液晶調光素子
【課題】色味の変化が生じにくい液晶調光素子を提供する。
【解決手段】液晶調光素子1は、光源42と、光源42から射出された光を変調する液晶層15と、液晶層15で変調された光を励起光として吸収し、光源42から射出された光の波長域とは異なる波長域の光を生じる波長変換層24R,24G,24Bと、を備えている。液晶層15と波長変換層24R,24G,24Bとの間には、少なくとも1層以上の中間層(例えば波長選択透過反射層26)が配置され、波長変換層24R,24G,24Bと前記中間層との間または2つの前記中間層の間に接着層25が設けられ、接着層25は、波長変換層24R,24G,24Bに入射する励起光のうち波長変換層24R,24G,24Bで吸収される光を透過し波長変換層24R,24G,24Bで吸収されない光を吸収する波長カットフィルターとして機能する。
【解決手段】液晶調光素子1は、光源42と、光源42から射出された光を変調する液晶層15と、液晶層15で変調された光を励起光として吸収し、光源42から射出された光の波長域とは異なる波長域の光を生じる波長変換層24R,24G,24Bと、を備えている。液晶層15と波長変換層24R,24G,24Bとの間には、少なくとも1層以上の中間層(例えば波長選択透過反射層26)が配置され、波長変換層24R,24G,24Bと前記中間層との間または2つの前記中間層の間に接着層25が設けられ、接着層25は、波長変換層24R,24G,24Bに入射する励起光のうち波長変換層24R,24G,24Bで吸収される光を透過し波長変換層24R,24G,24Bで吸収されない光を吸収する波長カットフィルターとして機能する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶調光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶調光素子の一形態としては、バックライトとして青色発光ダイオード(LED)や近紫外発光ダイオード(LED)が用いられ、カラーフィルターに相当する部位に蛍光体(波長変換層)が配置されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この蛍光体励起色変換方式の液晶調光素子は、バックライトから射出された光を蛍光体で波長変換し、所望の色(RGBなど)を表示する。この液晶調光素子は、カラーフィルター方式のものと比較して、光の吸収による損失がなく、蛍光体によって波長変換するため、光利用効率が高いという特長がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−66437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蛍光体励起色変換方式の液晶調光素子では、バックライトから射出された光のうち蛍光体で波長変換されない光はそのまま蛍光体を透過して外部に射出される。波長変換されない光の割合は波長変換される光の割合に比べて少ないが、波長変換される光は蛍光となって全方位に拡散するため、波長変換されずに外部に射出される光が波長変換されて外部に射出される光に比べて相対的に強く感じられ、色味の変化が生じるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、色味の変化が生じにくい液晶調光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液晶調光素子は、光源と、前記光源から射出された光を変調する液晶層と、前記液晶層で変調された光を励起光として吸収し、前記光源から射出された光の波長域とは異なる波長域の光を生じる波長変換層と、を備え、前記液晶層と前記波長変換層との間には、少なくとも1層以上の中間層が配置され、前記波長変換層と前記中間層との間または2つの前記中間層の間に接着層が設けられ、前記接着層は、前記波長変換層に入射する励起光のうち前記波長変換層で吸収される光を透過し前記波長変換層で吸収されない光を吸収する波長カットフィルターとして機能する。
【0007】
前記接着層は、前記波長変換層の吸収スペクトルのピーク波長よりも長波長の光を吸収してもよい。
【0008】
前記接着層の吸収スペクトルのピーク波長は、前記励起光のスペクトルのピーク波長よりも長波長であってもよい。
【0009】
前記励起光は、ピーク波長が350nm以上410nm未満の範囲に存在する近紫外光もしくは紫色光、またはピーク波長が410以上500nm以下の範囲に存在する青色光であり、前記接着層は、490nm以上の波長の光を吸収してもよい。
【0010】
前記接着層の吸収スペクトルは、ピーク波長を中心とした対称な形状、または、短波長側が長波長側に比べて裾の短い形状を有していてもよい。
【0011】
前記接着層の吸収スペクトルの半値幅は、20nmよりも大きくてもよい。
【0012】
前記接着層は、所定の波長よりも大きい波長の可視光を概ね全て吸収するショートパスフィルターとして機能してもよい。
【0013】
前記波長変換層と前記液晶層との間には、前記励起光を透過し前記波長変換層から放射された光を反射する波長選択透過反射層が設けられていてもよい。
【0014】
前記波長選択透過反射層は、前記波長変換層と前記接着層との間に設けられていてもよい。
【0015】
前記波長選択透過反射層は、前記液晶層と前記接着層との間に設けられていてもよい。
【0016】
前記接着層は、前記波長選択透過反射層と前記波長変換層とを接着する接着層であってもよい。
【0017】
前記波長変換層は、隔壁によって区画された領域に配置され、前記接着層は、前記波長変換層と前記隔壁とを覆って配置され、前記波長変換層と前記隔壁との間の段差によって形成される凹凸を平坦化していてもよい。
【0018】
前記波長変換層は、隔壁によって区画された領域に配置され、前記接着層は、前記波長変換層を覆って配置され、前記波長変換層と前記隔壁との間の段差によって形成される凹凸を平坦化しており、前記波長選択透過反射層は、前記隔壁と接してもよい。
【0019】
前記光源は、LEDであってもよい。
【0020】
前記光源は、OLEDであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、色味の変化が生じにくい液晶調光素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態の液晶調光素子の断面図である。
【図2】接着層に含まれる色素の吸収スペクトルの一例を示す図である。
【図3】接着層を透過した後の励起光のスペクトルの一例を、緑色波長変換層から放射される蛍光のスペクトルとともに示す図である。
【図4】緑色カラーフィルターの透過スペクトルの一例を示す図である。
【図5】緑色カラーフィルターを透過した後の蛍光のスペクトルの一例を示す図である。
【図6】接着層の内部に色素を含有させた場合と含有させない場合の色味の変化を示す図である。
【図7】第2実施形態の液晶調光素子の断面図である。
【図8】第3実施形態の液晶調光素子の断面図である。
【図9】液晶調光素子の製造方法の一例を示す図である。
【図10】液晶調光素子の製造方法の一例を示す図である。
【図11】液晶調光素子の製造方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の液晶調光素子1の断面図である。
【0024】
液晶調光素子1は、バックライト40と、バックライト40から射出された光を用いてフルカラー表示を行う表示体30と、を備えている。表示体30は、蛍光体基板20と、蛍光体基板20と貼り合わされた液晶素子10と、を備えている。
【0025】
本実施形態の液晶調光素子1では、赤色、緑色、青色の表示をそれぞれ行う3つのドットにより画像を構成する最小単位である1つの画素が構成されている。以下の説明では、赤色の表示を行うドットを赤色画素PR、緑色の表示を行うドットを緑色画素PG、青色の表示を行うドットを青色画素PB、と称する。
【0026】
本実施形態の液晶調光素子1では、バックライト40からピーク波長が350nm以上410nm未満の範囲に存在する近紫外光もしくは紫色光、またはピーク波長が410以上500nm以下の範囲に存在する青色光が射出され、蛍光体基板20にこの光が励起光として入射され、赤色画素PRでは赤色の蛍光、緑色画素PGでは緑色の蛍光、青色画素PBでは青色の蛍光が生じ、これら各色光によってフルカラー表示が行われる。
【0027】
蛍光体基板20は、ガラス等の透明基板を基板本体21として備えている。基板本体21上には、赤色画素PR、緑色画素PGおよび青色画素PBを区画する隔壁22が形成されている。隔壁22に区画された領域には、カラーフィルターと波長変換層とが形成されている。すなわち、赤色画素PRには、基板本体21側から赤色カラーフィルター23Rと赤色蛍光体からなる赤色波長変換層24Rとが順に形成されている。緑色画素PGには、基板本体21側から緑色カラーフィルター23Gと緑色蛍光体からなる緑色波長変換層24Gとが順に形成されている。青色画素PBには、基板本体21側から青色カラーフィルター23Bと青色蛍光体からなる青色波長変換層24Bとが順に形成されている。
【0028】
本発明で用いられる蛍光体としては、無機蛍光体と有機蛍光体の双方が利用可能である。無機蛍光体としては、例えば、酸化物蛍光体、硫化物蛍光体、サイアロン蛍光体などを用いることができる。具体的には、Y3Al5O12:Ce3+,ZnS,SrGa2S4:Euなどが挙げられる。また、有機蛍光体としては、ピオラントロン系、イソピオラントロン系、ペリレン系、チオキサンテン系、クマリン系、アントラキノン系、ベンゾピラン系、ナフタルイミド系またはナフタル酸系、ベンゾピテリジン系、ピラジン系、シアノピラジン系、スチルベン系、ジアミノジフェニル系、イミダゾール系、イミダゾロン系、トリアゾール系、チアゾール系、オキサゾール系、カルボスチリル系、ピラゾリン系、ジヒドロピリジン系、ビススチリル系、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、チオインジゴ系、ペリレン系、ジオキサジン系等が挙げられる。例えば、可視光を吸収し長波長光に変換する蛍光体としては、特開昭62−209172、特開昭62−148571、特開平4−131023、特開平6−40817、特開平6−41524号公報等に記載されている構造の化合物などが、また、紫外線を吸収し長波長光に変換する蛍光体としては、特開平3−198721、特開平3−72818、特開平4−141025、特開平6−46684、特開平6−46685号公報等に記載されている構造の化合物などが挙げられる。より具体的には、BASF社のルモゲン(ペリレン系)、クマリン(クマリン系)、ローダミンB等のローダミン(キサンテン系)、アクリジン(キサンテン系)、ルミノール(アントラキノン系)、スミプラスト(アントラキノン系)等の商品名で知られる蛍光体が挙げられ、蛍光の量子効率の高いペリレン系やクマリン系が好適である。また、発光色で分類すると、青色発光に関しては、クマリン2、クマリン339、クマリン466、クマリン47、クマリン102等のクマリン系、ジスチリルベンゼン等のジスチリルアリーレン系、アクリドン系、9,10−ジフェニルアントラセン等のアントラセン系、ペリレン、ピレン等の縮合芳香族環、ナフタル酸イミド系、キノロン系、オキサゾール系、緑色発光については、キナクリドン系、ジフェニルテトラセン等のナフタセン系、クマリン6、クマリン522、クマリン153等のクマリン系、フルオレセイン系、フラビン系、ピラゾリン系、ナフタル酸イミド系、ピロロメテン系、赤色発光に対しては、ナイルレッド等のフェノキサゾン系、DCM、ローダミンB等のローダミン系、ルモゲンFレッド等のペリレン顔料、シアニン色素、ピロロメテン系等が挙げられる。これら蛍光色素は、単一でも複数混ぜ合わせた構成でも良い。
