のX部分を通過する光の成分Bは、液晶表示装置等の有効な視野角外に広角度で出射する光(以下、サイドローブ光と称する)であり、正面輝度の増加には寄与しない。
さらに、サイドローブ光は、画面の法線方向から極端にかけ離れた角度で液晶パネルに入射し、液晶セルの液晶分子、カラーフィルター、位相差フィルム等により正面に散乱された光成分は、黒表示輝度の著しい増加させ、コントラスト低下の原因となっていた。
【0105】
本発明の液晶表示装置に好ましく用いられるプリズムシートは、サイドローブ光を少なくすることができ、黒表示の輝度上昇を防止し、コントラストが向上する効果を奏する。
前記反射型偏光板と前記位相差フィルムと前記集光シート及び前記面光源からなるバックライトユニットから出射された光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線に対して、観察者が前記液晶表示画面を視認するときの鉛直方向または水平方向に傾けられた出射角度50°から85°の範囲の光量の平均値が、該法線方向の光量に対して12%以下であることが好ましく、8%以下であることがさらに好ましく、4%以下であることがコントラストの観点で最も好ましい。
【0106】
特に本発明の液晶表示装置がTNモード液晶セルを用いる場合、視認者側から見てTNモード液晶セルの表示画面は、通常、横長画面の長辺を水平方向として、液晶セル内の液晶分子の配向方向を45°から135°にツイストし、前記TNモード液晶セルの面内位相差が最大となる方向が鉛直方向となるよう画面を配置するが、用途によっては逆に配置した液晶表示装置であってもよい。
特に本発明の液晶表示装置がTNモード液晶セルを用いる場合、上記集光シートが前記TNモード液晶セルの面内位相差が最大となる方向に集光し、且つその方向のサイドローブ光が少ない場合に顕著な効果を奏し、好ましいが、液晶セルの画素とのモアレを防止するためにプリズムの稜線を画素のブラックマトリックスに対して1〜20°の範囲で傾けてもよい。
【0107】
前記プリズム断面の凹凸パターンとしては、三角形状が好ましく、とりわけ二等辺三角形状がより好ましく、凸部を液晶セル側へ向けたプリズムシートであることが好ましい。
形状の特徴としては、三角形状の頂角が95〜130°が好ましく、100〜120°がより好ましい。前記頂角が95°未満であると、サイドローブ光の影響により、黒表示輝度の著しい増加の原因となりやすい。
一方、前記頂角が130°を超えると、集光効果が低下し、正面方向の輝度が低下することがある。
【0108】
また、該プリズム断面の三角形状の頂角が95°未満であっても、プリズム部とは別に光学調整部を支持体に設けることにより、サイドローブ光を低減することができ、もう一つの好ましい態様である。
また、前記支持体上の面内に所定の間隔をもって光学調整部が複数に配設されたプリズムシートも好ましい態様であり、該光学調整部としては、光反射性を有するもの、光拡散性を有するもの、屈折率差を利用するものがあり、特に光反射性を有する光学調整部であることが好ましい。
これら光学調整部は、特開2008−003515号公報、特開2008−176197号公報に記載された光学シートの光学調整部と同義である。
【0109】
なお、本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定するができる。
測定されるフィルムが一軸または二軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。
【0110】
【数1】
上記式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわし、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
【0111】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、本明細書では、特に付記がない限りは屈折率の測定波長は550nmとする。
【実施例】
【0112】
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0113】
実施例I
1.位相差フィルム1〜3の準備
(1)位相差フィルム1
下記の通り、透明支持体用フィルムを作製後、その上に、配向膜、及び光学異方性層をそれぞれ形成して位相差フィルムを作製し、位相差フィルム1として用いた。
(透明支持体の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、30℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
───────────────────────────────────
セルロースアセテート溶液組成(質量部) 内層 外層
───────────────────────────────────
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100 100
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8 7.8
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9 3.9
メチレンクロライド(第1溶媒) 293 314
メタノール(第2溶媒) 71 76
1−ブタノール(第3溶媒) 1.5 1.6
