説明

液温報知装置及び温水洗浄装置

【課題】電源を用いることなく液温を報知する動作を行うことができる液温報知装置と、この液温報知装置を備えた温水洗浄装置を提供する。
【解決手段】温水が流通されるケーシング41の第1室41a内に形状記憶材料製の第1のバネ45が配置されており、この温水の温度が該形状記憶材料の変態温度以上となったときに該第1のバネ45が伸長する。第1のバネ45の伸長に伴い、ロッド47がケーシング41から進出して打撃体48を弾き、これにより打撃体48がベル49を打撃し、該ベル49が音を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液温報知装置と、この液温報知装置を備えた温水洗浄装置に関する。この温水洗浄装置は、便器に設置され、人体臀部を洗浄するためのものである。
【背景技術】
【0002】
便器に設けられた温水洗浄装置は、温水源からの温水を洗浄ノズル先端から噴出させて人体臀部を洗浄するよう構成されている。この洗浄ノズルに供給される水の温度が低いときには、この水を便器等に捨て、所定温度の水(湯)を洗浄ノズルに導くようにした捨て水機構を設けることがある。特開2005−320694には、人体が便座に着座すると、捨て水用電磁弁を開とし、サーモスタットミキシングバルブから混合水を便器へ排出することが記載されている。また、この混合水の水温を温度センサで検知し、水温が定常温度にまで上昇してきた場合には捨て水用電磁弁を閉とすること、この捨て水動作中には捨て水動作を表示灯の点滅によって表示すること、捨て水動作終了後はこの点滅を停止することがそれぞれ記載されている。
【0003】
なお、同号公報には、捨て水用電磁弁の上流側に形状記憶合金製バネによって流路を絞る開度可変管路を設け、混合水の温度が上昇してきたときには捨て水流量を減少させることが記載されているが、この形状記憶合金バネは捨て水の動作切替を行うものではない。
【特許文献1】特開2005−320694
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特開2005−320694では、サーモスタットミキシングバルブからの混合水の温度を温度センサで検出し、この検出温度に応じて捨て水電磁弁を開閉させるようにしている。
【0005】
かかる構成の温水洗浄装置は、電気制御方式であるため、電源が必須である。
【0006】
なお、管の外面に感温テープを貼り、該管内を流れる水の温度を感温テープの色変化によって表示することがあるが、管内の水の温度が管を介して感温テープに伝わるまで時間がかかると共に、感温テープは動作の俊敏性に劣る。
【0007】
本発明は、電源を用いることなく液温を報知する動作を行うことができる液温報知装置と、この液温報知装置を備えた温水洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の液温報知装置は、液の流入口及び流出口を有したケーシングと、該ケーシング内を第1室と第2室とに分画するように配置された分画体と、該第1室内に配置された形状記憶材料製の第1のバネと、該第2室内に配置された、非感温性の第2のバネと、基端側が該分画体に連なり、先端側が前記ケーシング外に延出しているロッドと、該ロッドの進退に伴って移動する打撃体と、該打撃体の打撃によって音を発する被打体とを備えてなり、前記ケーシングの前記流入口及び流出口は、前記第1室内に液を流通させるように配置されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の温水洗浄装置は、温水源と、該温水源からの水を洗浄ノズルに導く主流路と、該温水源又は主流路から分岐した捨て水流路と、該温水源からの水の温度に応じて捨て水動作する捨て水弁装置とを備えた温水洗浄装置において、該捨て水流路の水が請求項1に記載の液温報知装置のケーシングに流通されるように該液温報知装置が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液温報知装置にあっては、液が流通されるケーシングの第1室内に形状記憶材料製の第1のバネが配置されており、この液の温度が該形状記憶材料の変態温度以上となったときに該第1のバネが伸長するか、又は第2のバネの付勢力により縮短する。この第1のバネの伸縮により、ロッドがケーシングから進退し、このロッドの進退に伴って打撃体が移動して被打体を打撃し、これにより該被打体が音を発する。かかる本発明の液温報知装置によれば、電源を用いることなく、音で液温を報知することができる。
