液晶装置、液晶装置の製造方法、及び電子機器
【課題】低電圧で円滑なベンド配向への転移が可能なOCBモードの液晶装置。
【解決手段】互いに対向して配置された第1の基板21と第2の基板22とからなる一対の基板と、一対の基板に挟持され、配向状態がスプレイ配向とベンド配向のいずれか一方から他方へと転移する液晶層と、第1の基板21の液晶層側に形成された第1の電極43と、第2の基板22の液晶層側に形成された第2の電極42と、第1の電極43を覆う第1の配向膜33と、第2の電極42を覆う第2の配向膜34と、一対の基板間に配置され、光学的異方性を有する高分子14を含むスペーサ20と、を備える液晶装置であって、双方の配向膜は同一方向に配向されており、スペーサ20の表面の少なくとも一部が液晶層37と接触しており、かつ、該一部近傍における光学的異方性を有する高分子14が配向膜の配向方向とは異なる方向に配向している液晶装置。
【解決手段】互いに対向して配置された第1の基板21と第2の基板22とからなる一対の基板と、一対の基板に挟持され、配向状態がスプレイ配向とベンド配向のいずれか一方から他方へと転移する液晶層と、第1の基板21の液晶層側に形成された第1の電極43と、第2の基板22の液晶層側に形成された第2の電極42と、第1の電極43を覆う第1の配向膜33と、第2の電極42を覆う第2の配向膜34と、一対の基板間に配置され、光学的異方性を有する高分子14を含むスペーサ20と、を備える液晶装置であって、双方の配向膜は同一方向に配向されており、スペーサ20の表面の少なくとも一部が液晶層37と接触しており、かつ、該一部近傍における光学的異方性を有する高分子14が配向膜の配向方向とは異なる方向に配向している液晶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置、液晶装置の製造方法、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置の一例として、OCB(Optically Compensated Birefringence)モードの液晶装置が知られている。OCBモードの液晶装置は、一対の基板と、この一対の基板の間に封入された液晶層とを有して構成されており、液晶層は、スプレイ配向又はベンド配向のいずれの配向状態をもとり得るように構成される。そして、この液晶層は、初期状態ではスプレイ配向となっており、表示を行う際には、転移電圧を印加することによってベンド配向に転移させて使用する。
【0003】
ベンド配向への転移を容易に行うための構成として、例えば特許文献1には、軟性高分子を含む高分子スペーサを上記一対の基板間に配置する態様が開示されている。この高分子スペーサの横軸方向の内周に位置する高分子鎖は縦軸方向に配列されるため、かかる態様によれば、該高分子スペーサの周辺にある液晶は該高分子鎖に沿って配向されるため転移核が形成され、該転移核を起点とすることでベンド転移が起こりやすくなる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−209062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記高分子鎖の配向は、もともとはアモルファス状態のものを応力により配向させているものであり、好適な配向状態にはなり得ない。したがって、円滑なベンド配向への転移を行うためには、依然として高電圧が必要になるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]互いに対向して配置された第1の基板と第2の基板とからなる一対の基板と、上記一対の基板に挟持され、配向状態がスプレイ配向とベンド配向のいずれか一方から他方へと転移する液晶層と、上記第1の基板の上記液晶層側に形成された第1の電極と、上記第2の基板の上記液晶層側に形成された第2の電極と、上記第1の電極の上記液晶層側に形成された第1の配向膜と、上記第2の電極の上記液晶層側に形成された第2の配向膜と、上記一対の基板間に配置され、光学的異方性を有する高分子を含有したスペーサと、を備える液晶装置であって、上記第1の配向膜及び上記第2の配向膜は、互いに同一方向に配向処理が施されており、上記スペーサの表面の少なくとも一部が上記液晶層と接触しており、かつ、該一部近傍における上記光学的異方性を有する高分子が上記配向膜の配向方向とは異なる方向に配向していることを特徴とする液晶装置。
【0008】
このような構成によれば、上述のスペーサの表面の少なくとも一部に接触している液晶層は、上記配向膜の配向方向とは異なる方向に配向される。したがって、該一部近傍の液晶層内に容易に転移核を形成できる。そして、かかる転移核により、上記液晶層を容易にベンド配向へ転移させることができる。
【0009】
[適用例2]上述の液晶装置であって、上記スペーサは、上記液晶層の厚み方向で該液晶層と接触する露出した表面を有しており、該表面近傍における上記光学的異方性を有する高分子が上記配向膜の配向方向とは異なる方向に配向していることを特徴とする液晶装置。
【0010】
このような構成によれば、上記露出した表面に接触している液晶層は、上記配向膜の配向方向とは異なる方向により強く配向される。したがって、該一部近傍の液晶層内に、より一層容易に転移核を形成できる。
【0011】
[適用例3]上述の液晶装置であって、上記光学的異方性を有する高分子は、液晶性モノマーを含有する組成物を重合して得られたものであることを特徴とする液晶装置。
【0012】
液晶性モノマーは配向処理が容易であり、また、紫外線照射等により確実に高分子化される。したがって、このような構成であれば、液晶装置の信頼性を向上できる。
【0013】
[適用例4]上述の液晶装置であって、上記一対の基板は、該基板の平面内に、各々が光を射出する複数の画素領域と、隣り合う上記画素領域間を区画する非表示領域と、を含み、上記スペーサは、上記非表示領域内に形成されていることを特徴とする液晶装置。
【0014】
このような構成によれば、表示品質を損なうことなく、上記転移核を形成できる。
【0015】
[適用例5]上述の液晶装置であって、上記スペーサは、上記複数の画素領域の各々につき少なくとも1つ形成されていることを特徴とする液晶装置。
【0016】
このような構成によれば、画素毎に上記転移核を形成できるため、より一層容易にベンド配向への転移を行うことができる。
【0017】
[適用例6]上述の液晶装置であって、上記スペーサに含有される上記光学的異方性を有する高分子は、上記スペーサと上記第1の配向膜との界面と、上記スペーサと上記第2の配向膜との界面と、のどちらか一方の界面の近傍において上記配向膜の配向方向と略同一の方向に配向しており、かつ、上記第1の配向膜と上記第2の配向膜との間でツイスト配向していることを特徴とする液晶装置。
【0018】
上述のスプレイ配向の方向は一定であるため、このような構成によれば、該スペーサに含まれる高分子の配向方向が該スプレイ配向の方向と異なる部分を確実に形成できる。したがって、上記転移核を確実に形成できる。
なお、ツイスト配向とは、一対の基板間に挟持された長軸を有する分子が、長軸方向を上記一対の基板に平行に保ちつつ、該一対の基板に垂直な線を中心軸として該一対の基板間でねじれる配向状態をいう。
【0019】
[適用例7]上述の液晶装置であって、上記ツイスト配向のツイスト角は略180度であることを特徴とする液晶装置。
【0020】
このような構成によれば、上記液晶層の層厚方向における略中間の位置に上記転移核が形成される。したがって、より一層短時間に、かつ、低い転移電圧でベンド配向への転移を行うことができる。
【0021】
[適用例8]上述の液晶装置であって、上記スペーサに含有される上記光学的異方性を有する高分子は、上記スペーサと上記第1の配向膜との界面と、上記スペーサと上記第2の配向膜との界面と、のどちらか一方の界面の近傍において上記配向膜の配向方向と略同一の方向に配向しており、かつ、上記第1の配向膜と上記第2の配向膜との間でハイブリッド配向していることを特徴とする液晶装置。
【0022】
上述のスプレイ配向の方向は一定であるため、このような構成によれば、該スペーサに含まれる高分子の配向方向が該スプレイ配向の方向と異なる部分を確実に形成できる。したがって、上記転移核を確実に形成できる。
なお、ハイブリッド配向とは、一対の基板間に挟持された長軸を有する分子が、該長軸の方向が、一方の基板側では該基板に対して平行になり、他方の基板側では該基板に対して垂直になるように配向されている状態をいう。
【0023】
[適用例9]上述の液晶装置であって、上記第1の配向膜の上記液晶層側の面と上記第2の配向膜の上記液晶層側の面とのどちらか一方の面における上記スペーサが配置されていない領域に、第3の配向膜が更に配置されていることを特徴とする液晶装置。
【0024】
このような構成であれば、上記配向膜のどちらか一方が、上記スペーサの形成時において機能を低下させた場合においても、新たに積層した上記第3の配向膜で上記液晶層を配向できる。したがってかかる液晶装置であれば、表示品質を損なうことがなくなる。したがってかかる液晶装置であれば、表示品質を損うことなく上記液晶層内に容易に上記転移核を形成でき、短時間、かつ低い転移電圧でベンド配向への転移を行うことができる。
【0025】
[適用例10]上述の液晶装置を表示部に備えることを特徴とする電子機器。
【0026】
このような構成によれば、液晶装置を短時間、かつ低い転移電圧でベンド配向へ転移させることが可能な電子機器が得られる。
【0027】
[適用例11]互いに対向して配置された第1の基板と第2の基板とからなる一対の基板と、上記一対の基板に挟持され、配向状態がスプレイ配向とベンド配向のいずれか一方から他方へと転移する液晶層と、上記第1の基板の上記液晶層側に形成された第1の電極と、上記第2の基板の上記液晶層側に形成された第2の電極と、上記第1の電極の上記液晶層側に形成された第1の配向膜と、上記第2の電極の上記液晶層側に形成された第2の配向膜と、上記一対の基板間に配置され、光学的異方性を有する高分子を含有したスペーサと、を備える液晶装置の製造方法であって、上記第1の基板の一方の面に上記第1の配向膜を形成する第1の工程と、上記第1の配向膜に上記第1の基板に対して水平方向の配向処理を施す第2の工程と、上記第2の基板の一方の面に上記第2の配向膜を形成する第3の工程と、上記第2の配向膜に、上記第1の配向膜に付与された配向方向と同一方向の配向処理を施す第4の工程と、配向処理が施された上記第1の配向膜上に光重合性の官能基を有する液晶性モノマーを含む液状材料を塗布して、層厚方向の一部分における該液晶性モノマーが上記第1の配向膜に付与された配向方向と異なる方向に配向された塗布膜を形成する第5の工程と、上記塗布膜をフォトマスクを介して露光して、所定の領域における上記液晶性モノマーを高分子化する第6の工程と、上記第6の工程において露光されなかった領域の上記塗布膜を除去してスペーサを形成する第7の工程と、上記第1の基板と上記第2の基板とを、上記第1の配向膜と上記第2の配向膜とが対向するように上記スペーサを介して貼り合わせる第8の工程と、上記第1の基板と上記第2の基板との間に液晶を充填する第9の工程と、を含むことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0028】
このような製造方法によれば、層厚方向における一部分に上記配向膜の配向方向とは異なる方向に配向された高分子を含み、かつ、該一部分の表面が上記液晶層に接するスペーサを形成できる。そして、かかる一部分の表面近傍の液晶層内に上記転移核を容易に形成できる。したがって、短時間、かつ低い転移電圧でベンド配向への転移が可能な液晶装置を製造することができる。
【0029】
[適用例12]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第5の工程は、上記光重合性の官能基を持つ液晶性モノマーとカイラル剤とを含む液状材料を塗布する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0030】
カイラル剤を混入することにより、上記塗布膜の配向はツイスト配向となる。そのため、該スペーサ内に上記配向膜の配向方向とは異なる方向に配向された高分子を確実に配置できる。したがって、このような製造方法によれば、上記転移核をより一層確実に形成できる。
【0031】
[適用例13]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第5の工程は、形成後の上記塗布膜の表面近傍における上記液晶性モノマーの配列方向が上記第1の配向膜の配向方向に対して180度回転した方向となるように、上記液晶性モノマーと上記カイラル剤との混合比率を調整した液状材料を塗布する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0032】
このような製造方法によれば、上記転移核を上記液晶層の層厚方向における中間に設けることができる。したがって、より一層短時間、かつ、低い転移電圧でベンド配向への転移が可能な液晶装置を製造することができる。
【0033】
[適用例14]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第5の工程は、上記光重合性の官能基を持つ液晶性モノマーと界面活性剤とを含む液状材料を塗布する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0034】
界面活性剤を混入することにより、上記塗布膜の配向(方向)は、上記一対の基板(の表面)に対して角度を有するものとなる。一方、上記塗布膜の、上記第1の配向膜との界面近傍における配向方向は、該第1の配向膜の配向方向に規制されるため、上記一対の基板(の表面)に対して水平方向になる。そのため、該スペーサ内に上記配向膜の配向方向とは異なる方向に配向された高分子を確実に配置できる。したがって、このような製造方法によれば、上記転移核をより一層確実に形成できる。
【0035】
[適用例15]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第5の工程は、形成後の上記塗布膜内における上記液晶性モノマーの配列方向が、該塗布膜の表面近傍では上記一対の基板に対して略垂直方向となるように、上記液晶性モノマーと上記界面活性剤との混合比率を調整した液状材料を塗布する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0036】
このような製造方法によれば、該スペーサ内に上記配向膜の配向方向と直交する方向に配向された高分子を確実に配置できる。したがって、このような製造方法によれば、上記転移核をより一層確実に形成できる。
【0037】
[適用例16]上述の液晶装置の製造方法であって、上記液晶装置は、複数の画素領域と隣り合う該画素領域間を区画する非表示領域とを有しており、上記第6の工程は、上記非表示領域内の一部領域を露光する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0038】
このような製造方法であれば、該液晶装置の表示品質に影響を与えることなく上記転移核を形成できる。
【0039】
[適用例17]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第6の工程は、上記スペーサが、上記複数の画素領域の各々につき少なくとも1つは形成されるように露光する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0040】
このような製造方法であれば、上記複数の画素領域の各々について上記転移核を形成できる。したがって、より一層短時間、かつ、低い転移電圧でベンド配向への転移が可能な液晶装置を得ることができる。
【0041】
[適用例18]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第7の工程と上記第8の工程との間に、上記第1の配向膜上の上記第7の工程により上記塗布膜が除去された領域に第3の配向膜を形成する第10の工程と、該第3の配向膜に、上記第2の工程において上記第1の配向膜に施された配向処理と同一方向の配向処理を施す第11の工程と、を更に実施することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0042】
このような製造方法であれば、上記第7の工程の後に形成された上記第3の配向膜により、上記液晶層を配向できる。したがって、上記第7の工程により、下地となる上記第1の配向膜の配向機能等が損なわれた場合においても、表示品質の劣化を抑制できる。
【0043】
[適用例19]互いに対向して配置された第1の基板と第2の基板とからなる一対の基板と、上記一対の基板に挟持され、配向状態がスプレイ配向とベンド配向のいずれか一方から他方へと転移する液晶層と、上記第1の基板の上記液晶層側に形成された第1の電極と、上記第2の基板の上記液晶層側に形成された第2の電極と、上記第1の電極の上記液晶層側に形成された第3の配向膜と、上記第2の電極の上記液晶層側に形成された第2の配向膜と、上記一対の基板間に配置され、光学的異方性を有する高分子を含有したスペーサと、を備える液晶装置の製造方法であって、上記第1の基板上に第1の配向膜を形成する第12の工程と、上記第1の配向膜に第1の方向の配向処理を施す第13の工程と、上記第2の基板上に上記第2の配向膜を形成する第14の工程と、上記第2の配向膜に、上記第2の基板に対して水平の方向かつ上記第1の配向膜に付与された配向方向とは異なる方向である第2の方向の配向処理を施す第15の工程と、配向処理が施された上記第1の配向膜上に光重合性の官能基を有する液晶性モノマーを含む液状材料を塗布して、該液晶性モノマーを含む塗布膜を形成する第16の工程と、上記塗布膜をフォトマスクを介して露光して、所定の領域における上記液晶性モノマーを高分子化する第17の工程と、上記第17の工程において露光されなかった領域の上記塗布膜を除去してスペーサを形成する第18の工程と、上記スペーサが形成された上記第1の基板の上記一方の面に上記第3の配向膜を形成する第19の工程と、上記第3の配向膜に、上記第2の方向の配向処理を施す第20の工程と、上記第1の基板と上記第2の基板とを、上記第3の配向膜と上記第2の配向膜とが対向するように上記スペーサを介して貼り合わせる第21の工程と、上記第1の基板と上記第2の基板との間に液晶を充填する第22の工程と、を含むことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0044】
このような製造方法であれば、全体が、上記第1の配向膜と上記第2の配向膜との一対の配向膜の配向方向とは異なる方向に配向された上記高分子を全体に含むスペーサを形成できる。一方、上記液晶層の配向方向は、上記一対の配向膜の配向方向によって規定されている。したがって、該スペーサの表面近傍の上記液晶層内に、該液晶層をスプレイ配向からベンド配向へと転移させる際の転移核を容易に形成できる。したがって、短時間、かつ低い転移電圧でベンド配向への転移が可能な液晶装置を得ることができる。
【0045】
[適用例20]上述の製造方法であって、上記第15の工程は、上記第1の配向膜に付与された配向方向とは略90度異なる方向に配向処理を施す工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0046】
このような製造方法であれば、上記スペーサに含まれる上記高分子の配向方向を、上記一対の配向膜の配向方向とは略90度異なる方向にできる。したがって、上記転移核をより一層容易に形成できる。
【0047】
[適用例21]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第13の工程は、上記第1の基板に対して略垂直方向に配向処理を施す工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0048】
上記一対の配向膜は水平方向に配向されている。したがって、このような製造方法であれば、上記スペーサに含まれる上記高分子の配向方向を、より一層確実に上記一対の配向膜の配向方向とは略90度異なる方向にできる。したがって、上記転移核をより一層容易に形成できる。
【0049】
[適用例22]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第13の工程は、上記第1の基板に対して略水平方向に配向処理を施す工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0050】
このような製造方法であれば、製造装置の追加、及び、上記配向膜の形成材料の変更等を伴わずにラビング方向を変えるだけで、上記一対の配向膜の配向方向とは略90度異なる方向に配向された上記高分子を含む上記スペーサを形成できる。したがって、短時間、かつ低い転移電圧でベンド配向への転移が可能な液晶装置を、製造コストの増加を抑制しつつ得ることができる。
【0051】
[適用例23]上述の液晶装置の製造方法であって、上記液晶装置は、複数の画素領域と隣り合う該画素領域間を区画する非表示領域とを有しており、上記第17の工程は、上記非表示領域内の一部領域を露光する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0052】
このような製造方法であれば、表示品質に影響を与えることなく、上記転移核を形成できる。
【0053】
[適用例24]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第17の工程は、上記スペーサが、上記複数の画素領域の各々につき少なくとも1つは形成されるように露光する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0054】