シリカ微粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
0 0.8
下記レターデーション上昇剤 1.7 0
───────────────────────────────────
【0114】
【化2】
【0115】
得られた内層用ドープおよび外層用ドープを、三層共流延ダイを用いて、0℃に冷却したドラム上に流延した。残留溶剤量が70質量%のフィルムをドラムから剥ぎ取り、両端をピンテンターにて固定して搬送方向のドロー比を110%として搬送しながら80℃で乾燥させ、残留溶剤量が10%となったところで、110℃で乾燥させた。その後、140℃の温度で30分乾燥し、残留溶剤が0.3質量%のセルロースアセテートフィルム(厚み80μm(外層:3μm、内層:74μm、外層:3μm))を製造した。作製したセルロースアセテートフィルムの波長550nmにおける面内レターデーションReは−10nm、厚さ方向のレターデーションRthは90nmであった。
【0116】
作製したセルロースアセテートフィルムを、2.0Nの水酸化カリウム溶液(25℃)に2分間浸漬した後、硫酸で中和し、純水で水洗、乾燥した。
【0117】
(配向膜の形成)
このセルロースアセテートフィルム上に、下記組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28mL/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150
秒乾燥した。形成された膜表面に、ラビングロールで搬送方向に平行な方向に500回転/分で回転させてラビング処理を行い、配向膜を形成した。
───────────────────────────────────
(配向膜塗布液組成)
───────────────────────────────────
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 370質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
───────────────────────────────────
【0118】
【化3】
【0119】
(光学異方性層の形成)
下記組成の塗布液を調製し、#3.2のワイヤーバーを用いて、フィルムの配向膜面に連続的に塗布した。室温から100℃に連続的に加温する工程で、溶媒を乾燥させ、その後、135℃の乾燥ゾーンで約90秒間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置により、照度600mWの紫外線を10秒間照射し、架橋反応を進行させ、ディスコティック液晶化合物を重合した。その後、室温まで放冷し、光学異方性層を形成し、光学補償フィルムを作製した。
(光学異方性層塗布液組成)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
メチルエチルケトン 98質量部
下記のディスコティック液晶性化合物(1) 41.01質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製 4.06質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製) 0.34質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB531−1、イーストマンケミカル社製) 0.11質量部
下記フルオロ脂肪族基含有ポリマー1 0.13質量部
下記フルオロ脂肪族基含有ポリマー2 0.03質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.45質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0120】
【化4】
【0121】
【化5】
【0122】
【化6】
【0123】
(光学特性の測定)
作製した各光学補償フィルムについて、KOBRA−WR(王子計測器(株)製)を用いて、波長550nmの面内レターデーションRe(550)を測定した。また、各光学補償フィルムの遅相軸に直交する面内において、法線方向から±40度に傾斜した方向から波長550nmの光を入射させてレターデーションR[+40°]及びR[−40°]を測定し、R[−40°]/R[+40°]を算出した。
結果、Re(550)=44nm、R[−40°]/R[+40°]=3.0であった。
【0124】
(2)位相差フィルム2
下記の通り、透明支持体を作製後、その上に、配向膜、及び光学異方性層を形成し、位相差フィルムを作製し、位相差フィルム2として用いた。
(透明支持体の作製)
ドープの調製
下記表に示す組成、且つ数平均分子量のオリゴマーを、下記表に示す添加量で含む、セルロースアセテート溶液をそれぞれ調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアセテート溶液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
・平均置換度2.86のセルロースアセテート 100.0質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 475.9質量部
・メタノール(第2溶媒) 113.0質量部
・ブタノール (第3溶媒) 5.9質量部
