説明

液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドの製造方法

【課題】配合するシリカ粉末の保存状態に影響されず、製造ロット間の粘度変動幅が小さい液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドの製造方法を提供する。
【解決手段】(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物、及び
(B)疎水性シリカ粉末
を構成成分とする液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドの製造方法であって、
(1)常圧下、50〜100℃の範囲内の温度で(A)成分を加熱する工程、
(2)工程(1)で加熱した(A)成分100質量部に対して(B)成分20〜60質量部を混練しながら添加して混練物を得る工程、
(3)工程(2)で得られた混練物を、100℃を越える温度で、加熱・減圧条件下、若しくは加熱・加圧条件下で混練する工程、
を有する液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドの製造方法に関する。特には、製造ロット間の粘度変動幅が小さい液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドが得られる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アルケニル基とヒドロシリル基との付加反応を利用した硬化性含フッ素エラストマー組成物は公知であり、更に第3成分として、ヒドロシリル基とエポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基とを有するオルガノポリシロキサンを添加することにより自己接着性を付与した組成物が提案されている(特許文献1参照)。また、当該組成物に更にカルボン酸無水物を添加してポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂に対する接着性を向上させた組成物も提案されている(特許文献2参照)。当該組成物は、短時間の加熱により硬化させることができ、得られる硬化物は、耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性、低温特性、低透湿性、電気特性に優れているので、これらの特性が要求される各種工業分野の接着用途に使用される。特に、自動車工業において電装部品のシール、コーティング及びポッティング用途に多用されている。
【0003】
上記組成物には、用途に対応した流動性と硬化後の機械的強度が要求されるため、シリカ粉末が配合されることが多い。その配合量は、要求性能に応じて適宜調整される。該シリカ粉末は、組成物中での均一分散性を確保するため、通常、主成分オイルとシリカ粉末を予め混練した液状ベースコンパウンドの形で配合される。
【0004】
従来、液状ベースコンパウンドの製造方法として、分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物100質量部に対して、BET比表面積が50〜400m/gの疎水性シリカ粉末を25〜60質量部の範囲で分割添加し、加熱・減圧条件下、若しくは加熱・加圧条件下で混練りを行った後、更に、所定の配合比となるように上記直鎖状フルオロポリエーテル化合物で後希釈する方法が提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、当該ベースコンパウンドの製造方法においては、製造時に配合するシリカ粉末の吸着水分量が使用前の保存環境(温度・相対湿度)によって変化し、その吸着水分量の多寡によって得られる液状ベースコンパウンドの粘度が製造ロット毎に大きく変動する。この影響を受けて該液状ベースコンパウンドを原料成分とするフルオロポリエーテル系組成物の粘度も製造ロット毎に大きく変動してしまうという問題点があった。
【0005】
この問題点を解消する方法として、上記直鎖状フルオロポリエーテル化合物に疎水化処理シリカ粉末と水を添加して無加熱で混練し、次いで加熱・減圧条件下、若しくは加熱・加圧条件下で混練りを行う方法、及び該製造方法で得られた液状ベースコンパウンドを所定の配合比となるように上記直鎖状フルオロポリエーテル化合物で後希釈する方法が提案されている(特許文献4参照)。当該製造方法では、得られる液状ベースコンパウンドの粘度は製造ロット間で安定するが、加熱処理後にも添加した水の一部がシリカ粉末に吸着されたまま残留し、該液状ベースコンパウンドを配合した上記接着剤組成物が加熱硬化時に発泡する場合が多いという欠点があったため、仕上り時に不要な成分である水を添加せずに製造ロット間で粘度が安定化する液状ベースコンパウンドの製造方法の出現が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3239717号公報
【特許文献2】特許第3567973号公報
【特許文献3】特開2004−331903号公報
【特許文献4】特開2008−69298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、配合するシリカ粉末の保存状態に影響されず、製造ロット間の粘度変動幅が小さい液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物、及び
(B)疎水性シリカ粉末
を構成成分とする液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドの製造方法であって、
(1)常圧下、50〜100℃の範囲内の温度で(A)成分を加熱する工程、
(2)工程(1)で加熱した(A)成分100質量部に対して(B)成分20〜60質量部を混練しながら添加して混練物を得る工程、
(3)工程(2)で得られた混練物を、100℃以上の温度で、加熱・減圧条件下、若しくは加熱・加圧条件下で混練する工程、
を有する液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドの製造方法を開発するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、シリカ粉末の製造ロットや保存状態が異なっても、製造ロット間の粘度変動が抑制された液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドを得ることができる。更には、当該ベースコンパウンドを原料成分として配合した液状フッ素エラストマー組成物の粘度も安定化する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
〔(A)成分〕
本発明の(A)成分は、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物であり、23℃における粘度が、5〜100,000mPa・s、より好ましくは200〜20,000mPa・s、更に好ましくは1,000〜15,000mPa・sの範囲内にあることが、本発明の製造方法で得られるベースコンパウンドを配合した組成物をシール、コーティング及びポッティング、含浸又は密着等に使用する際に、硬化においても適当な物理的特性を有しているので望ましい。当該粘度範囲内で、用途に応じて最も適切な粘度を選択することができる。
【0011】
この直鎖状フルオロポリエーテル化合物におけるアルケニル基としては、炭素原子数2〜8のものが好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が挙げられ、中でも自由端側にCH=CH−構造を有するアルケニル基、特にビニル基、アリル基等が好ましい。このアルケニル基は、直鎖状フルオロポリエーテル化合物の主鎖の両端部に直接結合していてもよいし、二価の連結基、例えば、−CH−、−CHO−又は−Y−NR−CO−[但し、Yは−CH−又は式:
【0012】
【化1】


