説明

液晶表示装置

【目的】 広い視角に渡って、良好なコントラストと優れた階調度を有す、マルチドメイン・ホメオトロピック液晶表示装置及びマルチドメイン・ツイスト・ネマティック液晶表示装置を提供すること。
【構成】 共通電極は、その中に開き部分のパターンを有し、それによって、表示装置の表示素子が1個以上の液晶ドメインを有すことになる。該空き部分のパターンが置かれているところ以外の該共通電極は連続的である。該液晶表示装置は、アクティブ・マトリクス方式の1つである。それは、ゲート・ラインとデータ・ラインが1つの基板上に配置され、クロスオーバー領域において互いに絶縁されているクロスオーバー型表示装置、あるいはゲート・ライン、画素電極、能動素子が1つの基板上に配置され、他の基板上に本発明による空き部分のパターンを持ったデータ・ラインを有す非クロスオーバー型表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶表示装置に関するものである。特に、マルチドメインを有すホメオトロピック液晶表示装置及びツイスト・ネマティック液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】平面パネル表示装置は、コンピュータ技術分野において及び情報の表示装置が重視される他の技術分野において、益々その重要度が増してきている。この形式の表示装置は、重量、大きさを小さくすることができ、従って情報を表示するためのコストを低減することができるという特徴がある。
【0003】液晶表示装置は、ほぼ全ての実用的な平面パネル表示装置に最終的に利用されることになる技術としては最も有望なものと考えられる。小型カラーテレビ及びノートブック型あるいはラップトップ型コンピュータに使用されるような大きさのモノクロ平面パネル表示装置において大きな成果を上げてきた。しかしながら、どのような角度から視ても高画質が得られる真空管表示装置と違って、汎用的な液晶表示装置は、表示装置の面に垂直な方向以外の角度から視た場合は、コントラストあるいはコントラスト・リバースが損なわれてしまう。この原因は、平面パネル表示装置を形成する液晶表示装置セル内の液晶材料分子と光との相互作用である。液晶材料分子と垂直以外の入射角で表示装置セルを通過する光との相互作用は、垂直に入射する光とのそれとは異なる。光が透過する(白色)状態と透過しない(黒色)状態との間のコントラストが大幅に低下するため、そのような表示装置を使用することは、平面パネル型テレビ及びコンピュータ用の大型画面など、多くの用途において望ましくないことになる。
【0004】この問題を解決するべく、多くの試みがなされてきた。例えば、一方の基板(その上に能動素子を有していない)の断面を三角状あるいは鋸状に形成することによって、異なる領域間のコントラスト比が平均化されるようにしている。この方法は、製造コストが高くなるため、実用的解決法とは考えられていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の主要な目的は、広い視角に渡って高いコントラストが得られる液晶表示装置を提供することである。
【0006】本発明の別の目的は、表示素子が明状態にあるときは、相対的に高い割合の光が表示装置を透過する、液晶表示装置を提供することである。
【0007】本発明のさらに別の目的は、ドメインの境界が確実に固定されており、かつ局所的なセル条件の変動によって変化しないようなマルチドメイン・セルを有す液晶表示装置を提供することである。
【0008】本発明のさらに別の目的は、アクティブ・マトリクス液晶表示装置において上記の目的を実現することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明による液晶表示装置は、複数の電極をその上に有す第1の基板と、共通電極をその上に有す第2の基板と、該第1の基板と該第2の基板との間に入れられている液晶材料とからなる。共通電極は、空き部分のあるパターンを有し、それによって表示装置の表示素子が一つ以上の液晶ドメインを有すことができる。共通電極は、空き部分のあるパターン以外のところでは連続している。
【0010】さらに、本発明による液晶表示装置は、アクティブ・マトリクス方式の一つである。それは、マルチドメイン・ホメオトロピック液晶表示装置か、あるいはマルチドメイン・ツイスト・ネマチック液晶表示装置でもよい。ゲート・ラインとデータ・ラインが一方の基板状に置かれており、かつクロスオーバー領域において互いに絶縁されているクロスオーバー型表示装置でもよく、あるいはゲート・ライン、画素電極、能動素子が一方の基板上にあり、対向する基板上に本発明による空きのあるパターンを有すデータ・ラインがある、非クロスオーバー型表示装置でもよい。
【0011】
