液面被覆用浮子およびその製造方法
【課題】 液面に単層状態で浮かべても、浮子1間に隙間が生じないようにする。種々の異なった見掛け比重を有する浮子1を容易に製造することができるようにする
【解決手段】 液面被覆用浮子1の外周が六角形状をなすようにする。互いに別体として成形した第一の分割部分と第二の分割部分とを結合して一体化することにより1つの液面被覆用浮子1を製造することとするとともに、第一および(または)第二の分割部分を金型の内面とピンとの間に材料を供給して成形することとし、金型の内面と前記ピンの先端と間の間隔を調整することにより、第一および(または)第二の面の肉厚、ひいては中空部の大きさを調整して、液面被覆用浮子1の見掛け比重を設定する
【解決手段】 液面被覆用浮子1の外周が六角形状をなすようにする。互いに別体として成形した第一の分割部分と第二の分割部分とを結合して一体化することにより1つの液面被覆用浮子1を製造することとするとともに、第一および(または)第二の分割部分を金型の内面とピンとの間に材料を供給して成形することとし、金型の内面と前記ピンの先端と間の間隔を調整することにより、第一および(または)第二の面の肉厚、ひいては中空部の大きさを調整して、液面被覆用浮子1の見掛け比重を設定する
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面に多数浮かべられて、該液面を覆う液面被覆用浮子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の液面被覆用浮子は、メッキ液、エッチング液、洗浄液等の各種液体の蒸発、ミスト飛散防止、放熱防止、臭気防止、酸化防止、液体への気体の再溶存防止、液体の凍結防止等の種々の目的で、広範囲の産業分野において使用されている。
【0003】
そして、従来のこの種の液面被覆用浮子としては、主として発泡体や中空体からなるボール状の浮子が用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−124694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のボール状の浮子においては、その幾何学的形状のため、単層状態で浮子を液面に浮かべると、図1に示されるように浮子1間に必ず隙間2が生じ、これらの隙間2においては液面が被覆されないという問題があった。
【0005】
そして、浮子1を複層をなすように液面に浮かべれば、隙間なく液面を被覆することは可能であるが、その場合には、浮子1の使用量が非常に増えるとともに、浮子1の存在により、液体を収容する液槽の容量が実質的に相当減少してしまうという問題があった。
【0006】
また、水槽外において浮子が転がって紛失しやすいという問題もあった。
【0007】
また、この種の浮子においては、使用対象となる液体の比重に適した見掛け比重を有する浮子を用意する必要があるが、従来の液面被覆用浮子の製造方法においては、浮子を構成する材料自体の真比重ないは見掛け比重を調節する必要があり、種々の異なった見掛け比重を有する浮子を製造するのは容易ではないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、液面に単層状態で浮かべても、浮子間に隙間が生じないようにすることができる液面被覆用浮子を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、液槽外において転がり難く、紛失する虞が少ない液面被覆用浮子を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、種々の異なった見掛け比重を有する浮子を容易に製造することができる液面被覆用浮子の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による液面被覆用浮子は、外周が六角形状をなしているものである。
【0013】
本発明の液面被覆用浮子においては、外周が六角形状とされているので、液面に浮かべたときに、液面に単層状態で浮かべても、浮子間に隙間が生じないようになる。
【0014】
また、ボール状や円筒状ではないので、液槽外において転がり難く、紛失する虞が少ない。
【0015】
本発明の液面被覆用浮子一つの態様においては、主部と、張り出し部とを有しており、前記主部はそれぞれ上面または下面となる球面状の第一および第二の面を有し、前記張り出し部は前記主部のうちの前記第一および第二の面の境界部となる周縁部から横外方に張り出しており、該張り出し部の外周が液面被覆用浮子全体の外周をなしている。
【0016】