で表される二価の基であり、Rは水素原子、又は置換若しくは非置換の一価炭化水素基とである。]等を介して結合していてもよい。
ここで、Rで表される置換若しくは非置換の一価炭化水素基としては、炭素原子数1〜12、特に1〜10のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、及びそれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素等のハロゲン原子で置換した一価炭化水素基等が挙げられる。これらの中ではメチル基、フェニル基又はアリル基が好ましい。
【0013】
なお、(A)成分は、主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有するものであるが、パーフルオロポリエーテル構造については、下記に説明する。
【0014】
(A)成分としては、下記一般式(1)で表される分岐を有するポリフルオロジアルケニル化合物を挙げることができる。
【0015】
CH=CH−(X)−Rf−(X’)−CH=CH (1)

[式中、Xは、−CH−、−CHO−、−CHOCH−又は−Y−NR−CO−(ここで、Yは−CH−又は下記式(Z):
【0016】
【化2】


で表される二価の基、Rは水素原子、置換若しくは非置換の一価炭化水素基である)、X’は−CH−、−OCH−、−CHOCH−又は−CO−NR−Y’−(ここで、Y’は−CH−又は下記式(Z’):
【0017】
【化3】


で表される二価の基であり、Rは上記の通りである)で表される二価の基であり、Rfは二価のパーフルオロポリエーテル基であり、aは独立に0又は1である。]
ここで、Rの置換若しくは非置換の一価炭化水素基としては、上述で例示したものと同様のものが例示でき、それらの中でもメチル基、フェニル基又はアリル基が好ましい。
【0018】
また、上記一般式(1)のRfは二価のパーフルオロポリエーテル基であり、下記一般式(i)、(ii)で表される二価の構造であることが好ましい。
【0019】
【化4】


(式中、p及びqは独立に1〜150の整数であって、かつpとqの和の平均は、2〜200である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【0020】
【化5】


(式中、uは1〜200の整数、vは1〜50の整数、tは上記の通りである。)
【0021】
一般式(1)で表される(A)成分の好ましい例として、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0022】
【化6】

【0023】
[式中、X、X’及びaは一般式(1)で定義の通りであり、p、q及びrは一般式(i)において定義の通りである。]
一般式(2)で表される直鎖状フルオロポリエーテル化合物の具体例としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【0024】
【化7】

