説明

液晶表示装置用基板の製造方法及び液晶表示装置用基板並びに液晶表示装置

【課題】発塵や静電気の発生がなく、確実に液晶の配向を行うことができる液晶表示装置用基板の製造方法及び液晶表示装置用基板並びに液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶表示装置用基板の製造方法は、基板101上に、液晶配向性を与えるための溝を形成するための材料102を成膜する工程と、成膜した溝を形成するための材料102に液晶配向性を与えるための溝103をインプリントにより形成する工程と、溝103を形成した膜の上面に光照射により液晶配向性を発現する配向膜材料104を成膜する工程と、成膜された配向膜材料104に光照射105により液晶配向性を与える配向処理を行う工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば液晶表示パネルなどの配向に好適な液晶配向性を発現する液晶表示装置用基板の製造方法及び液晶表示装置用基板並びに液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶表示パネルなどの液晶表示装置は、薄型軽量、低消費電力といった特徴を持ち、広く普及しており、この液晶表示装置では、その動作原理が電場の作用による液晶配向の変化を利用したものであるため、液晶配向の均一性と安定性が特に重要とされ、特に液晶を均一に配向させるために配向膜を用いている。
【0003】
一般的には、配向膜は、ポリイミド樹脂またはその前駆体の溶液を基板上に塗布して成膜し、バフロールで一方向にこする「ラビング」という処理により液晶配向処理を行うものがある(特許文献1参照)。このようなラビングは、発塵や静電気の発生という問題がある。
【0004】
これに対し、光に反応する官能基を有する樹脂を配向膜として用い、偏光した紫外線を照射する等により配向処理を行う配向膜材料が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−185068
【特許文献2】特開2000−112125
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2などにより提案されている光による配向処理を行う配向膜材料は、液晶を配向させる配向規制力が、特許文献1などにより提案されているラビング処理より弱いため、液晶の配向の不良が発生しやすく、問題となっている。
【0006】
この発明は、かかる実情に鑑みてなされたもので、発塵や静電気の発生がなく、確実に液晶の配向を行うことができる液晶表示装置用基板の製造方法及び液晶表示装置用基板並びに液晶表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0008】
請求項1に記載の発明は、基板上に、液晶配向性を与えるための溝を形成するための材料を成膜する工程と、
前記成膜した溝を形成するための材料に液晶配向性を与えるための溝をインプリントにより形成する工程と、
前記溝を形成した前記膜の上面に光照射により液晶配向性を発現する配向膜材料を成膜する工程と、
前記成膜された配向膜材料に光照射により液晶配向性を与える配向処理を行う工程と、
を有することを特徴とする液晶表示装置用基板の製造方法である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記溝は、幅1nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置用基板の製造方法である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記溝を形成するための材料が、架橋性樹脂である請求項1に記載の液晶表示装置用基板の製造方法である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記架橋性樹脂が、熱架橋性樹脂である請求項3に記載の液晶表示装置用基板の製造方法である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記架橋性樹脂が、光架橋性樹脂である請求項3に記載の液晶表示装置用基板の製造方法である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記基板が、プラスチックフィルムである請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の液晶表示装置用基板の製造方法である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の液晶表示装置用基板の製造方法により製造されることを特徴とする液晶表示装置用基板である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の液晶表示装置用基板を用いて製造されることを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0016】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0017】