【実施例】図1を参照すると、汎用的な液晶表示装置20は、ガラス等の透明な材料で形成される第1の基板22と第2の基板24を含む。これら2枚の基板は、非常に精確に互いに平行になるよう配置されており、通常、ほぼ4から7ミクロンの距離で互いに離れている。そして2枚の基板間に閉じられた内部空間を形成するため、それらの端部(図示せず)は封止されている。基板24は、その上に連続的な電極28が蒸着されており、この電極はパターンが無いかまたは空き部分のあるパターンを有し、好ましくは、電気伝導性である酸化錫インジウム(ITO)等の透明薄膜層で形成されているものである。基板22は、その上にアレー状電極26が蒸着されており、この電極は液晶表示装置の画素を形成するものである。基板22上にはさらに、電極膜が蒸着されていない選択された領域に、ダイオードまたは薄膜トランジスタ(TFT)30等の半導体素子が形成されている。公知のように、1つの画素のために1個またはそれ以上のTFT30が設けられている。それぞれのTFT30は、導電性のゲート・ライン32及び図示されていないデータ・ラインによって制御される。それらのラインは、基板22上に蒸着されており、それぞれのTFT30のソースがそれぞれの電極26に電気的に接続されている以外は、電極26とは電気的に接続されないようになっている。さらにゲート・ライン32及びデータ・ライン(図示せず)は、クロスオーバー領域において互いに絶縁されている。
【0012】液晶材料36は、基板22と24の間の空間を満たしている。この材料の特性は、液晶表示装置20の動作モードに依存しており、これについては以下においてさらに詳細に説明する。
【0013】液晶表示装置の内面を、それぞれ配向層38及び40で被覆することによって、液晶材料36の分子の境界条件を与えてもよい。
【0014】ホメオトロピック型液晶表示装置の場合は、基板表面の境界近傍の液晶分子は、その長軸が基板表面に対して僅かなプレティルト角をもってほぼ垂直になるように配向しており、通常その傾きは基板に垂直な方向から1度か2度ずれた程度である。ツイスト・ネマティック型液晶表示装置の場合は、基板表面の境界近傍の液晶分子は、その長軸が基板表面に対して、僅かなプレティルト角(やはり1度か2度程度の傾き)をもってほぼ平行になるように配向している。
【0015】ある種の液晶表示装置については、基板22及び24の外面上に、光学的補償膜42及び44が設置されている。最後に、偏光膜46及び48がそれぞれ、光学的補償膜42及び44を被覆している。
【0016】図1に記載されている形式の汎用的な液晶表示装置は、パネル底面(基板22側)に置かれた光源(図示せず)によって照らされており、パネル上面(基板24側)から視ることになる。
【0017】本発明の様々な実施例である電極パターンは、図面及び以下に記載されている。
【0018】図2から図9には、マルチドメイン・ホメオトロピック・セルによる液晶表示装置の様々な電極の実施例が記載されている。簡潔にするために、TFT、ゲート・ラインあるいはデータ・ラインは示されていない。本発明においては、ホメオトロピック・セルは、電極間に電場が印加されていないときに、基板に対して垂直な方向に液晶材料の分子が配向することに依っている。汎用的な液晶表示装置とは対照的に、僅かなプレティルトが不必要であり、従ってラビング処理も行われない。この液晶表示装置は、誘電異方性が負でなければならない。典型的な材料としては、ドイツのE.Merck Darmstadt社によって製造されているZLI−4788あるいはZLI−2857があり、EMインダストリ社を通して米国でも入手できる。
【0019】技術的に知られているように、ホメオトロピック・セルは、基板に対して垂直以外の方向から液晶表示装置に入射してくる光の漏れを低減するための光学的補償膜を使用している。最も効果を上げるために、液晶表示装置セルにおける液晶材料層の厚さ及び複屈折(常光線に対する屈折率と異常光線に対する屈折率の差)が、補償膜の厚さ及び複屈折と同じになるように作られている。
【0020】ホメオトロピック液晶表示装置のセルの電極間に電場を印加すると、それによって分子は実質的に電場に垂直な方向に配列する。本発明は、画素電極の端部におけるのと同様に、電極の中の空き部分において横向きの電場を発生するような電極形状を形成することによって、この効果を利用してマルチドメイン液晶表示装置セルを得ている。このドメインの特性は、電極のパターンの形状によって決まる。
【0021】図2から図8では、底面電極(下側の基板上の電極であり、薄膜トランジスタも搭載している)は破線で示されている。一方、画素の上面電極用のパターンは、実線で示されている。しかしながら、全ての画素のための上面電極を形成しているITO蒸着膜は、従来の技術においては連続的であるが、本発明の場合はそれぞれの画素のために少なくとも一つの空き部分をその中に有し、それ以外の電極部分は、表示領域全体に渡って連続していると理解される。