【0011】
また、この液温報知装置にあっては、形状記憶材料製の第1のバネが、ケーシングの第1室内を流通する液と直に接するので、この液の温度が該形状記憶材料の変態温度以上となったときに該第1のバネが素早く伸縮する。これにより、液温報知装置は俊敏に液温を報知することができる。
【0012】
かかる液温報知装置を備えた本発明の温水洗浄装置によると、電源を用いることなく、捨て水時に音で温水温度を報知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係る液温報知装置としての水温報知装置を備えた温水洗浄装置の系統図、第2図はダイヤフラム弁の断面図、第3図及び第4図は捨て水弁装置の断面図、第5図〜第8図は水温報知装置の断面図、第9図はこの水温報知装置の被打体打撃機構の斜視図、第10図は第9図のX−X線に沿う断面図である。
【0014】
この実施の形態では、温水洗浄装置は、ホテルなど、温水配管が壁などに引き回されたトイレルームに設置されている。温水がこの温水配管から供給されるため、温水洗浄装置にはヒータ付き温水タンクは設けられていない。ただし、本発明は、ヒータ付き温水タンクを有する温水洗浄装置にも適用可能である。
【0015】
トイレルームの壁などに設けられた給湯止水栓及び給水止水栓にそれぞれ給湯配管1と給水配管2が連結されており、給湯配管1から温水が逆止弁3を介してサーモスタットミキシングバルブ4に導入可能とされ、給水配管2から常温の水が該サーモスタットミキシングバルブ4に導入可能とされている。
【0016】
サーモスタットミキシングバルブ4で湯と水とが混合された混合水は、配管5、減圧弁付き高温遮断弁6、配管7、洗浄強さ調節用のつまみ8aを有した流量調節弁8、配管9を介して洗浄ノズル10へ導入可能とされている。この洗浄ノズル10は、導入された温水をノズル10aの先端から人体臀部に向けて斜め上方へ噴出させるよう構成されている。
【0017】
配管7からは捨て水用の配管11が分岐している。この配管11はダイヤフラム弁20の流入口21に接続されている。ダイヤフラム弁20の流出口22には、捨て水用配管12が接続され、冷水を便鉢へ排出するように引き回されている。ダイヤフラム弁20の背圧室出口23には、背圧室24からの水を前記配管12に導くように、配管13、捨て水弁装置30、配管14、水温報知装置40及び配管15がこの順に接続されている。
【0018】
第2図に示す通り、ダイヤフラム弁20内には、流入口21と流出口22とを隔てるように円筒形の弁座25が立設されると共に、この弁座25に上方から着座するようにダイヤフラム弁体26が設置されている。ダイヤフラム弁体26によってダイヤフラム弁20内が主流路27と背圧室24とに区画されている。弁体26には、主流路27と背圧室24とを連通する小孔26aが設けられている。背圧室24内には、弁体26を弁座25へ着座する方向に付勢する背圧バネ28が配置されている。
【0019】
第3,4図に示す通り、捨て水弁装置30は、略円筒状であり、筒軸心方向を上下方向とした弁箱31と、該弁箱31内に上下方向移動可能に配置された弁体34と、該弁体34の下側に配置された、形状記憶材料製のバネ35等を有している。
【0020】
この弁箱31内は、下部が上部よりも内径が大きい大径部31aとされ、上部が下部よりも内径が小さい小径部31bとされている。この大径部31aに流入口32が設けられ、小径部31bに流出口33が設けられている。該流入口32にダイヤフラム弁20からの配管13が接続されている。また、流出口33に、水温報知装置40への配管14が接続されている。
【0021】
弁体34は、外径が該小径部31bの内径と略同等となっている。第4図のように、この弁体34が大径部31a内に位置しているときには、該弁体34の外周面と大径部31aの内周面との間の隙間を通って流入口32から流出口33へ水が流通可能であり、捨て水弁装置30が開弁状態となる。また、第3図のように、この弁体34が小径部31b内に係合すると、該流入口32から流出口33への水の流通が遮断され、捨て水弁装置30が閉弁状態となる。符号34aは、この弁体34の外周面と小径部31bの内周面との間をシールするパッキンを示している。
【0022】
