説明

液晶表示装置

【課題】液晶表示装置において電源遮断後の残像を低減する技術を提供する。
【解決手段】液晶表示装置10は、例えばTFTアクティブマトリックス液晶表示装置であり、より具体的には液晶モニタや液晶テレビである。液晶表示装置10は、主制御部50と、表示パネル90と、表示パネル90の駆動回路80と、電源回路部40とを備えている。主制御部50は、各構成要素を統括的に制御する。電源回路部40は、メイン電源42と、パネル電源44と、バックアップ用電源46と、遮断検出部48とを備える。
バックアップ用電源46は、メイン電源42がオフされたときに、黒映像を挿入する処理のために、20ms程度だけ駆動回路80を駆動させる電源として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置として代表的なものとして、アクティブマトリックス液晶表示装置がある。この液晶表示装置は、液晶表示素子を用いており、軽量、薄型および低消費電力などの特徴から、テレビを中心として各種電子機器などの様々な分野に用いられている。
【0003】
液晶表示素子としては、薄膜トランジスタ(TFT)により駆動される各画素がマトリクス状に形成された表示領域を備えたアクティブマトリクス型のものがある。この液晶表示素子は、アレイ基板と対向基板とを対向配置し、これら基板間に液晶層を介在して構成されている。
【0004】
また、表示領域には、ゲートドライバに電気的に接続された走査線と、ソースドライバに電気的に接続された信号線とが画素の間に沿って格子状に配設され、これら走査線と信号線との交点近傍に、これら走査線および信号線にそれぞれ電気的に接続された薄膜トランジスタと保持容量とが配設されている。さらに、画素は、アレイ基板側に配設された画素電極と、対向基板側に配設された共通基板との間に液晶層が位置して構成されている。
【0005】
そして、ゲートドライバに入力される走査線駆動信号と、ソースドライバに入力される信号線駆動信号とに基づいて、走査線と信号線との交点近傍に位置する薄膜トランジスタがオンオフされ、この薄膜トランジスタのオンオフにより各画素の画素電極に印加される電圧が変化することで、各画素の表示状態が変化する。
【0006】
しかしながら、このような液晶表示素子では、電源が遮断された後に、保持容量および液晶容量に電荷が残ることで、電源を遮断する直前まで画素により表示されていた画像が残像として表示されてしまうおそれがある。
【0007】
そこで、そのような残像対策として様々な技術が提案されている。例えば、電源遮断時の電圧降下を検出して、放電手段により電荷をグランドに強制的に放電する技術がある(特許文献1参照)。具体的には、電源遮断時の電圧降下を電圧降下検出手段で検出した際に信号生成手段により信号を生成する。この信号に基づき、初期化手段が共通電極、保持容量および信号線のそれぞれを同電位とするとともに、放電手段が共通電極および保持容量の電荷をグランドへと強制的に放電する。各画素の液晶容量および保持容量に保持した電荷を、信号線との間に電位差を生じることなく放電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−212688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に開示の技術は、表示パネルによっては適用できないことがある。表示パネル自体に回路を設けたりするなどの構造が必要であり、表示パネルとの連携が必須ともいる。したがって、そのような仕様(回路)の表示パネル以外では現実的に利用できないという課題があり、別の技術が求められていた。
【0010】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、液晶表示装置において電源遮断後の残像を低減する技術を提供することにある。
【0011】
本発明に係る装置は、液晶素子を備える表示パネルと、前記表示パネルを駆動する駆動手段と、メイン電源がオフされたことを検知する遮断検出手段と、前記遮断検出手段が前記メイン電源のオフへの切り替わりを検知したときに、前記表示パネルへ電力を供給するバックアップ用電源と、を備え、前記表示パネルのタイミングコントローラは、前記遮断検出手段の検知結果を取得して動作を初期化し、前記駆動手段に対して書き込み処理を強制的に中断して前記表示パネルの先頭ラインから黒データを書き込む為のゲートスタートパルス信号を出力し、前記表示パネルの前記駆動手段は、前記メイン電源がオフされた後に所定フレームだけ、前記バックアップ用電源の電力を用いて、前記黒データによる黒映像を出力する。
また、前記駆動手段は、前記バックアップ用電源を用いて、1フレーム分の黒映像を出力してもよい。