【0025】
【化8】


(式中、m及びnはそれぞれ1〜150,m+n=2〜200を満足する整数を示す。)
これらの直鎖状フルオロポリエーテル化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0026】
〔(B)成分〕
本発明の(B)成分である疎水性シリカ粉末はとしては、例えば無処理の微粉末シリカの表面をオルガノクロロシランで疎水化処理したものが好ましい。該微粉末シリカはBET比表面積が通常50〜400m/gの範囲のものが使用され、シリコーンゴム用充填剤として公知である。BET比表面積が50〜400m/gである微粉末シリカを各種のオルガノクロロシランで表面処理したものである。処理剤のオルガノクロロシランとしては各種のものを使用できるが、中でもジメチルジクロロシランで処理したものが好ましい。
【0027】
該疎水性シリカ粉末の具体例としては、Aerosil R-972、Aerosil R-974、Aerosil R-976(商品名、日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0028】
〔製造方法〕
本発明の液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドの製造方法は、工程(1)、(2)及び(3)を必須の工程として含む。
【0029】
・工程(1):
(A)成分を、常圧下で、50〜100℃、好ましくは60〜100℃℃の温度で加熱する。加熱の温度が低すぎると、(B)成分の吸着水分(保存時)の脱離量が不十分かつ変動する。高すぎると、混合系の粘度が低下し、次工程(工程(2))における(B)成分に掛かる剪断力が弱くなり、 (A)成分による(B)成分の湿潤が不十分となる。
【0030】
・工程(2):
工程(1)で加熱した(A)成分100質量部に対して(B)成分20〜60質量部を混練しながら添加して混練物を得る。該工程は、通常70〜100℃、好ましくは80〜100℃程度の温度範囲で行うことが望ましい。工程(2)における(B)成分の配合量は、疎水性シリカ粉末の種類によっても異なるが、(A)成分100質量部に対して20〜60質量部、好ましくは25〜50質量部の範囲である。20質量部未満では、混練時に(B)成分に掛かる剪断力が弱くなり、(B)成分の(A)成分による湿潤が不十分となるため、所望の流動性が得られない場合がある。また、60質量部を超えると混練り時の発熱が激しくなり、シリカ粉末の機械での混練が難しい。
【0031】
・工程(3):
工程(2)で得られた混練物を、100℃を越える温度に昇温させ、かかる温度で、加熱・減圧条件下、若しくは加熱・加圧条件下で混練する。
【0032】
工程(2)での(A)成分と(B)成分の添加、工程(3)での混練りは、プラネタリーミキサー、ゲートミキサー及びニーダー等の混練り装置などによって、剪断応力下で混練を行うことができる。
【0033】
工程(3)は、液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドの混練状態を均一安定化するために行うものであり、熱処理温度及び時間に関しては特に限定するものではないが、熱処理温度は105〜200℃、好ましくは110〜190℃、より好ましくは120〜180℃、処理時間は、均一に混練りでき安定化するのに十分な時間でよく、通常1〜5時間、好ましくは1〜3時間である。処理時間の上限に制限はないが、必要以上に行うことは省エネルギーの観点からも意味はない。
【0034】
また、熱処理混合時の圧力に関しては、用いる装置によって異なるが、その装置に応じて加圧もしくは減圧下で行うことが必須である。例えば、プラネタリーミキサーやゲートミキサーでは減圧下で混練りし、その圧力はゲージ圧で−0.05MPa以下が好ましく、ニーダーでは加圧下で混練りし、その圧力はゲージ圧で0.4〜0.6MPaであることが好ましい。これらの条件下で操作を行うのは(A)成分が(B)成分の表面に十分に濡れやすく(被覆しやすく)するためである。
なお、上記工程(1)から工程(3)までを、固練り工程(フィラー高充填/高剪断応力下での混練工程)と称することがあり、これによって得られるベースコンパウンドを固練り混練物(又は固練りベースコンパウンド)と称することがある。
【0035】
・任意的希釈工程:
なお、作業性の改善を目的として、上記操作で得られたベースコンパウンド(固練り混練物又は固練りベースコンパウンド)の粘度を低下させ取扱い易くするために、必要に応じて、該ベースコンパウンド(固練り混練物又は固練りベースコンパウンド)に、更に、(A)成分を追加・希釈して、希釈後のベースコンパウンド中の(A)成分100質量部に対して(B)成分が5〜50質量部、好ましくは5〜25質量部の混合比となるように任意的に後希釈してもよい。この場合、(A)成分の後添加量が少なく、希釈後のベースコンパウンドにおける(A)成分100質量部に対して(B)成分が50質量部を超える場合には、粘度の低下効果が小さく取り扱い性の改善が望めない場合があり、また(A)成分の添加量が多すぎて、希釈後のベースコンパウンドにおける(A)成分100質量部に対して(B)成分が5質量部に満たない場合には、得られるゴム硬化物の機械的強度が低下する場合がある。
なお、希釈後のベースコンパウンドを希釈ベースコンパウンドと称することがある。
該任意的希釈工程においては、加熱は必須ではなく必要に応じて加熱することができる。加熱する場合には、上記工程(3)と同様の温度範囲で行うことが望ましい。また、必要に応じて減圧又は加圧することができる。圧力範囲は上記工程(3)と同様の範囲で行うことが望ましい。
【0036】
なお、工程(3)で得られた熱処理後のベースコンパウンド(固練りベースコンパウンド)及びその希釈物(希釈ベースコンパウンド)は、(B)成分の分散性を向上させるために三本ロールミル上で混練することが好ましい。
【0037】
本発明で得られる液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンド(固練りベースコンパウンド又は希釈ベースコンパウンド)には、必要に応じて、結晶性シリカ粉末、石英粉末、珪藻土等を本発明の目的を損なわない範囲内で配合することもできる。例えば、(A)成分による後希釈工程後の段階で配合する。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例で部は質量部を示し、%は質量%を示す。また、粘度は23℃における測定値を示す(JISK 7117−1準拠)。粘度計として、東機産業製BS型回転粘度計(ローターNo.7、回転数10rpm)を使用した。また、常温は23℃を意味する。
【0039】
[シリカ粉末の含水率の測定]
粒子表面がジメチルジクロロシランにより疎水化された、BET比表面積が110m/gの微粉末シリカであるAerosil R972(日本アエロジル社製)を表1に示す温度・湿度条件下で保存し、使用前に微量水分計(ケット科学研究所製FM−300A)により含水率を測定した。その結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
但し、乾燥温度:105℃、窒素流量:350ml/min
【0042】
〔実施例1〕
(1)下記式(3)で示されるポリマー(粘度11,000mPa.s)100.0部をプラネタリーミキサーに投入し、攪拌しながら70℃になるまで加熱した。
(2)該ミキサー内の加熱したポリマーに、Aerosil R972(温度10℃、湿度30%で保存していたもの)31.5部を70〜100℃の範囲内で投入・混練を繰り返して分割添加した。
(3)次にミキサー内容物を混練しながら装置内をゲージ圧で−0.09MPa以下まで減圧した後、その減圧下で130℃以上に昇温させた。その後、引き続いて、該減圧下において130〜150℃の範囲内で3時間混練してベースコンパウンド(固練り混練物)を調製した。
(4)その後、加熱を止め、装置内を常圧に戻した後、下記式(3)で示されるポリマー80.0部を追加した。再度、混練しながら装置内をゲージ圧で−0.09MPa以下まで減圧し、30分間混練した。
(5)得られた混練物を常温まで冷却した後、三本ロールミルを2回通して液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンド(希釈ベースコンパウンド)を得た。
【0043】
得られた希釈ベースコンパウンドの粘度を測定し、結果を表2に示す。
【0044】
【化9】

