説明

液晶表示装置

【課題】偏光板の剥がれを改善する。
【解決手段】 液晶層をガラス基板内に封入した四辺形の表示面110を有する液晶セル11と、表示セルの両面に粘着層19,20により貼着けられた偏光板14,15とを具備する液晶表示装置において、表示面において吸収軸方向の最大寸法が大きい偏光子を有する偏光板15は、吸収軸方向の最大寸法が小さい偏光子を有する偏光板14よりも、ガラス基板密着力の高い粘着層20で貼着けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
偏光板の剥がれを抑制するようにした液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は携帯電話、スマートフォンやタブレット型などの携帯端末、TV、パーソナルコンピュータやカーナビゲーションなどの表示装置として広く利用されている。液晶表示装置はTN、IPS、VA、OCB等の多くのモードで動作するが、それぞれのモードの液晶表示素子の両面に偏光板をその吸収軸が直交するように貼り付けられている。偏光板は例えばPVAフィルムを一方向に延伸させヨウ素を取り込んだ延伸フィルムを偏光子とし、TACのような透明フィルムを支持フィルムにして両面を挟み粘着剤で接着して構成されている。PVAフィルムの延伸方向が偏光子の吸収軸になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-279323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
延伸フィルムはヨウ素取り込み時に一方向にその長さの数倍の比率で延伸させたものであり、得られる偏光子フィルムの両面を支持フィルムで補強しても、延伸方向の収縮などの恐れがある。とくに高温などの過酷な環境下で収縮が生じて偏光板と液晶セルの間に剥がれが生じる可能性がある。偏光子の吸収軸の寸法が長いほどこの傾向が大きく特に表示面のコーナーで剥れが生じて表示品位を低下させる。したがって熱に対してさらに耐久性に優れた液晶表示装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態は上記した課題を解決しようとするものである。
【0006】
一実施形態の液晶表示装置は、第2面側から入射し透過する光を制御して第1面側に出射し液晶層をガラス基板内に封入した四辺形の表示面を有する液晶セルと、この液晶セルの前記第1面側と前記第2の面側に粘着層により貼着された偏光板とを具備する液晶表示装置において、前記第1の面側の偏光板と前記第2の面側の偏光板のうち、吸収軸方向の最大寸法が大きい偏光子を有する偏光板は、吸収軸方向の最大寸法が小さい偏光子を有する偏光板よりも、対ガラス基板密着力の高い粘着層で貼着けられている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施形態による液晶表示装置の概略断面図。
【図2】一実施形態の偏光板の吸収軸および位相差板の遅相軸の配置を説明する分解図。
【図3】一実施形態による液晶表示装置の液晶セルを説明する概略断面図。
【図4】一実施形態の偏光板を説明する平面略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照して実施形態の液晶表示装置を説明する。図1に示すように、液晶表示装置10は液晶セル11を具備している。液晶セル11は例えば垂直配向(VA)モードで動作し、リア側(背面、第2の面)13から入射した光を透過制御してフロント側(表面、第1の面)12から出射させる機能を有している。この液晶セルは多数の画素を有する四辺形の表示面110を有しており、フロント側12およびリア側13に2枚の偏光板14,15を配置し貼着している。
【0009】
フロント側偏光板14は偏光子となる偏光フィルム14Aと偏光フィルムの両面に積層された支持フィルム14B,14Cとからなる。またリア側偏光板15は偏光子である偏光フィルム15Aと偏光フィルムの両面に積層された支持フィルム15B,15Cとからなる。両偏光板の各支持フィルムの一方は位相差フィルム14C,15Cとなっており、この位相差フィルム14C,15C側を液晶セル11側に向けて配置している。したがってフロント側の位相差フィルム14Cとリア側の位相差フィルム15Cとが液晶セル11を挟んで対峙する配置になる。なお位相差フィルムは偏光フィルムを支持する支持フィルムではなく別個に配置してもよい。
【0010】