もし浮子全体が平板状であるとすると、浮子同士が重なり易くなる。また、浮子全体が平板状であるとすると、真比重または見掛け比重が小さい材料を使用しない限り、浮子に適当な大きさの浮力を付与しにくくなるので、使用できる材料が限定されてしまう。しかるに、上記態様によれば、第一および第二の面が球面状とされているので、浮子同士が重なりにくくなる。その上、浮子の体積を大きくできるので、比較的に真比重または見掛け比重が大きい材料を使用しても、適当な大きさの浮力を付与し、浮子全体の見掛け比重を適当な大きさに設定し易くなる。さらに、上記態様によれば、張り出し部が存在することにより、浮子が傾きにくくなる。
【0017】
本発明による液面被覆用浮子の製造方法は、中空の主部と、張り出し部とを有しており、前記主部はそれぞれ上面または下面となる球面状の第一および第二の面を有し、前記張り出し部は前記主部のうちの前記第一および第二の面の境界部となる周縁部から横外方に張り出しており、該張り出し部の外周が六角形状をなしている液面被覆用浮子の製造方法であって、
互いに別体として成形した第一の分割部分と第二の分割部分とを結合して一体化することにより1つの前記液面被覆用浮子を製造することとし、前記第一の分割部分は前記第一の面をすべてまたは大部分含む一方、前記第二の分割部分は前記第二の面をすべてまたは大部分含むようにするとともに、前記第一および(または)第二の分割部分を金型の内面とピンとの間に材料を供給して成形することとし、前記金型の内面と前記ピンの先端と間の間隔を調整することにより、前記第一および(または)第二の面の肉厚を調整して、前記液面被覆用浮子の見掛け比重を設定するものである。
【0018】
本発明による液面被覆用浮子の製造方法によれば、金型の内面と前記ピンの先端と間の間隔を調整することにより、第一および(または)第二の面の肉厚、ひいては中空部の大きさを調整し、浮子の外形の形状および各部寸法は同一に保持したまま、浮子の見掛け比重を対象液体に適合する大きさに容易に設定することができる。したがって、種々の異なった見掛け比重を有する浮子を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
(イ)液面に単層状態で浮かべても、浮子間に隙間が生じないようにすることができる。
【0020】
(ロ)液槽外において転がり難く、紛失する虞が少ない。
【0021】
(ハ)種々の異なった見掛け比重を有する浮子を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0023】
図2〜10は本発明の実施例1を示している。本実施例において、液面被覆用浮子1は、第一の分割部分3と第二の分割部分4とを超音波溶着、熱溶着または接着等により結合して一体化してなる(図6の一点鎖線は、第二の分割部分4を単独で示している)。前記第一の分割部分3および第二の分割部分4は、ポリプロピレン系、フッ素樹脂系等のプラスチックからなる。なお、本発明においては、浮子1を構成する材料としては、他の種のプラスチックや、ゴム、熱可塑性エラストマー等のプラスチック以外の材料も使用可能である。ただし、これらの浮子1を構成する材料としては、対象液体に応じて、耐食性、耐熱性、耐寒性等の特性を有するものを使用することが好ましい。
【0024】
前記液面被覆用浮子1は、全体として、主部5と張り出し部6とを有している。前記主部5は、中空で(図6の符号9は中空部を示している)、それぞれ上面または下面となる第一および第二の面7,8を備えており、これらの第一および第二の面7,8はそれぞれ球面状をなしている。前記張り出し部6は、前記主部5の第一および第二の面7,8の境界部となる周縁部から全周に渡って横外方に張り出していて、主部5の最大厚より十分に薄い平たい形状とされており、その外周は六角形状をなしている。ここにおいて、前記液面被覆用浮子1は、全体に実質的に上下対称形状とされている(本実施例では、成形等の都合上、第一および第二の面7,8の曲率を互いにわずかに相違させている)。
【0025】
なお、前記第一の分割部分3は第一の面7および張り出し部6の全部と、第二の面8の外周側部分とを構成しており、第二の分割部分4は第二の面8の中心側の大部分を構成している。
【0026】
前記液面被覆用浮子1全体の見掛け比重は、図7に示されるように、使用対象となる液体10に浮子1を浮かべたとき、液面11が張り出し部6に位置するように選定されることが好ましく、さらに好ましくは上下方向に関する対称面に位置するように選定されることが好ましい。
【0027】