【0045】
(但し、m+n=95)
【0046】
〔実施例2〕
実施例1で用いたAerosil R972(温度10℃、湿度30%で保存していたもの)の代わりに、温度23℃、湿度50%で保存したAerosil R972を用いた以外は実施例1と同様にして液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンド(希釈ベースコンパウンド)を製造し、その粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0047】
〔実施例3〕
実施例1で用いたAerosil R972(温度10℃、湿度30%で保存していたもの)の代わりに、温度30℃、湿度80%で保管したAerosil R972を用いた以外は実施例1と同様にして液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンド(希釈ベースコンパウンド)を製造し、その粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0048】
〔実施例4〕
(1)上記式(3)で示されるポリマー100.0部をニーダーに投入し、攪拌しながら80℃になるまで加熱した。
(2)該ニーダー内の加熱したポリマーにAerosil R972(温度10℃、湿度30%で保存していたもの)45.0部を80〜100℃の範囲内で投入・混練を繰り返して分割添加した。
(3)得られた混練物を混練しながら、装置内をゲージ圧で0.45MPaまで加圧した後、ニーダー内を130℃以上に昇温させた。その後、引き続いて、上記の圧力に加圧下で130〜150℃の範囲内で3時間混練してベースコンパウンド(固練り混練物)を調製した。
(4)その後、加熱を止め装置内を常圧に戻して、得られた混練物に上記式(3)で示されるポリマー150.0部を追加した。その後、再度混練物を混練しながら装置内をゲージ圧で0.45MPaまで加圧し、1時間混練した。得られた混練物を常温まで冷却した後、三本ロールミルを2回通して液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンド(希釈ベースコンパウンド)を得た。その粘度を測定し、結果を表2に示す。
【0049】
〔実施例5〕
実施例4で用いたAerosil R972(温度10℃、湿度30%で保存していたもの)の代わりに、温度23℃、湿度50%で保存していたAerosil R972を用いた以外は、実施例4と同様にして液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンド(希釈ベースコンパウンド)を製造し、その粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0050】
〔実施例6〕
実施例4で用いたAerosil R972(温度10℃、湿度30%で保存していたもの)の代わりに、温度30℃、湿度80%で保存していたAerosil R972を用いた以外は、実施例4と同様にして液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンド(希釈ベースコンパウンド)を製造し、その粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0051】
〔比較例1〕
実施例1において、Aerosil R972の分割添加時に外部から加熱しなかった以外は、実施例1と同様にして液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンド(希釈ベースコンパウンド)を製造し、その粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0052】
〔比較例2〕
実施例2において、Aerosil R972の分割添加時に外部から加熱しなかった以外は、実施例2と同様にして液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンド(希釈ベースコンパウンド)を製造し、その粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0053】
〔比較例3〕
実施例3において、Aerosil R972の分割添加時に外部から加熱しなかった以外は、実施例3と同様にして液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンド(希釈ベースコンパウンド)を製造し、その粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0054】
〔比較例4〕
実施例4において、Aerosil R972の分割添加時に外部から加熱しなかった以外は、実施例4と同様にして液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンド(希釈ベースコンパウンド)を製造し、その粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0055】
〔比較例5〕
実施例5において、Aerosil R972の分割添加時に外部から加熱しなかった以外は、実施例5と同様にして液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンド(希釈ベースコンパウンド)を製造し、その粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0056】
〔比較例6〕
実施例6において、Aerosil R972の分割添加時に外部から加熱しなかった以外は、実施例6と同様にして液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンド(希釈ベースコンパウンド)を製造し、その粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の方法で得られるベースコンパウンド(固練りベースコンパウンド及び希釈ベースコンパウンド)は液状フッ素エラストマーの調製用であり、該エラストマーは自動車工業等の各種工業分野において、電装部品のシール、コーティング及びポッティング用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物、及び
(B)疎水性シリカ粉末
を構成成分とする液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドの製造方法であって、
(1)常圧下、50〜100℃の範囲内の温度で(A)成分を加熱する工程、
(2)工程(1)で加熱した(A)成分100質量部に対して(B)成分20〜60質量部を混練しながら添加して混練物を得る工程、
(3)工程(2)で得られた混練物を、100℃を越える温度で、加熱・減圧条件下、若しくは加熱・加圧条件下で混練する工程、
を有する液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドの製造方法。
【請求項2】
(4)上記の工程(3)で得られた混練物に、更に、(A)成分を追加して(A)成分100質量部に対して(B)成分が5〜50質量部の混合比となるように後希釈する工程、
を有する請求項1記載の液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドの製造方法。
【請求項3】
(A)成分が下記一般式(1):