【0022】図2を参照すると、画素の底面電極60は連続的な正方形(ゲート・ライン及びデータ・ライン(図示せず)によって4辺が隣接する画素電極と分離されているが)であるのに対し、画素の上面電極62を形成する共通電極の部分は、X型の切り取り部64をその中に形成しており、Xの末端は画素の4つの角に向いている。即ち、Xを形成している線は画素の辺に対して45度の角度に配置されている。切り取った部分の幅Wは、最適な画素を得るために、好ましくは5ミクロンがよい。画素の大きさは、例えば150ミクロン×150ミクロンである。最適な画素のための幅Wは、即ち、画素中のドメイン間の安定で明確な境界であり、その結果、広い範囲の視角にわたって良好なコントラストと均一な表示特性が得られるものであるが、画素の大きさとはそれほど関係ない。画素の大きさは、例えばその辺が100から200ミクロンの範囲であればよい。
【0023】底面電極60の外周の大きさを、上面電極62よりも小さくすることによって、画素の周囲及び切り取り部分の縁における電場の方向を、それぞれの画素が4個のドメインに分割されるような方向にすることができる。それぞれのドメインにおいて液晶表示装置の分子のディレクタは、(電場の無いときは基板に対して垂直なっているのに対し)電場が印加されたときは、常に画素の中心へ向かって傾くように配向している。しかしながら、X型の切り取り部64が、4個の明瞭な液晶ドメインI、II、III、IVを定めている。これらのドメインは、それぞれの液晶表示装置セル内の局所的な条件に関わらず、X形の切り取り部64によって正確に決定される。なぜなら一定の境界条件と明確な傾斜方向が、個々の液晶分子に対して確立されるからである。
【0024】上下の補償膜の外側にはそれぞれ偏光膜が設けられており、それらの透過軸は互いに直交しているが、液晶表示装置の側端に対してはそれぞれ45度の角度になっている。より一般的には、偏光方向は、電場が印加されているときに分子の傾く方向に対して45度の角度である。例えば図2において、2枚の偏光膜の透過軸は、液晶表示装置の側端に対してやはり45度の角度であり、矢印66及び68で表現されている。
【0025】1画素につき1個以上のドメインが存在するために、ある程度の透過光の損失がある。ドメインの境界領域(即ち、陰をつけて示してある領域)は、ドメイン領域自体と同様、光を透過しない。しかしながら、本発明による電極パターンを用いる場合は、損失は比較的少なくなる。例えば、図2のパターンについては、汎用的なあるドメイン・セルの透過光と比較すると、それの約83%が透過する。つまり、相対的な透過効率は約83%である。
【0026】図3から図7では、画素の幅と長さが等しくないものを示している。通常、画素の大きさは、1:3の縦横比を持つように選択されている。即ち、例えば幅110ミクロン×長さ330ミクロンである。底面電極70は連続であり、データ・ライン及びゲート・ラインによって隣接する画素の電極から絶縁されている。画素の上面電極72は、空き部分あるいは切り取り部74を有し、それはいわゆる「2重Y」形状である、両端がそれぞれ2つの枝に分かれた長い形をしている。Xで示されている中心部分の幅は、10ミクロンが最適であるが、Yで示されている中心部分の両端の分岐した部分の幅は、5ミクロンが最適である。図2の場合と同様な方法で、4個の分割された液晶ドメインが確立される。ドメインAの大きさはドメインBの大きさと等しい。ドメインCの大きさはドメインDの大きさと等しい。しかしながら、図3から十分明らかなように、ドメインAとBは、ドメインCとDよりもかなり大きい。
【0027】「2重Y」型形状の分岐した部分は、通常互いに垂直であり、画素の辺に対して45度の角度に配置されている。「2重Y」型の中心部分は、画素の長い方の辺に平行に、短い方の辺に垂直に配置されている。偏光膜の透過軸は、矢印76及び78によって示されている。相対的な透過効率は約84%である。
【0028】図4の実施例は、連続的な底面電極80と、画素の長い方の辺に平行に伸びているスロット84が中央に設けられている上面電極を有している。空き部分あるいはスロット84は、幅約10ミクロンが最適である。偏光膜の偏光方向は、矢印86及び88で示されている。汎用的な単ドメインの液晶表示装置セルと比較すると、相対的な透過効率は、約80%である。この電極パターンは実質的に2個のドメイン・セルを形成し、底面電極の方が小さいこと及び切り取られた形状のため、その中の液晶材料分子は、底面電極80から上面電極82へ、内側へ向かって傾いている。
【0029】図5では、底面電極90は、最適幅10ミクロンの長方形の切り取り部91を有し、画素の幅方向に沿ってその長方形の長い方の辺が置かれている。上面電極は、2つの「2重Y」型の切り取り部94a及び94bを有し、その末端部分における幅Yは、5ミクロンが最適であり、中心部分の幅Xは、10ミクロンが最適である。切り取り部94aは、図5の電極90の長方形の切り取り部91から上の半分を覆うように配置され、切り取り部94bは、電極90の切り取り部91から下の半分を覆うように配置されている。