また、前記バックアップ用電源の電力容量は、出力する黒映像のフレーム数に対応した容量に設定されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液晶表示装置において電源遮断後の残像を低減する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る、表示装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る、表示装置において電源オフされたときの処理を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施する形態(以下、単に「実施形態」という)を図面を参照して説明する。本実施形態の概要は、液晶表示装置において、メイン電源遮断時に20ms程度電源を保持するバックアップ電源を用意する。そして電源遮断時に電圧降下を検出し、検知信号をトリガーにバックアップ電源が起動し、パネル駆動用回路にて液晶画面に黒画面を表示するよう液晶を駆動する。ここで、瞬停(電源遮断時に電圧降下)を検出した際に、パネルへ黒データを書き込むように設定を変更するのだが、映像データがバッファーに入っている等の理由によって、パネルへの黒書き込みが次のフレームからになる場合もある。その場合、黒書き込みまで最大1フレーム16.6msかかることになり、書き込み完了までの時間が最大33msと増大してしまう。そこで、瞬停が検出された時点で、データ書き込み処理を強制的にリセットし、パネルの先頭から即時書き込み開始することで、黒データの書き込み時間を最大16.6msに短縮する。このような処理を行うことで、電荷が残留した場合でも、残像がユーザに認知されないようにする。
【0015】
図1は、本実施形態に係る液晶表示装置10の概略構成を示す機能ブロック図であり、主に駆動回路80、表示パネル90及び電源回路部40に着目して示している。この液晶表示装置10は、例えばTFTアクティブマトリックス液晶表示装置であり、より具体的には液晶モニタや液晶テレビである。液晶表示装置10は、主制御部50と、表示パネル90と、表示パネル90の駆動回路80と、電源回路部40とを備えている。主制御部50は、各構成要素を統括的に制御する。さらに、主制御部50からタイミング・コントローラ12に対して、本実施形態で特徴的な電源遮断時の黒挿入処理を行う為の制御信号線として瞬停リセット信号線51が備わる。
【0016】
駆動回路80は、画像データ回路11と、タイミング・コントローラ12と、ソースドライバ13と、ゲートドライバ14とを備える。
【0017】
画像データ回路11は、外部から入力されるクロック信号に基づいて水平同期信号、垂直同期信号および輝度データであるRGBのデータ信号を生成し、各同期信号はタイミング・コントローラ12へ、データ信号はソースドライバ13に出力する。
【0018】
タイミング・コントローラ12は、ソースドライバ13及びゲートドライバ14の動作のタイミング制御を行う。さらに、タイミング・コントローラ12からゲートドライバ14へ、GSP(ゲートスタートパルス)信号線19が設けられている。なお、GSP信号線19として、専用線が設けられてもよいし、通常のコントロール信号が重畳される信号線が利用されてもよい。そして、主制御部50から瞬停リセット信号線51を介してリセット信号(パルス信号)が入力されると、タイミング動作を初期化して、GSP信号線19からGSP信号(パルス信号)を出力する。
【0019】
ソースドライバ13は、パネル電源44から出力された駆動電圧を、ゲートドライバ14の走査に同期して表示内容、つまり輝度データに対応した信号電圧をデータ線DLに重畳して出力する。
【0020】
ゲートドライバ14は、タイミング・コントローラ12から出力された駆動電圧を、所定の制御タイミングに基づいてゲート線GLに走査パルスとして印加し、そのゲート線GLに接続されたスイッチング素子であるデータ設定用トランジスタ25を順次選択状態にする。ソースドライバ13及びゲートドライバ14の走査は、上述の通りタイミング・コントローラ12によってタイミング制御される。また、タイミング・コントローラ12からGSP信号線19を介してGSP信号(オンレベル)が入力すると、データ設定用トランジスタ25へのデータの書き込み処理を強制的にリセットして、パネル先頭ラインから黒データのデータの書き込み処理を行う。
【0021】
表示パネル90は、アクティブマトリックス方式の液晶表示パネルであって、マトリックス状にセル70が配置されている。なお、ここでは、3×3の9セルについて例示している。セル70は、液晶電極20と、データ設定用トランジスタ25とを備えている。なお、ここでは最もシンプルな構造について例示している。
【0022】
データ設定用トランジスタ25は、スイッチング素子として機能するTFT(Thin Film Transistor)であり、ゲートはゲート線GLに接続されている。また、ソースはデータ線DLに接続され、コモンCOMに接続されている。
【0023】
液晶電極20は、データ設定用トランジスタ25に接続されるプラス電極と、全面に対向電極(コモンCOM)が形成されるコモン電極とが液晶層を挟んで構成される。
【0024】
電源回路部40は、メイン電源42と、パネル電源44と、バックアップ用電源46と、遮断検出部48とを備える。なお、ここでは各構成要素に供給するここの電源として、パネル電源44についてのみ例示しているが、当然に、他の構成要素等に対する電源がそれぞれに用意される。
【0025】
メイン電源42は、外部の交流電源を直流に変換して、各構成要素に電力を供給する。パネル電源44は、メイン電源42から供給された電力を所望の電圧及び電流に変換して、駆動回路80に供給する。バックアップ用電源46は、メイン電源42がオフされたときに、黒映像を挿入する処理のために、20ms程度だけ駆動回路80を駆動させる電源として機能する。ここでは、バックアップ用電源46は、メイン電源42がオフしたときに、駆動回路80に電力供給するパネル電源44に対してバックアップ用の電力を供給する。バックアップ用電源46として、簡単な構成のものでは、例えば、コンデンサを用いることができる。