本発明の液面被覆用浮子1においては、外周が六角形状とされているので、液面に単層状態で浮かべても、図8のように、浮子1間に隙間が生じないようになる(なお、浮子の外周を四角形状としても、浮子同士が重なり合わなければ、浮子間に隙間が生じなくなるが、実際には浮子同士が重なり合ってしまい、浮子間に隙間が生じ易くなる)。
【0028】
また、本発明の浮子1は、ボール状や円筒状ではないので、液槽外において転がり難く、紛失する虞が少ない。
【0029】
また、浮子1全体が平板状であるとすると、浮子1の外周を六角形状としたとしても、浮子1同士が重なり合い易くなる。また、浮子1全体が平板状であるとすると、真比重または見掛け比重が小さい材料を使用しない限り、浮子1に適当な大きさの浮力を付与しにくくなるので、使用できる材料が限定されてしまう。しかるに、本実施例においては、主部5の第一および第二の面7,8が球面状とされているので、浮子1同士が重なりにくくなる。その上、比較的に真比重または見掛け比重が大きい材料を使用しても、浮子1の体積を大きくでき、かつ主部5を中空とすることができるので、適当な大きさの浮力を付与し、浮子1全体の見掛け比重を適当な大きさに設定し易くなる。特に、本実施例では、浮子1が中空とされているので、中空部9の大きさを調整することによって、より一層、浮子1全体の見掛け比重を適当な大きさに設定し易くなる。
【0030】
また、張り出し部6が存在することにより、浮子1が傾きにくくなる。
【0031】
また、本実施例では、浮子1が実質的に全体に上下対称形状とされており、裏表がないので、液面に浮かべたときに、個々の浮子1の第一の面7または第二の面8のいずれが上向きになっても、液体の被覆に影響を与えることがない。
【0032】
図9および10は、射出成形等の、型を用いた成形により液面被覆用浮子1の第一の分割部分3を成形する成形工程を示している。可動側金型12にピン13が軸方向(矢印A方向)に位置を調整可能に取り付けられており、これにより、図9のように可動側金型12および固定側金型14が閉じられたときの、ピン13の先端と固定側金型14の内面との間の間隔15を調整可能とされている。図10は、閉じられた金型12,14およびピン13の間にプラスチック材料が供給され、第一の分割部分3が成形される状態を示している。
【0033】
図9および10から明らかなように、ピン13の先端と固定側金型14の内面との間の間隔15を調整することにより、第一の面7の肉厚、ひいては中空部9の大きさを調整し、浮子1の外形の形状および各部寸法は同一に保持したまま、浮子1の見掛け比重を対象液体に適合する大きさに容易に設定することができる。
【0034】
なお、第二の分割部分4に関しても、同様の金型およびピンを用いて、ピンの先端と金型の内面との間の間隔を調整することにより、第二の面8の肉厚、ひいては中空部9の大きさを調整し、浮子1の外形の形状および各部寸法は同一に保持したまま、浮子1の見掛け比重を対象液体に適合する大きさに容易に設定することができる。
【0035】
本実施例では、上記のようにしてそれぞれ成形された第一および第二の分割部分3,4を結合して一体化することにより、種々の異なった見掛け比重を有する浮子1を容易に製造することができる。
【実施例2】
【0036】
図11は、本発明の実施例2を示している。本実施例では、第一の面7側および第二の面8側の両方において、主部5の中心部は、該主部5の他の部分より肉厚を厚くされている。他の構成は実施例1と同様である。
【0037】
本実施例では、重心を、より中心に寄せることができ、浮子1を傾きにくくすることができる。
なお、前記各実施例では、浮子1を中空としているが、中空としないことも可能である(ただし、この場合は、通常、発泡材料等の材料自体の見掛け比重または真比重の小さい材料を用いることが必要になる)。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように本発明による液面被覆用浮子およびその製造方法は、液面に多数浮かべられて、該液面を覆う液面被覆用浮子およびその製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来のボール状の液面被覆用浮子を液面に多数浮かべた状態を示す平面図である。
【図2】本発明の実施例1における液面被覆用浮子を示す斜視図である。
【図3】前記実施例1の液面被覆用浮子を示す平面図である。
【図4】前記実施例1の液面被覆用浮子を示す正面図である。
【図5】前記実施例1の液面被覆用浮子を示す側面図である。
【図6】図3のVI−VI線における断面図である(一点鎖線は、第二の分割部分を単独で示している)。
【図7】前記実施例1の液面被覆用浮子を液面に浮かべたときの、好ましい液面の位置を示す説明図である。
【図8】前記実施例1の液面被覆用浮子を液面に多数浮かべた状態を示す平面図である。