【0030】図5の画素電極パターンによって、液晶表示装置セルは、8個のドメインに分割することができる。偏光膜の透過軸は、矢印96及び98によって表されている。汎用的な単ドメイン・セルと比較して、相対的な透過効率は81%である。
【0031】図6は、いわゆる、2重X型電極パターンである。底面電極100は、切り取り部91と同様の長方形の切り取り部101を有している。上面電極102は、2つの普通のX型切り取り部、104a、104bを有し、それぞれ底面電極100の切り取り部101の上半分と下半分の上に配置されている。偏光膜の透過軸は、矢印106及び108で示されている。8個の明確な液晶ドメインが形成され、相対的な透過効率は、汎用的な単ドメイン・セルと比較して約70%である。好ましい幅Wは、5ミクロンである。
【0032】図7の電極パターンは、底面電極110が、図5及び図6におけるそれぞれの切り取り部91及び101と同様の2つの長方形の切り取り部111a及び111bを有していることを除いて、多くの点で図6に類似している。上面電極112は、3つのX型切り取り部114a、114b、114cを有し、底面電極110の上部、中部、下部の上に配置されている。中部とは、切り取り部111aと111bの間の部分のことである。図7の電極パターンは、全部で12個の明確なドメインを形成する。この液晶セルは、汎用的な単ドメイン液晶表示セルと比較すると、相対的透過効率は72%である。偏光膜の透過軸は、矢印116及び118で示されている。
【0033】図8は、いわゆる、「+」型の電極形状を示している。連続的な底面電極120の上に、連続的な共通ITO電極の一部である上面電極122に空き部分124が配置されている。電極120の縁部及び空き部分124における周縁電場によって、液晶分子は、十字型の空き部分124の中心に向かって傾けられる。その結果、4個の独立なドメインが形成され、それらの境界は、空き部分124によって明確にかつ制御可能に決定される。汎用的な単ドメイン液晶表示セルと比較すると、相対的透過効率は60%である。最適な幅Wは、やはり5ミクロン程度である。偏光膜の透過軸は、矢印126及び128で示されている。
【0034】図9は、非クロスオーバー型ホメオトロピック・アクティブ・マトリクス液晶表示装置における画素の集まりを示している。簡潔にするために、TFTは示されていない。下側の基板は、その上にTFT(図示せず)と共に底面電極130及びゲート・ライン131を蒸着している。上側の基板は、一連のデータ・ライン133を有し、それらは底面電極130よりも幅が広く、一連の電極130を覆うように縦列に配置されている。データ・ライン133の末端は底面電極130の末端よりも出るように伸ばされている。それぞれの底面電極130の上にあるデータ・ライン133のX型の空き部分または切り取り部134(図2の切り取り部64と同様)によって、各液晶表示機構は、4個の明確なドメインに分割される。図2に関連して説明したように、相対的な透過効率は、汎用的な単ドメイン液晶表示セルと比較して、約83%である。偏光膜の透過軸の方向は矢印136及び138で表されている。
【0035】本発明による図2から図8に記載されたどのパターンも、非クロスオーバー型アクティブ・ホメオトロピック液晶表示装置に使用することができることは明らかである。
【0036】図10以降には、マルチドメイン・ツイスト・ネマティック液晶表示セルの電極形状を示している。そのようなセルにおいては、キラル添加物を利用して液晶分子に70度から90度の間の左回りのねじれを与えている。一般に、第1の基板を第1の方向に擦り、第2の基板を第1の方向とある角度をなす第2の方向に擦る、ラビング(擦る)処理をされた配向層が用いられる。本発明においても、2つの方向にラビングを行うが、第1の基板は、汎用的な液晶表示装置のそれとは、逆の方向にラビングされる。これに関しては、本発明の譲受人に譲渡された同時係属の米国特許出願第07/776,158号(1991年10月5日出願)を参照するものとし、それによってこの出願はここに一体化されるものとする。特に前記出願の図7を参照すると、汎用的な液晶表示セルの方向と逆の方向に第1の基板の配向膜をラビングすることによって、液晶分子が、対向する基板上のプレティルトとは逆の方向のプレティルトを有すことになる。さらに、上下の基板の間の中央部に位置する平面内の分子は、基板に平行に配列することになる。
【0037】ここでも偏光膜は、使用されている。それらは、一方の偏光膜の透過軸が他方のそれと垂直になるように配置される。当業者であれば、他のセル形状も可能であることは理解できるであろう。セルは、通常白色か、または通常黒色でもよく、あるいはeモードまたはoモードで動作してもよい。基板間のねじれは、右回りのねじれでも、左回りのねじれでも可能である。最後に、一般的には、ねじれの角度は0度から360度の間のどれでもよい。
【0038】ツイスト・ネマティック液晶表示装置に使用されている液晶材料は、ZLI−3771及びZLI−4718等の、正の誘電異方性を有す型のものであればよく、E.Merck,Darmstadt社から入手できる。