【0029】
以上の蛍光体は、濃度消光を起こさない場合には、そのままで波長変換層とすることが可能であるが、一般に濃度消光を示すことが多く、10重量%以下、好ましくは、1重量%以下に希釈された状態で使うことが好ましい。従って、このような色素を波長変換層として用いるためには、何らかのバインダが必要とされる。
【0030】
バインダ樹脂材料としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、ポリサルホン等の樹脂を用いることができる。分散は、トリクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、THF、ジクロロメタン、トルエン、キシレン等の適当な溶媒に、透明樹脂及び蛍光色素を、蛍光色素が樹脂に対して0.1〜10重量%となる濃度で溶解させた後、スピンコートやディップコート法により基板上に0.1〜10μmの厚みで塗布する。塗布後、必要に応じ、加熱等の手段により硬化させる。また、透明性のある光硬化性樹脂やクリアレジスト(例えば、新日鉄化学(株)製;V−259PA)等も光透過性媒体として使用でき、適当な溶媒を用いて透明樹脂の場合と同様にして色素を分散させ、スピンコートやディップコート法により塗布する。塗布後、紫外線光等により硬化させる。
【0031】
尚、本発明に用いられる蛍光色素、及び、バインダ材料、及び、それを溶かす溶剤や形成法は上記に限定されるわけではない。
【0032】
赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと隔壁22とを覆って接着層25が形成されている。接着層25は、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと隔壁22との間の段差によって形成される基板本体21上の凹凸を平坦化している。接着層25上には、バックライト40から射出された励起光を透過し、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された赤色蛍光、緑色蛍光および青色蛍光を反射する波長選択透過反射層26が設けられていてもよい。波長選択透過反射層26は、接着層25によって赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと接着されている。
【0033】
接着層25は、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに入射する励起光のうち赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収される光を透過し赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収されない光を吸収する波長カットフィルターとして機能する。例えば、接着層25は、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに入射する励起光のうち赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収される光を透過する透明樹脂と、励起光のうち赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収されない光を吸収する色素と、を含んで構成されている。
【0034】
色素としては、例えば、フルオレセイン(吸収ピーク波長:495nm)、BODIPY FL(吸収ピーク波長:503nm)、ローダミン123(吸収ピーク波長:505nm)、ローダミンB(吸収ピーク波長:555nm)、テトラメチローダミン(吸収ピーク波長:552nm)、R−フィコエリスリ(吸収ピーク波長:565nm)、エチジウムホモダイマー1(吸収ピーク波長:528nm)、プロピジウムローダイド(吸収ピーク波長:538nm)、7−Aminoactinomycin D(7−AAD)(吸収ピーク波長:546nm)、BODIPYTMTMR(吸収ピーク波長:542nm)、AsRed2(吸収ピーク波長:578nm)などを用いることができる。
【0035】
接着層25の厚みは、可能な範囲で薄くすることが好ましい。例えば、隔壁22と波長選択透過反射層26とを接触させ、接着層25の厚みを、隔壁22と赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bとの間の段差の高さと等しくすることが好ましい。こうすることにより、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された光(蛍光)が接着層25によって吸収されることを抑制することができる。
【0036】
すなわち、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された蛍光は、全方位に等方的に拡散し、液晶素子10側に向かう光は波長選択透過反射層26で反射されて蛍光体基板20の外部に射出される。しかし、その過程で蛍光は接着層25の内部を2度通過するため、接着層25の吸収スペクトルと蛍光のスペクトルとが大きく重なっていると、接着層25による蛍光の吸収が多くなり、暗い表示となってしまう。接着層25の厚みを薄くすれば、接着層25による蛍光の吸収も少なくなる。
【0037】
液晶素子10は、第1基板11と、第2基板12と、第1基板11と第2基板12との間に挟持された液晶層15と、第1基板11の液晶層15とは反対側の面に配置された第1偏光層18と、第2基板12の液晶層15とは反対側の面に配置された第2偏光層19と、を備えている。
【0038】
第1基板11と第2基板12は、バックライト40から射出された励起光を透過するガラス等の透明基板を基板本体として備えている。第1基板11には、TFTなどの画素スイッチング素子(図示略)が赤色画素PR、緑色画素PGおよび青色画素PBのそれぞれに対応して形成されており、バックライト40から射出された励起光の偏光状態が赤色画素PR、緑色画素PGおよび青色画素PBにおいて独立に制御可能となっている。液晶素子10は、バックライト40から射出された励起光の偏光状態を赤色画素PR、緑色画素PGおよび青色画素PBにおいて独立に制御することにより、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに入射する励起光の光量を独立に制御可能となっている。
【0039】
バックライト40は、LED(発光ダイオード)またはCCFL(冷陰極管)等からなる光源42と、光源42から射出された光の内部反射を利用して液晶素子10に向けて射出させる導光板41と、を備えている。バックライト40は、光源42が導光板41の端面に配置されたエッジライト型でも良く、光源42が導光板41の直下に配置された直下型でもよい。本実施形態で用いるバックライト40には、光の射出方向を制御して液晶素子10の法線方向(液晶層15の厚み方向)に指向性を持たせたバックライト、いわゆる指向性バックライトを用いることが望ましい。
【0040】
上記構成の液晶調光素子1では、バックライト40から射出された励起光は、液晶素子10に対して概ね垂直に入射し、赤色画素PR、緑色画素PGおよび青色画素PBの各画素毎に偏光状態(すなわち透過光量)が制御される。そして、液晶素子10を透過して蛍光体基板20に概ね垂直に入射した励起光は、接着層25において不要な波長成分が除去された後、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収され、励起光とは異なる波長域の光(蛍光)に変換される。
【0041】
赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された光(蛍光)は、概ね全方位に等方的に拡散されるが、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された光のうち液晶素子10側に向かう光は、波長選択透過反射層26で反射されて基板本体21側に向かう。そのため、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された光(蛍光)は、概ね全て基板本体21側に向けて取り出される。
【0042】
赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された光(蛍光)は、赤色カラーフィルター23R、緑色カラーフィルター23Gおよび青色カラーフィルター23Bを透過して色純度が高められる。そして、色純度が高められた赤色光、緑色光および青色光が蛍光体基板20から外部に射出される。これにより、フルカラー表示が行われる。
【0043】
上記構成の液晶調光素子1では、液晶素子10を透過した励起光は、接着層25において不要な波長成分が除去された後、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収され、励起光とは異なる波長域の光(蛍光)に変換される。そのため、不要な波長成分の光が赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射される光(蛍光)と混合されることにより生じる色味の変化が少なく、色再現性に優れた画像表示が可能となる。
【0044】
以下、本実施形態の効果について、具体的に説明する。
【0045】
図2は、接着層25に含まれる色素の吸収スペクトル(接着層25の吸収スペクトル)の一例を示す図である。図3は、接着層25を透過した後の励起光のスペクトルの一例を、緑色波長変換層24Gから放射される光(蛍光)のスペクトルとともに示す図である。図3では、接着層25に図2に示した吸収スペクトルを示す色素が含まれている場合と含まれていない場合の励起光のスペクトルをそれぞれ示している。
【0046】
図2に示すように、本実施形態の色素は、510nmに吸収スペクトルのピーク波長を有する。本実施形態の色素は、バックライトから射出された励起光のうち緑色の波長領域の光を吸収する。
【0047】
図3に示すように、本実施形態の励起光は、例えば、450nmにピーク波長を有する青色光である。光源としては、例えばLEDが用いられる。LEDには、一般に格子欠陥が含まれており、LEDから射出される光には、格子欠陥により生じる長波長領域の光(緑色光)が微弱であるが含まれている。図2の色素はこの長波長領域の光(緑色光)を吸収して、励起光の色純度を高める機能を有する。
【0048】
すなわち、図1に示した本実施形態の液晶調光素子1では、バックライト40から射出された光のうち赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで波長変換されない光はそのまま赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bを透過して外部に射出される。そのため、励起光のスペクトルと赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bの吸収スペクトルとの重なりが大きくなるように励起光の吸収スペクトルを設計し、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから極力不要な励起光が漏れないようにしている。