CH=CH−(X)−Rf−(X’)−CH=CH (1)

[式中、Xは、−CH−、−CHO−、−CHOCH−又は−Y−NR−CO−(ここで、Yは−CH−又は下記式(Z):
【化1】


で表される二価の基、Rは水素原子、置換若しくは非置換の一価炭化水素基である)、X’は−CH−、−OCH−、−CHOCH−又は−CO−NR−Y’−(ここで、Y’は−CH−又は下記式(Z’):
【化2】


で表される二価の基であり、Rは上記の通りである)で表される二価の基であり、Rfは二価のパーフルオロポリエーテル基であり、aは独立に0又は1である。]
で表される直鎖状フルオロポリエーテル化合物である請求項1又は2に係る液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドの製造方法。
【請求項4】
上記(A)成分の一般式中のRfが、下記一般式(i)又は(ii)で表される二価の基である請求項3に係る液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドの製造方法。
【化3】


(式中、p及びqは独立に1〜150の整数であって、かつpとqの和の平均は、2〜200である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【化4】


(式中、uは1〜200の整数、vは1〜50の整数、tは上記の通りである。)
【請求項5】
(A)成分が下記一般式(2):
【化5】

[式中、X、X’及びaは請求項3に記載の一般式(1)について定義の通りであり、p、q及びrは請求項4に記載の一般式(i)について定義の通りである。]
で表される直鎖状フルオロポリエーテル化合物である請求項4に係る液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドの製造方法。
【請求項6】
(B)成分の疎水性シリカ粉末が無処理の微粉末シリカの表面をオルガノクロロシランで疎水化処理したものである請求項1〜5のいずれか1項に係る液状フッ素エラストマー用ベースコンパウンドの製造方法。

【公開番号】特開2012−246448(P2012−246448A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121205(P2011−121205)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】