このような製造方法であれば、上記複数の画素領域の各々について上記転移核を形成できる。したがって、より一層短時間、かつ、低い転移電圧でベンド配向への転移が可能な液晶装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、図面を参照し、本発明を具体化した液晶装置の実施形態について述べる。なお、以下に示す各図においては、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、該各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0056】
(第1の実施形態)
図1は本実施形態にかかる液晶装置1の構成を模式的に示す図である。図1(a)は斜視図、図1(b)は図1(a)中のA−A’線における断面図である。なお、液晶装置1は、スイッチング素子としてTFT(薄膜トランジスタ)40(図6参照)を用いた、OCBモードのアクティブマトリクス型の液晶装置である。
【0057】
図示する様に、液晶装置1は、枠状のシール材23を介して互いに対向するように貼り合わされた、第1の基板としての対向基板21と第2の基板としての素子基板22とからなる一対の基板を備えている。対向基板21と素子基板22とシール材23とによって形成された空間には、スプレイ配向又はベンド配向のいずれの配向状態をもとり得る、OCBモードの液晶が封入され液晶層37が形成されている。素子基板22の液晶層37とは反対側の面には第2の偏光板32が配置されており、対向基板21の液晶層37とは反対側の面には、第1の偏光板31が配置されている。素子基板22は対向基板21より大きく、一部が対向基板21に対して張り出した状態で貼り合わされている。この張り出した部分には、液晶層37を駆動するためのドライバーIC24が実装されている。液晶装置1は、液晶層37が封入された表示領域100において、該液晶層の透過率を変調することにより画像を表示する。
【0058】
図2は、OCBモードにおける液晶分子の配列を示す図である。図2においては、後述する画素電極等は図示を省略し、液晶層37と該液晶層を挟持する一対の基板、すなわち対向基板21と素子基板22のみを示している。液晶層37に含まれる液晶分子38は、初期的には図2(a)に示すようなスプレイ配向となっており、表示を行う際には、図2(b)に示すようなベンド配向に転移させて使用する。スプレイ配向からベンド配向への転移は、液晶層37に転移電圧を印加することによって行う。ベンド配向においては、液晶層37に含まれる液晶分子38が弓なりに並んでおり、その弓なり形状の曲がりの度合いを変えることで透過率を変調して表示を行う。
【0059】
図3は、液晶装置1の表示領域100における各種素子、配線等の等価回路図である。ここで、表示領域100とは、画素41が規則的に配置された領域であり、画像を形成して観察者に表示する領域である。表示領域100においては、複数の走査線102と複数のデータ線104とが交差するように形成されている。画素41は、走査線102とデータ線104との交差に対応して設けられており、画素41毎に第2の電極としての画素電極42が形成されている。また、走査線102に沿って、容量線106が形成されており、画素電極42と容量線106との間に補助容量44が形成されている。
【0060】
走査線102とデータ線104との交差に対応する位置には、画素電極42への通電を制御するTFT40が、画素41毎に形成されている。TFT40のソース電極54(図6参照)には、データ線104が電気的に接続されている。TFT40のゲート電極(図示せず)には、走査線102が電気的に接続されている。TFT40のドレイン電極52(図6参照)には、画素電極42が電気的に接続されている。
なお、画素41とは上述の各構成要素を含む機能的な概念である。一方、後述する画素領域45(図5参照)は、明度、色度等が一定の光を射出するドットであり、平面的な概念である。以下、図4〜6を用いて、画素41の構成、及び表示領域100内における画素領域45の配置等について述べる。
【0061】
図4は、画素41の構成を示す平面図である。ここで平面図とは、基板(素子基板22等)に対して垂直方向から見た図である。図5は、画素電極42及び遮光層49の形状を示す平面図である。なお、図4及び図5は、図3に示す画素41の配置を90度回転させて示している。
【0062】
図4に示すように、液晶装置1の画素41は、走査線102とデータ線104と容量線106との囲まれる略方形の領域に形成された画素電極42と、画素41毎に形成されたTFT40等からなる。そして、走査線102とデータ線104とが平面視で交差する領域の近傍にスペーサ20が形成されている。なお、補助容量44(図3参照)は画素電極42と容量線106とが重なる領域に形成されている(図示せず)。三種類の画素41(R,G,B)は、構成は同一であり、カラーフィルタ50(図6参照)の色のみが異なっている。
【0063】
図5に示すように、遮光層49は、走査線102とデータ線104と容量線106の形成領域、及びTFT40の形成領域に重なるように形成されており、平面視で画素電極42を囲んでいる。表示領域100(図1参照)は、規則的に形成された画素領域45と該画素領域を区画する非表示領域としての遮光層49の形成領域とを有している。すなわち、遮光層49で囲まれた領域が観察者に光を射出する画素領域45であり、遮光層49が形成されている領域が非表示領域である。そして、スペーサ20は遮光層49と重なる領域、すなわち非表示領域に形成されている。上記の走査線102等は第2の基板としての素子基板22に形成されており、遮光層49は第1の基板としての対向基板21に形成されている。かかる態様、及びTFT40の構成等を図6に示す。なお、後述するカラーフィルタ50(図6参照)は表示領域100の全域に形成されており、各画素領域45毎に夫々三原色(赤、緑、青)のいずれかに着色されている。上述の夫々の色の境界線は、平面視で遮光層49と重なっている。
【0064】
図6は、本実施形態にかかる液晶装置1の、図4に示すB−B’線における断面図である。図示するように液晶装置1は、TFT40等が形成された素子基板22と、カラーフィルタ50等が形成された対向基板21と、上述の一対の基板と図示しないシール材23(図1(b)参照)とで形成された空間に充填された液晶層37と、上述の一対の基板の間に挟持され該一対の基板の間隔を一定に保つスペーサ20等、を備えている。上記一対の基板は透明性が必要であり、ガラスあるいは石英等で形成されている。液晶層37は液晶分子38を含む層である。本図では、該液晶分子がスプレイ配向となっている状態を示している。
【0065】
本実施形態にかかる液晶装置1が備えるスペーサ20は、後述するようにフォトリソグラフィー法により形成されている。したがって、該スペーサの形状は、Z軸に垂直な断面の形状が上記一対の基板間で略一定となる柱状である。そして、該スペーサは、後述するように光学的異方性を有する高分子としての液晶性モノマー14(図7参照)を重合して形成されている。したがって、該スペーサ自体が光学的異方性を有している。スペーサ20は、各画素41毎に、第1の配向膜33上における遮光層49と重なる領域の一部に形成されている。本実施形態にかかる液晶装置1は、該スペーサに含有される液晶性モノマー14の配向を制御することで、スプレイ配向からベンド配向への転移に要する時間(転移時間)及び電圧(転移電圧)を減少させ、円滑なベンド転移を可能にしている。
【0066】
対向基板21の液晶層37側には、カラーフィルタ50と該カラーフィルタを区画する遮光層49が形成されている。そして、該双方の要素の液晶層37側には透明導電材料であるITO(酸化インジウム・すず合金)からなる第1の電極としての共通電極43が形成されている。ITOに替えてIZO(酸化インジウム・鉛合金)等の透明導電材料を用いてもよい。共通電極43は、表示領域100(図1参照)の略全域に形成されており、該表示領域において同電位を維持している。共通電極43上には、ポリイミド等を含む第1の配向膜33が形成されている。また、対向基板21の液晶層37の反対側の面には、第1の偏光板31が貼付されている。
【0067】
素子基板22の液晶層37側には、走査線102とデータ線104と容量線106とが形成されている。対向基板21と、走査線102及び容量線106との間には、酸化シリコン(SiO2)等からなる下地層を形成してもよい。走査線102の上層(液晶層37側)には、酸化シリコン(SiO2)等からなるゲート絶縁層58を挟んで半導体層56が形成されている。
【0068】
半導体層56は、例えばアモルファスシリコンやポリシリコン等から構成することができる。また、半導体層56に一部が重なる状態でソース電極54とドレイン電極52とが形成されている。ソース電極54は、データ線104の一部を突出するようにパターニングして形成されている。ドレイン電極52は、データ線104と同層の材料層を島状にパターニングして形成されている。
【0069】
半導体層56、ソース電極54、ドレイン電極52、走査線102等からTFT40が構成される。ここで、走査線102は、TFT40のゲート電極としても機能している。走査線(ゲート電極)102、ソース電極54、ドレイン電極52、データ線104、容量線106は、例えば、チタン(Ti)、クロム(Cr)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属、上記金属のうちの少なくとも1つを含む合金、上記金属を含む金属シリサイド、ポリシリサイド、導電性ポリシリコン等から構成することができる。また、上記各層の積層体で形成してもよい。
【0070】
TFT40の上層(液晶層37側)には、酸化シリコン(SiO2)等からなる層間絶縁層60を介して画素電極42が形成されている。画素電極42は、共通電極43と同様にITOからなる。画素電極42は、層間絶縁層60に設けられたコンタクトホール62を介してドレイン電極52に電気的に接続されている。上述したように画素電極42は、一部が容量線106と対向しており、容量線106との間で補助容量44(図3参照)を構成する。画素電極42上層には、ポリイミド等を含む第2の配向膜34が形成されている。また、素子基板22の液晶層37の反対側の面には、第2の偏光板32が貼付されている。そして、第2の偏光板32の外側には図示しない白色光源が配置されている。該白色光源から照射された光は、第1の偏光板31、第1の配向膜33、液晶層37、第2の配向膜34、第2の偏光板32の順に透過して、画素領域45から観察者に向けて射出される。
【0071】
第1の配向膜33と第2の配向膜34の配向方向は同一であり、Y方向すなわちデータ線104の延在方向に配向されている。第1の偏光板31と第2の偏光板32の透過軸は互いに略直交し、かつ、上記双方の配向膜の配向方向と略45度の角度を有している。上述の液晶層37のスプレイ配向は第1の配向膜33及び第2の配向膜34から配向規制力を受けるため、Y方向を向いている。以下、スペーサ20に含有される液晶性モノマー14の配列と、該スペーサによるベンド転移の円滑化について説明する。
【0072】
図7は、第1の実施形態の液晶装置1のスペーサ20とその周囲の部分を、対向基板21に垂直な面で切断した断面図である。図7(a)は液晶層37中の液晶分子38がスプレイ配向状態であるときを示す図であり、図7(b)は液晶分子38がベンド配向状態に転移した状態を示す図である。本図では、素子基板22と層間絶縁層60との間に形成されたTFT40等、及び対向基板21に貼付された第1の偏光板31と素子基板22に貼付された第2の偏光板32は、図示を省略している。
【0073】
また、本図において、対向基板21と第1の配向膜33との間に形成される遮光層49、カラーフィルタ50、及び共通電極43を合わせてカラーフィルタ層15として図示している。同様に、素子基板22と第2の配向膜34との間に形成される、層間絶縁層60及び画素電極42、及び上記双方の要素間に形成される図示しないTFT40(図6参照)等の各要素を合わせて、素子層16として図示している。
【0074】
図7(a)に示すように、スペーサ20は光学的異方性を有する高分子である液晶性モノマー14を含有する材料で構成されている。かかる液晶性モノマー14は、第1の配向膜33と第2の配向膜34との間で180度回転するツイスト配向となっている。ツイスト配向とは、一対の平面(図7においては第1の配向膜33と第2の配向膜34との一対の配向膜)間に充填されている光学的異方性を有する高分子の長軸方向が平面に平行であり、かつ、該一対の平面間で、該平面の法線方向を軸としてねじれている配向状態である。したがって、該液晶性モノマーの配向は、第1の配向膜33の近傍ではY方向を向いている。そして、液晶層37のZ方向の中間点の近傍では略90度回転してX方向を向いている。該中間点から第2の配向膜34に近づくにつれて更に略90度回転して、第2の配向膜34の近傍では再びY方向を向いている。そのため、スペーサ20に含まれる液晶性モノマー14の配向方向と配向膜の配向方向との間に差異が生じている。
【0075】
液晶層37に含まれる液晶分子38は、配向膜から配向規制力を受けており、スプレイ配向状態ではY方向に配列されている。しかし、スペーサ20の表面近傍、すなわちスペーサ20と液晶層37との界面近傍では、液晶分子38は該スペーサに含まれる液晶性モノマー14からの配向規制力を受けてX方向に配列される。液晶性モノマー14からの配向規制力は、スペーサ20の表面近傍で最も強く働きスペーサ20から離れるにつれて急速に弱まる。そして、液晶分子38の配向方向は、該配向規制力に合わせて変化する。すなわち、液晶分子38は、スペーサ20の表面近傍ではX方向に配向され、該表面近傍から離れるにつれて急速にY方向に戻る。したがって、スペーサ20の表面近傍は液晶分子38の配向が不連続となる領域、すなわちディスクリネーション領域18となる。
【0076】
上述したようにスプレイ配向は安定した状態であり、スプレイ配向からベンド配向への転移には、通常の表示時に比べて高い電圧である転移電圧が必要である。しかし、かかるディスクリネーション領域18が生じている場合、該領域が転移核となり、比較的低い転移電圧で上述のスプレイ配向から図7(b)に示すベンド配向へと転移させることができる。
【0077】
また、液晶装置1では、液晶層37のZ方向の中間の位置では、液晶性モノマー14が略90度回転してX方向を向いているため、上述の不連続が最大である。したがって、本実施形態にかかる液晶装置1は、液晶層37の層厚方向の略中間の位置から上述の転移を進行させることができるという特徴がある。
【0078】
液晶層37は表示領域100内に連続的に形成されているため、ディスクリネーション領域18は該表示領域内に一箇所に形成されていれば、一応は上述の効果を得ることができる。しかし、大画面すなわち広い表示領域100を持つ液晶装置の場合、一箇所のディスクリネーション領域18を転移核とした場合には転移時間の増加等が発生し得る。本実施形態の液晶装置1は画素41毎にスペーサ20が形成されているため、表示領域100の面積の大小にかかわらずに速やかにベンド転移を完了させることができる。また、転移核として機能しないスペーサ20が生じた場合においても、隣り合う画素41のスペーサ20を転移核としてベンド転移を進行させることができる。したがって、低い転移電圧で確実にベンド転移を完了できる。
【0079】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態について、図8を用いて説明する。図8は、上述の第1の実施形態にかかる液晶装置1の説明における図7に相当する図、すなわちスペーサ20とその周囲の部分の断面図である。図8(a)は液晶層37中の液晶分子38がスプレイ配向状態であるときを示す図であり、図8(b)は液晶分子38がベンド配向状態に転移した状態を示す図である。
【0080】
本実施形態にかかる液晶装置2は、第1の実施形態にかかる液晶装置1と同様に、対向基板21側の第1の配向膜33上に光学的異方性を有する高分子としての液晶性モノマー14を含有する組成物を重合して形成されたスペーサ20が配置されている。該スペーサが平面視で非表示領域に形成されている点も、第1の実施形態の液晶装置1と同一である。ただし、スペーサ20内の液晶性モノマー14の配向状態が、第1の実施形態にかかる液晶装置1と異なっている。そして、かかる配向状態を除いては、本実施形態にかかる液晶装置2は第1の実施形態にかかる液晶装置1と略同一の構成を有している。そこで、第1の実施形態の液晶装置1の説明における図1〜6に相当する図は記載せず、上述の図7に相当する図のみを示す。なお、図8においては、図7に示す構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は一部省略している。
【0081】
図8(a)に示すように、スペーサ20内の液晶性モノマー14の配向は、第1の配向膜33との界面近傍では、該第1の配向膜の配向方向すなわちY方向を向いている。そして、スペーサ20内における液晶性モノマー14の配向はハイブリッド配向となっている。ハイブリッド配向とは、一対の基板等の平面間に充填された光学的異方性を有する高分子の長軸方向が、一方の平面側では該平面に対し平行であり、他方の平面側では垂直となっている配向状態をいう。すなわち、液晶性モノマー14の長軸は、スペーサ20と第1の配向膜33との界面近傍では対向基板21と素子基板22とからなる一対の基板に水平であり、第2の配向膜34に近づくにつれて徐々に立ち上がり、スペーサ20と第2の配向膜34との界面近傍では略Z方向を示している。そのため、スペーサ20に含まれる液晶性モノマー14の配向方向と配向膜の配向方向との間に差異が生じる。
【0082】
一方、スペーサ20の周囲の液晶層37に含まれる液晶分子38の配向は、上述に第1の実施形態にかかる液晶装置1と同様にY方向を向くスプレイ配向である。したがって、スペーサ20と液晶層37との境界部分、特に第2の配向膜34に近い部分は、双方の(液晶分子38等の)高分子の配向方向が不連続となる領域、すなわちディスクリネーション領域18となる。
【0083】
液晶層37に含まれる液晶分子38は、画素電極42と共通電極43との間に電圧が印加されていないときはスプレイ配向、すなわち上記一対の基板に対して略水平方向に配向している。しかし、スペーサ20の表面近傍、すなわちスペーサ20と液晶層37との界面近傍では、液晶分子38は該スペーサに含まれる液晶性モノマー14からの配向規制力を受ける。その結果、上記界面近傍すなわちスペーサ20の表面近傍では、液晶分子38は上記一対の基板に対して略垂直方向に配向される。液晶性モノマー14からの配向規制力は、スペーサ20の表面近傍で最も強く働きスペーサ20から離れるにつれて急速に弱まる。そして、液晶分子38の配向方向は、該配向規制力に合わせて変化する。すなわち、液晶分子38の配向方向は、スペーサ20の表面近傍では上記一対の基板に対して略垂直方向となり、該表面近傍から離れるにつれて急速に上記一対の基板に対して略水平の方向に戻る。したがって、スペーサ20の表面近傍は液晶分子38の配向が不連続となる領域、すなわちディスクリネーション領域18となる。
【0084】
上述したようにスプレイ配向は安定した状態であり、スプレイ配向からベンド配向への転移には、通常の表示時に比べて高い電圧である転移電圧が必要である。しかし、かかるディスクリネーション領域18が生じている場合、該領域が転移核となり、比較的低い転移電圧で上述のスプレイ配向から図8(b)に示すベンド配向へと転移させることができる。したがって、本実施形態にかかる液晶装置2は、第1の実施形態にかかる液晶装置1と同様に、比較的低い転移電圧で上述のスプレイ配向からベンド配向へと転移させることができ、画像表示を開始する際等に安定した表示を可能にしている。
【0085】
なお、本実施形態にかかる液晶装置2において、スペーサ20は非表示領域である遮光層49の形成領域に配置されているため、表示品質に影響を及ぼすことが回避される点は、上述の第1の実施形態の液晶装置1と同様である。また、スペーサ20は画素41毎に形成されているため、低い転移電圧で確実にベンド転移を完了できる点も、上述の第1の実施形態の液晶装置1と同様である。
【0086】
(第3の実施形態)
続いて、第3の実施形態として、液晶装置の製造方法について図面を用いて説明する。図9及び図10は、ツイスト配向の液晶性モノマー14を含有するスペーサ20を備える液晶装置の製造方法を示す工程断面図である。TFT40等の形成工程を省略し、スペーサ20の形成工程と液晶層37の形成工程(すなわち液晶の充填工程)を示している。また、上述の各実施形態の液晶装置の構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は一部省略している。また、図9(a)のみ、Z方向を上向きに図示し、図9(b)以降はZ方向を下向きに図示している。更に、図9と図10は連続した工程を説明しているので、図9で説明した要素については図10での説明を一部省略している。以下、各工程について順に説明する。
【0087】
まず、図9(a)に示すように、素子層16が形成された素子基板22上に、第3の工程として第2の配向膜34を形成する。そして、第4の工程として該第2の配向膜にラビング用ローラ19を用いてラビング処理を行う。ラビング方向はY方向である。
【0088】
次に、図9(b)に示すように、カラーフィルタ層15が形成された対向基板21上に、第1の工程として第1の配向膜33を形成する。そして、第2の工程として該第1の配向膜にラビング用ローラ19を用いてラビング処理を行う。ラビング方向はY方向である。なお、図9(a)に示す工程と図9(b)に示す工程とはどちらを先にしてもよく、同時に、すなわち並行して行うこともできる。
【0089】
次に、図9(c)に示すように、第5の工程として第1の配向膜33上に光重合性の官能基を有する液晶性モノマー14とカイラル剤とを溶媒に溶解等させてなる液材(液体材料)を塗布して、塗布膜としての液晶性モノマー層13を形成する。カイラル剤とは、光学的異方性を有する高分子にツイスト(ツイスト配向)を生じさせる機能を有する薬剤である。該カイラル剤も、カイラル構造を有する重合性モノマーであることが好ましい。かかるカイラル剤の含有(混入)比率については後述する。塗布方法はスピンコート法が好ましい。そして、該液晶性モノマー層を含む対向基板21全体を所定の温度まで加熱して、液晶性モノマー14に液晶相を発現させる。
【0090】