・平均粒子サイズ16nmのシリカ粒子 0.13質量部
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
・オリゴマー(下記表に示す)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0125】
調製し溶液を、流延ギーサーを通して直径3mのドラムである鏡面ステンレス支持体上に、下記表に示すPITドロー条件で、流延した。
次に、支持体上のウェブの残留溶媒量及び膜面温度が、下記表に示す値になった時に、下記表に示す延伸倍率で、ウェブをTD方向に延伸処理した。延伸処理は、ウェブの両端をピン状テンターで把持して搬送方向と直交する方向に広げることによりTD方向に延伸した。延伸後、ウェブの残留溶媒量が下記表に示す値になった時、下記表に示す膜面温度で、ウェブを熱処理した。熱処理は、乾燥ゾーンの温度を乾燥風によって制御することにより行った。また、熱処理は、ピン状テンターを固定した条件で行った。
この様にして、セルロースアセテートフィルムを作製した。
【0126】
【表2】
【0127】
作製したセルロースアセテートフィルムを2.0Nの水酸化カリウム溶液(25℃)に2分間浸漬した後、硫酸で中和し、純水で水洗、乾燥した。
【0128】
(配向膜の形成)
このセルロースアセテートフィルム上に、下記の組成の塗布液を#14のワイヤーバーコーターで24mL/m2塗布した。100℃の温風で120秒で乾燥した。形成された膜表面に、ラビングロールで搬送方向から2°の方向に500回転/分で回転させてラビング処理を行い、配向膜を形成した。
───────────────────────────────────
(配向膜塗布液組成)
───────────────────────────────────
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 364質量部
メタノール 114質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 1.0質量部
クエン酸エステル(AS3、三共化学(株)) 0.35質量部
───────────────────────────────────
【0129】
【化7】
【0130】
(光学異方性層の作製)
下記組成の塗布液を調製し、#2.4のワイヤーバーを用いて、フィルムの配向膜面に連続的に塗布した。その後、80℃の乾燥ゾーンで約120秒間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、紫外線照射装置により、照度600mWの紫外線を10秒間照射し、架橋反応を進行させ、ディスコティック液晶化合物を重合した。その後、室温まで放冷し、光学異方性層を形成し、位相差フィルム2を作製した。
(光学異方性層塗布液組成)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記に示す液晶化合物(2) 100.0質量部
下記に示すピリジニウム塩化合物II-1 1.0質量部
下記に示すトリアジン環含有化合物III-1 0.2質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3.0質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 341.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0131】
【化8】
【0132】
(光学特性の測定)
作製した各光学補償フィルムについて、KOBRA−WR(王子計測器(株)製)を用いて、波長550nmの面内レターデーションRe(550)を測定した。また、各光学補償フィルムの遅相軸に直交する面内において、法線方向から±40度に傾斜した方向から波長550nmの光を入射させてレターデーションR[+40°]及びR[−40°]を測定し、R[−40°]/R[+40°]を算出した。
結果、Re(550)=66nm、R[−40°]/R[+40°]=2.3であった。
また、位相差フィルム2の規格化透過率特性は、図1−1の位相差フィルム1の特性とほぼ同じであった。
【0133】
(3)位相差フィルム3
富士フイルム社製のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム「TF80」光学補償フィルム3として用いたレターデーションを測定したところ、Re(550)=2nm、Rth(550)=40nmであった。
また、位相差フィルム3の規格化透過率特性を図1−2に示す。
【0134】
2.偏光板の作製
偏光膜の一方の表面に、上記フィルム1〜3のいずれか1つを貼合し、他方の表面に富士フイルム社製のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム「TF80」を貼合し、偏光板をそれぞれ作製した。なお、液晶セルと貼合する際は、上記位相差フィルムをそれぞれ液晶セル側にして貼合した。
なお、下記表の実施例では、位相差フィルム1又は2を偏光子に貼合する際に、面内遅相軸と偏光子の吸収軸を直交させ貼合した。
【0135】
3.液晶表示装置の作製と評価
図4に示す構成のRGBWカラーフィルタを有するTNモード液晶セル(Δnd=410nm)を準備し、上記で作製した偏光板のいずれか同一のものを、該液晶セルの上下に一枚ずつ貼合して、図3と同様の構成の液晶表示装置を作製した。