【図9】前記実施例1の液面被覆用浮子の第一の分割部分を成形する成形工程において、金型が閉じられた状態を示す断面図である。
【図10】前記実施例1の液面被覆用浮子の第一の分割部分を成形する成形工程において、閉じられた金型およびピン間に材料が供給され、第一の分割部分が成形される状態を示す断面図である。
【図11】本発明の実施例2における液面被覆用浮子を示す縦断面である。
【符号の説明】
【0040】
1 液面被覆用浮子
3 第一の分割部分
4 第二の分割部分
5 主部
6 張り出し部
7 第一の面
8 第二の面
9 中空部
10 液体
11 液面
12 可動側金型
13 ピン
14 固定側金型
15 ピンの先端と金型の内面との間の間隔
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面に多数浮かべられて、該液面を覆う液面被覆用浮子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の液面被覆用浮子は、メッキ液、エッチング液、洗浄液等の各種液体の蒸発、ミスト飛散防止、放熱防止、臭気防止、酸化防止、液体への気体の再溶存防止、液体の凍結防止等の種々の目的で、広範囲の産業分野において使用されている。
【0003】
そして、従来のこの種の液面被覆用浮子としては、主として発泡体や中空体からなるボール状の浮子が用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−124694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のボール状の浮子においては、その幾何学的形状のため、単層状態で浮子を液面に浮かべると、図1に示されるように浮子1間に必ず隙間2が生じ、これらの隙間2においては液面が被覆されないという問題があった。
【0005】
そして、浮子1を複層をなすように液面に浮かべれば、隙間なく液面を被覆することは可能であるが、その場合には、浮子1の使用量が非常に増えるとともに、浮子1の存在により、液体を収容する液槽の容量が実質的に相当減少してしまうという問題があった。
【0006】
また、水槽外において浮子が転がって紛失しやすいという問題もあった。
【0007】
また、この種の浮子においては、使用対象となる液体の比重に適した見掛け比重を有する浮子を用意する必要があるが、従来の液面被覆用浮子の製造方法においては、浮子を構成する材料自体の真比重ないは見掛け比重を調節する必要があり、種々の異なった見掛け比重を有する浮子を製造するのは容易ではないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、液面に単層状態で浮かべても、浮子間に隙間が生じないようにすることができる液面被覆用浮子を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、液槽外において転がり難く、紛失する虞が少ない液面被覆用浮子を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、種々の異なった見掛け比重を有する浮子を容易に製造することができる液面被覆用浮子の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による液面被覆用浮子は、外周が六角形状をなしているものである。
【0013】
本発明の液面被覆用浮子においては、外周が六角形状とされているので、液面に浮かべたときに、液面に単層状態で浮かべても、浮子間に隙間が生じないようになる。
【0014】
また、ボール状や円筒状ではないので、液槽外において転がり難く、紛失する虞が少ない。
【0015】
本発明の液面被覆用浮子一つの態様においては、主部と、張り出し部とを有しており、前記主部はそれぞれ上面または下面となる球面状の第一および第二の面を有し、前記張り出し部は前記主部のうちの前記第一および第二の面の境界部となる周縁部から横外方に張り出しており、該張り出し部の外周が液面被覆用浮子全体の外周をなしている。
【0016】
もし浮子全体が平板状であるとすると、浮子同士が重なり易くなる。また、浮子全体が平板状であるとすると、真比重または見掛け比重が小さい材料を使用しない限り、浮子に適当な大きさの浮力を付与しにくくなるので、使用できる材料が限定されてしまう。しかるに、上記態様によれば、第一および第二の面が球面状とされているので、浮子同士が重なりにくくなる。その上、浮子の体積を大きくできるので、比較的に真比重または見掛け比重が大きい材料を使用しても、適当な大きさの浮力を付与し、浮子全体の見掛け比重を適当な大きさに設定し易くなる。さらに、上記態様によれば、張り出し部が存在することにより、浮子が傾きにくくなる。