ここで、液晶性モノマー層13は、将来的にスペーサ20(図6等参照)となる。したがって、該液晶性モノマー層の層厚は、加熱及びパターニングによる収縮等を考慮してスペーサ20の高さ、すなわち対向基板21と素子基板22との間隔(正確には該間隔の値から素子層16、カラーフィルタ層15等の層厚を減じた値)と一致するように定める。なお、かかる間隔、すなわちスペーサ20の高さは、シール材23(図1(b)参照)の高さと略同一である。
【0091】
光重合性の官能基を有する液晶性モノマーとは、アクリレートあるいはメタクリレート等の光重合性の官能基が液晶骨格に結合された構造を有し、所定の温度範囲において液晶状態を示す材料である。該液晶性モノマーは数種類の材料の混合物が好ましい。数種類の単品化合物を混合することで、共晶効果により、液晶の温度範囲を広げることができるからである。
【0092】
上述の加熱により、液晶性モノマー層13に含まれる液晶性モノマー14は、カイラル剤の影響、及び第1の配向膜33の配向規制力の等の影響により所定の配向となる。上述したように、第1の配向膜33はY方向に配向しており、該第1の配向膜上に配置された光学的異方性を有する高分子に対して該Y方向の配向規制力を及ぼす。したがって、第1の配向膜33との界面近傍における液晶性モノマー14の配向は略Y方向となる。
【0093】
そして、液晶性モノマー14は、上述のカイラル剤の作用により対向基板21に垂直な線であるZ方向を軸としてツイスト配向する。かかるツイスト(回転)の角度は、カイラル剤の含有比率等で調整可能である。本実施形態における含有比率は、上述のツイストが液晶性モノマー層13の層厚内で180度ツイスト(回転)するように調整されている。したがって、液晶性モノマー層13の表面(将来的にスペーサ20と第2の配向膜34との界面となる面)における液晶性モノマー14の配向方向は略Y方向となる。上述したように、第1の配向膜33との界面近傍においても、液晶性モノマー14の配向方向は略Y方向である。したがって、上記界面と上記液晶性モノマー層の表面との中間では、液晶性モノマー14はY方向に直交する方向、すなわちX方向を向くように配向される。
【0094】
次に、図9(d)に示すように、上述の加熱を維持しつつ、すなわち液晶性モノマー14の180度のツイストを維持しつつ、第6の工程として透過部12aと遮光部12bとを備えるフォトマスク12を介して液晶性モノマー層13に紫外線11を照射する。透過部12aと対向する領域が、将来的にスペーサ20が形成される領域である。紫外線11は、液晶性モノマー14を重合させて高分子化する機能を有している。したがって、透過部12aと対向する領域(一点鎖線で区画された領域)の液晶性モノマー14は重合され高分子となり、遮光部12bと対向する領域の液晶性モノマー14は重合されずにそのままの状態を保つ。
【0095】
次に、図10(a)に示すように、第7の工程として遮光部12bと対向する領域の液晶性モノマー層13すなわち高分子化されていない液晶性モノマー層13を剥離液により除去してパターニングする。剥離液としては有機系の溶剤、具体的にはIPA(イソプロピルアルコール)、アセトン、エタノール等を用いることができる。かかる工程により、180度のツイスト配向を有する光学的異方性を有する高分子としての液晶性モノマー14を含有するスペーサ20が形成される。
【0096】
次に、対向基板21と素子基板22とのどちらか一方の外縁部に、図示しないシール材23(図1(b)参照)を形成する。そして図10(b)に示すように、第8の工程として対向基板21と素子基板22とを、配向膜(第1の配向膜33と第2の配向膜34)が形成されている面が対向するように貼り合わせる。上述したようにスペーサ20とシール材23の高さは略同一である。したがってシール材23とスペーサ20とにより、対向基板21と素子基板22との間隔は略一定に保たれる。
【0097】
次に、図10(c)に示すように、第9の工程として上記一対の基板及びシール材23で構成される空間内にOCBモードの液晶を注入して液晶層37を形成する。液晶層37中の液晶分子38は第1の配向膜33及び第2の配向膜34から配向規制力を受ける。したがって、一対の電極(共通電極43と画素電極42)間に電圧が印加されていない状態において液晶分子38はY方向を向くスプレイ配向となる。以上の工程に、液晶を注入するためにシール材23に設けられている注入口(不図示)の封止工程等を実施することで、液晶装置が形成される。
【0098】
(本実施形態の効果)
上述したように、液晶分子38の配向は、図示するようにY方向を向くスプレイ配向となる。一方、スペーサ20に含有される液晶性モノマー14の配向は180度回転するツイスト配向である。液晶分子38は、スペーサ20の表面のうち配向膜と接している領域を除く領域の近傍、すなわちスペーサ20と液晶層37との界面近傍では、上述のツイスト配向された液晶性モノマー14から配向規制力を受けて、上述のY方向を向くスプレイ配向とは異なる方向に配向される。したがって、スペーサ20と液晶層37との界面近傍には、液晶分子38の配向が不連続となる領域であるディスクリネーション領域18が形成される。
【0099】
上述したようにディスクリネーション領域18は、液晶層37の配向をスプレイ配向からベンド配向へと転移させる際の転移核となる。従って、本実施形態にかかる製造方法で得られた液晶装置は、比較的低い転移電圧で円滑にスプレイ配向からベンド配向へと転移させることが可能となる。
【0100】
なお、本実施形態及び後述する第4〜第6の実施形態において、スペーサ20を素子基板22上に形成する態様も実施可能である。しかし、かかる態様では、液晶性モノマー層13のパターニング時に剥離液によりTFT40等が劣化する可能性がある。したがって、スペーサ20は対向基板21上に形成することが好ましい。
【0101】
(第4の実施形態)
続いて、第4の実施形態として、ハイブリッド配向のスペーサ20を有する液晶装置の製造方法について、図面を用いて説明する。図11及び図12は、第4の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図であり、上述の第3の実施形態と同様に、スペーサ20の形成工程と液晶層37の形成工程を示している。また、上述の各実施形態の液晶装置の構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は一部省略している。図11(a)のみ、Z方向を上向きに図示し、図11(b)以降はZ方向を下向きに図示している点は、上述の第3の実施形態と同様である。また、図11と図12は連続した工程を説明しているので、図11で説明した要素については図12での説明を一部省略している点も、上述の第3の実施形態と同様である。以下、各工程について順に説明する。
【0102】
まず、図11(a)に示すように、素子層16が形成された素子基板22上に、第3の工程として第2の配向膜34を形成する。そして、第4の工程として該第2の配向膜にラビング用ローラ19を用いてラビング処理を行う。ラビング方向はY方向である。
【0103】
次に、図11(b)に示すように、カラーフィルタ層15が形成された対向基板21上に、第1の工程として第1の配向膜33を形成する。そして、第2の工程として該第1の配向膜にラビング用ローラ19を用いてラビング処理を行う。ラビング方向はY方向である。上述の第3の実施形態と同様に、図11(a)に示す工程と図11(b)に示す工程とはどちらを先にしてもよく、また、同時に行うこともできる。
【0104】
次に、図11(c)に示すように、第5の工程として第1の配向膜33上に光重合性の官能基を有する液晶性モノマー14と界面活性剤とを溶媒に溶解等させてなる液材を塗布して、塗布膜としての液晶性モノマー層13を形成する。上述の第3の実施形態と同じく、塗布方法はスピンコート法が好ましい。また、液晶性モノマー14は数種類の材料の混合物が好ましい点も、上述の第3の実施形態と同様である。
【0105】
そして次に、該液晶性モノマー層を含む対向基板21全体を所定の温度まで加熱して、液晶性モノマー14に液晶相を発現させる。液晶性モノマー層13は、将来的にスペーサ20(図6等参照)となる。したがって、該液晶性モノマー層の層厚は、加熱及びパターニングによる収縮等を考慮してスペーサ20の高さ、すなわち対向基板21と素子基板22との間隔と一致するように定める。なお、かかる間隔すなわちスペーサ20の高さは、シール材23(図1(b)参照)の高さと略同一である。
【0106】
界面活性剤は、基板面に水平方向の配向規制力を有する基板上に形成された液晶性モノマー14等の光学的異方性を有する高分子の配列を、該基板面に対して角度を付与する作用を発現する性質を有している。一方で、第1の配向膜33の配向方向はY方向であるため、上述の配向規制力はY方向に働く。そして、該配向規制力は第1の配向膜33に近いほど強く働く。したがって、対向基板21上に液晶性モノマー14と界面活性剤とを含む液材が塗布されて加熱により液晶相が発現すると、液晶性モノマー14の配向方向は、該対向基板に近い部分、すなわち第1の配向膜33と液晶性モノマー層13との界面近傍では略Y方向となり、該界面から遠ざかるにつれて対向基板21に対して角度を有する方向となる。
【0107】
上述の角度は、液晶性モノマー14と界面活性剤との混合比率によって調整できる。本工程では、かかる混合比率を、上記角度が液晶性モノマー層13の表面(将来的に第2の配向膜34との界面となる面)近傍では対向基板21の基板面に対して垂直となる様に調整している。したがって、本工程で形成された液晶性モノマー層13の(液晶性モノマー14の)配向は、第1の配向膜33との界面近傍では対向基板21の基板面に対して略水平となり、該液晶性モノマー層の表面近傍では上記基板面に対して垂直となるハイブリッド配向となる。
【0108】
次に、図11(d)に示すように、上述の加熱を維持しつつ、すなわちハイブリッド配向を維持させつつ、第6の工程として透過部12aと遮光部12bとを備えるフォトマスク12を介して液晶性モノマー層13に紫外線11を照射する。透過部12aと対向する領域(一点鎖線で区画されている領域)が、将来的にスペーサ20が形成される領域である。紫外線11は、液晶性モノマー14を重合させて高分子化する機能を有している。したがって、透過部12aと対向する領域の液晶性モノマー14は重合されて高分子となり、遮光部12bと対向する領域の液晶性モノマー14は重合されずにそのままの状態を保つ。
【0109】
次に、図12(a)に示すように、第7の工程として遮光部12bと対向する領域の液晶性モノマー層13すなわち高分子化されていない液晶性モノマー層13を剥離液により除去してパターニングする。剥離液は、上述の第3の実施形態で用いたものと同様の液を用いることができる。かかる工程により、ハイブリッド配向の異方性高分子(光学的異方性を有する高分子)を含有するスペーサ20が形成される。
【0110】
次に、対向基板21と素子基板22とのどちらか一方の外縁部に、図示しないシール材23(図1(b)参照)を形成する。そして図12(b)に示すように、第8の工程として対向基板21と素子基板22とを、配向膜(33,34)が形成されている面が対向するように、スペーサ20を介して貼り合わせる。上述のシール材23及びスペーサ20により、対向基板21と素子基板22との間隔は略一定に保たれる。
【0111】
次に、図12(c)に示すように、第9の工程として上記一対の基板及びシール材23で構成される空間内にOCBモードの液晶を注入して、液晶層37を形成する。以上の工程に、液晶を注入するためにシール材23に設けられている注入口の封止工程等を実施することで、液晶装置が形成される。
【0112】
なお、液晶を対向基板21と素子基板22との間に注入する方法としては、該一対の基板のいずれか一方の基板にシール材23を形成後、該一方の基板と該シール材で形成される凹部内に液晶を滴下し、その後もう一方の基板を貼り合わせる方法を用いることもできる。
【0113】
(本実施形態の効果)
上述するように第1の配向膜33及び第2の配向膜34は、Y方向の配向処理が施されている。したがって、上記一対の配向膜で挟持される液晶層37に含まれる液晶分子38の配向は、図示するようにY方向を向くスプレイ配向となる。一方、スペーサ20に含有される液晶性モノマー14の配向はハイブリッド配向であり、第2の配向膜34との界面近傍では基板面に対して略垂直に配向されている。液晶分子38は、スペーサ20と液晶層37との界面近傍では、上述のハイブリッド配向された液晶性モノマー14から配向規制力を受けて、上述のスプレイ配向とは異なる方向に配向される。特に、第2の配向膜34に近い領域では上記配向規制力が強く働く。したがって、上述の第3の実施形態にかかる液晶装置と同様に本実施形態により得られる液晶装置のスペーサ20と液晶層37との界面近傍、特に第2の配向膜34に近い部分の該界面近傍には、液晶分子38の配向が不連続となる領域であるディスクリネーション領域18が形成される。
【0114】
上述したようにディスクリネーション領域18は、液晶層37の配向をスプレイ配向からベンド配向へと転移させる際の転移核となる。従って、本実施形態にかかる製造方法で得られた液晶装置は、上述の第3の実施形態にかかる液晶装置と同様に、比較的低い転移電圧で円滑にスプレイ配向からベンド配向へと転移させることが可能となる。
【0115】
(第5の実施形態)
続いて、第5の実施形態として、対向基板21の液晶層37側に2層の配向膜を備える液晶装置の製造方法について説明する。図13は、第5の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図であり、上述の各実施形態と同様に、スペーサ20の形成工程と液晶層37の形成工程を示している。本実施形態の液晶装置の製造方法は、第3の実施形態の液晶装置の製造方法の図10(a)までの工程と同一である。そこで、図10(a)に示す、剥離液を用いて液晶性モノマー層13をパターニングしてスペーサ20を形成した後の工程を説明する。なお、上述の各実施形態の液晶装置の構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は一部省略している。
【0116】
まず、上述の第1〜7の工程を実施する。図13(a)に示すように、対向基板21の将来的に液晶層37側となる面に、第1の配向膜33とスペーサ20が形成される。スペーサ20に含有される液晶性モノマー14は、180度のツイスト配向となっている。
【0117】
次に、図13(b)に示すように、第10の工程として対向基板21の将来的に液晶層37側となる面に、スペーサ20及び第1の配向膜33を覆うように第3の配向膜35を形成する。該第3の配向膜の形成材料及び形成方法等は、第1の配向膜33と同一であることが好ましい。
【0118】
次に、図13(c)に示すように、第11の工程として、ラビング用ローラ19を用いて第3の配向膜35にY方向のラビング処理を実施する。かかる処理により、第3の配向膜35に含有されるポリイミド等の分子が、第1の配向膜33に含有されるポリイミド等の分子と同様に、Y方向に配向される。また、かかるラビング処理により、スペーサ20の表面の少なくとも一部では第3の配向膜35が剥離して、スペーサ20に含有される液晶性モノマー14が露出する。なお、図13(c)では該表面の略全面が露出するように図示している。
【0119】
次に、対向基板21と素子基板22とのどちらか一方の外縁部に、図示しないシール材23(図1(b)参照)を形成する。そして図13(d)に示すように、第8の工程として対向基板21と素子基板22とを、配向膜(第3の配向膜35と第2の配向膜34)が形成されている面が対向するように貼り合わせる。上述したようにスペーサ20とシール材23の高さは略同一である。したがってシール材23とスペーサ20とにより、対向基板21と素子基板22との間隔は略一定に保たれる。
【0120】
以下、上記第3及び第4の実施形態と同様に、第9の工程として上記一対の基板及びシール材23で構成される空間内にOCBモードの液晶を注入して液晶層37を形成する。そして、該液晶を注入するためにシール材23に設けられている図示しない注入口を封止することで、液晶装置を形成する。
【0121】
(本実施形態の効果)
本実施形態の製造方法で形成された液晶装置は、対向基板21の液晶層37側に第1の配向膜33と第3の配向膜35とが積層されている。そして、液晶層37を第2の配向膜34と第3の配向膜35とで挟持している。
【0122】
上述したように、第1の実施形態における第7の工程では、第1の配向膜33の液晶層37側に形成された液晶性モノマー層13をパターニングする。かかるパターニングの際には、第1の配向膜33が剥離液により劣化することもあり得る。本実施形態の製造方法で形成された液晶装置は、上述のパターニングの後に再度配向膜(第3の配向膜35)が形成されているため、第7の工程による劣化の可能性のない配向膜で液晶層37を挟持できる。したがって、比較的低い転移電圧で円滑にスプレイ配向からベンド配向へと転移させることが可能であると共に、立ち上げ(始動)後においても、品質の劣化が抑制された良好な画像を表示できる。また、上記第7の工程における剥離液の選定の自由度が向上するため、液晶性モノマー層13のパターニングをより一層容易に実施できる。
【0123】
なお、本実施形態では第1の実施形態の製造方法に第3の配向膜35を形成する工程等を付加する態様を示したが、第2の実施形態の製造方法に第3の配向膜35を形成する工程等を付加する態様も可能である。
【0124】
(第6の実施形態)
続いて第6の実施形態として、対向基板21の液晶層37側に互いに異なる方向に配向された2層の配向膜を備える液晶装置の製造方法について、図面を用いて説明する。図14〜16は、第6の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図であり、上述の第3の実施形態と同様に、スペーサ20の形成工程と液晶層37の形成工程を示している。図14(a)はZ方向を上向きに、Y方向を右向きに図示し、図14(b)はZ方向を下向きに、X方向を右向きに図示し、図14(c)以降はZ方向を下向きにY方向を左向きに図示している。上述の各実施形態の液晶装置の構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は一部省略している。また、図14〜16は連続した工程を説明しているので、図14で説明した要素については図15及び図16での説明を一部省略している。以下、各工程を順に説明する。
【0125】
まず、図14(a)に示すように、素子層16が形成された素子基板22の将来的に液晶層37側となる面に、第14の工程として第2の配向膜34を形成する。そして、第15の工程として、ラビング用ローラ19を用いて、該第2の配向膜に素子基板22に水平な方向であるY方向のラビング処理を行う。
【0126】
次に、図14(b)に示すように、カラーフィルタ層15が形成された対向基板21の将来的に液晶層37側となる面に、第12の工程として第1の配向膜33を形成する。そして、第13の工程として、ラビング用ローラ19を用いて、該第1の配向膜に、対向基板21に水平の方向でありかつY方向と90度異なる方向であるX方向のラビング処理を行う。
【0127】
次に、図14(c)に示すように、第16の工程として第1の配向膜33の将来的に液晶層37側となる面に光重合性の官能基を有する液晶性モノマー14を溶媒に溶解等させてなる液材を塗布して、塗布膜としての液晶性モノマー層13を形成する。そして、該液晶性モノマー層を含む対向基板21全体を所定の温度まで加熱して、液晶性モノマー14に液晶相を発現させる。上述したように、図14(c)は、図14(b)を90度回転させて図示している。上述の塗布方法はスピンコート法が好ましい。また、第3の実施形態と同様に、該液晶性モノマーは数種類の材料の混合物が好ましい。
【0128】
ここで、液晶性モノマー14に液晶相が発現する際、該液晶相の配列は第1の配向膜33から配向規制力を受ける。また、本実施形態の液晶性モノマー層13には、上述の第3〜5の実施形態の該液晶性モノマー層とは異なり、カイラル剤あるいは界面活性剤は含まれていない。したがって、液晶性モノマー層13内の液晶性モノマー14の配列方向は、該液晶性モノマー層の全体で共通のX方向となる。
【0129】
次に、図15(a)に示すように、上述の加熱を維持しつつ、第17の工程として透過部12aと遮光部12bとを備えるフォトマスク12を介して液晶性モノマー層13に紫外線11を照射することにより、透過部12aと対向する領域(一点鎖線で区画された領域)の液晶性モノマー14を重合して高分子化する。ここで、遮光部12bと対向する領域の液晶性モノマー14は、重合されずにそのままの状態を保つ。
【0130】
次に、図15(b)に示すように、第18の工程として遮光部12bと対向する領域の液晶性モノマー層13、すなわち重合されていない液晶性モノマー層13を剥離液により除去してパターニングする。剥離液は、上述の第3〜5の実施形態と同様の液を用いることができる。かかる工程により、X方向の配向を有する異方性高分子としての液晶性モノマー14を含有するスペーサ20が形成される。
【0131】
次に、図15(c)に示すように、第19の工程としてスペーサ20が形成された対向基板21の将来的に液晶層37側となる面に、スペーサ20及び第1の配向膜33を覆うように第3の配向膜35を形成する。該第3の配向膜の材質及び形成方法は、第1の配向膜33及び第2の配向膜34の形成方法等と同一でよい。
【0132】
次に、図16(a)に示すように、第20の工程として第3の配向膜35にY方向のラビング処理を行い、第3の配向膜35に含有されるポリイミド等の分子をY方向に配向する。また、かかるラビング処理により、スペーサ20の表面の少なくとも一部では第3の配向膜35が剥離して、スペーサ20に含有される液晶性モノマー14が露出する。なお、図16(a)では該表面の略全面が露出するように図示している。
【0133】
次に、対向基板21と素子基板22とのどちらか一方の外縁部に、図示しないシール材23(図1(b)参照)を形成する。そして図16(b)に示すように、第21の工程として対向基板21と素子基板22とを、配向膜(第3の配向膜35と第2の配向膜34)が形成されている面が対向するように貼り合わせる。上述したようにスペーサ20とシール材23の高さは略同一である。したがってシール材23とスペーサ20とにより、対向基板21と素子基板22との間隔は略一定に保たれる。