なお、比較例用に、RGBカラーフィルタを有するTNモード液晶セル(Δnd=410)も準備し、同様にして、液晶表示装置を作製した。
【0136】
下記表に記載の通り、グレイスケール階調Lのそれぞれにおいて、G画素及びW画素のそれぞれにTG及びTWが下記表に示す値となる電圧を印加して、各液晶表示装置を駆動した。
このとき、R画素およびB画素には、TRおよびTBがTGと同じになるようにそれぞれ電圧を印加し、即ち、RGB画素をあわせて見たときに無彩色にしている。
R,G,B,Wの画素をあわせたものを1つの表示素子と見なして以下の測定を行った。R,G,B,Wをあわせてみると無彩色になっている。
【0137】
正面方向透過率、及び下方向階調反転をそれぞれ、以下の方法で測定した。なお、各液晶表示装置を、ノーマリーホワイトモードで駆動した。駆動電圧と規格化透過率との関係の例を図5に示す。
【0138】
(正面方向透過率)
作製した実施例及び比較例の液晶表示装置のそれぞれについて、白表示時の表示面法線方向(正面方向)の輝度を、トプコン社のBM−5Aを用いて測定した。下記表は、比較例1の正面方向輝度を基準にして相対的な透過率を算出し、それぞれの液晶表示装置の透過率を示す。透過率の値が高いほど、良好である。
【0139】
(下方向階調反転)
作製した実施例及び比較例の液晶表示装置のそれぞれについて、グレイスケール階調表示させ、L=0.03のときの下方向30°の輝度をUL0.03、L=0.1のときの下方向30°の輝度をUL0.1としたとき、UL0.1/UL0.03で定義されるR値を求めた。
R値は大きい値であるほど、階調反転が目立たないか、又は反転が見えなくなる。R値の数値範囲を下記のランクに分類した。
下方向階調反転はEランクならば実用上許容されるレベルである。
ランク
A: 1.00≦ R
B: 0.95≦ R <1.00
C: 0.90≦ R <0.95
D: 0.85≦ R <0.90
E: 0.80≦ R <0.85
F: R <0.80
画素構成、位相差フィルム、及び印加電圧制御の設定、さらに正面方向の透過率と下方向階調反転の各評価結果を、表3,4,5に整理した。
【0140】
なお、以上の測定を下記表におけるTGとTWとを入れ替え、同じ評価を行なった結果、下記表の評価結果と同じ結果が得られた。
【表3】
【0141】
【表4】
【0142】
【表5】
【0143】
(実施例II)
(位相差フィルム4の作製)
<セルロースアシレート溶液1Cの調製>
セルロースアシレートおよび下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液1Cを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液1Cの組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレートCE−1 100.0質量部
ポリエステルオリゴマーA−1 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 403.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0144】
<セルロースアシレート溶液1Sの調製>
セルロースアシレートおよび下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液1Sを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液1Sの組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレートCE−2 100.0質量部
ポリエステルオリゴマーA−1 5.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 403.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0145】
<マット剤溶液1の調製>
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液1を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ16nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、 日本アエロジル(株)製) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 72.4質量部
メタノール(第2溶媒) 10.8質量部
セルロースアシレート溶液1S 10.3質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0146】
CE−1:アセチル置換度2.42、全置換度2.42
CE−2:アセチル置換度2.81、全置換度2.81
【0147】
【表6】
【0148】
流延方法としては、ドープを金属製のバンド流涎機で外層(バンド層)用ドープ/コア層用ドープ/外層(エア層)用ドープの順に三層共流延を行い、乾燥させた後、剥ぎ取りドラムによりフィルムをバンドから剥ぎ取った。
コア層用ドープはセルロースアシレート溶液1C、外層用ドープは、セルロースアシレート溶液1Sの100質量部に対して、上記マット剤溶液1を1.35質量部を混合したものとした。