【0026】
遮断検出部48は、メイン電源42がオフされた信号(遮断検出信号)を検知し、バックアップ用電源46の電力をパネル電源44に出力する。また、検知結果を主制御部50に通知する。遮断検出信号の検知結果を取得した主制御部50は、瞬停リセット信号線51にリセット信号(オンレベル)を重畳して出力する。なお、検知結果は、主制御部50を介さずに遮断検出部48からタイミング・コントローラ12へ直接通知されてもよい。
【0027】
以上の構成による動作を、上述の図2のタイミングチャートをもとに説明する。
第1の時刻t1までの期間は、メイン電源42がオンの状態である。第1の時刻t1において、ユーザ等によってオフされると、遮断検出部48は、その旨を検知する。遮断検出部48は、検知結果を主制御部50に通知するとともに、バックアップ用電源46から駆動回路80への電力供給処理を開始する。また、主制御部50は、液晶表示装置10をオフする処理を開始し、さらに瞬停リセット信号線51にオンレベルのリセット信号を重畳し、タイミング・コントローラ12に出力する。
【0028】
第2の時刻t2になり、実際にバックアップ用電源46がオンして電力供給が開始すると、画像データ回路11及びソースドライバ13は、映像信号として通常映像を終了させ、黒映像に対応する信号を出力する。より具体的には、主制御部50からリセット信号を取得したタイミング・コントローラ12は、データ設定用トランジスタ25へのデータの書き込み処理を強制的にリセットして、パネル先頭ラインから黒データのデータの書き込み処理を行うための制御信号であるGSP信号をGSP信号線19に出力する。なお、第1の時刻t1と第2の時刻t2の期間は、処理工程が次に移ることに伴うもので、実質的にゼロである。
【0029】
そして、第2の時刻t2から所定時間、例えば20ms程度経過した第3の時刻t3になると、バックアップ用電源46はオフする。ここで黒映像を出力する期間(例えば上記20ms)は、黒映像を1フレームだけ出力する期間に対応する。そして後、パネル電源44への電力供給が全て停止する。したがって、駆動回路80への電力供給が停止するため、駆動回路80の動作が停止し、画像データ回路11及びソースドライバ13から黒映像に対応する信号の出力が停止する。なお、黒映像を1フレームだけでなく、複数フレーム分だけ出力する場合は、そのフレーム数に対応した時間だけ、バックアップ用電源46から電力が供給される。つまり、出力するフレーム数に応じて必要最低限の電力容量が決定される。ただし、電力容量に若干のバッファが設定されてもよい。
【0030】
以上のような構成及び処理によって、最後に黒映像が表示されて液晶表示装置10がオフすることになるため、仮に、液晶電極20に電荷が残留した場合であっても、ユーザによって残像が認識されることがなくなる。また、データ設定用トランジスタ25へデータ書き込み中であったりバッファにデータが保持されている場合であっても、強制的にリセットを行うことで、速やかに黒データの書き込み処理に移行することができる。
【0031】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0032】
10 液晶表示装置
11 画像データ回路
12 タイミング・コントローラ
13 ソースドライバ
14 ゲートドライバ
19 GSP信号線
20 液晶電極
25 データ設定用トランジスタ
40 電源回路部
42 メイン電源
44 パネル電源
46 バックアップ用電源
48 遮断検出部
50 主制御部
51 瞬停リセット信号線
70 セル
80 駆動回路
90 表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶素子を備える表示パネルと、
前記表示パネルを駆動する駆動手段と、
メイン電源がオフされたことを検知する遮断検出手段と、
前記遮断検出手段が前記メイン電源のオフへの切り替わりを検知したときに、前記表示パネルへ電力を供給するバックアップ用電源と、
を備え、
前記表示パネルのタイミングコントローラは、前記遮断検出手段の検知結果を取得して動作を初期化し、前記駆動手段に対して書き込み処理を強制的に中断して前記表示パネルの先頭ラインから黒データを書き込む為のゲートスタートパルス信号を出力し、
前記表示パネルの前記駆動手段は、前記メイン電源がオフされた後に所定フレームだけ、前記バックアップ用電源の電力を用いて、前記黒データによる黒映像を出力することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記バックアップ用電源を用いて、1フレーム分の黒映像を出力することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記バックアップ用電源の電力容量は、出力する黒映像のフレーム数に対応した容量に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−133182(P2012−133182A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285887(P2010−285887)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】