【0134】
次に、図16(c)に示すように、第22の工程として上記一対の基板(対向基板21及び素子基板22)及びシール材23で構成される空間内にOCBモードの液晶を注入して、液晶層37を形成する。以上の工程に、液晶を注入するためにシール材23に設けられている注入口の封止工程等を更に実施することで、液晶装置を形成する。
【0135】
(本実施形態の効果)
上述したように、液晶層37を挟持する一対の配向膜(第3の配向膜35と第2の配向膜34)の配向方向は、共にY方向である。そしてかかる配向は、挟持される液晶層37中の液晶分子38に配向規制力を印加する。したがって、上記一対の配向膜で挟持される液晶層37に含まれる液晶分子38の配向は、図示するようにY方向を向くスプレイ配向となる。一方、スペーサ20に含有される液晶性モノマー14はX方向に配向されている。したがって、本実施形態の製造方法により得られる液晶装置は、第3の実施形態の製造方法により得られる液晶装置と同様に、スペーサ20の配向膜との界面を除く表面の近傍、すなわちスペーサ20と液晶層37との界面近傍にディスクリネーション領域18が形成される。そして、該ディスクリネーション領域を転移核とすることにより、比較的低い転移電圧で円滑にスプレイ配向からベンド配向へと転移させることできる。
【0136】
また、本実施形態の製造方法は、上述の第3〜5の実施形態の製造方法とは異なり、スペーサ20の形成にカイラル剤及び界面活性剤等を用いていない。したがって、上述の薬剤を混入する工程を省くことができる。また、該薬剤の添加量の微妙な調整によらず、常に液晶層37を挟持する一対の配向膜(第3の配向膜35と第2の配向膜34)の配向と直交する配向を有するスペーサ20を形成できる。
【0137】
また、本実施形態の製造方法により得られる液晶装置は、スペーサ20の形成工程(第18の工程)により表面が劣化した可能性のある第1の配向膜33に代わり、スペーサ20の形成後に新たに形成された第3の配向膜35と、第2の配向膜34と、で液晶層37を挟持できる。したがって、上述の表面の劣化が生じている場合においても、良好な画像を表示できる。また、上記第18の工程における剥離液の選定の自由度が向上するため、液晶性モノマー層13のパターニングをより一層容易に実施できる。なお、第1の配向膜33に付与する配向の方向は、対向基板21に垂直の方向すなわちZ方向でもよい。かかる方向の配向は、レーザー光の照射等で形成できる。
【0138】
(電子機器)
次に、上述の第1〜第6の実施形態にかかる液晶装置のいずれかを電子機器に適用した例について説明する。図17は、電子機器としての携帯電話機80の斜視図である。携帯電話機80は、表示部81及び操作ボタン82を有している。表示部81は、内部に組み込まれた上述の第1〜第6の実施形態にかかる液晶装置のいずれかの液晶装置によって、操作ボタン82で入力した内容や着信情報を始めとする様々な情報について表示を行うことができる。携帯電話機80は、表示部81に搭載された液晶装置1(または液晶装置2)を容易に初期配向転移させて表示可能な状態に移行することができる。また、上述の液晶装置においてスプレイ配向への逆転移が生じにくいことに起因して、高品位な表示を行うことができる。
【0139】
図18は、電子機器としての投射型表示装置(プロジェクター)200の概略構成を示す図である。投射型表示装置200は、上述の第1〜第6の実施形態にかかる液晶装置のいずれかを光変調装置として用いている。図18において、210は光源、213、214はダイクロイックミラー、215、216、217は反射ミラー、218は入射レンズ、219はリレーレンズ、220は出射レンズ、225はクロスダイクロイックプリズム、226は投写レンズである。そして、222、223、及び224は、上述の第1〜第6の実施形態にかかる液晶装置のいずれかを用いた液晶光変調装置である。具体的には、222が赤色光用液晶光変調装置、223が緑色光用液晶光変調装置、224が青色光用液晶光変調装置、である。
【0140】
光源210は、メタルハライド等のランプ211とランプの光を反射するリフレクタ212とを備えている。青色光、緑色光反射のダイクロイックミラー213は、光源210からの光束のうちの赤色光を透過させると共に、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー217で反射されて、赤色光用液晶光変調装置222に入射される。
【0141】
一方、ダイクロイックミラー213で反射された光のうち緑色光は緑色光反射のダイクロイックミラー214によって反射され、緑色光用液晶光変調装置223に入射される。なお、青色光はダイクロイックミラー214も透過する。青色光に対しては、光路長が緑色光、赤色光と異なるのを補償するために、入射レンズ218、リレーレンズ219、出射レンズ220を含むリレーレンズ系からなる導光手段221が設けられ、これを介して青色光が青色光用液晶光変調装置224に入射される。
【0142】
各液晶光変調装置により変調された三原色光の夫々はクロスダイクロイックプリズム225に入射する。このプリズムは4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって上述の三原色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投写光学系である投写レンズ226によってスクリーン227上に投写され、画像が拡大されて表示される。
【0143】
本実施形態によれば、短時間で液晶層全体を確実にベンド転移させることができる上述の第1〜第6の実施形態にかかる液晶装置のいずれかを搭載したので、表示特性が高く、応答速度の高い表示が可能な投射型表示装置200を得ることができる。
【0144】
(変形例1)
上述の第1の実施形態において、スペーサ20に含有される液晶性モノマー14の配向は180度回転(ツイスト)するツイスト配向であった。しかし、ツイストの角度は180度に限定されるものではない。液晶性モノマー14がスプレイ配向になっていない限り、ディスクリネーション領域18が形成され、該領域を転移核として、短時間で液晶層37全体を確実にベンド転移させることができる。
【0145】
(変形例2)
上述の第5の実施形態においては、スペーサ20に含有される液晶性モノマー14の配向はツイスト配向であった。しかし、かかる配向はツイスト配向に限定されることはない。スペーサ20に含有される液晶性モノマー14の配向をハイブリッド配向としても、スペーサ20の形成時に劣化した第1の配向膜33に代わり、新たに形成した第3の配向膜35により液晶分子を配向できるという効果を、第5の実施形態によって得られる液晶装置と同様に得ることができる。
【0146】
(変形例3)
上述の各実施形態では、スペーサ20として断面が円形の円柱状の物を示している。しかし、スペーサ20の断面形状は円形に限定されるものではなく、四角形等の他の形状のものを用いることもできる。また、スペーサ20の個数も、1つ画素41につき1つに限定されるものではない。各画素41毎に複数のスペーサ20を形成して、画素領域45の周囲に複数の転移核を形成することもできる。逆に、複数の画素41に対して1つのスペーサ20を形成することもできる。スプレイ配向からベンド配向への転移は画素領域45を超えて伝播するため、かかる態様でも表示領域100内の液晶層37全体をベンド転移させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】第1の実施形態にかかる液晶装置の構成を模式的に示す図。
【図2】OCBモードにおける液晶分子の配列を示す図。
【図3】液晶装置の表示領域における各種素子、配線等の等価回路図。
【図4】画素の構成を示す平面図。
【図5】画素電極及び遮光層の形状を示す平面図。
【図6】図4中のB−B’線における断面図。
【図7】第1の実施形態の液晶装置のスペーサを、対向基板に垂直な面で切断した断面図。
【図8】第2の実施形態の液晶装置のスペーサを、対向基板に垂直な面で切断した断面図。
【図9】第3の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図10】第3の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図11】第4の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図12】第4の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図13】第5の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図14】第6の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図15】第6の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図16】第6の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図17】電子機器としての携帯電話機の斜視図。
【図18】電子機器としての投射型表示装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0148】
1…液晶装置、2…液晶装置、11…紫外線、12…フォトマスク、12a…透過部、12b…遮光部、13…塗布膜としての液晶性モノマー層、14…光学的異方性を有する高分子としての液晶性モノマー、15…カラーフィルタ層、16…素子層、18…ディスクリネーション領域、19…ラビング用ローラ、20…スペーサ、21…第1の基板としての対向基板、22…第2の基板としての素子基板、23…シール材、24…ドライバーIC、31…第1の偏光板、32…第2の偏光板、33…第1の配向膜、34…第2の配向膜、35…第3の配向膜、37…液晶層、38…液晶分子、40…TFT、41…画素、42…第2の電極としての画素電極、43…第1の電極としての共通電極、44…補助容量、45…画素領域、49…遮光層、50…カラーフィルタ、52…ドレイン電極、54…ソース電極、56…半導体層、58…ゲート絶縁層、60…層間絶縁層、62…コンタクトホール、80…携帯電話機、81…表示部、82…操作ボタン、100…表示領域、102…走査線、104…データ線、106…容量線、200…投射型表示装置、210…光源、211…ランプ、212…リフレクタ、213…ダイクロイックミラー、214…ダイクロイックミラー、215…反射ミラー、216…反射ミラー、217…反射ミラー、218…入射レンズ、219…リレーレンズ、220…出射レンズ、222…赤色光用液晶光変調装置、223…緑色光用液晶光変調装置、224…青色光用液晶光変調装置、225…クロスダイクロイックプリズム、226…投写レンズ、227…スクリーン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置、液晶装置の製造方法、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置の一例として、OCB(Optically Compensated Birefringence)モードの液晶装置が知られている。OCBモードの液晶装置は、一対の基板と、この一対の基板の間に封入された液晶層とを有して構成されており、液晶層は、スプレイ配向又はベンド配向のいずれの配向状態をもとり得るように構成される。そして、この液晶層は、初期状態ではスプレイ配向となっており、表示を行う際には、転移電圧を印加することによってベンド配向に転移させて使用する。
【0003】
ベンド配向への転移を容易に行うための構成として、例えば特許文献1には、軟性高分子を含む高分子スペーサを上記一対の基板間に配置する態様が開示されている。この高分子スペーサの横軸方向の内周に位置する高分子鎖は縦軸方向に配列されるため、かかる態様によれば、該高分子スペーサの周辺にある液晶は該高分子鎖に沿って配向されるため転移核が形成され、該転移核を起点とすることでベンド転移が起こりやすくなる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−209062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記高分子鎖の配向は、もともとはアモルファス状態のものを応力により配向させているものであり、好適な配向状態にはなり得ない。したがって、円滑なベンド配向への転移を行うためには、依然として高電圧が必要になるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]互いに対向して配置された第1の基板と第2の基板とからなる一対の基板と、上記一対の基板に挟持され、配向状態がスプレイ配向とベンド配向のいずれか一方から他方へと転移する液晶層と、上記第1の基板の上記液晶層側に形成された第1の電極と、上記第2の基板の上記液晶層側に形成された第2の電極と、上記第1の電極の上記液晶層側に形成された第1の配向膜と、上記第2の電極の上記液晶層側に形成された第2の配向膜と、上記一対の基板間に配置され、光学的異方性を有する高分子を含有したスペーサと、を備える液晶装置であって、上記第1の配向膜及び上記第2の配向膜は、互いに同一方向に配向処理が施されており、上記スペーサの表面の少なくとも一部が上記液晶層と接触しており、かつ、該一部近傍における上記光学的異方性を有する高分子が上記配向膜の配向方向とは異なる方向に配向していることを特徴とする液晶装置。
【0008】
このような構成によれば、上述のスペーサの表面の少なくとも一部に接触している液晶層は、上記配向膜の配向方向とは異なる方向に配向される。したがって、該一部近傍の液晶層内に容易に転移核を形成できる。そして、かかる転移核により、上記液晶層を容易にベンド配向へ転移させることができる。
【0009】
[適用例2]上述の液晶装置であって、上記スペーサは、上記液晶層の厚み方向で該液晶層と接触する露出した表面を有しており、該表面近傍における上記光学的異方性を有する高分子が上記配向膜の配向方向とは異なる方向に配向していることを特徴とする液晶装置。
【0010】
このような構成によれば、上記露出した表面に接触している液晶層は、上記配向膜の配向方向とは異なる方向により強く配向される。したがって、該一部近傍の液晶層内に、より一層容易に転移核を形成できる。
【0011】
[適用例3]上述の液晶装置であって、上記光学的異方性を有する高分子は、液晶性モノマーを含有する組成物を重合して得られたものであることを特徴とする液晶装置。
【0012】
液晶性モノマーは配向処理が容易であり、また、紫外線照射等により確実に高分子化される。したがって、このような構成であれば、液晶装置の信頼性を向上できる。
【0013】
[適用例4]上述の液晶装置であって、上記一対の基板は、該基板の平面内に、各々が光を射出する複数の画素領域と、隣り合う上記画素領域間を区画する非表示領域と、を含み、上記スペーサは、上記非表示領域内に形成されていることを特徴とする液晶装置。
【0014】
このような構成によれば、表示品質を損なうことなく、上記転移核を形成できる。
【0015】
[適用例5]上述の液晶装置であって、上記スペーサは、上記複数の画素領域の各々につき少なくとも1つ形成されていることを特徴とする液晶装置。
【0016】
このような構成によれば、画素毎に上記転移核を形成できるため、より一層容易にベンド配向への転移を行うことができる。
【0017】
[適用例6]上述の液晶装置であって、上記スペーサに含有される上記光学的異方性を有する高分子は、上記スペーサと上記第1の配向膜との界面と、上記スペーサと上記第2の配向膜との界面と、のどちらか一方の界面の近傍において上記配向膜の配向方向と略同一の方向に配向しており、かつ、上記第1の配向膜と上記第2の配向膜との間でツイスト配向していることを特徴とする液晶装置。
【0018】
上述のスプレイ配向の方向は一定であるため、このような構成によれば、該スペーサに含まれる高分子の配向方向が該スプレイ配向の方向と異なる部分を確実に形成できる。したがって、上記転移核を確実に形成できる。
なお、ツイスト配向とは、一対の基板間に挟持された長軸を有する分子が、長軸方向を上記一対の基板に平行に保ちつつ、該一対の基板に垂直な線を中心軸として該一対の基板間でねじれる配向状態をいう。
【0019】
[適用例7]上述の液晶装置であって、上記ツイスト配向のツイスト角は略180度であることを特徴とする液晶装置。
【0020】
このような構成によれば、上記液晶層の層厚方向における略中間の位置に上記転移核が形成される。したがって、より一層短時間に、かつ、低い転移電圧でベンド配向への転移を行うことができる。
【0021】
[適用例8]上述の液晶装置であって、上記スペーサに含有される上記光学的異方性を有する高分子は、上記スペーサと上記第1の配向膜との界面と、上記スペーサと上記第2の配向膜との界面と、のどちらか一方の界面の近傍において上記配向膜の配向方向と略同一の方向に配向しており、かつ、上記第1の配向膜と上記第2の配向膜との間でハイブリッド配向していることを特徴とする液晶装置。
【0022】
上述のスプレイ配向の方向は一定であるため、このような構成によれば、該スペーサに含まれる高分子の配向方向が該スプレイ配向の方向と異なる部分を確実に形成できる。したがって、上記転移核を確実に形成できる。
なお、ハイブリッド配向とは、一対の基板間に挟持された長軸を有する分子が、該長軸の方向が、一方の基板側では該基板に対して平行になり、他方の基板側では該基板に対して垂直になるように配向されている状態をいう。
【0023】
[適用例9]上述の液晶装置であって、上記第1の配向膜の上記液晶層側の面と上記第2の配向膜の上記液晶層側の面とのどちらか一方の面における上記スペーサが配置されていない領域に、第3の配向膜が更に配置されていることを特徴とする液晶装置。
【0024】
このような構成であれば、上記配向膜のどちらか一方が、上記スペーサの形成時において機能を低下させた場合においても、新たに積層した上記第3の配向膜で上記液晶層を配向できる。したがってかかる液晶装置であれば、表示品質を損なうことがなくなる。したがってかかる液晶装置であれば、表示品質を損うことなく上記液晶層内に容易に上記転移核を形成でき、短時間、かつ低い転移電圧でベンド配向への転移を行うことができる。
【0025】
[適用例10]上述の液晶装置を表示部に備えることを特徴とする電子機器。
【0026】
このような構成によれば、液晶装置を短時間、かつ低い転移電圧でベンド配向へ転移させることが可能な電子機器が得られる。
【0027】
[適用例11]互いに対向して配置された第1の基板と第2の基板とからなる一対の基板と、上記一対の基板に挟持され、配向状態がスプレイ配向とベンド配向のいずれか一方から他方へと転移する液晶層と、上記第1の基板の上記液晶層側に形成された第1の電極と、上記第2の基板の上記液晶層側に形成された第2の電極と、上記第1の電極の上記液晶層側に形成された第1の配向膜と、上記第2の電極の上記液晶層側に形成された第2の配向膜と、上記一対の基板間に配置され、光学的異方性を有する高分子を含有したスペーサと、を備える液晶装置の製造方法であって、上記第1の基板の一方の面に上記第1の配向膜を形成する第1の工程と、上記第1の配向膜に上記第1の基板に対して水平方向の配向処理を施す第2の工程と、上記第2の基板の一方の面に上記第2の配向膜を形成する第3の工程と、上記第2の配向膜に、上記第1の配向膜に付与された配向方向と同一方向の配向処理を施す第4の工程と、配向処理が施された上記第1の配向膜上に光重合性の官能基を有する液晶性モノマーを含む液状材料を塗布して、層厚方向の一部分における該液晶性モノマーが上記第1の配向膜に付与された配向方向と異なる方向に配向された塗布膜を形成する第5の工程と、上記塗布膜をフォトマスクを介して露光して、所定の領域における上記液晶性モノマーを高分子化する第6の工程と、上記第6の工程において露光されなかった領域の上記塗布膜を除去してスペーサを形成する第7の工程と、上記第1の基板と上記第2の基板とを、上記第1の配向膜と上記第2の配向膜とが対向するように上記スペーサを介して貼り合わせる第8の工程と、上記第1の基板と上記第2の基板との間に液晶を充填する第9の工程と、を含むことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0028】
このような製造方法によれば、層厚方向における一部分に上記配向膜の配向方向とは異なる方向に配向された高分子を含み、かつ、該一部分の表面が上記液晶層に接するスペーサを形成できる。そして、かかる一部分の表面近傍の液晶層内に上記転移核を容易に形成できる。したがって、短時間、かつ低い転移電圧でベンド配向への転移が可能な液晶装置を製造することができる。
【0029】
[適用例12]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第5の工程は、上記光重合性の官能基を持つ液晶性モノマーとカイラル剤とを含む液状材料を塗布する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0030】
カイラル剤を混入することにより、上記塗布膜の配向はツイスト配向となる。そのため、該スペーサ内に上記配向膜の配向方向とは異なる方向に配向された高分子を確実に配置できる。したがって、このような製造方法によれば、上記転移核をより一層確実に形成できる。
【0031】
[適用例13]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第5の工程は、形成後の上記塗布膜の表面近傍における上記液晶性モノマーの配列方向が上記第1の配向膜の配向方向に対して180度回転した方向となるように、上記液晶性モノマーと上記カイラル剤との混合比率を調整した液状材料を塗布する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0032】
このような製造方法によれば、上記転移核を上記液晶層の層厚方向における中間に設けることができる。したがって、より一層短時間、かつ、低い転移電圧でベンド配向への転移が可能な液晶装置を製造することができる。