185℃の雰囲気温度で残留溶媒含量1%未満の上記フィルムを固定端一軸延伸で延伸倍率1.05倍のMD延伸を行った後、185℃の雰囲気温度で残留溶媒含量1%未満の上記フィルムをテンターゾーンで延伸倍率1.30倍のTD延伸を行った。
その後、クリップを外して乾燥させ、幅2000mmの位相差フィルム1を製造した。作製された位相差フィルム4の残留溶媒量は0.1%であり、膜厚は50μmであった。
【0149】
得られた位相差フィルムの面内位相差Re、厚さ方向位相差Rth、全ヘイズ、を本願に記載の方法で測定した。測定条件は25℃60%相対湿度で、フィルムをこの環境に十分な時間置いた後で測定を行った。
その結果を表7に記載する。
また、位相差フィルム4の規格化透過率特性を図1−3に示す。
【0150】
(偏光板1の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。
次に、作製した位相差フィルム4を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光膜の片側に貼り付け、さらに偏光膜の反対側に保護用TACフィルムを貼り付けた。このとき、ポリビニルアルコールの長手方向と位相差フィルム4の長手方向が一致するように貼り付け、位相差フィルム4の遅相軸および偏光膜の透過軸が平行になるように配置した。
この様にして、偏光板1を作製した。
【0151】
【表7】
【0152】
さらにバックライトに用いるための下記のプリズムシートを作製した。
【0153】
<実施例IIに用いる集光シートの作製>
下記のようにしてプリズムシートを作製した。
〔プリズム層塗布液の調整〕
下記処方のプリズム層塗布液を調整した。
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、50℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、塗布液を調製した。なお、硬化後のプリズム層の屈折率は1.59であった。前記プリズム層の屈折率は、同一の液を平坦な塗布膜として形成し、プリズムカプラー屈折率測定機(SPA4000 Sairon Technology Inc.)により測定した。
・エベクリル3700(ダイセルUBC(株)製) 2.55質量部
・NKエステルBPE−200(新中村化学(株)製) 0.85質量部
・アロニックスM−110(東亞合成(株)製) 0.85質量部
・ニューフロンティアBR−31(第一工業製薬(株)製) 4.25質量部
・メチルエチルケトン 2.89質量部
・ルシリンTPO−L(BASF(株)製) 0.17質量部
【0154】
〔プリズムシートAの作製〕
両面に易接着処理を施した厚み25μmの透明PET製の支持体の第一の表面に、前記で調製したプリズム層塗布液を乾燥質量で14g/m2となるように塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、該プリズム層を、断面形状が頂角90°の二等辺三角形であり、ピッチ(底辺の長さ)50μmのストライプ状にプリズム形状が彫刻された金属の型(金型)に押し当てた。この押し当て状態で、前記支持体の第二の表面側から、高圧水銀灯により露光し、膜を硬化させ、金型から剥離し、プリズムシートA(凹凸部を形成した支持体)を得た。
【0155】
<白色反射層用塗布液の調製>
下記処方で、光学調整部形成用の白色反射層用塗布液を調整した。
[ホワイト顔料分散母液の組成]
・ポリビニルブチラール(エスレックB BL−SH、積水化学工業(株)製)
2.7質量部
・ルチル型酸化チタン(JR805、テイカ(株)製、質量平均粒子径0.29μm) 35.0質量部
・分散助剤(ソルスパース20000、アビシア(株)製) 0.35質量部
・n−プロピルアルコール 62.0質量部
上記組成物を、アイガー社製モーターミルM50によりジルコニアビーズを用いて分散し、ホワイト顔料分散母液を調製した。
【0156】
[白色反射層塗布液の組成]
・上記で調製されたホワイト顔料分散母液 1,200質量部
・ワックス系化合物
ステアリン酸アミド(ニュートロン2、日本精化(株)製) 5.7質量部
ベヘン酸アミド(ダイヤミッドBM、日本化成(株)製) 5.7質量部
ラウリン酸アミド(ダイヤミッドY、日本化成(株)製) 5.7質量部
パルミチン酸アミド(ダイヤミンドKP、日本化成(株)製) 5.7質量部
エルカ酸アミド(ダイヤミッドL−200、日本化成(株)製) 5.7質量部
オレイン酸アミド(ダイヤミッドO−200、日本化成(株)製) 5.7質量部
・ロジン(KE−311、荒川化学(株)製、成分:樹脂酸80〜97%;樹脂酸成分:アビエチン酸30〜40%、ネオアビエチン酸10〜20%、ジヒドロアビエチン酸14%、テトラヒドロアビエチン酸14%) 80.0質量部
・界面活性剤(メガファックF−780F、固形分30%、大日本インキ化学工業社製) 16.0質量部
・n−プロピルアルコール 1,600質量部
・メチルエチルケトン 580質量部
【0157】
<白色反射シートの作製>
厚み25μmのPET製支持体上に、前記で調製した白色反射層塗布液を、乾燥膜厚が2μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥させ、白色反射シートを作製した。
【0158】
<ポジ型感光層用塗布液の調製>
下記処方のポジ型感光層用塗布液を調製した。
・フェノールノボラック樹脂(住友デュレズ株式会社製、PR−50716、融点:76℃) 2.5質量部