【0049】
しかしながら、LEDから射出される励起光のスペクトルは、LEDに内在する格子欠陥の影響によって長波長側に広がっているため、励起光のスペクトルの長波長側の裾野の部分において、微弱ではあるが、波長変換されない光が存在する。図3に示すように、波長変換されない光の割合は波長変換される光の割合に比べて少ないが、波長変換される光は蛍光となって全方位に拡散するため、蛍光体基板の法線方向から見た場合、波長変換されずに外部に射出される光が波長変換されて外部に射出される光に比べて相対的に強く感じられ、色味の変化が生じる。
【0050】
そこで、本実施形態では、このような波長変換されない光を、接着層25の内部に含有された色素によって吸収している。図2に示したように、色素の吸収スペクトルのピーク波長(510nm)は、励起光のピーク波長(450nm)よりも大きく、緑色波長変換層24Gの発光スペクトル(蛍光のスペクトル)のピーク波長(520nm)よりも小さい。色素は、緑色波長変換層24Gの吸収スペクトルのピーク波長よりも長波長の光を吸収する。そのため、励起光と蛍光のスペクトルが重なる波長領域の光を効果的に吸収することができる。励起光と蛍光のスペクトルが重なる部分の波長領域の光は、画像の色味を変化させる原因となるため、このような波長領域の光を色素で吸収すれば、色再現性に優れた画像表示が可能となる。
【0051】
図4は、緑色カラーフィルター23Gの透過スペクトルの一例を示す図である。図5は、緑色カラーフィルター23Gを透過した後の蛍光のスペクトルの一例を示す図である。図5では、接着層25に図2に示した吸収スペクトルを示す色素が含まれている場合と含まれていない場合の透過スペクトルをそれぞれ示している。図6は、接着層の内部に上記の色素を含有させた場合と含有させない場合の色味の変化を示す図である。
【0052】
図4に示すように、本実施形態の緑色カラーフィルター23Gの透過スペクトルは、520nmにピーク波長を有する。図3に示した蛍光のスペクトルのピーク波長は520nmなので、本実施形態の緑色カラーフィルター23Gは、図3に示した蛍光のスペクトルとよく合致した透過スペクトルを有するものとなっている。
【0053】
しかしながら、カラーフィルターの透過スペクトルは一般にブロードであるため、緑色波長変換層24Gによって波長変換されない光を十分に吸収することはできない。例えば、図4の例では、緑色カラーフィルター23Gの透過スペクトルは、半値幅が100nmと広くなっており、励起光と蛍光のスペクトルが重なる480nm~500nmの波長領域の光を効果的に吸収することができない。
【0054】
その結果、図5および図6に示すように、色素で不要な波長領域の励起光を吸収しない場合には、不要な励起光の影響で、本来緑色カラーフィルター23から射出されるべき緑色光のスペクトルのピーク波長(520nm)よりも短波長側(510nm付近)にピーク波長がシフトし、色味の変化が生じる。一方、色素で不要な波長領域の励起光を吸収した場合には、そのような色味の変化が少なくなり、画像表示が可能となっている。
【0055】
以上のように、本実施形態の液晶調光素子1では、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと光源42との間に、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに入射する励起光のうち赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収される光を透過し赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収されない光を吸収する波長カットフィルター(接着層25)が設けられている。そのため、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで波長変換されずに外部に射出された励起光によって、画像の色味が変化することを抑制することができ、色再現性に優れた液晶調光素子1が提供される。また、波長カットフィルターの機能は、接着層25が担っているので、新たに波長カットフィルターの機能を有する光学部材を設置する必要がなく、構成が簡略化される。
【0056】
[第1実施形態の第1変形例]
図2では、色素の吸収スペクトルを510nm付近にピーク波長を有し、半値幅が50nmである形状としたが、色素の吸収スペクトルの形状はこれに限定されない。
【0057】
色素の吸収スペクトルのピーク波長は、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに入射する励起光のピーク波長よりも大きく、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射される蛍光の発光スペクトルのピーク波長よりも小さいことが好ましい。
【0058】
励起光のピーク波長は、通常、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bの吸収スペクトルのピーク波長と概ね一致するため、色素の吸収スペクトルのピーク波長が励起光のピーク波長よりも大きければ、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収されるべき励起光の多くが色素によって吸収されてしまうという事態を抑制することができる。また、色素の吸収スペクトルのピーク波長が蛍光の発光スペクトルのピーク波長よりも小さければ、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された蛍光が波長選択透過反射層26で反射されて蛍光体基板20の外部に射出される際に、接着層25を通過する蛍光の多くが接着層25の内部の色素によって吸収されてしまうという事態を抑制することができる。
【0059】
よって、色素の吸収スペクトルのピーク波長が、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに入射する励起光のピーク波長よりも大きく、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射される蛍光の発光スペクトルのピーク波長よりも小さくなっていれば、これらの不具合を抑制しつつ、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから漏れ出る励起光の光量を低減することができる。
【0060】
色素の吸収スペクトルの半値幅は、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに入射する励起光のスペクトルと赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射される蛍光のスペクトルとが重なる部分の大きさに基づいて決めることができる。励起光と蛍光のスペクトルが重なる部分が大きければ、色素の吸収スペクトルの半値幅を大きくし、励起光と蛍光のスペクトルが重なる部分が小さければ、色素の吸収スペクトルの半値幅を小さくすることが好ましい。こうすることで、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された蛍光が波長選択透過反射層26で反射されて蛍光体基板20の外部に射出される際に、接着層25を通過する蛍光の多くが接着層25の内部の色素によって吸収されてしまうという事態を抑制しつつ、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから漏れ出る励起光の光量を低減することができる。
【0061】
励起光と蛍光のスペクトルが重なる部分の大きさは、例えば、励起光の光源としてLEDを用いた場合には、LEDの格子欠陥によって生じる励起光のスペクトルの長波長側への広がりによって決まる。LEDの格子欠陥による励起光のスペクトルの広がりを考慮した場合、色素の吸収スペクトルの半値幅は、20nmよりも大きいことが好ましい。
【0062】
[第1実施形態の第2変形例]
図2では、色素の吸収スペクトルを、ピーク波長を中心として概ね対称な形状を備えたものとして示したが、色素の吸収スペクトルの形状はこれに限定されない。色素の吸収スペクトルは、短波長側が長波長側に比べて裾の短い形状を備えていてもよく、これにより、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収されるべき励起光の多くが色素によって吸収されてしまうという事態を抑制しつつ、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから漏れ出る励起光の光量を低減することができる。
【0063】
[第1実施形態の第3変形例]
図1では、波長カットフィルターとして機能する接着層25を赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと波長選択透過反射層26との間に配置したが、接着層25の位置はこれに限定されない。例えば、液晶層15と赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bとの間に、1層以上の中間層が配置され、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと中間層との間または2つの中間層の間に接着層25が設けられていればよい。図1では、接着層25を、中間層である波長選択透過反射層26と赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bとを接着する接着層としたが、接着層25は、中間層である波長選択透過反射層26と、中間層である第2偏光層19とを接着する接着層、或いは、中間層である第2偏光層19と、中間層である第2基板19とを接着する接着層などであってもよい。
【0064】
[第1実施形態の第4変形例]
図1では、バックライト40として、LEDからなる光源42と導光板41とを備えたものを例示したが、バックライト40の構成はこれに限定されない。バックライト40としては、OLED(有機エレクトロルミネッセンス素子)からなる面状の光源を用いてもよい。OLEDのスペクトルは一般に長波長側に裾が長く広がっているため、その不要波長領域のカットが必要となる。よって、OLEDを光源として用いた場合でも、LEDを光源として用いた場合と同様に、色味の変化が問題となり、本実施形態の構成が有効となる。
【0065】
[第1実施形態の第5変形例]
図1では、赤色画素PR、緑色画素PGおよび青色画素PBにそれぞれ赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bを設置したが、赤色画素PR、緑色画素PGおよび青色画素PBの構成はこれに限定されない。例えば、青色画素PBにおいては、青色波長変換層24Bの代わりに光散乱層を設置することで、青色の励起光をそのまま散乱して表示光として利用することができる。光散乱層としては、青色の表示光(励起光)を透過する透明樹脂の内部に、当該表示光を散乱可能な散乱粒子を分散させたものを用いることができる。散乱粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレートビーズ(屈折率:1.49)、アクリルビーズ(屈折率:1.50)、架橋ポリスチレンビーズ(屈折率:1.61)、酸化ジルコニアビーズ(屈折率:2.05)、酸化チタンビーズ(屈折率 アナタース型:2.50、ルチル型:2.70)などを用いることができ、バインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(屈折率:1.49)などを用いることができる。