請求項1に記載の発明では、基板上に、液晶配向性を与えるための溝を形成するための材料を成膜してインプリントにより溝を形成し、さらに溝を形成した膜の上面に配向膜材料を成膜して光照射による配向処理を行うことで、発塵や静電気の発生がなく、確実に液晶の配向を行うことができる。
【0018】
請求項2に記載の発明では、溝は、幅1nm以上1000nm以下であり、より確実に液晶の配向を行うことができる。
【0019】
請求項3に記載の発明では、溝を形成するための材料が、架橋性樹脂であり、インプリントにより溝を精度よく形成することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明では、架橋性樹脂が、熱架橋性樹脂であり、加熱してインプリントにより溝を精度よく形成することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明では、架橋性樹脂が、光架橋性樹脂であり、光照射してインプリントにより溝を精度よく形成することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明では、基板が、プラスチックフィルムであり、溝を形成するための材料と強固に一体化でき、薄く、かつ柔軟性があり、取り扱いが容易である。
【0023】
請求項7に記載の発明では、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の液晶表示装置用基板の製造方法により発塵や静電気の発生がなく、簡単な構成で確実に液晶の配向を行うことができる。
【0024】
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の液晶表示装置用基板を用いて製造され、液晶配向の均一性と安定性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】参考例の実施の形態の液晶表示装置用基板の製造方法の工程図である。
【図2】液晶表示装置用基板の製造方法を説明する図である。
【図3】溝を形成する工程を説明する図である。
【図4】実施の形態の液晶表示装置用基板の製造方法の概略構成図である。
【図5】液晶表示装置用基板の製造方法を説明する図である。
【図6】液晶表示装置用基板の構成を説明する図である。
【図7】液晶表示装置の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の液晶表示装置用基板の製造方法及び液晶表示装置用基板並びに液晶表示装置の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0027】
まず、液晶表示装置用基板の製造方法の実施の形態について説明する。
[参考例の実施の形態]
図1は参考例の実施の形態の液晶表示装置用基板の製造方法の工程図、図2は液晶表示装置用基板の製造方法を説明する図、図3は溝を形成する工程を説明する図である。
【0028】
この参考例の実施の形態の液晶表示装置用基板の製造方法は、図1に示すように、配向膜材料を成膜する工程A1と、溝をインプリントにより形成する工程A2と、配向処理を行う工程A3と、を有する。
【0029】
(配向膜材料を成膜する工程A1)
この配向膜材料を成膜する工程A1では、図2(a)に示すように、基板1上に、光照射により液晶配向性を発現する配向膜材料2を成膜する。基板1は、ガラス、プラスチックフィルムを用いることができるが、プラスチックフィルムが、薄く、かつ柔軟性があり、取り扱いが容易である。プラスチックフィルムとして、例えばポリエチレンレテフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン等の熱可塑性プラスチックフィルムの他、エポキシ樹脂等の架橋性樹脂も用いることができるが、これに限定されない。
【0030】
配向膜材料2は、偏光紫外線を照射することで偏光方向と直交方向に液晶を配向する性質を持つ光分解型の配向膜材料を用いることができ、基板の表面に塗布して成膜されるが、これに限定されず、接着などにより接合してもよい。
【0031】
配向膜材料2としては、例えばポリビニルシンナメート、ポリイミドなどの有機膜を用いることができ、直線偏光された紫外線を照射することにより、液晶配向能を付与する。また、ポリアミック酸薄膜を用いることができ、室温以上に加熱しつつ、偏光または非偏光の放射線を照射して液晶配向性を付与する。
【0032】
(溝をインプリントにより形成する工程A2)
この溝をインプリントにより形成する工程A2では、図2(b)に示すように、成膜した配向膜材料2に液晶配向性を与えるための溝3をインプリントにより形成する。このインプリントは、図3(a)に示すように、成形型60を用いる。この成形型60は、複数のスケール溝61を有する接触面62を有する。成形型60は、実施例によっては他の材料又は材料の組み合わせを使用しても良いが、この実施の形態では、成形型60は石英板を使用して作製されるが、ニッケル(Ni)などを使用して作製してもよい。スケール溝61は、エッチングして作製しても良いし、又は、さもなければリソグラフィのような従来手段を使用して接触面62上に作製しても良い。