・フェノールノボラック樹脂(住友デュレズ株式会社製、PR−51600B、融点:55℃) 3.5質量部
・1,2−ナフトキノン(2)ジアジド−4−スルフォン酸クミルフェノールエステル 2.0質量部
・メチルエチルケトン 40質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 20質量部
・界面活性剤(大日本インキ株式会社製、メガファックF−176PF)0.1質量部
【0159】
<アルカリ現像液の調製>
下記組成のアルカリ現像液を調製した。
・炭酸ナトリウム 59質量部
・重炭酸ナトリウム 32質量部
・水 720質量部
・ブチルセロソルブ 1質量部
【0160】
<集光性の光学シート:プリズムシートBの作製>
図8Aに示すように、前記で作製したプリズムシートA(凹凸部5を形成した支持体2)の平坦な第二の表面4側に、前記で調製したポジ型感光層用塗布液を、乾燥膜厚が0.5μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥させ、前記支持体2の第二の表面4上にポジ型感光層8を形成した。
次に、図8Bに示すように、前記支持体2の凹凸部5を形成した第一の表面3側から、平行光線照射機(マスクアライメント装置M−2L、ミカサ(株)製)を用いて、平坦な前記第二の表面4の法線方向に平行に紫外線照射し、前記ポジ型感光層を露光した。図8Bに符号6で示す部分が、光の不通過部(光束密度の低い部分)である。
【0161】
次いで、前記で調製したアルカリ現像液を用いて、ポジ型感光層の露光部を洗い流し、図8Cに示すように、支持体2の第二の表面4であって光の不通過部6に、部分的にポジ型感光層8を有する支持体2を得た。
上記部分的にポジ型感光層8を有する支持体2の、前記ポジ感光層8が形成された第二の表面4に、図8Dに示すように、前記で作製した白色反射層9を設けた白色反射シート10を、粘着性を有する前記ポジ型感光層8に第二の表面4に白色反射層9が接触するように配置し、ラミネート装置にて熱ラミネート(速度:0.5m/min.加熱温度:80℃)した。その後、図8Eに示すように、白色反射シート10を支持体2から剥離することにより、前記ポジ型感光層8の形成部に12μm巾のストライプ状に、白色反射層9が転写された支持体2を得て、プリズムシートBを形成した。該白色反射層9が、サイドローブ防止部7であり、その光反射率は、70%であった。
【0162】
〔プリズムシートCの作製〕
両面に易接着処理を施した厚み25μmの透明PET製の支持体の第一の表面に、前記で調製したプリズム層塗布液を乾燥質量で14g/m2となるように塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、該プリズム層を、断面形状が頂角110°の二等辺三角形であり、ピッチ(底辺の長さ)50μmのストライプ状にプリズム形状が彫刻された金属の型(金型)に押し当てた。この押し当て状態で、前記支持体の第二の表面側から、高圧水銀灯により露光し、膜を硬化させ、金型から剥離し、プリズムシートC(凹凸部を形成した支持体)を得た。
【0163】
<バックライトユニットの作製>
市販品の液晶表示装置から取り外した面光源上に上記の各プリズムシートを配置したバックライトユニットを作製した。
作製した頂角が90°であるプリズムシートA、頂角が90°であるプリズムシートであって、さらに部分的に光反射性を有するサイドローブ防止部7が複数形成された集光性の光学シートであるプリズムシートB、頂角が110°であるプリズムシートCを、表9の内容となるように配置した。
【0164】
<正面輝度の評価方法>
実施例Iの正面方向透過率に相当する評価である。
上記プリズムシートを設置した各バックライトユニット平面光源上に、輝度計(BM−7:トプコン(株))を設置し、光度の測定を行った。プリズムシートのないバックライト平面光源のみの正面輝度を1としたときの、光学シートを敷いた場合の正面輝度の倍率を用いて輝度評価を行い、以下のように分類した。
A: 1.3以上
B: 1.1以上、1.3未満
C: 1.1未満
【0165】
<バックライト光の出射角度分布の測定>
上記プリズムシートを設置したバックライトユニットについて、輝度計(BM−7:トプコン(株))にて、光度の測定を行った。
正面を0°として、プリズムシートの集光方向に対して受光機を5°刻みで±85°走査し、プリズムシートから出射される光度の角度分布を測定し、出射角度50°から85°の範囲で測定した光量の平均値を求め、表9に記載した。
なお、光度と出射角度の関係を各プリズムシートについて正面(0°)で測定した光度(cd)を基準に規格化して図9に示す。
【0166】
<液晶表示装置の作製>
液晶セルと偏光板が表8に記載した内容となるように、さらに各プリズムシートを組み込んだバックライトユニットが表9に記載した内容となるように液晶表示装置(ディスプレイ20〜24)を組み立てた。
なお、液晶セルは図4に示す構成のRGBWカラーフィルタを有するTNモード液晶セル(Δnd=410nm、液晶ツイスト角90°)を準備し、上記で作製した偏光板のいずれか同一のものを、該液晶セルの上下に一枚ずつ貼合して、図3と同様の構成の液晶表示装置を作製した。その際、各偏光板はEモード配置にした。
各プリズムシートは、凸部を液晶セル側へ向けてあり、その集光方向は、表7、表8に記載するように鉛直方向、又は水平方向となるように配置した。