【0039】ツイスト・ネマティック液晶表示装置は、通常光学的補償膜を使用しない(が、必要であれば使用することができる)。しかしながら、電場が印加されたときその液晶表示セルが光を透過しない場合については、ITO電極材料が取り除かれた領域の周囲での光の漏れを防ぐ必要がある。一般に、公知の技術としては、黒色のマトリクス材料が、通常白色の用途に対して使用される。
【0040】図10から図15は、本発明によるツイスト・ネマティック液晶表示セルの電極の実施例を示している。本発明において常に当てはまることは、連続的な上面電極中の空き部分が、ドメインの1つの縁におけるこれらの空き部分によって作られる周縁電場と、同じドメインの反対の縁における周縁電場とが平行になるように、形作られかつ配置されていることである。それによって、液晶表示セルのドメインが極めて明確に定められ、しかもそれらの形状が、液晶表示分子をプレティルトさせるためのラビング処理の特性や品質といった局所的な条件には無関係となる。さらに、上下の基板間の真中に位置する、液晶材料の中央部の面内の分子の配列が、電圧が印加されたとき明確に決まることである。マルチドメイン液晶表示セルを作成するための従来の試みにおいては、これらの分子配列が曖昧であることも、液晶ドメインの形状の再現性が得られない原因となっていた。
【0041】特に図10を参照すると、底面電極140が、液晶表示セル全体について上面電極を構成する連続するITO膜142の一部分と平行に置かれている。ITO共通電極における空き部分144a及び144bは、それぞれ底面電極140の上端及び下端に沿って位置している。空き部分144aは、底面電極140の右端のすぐ上の点から、底面電極140を半分横切って中間点まで伸びている。空き部分は、底面電極140の上端の上にも広がっている。空き部分144bは、底面電極140の左端の点から、底面電極140の下端に沿って中間点まで伸びている。従って、空き部分144a及び144bの縁は、双方とも想像上の線145に沿って位置している。上記のように、縁部における電場が、互いに平行な方向を向いていることによって、液晶表示材料の分子が2つの領域で反対の方向に傾いており、左の領域Lと右の領域Rを定めている。
【0042】左回りのキラリティを有すセルのラビング方向は、下側基板については矢印146で示され、上側基板については矢印147で示されている。通常白色の場合の偏光膜の透過軸は、矢印148及び149で示されている。汎用的な単ドメイン液晶表示セルと比較した、相対的な透過効率は、80%から90%である。
【0043】この電極パターンによって、全ての視方向について広い視角に渡って良好なコントラスト及び階調度が得られるが、4個のドメインの場合と異なり、垂直方向については、水平方向と同様な広い範囲に渡る優れた表示特性が得られないことが理解できる。当業者であれば、連続的なITO膜上の電極パターン、即ち、空き部分144a及び144bが、底面電極140の上下の端ではなく、左右の端に沿って位置していてもよいことが理解できるであろう。言い替えるならば、それぞれのセルの電極パターンは、底面電極の中心から上下の両基板面に垂直な方向に伸びている軸の周りに90度回転したものでもよい。当業者であれば、この後者の型の電極パターンによって、全ての視方向について広い視角に渡って良好なコントラスト及び階調度が得られるが、水平方向については、垂直方向と同様な広い範囲に渡る優れた表示特性が得られないことが理解できる。相対的な透過効率は、図10における液晶表示セルと同程度である。
【0044】図11によれば、底面電極150は、上面電極152を形成するITO共通電極の一部分の下方に置かれている。切り取り部154は、底面電極150の正方形の辺より僅かに長く、縦方向に設けられている。切り取り部154によって、画素は左右の各領域に分割されている。左回りのキラリティを有すセルのラビング方向は、下側基板については矢印155によって、上側基板については矢印156で表されている。通常白色モードの場合の偏光膜の透過軸は、矢印157及び158によって表されている。上下方向の広い視角に渡ってコントラストと階調度が、左右方向のそれよりも良好である。しかしながら、図10で述べたように、共通ITO上面電極上のパターンは、左右方向の良好な視角特性を得たい場合は90度回転することができる。
【0045】図12によれば、底面電極160は、上面電極162を形成するITO共通電極の一部分の下方に置かれている。斜めの空き部分164が、底面電極160の対角線全体の長さよりも短く、5ミクロンの幅Wで、液晶表示セルの左下角から右上角まで伸びている。左回りのキラリティを有すセルのラビング方向は、上側基板については矢印166によって、下側基板については矢印167で表されている。通常白色モードの場合の偏光膜の透過軸は、矢印168及び169によって表されている。