この弁体34の下面と弁箱31の底面31cとの間に前記バネ35が配置されている。このバネ35は弁箱31内に露呈しており、前記流入口32から弁箱31内に流入した水がこのバネ35に直に接する。
【0023】
このバネ35は、該バネ35と接する水の温度が前記形状記憶材料の変態温度よりも低い場合には縮短(上下方向に縮んで短くなること)状態となり、この水の温度が該形状記憶材料の変態温度よりも高い場合には伸長(上下方向に伸びて長くなること)状態となる。弁体34は、このバネ35が縮短状態にあるときには該バネ35によって引き下げられて大径部31a内に位置し、このバネ35が伸長状態にあるときには該バネ35によって押し上げられて小径部31b内に係合する。
【0024】
このバネ35の形状記憶材料としては、変態温度が33〜37℃程度の形状記憶合金が好適である。
【0025】
弁体34の上側には軸体36が設けられている。この軸体36は、軸心方向を上下方向として配置され、下端が該弁体34に連なり、上端が弁箱31の上面開口31dから上方即ち弁箱31外へ突出している。符号36aは、この軸体36の外周面と弁箱31の上面開口31dの内周面との間をシールしたパッキンを示している。この軸体36は、弁体34と一体的に上下動する。この軸体36の軸心方向の長さは、弁体34が下降限まで下降しても、その上端側が弁箱31から上方に突出しうる寸法となっている。
【0026】
該軸体36の上端には、捨て水操作時に操作者によって押される押釦37が連なっている。
【0027】
この捨て水弁装置30は、便器上に設置された便座ボックスの操作パネル(図示略)等に設置されている。
【0028】
第5〜8図のように、水温報知装置40は、内部を捨て水弁装置30からの水が流通するケーシング41と、該ケーシング41内を第1室41aと第2室41bとに分画するように配置された分画体44と、該第1室41a内に配置された形状記憶合金製の第1のバネ45と、該第2室41b内に配置された非感温性の第2のバネ46と、基端側が該分画体44に連なり、先端側がケーシング41外に延出しているロッド47と、該ロッド47の進退に伴って移動する打撃体48と、該打撃体48の打撃によって音を発する被打体としてのベル49等を備えている。
【0029】
この実施の形態では、該水温報知装置40は、前記便座ボックス内に設置されている。
【0030】
ケーシング41は、この実施の形態では、略円筒状であり、筒軸心方向を上下方向として該便座ボックス内に配置されている。このケーシング41の上端側に、水の流入口42と流出口43とが設けられている。第5〜8図の通り、これらの流入口42と流出口43とは、ケーシング41の直径方向に対峙する位置関係にて配置されている。この流入口42に、前記捨て水弁装置30からの配管14が接続され、流出口43に、前記捨て配水管12に合流する配管15が接続されている。
【0031】
分画体44は、この実施の形態では、該ケーシング41の内径よりも小径の略円盤形状のものであり、該ケーシング41内に上下方向移動可能に配置されている。この実施の形態では、ケーシング41内のうち、この分画体44よりも上側が前記第1室41aとなっており、分画体44よりも下側が前記第2室41bとなっている。前記流入口42及び流出口43は、この第1室41a内に臨んでいる。即ち、前記捨て水弁装置30からの捨て水は、この第1室41a内を流通する。分画体44には、これらの第1室41aと第2室41bとを連通する小孔44aが設けられている。
【0032】
この第1室41a内において、前記第1のバネ45は、両端をそれぞれ該分画体44の上面とケーシング41の天井面41cとに当接させて配置されている。この第1のバネ45は第1室41a内に露呈しており、流入口42から該第1室41a内に流入した水は、この第1のバネ45に直に接する。
【0033】
この第1のバネ45は、該第1のバネ45と接する水の温度が前記形状記憶材料の変態温度よりも低い場合には縮短(上下方向に縮んで短くなること)状態となり、この水の温度が該形状記憶材料の変態温度よりも高い場合には伸長(上下方向に伸びて長くなること)状態となる。分画体44は、この第1のバネ45が縮短状態にあるときには、該第1のバネ45によって引き上げられてケーシング41内の上端側に位置し、この第1のバネ45が伸長状態にあるときには、該第1のバネ45によって押し下げられてケーシング41内の下端側に位置する。