【0033】
[適用例14]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第5の工程は、上記光重合性の官能基を持つ液晶性モノマーと界面活性剤とを含む液状材料を塗布する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0034】
界面活性剤を混入することにより、上記塗布膜の配向(方向)は、上記一対の基板(の表面)に対して角度を有するものとなる。一方、上記塗布膜の、上記第1の配向膜との界面近傍における配向方向は、該第1の配向膜の配向方向に規制されるため、上記一対の基板(の表面)に対して水平方向になる。そのため、該スペーサ内に上記配向膜の配向方向とは異なる方向に配向された高分子を確実に配置できる。したがって、このような製造方法によれば、上記転移核をより一層確実に形成できる。
【0035】
[適用例15]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第5の工程は、形成後の上記塗布膜内における上記液晶性モノマーの配列方向が、該塗布膜の表面近傍では上記一対の基板に対して略垂直方向となるように、上記液晶性モノマーと上記界面活性剤との混合比率を調整した液状材料を塗布する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0036】
このような製造方法によれば、該スペーサ内に上記配向膜の配向方向と直交する方向に配向された高分子を確実に配置できる。したがって、このような製造方法によれば、上記転移核をより一層確実に形成できる。
【0037】
[適用例16]上述の液晶装置の製造方法であって、上記液晶装置は、複数の画素領域と隣り合う該画素領域間を区画する非表示領域とを有しており、上記第6の工程は、上記非表示領域内の一部領域を露光する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0038】
このような製造方法であれば、該液晶装置の表示品質に影響を与えることなく上記転移核を形成できる。
【0039】
[適用例17]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第6の工程は、上記スペーサが、上記複数の画素領域の各々につき少なくとも1つは形成されるように露光する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0040】
このような製造方法であれば、上記複数の画素領域の各々について上記転移核を形成できる。したがって、より一層短時間、かつ、低い転移電圧でベンド配向への転移が可能な液晶装置を得ることができる。
【0041】
[適用例18]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第7の工程と上記第8の工程との間に、上記第1の配向膜上の上記第7の工程により上記塗布膜が除去された領域に第3の配向膜を形成する第10の工程と、該第3の配向膜に、上記第2の工程において上記第1の配向膜に施された配向処理と同一方向の配向処理を施す第11の工程と、を更に実施することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0042】
このような製造方法であれば、上記第7の工程の後に形成された上記第3の配向膜により、上記液晶層を配向できる。したがって、上記第7の工程により、下地となる上記第1の配向膜の配向機能等が損なわれた場合においても、表示品質の劣化を抑制できる。
【0043】
[適用例19]互いに対向して配置された第1の基板と第2の基板とからなる一対の基板と、上記一対の基板に挟持され、配向状態がスプレイ配向とベンド配向のいずれか一方から他方へと転移する液晶層と、上記第1の基板の上記液晶層側に形成された第1の電極と、上記第2の基板の上記液晶層側に形成された第2の電極と、上記第1の電極の上記液晶層側に形成された第3の配向膜と、上記第2の電極の上記液晶層側に形成された第2の配向膜と、上記一対の基板間に配置され、光学的異方性を有する高分子を含有したスペーサと、を備える液晶装置の製造方法であって、上記第1の基板上に第1の配向膜を形成する第12の工程と、上記第1の配向膜に第1の方向の配向処理を施す第13の工程と、上記第2の基板上に上記第2の配向膜を形成する第14の工程と、上記第2の配向膜に、上記第2の基板に対して水平の方向かつ上記第1の配向膜に付与された配向方向とは異なる方向である第2の方向の配向処理を施す第15の工程と、配向処理が施された上記第1の配向膜上に光重合性の官能基を有する液晶性モノマーを含む液状材料を塗布して、該液晶性モノマーを含む塗布膜を形成する第16の工程と、上記塗布膜をフォトマスクを介して露光して、所定の領域における上記液晶性モノマーを高分子化する第17の工程と、上記第17の工程において露光されなかった領域の上記塗布膜を除去してスペーサを形成する第18の工程と、上記スペーサが形成された上記第1の基板の上記一方の面に上記第3の配向膜を形成する第19の工程と、上記第3の配向膜に、上記第2の方向の配向処理を施す第20の工程と、上記第1の基板と上記第2の基板とを、上記第3の配向膜と上記第2の配向膜とが対向するように上記スペーサを介して貼り合わせる第21の工程と、上記第1の基板と上記第2の基板との間に液晶を充填する第22の工程と、を含むことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0044】
このような製造方法であれば、全体が、上記第1の配向膜と上記第2の配向膜との一対の配向膜の配向方向とは異なる方向に配向された上記高分子を全体に含むスペーサを形成できる。一方、上記液晶層の配向方向は、上記一対の配向膜の配向方向によって規定されている。したがって、該スペーサの表面近傍の上記液晶層内に、該液晶層をスプレイ配向からベンド配向へと転移させる際の転移核を容易に形成できる。したがって、短時間、かつ低い転移電圧でベンド配向への転移が可能な液晶装置を得ることができる。
【0045】
[適用例20]上述の製造方法であって、上記第15の工程は、上記第1の配向膜に付与された配向方向とは略90度異なる方向に配向処理を施す工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0046】
このような製造方法であれば、上記スペーサに含まれる上記高分子の配向方向を、上記一対の配向膜の配向方向とは略90度異なる方向にできる。したがって、上記転移核をより一層容易に形成できる。
【0047】
[適用例21]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第13の工程は、上記第1の基板に対して略垂直方向に配向処理を施す工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0048】
上記一対の配向膜は水平方向に配向されている。したがって、このような製造方法であれば、上記スペーサに含まれる上記高分子の配向方向を、より一層確実に上記一対の配向膜の配向方向とは略90度異なる方向にできる。したがって、上記転移核をより一層容易に形成できる。
【0049】
[適用例22]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第13の工程は、上記第1の基板に対して略水平方向に配向処理を施す工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0050】
このような製造方法であれば、製造装置の追加、及び、上記配向膜の形成材料の変更等を伴わずにラビング方向を変えるだけで、上記一対の配向膜の配向方向とは略90度異なる方向に配向された上記高分子を含む上記スペーサを形成できる。したがって、短時間、かつ低い転移電圧でベンド配向への転移が可能な液晶装置を、製造コストの増加を抑制しつつ得ることができる。
【0051】
[適用例23]上述の液晶装置の製造方法であって、上記液晶装置は、複数の画素領域と隣り合う該画素領域間を区画する非表示領域とを有しており、上記第17の工程は、上記非表示領域内の一部領域を露光する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0052】
このような製造方法であれば、表示品質に影響を与えることなく、上記転移核を形成できる。
【0053】
[適用例24]上述の液晶装置の製造方法であって、上記第17の工程は、上記スペーサが、上記複数の画素領域の各々につき少なくとも1つは形成されるように露光する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【0054】
このような製造方法であれば、上記複数の画素領域の各々について上記転移核を形成できる。したがって、より一層短時間、かつ、低い転移電圧でベンド配向への転移が可能な液晶装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、図面を参照し、本発明を具体化した液晶装置の実施形態について述べる。なお、以下に示す各図においては、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、該各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0056】
(第1の実施形態)
図1は本実施形態にかかる液晶装置1の構成を模式的に示す図である。図1(a)は斜視図、図1(b)は図1(a)中のA−A’線における断面図である。なお、液晶装置1は、スイッチング素子としてTFT(薄膜トランジスタ)40(図6参照)を用いた、OCBモードのアクティブマトリクス型の液晶装置である。
【0057】
図示する様に、液晶装置1は、枠状のシール材23を介して互いに対向するように貼り合わされた、第1の基板としての対向基板21と第2の基板としての素子基板22とからなる一対の基板を備えている。対向基板21と素子基板22とシール材23とによって形成された空間には、スプレイ配向又はベンド配向のいずれの配向状態をもとり得る、OCBモードの液晶が封入され液晶層37が形成されている。素子基板22の液晶層37とは反対側の面には第2の偏光板32が配置されており、対向基板21の液晶層37とは反対側の面には、第1の偏光板31が配置されている。素子基板22は対向基板21より大きく、一部が対向基板21に対して張り出した状態で貼り合わされている。この張り出した部分には、液晶層37を駆動するためのドライバーIC24が実装されている。液晶装置1は、液晶層37が封入された表示領域100において、該液晶層の透過率を変調することにより画像を表示する。
【0058】
図2は、OCBモードにおける液晶分子の配列を示す図である。図2においては、後述する画素電極等は図示を省略し、液晶層37と該液晶層を挟持する一対の基板、すなわち対向基板21と素子基板22のみを示している。液晶層37に含まれる液晶分子38は、初期的には図2(a)に示すようなスプレイ配向となっており、表示を行う際には、図2(b)に示すようなベンド配向に転移させて使用する。スプレイ配向からベンド配向への転移は、液晶層37に転移電圧を印加することによって行う。ベンド配向においては、液晶層37に含まれる液晶分子38が弓なりに並んでおり、その弓なり形状の曲がりの度合いを変えることで透過率を変調して表示を行う。
【0059】
図3は、液晶装置1の表示領域100における各種素子、配線等の等価回路図である。ここで、表示領域100とは、画素41が規則的に配置された領域であり、画像を形成して観察者に表示する領域である。表示領域100においては、複数の走査線102と複数のデータ線104とが交差するように形成されている。画素41は、走査線102とデータ線104との交差に対応して設けられており、画素41毎に第2の電極としての画素電極42が形成されている。また、走査線102に沿って、容量線106が形成されており、画素電極42と容量線106との間に補助容量44が形成されている。
【0060】
走査線102とデータ線104との交差に対応する位置には、画素電極42への通電を制御するTFT40が、画素41毎に形成されている。TFT40のソース電極54(図6参照)には、データ線104が電気的に接続されている。TFT40のゲート電極(図示せず)には、走査線102が電気的に接続されている。TFT40のドレイン電極52(図6参照)には、画素電極42が電気的に接続されている。
なお、画素41とは上述の各構成要素を含む機能的な概念である。一方、後述する画素領域45(図5参照)は、明度、色度等が一定の光を射出するドットであり、平面的な概念である。以下、図4〜6を用いて、画素41の構成、及び表示領域100内における画素領域45の配置等について述べる。
【0061】
図4は、画素41の構成を示す平面図である。ここで平面図とは、基板(素子基板22等)に対して垂直方向から見た図である。図5は、画素電極42及び遮光層49の形状を示す平面図である。なお、図4及び図5は、図3に示す画素41の配置を90度回転させて示している。
【0062】
図4に示すように、液晶装置1の画素41は、走査線102とデータ線104と容量線106との囲まれる略方形の領域に形成された画素電極42と、画素41毎に形成されたTFT40等からなる。そして、走査線102とデータ線104とが平面視で交差する領域の近傍にスペーサ20が形成されている。なお、補助容量44(図3参照)は画素電極42と容量線106とが重なる領域に形成されている(図示せず)。三種類の画素41(R,G,B)は、構成は同一であり、カラーフィルタ50(図6参照)の色のみが異なっている。
【0063】
図5に示すように、遮光層49は、走査線102とデータ線104と容量線106の形成領域、及びTFT40の形成領域に重なるように形成されており、平面視で画素電極42を囲んでいる。表示領域100(図1参照)は、規則的に形成された画素領域45と該画素領域を区画する非表示領域としての遮光層49の形成領域とを有している。すなわち、遮光層49で囲まれた領域が観察者に光を射出する画素領域45であり、遮光層49が形成されている領域が非表示領域である。そして、スペーサ20は遮光層49と重なる領域、すなわち非表示領域に形成されている。上記の走査線102等は第2の基板としての素子基板22に形成されており、遮光層49は第1の基板としての対向基板21に形成されている。かかる態様、及びTFT40の構成等を図6に示す。なお、後述するカラーフィルタ50(図6参照)は表示領域100の全域に形成されており、各画素領域45毎に夫々三原色(赤、緑、青)のいずれかに着色されている。上述の夫々の色の境界線は、平面視で遮光層49と重なっている。
【0064】
図6は、本実施形態にかかる液晶装置1の、図4に示すB−B’線における断面図である。図示するように液晶装置1は、TFT40等が形成された素子基板22と、カラーフィルタ50等が形成された対向基板21と、上述の一対の基板と図示しないシール材23(図1(b)参照)とで形成された空間に充填された液晶層37と、上述の一対の基板の間に挟持され該一対の基板の間隔を一定に保つスペーサ20等、を備えている。上記一対の基板は透明性が必要であり、ガラスあるいは石英等で形成されている。液晶層37は液晶分子38を含む層である。本図では、該液晶分子がスプレイ配向となっている状態を示している。
【0065】
本実施形態にかかる液晶装置1が備えるスペーサ20は、後述するようにフォトリソグラフィー法により形成されている。したがって、該スペーサの形状は、Z軸に垂直な断面の形状が上記一対の基板間で略一定となる柱状である。そして、該スペーサは、後述するように光学的異方性を有する高分子としての液晶性モノマー14(図7参照)を重合して形成されている。したがって、該スペーサ自体が光学的異方性を有している。スペーサ20は、各画素41毎に、第1の配向膜33上における遮光層49と重なる領域の一部に形成されている。本実施形態にかかる液晶装置1は、該スペーサに含有される液晶性モノマー14の配向を制御することで、スプレイ配向からベンド配向への転移に要する時間(転移時間)及び電圧(転移電圧)を減少させ、円滑なベンド転移を可能にしている。
【0066】
対向基板21の液晶層37側には、カラーフィルタ50と該カラーフィルタを区画する遮光層49が形成されている。そして、該双方の要素の液晶層37側には透明導電材料であるITO(酸化インジウム・すず合金)からなる第1の電極としての共通電極43が形成されている。ITOに替えてIZO(酸化インジウム・鉛合金)等の透明導電材料を用いてもよい。共通電極43は、表示領域100(図1参照)の略全域に形成されており、該表示領域において同電位を維持している。共通電極43上には、ポリイミド等を含む第1の配向膜33が形成されている。また、対向基板21の液晶層37の反対側の面には、第1の偏光板31が貼付されている。
【0067】
素子基板22の液晶層37側には、走査線102とデータ線104と容量線106とが形成されている。対向基板21と、走査線102及び容量線106との間には、酸化シリコン(SiO2)等からなる下地層を形成してもよい。走査線102の上層(液晶層37側)には、酸化シリコン(SiO2)等からなるゲート絶縁層58を挟んで半導体層56が形成されている。
【0068】
半導体層56は、例えばアモルファスシリコンやポリシリコン等から構成することができる。また、半導体層56に一部が重なる状態でソース電極54とドレイン電極52とが形成されている。ソース電極54は、データ線104の一部を突出するようにパターニングして形成されている。ドレイン電極52は、データ線104と同層の材料層を島状にパターニングして形成されている。
【0069】
半導体層56、ソース電極54、ドレイン電極52、走査線102等からTFT40が構成される。ここで、走査線102は、TFT40のゲート電極としても機能している。走査線(ゲート電極)102、ソース電極54、ドレイン電極52、データ線104、容量線106は、例えば、チタン(Ti)、クロム(Cr)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属、上記金属のうちの少なくとも1つを含む合金、上記金属を含む金属シリサイド、ポリシリサイド、導電性ポリシリコン等から構成することができる。また、上記各層の積層体で形成してもよい。
【0070】
TFT40の上層(液晶層37側)には、酸化シリコン(SiO2)等からなる層間絶縁層60を介して画素電極42が形成されている。画素電極42は、共通電極43と同様にITOからなる。画素電極42は、層間絶縁層60に設けられたコンタクトホール62を介してドレイン電極52に電気的に接続されている。上述したように画素電極42は、一部が容量線106と対向しており、容量線106との間で補助容量44(図3参照)を構成する。画素電極42上層には、ポリイミド等を含む第2の配向膜34が形成されている。また、素子基板22の液晶層37の反対側の面には、第2の偏光板32が貼付されている。そして、第2の偏光板32の外側には図示しない白色光源が配置されている。該白色光源から照射された光は、第1の偏光板31、第1の配向膜33、液晶層37、第2の配向膜34、第2の偏光板32の順に透過して、画素領域45から観察者に向けて射出される。
【0071】
第1の配向膜33と第2の配向膜34の配向方向は同一であり、Y方向すなわちデータ線104の延在方向に配向されている。第1の偏光板31と第2の偏光板32の透過軸は互いに略直交し、かつ、上記双方の配向膜の配向方向と略45度の角度を有している。上述の液晶層37のスプレイ配向は第1の配向膜33及び第2の配向膜34から配向規制力を受けるため、Y方向を向いている。以下、スペーサ20に含有される液晶性モノマー14の配列と、該スペーサによるベンド転移の円滑化について説明する。
【0072】
図7は、第1の実施形態の液晶装置1のスペーサ20とその周囲の部分を、対向基板21に垂直な面で切断した断面図である。図7(a)は液晶層37中の液晶分子38がスプレイ配向状態であるときを示す図であり、図7(b)は液晶分子38がベンド配向状態に転移した状態を示す図である。本図では、素子基板22と層間絶縁層60との間に形成されたTFT40等、及び対向基板21に貼付された第1の偏光板31と素子基板22に貼付された第2の偏光板32は、図示を省略している。
【0073】
また、本図において、対向基板21と第1の配向膜33との間に形成される遮光層49、カラーフィルタ50、及び共通電極43を合わせてカラーフィルタ層15として図示している。同様に、素子基板22と第2の配向膜34との間に形成される、層間絶縁層60及び画素電極42、及び上記双方の要素間に形成される図示しないTFT40(図6参照)等の各要素を合わせて、素子層16として図示している。
【0074】
図7(a)に示すように、スペーサ20は光学的異方性を有する高分子である液晶性モノマー14を含有する材料で構成されている。かかる液晶性モノマー14は、第1の配向膜33と第2の配向膜34との間で180度回転するツイスト配向となっている。ツイスト配向とは、一対の平面(図7においては第1の配向膜33と第2の配向膜34との一対の配向膜)間に充填されている光学的異方性を有する高分子の長軸方向が平面に平行であり、かつ、該一対の平面間で、該平面の法線方向を軸としてねじれている配向状態である。したがって、該液晶性モノマーの配向は、第1の配向膜33の近傍ではY方向を向いている。そして、液晶層37のZ方向の中間点の近傍では略90度回転してX方向を向いている。該中間点から第2の配向膜34に近づくにつれて更に略90度回転して、第2の配向膜34の近傍では再びY方向を向いている。そのため、スペーサ20に含まれる液晶性モノマー14の配向方向と配向膜の配向方向との間に差異が生じている。
【0075】
液晶層37に含まれる液晶分子38は、配向膜から配向規制力を受けており、スプレイ配向状態ではY方向に配列されている。しかし、スペーサ20の表面近傍、すなわちスペーサ20と液晶層37との界面近傍では、液晶分子38は該スペーサに含まれる液晶性モノマー14からの配向規制力を受けてX方向に配列される。液晶性モノマー14からの配向規制力は、スペーサ20の表面近傍で最も強く働きスペーサ20から離れるにつれて急速に弱まる。そして、液晶分子38の配向方向は、該配向規制力に合わせて変化する。すなわち、液晶分子38は、スペーサ20の表面近傍ではX方向に配向され、該表面近傍から離れるにつれて急速にY方向に戻る。したがって、スペーサ20の表面近傍は液晶分子38の配向が不連続となる領域、すなわちディスクリネーション領域18となる。
【0076】
上述したようにスプレイ配向は安定した状態であり、スプレイ配向からベンド配向への転移には、通常の表示時に比べて高い電圧である転移電圧が必要である。しかし、かかるディスクリネーション領域18が生じている場合、該領域が転移核となり、比較的低い転移電圧で上述のスプレイ配向から図7(b)に示すベンド配向へと転移させることができる。
【0077】
また、液晶装置1では、液晶層37のZ方向の中間の位置では、液晶性モノマー14が略90度回転してX方向を向いているため、上述の不連続が最大である。したがって、本実施形態にかかる液晶装置1は、液晶層37の層厚方向の略中間の位置から上述の転移を進行させることができるという特徴がある。
【0078】
液晶層37は表示領域100内に連続的に形成されているため、ディスクリネーション領域18は該表示領域内に一箇所に形成されていれば、一応は上述の効果を得ることができる。しかし、大画面すなわち広い表示領域100を持つ液晶装置の場合、一箇所のディスクリネーション領域18を転移核とした場合には転移時間の増加等が発生し得る。本実施形態の液晶装置1は画素41毎にスペーサ20が形成されているため、表示領域100の面積の大小にかかわらずに速やかにベンド転移を完了させることができる。また、転移核として機能しないスペーサ20が生じた場合においても、隣り合う画素41のスペーサ20を転移核としてベンド転移を進行させることができる。したがって、低い転移電圧で確実にベンド転移を完了できる。
【0079】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態について、図8を用いて説明する。図8は、上述の第1の実施形態にかかる液晶装置1の説明における図7に相当する図、すなわちスペーサ20とその周囲の部分の断面図である。図8(a)は液晶層37中の液晶分子38がスプレイ配向状態であるときを示す図であり、図8(b)は液晶分子38がベンド配向状態に転移した状態を示す図である。
【0080】
本実施形態にかかる液晶装置2は、第1の実施形態にかかる液晶装置1と同様に、対向基板21側の第1の配向膜33上に光学的異方性を有する高分子としての液晶性モノマー14を含有する組成物を重合して形成されたスペーサ20が配置されている。該スペーサが平面視で非表示領域に形成されている点も、第1の実施形態の液晶装置1と同一である。ただし、スペーサ20内の液晶性モノマー14の配向状態が、第1の実施形態にかかる液晶装置1と異なっている。そして、かかる配向状態を除いては、本実施形態にかかる液晶装置2は第1の実施形態にかかる液晶装置1と略同一の構成を有している。そこで、第1の実施形態の液晶装置1の説明における図1〜6に相当する図は記載せず、上述の図7に相当する図のみを示す。なお、図8においては、図7に示す構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は一部省略している。
【0081】
図8(a)に示すように、スペーサ20内の液晶性モノマー14の配向は、第1の配向膜33との界面近傍では、該第1の配向膜の配向方向すなわちY方向を向いている。そして、スペーサ20内における液晶性モノマー14の配向はハイブリッド配向となっている。ハイブリッド配向とは、一対の基板等の平面間に充填された光学的異方性を有する高分子の長軸方向が、一方の平面側では該平面に対し平行であり、他方の平面側では垂直となっている配向状態をいう。すなわち、液晶性モノマー14の長軸は、スペーサ20と第1の配向膜33との界面近傍では対向基板21と素子基板22とからなる一対の基板に水平であり、第2の配向膜34に近づくにつれて徐々に立ち上がり、スペーサ20と第2の配向膜34との界面近傍では略Z方向を示している。そのため、スペーサ20に含まれる液晶性モノマー14の配向方向と配向膜の配向方向との間に差異が生じる。
【0082】
一方、スペーサ20の周囲の液晶層37に含まれる液晶分子38の配向は、上述に第1の実施形態にかかる液晶装置1と同様にY方向を向くスプレイ配向である。したがって、スペーサ20と液晶層37との境界部分、特に第2の配向膜34に近い部分は、双方の(液晶分子38等の)高分子の配向方向が不連続となる領域、すなわちディスクリネーション領域18となる。
【0083】
液晶層37に含まれる液晶分子38は、画素電極42と共通電極43との間に電圧が印加されていないときはスプレイ配向、すなわち上記一対の基板に対して略水平方向に配向している。しかし、スペーサ20の表面近傍、すなわちスペーサ20と液晶層37との界面近傍では、液晶分子38は該スペーサに含まれる液晶性モノマー14からの配向規制力を受ける。その結果、上記界面近傍すなわちスペーサ20の表面近傍では、液晶分子38は上記一対の基板に対して略垂直方向に配向される。液晶性モノマー14からの配向規制力は、スペーサ20の表面近傍で最も強く働きスペーサ20から離れるにつれて急速に弱まる。そして、液晶分子38の配向方向は、該配向規制力に合わせて変化する。すなわち、液晶分子38の配向方向は、スペーサ20の表面近傍では上記一対の基板に対して略垂直方向となり、該表面近傍から離れるにつれて急速に上記一対の基板に対して略水平の方向に戻る。したがって、スペーサ20の表面近傍は液晶分子38の配向が不連続となる領域、すなわちディスクリネーション領域18となる。
【0084】
上述したようにスプレイ配向は安定した状態であり、スプレイ配向からベンド配向への転移には、通常の表示時に比べて高い電圧である転移電圧が必要である。しかし、かかるディスクリネーション領域18が生じている場合、該領域が転移核となり、比較的低い転移電圧で上述のスプレイ配向から図8(b)に示すベンド配向へと転移させることができる。したがって、本実施形態にかかる液晶装置2は、第1の実施形態にかかる液晶装置1と同様に、比較的低い転移電圧で上述のスプレイ配向からベンド配向へと転移させることができ、画像表示を開始する際等に安定した表示を可能にしている。
【0085】
なお、本実施形態にかかる液晶装置2において、スペーサ20は非表示領域である遮光層49の形成領域に配置されているため、表示品質に影響を及ぼすことが回避される点は、上述の第1の実施形態の液晶装置1と同様である。また、スペーサ20は画素41毎に形成されているため、低い転移電圧で確実にベンド転移を完了できる点も、上述の第1の実施形態の液晶装置1と同様である。
【0086】
(第3の実施形態)
続いて、第3の実施形態として、液晶装置の製造方法について図面を用いて説明する。図9及び図10は、ツイスト配向の液晶性モノマー14を含有するスペーサ20を備える液晶装置の製造方法を示す工程断面図である。TFT40等の形成工程を省略し、スペーサ20の形成工程と液晶層37の形成工程(すなわち液晶の充填工程)を示している。また、上述の各実施形態の液晶装置の構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は一部省略している。また、図9(a)のみ、Z方向を上向きに図示し、図9(b)以降はZ方向を下向きに図示している。更に、図9と図10は連続した工程を説明しているので、図9で説明した要素については図10での説明を一部省略している。以下、各工程について順に説明する。
【0087】
まず、図9(a)に示すように、素子層16が形成された素子基板22上に、第3の工程として第2の配向膜34を形成する。そして、第4の工程として該第2の配向膜にラビング用ローラ19を用いてラビング処理を行う。ラビング方向はY方向である。
【0088】
次に、図9(b)に示すように、カラーフィルタ層15が形成された対向基板21上に、第1の工程として第1の配向膜33を形成する。そして、第2の工程として該第1の配向膜にラビング用ローラ19を用いてラビング処理を行う。ラビング方向はY方向である。なお、図9(a)に示す工程と図9(b)に示す工程とはどちらを先にしてもよく、同時に、すなわち並行して行うこともできる。
【0089】
次に、図9(c)に示すように、第5の工程として第1の配向膜33上に光重合性の官能基を有する液晶性モノマー14とカイラル剤とを溶媒に溶解等させてなる液材(液体材料)を塗布して、塗布膜としての液晶性モノマー層13を形成する。カイラル剤とは、光学的異方性を有する高分子にツイスト(ツイスト配向)を生じさせる機能を有する薬剤である。該カイラル剤も、カイラル構造を有する重合性モノマーであることが好ましい。かかるカイラル剤の含有(混入)比率については後述する。塗布方法はスピンコート法が好ましい。そして、該液晶性モノマー層を含む対向基板21全体を所定の温度まで加熱して、液晶性モノマー14に液晶相を発現させる。
【0090】
ここで、液晶性モノマー層13は、将来的にスペーサ20(図6等参照)となる。したがって、該液晶性モノマー層の層厚は、加熱及びパターニングによる収縮等を考慮してスペーサ20の高さ、すなわち対向基板21と素子基板22との間隔(正確には該間隔の値から素子層16、カラーフィルタ層15等の層厚を減じた値)と一致するように定める。なお、かかる間隔、すなわちスペーサ20の高さは、シール材23(図1(b)参照)の高さと略同一である。
【0091】
光重合性の官能基を有する液晶性モノマーとは、アクリレートあるいはメタクリレート等の光重合性の官能基が液晶骨格に結合された構造を有し、所定の温度範囲において液晶状態を示す材料である。該液晶性モノマーは数種類の材料の混合物が好ましい。数種類の単品化合物を混合することで、共晶効果により、液晶の温度範囲を広げることができるからである。
【0092】
上述の加熱により、液晶性モノマー層13に含まれる液晶性モノマー14は、カイラル剤の影響、及び第1の配向膜33の配向規制力の等の影響により所定の配向となる。上述したように、第1の配向膜33はY方向に配向しており、該第1の配向膜上に配置された光学的異方性を有する高分子に対して該Y方向の配向規制力を及ぼす。したがって、第1の配向膜33との界面近傍における液晶性モノマー14の配向は略Y方向となる。
【0093】
そして、液晶性モノマー14は、上述のカイラル剤の作用により対向基板21に垂直な線であるZ方向を軸としてツイスト配向する。かかるツイスト(回転)の角度は、カイラル剤の含有比率等で調整可能である。本実施形態における含有比率は、上述のツイストが液晶性モノマー層13の層厚内で180度ツイスト(回転)するように調整されている。したがって、液晶性モノマー層13の表面(将来的にスペーサ20と第2の配向膜34との界面となる面)における液晶性モノマー14の配向方向は略Y方向となる。上述したように、第1の配向膜33との界面近傍においても、液晶性モノマー14の配向方向は略Y方向である。したがって、上記界面と上記液晶性モノマー層の表面との中間では、液晶性モノマー14はY方向に直交する方向、すなわちX方向を向くように配向される。
【0094】
次に、図9(d)に示すように、上述の加熱を維持しつつ、すなわち液晶性モノマー14の180度のツイストを維持しつつ、第6の工程として透過部12aと遮光部12bとを備えるフォトマスク12を介して液晶性モノマー層13に紫外線11を照射する。透過部12aと対向する領域が、将来的にスペーサ20が形成される領域である。紫外線11は、液晶性モノマー14を重合させて高分子化する機能を有している。したがって、透過部12aと対向する領域(一点鎖線で区画された領域)の液晶性モノマー14は重合され高分子となり、遮光部12bと対向する領域の液晶性モノマー14は重合されずにそのままの状態を保つ。
【0095】
次に、図10(a)に示すように、第7の工程として遮光部12bと対向する領域の液晶性モノマー層13すなわち高分子化されていない液晶性モノマー層13を剥離液により除去してパターニングする。剥離液としては有機系の溶剤、具体的にはIPA(イソプロピルアルコール)、アセトン、エタノール等を用いることができる。かかる工程により、180度のツイスト配向を有する光学的異方性を有する高分子としての液晶性モノマー14を含有するスペーサ20が形成される。
【0096】
次に、対向基板21と素子基板22とのどちらか一方の外縁部に、図示しないシール材23(図1(b)参照)を形成する。そして図10(b)に示すように、第8の工程として対向基板21と素子基板22とを、配向膜(第1の配向膜33と第2の配向膜34)が形成されている面が対向するように貼り合わせる。上述したようにスペーサ20とシール材23の高さは略同一である。したがってシール材23とスペーサ20とにより、対向基板21と素子基板22との間隔は略一定に保たれる。
【0097】
次に、図10(c)に示すように、第9の工程として上記一対の基板及びシール材23で構成される空間内にOCBモードの液晶を注入して液晶層37を形成する。液晶層37中の液晶分子38は第1の配向膜33及び第2の配向膜34から配向規制力を受ける。したがって、一対の電極(共通電極43と画素電極42)間に電圧が印加されていない状態において液晶分子38はY方向を向くスプレイ配向となる。以上の工程に、液晶を注入するためにシール材23に設けられている注入口(不図示)の封止工程等を実施することで、液晶装置が形成される。
【0098】
(本実施形態の効果)
上述したように、液晶分子38の配向は、図示するようにY方向を向くスプレイ配向となる。一方、スペーサ20に含有される液晶性モノマー14の配向は180度回転するツイスト配向である。液晶分子38は、スペーサ20の表面のうち配向膜と接している領域を除く領域の近傍、すなわちスペーサ20と液晶層37との界面近傍では、上述のツイスト配向された液晶性モノマー14から配向規制力を受けて、上述のY方向を向くスプレイ配向とは異なる方向に配向される。したがって、スペーサ20と液晶層37との界面近傍には、液晶分子38の配向が不連続となる領域であるディスクリネーション領域18が形成される。
【0099】
上述したようにディスクリネーション領域18は、液晶層37の配向をスプレイ配向からベンド配向へと転移させる際の転移核となる。従って、本実施形態にかかる製造方法で得られた液晶装置は、比較的低い転移電圧で円滑にスプレイ配向からベンド配向へと転移させることが可能となる。
【0100】
なお、本実施形態及び後述する第4〜第6の実施形態において、スペーサ20を素子基板22上に形成する態様も実施可能である。しかし、かかる態様では、液晶性モノマー層13のパターニング時に剥離液によりTFT40等が劣化する可能性がある。したがって、スペーサ20は対向基板21上に形成することが好ましい。
【0101】
(第4の実施形態)
続いて、第4の実施形態として、ハイブリッド配向のスペーサ20を有する液晶装置の製造方法について、図面を用いて説明する。図11及び図12は、第4の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図であり、上述の第3の実施形態と同様に、スペーサ20の形成工程と液晶層37の形成工程を示している。また、上述の各実施形態の液晶装置の構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は一部省略している。図11(a)のみ、Z方向を上向きに図示し、図11(b)以降はZ方向を下向きに図示している点は、上述の第3の実施形態と同様である。また、図11と図12は連続した工程を説明しているので、図11で説明した要素については図12での説明を一部省略している点も、上述の第3の実施形態と同様である。以下、各工程について順に説明する。
【0102】
まず、図11(a)に示すように、素子層16が形成された素子基板22上に、第3の工程として第2の配向膜34を形成する。そして、第4の工程として該第2の配向膜にラビング用ローラ19を用いてラビング処理を行う。ラビング方向はY方向である。
【0103】
次に、図11(b)に示すように、カラーフィルタ層15が形成された対向基板21上に、第1の工程として第1の配向膜33を形成する。そして、第2の工程として該第1の配向膜にラビング用ローラ19を用いてラビング処理を行う。ラビング方向はY方向である。上述の第3の実施形態と同様に、図11(a)に示す工程と図11(b)に示す工程とはどちらを先にしてもよく、また、同時に行うこともできる。
【0104】
次に、図11(c)に示すように、第5の工程として第1の配向膜33上に光重合性の官能基を有する液晶性モノマー14と界面活性剤とを溶媒に溶解等させてなる液材を塗布して、塗布膜としての液晶性モノマー層13を形成する。上述の第3の実施形態と同じく、塗布方法はスピンコート法が好ましい。また、液晶性モノマー14は数種類の材料の混合物が好ましい点も、上述の第3の実施形態と同様である。
【0105】
そして次に、該液晶性モノマー層を含む対向基板21全体を所定の温度まで加熱して、液晶性モノマー14に液晶相を発現させる。液晶性モノマー層13は、将来的にスペーサ20(図6等参照)となる。したがって、該液晶性モノマー層の層厚は、加熱及びパターニングによる収縮等を考慮してスペーサ20の高さ、すなわち対向基板21と素子基板22との間隔と一致するように定める。なお、かかる間隔すなわちスペーサ20の高さは、シール材23(図1(b)参照)の高さと略同一である。
【0106】
界面活性剤は、基板面に水平方向の配向規制力を有する基板上に形成された液晶性モノマー14等の光学的異方性を有する高分子の配列を、該基板面に対して角度を付与する作用を発現する性質を有している。一方で、第1の配向膜33の配向方向はY方向であるため、上述の配向規制力はY方向に働く。そして、該配向規制力は第1の配向膜33に近いほど強く働く。したがって、対向基板21上に液晶性モノマー14と界面活性剤とを含む液材が塗布されて加熱により液晶相が発現すると、液晶性モノマー14の配向方向は、該対向基板に近い部分、すなわち第1の配向膜33と液晶性モノマー層13との界面近傍では略Y方向となり、該界面から遠ざかるにつれて対向基板21に対して角度を有する方向となる。
【0107】
上述の角度は、液晶性モノマー14と界面活性剤との混合比率によって調整できる。本工程では、かかる混合比率を、上記角度が液晶性モノマー層13の表面(将来的に第2の配向膜34との界面となる面)近傍では対向基板21の基板面に対して垂直となる様に調整している。したがって、本工程で形成された液晶性モノマー層13の(液晶性モノマー14の)配向は、第1の配向膜33との界面近傍では対向基板21の基板面に対して略水平となり、該液晶性モノマー層の表面近傍では上記基板面に対して垂直となるハイブリッド配向となる。
【0108】
次に、図11(d)に示すように、上述の加熱を維持しつつ、すなわちハイブリッド配向を維持させつつ、第6の工程として透過部12aと遮光部12bとを備えるフォトマスク12を介して液晶性モノマー層13に紫外線11を照射する。透過部12aと対向する領域(一点鎖線で区画されている領域)が、将来的にスペーサ20が形成される領域である。紫外線11は、液晶性モノマー14を重合させて高分子化する機能を有している。したがって、透過部12aと対向する領域の液晶性モノマー14は重合されて高分子となり、遮光部12bと対向する領域の液晶性モノマー14は重合されずにそのままの状態を保つ。
【0109】
次に、図12(a)に示すように、第7の工程として遮光部12bと対向する領域の液晶性モノマー層13すなわち高分子化されていない液晶性モノマー層13を剥離液により除去してパターニングする。剥離液は、上述の第3の実施形態で用いたものと同様の液を用いることができる。かかる工程により、ハイブリッド配向の異方性高分子(光学的異方性を有する高分子)を含有するスペーサ20が形成される。
【0110】
次に、対向基板21と素子基板22とのどちらか一方の外縁部に、図示しないシール材23(図1(b)参照)を形成する。そして図12(b)に示すように、第8の工程として対向基板21と素子基板22とを、配向膜(33,34)が形成されている面が対向するように、スペーサ20を介して貼り合わせる。上述のシール材23及びスペーサ20により、対向基板21と素子基板22との間隔は略一定に保たれる。
【0111】
次に、図12(c)に示すように、第9の工程として上記一対の基板及びシール材23で構成される空間内にOCBモードの液晶を注入して、液晶層37を形成する。以上の工程に、液晶を注入するためにシール材23に設けられている注入口の封止工程等を実施することで、液晶装置が形成される。
【0112】
なお、液晶を対向基板21と素子基板22との間に注入する方法としては、該一対の基板のいずれか一方の基板にシール材23を形成後、該一方の基板と該シール材で形成される凹部内に液晶を滴下し、その後もう一方の基板を貼り合わせる方法を用いることもできる。
【0113】
(本実施形態の効果)
上述するように第1の配向膜33及び第2の配向膜34は、Y方向の配向処理が施されている。したがって、上記一対の配向膜で挟持される液晶層37に含まれる液晶分子38の配向は、図示するようにY方向を向くスプレイ配向となる。一方、スペーサ20に含有される液晶性モノマー14の配向はハイブリッド配向であり、第2の配向膜34との界面近傍では基板面に対して略垂直に配向されている。液晶分子38は、スペーサ20と液晶層37との界面近傍では、上述のハイブリッド配向された液晶性モノマー14から配向規制力を受けて、上述のスプレイ配向とは異なる方向に配向される。特に、第2の配向膜34に近い領域では上記配向規制力が強く働く。したがって、上述の第3の実施形態にかかる液晶装置と同様に本実施形態により得られる液晶装置のスペーサ20と液晶層37との界面近傍、特に第2の配向膜34に近い部分の該界面近傍には、液晶分子38の配向が不連続となる領域であるディスクリネーション領域18が形成される。
【0114】
上述したようにディスクリネーション領域18は、液晶層37の配向をスプレイ配向からベンド配向へと転移させる際の転移核となる。従って、本実施形態にかかる製造方法で得られた液晶装置は、上述の第3の実施形態にかかる液晶装置と同様に、比較的低い転移電圧で円滑にスプレイ配向からベンド配向へと転移させることが可能となる。