【0017】
本発明による液面被覆用浮子の製造方法は、中空の主部と、張り出し部とを有しており、前記主部はそれぞれ上面または下面となる球面状の第一および第二の面を有し、前記張り出し部は前記主部のうちの前記第一および第二の面の境界部となる周縁部から横外方に張り出しており、該張り出し部の外周が六角形状をなしている液面被覆用浮子の製造方法であって、
互いに別体として成形した第一の分割部分と第二の分割部分とを結合して一体化することにより1つの前記液面被覆用浮子を製造することとし、前記第一の分割部分は前記第一の面をすべてまたは大部分含む一方、前記第二の分割部分は前記第二の面をすべてまたは大部分含むようにするとともに、前記第一および(または)第二の分割部分を金型の内面とピンとの間に材料を供給して成形することとし、前記金型の内面と前記ピンの先端と間の間隔を調整することにより、前記第一および(または)第二の面の肉厚を調整して、前記液面被覆用浮子の見掛け比重を設定するものである。
【0018】
本発明による液面被覆用浮子の製造方法によれば、金型の内面と前記ピンの先端と間の間隔を調整することにより、第一および(または)第二の面の肉厚、ひいては中空部の大きさを調整し、浮子の外形の形状および各部寸法は同一に保持したまま、浮子の見掛け比重を対象液体に適合する大きさに容易に設定することができる。したがって、種々の異なった見掛け比重を有する浮子を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
(イ)液面に単層状態で浮かべても、浮子間に隙間が生じないようにすることができる。
【0020】
(ロ)液槽外において転がり難く、紛失する虞が少ない。
【0021】
(ハ)種々の異なった見掛け比重を有する浮子を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0023】
図2〜10は本発明の実施例1を示している。本実施例において、液面被覆用浮子1は、第一の分割部分3と第二の分割部分4とを超音波溶着、熱溶着または接着等により結合して一体化してなる(図6の一点鎖線は、第二の分割部分4を単独で示している)。前記第一の分割部分3および第二の分割部分4は、ポリプロピレン系、フッ素樹脂系等のプラスチックからなる。なお、本発明においては、浮子1を構成する材料としては、他の種のプラスチックや、ゴム、熱可塑性エラストマー等のプラスチック以外の材料も使用可能である。ただし、これらの浮子1を構成する材料としては、対象液体に応じて、耐食性、耐熱性、耐寒性等の特性を有するものを使用することが好ましい。
【0024】
前記液面被覆用浮子1は、全体として、主部5と張り出し部6とを有している。前記主部5は、中空で(図6の符号9は中空部を示している)、それぞれ上面または下面となる第一および第二の面7,8を備えており、これらの第一および第二の面7,8はそれぞれ球面状をなしている。前記張り出し部6は、前記主部5の第一および第二の面7,8の境界部となる周縁部から全周に渡って横外方に張り出していて、主部5の最大厚より十分に薄い平たい形状とされており、その外周は六角形状をなしている。ここにおいて、前記液面被覆用浮子1は、全体に実質的に上下対称形状とされている(本実施例では、成形等の都合上、第一および第二の面7,8の曲率を互いにわずかに相違させている)。
【0025】
なお、前記第一の分割部分3は第一の面7および張り出し部6の全部と、第二の面8の外周側部分とを構成しており、第二の分割部分4は第二の面8の中心側の大部分を構成している。
【0026】
前記液面被覆用浮子1全体の見掛け比重は、図7に示されるように、使用対象となる液体10に浮子1を浮かべたとき、液面11が張り出し部6に位置するように選定されることが好ましく、さらに好ましくは上下方向に関する対称面に位置するように選定されることが好ましい。
【0027】
本発明の液面被覆用浮子1においては、外周が六角形状とされているので、液面に単層状態で浮かべても、図8のように、浮子1間に隙間が生じないようになる(なお、浮子の外周を四角形状としても、浮子同士が重なり合わなければ、浮子間に隙間が生じなくなるが、実際には浮子同士が重なり合ってしまい、浮子間に隙間が生じ易くなる)。
【0028】
また、本発明の浮子1は、ボール状や円筒状ではないので、液槽外において転がり難く、紛失する虞が少ない。
【0029】