偏光板14,15と液晶セル11間の接着に粘着剤を用い、フロント側の粘着剤19とリア側の粘着剤20を液晶基板に対して高温時の粘着力が異なるようにしている。偏光板14,15と液晶セル11の基板間の接着はフィルム間の内部応力を緩和するために柔軟性を持つ粘着剤が用いられ応力ひずみを緩和している。しかし高温下で延伸フィルムの延伸方向の収縮が大きく吸収軸が表示面コーナー方向に向く偏光板においてはコーナー部に応力が集中して反りや剥がれなどが発生する可能性が大きい。本実施形態は偏光フィルムの吸収軸が表示面のコーナーやその近くに向くように配置された側の偏光板の粘着剤の密着力を、吸収軸がクロスニコル配置され吸収軸が相対的に表示面コーナー方向から遠い角度に配置された偏光板の粘着剤の密着力よりも高めたものである。密着力を高めると粘着剤の弾性力が強まり応力緩和の効果が減少するが、一方では偏光板に生じる応力を分散するので、表示面コーナー領域の応力集中を減らすことができる。
【0011】
図3に示すように、液晶セル11はVAモードで動作し、2枚のガラス基板21,22を有して、リア側のガラス基板22内側に画素ごとにマトリクス配置された透明な画素電極23が形成されている。フロント側のガラス基板21内側に画素電極23に対応してマルチドメイン形成のための長方形状の非導電スリット24を形成した透明な対向電極25が配置される。対向電極25とフロント側のガラス基板21間にカラーフィルタ層26が形成されている。
【0012】
それぞれの電極23,25表面に配向処理が施され、誘電異方性が負の液晶層27が充填される。電極23,25に電圧無印加時は液晶層の液晶分子が垂直配向され、電圧を印加すると液晶分子が対向電極のスリット24を境にして水平方向に傾斜する。
【0013】
液晶セルのリア側にバックライト28が配置され、バックライトの光がリア側の偏光板15の偏光フィルム15Aを透過して直線偏光になり、つづいて1/4波長位相差フィルム15Cで円偏光にされた後、液晶セル11の液晶分子の傾きで変調され、変調制御に対応してフロント側の偏光板14を透過する光量が制御される。
【0014】
図2は携帯端末において液晶セル11が例えばアスペクト比が16:9の垂直方向に長い長方形の画像表示面の場合の偏光板の吸収軸と遅相軸を示したもので、図示向かって左がフロント側の偏光板14、右がリア側の偏光板15を示している。液晶セルは対向電極のスリット24が表示面の垂直方向に配列されている。
【0015】
位相差フィルムは二軸性位相差フィルムで、垂直方向屈折率Nz=1.6、液晶セルの液晶配向は垂直配向でΔn=0.1、表示部のセルギャップは4μmである。
【0016】
フロント側偏光板14の偏光子を形成する偏光フィルム14Aの吸収軸14A1を液晶セル11の水平方向111に対し反時計廻りに26°としている。この偏光フィルムに貼り合わせる位相差フィルム14Cの遅相軸を161゜(吸収軸90°+45°の角度)で配置する。一方、リア側偏光板15の偏光フィルム15Aの吸収軸15A1はフロント側の偏光フィルム14Aの吸収軸14A1とクロスニコルで90度交差する116°となり、同位相差フィルム15Cの遅相軸は71°の配置になる。偏光板の吸収軸の傾き角は表示セルの構造により選択されるが、一方の偏光板の吸収軸は表示面の水平方向に対して20°〜30°であり、両偏光板の吸収軸は表示面の垂直方向に線対称配置ではない。このため両吸収軸14A1,15A1は位相差フィルムや表示面の各辺に対して平行または垂直ではない。
【0017】
偏光子の製造は、一般にPVAフィルムをヨウ素水溶液中で延伸させてヨウ素を吸着し延伸方向に吸収軸をもつようにしている。また位相差フィルムの遅相軸もTACフィルムやポリカーボネートフィルムなどの樹脂フィルムを延伸させて形成する。
【0018】
一実施例として、図1および図4において、偏光板は支持フィルムにTACフィルム、偏光子に延伸PVAフィルム、位相差フィルムに延伸TACフィルムを用いる。各フィルムの接着面はケン化処理され、フィルム同士がケン化されたPVAの水溶液の粘着剤で接着されている。
【0019】
図4は偏光板面と吸収軸の関係を示すもので、(a)はフロント側偏光板、(b)はリア側偏光板を示している。フロント側偏光板の吸収軸の傾きは26°であり、偏光板の辺から辺までの最長寸法をL1、リア側偏光板の吸収軸の傾きは116°であり、辺から辺までの最長寸法をL2とすると、L2>L1である。リア側偏光板15の吸収軸15A1、遅相軸15C1ともに表示面中心からのコーナーに向かう対角に近い角度で配置される。このように本実施形態のリア側の偏光板は、吸収軸方向の最大寸法が大きい、言い換えると延伸フィルムの延伸方向の最大寸法の大きい方向が表示面の対角近くに設定されている。
【0020】
このため、室温を越える高温時、すなわち60℃〜100℃というような高温時での偏光板の収縮が最長寸法L2のリア側偏光板で発生する傾向が大きくなる。