【0046】図12の液晶表示セルは、2つの領域S及びTに分割されている。汎用的な単ドメイン液晶表示セルと比較した、相対的な透過効率は、80%から90%である。
【0047】コントラスト及び階調度特性の均一性を確保するために、図12の画素の電極パターンを、空き部分164が左上角から右下角へ伸びていること以外は同様の電極パターンを有す画素を隣接させて配置してもよい。従って、ある最大角度までの異なる視角(左、右、上、下)における特性のばらつきを実質的に取り除くことができる。
【0048】図10から図12の、表示素子は正方形であるが、図13、14、15の表示素子は長方形である。図13では、底面電極170が、横方向のスロット174を有す共通ITO電極172の一部分の下方に置かれている。左回りのキラリティを有すセルのラビング方向は、上側基板については矢印175によって、下側基板については矢印176で表されている。通常白色モードの場合の偏光膜の透過軸は、矢印177及び178によって表されている。
【0049】この電極形状は、上部領域Uと下部領域Lを形成している。この2個のドメイン構造の、汎用的な単ドメイン液晶表示セルと比較した、相対的な透過効率は80%から90%である。
【0050】図14では、底面電極180が、画素の上面電極182を形成する共通ITO電極の一部分の下方に置かれている。スロット184は、電極182の縦方向に、底面電極の長さよりも僅かに短く設けられている。左回りのキラリティを有すセルのラビング方向は、上側基板については矢印185によって、下側基板については矢印186で表されている。通常白色モードの場合の偏光膜の透過軸は、矢印187及び188によって表されている。図14の電極配置は、画素を左領域Lと右領域Rに分割する。この2個のドメインを持つ液晶表示セルの、汎用的な単ドメイン液晶表示セルと比較した、相対的な透過効率は80%から90%である。
【0051】図15では、底面電極190が、画素の上面電極192を形成し、その中に斜めのスロットまたは空き部分194を有す共通ITO電極の一部分の下方に置かれている。左回りのキラリティを有すセルのラビング方向は、上側基板については矢印195によって、下側基板については矢印196で表されている。通常白色モードの場合の偏光膜の透過軸は、矢印197及び198によって表されている。
【0052】空き部分194は、画素の左下角から右上角への対角線に沿って設けられているが、視角特性を最も均一にするためには、図5の画素のすぐ下隣に、空き部分194が左上角から右下角への対角線に沿って設けられている以外は同様の電極形状と大きさを有す画素を配置することが望ましい。それによって、コントラスト及び階調度特性が、最大視角まで、方向によらず実質的に均一になる。
【0053】本発明による図10から図15に示された全てのパターンが、クロスオーバー型あるいは非クロスオーバー型のどちらのツイスト・ネマティック液晶表示装置に使用できることは、当業者であれば理解できるであろう。
【0054】
【発明の効果】本発明によって、広い視角に渡って良好なコントラスト比と優れた階調度を有すマルチドメイン・ホメオトロピック液晶表示装置及びマルチドメイン・ツイスト・ネマティック液晶表示装置が提供される。多くの場合、全ての視方向において中心から50度の範囲まで可能である。しかも、製造コストを上げることも、液晶表示装置を複雑にすることもなく、高い光透過効率をもって実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術による、クロスオーバー型アクティブ・マトリクス液晶表示装置の断面図である。
【図2】本発明の実施例による、ホメオトロピック液晶表示装置の電極パターンを示す図である。
【図3】本発明の実施例による、ホメオトロピック液晶表示装置の電極パターンを示す図である。
【図4】本発明の実施例による、ホメオトロピック液晶表示装置の電極パターンを示す図である。
【図5】本発明の実施例による、ホメオトロピック液晶表示装置の電極パターンを示す図である。
【図6】本発明の実施例による、ホメオトロピック液晶表示装置の電極パターンを示す図である。
【図7】本発明の実施例による、ホメオトロピック液晶表示装置の電極パターンを示す図である。
【図8】本発明の実施例による、ホメオトロピック液晶表示装置の電極パターンを示す図である。
【図9】本発明の実施例による、ホメオトロピック液晶表示装置の電極パターンを示す図である。
【図10】本発明の実施例による、ツイスト・ネマティック液晶表示装置の電極パターンを示す図である。
【図11】本発明の実施例による、ツイスト・ネマティック液晶表示装置の電極パターンを示す図である。
【図12】本発明の実施例による、ツイスト・ネマティック液晶表示装置の電極パターンを示す図である。
【図13】本発明の実施例による、ツイスト・ネマティック液晶表示装置の電極パターンを示す図である。
【図14】本発明の実施例による、ツイスト・ネマティック液晶表示装置の電極パターンを示す図である。