また、浮子1全体が平板状であるとすると、浮子1の外周を六角形状としたとしても、浮子1同士が重なり合い易くなる。また、浮子1全体が平板状であるとすると、真比重または見掛け比重が小さい材料を使用しない限り、浮子1に適当な大きさの浮力を付与しにくくなるので、使用できる材料が限定されてしまう。しかるに、本実施例においては、主部5の第一および第二の面7,8が球面状とされているので、浮子1同士が重なりにくくなる。その上、比較的に真比重または見掛け比重が大きい材料を使用しても、浮子1の体積を大きくでき、かつ主部5を中空とすることができるので、適当な大きさの浮力を付与し、浮子1全体の見掛け比重を適当な大きさに設定し易くなる。特に、本実施例では、浮子1が中空とされているので、中空部9の大きさを調整することによって、より一層、浮子1全体の見掛け比重を適当な大きさに設定し易くなる。
【0030】
また、張り出し部6が存在することにより、浮子1が傾きにくくなる。
【0031】
また、本実施例では、浮子1が実質的に全体に上下対称形状とされており、裏表がないので、液面に浮かべたときに、個々の浮子1の第一の面7または第二の面8のいずれが上向きになっても、液体の被覆に影響を与えることがない。
【0032】
図9および10は、射出成形等の、型を用いた成形により液面被覆用浮子1の第一の分割部分3を成形する成形工程を示している。可動側金型12にピン13が軸方向(矢印A方向)に位置を調整可能に取り付けられており、これにより、図9のように可動側金型12および固定側金型14が閉じられたときの、ピン13の先端と固定側金型14の内面との間の間隔15を調整可能とされている。図10は、閉じられた金型12,14およびピン13の間にプラスチック材料が供給され、第一の分割部分3が成形される状態を示している。
【0033】
図9および10から明らかなように、ピン13の先端と固定側金型14の内面との間の間隔15を調整することにより、第一の面7の肉厚、ひいては中空部9の大きさを調整し、浮子1の外形の形状および各部寸法は同一に保持したまま、浮子1の見掛け比重を対象液体に適合する大きさに容易に設定することができる。
【0034】
なお、第二の分割部分4に関しても、同様の金型およびピンを用いて、ピンの先端と金型の内面との間の間隔を調整することにより、第二の面8の肉厚、ひいては中空部9の大きさを調整し、浮子1の外形の形状および各部寸法は同一に保持したまま、浮子1の見掛け比重を対象液体に適合する大きさに容易に設定することができる。
【0035】
本実施例では、上記のようにしてそれぞれ成形された第一および第二の分割部分3,4を結合して一体化することにより、種々の異なった見掛け比重を有する浮子1を容易に製造することができる。
【実施例2】
【0036】
図11は、本発明の実施例2を示している。本実施例では、第一の面7側および第二の面8側の両方において、主部5の中心部は、該主部5の他の部分より肉厚を厚くされている。他の構成は実施例1と同様である。
【0037】
本実施例では、重心を、より中心に寄せることができ、浮子1を傾きにくくすることができる。
なお、前記各実施例では、浮子1を中空としているが、中空としないことも可能である(ただし、この場合は、通常、発泡材料等の材料自体の見掛け比重または真比重の小さい材料を用いることが必要になる)。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように本発明による液面被覆用浮子およびその製造方法は、液面に多数浮かべられて、該液面を覆う液面被覆用浮子およびその製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来のボール状の液面被覆用浮子を液面に多数浮かべた状態を示す平面図である。
【図2】本発明の実施例1における液面被覆用浮子を示す斜視図である。
【図3】前記実施例1の液面被覆用浮子を示す平面図である。
【図4】前記実施例1の液面被覆用浮子を示す正面図である。
【図5】前記実施例1の液面被覆用浮子を示す側面図である。
【図6】図3のVI−VI線における断面図である(一点鎖線は、第二の分割部分を単独で示している)。
【図7】前記実施例1の液面被覆用浮子を液面に浮かべたときの、好ましい液面の位置を示す説明図である。
【図8】前記実施例1の液面被覆用浮子を液面に多数浮かべた状態を示す平面図である。
【図9】前記実施例1の液面被覆用浮子の第一の分割部分を成形する成形工程において、金型が閉じられた状態を示す断面図である。
【図10】前記実施例1の液面被覆用浮子の第一の分割部分を成形する成形工程において、閉じられた金型およびピン間に材料が供給され、第一の分割部分が成形される状態を示す断面図である。
【図11】本発明の実施例2における液面被覆用浮子を示す縦断面である。
【符号の説明】
【0040】