【0034】
第5,8図は、この第1のバネ45が縮短状態にあるときを示し、第6,7図は、この第1のバネ45が伸長状態にあるときを示している。
【0035】
なお、第5図の通り、この第1のバネ45が縮短して分画体44が上昇限まで上昇した状態にあっても、該分画体44は、前記流入口42及び流出口43よりも下位に位置している。
【0036】
この第1のバネ45の形状記憶材料としては、捨て水弁装置30の前記バネ35の形状記憶材料と同一か又は若干(例えば0〜3℃、特に1〜2℃程度)低い変態温度の形状記憶合金が好ましい。
【0037】
前記第2のバネ46は、ごく一般的な非感温性の弾性材料製のバネである。この第2のバネ46は、第2室41b内において、両端をそれぞれ分画体44の下面とケーシング41の底面41dとに当接させて蓄力状態にて配置されている。
【0038】
この第2のバネ46の付勢力(バネ定数k)は、第1のバネ45と接する水の温度が前記形状記憶材料の変態温度よりも低い場合には、該第1のバネ45を押し縮めて分画体44を上昇させることが可能であり、且つ、この水の温度が該形状記憶材料の変態温度よりも高くなって第1のバネ45が伸長する場合には、この第1のバネ45の伸長力により該第2のバネ46が押し縮められて分画体44が下降することを許容する程度の強さとなっている。
【0039】
この実施の形態では、前記ロッド47は分画体44の下側に設けられている。このロッド47は、軸心方向を上下方向として配置され、上端が該分画体44に連なり、下端がケーシング41の底面開口41eから下方即ちケーシング41外へ突出している。前記第2のバネ46は、このロッド47及び底面開口41eを取り巻くように配置されている。符号47aは、このロッド47の外周面と該底面開口41eの内周面との間をシールしたパッキンを示している。このロッド47は、分画体44と一体的に上下動する。このロッド47の軸心方向の長さは、分画体44が上昇限まで上昇しても、その下端側がケーシング41から下方へ突出する寸法となっている。
【0040】
ロッド47の下端側には、後述の回動アーム55に上方から当接して該回動アーム55を押し下げるための押下部47bが設けられている。この実施の形態では、該押下部47bは、第9図に示すように、ロッド47の下端側をL字形に折曲することにより形成されている。
【0041】
被打体としての前記ベル49は、便座ボックス内に設けられた水温報知装置設置用のベースB上に設置されている。また、該ベースBのベル49近傍から、柱状の打撃体支持部Bが立設されている。
【0042】
前記打撃体48は、この実施の形態では、該打撃体支持部Bに対し支軸51により上下方向回動可能に支持された回動ベース50と、該回動ベース50からベル49側に突設された打ち下ろしアーム52と、コイルスプリング54を介して該打ち下ろしアーム52の先端側に連結されたベル49打撃用のハンマー53と、基端側が該回動ベース50に対し支軸56により上下方向回動可能に連結されており、先端側がベル49から離反方向に延在した回動アーム55と、回動ベース50をハンマー53打ち下ろし方向(第7図の矢印R方向)に回動させるように該回動ベース50を付勢した付勢バネ57等を有している。
【0043】
該支軸51は、打撃体支持部Bから略水平に、且つ該打撃体支持部Bとベル49との接離方向(即ちベル49の径方向)と交叉方向に延在するように突設されている。
【0044】
この実施の形態では、回動ベース50は、略半円形に延在した円弧状の辺50aと、この辺50aの両端同士を繋ぐ弦状の辺50bとを有した略半円盤形状のものとなっている。この回動ベース50の中心孔50c(第10図)に、支軸51が該回動ベース50の板面と略垂直に、且つ回動可能に挿通されている。この実施の形態では、該中心孔50cは貫通孔であり、支軸51の先端面は、回動ベース50の打撃体支持部Bと反対側の板面に臨んでいる。
【0045】
付勢バネ57は、第9,10図の通り、支軸51を取り巻くように配置されており、回動ベース50を前記矢印R方向に付勢する蓄力状態にて、一端が打撃体支持部Bに係止され、他端が該回動ベース50に係止されている。
【0046】
打撃体支持部Bからは、回動ベース50の該矢印R方向への回動を停止させるためのストッパ58が突設されている。この実施の形態では、該ストッパ58は、第5図のように、回動ベース50の弦状の辺50bが略水平に延在した姿勢となるまで該回動ベース50が矢印R方向へ回動したときに、この弦状の辺50bに上方から当接して該回動ベース50の回動を停止させるよう構成されている。
