説明

混入物捕捉具

【課題】少ない量の排水でも旋回流を発生させることができる混入物捕捉具を提供する。
【解決手段】流入路74から旋回流路72へ流れ込んで旋回する排水を捕捉部68内へ落とし込ませることにより、排水に混入された毛髪等の混入物をまとめられた状態で捕捉部68上面に捕捉するので、混入物が捕捉部68の通水孔78に絡み付き難くなり、清掃し易くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水口に取り付けられて、排水から混入物を捕捉する混入物捕捉具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、浴室や洗面台等の排水口には、捕捉網により混入物を排水中から捕捉するヘアキャッチャーが取り付けられている。しかし、捕捉網に捕捉された毛髪等の混入物は、この捕捉網に絡み付き易く、清掃時に取り除き難い。
【0003】
これに対して、特許文献1のヘアキャッチャーでは、排水導入部を構成する立壁部により排水の旋回流を発生させ、この旋回流によって毛髪等をまとめることにより、毛髪等を取り除き易くしている。しかし、立壁部により旋回流を発生させるためには、多くの量の排水を一度にヘアキャッチャーへ流さなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−203770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は係る事実を考慮し、少ない量の排水でも旋回流を発生させることができる混入物捕捉具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、排水口に配置され、形成された通水孔へ排水を通水させるとともに該排水中の混入物を捕捉する凹状の捕捉部と、前記捕捉部の上端部外縁から張り出し、前記排水口に取り付けられる鍔部と、前記捕捉部の上端部外縁に沿って前記鍔部に形成された環状の旋回流路と、前記鍔部に形成され、前記鍔部の外部から前記旋回流路へ、前記旋回流路に旋回流を一方向へ発生させる方向から排水を流入させる流入路と、を有する混入物捕捉具である。
【0007】
請求項1に記載の発明では、流入路から旋回流路へ流れ込んで旋回する排水を捕捉部内へ落とし込ませることにより、排水に混入された毛髪等の混入物が倒れた状態でまとめられて捕捉部上面に捕捉される。このため、捕捉した混入物が、立った状態で捕捉部の通水孔に刺さることがなくなって、通水孔に絡み付き難くなる。これにより、混入物捕捉具を清掃する際に、捕捉部から混入物が取り除き易くなる。
【0008】
また、排水を流入路から旋回流路へ流すことにより旋回流路に一方向の旋回流を発生させるので、混入物捕捉具へ流れ込む排水の流量が少ない場合においても、旋回流を発生させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記流入路は、前記旋回流路の接線方向に沿って形成されている。
【0010】
請求項2に記載の発明では、流入路を旋回流路の接線方向に沿って形成することにより、流入路から旋回流路へ排水を滑らかに進入させることができ、旋回流路を乗り越えて直接捕捉部へ向かう排水が減るので、排水の旋回流を旋回流路に効果的に発生させることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記鍔部に形成され、前記流入路へ向かって傾斜し該流入路へ排水を導水する導水傾斜面を有する。
【0012】
請求項3に記載の発明では、混入物捕捉具へ流れ込む排水のほとんどが、導水傾斜面により流入路へ集められるので、混入物捕捉具へ流れ込む排水の流量がより少ない場合においても、旋回流を効率よく発生させることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記導水傾斜面は、前記流入路へ向かう傾斜勾配より小さく前記旋回流路へ向かって傾斜している。
【0014】
請求項4に記載の発明では、導水傾斜面から旋回流路へ流れ込む排水よりも、導水傾斜面から流入路へ流れ込む排水の割合を大きくすることができる。これによって、旋回流路に排水の旋回流を効果的に発生させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記導水傾斜面に排水孔が形成されている。
【0016】