【0021】
液晶セルの基板に偏光板を接着する粘着剤は、偏光板を構成するフィルムの内部応力を吸収緩和する機能を有するものであるが、図1ないし図4の構成において、液晶セルのフロント側とリア側で偏光板をガラス基板に接着する粘着剤の高温時対ガラス基板密着力を異ならせている。
【0022】
本実施形態は表示面に対して吸収軸方向の最大寸法が大きい偏光フィルムを有する偏光板の高温時の対ガラス基板密着力P2が、吸収軸方向の最大寸法が小さい偏光フィルムを有する偏光板の対ガラス基板密着力P1よりも高い粘着剤を使用する。この粘着剤は高温時での弾性率が高く偏光板の内部応力を粘着剤およびガラス基板で受けて分散する。したがって表示面のコーナー近傍に集中する偏光板の内部応力が減少して剥がれが抑制される。
【0023】
例えば粘着層として、リア側偏光板の接着にアクリル系樹脂に架橋剤とシリコンカップリング剤を混合した粘着剤を用いた。フロント側偏光板の粘着剤はリア側粘着剤に導電性を付与するTiやZnの金属酸化物粉末を混入したものを用いた。金属酸化物粉末を混入することで密着力が若干低下する。
【0024】
樹脂フィルムの積層構造の偏光板は帯電しやすく、液晶配向に影響を与えるので、帯電防止のために帯電を生じやすい液晶セル面側例えばフロント側に帯電防止膜を形成するのが好ましく、一実施例では粘着剤に10Ω/□〜1010Ω/□程度の導電性を付与している。なおリア側の粘着剤も必要に応じて導電性にすることができる。
【0025】
以上実施形態としてVAモードの液晶表示セルについて説明したが、TNモードやIPSモードなどの他の液晶セルについても同様に適用することができる。
【0026】
また以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
11…液晶セル、14…フロント側(第1面側)偏光板、14A…偏光子(偏光フィルム)、14A1…吸収軸、14C…位相差フィルム、14C1…遅相軸、15…リア側(第2面側)偏光板、15A…偏光子(偏光フィルム)、15A1…吸収軸、15C…位相差フィルム、15C1…遅相軸、21,22…ガラス基板、23,25…電極、24…スリット、27…液晶層、28…バックライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2面側から入射し透過する光を制御して第1面側に出射し液晶層をガラス基板内に封入した四辺形の表示面を有する液晶セルと、吸収軸を有する偏光子を有し前記液晶セルの前記第1面側に粘着層により貼着された第1偏光板と、吸収軸を有する偏光子を有し前記液晶セルの前記第2面側に粘着層により貼着された第2偏光板とを具備する液晶表示装置において、前記第1偏光板と前記第2偏光板のうち、前記表示面において吸収軸方向の最大寸法が大きい偏光子を有する偏光板は、吸収軸方向の最大寸法が小さい偏光子を有する偏光板よりも、ガラス基板密着力の高い粘着層で貼着けられていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記表示面において吸収軸方向の最大寸法が大きい偏光子を有する偏光板の前記粘着層は、前記吸収軸方向の最大寸法が小さい偏光子を有する偏光板の粘着層よりも、前記偏光子が収縮する温度範囲での密着力が高いことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記両偏光板の粘着層のうち少なくとも一方の粘着層が導電性あるいは帯電防止処理が施されている請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記吸収軸方向の最大寸法が小さい偏光子を有する偏光板の前記粘着層が導電性あるいは帯電防止処理が施されている請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記液晶セルは前記液晶層を挟んで一対の電極が形成され、いずれか一方の電極に画素ごとに非導電スリットが形成されている請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第1偏光板の前記偏光子と前記液晶セルとの間および前記第2偏光板の前記偏光子と前記液晶セルとの間に位相差フィルムが配置され、かつ前記第1偏光板の前記偏光子の吸収軸と前記第2偏光板の前記偏光子の吸収軸が90度交差し前記位相差フィルムの各辺に対し平行または垂直でない配置とされていることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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