【0033】
このような成形型60を作成した後、図3(b)に示すように、成形型60の接触面62を配向膜材料2の表面に押し付けて転写させる。ここでは、インプリント法により、図3(c)に示すように、成形型60の接触面62のスケール溝61を配向膜材料2に転写し、配向膜材料2に液晶配向性を与えるための溝3を形成する。
【0034】
この溝3は、平行で、幅1nm以上1000nm以下であり、1μmよりも大きく且つ深さ(又は高さ)が50nm未満であることが、より確実に液晶の配向を行うことができる。
【0035】
(配向処理を行う工程A3)
この配向処理を行う工程A3では、図2(c)に示すように、溝3が形成された配向膜材料2に光照射4により液晶配向性を与える配向処理を行う。この実施の形態では、室温で、溝と直交方向に偏光紫外線を照射して配向膜の配向処理を行い、液晶表示装置用基板を得ることができる。
【0036】
このように、基板1上に、光照射により液晶配向性を発現する配向膜材料2を成膜し、さらにインプリントにより配向膜材料2に液晶配向性を与えるための溝3を形成し、光照射4による配向処理を行うことで、発塵や静電気の発生がなく、簡単な構成で確実に液晶の配向を行うことができる。
【0037】
[実施の形態]
図4は実施の形態の液晶表示装置用基板の製造方法の概略構成図、図5は液晶表示装置用基板の製造方法を説明する図である。
【0038】
この実施の形態の液晶表示装置用基板の製造方法は、図4に示すように、溝を形成するための材料を成膜する工程B1と、溝をインプリントにより形成する工程B2と、配向膜材料を成膜する工程B3と、配向処理を行う工程B4と、を有する。
【0039】
(溝を形成するための材料を成膜する工程B1)
この溝を形成するための材料を成膜する工程B1では、図5(a)に示すように、基板101上に、液晶配向性を与えるための溝を形成するための材料102を成膜する。
【0040】
基板101は、第1の実施の形態の基板1と同様に、ガラス、プラスチックフィルムを用いることができる。
【0041】
溝を形成するための材料102は、エポキシ樹脂等の架橋性樹脂を用いることができ、基板の表面に塗布して成膜される。架橋性樹脂としては、光架橋性樹脂および熱架橋性樹脂が挙げられる。また、光架橋性樹脂としてはアクリル樹脂を用いることができ、熱架橋性樹脂としてはエポキシ樹脂を用いることができる。
【0042】
(溝をインプリントにより形成する工程B2)
この溝をインプリントにより形成する工程B2では、図5(b)に示すように、成膜した溝を形成するための材料102に液晶配向性を与えるための溝103をインプリントにより形成する。インプリントは、図3の実施の形態の成形型60を用い、同様に溝を形成するための材料102に溝103を形成することができる。溝を形成するための材料102として、架橋性樹脂を用いることで、インプリントにより溝103を精度よく形成することができ、特に熱架橋性樹脂は、加熱してインプリントにより溝103を精度よく形成することができ、光架橋性樹脂は、光照射してインプリントにより溝103を精度よく形成することができ、加工方法と樹脂特性の適合性が良好になる。この溝103は、平行で、幅1nm以上1000nm以下であり、1μmよりも大きく且つ深さ(又は高さ)が50nm未満であることが、より確実に液晶の配向を行うことができる。
【0043】
(配向膜材料を成膜する工程B3)
この配向膜材料を成膜する工程B3では、図5(c)に示すように、溝103を形成した膜の上面に光照射により液晶配向性を発現する配向膜材料104を成膜する。配向膜材料104は、偏光紫外線を照射することで偏光方向と直交方向に液晶を配向する性質を持つ光分解型の配向膜材料を用いることができ、基板の表面に塗布して成膜されるが、これに限定されず、接着などにより接合してもよい。
【0044】
配向膜材料104としては、例えばポリビニルシンナメート、ポリイミドなどの有機膜を用いることができ、直線偏光された紫外線を照射することにより、液晶配向能を付与することができる。また、ポリアミック酸薄膜を用いることができ、室温以上に加熱しつつ、偏光または非偏光の放射線を照射して液晶配向性を付与することができる。
【0045】
(配向処理を行う工程B4)
この配向処理を行う工程B4では、図5(d)に示すように、成膜された配向膜材料104に光照射105により液晶配向性を与える配向処理を行う。この実施の形態では、室温で、溝と直交方向に偏光紫外線を照射して配向膜の配向処理を行い、液晶表示装置用基板を得ている。
【0046】
このように、基板101上に、液晶配向性を与えるための溝を形成するための材料102を成膜してインプリントにより溝103を形成し、さらに溝103を形成した膜の上面に配向膜材料104を成膜して光照射105による配向処理を行うことで、発塵や静電気の発生がなく、確実に液晶の配向を行うことができる。
【0047】
次に、液晶表示装置用基板の実施の形態について説明する。
[参考例の実施の形態]
この参考例の実施の形態の液晶表示装置用基板Aは、図6(a)に示すように、基板1上に、光照射により液晶配向性を発現する配向膜材料2を成膜し、成膜した配向膜材料2に液晶配向性を与えるための溝3をインプリントにより形成し、溝3が形成された配向膜材料2に光照射により液晶配向性を与える配向処理を行い、参考例の実施の形態の製造方法により製造されたものである。
【0048】
[実施の形態]
この実施の形態の液晶表示装置用基板Bは、図6(b)に示すように、基板101上に、液晶配向性を与えるための溝を形成するための材料102を成膜し、成膜した溝を形成するための材料102に液晶配向性を与えるための溝103をインプリントにより形成し、溝103を形成した膜の上面に光照射により液晶配向性を発現する配向膜材料104を成膜し、成膜された配向膜材料104に光照射により液晶配向性を与える配向処理を行い、実施の形態の製造方法により製造されたものである。
【0049】
次に、液晶表示装置の実施の形態について説明する。
[実施の形態]
この実施の形態の液晶表示装置Cは、図7(a)に示すように、液晶セル300を有する。この液晶セル300は、実施の形態の2枚の液晶表示装置用基板Aを、配向処理方向が90度になるように組み合わせ、セルギャップのセルを作製して液晶301を注入し、液晶301が等方性液体になる温度まで一旦加温し、その後室温まで冷却する処理を行い、2枚の液晶表示装置用基板Aの各面に、配向処理方向と吸収軸の方向が直交するように偏光板302を貼り合せたものである。
【0050】
[実施の形態]
この実施の形態の液晶表示装置Dは、図7(b)に示すように、液晶セル310を有する。この液晶セル310は、実施の形態の2枚の液晶表示装置用基板Bを、配向処理方向が90度になるように組み合わせ、セルギャップのセルを作製して液晶301を注入し、液晶が等方性液体になる温度まで一旦加温し、その後室温まで冷却する処理を行い、2枚の液晶表示装置用基板Bの各面に、配向処理方向と吸収軸の方向が直交するように偏光板302を貼り合せたものである。
【0051】
このように、液晶表示装置は、少なくとも、液晶セルと偏光板からなる。そして、偏光板は、少なくとも、保護膜と偏光膜からなる。一般的に、偏光板は、ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光膜をヨウ素にて染色し、延伸を行い、その両面に保護膜を積層して得られる。透過型液晶表示装置では、この偏光板を液晶セルの両側に取り付け、さらには一枚以上の光学補償シートを配置することもある。一方、反射型液晶表示装置では、反射板、液晶セル、一枚以上の光学補償シート、偏光板の順に配置するのが一般的である。液晶セルは、液晶性分子、それを封入するための二枚の基板および液晶性分子に電圧を加えるための電極層からなる。液晶セルは、液晶性分子の配向状態の違いで、ON・OFF表示を行う。そして、当該液晶セルは、透過および反射型いずれにも適用でき、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence),強誘電性液晶のような表示モードが知られている。
【0052】
次に、実施例について説明する。
【0053】
(実施例1)
透明電極として酸化インジウム錫(ITO)を成膜したガラス基板上に、偏光紫外線を照射することで偏光方向と直交方向に液晶を配向する性質を持つ光分解型の配向膜材料を塗布し、80℃のホットプレート上で1分間予備乾燥した後、180℃のオーブン中で30分間熱処理し、膜厚60nmの配向膜を得た。
【0054】
この基板をシリコーンゴムのシート上にセットし、配向膜面に、幅10nm、深さ10nmの溝を20nm周期で刻んだ石英板を温度200℃、圧力0.5MPaで押し当ててインプリントを行った。その後、室温で、溝と直交方向に偏光紫外線を照射して配向膜の配向処理を行い、液晶表示装置用基板を得た。
【0055】
2枚の液晶表示装置用基板を、配向処理方向が90度になるように組み合わせ、セルギャップ5μmのセルを作製して液晶を注入した。続いて、液晶が等方性液体になる温度まで一旦加温し、その後室温まで冷却する処理を行った。各面に、配向処理方向と吸収軸の方向が直交するように偏光板を貼り合せ、試験用の液晶表示装置とした。
【0056】
この液晶表示装置を目視および顕微鏡を用いて観察したところ、液晶の配向は良好であった。
【0057】
(実施例2)
ポリエーテルスルホン製フィルム基板上に、熱架橋樹脂の溶液を塗布し、90℃のオーブン中で15分間予備乾燥した後に160℃で60分間加熱して架橋させ膜厚1μmの塗膜を得た。
【0058】
この基板をシリコーンゴムのシート上にセットし、配向膜面に、幅100nm、深さ200nmの溝を200nm周期で刻んだ石英板を温度170℃、圧力1MPaで押し当ててインプリントを行った。
【0059】
続いて、この基板上にスパッタリングによりITOを成膜した。その際、基板が170℃以上にならないように冷却を行った。
【0060】
次に、偏光紫外線を照射することで偏光方向と平行に液晶を配向させる性質を持つ光架橋型の配向膜材料を塗布し、90℃のホットプレート上で1分間予備乾燥した後、150℃のオーブン中で90分間熱処理し、膜厚40nmの配向膜を得た。
【0061】
その後、室温で、溝と平行方向に偏光紫外線を照射して配向膜の配向処理を行い、液晶表示装置用基板を得た。
【0062】
以下実施例1と同様にして試験用の液晶表示装置を製作した。
【0063】
この液晶表示装置を目視および顕微鏡を用いて観察したところ、液晶の配向は良好であった。
【0064】
(実施例3)
ITOを成膜したポリエーテルスルホン製フィルム基板上に、光架橋樹脂の溶液を塗布し、オーブン中120℃で30分間乾燥して膜厚100nmの塗膜を得た。
【0065】
この基板をシリコーンゴムのシート上にセットし、配向膜面に、幅50nm、深さ50nmの溝を100nm周期で刻んだ石英板を温度30℃、圧力1MPaで押し当てながら石英板の裏面から紫外線を照射して光架橋樹脂を架橋させインプリントを行った。
【0066】
次に、偏光紫外線を照射することで偏光方向と平行に液晶を配向させる性質を持つ光架橋型の配向膜材料を塗布し、90℃のホットプレート上で1分間予備乾燥した後、150℃のオーブン中で90分間熱処理し、膜厚40nmの配向膜を得た。
【0067】
その後、室温で、溝と平行方向に偏光紫外線を照射して配向膜の配向処理を行い、液晶表示装置用基板を得た。
【0068】
以下実施例1と同様にして試験用の液晶表示装置を製作した。
【0069】
この液晶表示装置を目視および顕微鏡を用いて観察したところ、液晶の配向は良好であった。
【0070】
(比較例1)
インプリントを行わない以外は、実施例1と同様に実施した。液晶表示装置を顕微鏡で観察したところ、ディスクリネーションラインおよび液晶注入に伴う流動配向の痕跡が観察され、液晶の配向は不良であった。
【0071】
(比較例2)
配向膜を形成しない以外は、実施例2と同様に実施した。液晶表示装置を観察したところ流動配向の痕跡とランダムな配向が観察され、液晶の配向は不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
この発明は、例えば液晶表示パネルなどの配向に好適な液晶配向性を発現する液晶表示装置用基板の製造方法及び液晶表示装置用基板並びに液晶表示装置に適用可能であり、発塵や静電気の発生がなく、確実に液晶の配向を行うことができる。
【符号の説明】
【0073】
A1 配向膜材料を成膜する工程
A2 溝をインプリントにより形成する工程
A3 配向処理を行う工程
1 基板
2 配向膜材料
3 溝
4 光照射
B1 溝を形成するための材料を成膜する工程
B2 溝をインプリントにより形成する工程
B3 配向膜材料を成膜する工程
B4 配向処理を行う工程
101 基板
102 溝を形成するための材料
103 溝
104 配向膜材料
105 光照射
A 参考例の実施の形態の液晶表示装置用基板
B 実施の形態の液晶表示装置用基板
C 参考例の実施の形態の液晶表示装置
D 実施の形態の液晶表示装置
300,310 液晶セル
301 液晶
302 偏光板




【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、液晶配向性を与えるための溝を形成するための材料を成膜する工程と、
前記成膜した溝を形成するための材料に液晶配向性を与えるための溝をインプリントにより形成する工程と、
前記溝を形成した前記膜の上面に光照射により液晶配向性を発現する配向膜材料を成膜する工程と、
前記成膜された配向膜材料に光照射により液晶配向性を与える配向処理を行う工程と、
を有することを特徴とする液晶表示装置用基板の製造方法。
【請求項2】
前記溝は、幅1nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置用基板の製造方法。
【請求項3】
前記溝を形成するための材料が、架橋性樹脂である請求項1に記載の液晶表示装置用基板の製造方法。
【請求項4】
前記架橋性樹脂が、熱架橋性樹脂である請求項3に記載の液晶表示装置用基板の製造方法。
【請求項5】
前記架橋性樹脂が、光架橋性樹脂である請求項3に記載の液晶表示装置用基板の製造方法。
【請求項6】
前記基板が、プラスチックフィルムである請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の液晶表示装置用基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の液晶表示装置用基板の製造方法により製造されることを特徴とする液晶表示装置用基板。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶表示装置用基板を用いて製造されることを特徴とする液晶表示装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−50724(P2013−50724A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−213471(P2012−213471)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【分割の表示】特願2008−269323(P2008−269323)の分割
【原出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】