【0047】
この回動ベース50のベル49側の側面から該ベル49側へ棒状の前記打ち下ろしアーム52が突設されている。この打ち下ろしアーム52は、該回動ベース50の弦状の辺50bと略平行に延在している。この打ち下ろしアーム52の先端に前記コイルスプリング54の一端が接続され、該コイルスプリング54の他端に前記ハンマー53が接続されている。
【0048】
第5図の通り、回動ベース50がストッパ58に当接して静止しており、且つハンマー53に慣性力が作用していない静止状態にあっては、該打ち下ろしアーム52とコイルスプリング54とは略水平に且つ略一直線状に延在している。また、この静止状態にあっては、ハンマー53は、該打ち下ろしアーム52及びコイルスプリング54によってベル49から上方へ若干離隔した位置に支持されている。
【0049】
支軸51の先端面からは、該支軸51と略同軸状に、該支軸51よりも小径の前記支軸56が突設されている。前記回動アーム55は、回動ベース50の打撃体支持部Bと反対側の板面に沿って、該回動ベース50の径方向に延在するように配置され、その基端側が該支軸56によって上下方向回動可能に支持されている。この回動アーム55の先端側は、回動ベース50の外周よりも側外方にまで延在している。
【0050】
回動ベース50の打撃体支持部Bと反対側の板面には、該回動ベース50の円弧状の辺50aに沿って延在した凸条50dが形成されている。第9図に示すように、この凸条50dのベル49に近い方の端部は回動ベース50の弦状の辺50bに臨んでおり、ベル49から遠い方の端部は、該弦状の辺50bから離隔している。
【0051】
第5図に示すように、回動アーム55は、回動ベース50の弦状の辺50bと略平行に延在した姿勢となったときに、その長手方向の途中部が該凸条50dのベル49から遠い方の端部に上方から当接するようになっている。即ち、この凸条50dは、回動アーム55を回動ベース50の弦状の辺50bと略平行に延在した姿勢に支持するストッパである。
【0052】
前記シリンダ41は、第5図の通り、第1のバネ45が縮短状態となっているときに、ロッド47の下端側の押下部47bがこの回動アーム55の先端側に上方から対峙しうるように、前記便座ボックス内に固定設置されている。
【0053】
このように構成された温水洗浄装置の使用方法及び作動について説明する。
【0054】
便器使用者の臀部を洗浄ノズル10で洗浄する場合、洗浄ノズル10による洗浄スイッチ(図示略)を操作する前に、捨て水弁装置30の押釦37を押して弁体34を押し下げ、該捨て水弁装置30を開弁させる。
【0055】
このとき、第4図に示す通り、該捨て水弁装置30の弁箱31内の水の温度が前記バネ35の形状記憶材料の変態温度よりも低い状態では、押釦37を押し下げた後、この押釦37への押圧力を解除しても、弁体34の下側の該バネ35は縮短したままとなっており、捨て水弁装置30の開弁状態が継続する。
【0056】
この捨て水弁装置30が開弁することにより、配管13を介してダイヤフラム弁20の背圧室24から水が流出するため、該背圧室24内の水圧が主流路27内の水圧よりも低くなり、この水圧差によりダイヤフラム弁体26が弁座25から離反し、該主流路27内から流出口22及び配管12を通って水が便鉢へ排出される。また、このとき、該主流路27内の水の一部は、小孔26aを通って背圧室24に流入し、この背圧室24から配管13、捨て水弁装置30、配管14、水温報知装置40、配管15を経て配管12へ流出する。
【0057】
この捨て水に伴い、サーモスタットミキシングバルブ4で生成された温水が配管5へ供給される。
【0058】
この温水は、配管5、減圧弁付き高温遮断弁6、配管7,11、ダイヤフラム弁20、配管12の順に流れる。また、この温水の一部は、ダイヤフラム弁体26の小孔26aを通って背圧室24、配管13、捨て水弁装置30、水温報知装置40、配管15、配管12の順に流れる。この温水により、捨て水弁装置30の弁箱31内及び水温報知装置40のケーシング41内の水温が上昇する。
【0059】