請求項5に記載の発明では、導水傾斜面に排水孔を形成することにより、捕捉部へ流入しきれずに溢れた排水を、この排水孔から排出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記構成としたので、少ない量の排水でも旋回流を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るヘアキャッチャーの設置状況を示す側断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るヘアキャッチャーを示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るヘアキャッチャーを示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る孔壁を示す平面図及び断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る孔壁の変形例を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る孔壁の変形例を示す平面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る孔壁の変形例を示す平面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る孔壁の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係る混入物捕捉具について説明する。
【0020】
本発明の実施形態では、図1の側断面図に示すように、浴室10の洗い場12に設けられた排水枡14に、本発明の混入物捕捉具としてのヘアキャッチャー16を取り付けた例を説明する。
【0021】
浴室10は、浴槽18と、浴槽18の隣に設けられ、シャワーや給湯栓等(不図示)が備えられた洗い場12とによって構成されている。排水枡14は、洗い場12を構成する床面20の浴槽18側の端部に設けられている。
【0022】
排水枡14の天井面に形成された平面視にて略四角形の開口部22は、平面視にて略四角形の板状のカバー24により塞がれている。カバー24は、排水枡14の四隅に形成された段部26上に着脱可能に載置されている。カバー24の側面28と、排水枡14の内壁面30との間には隙間32が形成されており、床面20上を流れる排水は、この隙間32から排水枡14内へ流入する(矢印34)。
【0023】
排水枡14には、排水トラップ36が取り付けられている。排水トラップ36は、トラップ本体38、中空の締め付けフランジ40、及び封水筒42により構成されている。
【0024】
トラップ本体38は、上部に形成された平面視にて略円形の排水口44と、トラップ本体38の左右に設けられ排水口44と連通する接続口46及び排出口48とを備えている。排水口44は、トラップ本体38の上端部に設けられ排水口44中心へ向かって略水平に張り出すフランジ部50の先端部に囲まれるようにして形成されている。接続口46は、接続管(不図示)を介して浴槽18の防水パン(不図示)に接続されている。排出口48は、排水管(不図示)を介して下水管(不図示)に接続されている。
【0025】
封水筒42は、排水口44に挿入された状態で、下端面Sが、封水面Rよりも下側に位置し、且つトラップ本体38の底面56との間に隙間を有するようにして配置されている。封水面Rは、底面56上に立設された筒状の側壁58の上端面に囲まれて形成されている。
【0026】
よって、排水枡14から封水筒42へ流入した排水は、側壁58によって囲まれた領域Vを通って排出口48へ排出され、浴槽18の防水パンに接続された接続管から接続口46へ流入した排水は、領域Vを通って排出口48へ排出される。
【0027】
排水枡14の下端部には、排水枡14の底面に形成された開口部52中心に向かって略水平に張り出すフランジ部54が設けられている。そして、フランジ部54の先端部に取り付けられたパッキン60を、フランジ部50とフランジ部54とで挟み込むようにして、締め付けフランジ40をフランジ部50に捩じ込むことによって、排水枡14に排水トラップ36を固定している。
【0028】
封水筒42は、締め付けフランジ40の中空部62に挿入され、封水筒42の上端部から外側へ張り出すフランジ部64を締め付けフランジ40の下端部から中空部62中心へ張り出すフランジ部66上に載置した状態で、締め付けフランジ40に固定されている。
【0029】
図1に示すように、ヘアキャッチャー16は、締め付けフランジ40に取り付けられている。図2の斜視図、及び図3の平面図に示すように、ヘアキャッチャー16は、樹脂によって一体に成形されており、捕捉部68、鍔部70、旋回流路72、流入路74、及び導水傾斜面76を有している。
【0030】
捕捉部68は、下方に突出した略半球の凹状に形成されており、湾曲した上面80と下面126とを有している。また、捕捉部68は、排水口44に配置されている。捕捉部68の略全域には、円形の孔形状を有する複数の通水孔78が形成されている。通水孔78は、捕捉部68を略鉛直に貫通するようにして形成されており、これによって、混入物としての毛髪が混入された排水が捕捉部68の上面80に流入したときに、排水は通水孔78を通過して通水され、毛髪は上面80に残って捕捉される。
【0031】
鍔部70は、捕捉部68の上端部外縁から略水平へ円板状に張り出し、外周部82が締め付けフランジ40の中空部62内壁に固定されている。すなわち、鍔部70は、締め付けフランジ40を介して排水口44に取り付けられている。