【図15】本発明の実施例による、ツイスト・ネマティック液晶表示装置の電極パターンを示す図である。
【符合の説明】
20 液晶表示装置
22 第1の基板
24 第2の基板
26 画素用電極
28 連続的透明電極
30 薄膜トランジスタ
32 ゲート・ライン
36 液晶材料
38 配向層
40 配向層
42 光学的補償膜
44 光学的補償膜
46 偏光膜
48 偏光膜
60 底面電極
62 上面電極
64 切り取り部
66 光の透過軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】複数の電極が形成された第1の基板と、共通電極が形成された第2の基板と、該第1の基板と該第2の基板との間に配置された液晶材料とからなり、上記共通電極は、その表示素子を1個以上の液晶ドメインに分割するために、その中に空き部分のパターンを有し、かつ該共通電極は、該パターンが置かれている部分以外は連続的である、液晶表示装置。
【請求項2】ツイスト・ネマティック液晶表示装置として構成された、請求項1の液晶表示装置。
【請求項3】前記第1の基板における液晶分子のプレティルトの方向が、前記第2の基板における液晶分子のプレティルトの方向の逆になるように、該第1の基板及び該第2の基板をラビングする請求項2の液晶表示装置。
【請求項4】ホメオトロピック液晶表示装置として構成された、請求項1の液晶表示装置。
【請求項5】前記液晶分子が、電場が印可されていないときに前記基板に対して垂直になっている、請求項4の液晶表示装置。
【請求項6】それぞれの表示素子における前記空き部分のパターンが、少なくとも第1の実質的に長方形の形状を含み、該長方形の形状は、該表示素子の側端に対してある角度をもって配置されている、請求項1の液晶表示装置。
【請求項7】それぞれの表示素子における前記空き部分のパターンが、前記第1の長方形の形状に実質的に垂直な方向に配置された第2の実質的に長方形の形状を含み、該第1と該第2の長方形の形状は互いに交差している、請求項6の液晶表示装置。
【請求項8】それぞれの表示素子における前記空き部分のパターンが、第2の長方形の形状を含み、該長方形の形状は、該第1の長方形の形状に対してある角度をもって配置され、該第1の長方形の形状と交差している、請求項6の液晶表示装置。
【請求項9】前記表示素子が、その幅よりも長い長さを有し、前記長方形の形状同志が、直角以外の角度で交差している、請求項8の液晶表示装置。
【請求項10】前記長方形の形状が、前記表示素子の側端に平行である、請求項9の液晶表示装置。
【請求項11】それぞれの表示素子における前記空き部分のパターンが、前記表示素子の側端に対してある角度を持って配置されている長方形の形状を含む、請求項1の液晶表示装置。
【請求項12】前記表示素子が、その幅よりも長い長さを有し、それぞれの表示素子における前記空き部分のパターンが、該表示素子の長さ方向に平行で、該表示素子の幅の中央に配置されている、第1の実質的に長方形の空き部分を含み、該空き部分の長さは該表示素子の全体の長さよりも短く、2つの実質的に長方形の該空き部分の延長部が、該空き部分の各末端から該表示素子の角に向かって伸びている、請求項1の液晶表示装置。
【請求項13】前記パターンが、それぞれの表示素子の対向する辺上に2つの平行な長方形の切り取り部を有し、前記表示素子の対角線上で向き合う角からそれぞれ伸びている、請求項1の液晶表示装置。
【請求項14】それぞれの表示素子における前記空き部分のパターンが、あるパターンをその長さ方向に沿って繰り返すものであり、前記複数の電極のそれぞれが長方形の空き部分を有すことによって連続的に繰り返されている該パターンの間の境界を規定するように、前記共通電極の中の1つの領域に対向するように配置されている、請求項1の液晶表示装置。
【請求項15】それぞれの表示素子における前記第1の基板上に設置されている、少なくとも1つの能動素子と、該少なくとも1つの能動素子へ信号を伝達するための電気伝導体とをさらに含む、請求項1の液晶表示装置。
【請求項16】第1の基板と、第2の基板と、該第1の基板と該第2の基板との間に配置された液晶材料とからなり、該第1の基板と該第2の基板の内少なくとも1つが、それぞれの表示素子が1つ以上の液晶ドメインを有すように、空き部分のパターンを備えた電極を有し、それぞれの電極は該パターンの部分以外は連続的である、非クロスオーバー型アクティブ・マトリクス液晶表示装置。
【請求項17】ツイスト・ネマティック液晶表示装置として構成された、請求項16の液晶表示装置。
【請求項18】前記第1の基板における液晶分子のプレティルトの方向が、前記第2の基板における液晶分子のプレティルトの方向の逆になるように、該第1の基板及び該第2の基板をラビングする、請求項17の液晶表示装置。
【請求項19】ホメオトロピック液晶表示装置として構成された、請求項16の液晶表示装置。