そして、この捨て水弁装置30の弁箱31内のバネ35に接する水の温度が該バネ35の形状記憶材料の変態温度以上になると、該バネ35が伸長する。また、水温報知装置40のケーシング41内の第1のバネ45に接する水の温度が該第1のバネ45の形状記憶材料の変態温度以上になると、この第1のバネ45も伸長する。
【0060】
なお、この実施の形態では、水温報知装置40の第1のバネ45は、捨て水弁装置30のバネ35の形状記憶材料と同一か又は若干低い変態温度の形状記憶合材料製となっているので、水温報知装置40の第1のバネ45は、捨て水弁装置30のバネ35と略同時に、又はそれよりも若干早く伸長するようになる。
【0061】
この第1のバネ45の伸長により、第6図のように、水温報知装置40のケーシング41内において、分画体44が下方へ押し下げられる。これに伴い、ロッド47がケーシング41から下方へ進出し、該ロッド47の下端側の押下部47bが打撃体48の回動アーム55を下方へ押し下げる。これにより、回動ベース50が矢印Rと反対方向へ回動してハンマー53が上方へ持ち上げられる。そして、回動ベース50が矢印Rと反対方向に所定角度まで回動すると、押下部47bが回動アーム55から外れ、該回動ベース50が付勢バネ57の付勢力により矢印R方向へ回動する。これにより、ハンマー53がベル49に打ち下ろされる。
【0062】
なお、第7図のように、回動ベース50は、打ち下ろしアーム52が略水平に延在した姿勢となったときにストッパ58に当接して回動を停止するが、ハンマー53の慣性力により、コイルスプリング54が撓り、該ハンマー53がベル49に当る。
【0063】
このハンマー53の打撃によりベル49が鳴り、その音により、捨て水が終了したことが便器使用者に知得される。
【0064】
また、捨て水弁装置30内では、バネ35の伸長により、弁体34が上昇して弁箱31の小径部31b内に係合し、該捨て水弁装置30が閉弁状態となる。この結果、ダイヤフラム弁20の背圧室27から捨て水弁装置30への水の流出が停止するため、小孔26aを通って主流路27から背圧室24に流入する水によりダイヤフラム弁体26が徐々に下降し、遂にはダイヤフラム弁体26が弁座25に着座してダイヤフラム弁20も閉弁される。これにより、捨て水が停止する。
【0065】
なお、小孔26a、背圧室24及び配管13を介して弁箱31内に伝達される温水の水圧によって弁体34の上昇状態が保たれる。この状態は、次に押釦37を押すまで継続する。
【0066】
ベル49が鳴った後、洗浄ノズル10による洗浄スイッチを操作する。このとき、捨て水は終了しているので、洗浄開始直後から温水が便器使用者の臀部に噴出される。
【0067】
捨て水すべく押釦37を押してから時間が経過し、水温報知装置40のケーシング41内の温水の温度が低下すると、該ケーシング41内の第1のバネ45に接する水の温度が該バネ45の形状記憶材料の変態温度以下になる。そうすると、第2のバネ46の付勢力により分画体44が該第1のバネ45を押し縮めて上昇する。これに伴い、ロッド47も上昇する。
【0068】
このとき、該ロッド47の下端側の押下部47bが回動アーム55に下方から接触するが、第8図のように、該回動アーム55は、この押下部47bに押されて上方へ回動し、遂にはこの押下部47bから外れる。その後、ロッド47は、第5図に示す回動アーム55押し下げ動作前の位置まで上昇する。また、回動アーム55は、押下部47bから外れた後、自重により下方へ回動して凸条50d上に着地し、元の姿勢に戻る。これにより、水温報知装置40が第5図の水温報知前の状態に復帰する。
【0069】
以上の通り、この水温報知装置40を備えた温水洗浄装置にあっては、温水源からの温水が流通されるケーシング41内に、この温水と接するように形状記憶材料製の第1のバネ45が配置されており、この温水の温度が該形状記憶材料の変態温度以上となったときに該第1のバネ45が伸長することに伴い、ロッド47がケーシング41から進出して打撃体48を弾き、これにより打撃体48がベル49を打撃し、該ベル49が音を発するので、電源を用いることなく、音で温水温度を報知することができる。
【0070】
また、この水温報知装置40にあっては、形状記憶材料製の第1のバネ45が、ケーシング41内を流通する温水と直に接するので、この温水の温度が該形状記憶材料の変態温度以上となったときに該第1のバネ45が素早く伸長する。これにより、水温報知装置40は俊敏に温水温度を報知することができる。
【0071】
上記の実施の形態は、本発明の一例を示すものであり、本発明は上記の実施の形態に限定されない。