【0066】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態の液晶調光素子2の断面図である。液晶調光素子2において第1実施形態の液晶調光素子1と共通する構成要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0067】
液晶調光素子2において第1実施形態の液晶調光素子1と異なる点は、波長選択透過反射層26が、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと前記波長カットフィルターとして機能する接着層52との間に設けられている点である。蛍光体基板51は、第1実施形態の蛍光体基板20と比較して、接着層25が接着層27に置き換わった点のみが異なり、液晶素子50は、第1実施形態の液晶素子10と比較して、第2偏光層19と第2基板12との間の接着層(図1では図示を省略している)が接着層52に置き換わった点のみが異なり、表示体31は、第1実施形態の表示体30と比較して、蛍光体基板20と液晶素子10とが、蛍光体基板51と液晶素子50とに置き換わった点のみが異なる。
【0068】
本実施形態の場合、図2に示した吸収スペクトルを有する色素は、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと波長選択透過反射層26とを接着する接着層27の内部には含まれておらず、第2偏光層19と第2基板12とを接着する接着層52の内部に含まれている。そのため、接着層52が、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに入射する励起光のうち赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収される光を透過し赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収されない光を吸収する波長カットフィルターとして機能する。
【0069】
液晶調光素子2では、接着層27が色素を含まない透明樹脂からなるため、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから液晶素子50側に向けて放射された蛍光が波長選択透過反射層26で反射されて蛍光体基板51の外部に射出する際に、色素によって蛍光が吸収されることがない。よって、第1実施形態の液晶調光素子1と比較して、明るい画像表示が可能となる。
【0070】
本実施形態の場合、接着層52の内部に含有された色素によって、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された蛍光が吸収されないので、色素の吸収スペクトルは、必ずしも図2に示したような形状を備えている必要はない。図2では、色素による蛍光の吸収を少なくするために、色素の吸収スペクトルの長波長側の裾を560nm程度までに留めたが、本実施形態の場合は、そのような制約はないので、色素の吸収スペクトルの長波長側の裾を赤外領域まで広げることが可能である。この場合、接着層52は、所定の波長(例えば、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bを励起することが可能な波長)よりも大きい波長の可視光を概ね全て吸収するショートパスフィルターとして機能し、励起光に含まれる不要波長成分を概ね全て除去することができるため、さらに色再現性に優れた液晶調光素子2が提供される。
【0071】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態の液晶調光素子3の断面図である。液晶調光素子3において第1実施形態の液晶調光素子1と共通する構成要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0072】
液晶調光素子3において第1実施形態の液晶調光素子1と異なる点は、液晶素子における一方の基板(第2基板12)が省略され、第1基板11と第2偏光層19とで液晶層15が挟持されている点である。この構成においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態では、第2基板を省略し、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと液晶層15との間の距離を短くしている。そのため、視差の影響が少なくなり、表示品質に優れた液晶調光素子2が提供される。
【0073】
[第4実施形態]
図9ないし図11は、液晶調光素子の製造方法の一例を示す模式図である。図9ないし図11では、第2実施形態の液晶調光素子2の製造方法を示している。なお、図9ないし図11では、便宜上、赤色カラーフィルター23R、緑色カラーフィルター23Gおよび青色カラーフィルター23Bの図示は省略している。
【0074】
図9に示すように、接着層27、波長選択透過反射層26、第2偏光層19および接着層52は、搬送ロール53および貼合ロール54を含む複数のロールを用いて搬送され、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bが形成された基板本体21の表面に貼合される。接着層27、波長選択透過反射層26、第2偏光層19および接着層52は、互いに積層されて1枚の長尺状の光学フィルム55として図示略の原反ロールから引き出される。接着層27の表面には図示略の剥離シートが積層されており、この剥離シートを剥離してから貼合が行われる。接着層52は、例えば、熱可塑性の樹脂の内部に前述の色素を含有させたものであり、光学フィルム55の搬送時には粘着性がなく、接着層52の表面には剥離シートなどは積層されていない。
【0075】
赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bの表面に光学フィルム55を貼合したら、光学フィルム55を基板本体21の大きさに合わせて切断する。なお、光学フィルム55を切断するタイミングは、光学フィルム55を赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bの表面に貼合する前でもよい。
【0076】
図10に示すように、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bの表面に光学フィルム55を貼合したら、接着層52上に、第1基板11、第2基板12および液晶層15を含むパネル体56を積層する。パネル体56は、第1基板11の表面に第1偏光層を貼合したものでもよい。パネル体56を接着層52上に積層する際には、パネル体56と接着層52との間に空気が混入することを抑制するために、パネル体56を接着層52の表面に対して斜めに配置し、パネル体56の一端側から徐々にパネル体56を接着層52に接触させる。
【0077】
図11に示すように、接着層52上にパネル体56を積層したら、接着層52を加熱して接着層52を軟化させる。そして、接着層52が軟化した状態でパネル体56と基板本体51とをアライメントし、接着層52を冷却して、パネル体56と接着層52とを接合する。その後、第1基板11の表面に第1偏光層を貼合することで、表示体を完成させる。そして、この表示体をバックライトと一体化することで、液晶調光素子が完成する。
【0078】
この液晶調光素子の製造方法では、接着層27、波長選択透過反射層26、第2偏光層19および接着層52が積層された光学フィルム55を赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに貼合して所定のサイズに切断することで、蛍光体基板が完成する。そのため、製造工程が非常に容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、液晶調光素子の分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1,2,3…液晶調光素子、15…液晶層、22…隔壁、24R…赤色波長変換層、24G…緑色波長変換層、24B…青色波長変換層、25…接着層、26…波長選択透過反射層、42…光源、52…接着層
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶調光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶調光素子の一形態としては、バックライトとして青色発光ダイオード(LED)や近紫外発光ダイオード(LED)が用いられ、カラーフィルターに相当する部位に蛍光体(波長変換層)が配置されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この蛍光体励起色変換方式の液晶調光素子は、バックライトから射出された光を蛍光体で波長変換し、所望の色(RGBなど)を表示する。この液晶調光素子は、カラーフィルター方式のものと比較して、光の吸収による損失がなく、蛍光体によって波長変換するため、光利用効率が高いという特長がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−66437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蛍光体励起色変換方式の液晶調光素子では、バックライトから射出された光のうち蛍光体で波長変換されない光はそのまま蛍光体を透過して外部に射出される。波長変換されない光の割合は波長変換される光の割合に比べて少ないが、波長変換される光は蛍光となって全方位に拡散するため、波長変換されずに外部に射出される光が波長変換されて外部に射出される光に比べて相対的に強く感じられ、色味の変化が生じるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、色味の変化が生じにくい液晶調光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液晶調光素子は、光源と、前記光源から射出された光を変調する液晶層と、前記液晶層で変調された光を励起光として吸収し、前記光源から射出された光の波長域とは異なる波長域の光を生じる波長変換層と、を備え、前記液晶層と前記波長変換層との間には、少なくとも1層以上の中間層が配置され、前記波長変換層と前記中間層との間または2つの前記中間層の間に接着層が設けられ、前記接着層は、前記波長変換層に入射する励起光のうち前記波長変換層で吸収される光を透過し前記波長変換層で吸収されない光を吸収する波長カットフィルターとして機能する。
【0007】
前記接着層は、前記波長変換層の吸収スペクトルのピーク波長よりも長波長の光を吸収してもよい。
【0008】
前記接着層の吸収スペクトルのピーク波長は、前記励起光のスペクトルのピーク波長よりも長波長であってもよい。