【請求項20】前記液晶分子が、電場が印加されていないときに前記基板に対して垂直になっている、請求項19の液晶表示装置。
【請求項21】それぞれの表示素子における前記空き部分のパターンが、少なくとも第1の実質的に長方形の形状を含み、該長方形の形状は、該表示素子の側端に対してある角度をもって配置されている、請求項16の液晶表示装置。
【請求項22】それぞれの表示素子における前記空き部分のパターンが、前記第1の長方形の形状に実質的に垂直な方向に配置された第2の実質的に長方形の形状を含み、該第1と該第2の長方形の形状は互いに交差している、請求項21の液晶表示装置。
【請求項23】それぞれの表示素子における前記空き部分のパターンが、第2の長方形の形状を含み、該長方形の形状は、該第1の長方形の形状に対してある角度をもって配置され、該第1の長方形の形状と交差している、請求項21の液晶表示装置。
【請求項24】前記表示素子が、その幅よりも長い長さを有し、前記長方形の形状同志が、直角以外の角度で交差している、請求項23の液晶表示装置。
【請求項25】前記長方形の形状が、前記表示素子の側端に平行である、請求項24の液晶表示装置。
【請求項26】それぞれの表示素子における前記空き部分のパターンが、前記表示素子の側端に対してある角度を持って配置されている長方形の形状を含む、請求項16の液晶表示装置。
【請求項27】前記表示素子が、その幅よりも長い長さを有し、それぞれの表示素子における前記空き部分のパターンが、該表示素子の長さ方向に平行で、該表示素子の幅方向の中央に配置されている、第1の実質的に長方形の空き部分を含み、該空き部分の長さは該表示素子の全体の長さよりも短く、2つの実質的に長方形の該空き部分の延長部が、該空き部分の各末端から該表示素子の角に向かって伸びている、請求項16の液晶表示装置。
【請求項28】前記パターンが、それぞれの表示素子の対向する辺上に2つの平行な長方形の切り取り部を有し、前記表示素子の対角線上で向き合う角からそれぞれ伸びている、請求項16の液晶表示装置。
【請求項29】それぞれの表示素子における前記空き部分のパターンが、あるパターンをその長さ方向に沿って繰り返すものであり、前記複数の電極のそれぞれが長方形の空き部分を有すことによって連続的に繰り返されている該パターンの間の境界を規定するように、前記共通電極の中の1つの領域に対向するように配置されている、請求項16の液晶表示装置。
【請求項30】第1の基板と、第2の基板と、該第1の基板と該第2の基板との間にある液晶材料とからなり、該第1の基板と該第2の基板のそれぞれの上には少なくとも1つの電極があり、該電極の少なくとも1つは、その中に空き部分を形成しており、ドメインの端にある該空き部分によって生じる周縁電場が、該ドメインの反対の端において生じる周縁電場と平行になっており、該第1の基板と該第2の基板はそれぞれ配向層を有しており、該配向層によって、該第1の基板において第1の方向に、該第2の基板において第2の方向に液晶分子がプレティルトし、該第1の方向は、該第2の方向と逆になっている、マルチドメイン・ツイスト・ネマティック液晶表示装置。
【請求項31】前記第1の配向層と前記第2の配向層は、前記分子の前記プレティルトを生じるために、ラビングされる、請求項30の液晶表示装置。
【請求項32】前記液晶材料の分子のねじれ角が、0度から360度の間である、請求項30の液晶表示装置。
【請求項33】第1の基板と、第2の基板と、該第1の基板と該第2の基板との間にある液晶材料とからなり、該第1の基板と該第2の基板のそれぞれの上には、液晶表示装置の画素を形成するための少なくとも1つの電極があり、該電極の少なくとも1つは、その中に空き部分を形成しており、それによって、該液晶材料に電場が印加されていないときは、該液晶分子が該基板に対して垂直になっており、電場が印加されているときは、2N個の明確なドメインが、該画素の中に形成され、N=1,2,3,...である、ホメオトロピック・アクティブ・マトリクス液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図9】
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【図13】
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【図15】
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【公開番号】特開平6−43461
【公開日】平成6年(1994)2月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−73935
【出願日】平成5年(1993)3月31日
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレイション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION