説明

液晶表示装置

【課題】 振動の多い使用環境下であっても筐体と液晶回路基板との接触安定性を維持できる液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】
表面に基板回路露出部182を露出させた液晶制御回路基板180と、液晶制御回路基板180を覆い液晶モジュール100の筐体を構成する金属製の背面カバー120と、を備えた液晶表示装置であって、背面カバー120を液晶制御回路基板180側へ固定するビス孔124と、弾性力により基板回路露出部182へ当接させる接地端子片122とが、近接した位置関係となるように、ビス孔124と接地端子片122とを背面カバー120をプレス加工して形成したことを特徴とする液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に、液晶の制御回路基板の接地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの表示装置において、電磁波シールドのため、回路基板を金属製カバーで覆うことがしばしばある。その場合、回路基板は金属製カバーに対し接地させる。このような技術として、例えば、特開2001−75077「液晶表示装置」(特許文献1)に開示される技術を挙げることができる。特許文献1には、金属筐体に弾性押圧部を形成し、この弾性押圧部を回路基板に押し当てて回路基板の接地をとる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−75077号公報(第2−3頁、図1−11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
【0004】
すなわち、弾性押圧部は、筐体と一体的に構成されるが、バネ付勢力に富む素材というよりもむしろ炭素鋼やステンレス鋼といった剛性に優れた素材からなるため、振動の多い環境下で使用される場合に、押し当てられた状態での接触圧力が一定とはならず、不安定な接触圧力なってしまうというような問題点があった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、振動の多い使用環境下であっても筐体と液晶制御回路基板との接触安定性を維持できる液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の液晶表示装置は、表面に接地電極部を露出させた液晶制御回路基板と、液晶制御回路基板を覆い液晶モジュールの筐体を構成する金属製の筐体構成体と、を備えた液晶表示装置であって、筐体構成体を液晶制御回路基板側へ固定するビス孔と、弾性力により接地電極部へ当接させる接地端子片とが、近接した位置関係となるように、当該ビス孔と接地端子片とを筐体構成体をプレス加工して形成したことを特徴とする。
【0007】
すなわち、請求項1にかかる発明は、接地端子片の根本の変位が少なくなり、接地端子片を接地電極部に効率的に圧接可能となる。なお、接地端子片は、片持ちのいわゆる板バネ様に形成されたものでも良く、根本が両側にあり中央部分を窪ませて形成したものでも良い。この窪ませ方は、中央部分を平らに形成する台形であってもよく、平らな部分を設けない円弧であってもよい。また、プレス加工(打ち抜き・折り曲げ加工)により筐体と接地端子片とが一体的に形成されるので、別途接地端子片の取付けなども不要となり、生産効率を向上させることができる。なお、言うまでもないがビス受け部分と接地電極部は相応する位置にあるものとする。
【0008】
また、請求項2に記載の液晶表示装置は、請求項1に記載の液晶表示装置において、ビス孔周囲を筐体構成面より液晶制御回路基板側へ窪ませて形成したことを特徴とする。
【0009】
すなわち、請求項2にかかる発明は、ビス孔周囲の浮き上がりを効率的に抑制し、ひいては接地端子片を接地電極部に効率的に圧接可能となる。また、ビスの頭を筐体から突出させずに済むことも可能となる。
【0010】
また、請求項3に記載の液晶表示装置は、請求項1または2に記載の液晶表示装置において、接地端子片を筐体構成面より液晶制御回路基板側へ窪ませて形成したことを特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項3にかかる発明は、筐体に凸部が形成されることなく、接地端子片を接地電極部に効率的に圧接可能となる。
【0012】
また、請求項4に記載の液晶表示装置は、請求項1、2または3に記載の液晶表示装置において、筐体構成体表面の接地端子片の近傍に凸条も併せて形成したことを特徴とする。
【0013】
すなわち、請求項4にかかる発明は、筐体のたわみを低減し接地端子片の根本の変位を少なくして接地端子片を接地電極部に効率的に圧接可能にする。
【0014】
また、請求項5に記載の液晶表示装置は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の液晶表示装置において、接地電極部と接地端子片との間に導電性弾性ブロックを挟み込んだことを特徴とする。
【0015】
すなわち、請求項5にかかる発明は、導電性弾性ブロックにより振動を吸収し、安定的な接地を実現する。なお、導電性弾性ブロックは、例えば、発泡体からなる芯材に導電性シートを巻き付けたものを用いることができる。
【0016】
また、請求項6に記載の液晶表示装置は、請求項1〜5のいずれか一つに記載の液晶表示装置において、液晶制御回路基板上に形成された電気コネクタの直近に接地電極部を配したことを特徴とする。
【0017】
すなわち、請求項6にかかる発明は、電気コネクタ直近が接地されるので、効率的なノイズ除去ができ、品質の高い液晶表示を提供可能となる。なお、ここでいう電気コネクタとは、液晶パネルに対する各種の信号を送信するフレキシブル配線板を接続するコネクタをいう。また、直近とは、設計上可能な限り近い位置をいい、実質的に他の回路が存在しないものが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、接地端子片の根本の変位が少なくなり、接地端子片を接地電極部に効率的に圧接可能となるので、振動の多い使用環境下であっても筐体と液晶制御回路基板との接触安定性を維持できる。
【0019】
また、本発明によれば、ビス孔周囲の浮き上がりを効率的に抑制し、ひいては接地端子片を接地電極部に効率的に圧接可能となる。
【0020】
また本発明によれば、筐体に凸部が形成されることなく、接地端子片を接地電極部に効率的に圧接可能となる。
【0021】
また、本発明によれば、筐体のたわみを低減し接地端子片の根本の変位を少なくして接地端子片を接地電極部に効率的に圧接可能にするので、振動の多い使用環境下であっても筐体と液晶制御回路基板との接触安定性を維持できる。
【0022】
また、本発明によれば、導電性弾性ブロックが振動を吸収し、安定的な接地を実現する。
【0023】
また、本発明によれば、電気コネクタ直近が接地されるので、効率的なノイズ除去ができ、品質の高い液晶表示を提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、使用環境下で常に振動が加わる車載用の液晶モジュールの構造について説明する。図1は、液晶モジュールが組上がった外観構成を背面から示した斜視図である。図2は、積層された液晶モジュール構成要素の展開図である。
【0025】
液晶モジュール100は、前面枠110と背面カバー120により筐体を形成し、この中に、液晶パネル130、上ケース140、光学系(プリズムシート151、拡散シート152、導光板153,光源160,および、反射板154)、下ケース170、液晶制御回路基板180が積層して構成される。
【0026】
前面枠110と背面カバー120は、ともに金属製であり、一枚板をプレス加工し、打ち抜きや折り曲げにより各種孔や凹凸および側面が形成されている。具体的には、前面枠110には、液晶パネル130用の表示窓111が切り取られ、前面から見るとベゼルを形成するように構成されている。
【0027】
背面カバー120には、液晶制御回路基板180上の電気コネクタ181に差し込むフレキシブル配線板(図示せず)を導入する切欠窓121が設けられており、この他後述する接地端子片122や、接地端子片122の基板回路露出部182(後述)への接触を間接的に付勢するビス孔124なども設けられている。
【0028】
液晶パネル130は、2枚の透明ガラス基板間に液晶が封入された液晶基板131と、液晶基板131に制御信号を送るフレキシブル配線板132からなり、液晶制御回路基板180からの制御信号により、各種情報を表示する。なお、フレキシブル配線板132は、上ケース140と光学系150と下ケース170を外側から包む形で液晶制御回路基板180上の電気コネクタ(図示されず)に接続される。
【0029】
上ケース140は、前面枠110と同程度もしくはそれ以下の巾の枠部141に、下ケース170とかみ合う複数のツメ足142が一体的に延設されている。また、上ケース140は導電フィラが混入された樹脂製であり、グランドをとることにより、光源160のノイズの影響が液晶パネル130に及ばない構成としている。従って、上ケースはノイズを遮蔽するのでいわばシールド部材ということができる。グランドのとり方については後述する。
【0030】
プリズムシート151、拡散シート152、導光板153、および反射板154は、光源160の光を効率的、かつ、均一に液晶パネル130側へ導くよう構成されている。
【0031】
光源160は、冷陰極管161と光源リード線162からなる。冷陰極管161は、液晶モジュール100の内側周縁部に配されており、上ケース140の枠部141は、この冷陰極管161に沿うように形成されている。枠部141の巾は、上ケース140のグランドが十全にとれている場合に液晶の表示品質に影響を及ぼさない程度で可能な限り狭くすることが好ましい。これにより、筐体に対する液晶の面積を広くすることができ、換言すれば、コンパクトかつ広面積の液晶表示装置を提供可能となる。
【0032】
下ケース170は、液晶制御回路基板180の台座となるとともに、上ケース140のツメ足142にはめるツメ171を対応する位置にそれぞれ設けてある。下ケース170は樹脂製であり一体的に成型され、樹脂製の上ケース140と共にツメ171を介して光学系150を密に安定的に接合する。また、下ケース170には、二カ所、液晶制御回路基板180を固定する係止爪172が設けてある(一方は図示されず)。更に、下ケース170には、背面カバー120をビス留めするビス孔173が複数設けてあり、背面カバー120を堅強に下ケース170に固定する。これにより、液晶モジュール100は縦方向(液晶面に垂直な方向)に固定されることとなる。
【0033】
液晶制御回路基板180は、外部からの信号を電気コネクタ181により入力し、基板上に設けた各種の回路等によりその入力信号を処理し液晶パネル130へ出力する。なお、電気回路上、特に電気コネクタ181付近はノイズが発生しやすいので、液晶表示品質を維持するために、電気コネクタ181のすぐ横に接地用の基板回路露出部182を設け、背面カバー120の接地端子片122にて接地する構成としている。接地の構成は後述する。
【0034】
なお、本実施の形態では、前面枠110と背面カバー120との間に上ケース140を挟み込んでビス190によって固定する接合部112,123,143が設けてある。ビス190は、更に、下ケース170の接合部174も合着するようにしている。これにより、上ケース140のグランドがとれ、光源160のノイズが遮蔽される。なお、ビスを側面側から差し込んで固定するので、液晶モジュール100は、横方向からも固定され振動に対する安定性が増すこととなる。
【0035】
次に、液晶制御回路基板180と背面カバー120との接地の構成について説明する。図3は、接地端子片122付近の接地の様子を示した断面図である。接地は、導電スポンジ200を介在させて、背面カバー120の接地端子片122を液晶制御回路基板180表面に設けた基板回路露出部182に対して、ある程度の圧力で接触させることによりおこなう。ここで、接地端子片122の弾性力の反作用により接地端子片122の根本が浮き上がりやすくなる。このため、液晶モジュール100では、接地端子片122に平行させて、接地端子片122の近傍にビス孔124を設けている。
【0036】
従って、ビス191により背面カバー120を固定することにより、接地端子片122の根本部分のたわみや浮き上がりが抑制され、間接的に接地端子片122を付勢し、長期にわたって安定的な接触が維持可能となる。なお、ビス孔124と接地端子片122は、一体的に打ち抜いて形成されるので、素材の弾性力をそのまま利用できる。更に、いずれにせよ必要なビス孔を接地端子片122の近傍に配置するだけであるので、簡便かつ、低コストで、接触性を向上させることが可能になるといえる。
【0037】
なお、導電スポンジ200は、内部をスポンジ201、外部を導電体202とした弾力性のある導電体である。内部をスポンジ201とすることにより、接触性が高まり、また、接地端子片122の弾性力が低下した場合であっても、スポンジの復元力により接触性を維持可能となるという利点が得られる。
【0038】
また、図示したように、基板回路露出部182は電気コネクタ181の直近に配してあり、また、接地端子片122とビス孔124周囲は背面カバー120の平面より窪ませて電気コネクタ181に近づけてある。従って、電気コネクタ181自身がグランド近傍に位置する関係にあるため、ノイズが少なく、高品位な液晶表示が提供可能となる。特に、電気コネクタ181とビス孔124の間に基板回路露出部182を位置させるのが好ましく、これにより、電気コネクタ181と基板回路接地部182の間にビス孔124を位置させるよりシールド効果が向上する。
【0039】
なお、接地端子片122の近くを通る凸条を背面カバー120に一体的に設けても同様の効果が得られる。図4は、凸条を設けた場合の液晶モジュールの外観構成を背面から示した斜視図である。図示したように山形の凸条125を設けることにより、背面カバー120のたわみがなくなり、接触性を維持もしくは更に向上することが可能となる。なお、この凸条125もビス孔124と接地端子片122を形成するときに同時に加工することができる。
【0040】
本発明は、車載用の他、振動の多い使用環境下となる船舶、航空機などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】液晶モジュールが組上がった外観構成を背面から示した斜視図である。
【図2】積層された液晶モジュール構成要素の展開図である。
【図3】接地端子片付近の接地の様子を示した断面図である。
【図4】凸条を設けた場合の液晶モジュールの外観構成を背面から示した斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
100 液晶モジュール
110 前面枠
111 表示窓
112,123,143 接合部
120 背面カバー
121 切欠窓
122 接地端子片
124 ビス孔
125 凸条
130 液晶パネル
131 液晶基板
132 フレキシブル配線板
140 上ケース
141 枠部
142 ツメ足
150 光学系
151 プリズムシート
152 拡散シート
153 導光板
154 反射板
160 光源
161 冷陰極管
162 光源リード線
170 下ケース
171 ツメ
172 係止爪
173 ビス孔
174 接合部
180 液晶制御回路基板
181 電気コネクタ
182 基板回路露出部
190、191 ビス
200 導電スポンジ
201 スポンジ
202 導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に接地電極部を露出させた液晶制御回路基板と、液晶制御回路基板を覆い液晶モジュールの筐体を構成する金属製の筐体構成体と、を備えた液晶表示装置であって、
筐体構成体を液晶制御回路基板側へ固定するビス孔と、弾性力により接地電極部へ当接させる接地端子片とが、近接した位置関係となるように、当該ビス孔と接地端子片とをプレス加工して形成したことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
ビス孔周囲を筐体構成面より液晶制御回路基板側へ窪ませて形成したことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
接地端子片を筐体構成面より液晶制御回路基板側へ窪ませて形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
筐体構成体表面の接地端子片の近傍に凸条も併せて形成したことを特徴とする請求項1、2または3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
接地電極部と接地端子片との間に導電性弾性ブロックを挟み込んだことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の液晶表示装置。
【請求項6】
液晶制御回路基板上に形成された電気コネクタの直近に接地電極部を配したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−10968(P2006−10968A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186742(P2004−186742)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】