【0115】
(第5の実施形態)
続いて、第5の実施形態として、対向基板21の液晶層37側に2層の配向膜を備える液晶装置の製造方法について説明する。図13は、第5の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図であり、上述の各実施形態と同様に、スペーサ20の形成工程と液晶層37の形成工程を示している。本実施形態の液晶装置の製造方法は、第3の実施形態の液晶装置の製造方法の図10(a)までの工程と同一である。そこで、図10(a)に示す、剥離液を用いて液晶性モノマー層13をパターニングしてスペーサ20を形成した後の工程を説明する。なお、上述の各実施形態の液晶装置の構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は一部省略している。
【0116】
まず、上述の第1〜7の工程を実施する。図13(a)に示すように、対向基板21の将来的に液晶層37側となる面に、第1の配向膜33とスペーサ20が形成される。スペーサ20に含有される液晶性モノマー14は、180度のツイスト配向となっている。
【0117】
次に、図13(b)に示すように、第10の工程として対向基板21の将来的に液晶層37側となる面に、スペーサ20及び第1の配向膜33を覆うように第3の配向膜35を形成する。該第3の配向膜の形成材料及び形成方法等は、第1の配向膜33と同一であることが好ましい。
【0118】
次に、図13(c)に示すように、第11の工程として、ラビング用ローラ19を用いて第3の配向膜35にY方向のラビング処理を実施する。かかる処理により、第3の配向膜35に含有されるポリイミド等の分子が、第1の配向膜33に含有されるポリイミド等の分子と同様に、Y方向に配向される。また、かかるラビング処理により、スペーサ20の表面の少なくとも一部では第3の配向膜35が剥離して、スペーサ20に含有される液晶性モノマー14が露出する。なお、図13(c)では該表面の略全面が露出するように図示している。
【0119】
次に、対向基板21と素子基板22とのどちらか一方の外縁部に、図示しないシール材23(図1(b)参照)を形成する。そして図13(d)に示すように、第8の工程として対向基板21と素子基板22とを、配向膜(第3の配向膜35と第2の配向膜34)が形成されている面が対向するように貼り合わせる。上述したようにスペーサ20とシール材23の高さは略同一である。したがってシール材23とスペーサ20とにより、対向基板21と素子基板22との間隔は略一定に保たれる。
【0120】
以下、上記第3及び第4の実施形態と同様に、第9の工程として上記一対の基板及びシール材23で構成される空間内にOCBモードの液晶を注入して液晶層37を形成する。そして、該液晶を注入するためにシール材23に設けられている図示しない注入口を封止することで、液晶装置を形成する。
【0121】
(本実施形態の効果)
本実施形態の製造方法で形成された液晶装置は、対向基板21の液晶層37側に第1の配向膜33と第3の配向膜35とが積層されている。そして、液晶層37を第2の配向膜34と第3の配向膜35とで挟持している。
【0122】
上述したように、第1の実施形態における第7の工程では、第1の配向膜33の液晶層37側に形成された液晶性モノマー層13をパターニングする。かかるパターニングの際には、第1の配向膜33が剥離液により劣化することもあり得る。本実施形態の製造方法で形成された液晶装置は、上述のパターニングの後に再度配向膜(第3の配向膜35)が形成されているため、第7の工程による劣化の可能性のない配向膜で液晶層37を挟持できる。したがって、比較的低い転移電圧で円滑にスプレイ配向からベンド配向へと転移させることが可能であると共に、立ち上げ(始動)後においても、品質の劣化が抑制された良好な画像を表示できる。また、上記第7の工程における剥離液の選定の自由度が向上するため、液晶性モノマー層13のパターニングをより一層容易に実施できる。
【0123】
なお、本実施形態では第1の実施形態の製造方法に第3の配向膜35を形成する工程等を付加する態様を示したが、第2の実施形態の製造方法に第3の配向膜35を形成する工程等を付加する態様も可能である。
【0124】
(第6の実施形態)
続いて第6の実施形態として、対向基板21の液晶層37側に互いに異なる方向に配向された2層の配向膜を備える液晶装置の製造方法について、図面を用いて説明する。図14〜16は、第6の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図であり、上述の第3の実施形態と同様に、スペーサ20の形成工程と液晶層37の形成工程を示している。図14(a)はZ方向を上向きに、Y方向を右向きに図示し、図14(b)はZ方向を下向きに、X方向を右向きに図示し、図14(c)以降はZ方向を下向きにY方向を左向きに図示している。上述の各実施形態の液晶装置の構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は一部省略している。また、図14〜16は連続した工程を説明しているので、図14で説明した要素については図15及び図16での説明を一部省略している。以下、各工程を順に説明する。
【0125】
まず、図14(a)に示すように、素子層16が形成された素子基板22の将来的に液晶層37側となる面に、第14の工程として第2の配向膜34を形成する。そして、第15の工程として、ラビング用ローラ19を用いて、該第2の配向膜に素子基板22に水平な方向であるY方向のラビング処理を行う。
【0126】
次に、図14(b)に示すように、カラーフィルタ層15が形成された対向基板21の将来的に液晶層37側となる面に、第12の工程として第1の配向膜33を形成する。そして、第13の工程として、ラビング用ローラ19を用いて、該第1の配向膜に、対向基板21に水平の方向でありかつY方向と90度異なる方向であるX方向のラビング処理を行う。
【0127】
次に、図14(c)に示すように、第16の工程として第1の配向膜33の将来的に液晶層37側となる面に光重合性の官能基を有する液晶性モノマー14を溶媒に溶解等させてなる液材を塗布して、塗布膜としての液晶性モノマー層13を形成する。そして、該液晶性モノマー層を含む対向基板21全体を所定の温度まで加熱して、液晶性モノマー14に液晶相を発現させる。上述したように、図14(c)は、図14(b)を90度回転させて図示している。上述の塗布方法はスピンコート法が好ましい。また、第3の実施形態と同様に、該液晶性モノマーは数種類の材料の混合物が好ましい。
【0128】
ここで、液晶性モノマー14に液晶相が発現する際、該液晶相の配列は第1の配向膜33から配向規制力を受ける。また、本実施形態の液晶性モノマー層13には、上述の第3〜5の実施形態の該液晶性モノマー層とは異なり、カイラル剤あるいは界面活性剤は含まれていない。したがって、液晶性モノマー層13内の液晶性モノマー14の配列方向は、該液晶性モノマー層の全体で共通のX方向となる。
【0129】
次に、図15(a)に示すように、上述の加熱を維持しつつ、第17の工程として透過部12aと遮光部12bとを備えるフォトマスク12を介して液晶性モノマー層13に紫外線11を照射することにより、透過部12aと対向する領域(一点鎖線で区画された領域)の液晶性モノマー14を重合して高分子化する。ここで、遮光部12bと対向する領域の液晶性モノマー14は、重合されずにそのままの状態を保つ。
【0130】
次に、図15(b)に示すように、第18の工程として遮光部12bと対向する領域の液晶性モノマー層13、すなわち重合されていない液晶性モノマー層13を剥離液により除去してパターニングする。剥離液は、上述の第3〜5の実施形態と同様の液を用いることができる。かかる工程により、X方向の配向を有する異方性高分子としての液晶性モノマー14を含有するスペーサ20が形成される。
【0131】
次に、図15(c)に示すように、第19の工程としてスペーサ20が形成された対向基板21の将来的に液晶層37側となる面に、スペーサ20及び第1の配向膜33を覆うように第3の配向膜35を形成する。該第3の配向膜の材質及び形成方法は、第1の配向膜33及び第2の配向膜34の形成方法等と同一でよい。
【0132】
次に、図16(a)に示すように、第20の工程として第3の配向膜35にY方向のラビング処理を行い、第3の配向膜35に含有されるポリイミド等の分子をY方向に配向する。また、かかるラビング処理により、スペーサ20の表面の少なくとも一部では第3の配向膜35が剥離して、スペーサ20に含有される液晶性モノマー14が露出する。なお、図16(a)では該表面の略全面が露出するように図示している。
【0133】
次に、対向基板21と素子基板22とのどちらか一方の外縁部に、図示しないシール材23(図1(b)参照)を形成する。そして図16(b)に示すように、第21の工程として対向基板21と素子基板22とを、配向膜(第3の配向膜35と第2の配向膜34)が形成されている面が対向するように貼り合わせる。上述したようにスペーサ20とシール材23の高さは略同一である。したがってシール材23とスペーサ20とにより、対向基板21と素子基板22との間隔は略一定に保たれる。
【0134】
次に、図16(c)に示すように、第22の工程として上記一対の基板(対向基板21及び素子基板22)及びシール材23で構成される空間内にOCBモードの液晶を注入して、液晶層37を形成する。以上の工程に、液晶を注入するためにシール材23に設けられている注入口の封止工程等を更に実施することで、液晶装置を形成する。
【0135】
(本実施形態の効果)
上述したように、液晶層37を挟持する一対の配向膜(第3の配向膜35と第2の配向膜34)の配向方向は、共にY方向である。そしてかかる配向は、挟持される液晶層37中の液晶分子38に配向規制力を印加する。したがって、上記一対の配向膜で挟持される液晶層37に含まれる液晶分子38の配向は、図示するようにY方向を向くスプレイ配向となる。一方、スペーサ20に含有される液晶性モノマー14はX方向に配向されている。したがって、本実施形態の製造方法により得られる液晶装置は、第3の実施形態の製造方法により得られる液晶装置と同様に、スペーサ20の配向膜との界面を除く表面の近傍、すなわちスペーサ20と液晶層37との界面近傍にディスクリネーション領域18が形成される。そして、該ディスクリネーション領域を転移核とすることにより、比較的低い転移電圧で円滑にスプレイ配向からベンド配向へと転移させることできる。
【0136】
また、本実施形態の製造方法は、上述の第3〜5の実施形態の製造方法とは異なり、スペーサ20の形成にカイラル剤及び界面活性剤等を用いていない。したがって、上述の薬剤を混入する工程を省くことができる。また、該薬剤の添加量の微妙な調整によらず、常に液晶層37を挟持する一対の配向膜(第3の配向膜35と第2の配向膜34)の配向と直交する配向を有するスペーサ20を形成できる。
【0137】
また、本実施形態の製造方法により得られる液晶装置は、スペーサ20の形成工程(第18の工程)により表面が劣化した可能性のある第1の配向膜33に代わり、スペーサ20の形成後に新たに形成された第3の配向膜35と、第2の配向膜34と、で液晶層37を挟持できる。したがって、上述の表面の劣化が生じている場合においても、良好な画像を表示できる。また、上記第18の工程における剥離液の選定の自由度が向上するため、液晶性モノマー層13のパターニングをより一層容易に実施できる。なお、第1の配向膜33に付与する配向の方向は、対向基板21に垂直の方向すなわちZ方向でもよい。かかる方向の配向は、レーザー光の照射等で形成できる。
【0138】
(電子機器)
次に、上述の第1〜第6の実施形態にかかる液晶装置のいずれかを電子機器に適用した例について説明する。図17は、電子機器としての携帯電話機80の斜視図である。携帯電話機80は、表示部81及び操作ボタン82を有している。表示部81は、内部に組み込まれた上述の第1〜第6の実施形態にかかる液晶装置のいずれかの液晶装置によって、操作ボタン82で入力した内容や着信情報を始めとする様々な情報について表示を行うことができる。携帯電話機80は、表示部81に搭載された液晶装置1(または液晶装置2)を容易に初期配向転移させて表示可能な状態に移行することができる。また、上述の液晶装置においてスプレイ配向への逆転移が生じにくいことに起因して、高品位な表示を行うことができる。
【0139】
図18は、電子機器としての投射型表示装置(プロジェクター)200の概略構成を示す図である。投射型表示装置200は、上述の第1〜第6の実施形態にかかる液晶装置のいずれかを光変調装置として用いている。図18において、210は光源、213、214はダイクロイックミラー、215、216、217は反射ミラー、218は入射レンズ、219はリレーレンズ、220は出射レンズ、225はクロスダイクロイックプリズム、226は投写レンズである。そして、222、223、及び224は、上述の第1〜第6の実施形態にかかる液晶装置のいずれかを用いた液晶光変調装置である。具体的には、222が赤色光用液晶光変調装置、223が緑色光用液晶光変調装置、224が青色光用液晶光変調装置、である。
【0140】
光源210は、メタルハライド等のランプ211とランプの光を反射するリフレクタ212とを備えている。青色光、緑色光反射のダイクロイックミラー213は、光源210からの光束のうちの赤色光を透過させると共に、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー217で反射されて、赤色光用液晶光変調装置222に入射される。
【0141】
一方、ダイクロイックミラー213で反射された光のうち緑色光は緑色光反射のダイクロイックミラー214によって反射され、緑色光用液晶光変調装置223に入射される。なお、青色光はダイクロイックミラー214も透過する。青色光に対しては、光路長が緑色光、赤色光と異なるのを補償するために、入射レンズ218、リレーレンズ219、出射レンズ220を含むリレーレンズ系からなる導光手段221が設けられ、これを介して青色光が青色光用液晶光変調装置224に入射される。
【0142】
各液晶光変調装置により変調された三原色光の夫々はクロスダイクロイックプリズム225に入射する。このプリズムは4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって上述の三原色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投写光学系である投写レンズ226によってスクリーン227上に投写され、画像が拡大されて表示される。
【0143】
本実施形態によれば、短時間で液晶層全体を確実にベンド転移させることができる上述の第1〜第6の実施形態にかかる液晶装置のいずれかを搭載したので、表示特性が高く、応答速度の高い表示が可能な投射型表示装置200を得ることができる。
【0144】
(変形例1)
上述の第1の実施形態において、スペーサ20に含有される液晶性モノマー14の配向は180度回転(ツイスト)するツイスト配向であった。しかし、ツイストの角度は180度に限定されるものではない。液晶性モノマー14がスプレイ配向になっていない限り、ディスクリネーション領域18が形成され、該領域を転移核として、短時間で液晶層37全体を確実にベンド転移させることができる。
【0145】
(変形例2)
上述の第5の実施形態においては、スペーサ20に含有される液晶性モノマー14の配向はツイスト配向であった。しかし、かかる配向はツイスト配向に限定されることはない。スペーサ20に含有される液晶性モノマー14の配向をハイブリッド配向としても、スペーサ20の形成時に劣化した第1の配向膜33に代わり、新たに形成した第3の配向膜35により液晶分子を配向できるという効果を、第5の実施形態によって得られる液晶装置と同様に得ることができる。
【0146】
(変形例3)
上述の各実施形態では、スペーサ20として断面が円形の円柱状の物を示している。しかし、スペーサ20の断面形状は円形に限定されるものではなく、四角形等の他の形状のものを用いることもできる。また、スペーサ20の個数も、1つ画素41につき1つに限定されるものではない。各画素41毎に複数のスペーサ20を形成して、画素領域45の周囲に複数の転移核を形成することもできる。逆に、複数の画素41に対して1つのスペーサ20を形成することもできる。スプレイ配向からベンド配向への転移は画素領域45を超えて伝播するため、かかる態様でも表示領域100内の液晶層37全体をベンド転移させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】第1の実施形態にかかる液晶装置の構成を模式的に示す図。
【図2】OCBモードにおける液晶分子の配列を示す図。
【図3】液晶装置の表示領域における各種素子、配線等の等価回路図。
【図4】画素の構成を示す平面図。
【図5】画素電極及び遮光層の形状を示す平面図。
【図6】図4中のB−B’線における断面図。
【図7】第1の実施形態の液晶装置のスペーサを、対向基板に垂直な面で切断した断面図。
【図8】第2の実施形態の液晶装置のスペーサを、対向基板に垂直な面で切断した断面図。
【図9】第3の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図10】第3の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図11】第4の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図12】第4の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図13】第5の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図14】第6の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図15】第6の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図16】第6の実施形態にかかる液晶装置の製造方法を示す工程断面図。
【図17】電子機器としての携帯電話機の斜視図。
【図18】電子機器としての投射型表示装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0148】
1…液晶装置、2…液晶装置、11…紫外線、12…フォトマスク、12a…透過部、12b…遮光部、13…塗布膜としての液晶性モノマー層、14…光学的異方性を有する高分子としての液晶性モノマー、15…カラーフィルタ層、16…素子層、18…ディスクリネーション領域、19…ラビング用ローラ、20…スペーサ、21…第1の基板としての対向基板、22…第2の基板としての素子基板、23…シール材、24…ドライバーIC、31…第1の偏光板、32…第2の偏光板、33…第1の配向膜、34…第2の配向膜、35…第3の配向膜、37…液晶層、38…液晶分子、40…TFT、41…画素、42…第2の電極としての画素電極、43…第1の電極としての共通電極、44…補助容量、45…画素領域、49…遮光層、50…カラーフィルタ、52…ドレイン電極、54…ソース電極、56…半導体層、58…ゲート絶縁層、60…層間絶縁層、62…コンタクトホール、80…携帯電話機、81…表示部、82…操作ボタン、100…表示領域、102…走査線、104…データ線、106…容量線、200…投射型表示装置、210…光源、211…ランプ、212…リフレクタ、213…ダイクロイックミラー、214…ダイクロイックミラー、215…反射ミラー、216…反射ミラー、217…反射ミラー、218…入射レンズ、219…リレーレンズ、220…出射レンズ、222…赤色光用液晶光変調装置、223…緑色光用液晶光変調装置、224…青色光用液晶光変調装置、225…クロスダイクロイックプリズム、226…投写レンズ、227…スクリーン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置された第1の基板と第2の基板とからなる一対の基板と、
前記一対の基板に挟持され、配向状態がスプレイ配向とベンド配向のいずれか一方から他方へと転移する液晶層と、
前記第1の基板の前記液晶層側に形成された第1の電極と、
前記第2の基板の前記液晶層側に形成された第2の電極と、
前記第1の電極の前記液晶層側に形成された第1の配向膜と、
前記第2の電極の前記液晶層側に形成された第2の配向膜と、
前記一対の基板間に配置され、光学的異方性を有する高分子を含有したスペーサと、
を備える液晶装置であって、
前記第1の配向膜及び前記第2の配向膜は、互いに同一方向に配向処理が施されており、前記スペーサの表面の少なくとも一部が前記液晶層と接触しており、かつ、該一部近傍における前記光学的異方性を有する高分子が前記配向膜の配向方向とは異なる方向に配向していることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶装置であって、
前記スペーサは、前記液晶層の厚み方向で該液晶層と接触する露出した表面を有しており、該表面近傍における前記光学的異方性を有する高分子が前記配向膜の配向方向とは異なる方向に配向していることを特徴とする液晶装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液晶装置であって、
前記光学的異方性を有する高分子は、液晶性モノマーを含有する組成物を重合して得られたものであることを特徴とする液晶装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶装置であって、
前記一対の基板は、該基板の平面内に、各々が光を射出する複数の画素領域と、隣り合う前記画素領域間を区画する非表示領域と、を含み、
前記スペーサは、前記非表示領域内に形成されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶装置であって、
前記スペーサは、前記複数の画素領域の各々につき少なくとも1つ形成されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶装置であって、