【0072】
例えば、上記の実施の形態では被打体としてベルを用いているが、本発明においては、この被打体は、打撃されることにより音を発するものであればよく、この被打体として、鐘や鉦、太鼓、鼓、音叉、鈴など、ベル以外のものを用いてもよい。また、打撃体は、図示の構成に限定されない。
【0073】
上記の実施の形態では、形状記憶材料製の第1のバネ45は、温水の温度が該形状記憶材料の変態温度以上となったときに伸長するものであり、この第1のバネ45の伸長に伴ってロッド47がケーシング41から下方へ進出し、これにより打撃体48が下方へ押されて弾かれるように構成されているが、この第1のバネ45として、温水の温度が該形状記憶材料の変態温度以上となったときに縮短するものを用い、この第1のバネ45の縮短に伴ってロッド47がケーシング41内に退動することにより、打撃体48が上方へ引き上げられて弾かれるように構成してもよい。
【0074】
本発明にあっては、水温報知装置40は、図示の姿勢から横倒しにした姿勢や、上下逆にした姿勢などで設置されてもよい。また、この水温報知装置40は、便座ボックス内以外の場所に設置されてもよい。
【0075】
上記の実施の形態では、水温報知装置40は、捨て水弁装置30の下流側に配置されているが、水温報知装置40の配置はこれに限定されない。例えば、水温報知装置40は、ダイヤフラム弁20と捨て水弁装置30との間の配管13の途中に配置されてもよく、ダイヤフラム弁20からの捨て水配管12の途中に配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施の形態に係る温水洗浄装置の系統図である。
【図2】ダイヤフラム弁の断面図である。
【図3】捨て水弁装置の断面図である。
【図4】捨て水弁装置の断面図である。
【図5】水温報知装置の断面図である。
【図6】水温報知装置の断面図である。
【図7】水温報知装置の断面図である。
【図8】水温報知装置の断面図である。
【図9】打撃体の斜視図である。
【図10】図9のX−X線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0077】
4 サーモスタットミキシングバルブ
6 減圧弁付き高温遮断弁
8 流量調節弁
10 洗浄ノズル
20 ダイヤフラム弁
30 捨て水弁装置
31 弁箱
32 流入口
33 流出口
34 弁体
35 形状記憶材料製バネ
36 軸体
37 押釦
40 水温報知装置
41 ケーシング
42 流入口
43 流出口
44 分画体
45 形状記憶材料製の第1のバネ
46 非感温性の第2のバネ
47 ロッド
47b 押下部
48 打撃体
49 被打体としてのベル
50 回動ベース
51 支軸
52 打ち下ろしアーム
53 ハンマー
54 コイルスプリング
55 回動アーム
56 支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液の流入口及び流出口を有したケーシングと、
該ケーシング内を第1室と第2室とに分画するように配置された分画体と、
該第1室内に配置された形状記憶材料製の第1のバネと、
該第2室内に配置された、非感温性の第2のバネと、
基端側が該分画体に連なり、先端側が前記ケーシング外に延出しているロッドと、
該ロッドの進退に伴って移動する打撃体と、
該打撃体の打撃によって音を発する被打体と
を備えてなり、
前記ケーシングの前記流入口及び流出口は、前記第1室内に液を流通させるように配置されている
液温報知装置。
【請求項2】
温水源と、該温水源からの水を洗浄ノズルに導く主流路と、該温水源又は主流路から分岐した捨て水流路と、該温水源からの水の温度に応じて捨て水動作する捨て水弁装置とを備えた温水洗浄装置において、
該捨て水流路の水が請求項1に記載の液温報知装置のケーシングに流通されるように該液温報知装置が設けられていることを特徴とする温水洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−84983(P2009−84983A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259974(P2007−259974)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】