1 液面被覆用浮子
3 第一の分割部分
4 第二の分割部分
5 主部
6 張り出し部
7 第一の面
8 第二の面
9 中空部
10 液体
11 液面
12 可動側金型
13 ピン
14 固定側金型
15 ピンの先端と金型の内面との間の間隔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周が六角形状をなしている液面被覆用浮子。
【請求項2】
主部と、張り出し部とを有しており、
前記主部はそれぞれ上面または下面となる球面状の第一および第二の面を有し、
前記張り出し部は前記主部のうちの前記第一および第二の面の境界部となる周縁部から横外方に張り出しており、該張り出し部の外周が液面被覆用浮子全体の外周をなしている請求項1記載の液面被覆用浮子。
【請求項3】
全体に上下対称形状とされている請求項1または2記載の液面被覆用浮子。
【請求項4】
前記主部は中空状とされている請求項1乃至3のいずれかに記載の液面被覆用浮子。
【請求項5】
前記主部の中心部は、該主部の他の部分より肉厚を厚くされている請求項4に記載の液面被覆用浮子。
【請求項6】
中空の主部と、張り出し部とを有しており、前記主部はそれぞれ上面または下面となる球面状の第一および第二の面を有し、前記張り出し部は前記主部のうちの前記第一および第二の面の境界部となる周縁部から横外方に張り出しており、該張り出し部の外周が六角形状をなしている液面被覆用浮子の製造方法であって、
互いに別体として成形した第一の分割部分と第二の分割部分とを結合して一体化することにより1つの前記液面被覆用浮子を製造することとし、前記第一の分割部分は前記第一の面をすべてまたは大部分含む一方、前記第二の分割部分は前記第二の面をすべてまたは大部分含むようにするとともに、前記第一および(または)第二の分割部分を金型の内面とピンとの間に材料を供給して成形することとし、前記金型の内面と前記ピンの先端と間の間隔を調整することにより、前記第一および(または)第二の面の肉厚を調整して、前記液面被覆用浮子の見掛け比重を設定する液面被覆用浮子の製造方法。
【請求項1】
外周が六角形状をなしている液面被覆用浮子。
【請求項2】
主部と、張り出し部とを有しており、
前記主部はそれぞれ上面または下面となる球面状の第一および第二の面を有し、
前記張り出し部は前記主部のうちの前記第一および第二の面の境界部となる周縁部から横外方に張り出しており、該張り出し部の外周が液面被覆用浮子全体の外周をなしている請求項1記載の液面被覆用浮子。
【請求項3】
全体に上下対称形状とされている請求項1または2記載の液面被覆用浮子。
【請求項4】
前記主部は中空状とされている請求項1乃至3のいずれかに記載の液面被覆用浮子。
【請求項5】
前記主部の中心部は、該主部の他の部分より肉厚を厚くされている請求項4に記載の液面被覆用浮子。
【請求項6】
中空の主部と、張り出し部とを有しており、前記主部はそれぞれ上面または下面となる球面状の第一および第二の面を有し、前記張り出し部は前記主部のうちの前記第一および第二の面の境界部となる周縁部から横外方に張り出しており、該張り出し部の外周が六角形状をなしている液面被覆用浮子の製造方法であって、
互いに別体として成形した第一の分割部分と第二の分割部分とを結合して一体化することにより1つの前記液面被覆用浮子を製造することとし、前記第一の分割部分は前記第一の面をすべてまたは大部分含む一方、前記第二の分割部分は前記第二の面をすべてまたは大部分含むようにするとともに、前記第一および(または)第二の分割部分を金型の内面とピンとの間に材料を供給して成形することとし、前記金型の内面と前記ピンの先端と間の間隔を調整することにより、前記第一および(または)第二の面の肉厚を調整して、前記液面被覆用浮子の見掛け比重を設定する液面被覆用浮子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−89122(P2006−89122A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280729(P2004−280729)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(391007530)大裕工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(391007530)大裕工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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