【0009】
前記励起光は、ピーク波長が350nm以上410nm未満の範囲に存在する近紫外光もしくは紫色光、またはピーク波長が410以上500nm以下の範囲に存在する青色光であり、前記接着層は、490nm以上の波長の光を吸収してもよい。
【0010】
前記接着層の吸収スペクトルは、ピーク波長を中心とした対称な形状、または、短波長側が長波長側に比べて裾の短い形状を有していてもよい。
【0011】
前記接着層の吸収スペクトルの半値幅は、20nmよりも大きくてもよい。
【0012】
前記接着層は、所定の波長よりも大きい波長の可視光を概ね全て吸収するショートパスフィルターとして機能してもよい。
【0013】
前記波長変換層と前記液晶層との間には、前記励起光を透過し前記波長変換層から放射された光を反射する波長選択透過反射層が設けられていてもよい。
【0014】
前記波長選択透過反射層は、前記波長変換層と前記接着層との間に設けられていてもよい。
【0015】
前記波長選択透過反射層は、前記液晶層と前記接着層との間に設けられていてもよい。
【0016】
前記接着層は、前記波長選択透過反射層と前記波長変換層とを接着する接着層であってもよい。
【0017】
前記波長変換層は、隔壁によって区画された領域に配置され、前記接着層は、前記波長変換層と前記隔壁とを覆って配置され、前記波長変換層と前記隔壁との間の段差によって形成される凹凸を平坦化していてもよい。
【0018】
前記波長変換層は、隔壁によって区画された領域に配置され、前記接着層は、前記波長変換層を覆って配置され、前記波長変換層と前記隔壁との間の段差によって形成される凹凸を平坦化しており、前記波長選択透過反射層は、前記隔壁と接してもよい。
【0019】
前記光源は、LEDであってもよい。
【0020】
前記光源は、OLEDであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、色味の変化が生じにくい液晶調光素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態の液晶調光素子の断面図である。
【図2】接着層に含まれる色素の吸収スペクトルの一例を示す図である。
【図3】接着層を透過した後の励起光のスペクトルの一例を、緑色波長変換層から放射される蛍光のスペクトルとともに示す図である。
【図4】緑色カラーフィルターの透過スペクトルの一例を示す図である。
【図5】緑色カラーフィルターを透過した後の蛍光のスペクトルの一例を示す図である。
【図6】接着層の内部に色素を含有させた場合と含有させない場合の色味の変化を示す図である。
【図7】第2実施形態の液晶調光素子の断面図である。
【図8】第3実施形態の液晶調光素子の断面図である。
【図9】液晶調光素子の製造方法の一例を示す図である。
【図10】液晶調光素子の製造方法の一例を示す図である。
【図11】液晶調光素子の製造方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の液晶調光素子1の断面図である。
【0024】
液晶調光素子1は、バックライト40と、バックライト40から射出された光を用いてフルカラー表示を行う表示体30と、を備えている。表示体30は、蛍光体基板20と、蛍光体基板20と貼り合わされた液晶素子10と、を備えている。
【0025】
本実施形態の液晶調光素子1では、赤色、緑色、青色の表示をそれぞれ行う3つのドットにより画像を構成する最小単位である1つの画素が構成されている。以下の説明では、赤色の表示を行うドットを赤色画素PR、緑色の表示を行うドットを緑色画素PG、青色の表示を行うドットを青色画素PB、と称する。
【0026】
本実施形態の液晶調光素子1では、バックライト40からピーク波長が350nm以上410nm未満の範囲に存在する近紫外光もしくは紫色光、またはピーク波長が410以上500nm以下の範囲に存在する青色光が射出され、蛍光体基板20にこの光が励起光として入射され、赤色画素PRでは赤色の蛍光、緑色画素PGでは緑色の蛍光、青色画素PBでは青色の蛍光が生じ、これら各色光によってフルカラー表示が行われる。
【0027】
蛍光体基板20は、ガラス等の透明基板を基板本体21として備えている。基板本体21上には、赤色画素PR、緑色画素PGおよび青色画素PBを区画する隔壁22が形成されている。隔壁22に区画された領域には、カラーフィルターと波長変換層とが形成されている。すなわち、赤色画素PRには、基板本体21側から赤色カラーフィルター23Rと赤色蛍光体からなる赤色波長変換層24Rとが順に形成されている。緑色画素PGには、基板本体21側から緑色カラーフィルター23Gと緑色蛍光体からなる緑色波長変換層24Gとが順に形成されている。青色画素PBには、基板本体21側から青色カラーフィルター23Bと青色蛍光体からなる青色波長変換層24Bとが順に形成されている。
【0028】
本発明で用いられる蛍光体としては、無機蛍光体と有機蛍光体の双方が利用可能である。無機蛍光体としては、例えば、酸化物蛍光体、硫化物蛍光体、サイアロン蛍光体などを用いることができる。具体的には、Y3Al5O12:Ce3+,ZnS,SrGa2S4:Euなどが挙げられる。また、有機蛍光体としては、ピオラントロン系、イソピオラントロン系、ペリレン系、チオキサンテン系、クマリン系、アントラキノン系、ベンゾピラン系、ナフタルイミド系またはナフタル酸系、ベンゾピテリジン系、ピラジン系、シアノピラジン系、スチルベン系、ジアミノジフェニル系、イミダゾール系、イミダゾロン系、トリアゾール系、チアゾール系、オキサゾール系、カルボスチリル系、ピラゾリン系、ジヒドロピリジン系、ビススチリル系、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、チオインジゴ系、ペリレン系、ジオキサジン系等が挙げられる。例えば、可視光を吸収し長波長光に変換する蛍光体としては、特開昭62−209172、特開昭62−148571、特開平4−131023、特開平6−40817、特開平6−41524号公報等に記載されている構造の化合物などが、また、紫外線を吸収し長波長光に変換する蛍光体としては、特開平3−198721、特開平3−72818、特開平4−141025、特開平6−46684、特開平6−46685号公報等に記載されている構造の化合物などが挙げられる。より具体的には、BASF社のルモゲン(ペリレン系)、クマリン(クマリン系)、ローダミンB等のローダミン(キサンテン系)、アクリジン(キサンテン系)、ルミノール(アントラキノン系)、スミプラスト(アントラキノン系)等の商品名で知られる蛍光体が挙げられ、蛍光の量子効率の高いペリレン系やクマリン系が好適である。また、発光色で分類すると、青色発光に関しては、クマリン2、クマリン339、クマリン466、クマリン47、クマリン102等のクマリン系、ジスチリルベンゼン等のジスチリルアリーレン系、アクリドン系、9,10−ジフェニルアントラセン等のアントラセン系、ペリレン、ピレン等の縮合芳香族環、ナフタル酸イミド系、キノロン系、オキサゾール系、緑色発光については、キナクリドン系、ジフェニルテトラセン等のナフタセン系、クマリン6、クマリン522、クマリン153等のクマリン系、フルオレセイン系、フラビン系、ピラゾリン系、ナフタル酸イミド系、ピロロメテン系、赤色発光に対しては、ナイルレッド等のフェノキサゾン系、DCM、ローダミンB等のローダミン系、ルモゲンFレッド等のペリレン顔料、シアニン色素、ピロロメテン系等が挙げられる。これら蛍光色素は、単一でも複数混ぜ合わせた構成でも良い。
【0029】
以上の蛍光体は、濃度消光を起こさない場合には、そのままで波長変換層とすることが可能であるが、一般に濃度消光を示すことが多く、10重量%以下、好ましくは、1重量%以下に希釈された状態で使うことが好ましい。従って、このような色素を波長変換層として用いるためには、何らかのバインダが必要とされる。
【0030】
バインダ樹脂材料としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、ポリサルホン等の樹脂を用いることができる。分散は、トリクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、THF、ジクロロメタン、トルエン、キシレン等の適当な溶媒に、透明樹脂及び蛍光色素を、蛍光色素が樹脂に対して0.1〜10重量%となる濃度で溶解させた後、スピンコートやディップコート法により基板上に0.1〜10μmの厚みで塗布する。塗布後、必要に応じ、加熱等の手段により硬化させる。また、透明性のある光硬化性樹脂やクリアレジスト(例えば、新日鉄化学(株)製;V−259PA)等も光透過性媒体として使用でき、適当な溶媒を用いて透明樹脂の場合と同様にして色素を分散させ、スピンコートやディップコート法により塗布する。塗布後、紫外線光等により硬化させる。
【0031】
尚、本発明に用いられる蛍光色素、及び、バインダ材料、及び、それを溶かす溶剤や形成法は上記に限定されるわけではない。
【0032】
赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと隔壁22とを覆って接着層25が形成されている。接着層25は、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと隔壁22との間の段差によって形成される基板本体21上の凹凸を平坦化している。接着層25上には、バックライト40から射出された励起光を透過し、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された赤色蛍光、緑色蛍光および青色蛍光を反射する波長選択透過反射層26が設けられていてもよい。波長選択透過反射層26は、接着層25によって赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと接着されている。
【0033】
接着層25は、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに入射する励起光のうち赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収される光を透過し赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収されない光を吸収する波長カットフィルターとして機能する。例えば、接着層25は、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに入射する励起光のうち赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収される光を透過する透明樹脂と、励起光のうち赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収されない光を吸収する色素と、を含んで構成されている。
【0034】
色素としては、例えば、フルオレセイン(吸収ピーク波長:495nm)、BODIPY FL(吸収ピーク波長:503nm)、ローダミン123(吸収ピーク波長:505nm)、ローダミンB(吸収ピーク波長:555nm)、テトラメチローダミン(吸収ピーク波長:552nm)、R−フィコエリスリ(吸収ピーク波長:565nm)、エチジウムホモダイマー1(吸収ピーク波長:528nm)、プロピジウムローダイド(吸収ピーク波長:538nm)、7−Aminoactinomycin D(7−AAD)(吸収ピーク波長:546nm)、BODIPYTMTMR(吸収ピーク波長:542nm)、AsRed2(吸収ピーク波長:578nm)などを用いることができる。