前記スペーサに含有される前記光学的異方性を有する高分子は、前記スペーサと前記第1の配向膜との界面と、前記スペーサと前記第2の配向膜との界面と、のどちらか一方の界面の近傍において前記配向膜の配向方向と略同一の方向に配向しており、かつ、前記第1の配向膜と前記第2の配向膜との間でツイスト配向していることを特徴とする液晶装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶装置であって、
前記ツイスト配向のツイスト角は略180度であることを特徴とする液晶装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶装置であって、
前記スペーサに含有される前記光学的異方性を有する高分子は、前記スペーサと前記第1の配向膜との界面と、前記スペーサと前記第2の配向膜との界面と、のどちらか一方の界面の近傍において前記配向膜の配向方向と略同一の方向に配向しており、かつ、前記第1の配向膜と前記第2の配向膜との間でハイブリッド配向していることを特徴とする液晶装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶装置であって、
前記第1の配向膜の前記液晶層側の面と前記第2の配向膜の前記液晶層側の面とのどちらか一方の面における前記スペーサが配置されていない領域に、第3の配向膜が更に配置されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶装置を表示部に備えることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
互いに対向して配置された第1の基板と第2の基板とからなる一対の基板と、
前記一対の基板に挟持され、配向状態がスプレイ配向とベンド配向のいずれか一方から他方へと転移する液晶層と、
前記第1の基板の前記液晶層側に形成された第1の電極と、
前記第2の基板の前記液晶層側に形成された第2の電極と、
前記第1の電極の前記液晶層側に形成された第1の配向膜と、
前記第2の電極の前記液晶層側に形成された第2の配向膜と、
前記一対の基板間に配置され、光学的異方性を有する高分子を含有したスペーサと、
を備える液晶装置の製造方法であって、
前記第1の基板の一方の面に前記第1の配向膜を形成する第1の工程と、
前記第1の配向膜に前記第1の基板に対して水平方向の配向処理を施す第2の工程と、
前記第2の基板の一方の面に前記第2の配向膜を形成する第3の工程と、
前記第2の配向膜に、前記第1の配向膜に付与された配向方向と同一方向の配向処理を施す第4の工程と、
配向処理が施された前記第1の配向膜上に光重合性の官能基を有する液晶性モノマーを含む液状材料を塗布して、層厚方向の一部分における該液晶性モノマーが前記第1の配向膜に付与された配向方向と異なる方向に配向された塗布膜を形成する第5の工程と、
前記塗布膜をフォトマスクを介して露光して、所定の領域における前記液晶性モノマーを高分子化する第6の工程と、
前記第6の工程において露光されなかった領域の前記塗布膜を除去してスペーサを形成する第7の工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板とを、前記第1の配向膜と前記第2の配向膜とが対向するように前記スペーサを介して貼り合わせる第8の工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に液晶を充填する第9の工程と、
を含むことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第5の工程は、前記光重合性の官能基を持つ液晶性モノマーとカイラル剤とを含む液状材料を塗布する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第5の工程は、形成後の前記塗布膜の表面近傍における前記液晶性モノマーの配列方向が前記第1の配向膜の配向方向に対して180度回転した方向となるように、前記液晶性モノマーと前記カイラル剤との混合比率を調整した液状材料を塗布する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第5の工程は、前記光重合性の官能基を持つ液晶性モノマーと界面活性剤とを含む液状材料を塗布する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第5の工程は、形成後の前記塗布膜内における前記液晶性モノマーの配列方向が、該塗布膜の表面近傍では前記一対の基板に対して略垂直方向となるように、前記液晶性モノマーと前記界面活性剤との混合比率を調整した液状材料を塗布する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項16】
請求項11〜15のいずれか一項に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記液晶装置は、複数の画素領域と隣り合う該画素領域間を区画する非表示領域とを有しており、
前記第6の工程は、前記非表示領域内の一部領域を露光する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第6の工程は、前記スペーサが、前記複数の画素領域の各々につき少なくとも1つは形成されるように露光する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項18】
請求項11〜17のいずれか一項に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第7の工程と前記第8の工程との間に、
前記第1の配向膜上の前記第7の工程により前記塗布膜が除去された領域に第3の配向膜を形成する第10の工程と、
該第3の配向膜に、前記第2の工程において前記第1の配向膜に施された配向処理と同一方向の配向処理を施す第11の工程と、を更に実施することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項19】
互いに対向して配置された第1の基板と第2の基板とからなる一対の基板と、
前記一対の基板に挟持され、配向状態がスプレイ配向とベンド配向のいずれか一方から他方へと転移する液晶層と、
前記第1の基板の前記液晶層側に形成された第1の電極と、
前記第2の基板の前記液晶層側に形成された第2の電極と、
前記第1の電極の前記液晶層側に形成された第3の配向膜と、
前記第2の電極の前記液晶層側に形成された第2の配向膜と、
前記一対の基板間に配置され、光学的異方性を有する高分子を含有したスペーサと、
を備える液晶装置の製造方法であって、
前記第1の基板上に第1の配向膜を形成する第12の工程と、
前記第1の配向膜に第1の方向の配向処理を施す第13の工程と、
前記第2の基板上に前記第2の配向膜を形成する第14の工程と、
前記第2の配向膜に、前記第2の基板に対して水平の方向かつ前記第1の配向膜に付与された配向方向とは異なる方向である第2の方向の配向処理を施す第15の工程と、
配向処理が施された前記第1の配向膜上に光重合性の官能基を有する液晶性モノマーを含む液状材料を塗布して、該液晶性モノマーを含む塗布膜を形成する第16の工程と、
前記塗布膜をフォトマスクを介して露光して、所定の領域における前記液晶性モノマーを高分子化する第17の工程と、
前記第17の工程において露光されなかった領域の前記塗布膜を除去してスペーサを形成する第18の工程と、
前記スペーサが形成された前記第1の基板の前記一方の面に前記第3の配向膜を形成する第19の工程と、
前記第3の配向膜に、前記第2の方向の配向処理を施す第20の工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板とを、前記第3の配向膜と前記第2の配向膜とが対向するように前記スペーサを介して貼り合わせる第21の工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に液晶を充填する第22の工程と、
を含むことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第15の工程は、前記第1の配向膜に付与された配向方向とは略90度異なる方向に配向処理を施す工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第13の工程は、前記第1の基板に対して略垂直方向に配向処理を施す工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項22】
請求項20に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第13の工程は、前記第1の基板に対して略水平方向に配向処理を施す工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項23】
請求項19〜22のいずれか一項に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記液晶装置は、複数の画素領域と隣り合う該画素領域間を区画する非表示領域とを有しており、
前記第17の工程は、前記非表示領域内の一部領域を露光する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項24】
請求項23に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第17の工程は、前記スペーサが、前記複数の画素領域の各々につき少なくとも1つは形成されるように露光する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項1】
互いに対向して配置された第1の基板と第2の基板とからなる一対の基板と、
前記一対の基板に挟持され、配向状態がスプレイ配向とベンド配向のいずれか一方から他方へと転移する液晶層と、
前記第1の基板の前記液晶層側に形成された第1の電極と、
前記第2の基板の前記液晶層側に形成された第2の電極と、
前記第1の電極の前記液晶層側に形成された第1の配向膜と、
前記第2の電極の前記液晶層側に形成された第2の配向膜と、
前記一対の基板間に配置され、光学的異方性を有する高分子を含有したスペーサと、
を備える液晶装置であって、
前記第1の配向膜及び前記第2の配向膜は、互いに同一方向に配向処理が施されており、前記スペーサの表面の少なくとも一部が前記液晶層と接触しており、かつ、該一部近傍における前記光学的異方性を有する高分子が前記配向膜の配向方向とは異なる方向に配向していることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶装置であって、
前記スペーサは、前記液晶層の厚み方向で該液晶層と接触する露出した表面を有しており、該表面近傍における前記光学的異方性を有する高分子が前記配向膜の配向方向とは異なる方向に配向していることを特徴とする液晶装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液晶装置であって、
前記光学的異方性を有する高分子は、液晶性モノマーを含有する組成物を重合して得られたものであることを特徴とする液晶装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶装置であって、
前記一対の基板は、該基板の平面内に、各々が光を射出する複数の画素領域と、隣り合う前記画素領域間を区画する非表示領域と、を含み、
前記スペーサは、前記非表示領域内に形成されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶装置であって、
前記スペーサは、前記複数の画素領域の各々につき少なくとも1つ形成されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶装置であって、
前記スペーサに含有される前記光学的異方性を有する高分子は、前記スペーサと前記第1の配向膜との界面と、前記スペーサと前記第2の配向膜との界面と、のどちらか一方の界面の近傍において前記配向膜の配向方向と略同一の方向に配向しており、かつ、前記第1の配向膜と前記第2の配向膜との間でツイスト配向していることを特徴とする液晶装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶装置であって、
前記ツイスト配向のツイスト角は略180度であることを特徴とする液晶装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶装置であって、
前記スペーサに含有される前記光学的異方性を有する高分子は、前記スペーサと前記第1の配向膜との界面と、前記スペーサと前記第2の配向膜との界面と、のどちらか一方の界面の近傍において前記配向膜の配向方向と略同一の方向に配向しており、かつ、前記第1の配向膜と前記第2の配向膜との間でハイブリッド配向していることを特徴とする液晶装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶装置であって、
前記第1の配向膜の前記液晶層側の面と前記第2の配向膜の前記液晶層側の面とのどちらか一方の面における前記スペーサが配置されていない領域に、第3の配向膜が更に配置されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶装置を表示部に備えることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
互いに対向して配置された第1の基板と第2の基板とからなる一対の基板と、
前記一対の基板に挟持され、配向状態がスプレイ配向とベンド配向のいずれか一方から他方へと転移する液晶層と、
前記第1の基板の前記液晶層側に形成された第1の電極と、
前記第2の基板の前記液晶層側に形成された第2の電極と、
前記第1の電極の前記液晶層側に形成された第1の配向膜と、
前記第2の電極の前記液晶層側に形成された第2の配向膜と、
前記一対の基板間に配置され、光学的異方性を有する高分子を含有したスペーサと、
を備える液晶装置の製造方法であって、
前記第1の基板の一方の面に前記第1の配向膜を形成する第1の工程と、
前記第1の配向膜に前記第1の基板に対して水平方向の配向処理を施す第2の工程と、
前記第2の基板の一方の面に前記第2の配向膜を形成する第3の工程と、
前記第2の配向膜に、前記第1の配向膜に付与された配向方向と同一方向の配向処理を施す第4の工程と、
配向処理が施された前記第1の配向膜上に光重合性の官能基を有する液晶性モノマーを含む液状材料を塗布して、層厚方向の一部分における該液晶性モノマーが前記第1の配向膜に付与された配向方向と異なる方向に配向された塗布膜を形成する第5の工程と、
前記塗布膜をフォトマスクを介して露光して、所定の領域における前記液晶性モノマーを高分子化する第6の工程と、
前記第6の工程において露光されなかった領域の前記塗布膜を除去してスペーサを形成する第7の工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板とを、前記第1の配向膜と前記第2の配向膜とが対向するように前記スペーサを介して貼り合わせる第8の工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に液晶を充填する第9の工程と、
を含むことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第5の工程は、前記光重合性の官能基を持つ液晶性モノマーとカイラル剤とを含む液状材料を塗布する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第5の工程は、形成後の前記塗布膜の表面近傍における前記液晶性モノマーの配列方向が前記第1の配向膜の配向方向に対して180度回転した方向となるように、前記液晶性モノマーと前記カイラル剤との混合比率を調整した液状材料を塗布する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第5の工程は、前記光重合性の官能基を持つ液晶性モノマーと界面活性剤とを含む液状材料を塗布する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第5の工程は、形成後の前記塗布膜内における前記液晶性モノマーの配列方向が、該塗布膜の表面近傍では前記一対の基板に対して略垂直方向となるように、前記液晶性モノマーと前記界面活性剤との混合比率を調整した液状材料を塗布する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項16】
請求項11〜15のいずれか一項に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記液晶装置は、複数の画素領域と隣り合う該画素領域間を区画する非表示領域とを有しており、
前記第6の工程は、前記非表示領域内の一部領域を露光する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第6の工程は、前記スペーサが、前記複数の画素領域の各々につき少なくとも1つは形成されるように露光する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項18】
請求項11〜17のいずれか一項に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第7の工程と前記第8の工程との間に、
前記第1の配向膜上の前記第7の工程により前記塗布膜が除去された領域に第3の配向膜を形成する第10の工程と、
該第3の配向膜に、前記第2の工程において前記第1の配向膜に施された配向処理と同一方向の配向処理を施す第11の工程と、を更に実施することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項19】
互いに対向して配置された第1の基板と第2の基板とからなる一対の基板と、
前記一対の基板に挟持され、配向状態がスプレイ配向とベンド配向のいずれか一方から他方へと転移する液晶層と、
前記第1の基板の前記液晶層側に形成された第1の電極と、
前記第2の基板の前記液晶層側に形成された第2の電極と、
前記第1の電極の前記液晶層側に形成された第3の配向膜と、
前記第2の電極の前記液晶層側に形成された第2の配向膜と、
前記一対の基板間に配置され、光学的異方性を有する高分子を含有したスペーサと、
を備える液晶装置の製造方法であって、
前記第1の基板上に第1の配向膜を形成する第12の工程と、
前記第1の配向膜に第1の方向の配向処理を施す第13の工程と、
前記第2の基板上に前記第2の配向膜を形成する第14の工程と、
前記第2の配向膜に、前記第2の基板に対して水平の方向かつ前記第1の配向膜に付与された配向方向とは異なる方向である第2の方向の配向処理を施す第15の工程と、
配向処理が施された前記第1の配向膜上に光重合性の官能基を有する液晶性モノマーを含む液状材料を塗布して、該液晶性モノマーを含む塗布膜を形成する第16の工程と、
前記塗布膜をフォトマスクを介して露光して、所定の領域における前記液晶性モノマーを高分子化する第17の工程と、
前記第17の工程において露光されなかった領域の前記塗布膜を除去してスペーサを形成する第18の工程と、
前記スペーサが形成された前記第1の基板の前記一方の面に前記第3の配向膜を形成する第19の工程と、
前記第3の配向膜に、前記第2の方向の配向処理を施す第20の工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板とを、前記第3の配向膜と前記第2の配向膜とが対向するように前記スペーサを介して貼り合わせる第21の工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に液晶を充填する第22の工程と、
を含むことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第15の工程は、前記第1の配向膜に付与された配向方向とは略90度異なる方向に配向処理を施す工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第13の工程は、前記第1の基板に対して略垂直方向に配向処理を施す工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項22】
請求項20に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第13の工程は、前記第1の基板に対して略水平方向に配向処理を施す工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項23】
請求項19〜22のいずれか一項に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記液晶装置は、複数の画素領域と隣り合う該画素領域間を区画する非表示領域とを有しており、
前記第17の工程は、前記非表示領域内の一部領域を露光する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項24】
請求項23に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第17の工程は、前記スペーサが、前記複数の画素領域の各々につき少なくとも1つは形成されるように露光する工程であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−8842(P2010−8842A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169986(P2008−169986)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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