【0167】
正面輝度、及び実施例Iの下階調反転の評価結果を表9に示した。
【0168】
【表8】
【0169】
【表9】
【0170】
表から、集光方向が鉛直方向であってプリズムシートB、Cを使用したディスプレイ22及び23の性能が特に優れている。
図9に示したプリズムシートB、Cの効果により、ディスプレイ22及び23は、下方向30°、即ち方位角270°、極角30°から極角をさらに大きく傾けた側の光量が大幅に減少しているため、拡散性のバックライト光のときよりも下階調反転のレベルが向上したものと考えられる。
【符号の説明】
【0171】
10 液晶セル
12 光学異方性層
14 支持体
16 偏光子
1 プリズムシート
2 支持体
3 第一の表面
4 第二の表面
5 凹凸部
6 不通過部
7 サイドローブ防止部
8 ポジ型感光層
9 白色反射層
80 プリズムシート製造装置
81 シート供給手段
82 塗布手段
83 エンボスロール
84 ニップロール
85 樹脂硬化手段
86 剥離ロール
87 保護フィルム供給手段
88 シート巻取り手段
89 乾燥手段
W 支持体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の偏光子;少なくとも一方の対向面に画素を構成する電極を有する一対の基板と、該一対の基板間に配置され、90°以下のツイスト角でツイスト配向する液晶層とを少なくとも有する液晶セル;及び前記一対の偏光子のそれぞれと前記液晶セルとの間に配置される位相差フィルム;を含み、前記液晶セルの一画素が、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素、及び白(W)画素からなる液晶表示装置であって、
R画素、G画素及びB画素それぞれを構成する電極間に実質的に等しい電圧VRGBを印加するグレイスケール階調において、階調L(但しLは、0≦L≦1を満足する)に応じて、下記(ia)及び(iia)又は(ib)及び(iib)を満足する電圧VRGB及び電圧Vwを、G画素を構成する電極間及びW画素を構成する電極間にそれぞれ印加する駆動手段を備えたことを特徴とする液晶表示装置:
(ia)0<L≦0.03の時、TG=0で且つTW=2×L
(iia)0.03<L≦0.3の時、
0.05<TW/(TG−0.03)<0.86
又は
(ib)0<L≦0.03の時、TW=0で且つTG=2×L
(iib)0.03<L≦0.3の時、
0.05<TG/(TW−0.03)<0.86
但し、TG及びTWはそれぞれ、G画素及びW画素それぞれの透過率を、液晶表示装置の表示面法線方向における白の輝度を1として規格化した規格化透過率である。
【請求項2】
前記位相差フィルムが、支持体と、ハイブリッド配向状態に固定された円盤状液晶を含む光学異方性層とを少なくとも有する積層フィルムである請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶層のツイスト角が、90°である請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記液晶表示装置が面光源と集光シートからなるバックライトユニットを有し、前記バックライトユニットが出射した光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線に対して、観察者が前記液晶表示画面を視認するときの鉛直方向または水平方向に傾けられた出射角度50°から85°の範囲の光量の平均値が、該法線方向の光量に対して12%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記位相差フィルムがポリマーフィルム単体からなり、面内最大方向をnx、nxと垂直方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとした場合、nx>ny>nzを満足する請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記集光シートが、凸部を液晶セル側へ向けたプリズムシートである請求項4または5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
一対の偏光子;少なくとも一方の対向面に画素を構成する電極を有する一対の基板と、該一対の基板間に配置され、90°以下のツイスト角でツイスト配向する液晶層とを少なくとも有する液晶セル;及び前記一対の偏光子のそれぞれと前記液晶セルとの間に配置される位相差フィルム;を含み、前記液晶セルの一画素が、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素、及び白(W)画素からなる液晶表示装置の駆動方法であって、
R画素、G画素及びB画素それぞれを構成する電極間に実質的に等しい電圧VRGBを印加するグレイスケール階調において、階調L(但しLは、0≦L≦1を満足する)に応じて、下記(ia)及び(iia)又は(ib)及び(iib)を満足する電圧VRGB及び電圧Vwを、G画素を構成する電極間及びW画素を構成する電極間にそれぞれ印加することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法:
(ia)0<L≦0.03の時、TG=0で且つTW=2×L
(iia)0.03<L≦0.3の時、0.05<TW/(TG−0.03)<0.86
又は
(ib)0<L≦0.03の時、TW=0で且つTG=2×L