【0035】
接着層25の厚みは、可能な範囲で薄くすることが好ましい。例えば、隔壁22と波長選択透過反射層26とを接触させ、接着層25の厚みを、隔壁22と赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bとの間の段差の高さと等しくすることが好ましい。こうすることにより、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された光(蛍光)が接着層25によって吸収されることを抑制することができる。
【0036】
すなわち、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された蛍光は、全方位に等方的に拡散し、液晶素子10側に向かう光は波長選択透過反射層26で反射されて蛍光体基板20の外部に射出される。しかし、その過程で蛍光は接着層25の内部を2度通過するため、接着層25の吸収スペクトルと蛍光のスペクトルとが大きく重なっていると、接着層25による蛍光の吸収が多くなり、暗い表示となってしまう。接着層25の厚みを薄くすれば、接着層25による蛍光の吸収も少なくなる。
【0037】
液晶素子10は、第1基板11と、第2基板12と、第1基板11と第2基板12との間に挟持された液晶層15と、第1基板11の液晶層15とは反対側の面に配置された第1偏光層18と、第2基板12の液晶層15とは反対側の面に配置された第2偏光層19と、を備えている。
【0038】
第1基板11と第2基板12は、バックライト40から射出された励起光を透過するガラス等の透明基板を基板本体として備えている。第1基板11には、TFTなどの画素スイッチング素子(図示略)が赤色画素PR、緑色画素PGおよび青色画素PBのそれぞれに対応して形成されており、バックライト40から射出された励起光の偏光状態が赤色画素PR、緑色画素PGおよび青色画素PBにおいて独立に制御可能となっている。液晶素子10は、バックライト40から射出された励起光の偏光状態を赤色画素PR、緑色画素PGおよび青色画素PBにおいて独立に制御することにより、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに入射する励起光の光量を独立に制御可能となっている。
【0039】
バックライト40は、LED(発光ダイオード)またはCCFL(冷陰極管)等からなる光源42と、光源42から射出された光の内部反射を利用して液晶素子10に向けて射出させる導光板41と、を備えている。バックライト40は、光源42が導光板41の端面に配置されたエッジライト型でも良く、光源42が導光板41の直下に配置された直下型でもよい。本実施形態で用いるバックライト40には、光の射出方向を制御して液晶素子10の法線方向(液晶層15の厚み方向)に指向性を持たせたバックライト、いわゆる指向性バックライトを用いることが望ましい。
【0040】
上記構成の液晶調光素子1では、バックライト40から射出された励起光は、液晶素子10に対して概ね垂直に入射し、赤色画素PR、緑色画素PGおよび青色画素PBの各画素毎に偏光状態(すなわち透過光量)が制御される。そして、液晶素子10を透過して蛍光体基板20に概ね垂直に入射した励起光は、接着層25において不要な波長成分が除去された後、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収され、励起光とは異なる波長域の光(蛍光)に変換される。
【0041】
赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された光(蛍光)は、概ね全方位に等方的に拡散されるが、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された光のうち液晶素子10側に向かう光は、波長選択透過反射層26で反射されて基板本体21側に向かう。そのため、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された光(蛍光)は、概ね全て基板本体21側に向けて取り出される。
【0042】
赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された光(蛍光)は、赤色カラーフィルター23R、緑色カラーフィルター23Gおよび青色カラーフィルター23Bを透過して色純度が高められる。そして、色純度が高められた赤色光、緑色光および青色光が蛍光体基板20から外部に射出される。これにより、フルカラー表示が行われる。
【0043】
上記構成の液晶調光素子1では、液晶素子10を透過した励起光は、接着層25において不要な波長成分が除去された後、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収され、励起光とは異なる波長域の光(蛍光)に変換される。そのため、不要な波長成分の光が赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射される光(蛍光)と混合されることにより生じる色味の変化が少なく、色再現性に優れた画像表示が可能となる。
【0044】
以下、本実施形態の効果について、具体的に説明する。
【0045】
図2は、接着層25に含まれる色素の吸収スペクトル(接着層25の吸収スペクトル)の一例を示す図である。図3は、接着層25を透過した後の励起光のスペクトルの一例を、緑色波長変換層24Gから放射される光(蛍光)のスペクトルとともに示す図である。図3では、接着層25に図2に示した吸収スペクトルを示す色素が含まれている場合と含まれていない場合の励起光のスペクトルをそれぞれ示している。
【0046】
図2に示すように、本実施形態の色素は、510nmに吸収スペクトルのピーク波長を有する。本実施形態の色素は、バックライトから射出された励起光のうち緑色の波長領域の光を吸収する。
【0047】
図3に示すように、本実施形態の励起光は、例えば、450nmにピーク波長を有する青色光である。光源としては、例えばLEDが用いられる。LEDには、一般に格子欠陥が含まれており、LEDから射出される光には、格子欠陥により生じる長波長領域の光(緑色光)が微弱であるが含まれている。図2の色素はこの長波長領域の光(緑色光)を吸収して、励起光の色純度を高める機能を有する。
【0048】
すなわち、図1に示した本実施形態の液晶調光素子1では、バックライト40から射出された光のうち赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで波長変換されない光はそのまま赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bを透過して外部に射出される。そのため、励起光のスペクトルと赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bの吸収スペクトルとの重なりが大きくなるように励起光の吸収スペクトルを設計し、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから極力不要な励起光が漏れないようにしている。
【0049】
しかしながら、LEDから射出される励起光のスペクトルは、LEDに内在する格子欠陥の影響によって長波長側に広がっているため、励起光のスペクトルの長波長側の裾野の部分において、微弱ではあるが、波長変換されない光が存在する。図3に示すように、波長変換されない光の割合は波長変換される光の割合に比べて少ないが、波長変換される光は蛍光となって全方位に拡散するため、蛍光体基板の法線方向から見た場合、波長変換されずに外部に射出される光が波長変換されて外部に射出される光に比べて相対的に強く感じられ、色味の変化が生じる。
【0050】
そこで、本実施形態では、このような波長変換されない光を、接着層25の内部に含有された色素によって吸収している。図2に示したように、色素の吸収スペクトルのピーク波長(510nm)は、励起光のピーク波長(450nm)よりも大きく、緑色波長変換層24Gの発光スペクトル(蛍光のスペクトル)のピーク波長(520nm)よりも小さい。色素は、緑色波長変換層24Gの吸収スペクトルのピーク波長よりも長波長の光を吸収する。そのため、励起光と蛍光のスペクトルが重なる波長領域の光を効果的に吸収することができる。励起光と蛍光のスペクトルが重なる部分の波長領域の光は、画像の色味を変化させる原因となるため、このような波長領域の光を色素で吸収すれば、色再現性に優れた画像表示が可能となる。
【0051】
図4は、緑色カラーフィルター23Gの透過スペクトルの一例を示す図である。図5は、緑色カラーフィルター23Gを透過した後の蛍光のスペクトルの一例を示す図である。図5では、接着層25に図2に示した吸収スペクトルを示す色素が含まれている場合と含まれていない場合の透過スペクトルをそれぞれ示している。図6は、接着層の内部に上記の色素を含有させた場合と含有させない場合の色味の変化を示す図である。
【0052】
図4に示すように、本実施形態の緑色カラーフィルター23Gの透過スペクトルは、520nmにピーク波長を有する。図3に示した蛍光のスペクトルのピーク波長は520nmなので、本実施形態の緑色カラーフィルター23Gは、図3に示した蛍光のスペクトルとよく合致した透過スペクトルを有するものとなっている。
【0053】
しかしながら、カラーフィルターの透過スペクトルは一般にブロードであるため、緑色波長変換層24Gによって波長変換されない光を十分に吸収することはできない。例えば、図4の例では、緑色カラーフィルター23Gの透過スペクトルは、半値幅が100nmと広くなっており、励起光と蛍光のスペクトルが重なる480nm~500nmの波長領域の光を効果的に吸収することができない。
【0054】
その結果、図5および図6に示すように、色素で不要な波長領域の励起光を吸収しない場合には、不要な励起光の影響で、本来緑色カラーフィルター23から射出されるべき緑色光のスペクトルのピーク波長(520nm)よりも短波長側(510nm付近)にピーク波長がシフトし、色味の変化が生じる。一方、色素で不要な波長領域の励起光を吸収した場合には、そのような色味の変化が少なくなり、画像表示が可能となっている。
【0055】
以上のように、本実施形態の液晶調光素子1では、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと光源42との間に、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに入射する励起光のうち赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収される光を透過し赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収されない光を吸収する波長カットフィルター(接着層25)が設けられている。そのため、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで波長変換されずに外部に射出された励起光によって、画像の色味が変化することを抑制することができ、色再現性に優れた液晶調光素子1が提供される。また、波長カットフィルターの機能は、接着層25が担っているので、新たに波長カットフィルターの機能を有する光学部材を設置する必要がなく、構成が簡略化される。
【0056】
[第1実施形態の第1変形例]
図2では、色素の吸収スペクトルを510nm付近にピーク波長を有し、半値幅が50nmである形状としたが、色素の吸収スペクトルの形状はこれに限定されない。
【0057】
色素の吸収スペクトルのピーク波長は、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに入射する励起光のピーク波長よりも大きく、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射される蛍光の発光スペクトルのピーク波長よりも小さいことが好ましい。
【0058】
励起光のピーク波長は、通常、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bの吸収スペクトルのピーク波長と概ね一致するため、色素の吸収スペクトルのピーク波長が励起光のピーク波長よりも大きければ、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収されるべき励起光の多くが色素によって吸収されてしまうという事態を抑制することができる。また、色素の吸収スペクトルのピーク波長が蛍光の発光スペクトルのピーク波長よりも小さければ、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された蛍光が波長選択透過反射層26で反射されて蛍光体基板20の外部に射出される際に、接着層25を通過する蛍光の多くが接着層25の内部の色素によって吸収されてしまうという事態を抑制することができる。
【0059】
よって、色素の吸収スペクトルのピーク波長が、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに入射する励起光のピーク波長よりも大きく、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射される蛍光の発光スペクトルのピーク波長よりも小さくなっていれば、これらの不具合を抑制しつつ、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから漏れ出る励起光の光量を低減することができる。
【0060】
色素の吸収スペクトルの半値幅は、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに入射する励起光のスペクトルと赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射される蛍光のスペクトルとが重なる部分の大きさに基づいて決めることができる。励起光と蛍光のスペクトルが重なる部分が大きければ、色素の吸収スペクトルの半値幅を大きくし、励起光と蛍光のスペクトルが重なる部分が小さければ、色素の吸収スペクトルの半値幅を小さくすることが好ましい。こうすることで、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された蛍光が波長選択透過反射層26で反射されて蛍光体基板20の外部に射出される際に、接着層25を通過する蛍光の多くが接着層25の内部の色素によって吸収されてしまうという事態を抑制しつつ、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから漏れ出る励起光の光量を低減することができる。
【0061】
励起光と蛍光のスペクトルが重なる部分の大きさは、例えば、励起光の光源としてLEDを用いた場合には、LEDの格子欠陥によって生じる励起光のスペクトルの長波長側への広がりによって決まる。LEDの格子欠陥による励起光のスペクトルの広がりを考慮した場合、色素の吸収スペクトルの半値幅は、20nmよりも大きいことが好ましい。
【0062】
[第1実施形態の第2変形例]
図2では、色素の吸収スペクトルを、ピーク波長を中心として概ね対称な形状を備えたものとして示したが、色素の吸収スペクトルの形状はこれに限定されない。色素の吸収スペクトルは、短波長側が長波長側に比べて裾の短い形状を備えていてもよく、これにより、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収されるべき励起光の多くが色素によって吸収されてしまうという事態を抑制しつつ、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから漏れ出る励起光の光量を低減することができる。
【0063】
[第1実施形態の第3変形例]
図1では、波長カットフィルターとして機能する接着層25を赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと波長選択透過反射層26との間に配置したが、接着層25の位置はこれに限定されない。例えば、液晶層15と赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bとの間に、1層以上の中間層が配置され、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと中間層との間または2つの中間層の間に接着層25が設けられていればよい。図1では、接着層25を、中間層である波長選択透過反射層26と赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bとを接着する接着層としたが、接着層25は、中間層である波長選択透過反射層26と、中間層である第2偏光層19とを接着する接着層、或いは、中間層である第2偏光層19と、中間層である第2基板19とを接着する接着層などであってもよい。
【0064】
[第1実施形態の第4変形例]
図1では、バックライト40として、LEDからなる光源42と導光板41とを備えたものを例示したが、バックライト40の構成はこれに限定されない。バックライト40としては、OLED(有機エレクトロルミネッセンス素子)からなる面状の光源を用いてもよい。OLEDのスペクトルは一般に長波長側に裾が長く広がっているため、その不要波長領域のカットが必要となる。よって、OLEDを光源として用いた場合でも、LEDを光源として用いた場合と同様に、色味の変化が問題となり、本実施形態の構成が有効となる。
【0065】
[第1実施形態の第5変形例]
図1では、赤色画素PR、緑色画素PGおよび青色画素PBにそれぞれ赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bを設置したが、赤色画素PR、緑色画素PGおよび青色画素PBの構成はこれに限定されない。例えば、青色画素PBにおいては、青色波長変換層24Bの代わりに光散乱層を設置することで、青色の励起光をそのまま散乱して表示光として利用することができる。光散乱層としては、青色の表示光(励起光)を透過する透明樹脂の内部に、当該表示光を散乱可能な散乱粒子を分散させたものを用いることができる。散乱粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレートビーズ(屈折率:1.49)、アクリルビーズ(屈折率:1.50)、架橋ポリスチレンビーズ(屈折率:1.61)、酸化ジルコニアビーズ(屈折率:2.05)、酸化チタンビーズ(屈折率 アナタース型:2.50、ルチル型:2.70)などを用いることができ、バインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(屈折率:1.49)などを用いることができる。
【0066】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態の液晶調光素子2の断面図である。液晶調光素子2において第1実施形態の液晶調光素子1と共通する構成要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0067】
液晶調光素子2において第1実施形態の液晶調光素子1と異なる点は、波長選択透過反射層26が、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと前記波長カットフィルターとして機能する接着層52との間に設けられている点である。蛍光体基板51は、第1実施形態の蛍光体基板20と比較して、接着層25が接着層27に置き換わった点のみが異なり、液晶素子50は、第1実施形態の液晶素子10と比較して、第2偏光層19と第2基板12との間の接着層(図1では図示を省略している)が接着層52に置き換わった点のみが異なり、表示体31は、第1実施形態の表示体30と比較して、蛍光体基板20と液晶素子10とが、蛍光体基板51と液晶素子50とに置き換わった点のみが異なる。
【0068】
本実施形態の場合、図2に示した吸収スペクトルを有する色素は、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと波長選択透過反射層26とを接着する接着層27の内部には含まれておらず、第2偏光層19と第2基板12とを接着する接着層52の内部に含まれている。そのため、接着層52が、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに入射する励起光のうち赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収される光を透過し赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bで吸収されない光を吸収する波長カットフィルターとして機能する。
【0069】
液晶調光素子2では、接着層27が色素を含まない透明樹脂からなるため、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから液晶素子50側に向けて放射された蛍光が波長選択透過反射層26で反射されて蛍光体基板51の外部に射出する際に、色素によって蛍光が吸収されることがない。よって、第1実施形態の液晶調光素子1と比較して、明るい画像表示が可能となる。
【0070】
本実施形態の場合、接着層52の内部に含有された色素によって、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bから放射された蛍光が吸収されないので、色素の吸収スペクトルは、必ずしも図2に示したような形状を備えている必要はない。図2では、色素による蛍光の吸収を少なくするために、色素の吸収スペクトルの長波長側の裾を560nm程度までに留めたが、本実施形態の場合は、そのような制約はないので、色素の吸収スペクトルの長波長側の裾を赤外領域まで広げることが可能である。この場合、接着層52は、所定の波長(例えば、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bを励起することが可能な波長)よりも大きい波長の可視光を概ね全て吸収するショートパスフィルターとして機能し、励起光に含まれる不要波長成分を概ね全て除去することができるため、さらに色再現性に優れた液晶調光素子2が提供される。
【0071】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態の液晶調光素子3の断面図である。液晶調光素子3において第1実施形態の液晶調光素子1と共通する構成要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0072】
液晶調光素子3において第1実施形態の液晶調光素子1と異なる点は、液晶素子における一方の基板(第2基板12)が省略され、第1基板11と第2偏光層19とで液晶層15が挟持されている点である。この構成においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態では、第2基板を省略し、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bと液晶層15との間の距離を短くしている。そのため、視差の影響が少なくなり、表示品質に優れた液晶調光素子2が提供される。
【0073】
[第4実施形態]
図9ないし図11は、液晶調光素子の製造方法の一例を示す模式図である。図9ないし図11では、第2実施形態の液晶調光素子2の製造方法を示している。なお、図9ないし図11では、便宜上、赤色カラーフィルター23R、緑色カラーフィルター23Gおよび青色カラーフィルター23Bの図示は省略している。
【0074】
図9に示すように、接着層27、波長選択透過反射層26、第2偏光層19および接着層52は、搬送ロール53および貼合ロール54を含む複数のロールを用いて搬送され、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bが形成された基板本体21の表面に貼合される。接着層27、波長選択透過反射層26、第2偏光層19および接着層52は、互いに積層されて1枚の長尺状の光学フィルム55として図示略の原反ロールから引き出される。接着層27の表面には図示略の剥離シートが積層されており、この剥離シートを剥離してから貼合が行われる。接着層52は、例えば、熱可塑性の樹脂の内部に前述の色素を含有させたものであり、光学フィルム55の搬送時には粘着性がなく、接着層52の表面には剥離シートなどは積層されていない。
【0075】
赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bの表面に光学フィルム55を貼合したら、光学フィルム55を基板本体21の大きさに合わせて切断する。なお、光学フィルム55を切断するタイミングは、光学フィルム55を赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bの表面に貼合する前でもよい。
【0076】
図10に示すように、赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bの表面に光学フィルム55を貼合したら、接着層52上に、第1基板11、第2基板12および液晶層15を含むパネル体56を積層する。パネル体56は、第1基板11の表面に第1偏光層を貼合したものでもよい。パネル体56を接着層52上に積層する際には、パネル体56と接着層52との間に空気が混入することを抑制するために、パネル体56を接着層52の表面に対して斜めに配置し、パネル体56の一端側から徐々にパネル体56を接着層52に接触させる。
【0077】
図11に示すように、接着層52上にパネル体56を積層したら、接着層52を加熱して接着層52を軟化させる。そして、接着層52が軟化した状態でパネル体56と基板本体51とをアライメントし、接着層52を冷却して、パネル体56と接着層52とを接合する。その後、第1基板11の表面に第1偏光層を貼合することで、表示体を完成させる。そして、この表示体をバックライトと一体化することで、液晶調光素子が完成する。
【0078】
この液晶調光素子の製造方法では、接着層27、波長選択透過反射層26、第2偏光層19および接着層52が積層された光学フィルム55を赤色波長変換層24R、緑色波長変換層24Gおよび青色波長変換層24Bに貼合して所定のサイズに切断することで、蛍光体基板が完成する。そのため、製造工程が非常に容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、液晶調光素子の分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1,2,3…液晶調光素子、15…液晶層、22…隔壁、24R…赤色波長変換層、24G…緑色波長変換層、24B…青色波長変換層、25…接着層、26…波長選択透過反射層、42…光源、52…接着層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から射出された光を変調する液晶層と、
前記液晶層で変調された光を励起光として吸収し、前記光源から射出された光の波長域とは異なる波長域の光を生じる波長変換層と、を備え、
前記液晶層と前記波長変換層との間には、少なくとも1層以上の中間層が配置され、
前記波長変換層と前記中間層との間または2つの前記中間層の間に接着層が設けられ、
前記接着層は、前記波長変換層に入射する励起光のうち前記波長変換層で吸収される光を透過し前記波長変換層で吸収されない光を吸収する波長カットフィルターとして機能する液晶調光素子。
【請求項2】
前記接着層は、前記波長変換層の吸収スペクトルのピーク波長よりも長波長の光を吸収する請求項1に記載の液晶調光素子。
【請求項3】
前記接着層の吸収スペクトルのピーク波長は、前記励起光のスペクトルのピーク波長よりも長波長である請求項2に記載の液晶調光素子。
【請求項4】
前記励起光は、ピーク波長が350nm以上410nm未満の範囲に存在する近紫外光もしくは紫色光、またはピーク波長が410以上500nm以下の範囲に存在する青色光であり、前記接着層は、490nm以上の波長の光を吸収する請求項3に記載の液晶調光素子。
【請求項5】
前記接着層の吸収スペクトルは、ピーク波長を中心とした対称な形状、または、短波長側が長波長側に比べて裾の短い形状を有している請求項4に記載の液晶調光素子。
【請求項6】
前記接着層の吸収スペクトルの半値幅は、20nmよりも大きい請求項5に記載の液晶調光素子。
【請求項7】
前記接着層は、所定の波長よりも大きい波長の可視光を概ね全て吸収するショートパスフィルターとして機能する請求項6に記載の液晶調光素子。
【請求項8】
前記波長変換層と前記液晶層との間には、前記励起光を透過し前記波長変換層から放射された光を反射する波長選択透過反射層が設けられている請求項1ないし7のいずれか1項に記載の液晶調光素子。
【請求項9】
前記波長選択透過反射層は、前記波長変換層と前記接着層との間に設けられている請求項8に記載の液晶調光素子。
【請求項10】
前記波長選択透過反射層は、前記液晶層と前記接着層との間に設けられている請求項8に記載の液晶調光素子。
【請求項11】
前記接着層は、前記波長選択透過反射層と前記波長変換層とを接着する接着層である請求項10に記載の液晶調光素子。
【請求項12】
前記波長変換層は、隔壁によって区画された領域に配置され、
前記接着層は、前記波長変換層と前記隔壁とを覆って配置され、前記波長変換層と前記隔壁との間の段差によって形成される凹凸を平坦化している請求項11に記載の液晶調光素子。
【請求項13】
前記波長変換層は、隔壁によって区画された領域に配置され、
前記接着層は、前記波長変換層を覆って配置され、前記波長変換層と前記隔壁との間の段差によって形成される凹凸を平坦化しており、
前記波長選択透過反射層は、前記隔壁と接している請求項11に記載の液晶調光素子。
【請求項14】
前記光源は、LEDである請求項1ないし13のいずれか1項に記載の液晶調光素子。
【請求項15】
前記光源は、OLEDである請求項1ないし13のいずれか1項に記載の液晶調光素子。
【請求項1】
光源と、
前記光源から射出された光を変調する液晶層と、
前記液晶層で変調された光を励起光として吸収し、前記光源から射出された光の波長域とは異なる波長域の光を生じる波長変換層と、を備え、
前記液晶層と前記波長変換層との間には、少なくとも1層以上の中間層が配置され、
前記波長変換層と前記中間層との間または2つの前記中間層の間に接着層が設けられ、
前記接着層は、前記波長変換層に入射する励起光のうち前記波長変換層で吸収される光を透過し前記波長変換層で吸収されない光を吸収する波長カットフィルターとして機能する液晶調光素子。
【請求項2】
前記接着層は、前記波長変換層の吸収スペクトルのピーク波長よりも長波長の光を吸収する請求項1に記載の液晶調光素子。
【請求項3】
前記接着層の吸収スペクトルのピーク波長は、前記励起光のスペクトルのピーク波長よりも長波長である請求項2に記載の液晶調光素子。
【請求項4】
前記励起光は、ピーク波長が350nm以上410nm未満の範囲に存在する近紫外光もしくは紫色光、またはピーク波長が410以上500nm以下の範囲に存在する青色光であり、前記接着層は、490nm以上の波長の光を吸収する請求項3に記載の液晶調光素子。
【請求項5】
前記接着層の吸収スペクトルは、ピーク波長を中心とした対称な形状、または、短波長側が長波長側に比べて裾の短い形状を有している請求項4に記載の液晶調光素子。
【請求項6】
前記接着層の吸収スペクトルの半値幅は、20nmよりも大きい請求項5に記載の液晶調光素子。
【請求項7】
前記接着層は、所定の波長よりも大きい波長の可視光を概ね全て吸収するショートパスフィルターとして機能する請求項6に記載の液晶調光素子。
【請求項8】
前記波長変換層と前記液晶層との間には、前記励起光を透過し前記波長変換層から放射された光を反射する波長選択透過反射層が設けられている請求項1ないし7のいずれか1項に記載の液晶調光素子。
【請求項9】
前記波長選択透過反射層は、前記波長変換層と前記接着層との間に設けられている請求項8に記載の液晶調光素子。
【請求項10】
前記波長選択透過反射層は、前記液晶層と前記接着層との間に設けられている請求項8に記載の液晶調光素子。
【請求項11】
前記接着層は、前記波長選択透過反射層と前記波長変換層とを接着する接着層である請求項10に記載の液晶調光素子。
【請求項12】
前記波長変換層は、隔壁によって区画された領域に配置され、
前記接着層は、前記波長変換層と前記隔壁とを覆って配置され、前記波長変換層と前記隔壁との間の段差によって形成される凹凸を平坦化している請求項11に記載の液晶調光素子。
【請求項13】
前記波長変換層は、隔壁によって区画された領域に配置され、
前記接着層は、前記波長変換層を覆って配置され、前記波長変換層と前記隔壁との間の段差によって形成される凹凸を平坦化しており、
前記波長選択透過反射層は、前記隔壁と接している請求項11に記載の液晶調光素子。
【請求項14】
前記光源は、LEDである請求項1ないし13のいずれか1項に記載の液晶調光素子。
【請求項15】
前記光源は、OLEDである請求項1ないし13のいずれか1項に記載の液晶調光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−114032(P2013−114032A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260069(P2011−260069)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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