(iib)0.03<L≦0.3の時、0.05<TG/(TW−0.03)<0.86
但し、TG及びTWはそれぞれ、G画素及びW画素それぞれの透過率を、液晶表示装置の表示面法線方向における白の輝度を1として規格化した規格化透過率である。
【請求項1】
一対の偏光子;少なくとも一方の対向面に画素を構成する電極を有する一対の基板と、該一対の基板間に配置され、90°以下のツイスト角でツイスト配向する液晶層とを少なくとも有する液晶セル;及び前記一対の偏光子のそれぞれと前記液晶セルとの間に配置される位相差フィルム;を含み、前記液晶セルの一画素が、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素、及び白(W)画素からなる液晶表示装置であって、
R画素、G画素及びB画素それぞれを構成する電極間に実質的に等しい電圧VRGBを印加するグレイスケール階調において、階調L(但しLは、0≦L≦1を満足する)に応じて、下記(ia)及び(iia)又は(ib)及び(iib)を満足する電圧VRGB及び電圧Vwを、G画素を構成する電極間及びW画素を構成する電極間にそれぞれ印加する駆動手段を備えたことを特徴とする液晶表示装置:
(ia)0<L≦0.03の時、TG=0で且つTW=2×L
(iia)0.03<L≦0.3の時、
0.05<TW/(TG−0.03)<0.86
又は
(ib)0<L≦0.03の時、TW=0で且つTG=2×L
(iib)0.03<L≦0.3の時、
0.05<TG/(TW−0.03)<0.86
但し、TG及びTWはそれぞれ、G画素及びW画素それぞれの透過率を、液晶表示装置の表示面法線方向における白の輝度を1として規格化した規格化透過率である。
【請求項2】
前記位相差フィルムが、支持体と、ハイブリッド配向状態に固定された円盤状液晶を含む光学異方性層とを少なくとも有する積層フィルムである請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶層のツイスト角が、90°である請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記液晶表示装置が面光源と集光シートからなるバックライトユニットを有し、前記バックライトユニットが出射した光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線に対して、観察者が前記液晶表示画面を視認するときの鉛直方向または水平方向に傾けられた出射角度50°から85°の範囲の光量の平均値が、該法線方向の光量に対して12%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記位相差フィルムがポリマーフィルム単体からなり、面内最大方向をnx、nxと垂直方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとした場合、nx>ny>nzを満足する請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記集光シートが、凸部を液晶セル側へ向けたプリズムシートである請求項4または5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
一対の偏光子;少なくとも一方の対向面に画素を構成する電極を有する一対の基板と、該一対の基板間に配置され、90°以下のツイスト角でツイスト配向する液晶層とを少なくとも有する液晶セル;及び前記一対の偏光子のそれぞれと前記液晶セルとの間に配置される位相差フィルム;を含み、前記液晶セルの一画素が、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素、及び白(W)画素からなる液晶表示装置の駆動方法であって、
R画素、G画素及びB画素それぞれを構成する電極間に実質的に等しい電圧VRGBを印加するグレイスケール階調において、階調L(但しLは、0≦L≦1を満足する)に応じて、下記(ia)及び(iia)又は(ib)及び(iib)を満足する電圧VRGB及び電圧Vwを、G画素を構成する電極間及びW画素を構成する電極間にそれぞれ印加することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法:
(ia)0<L≦0.03の時、TG=0で且つTW=2×L
(iia)0.03<L≦0.3の時、0.05<TW/(TG−0.03)<0.86
又は
(ib)0<L≦0.03の時、TW=0で且つTG=2×L
(iib)0.03<L≦0.3の時、0.05<TG/(TW−0.03)<0.86
但し、TG及びTWはそれぞれ、G画素及びW画素それぞれの透過率を、液晶表示装置の表示面法線方向における白の輝度を1として規格化した規格化透過率である。
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9】
【図1−2】
【図1−3】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9】
【公開番号】特開2013−83924(P2013−83924A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−134571(P2012−134571)
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]