【0032】
図2に示すように、旋回流路72は、捕捉部68の上端部外縁に沿って鍔部70上に略水平に形成された、平面視にて円環状の流路である。旋回流路72は、外側(外周部82側)が内側(捕捉部68中心側)よりも高くなる円弧状(略1/4円状)の横断面を有する段部84により形成されている。
【0033】
流入路74は、鍔部70上に、旋回流路72の接線方向に沿って4つ形成されている。流入路74は、旋回流路72の周方向に対して等間隔に配置され、旋回流路72から外周部82へ向かって上り勾配になっている。また、流入路74は、側面視にて右側が左側よりも高くなる円弧状(略1/4円状)の横断面を有する段部86により形成されている。これにより、流入路74は、外周部82から旋回流路72へ、排水を流入させる。
【0034】
段部84の上縁と段部86の上縁とは、旋回流路72と流入路74とが合流する点Pで一致しており、この点Pから旋回流路72の周方向半時計回りに向かって段部84上縁高さが徐々に滑らかに低くなり、旋回流路72と流入路74とが次に合流する点Pで、段部84の上縁と段部86の下縁とが一致している。
【0035】
図3に示すように、導水傾斜面76は、3つの辺Q、Q、Qに囲まれて鍔部70の上面に形成された傾斜面である。辺Qは、外周部82の外周縁から点Pまでの流入路74の段部86下縁からなり、辺Qは、外周部82の外周縁から点Pまでの流入路74の段部86上縁と、この段部86上縁とつながる点Pまでの段部84上縁からなり、辺Qは、隣り合う一方の流入路74の段部86上縁から他方の流入路74の段部86下縁までの下り勾配となる外周部82の外周縁からなる。
【0036】
このような形状により、導水傾斜面76は、隣り合う一方の流入路74の段部86上縁と、他方の流入路74の段部86下縁とを結んで、流入路74へ向かって傾斜し、流入路74へ排水を導水する。
【0037】
また、導水傾斜面76の縦方向(捕捉部68の上端部外縁を平面視した半径方向)の傾斜は、導水傾斜面76の横方向(捕捉部68の上端部外縁を平面視した周方向)の傾斜よりも小さくなっている。すなわち、導水傾斜面76は、流入路74へ向かう傾斜勾配より小さく旋回流路72へ向かって傾斜している。また、捕捉部68の上端部外縁を平面視した半径の点Pを通る延長線上にある外周部82の外周縁に位置する点Pの高さと、ヘアキャッチャー16の周囲に位置する締め付けフランジ40上面(以下、「排水枡14の底面88」とする)の高さとは同じになっている。
【0038】
これにより、排水枡14の底面88から導水傾斜面76へ流れ込む排水を流入路74へ導水する。導水傾斜面76には、排水孔90が形成されており、捕捉部68へ流入しきれずに溢れた排水を、この排水孔90から排出する。
【0039】
図4の上側には、通水孔78の平面拡大図が描かれており、図4の下側には、図4の上側に描かれた平面拡大図のA−A断面図が描かれている。図4に示すように、捕捉部68には、通水孔78により孔壁130が形成されている。また、湾曲した捕捉部68上面の通水孔78の周りには、第1凹部としてのテーパー部92が形成されている。孔壁130の上部壁面としてのテーパー部92の周壁は、通水孔78の中心下方へ向かって傾斜している。また、湾曲した捕捉部68下面の通水孔78の周りには、第2凹部としてのテーパー部94が形成されている。孔壁130の下部壁面としてのテーパー部94の周壁は、通水孔78の中心上方へ向かって傾斜している。すなわち、通水孔78により捕捉部68に形成された孔壁130の断面形状は、孔壁130の上部が上下方向中央部よりも幅狭に(壁厚が薄く)なっており、孔壁130の下部が上下方向中央部よりも幅狭に(壁厚が薄く)なっている。
【0040】
隣り合うテーパー部92の周壁頂部(上端部)は、一致して稜線96を形成し、隣り合うテーパー部94の周壁頂部(下端部)は、一致して稜線98を形成している。稜線96は、平面視にて多角形としての正六角形を形成し、稜線96の描く全体形状は、平面視にてハニカム形状となっている。また、稜線98は、背面視にて多角形としての正六角形を形成し、稜線98の描く全体形状は、背面視にてハニカム形状となっている。
【0041】
また、テーパー部92の周壁下端部と、テーパー部94の周壁上端部とが、一致して菱形の孔壁130断面を形成しており、この一致した内縁部100により通水孔78が形成されている。
【0042】
次に、本発明の実施形態である混入物捕捉具の作用及び効果について説明する。
【0043】
図1に示すように、洗い場12の床面20上を流れ、隙間32から排水枡14内へ流入した排水は、まず、排水枡14の底面88から鍔部70の外周部82へ向かって流れ込む。この排水には、混入物としての毛髪が混入されている。
【0044】
図3に示すように、鍔部70の外周部82へ向かって流れ込む排水の内、流入路74の先端部へ向かう排水は、流入路74へ直接導水され(矢印106)、側面視にて点Pの右側の外周部82へ向かう排水は、導水傾斜面76上に流れ込んだ後に流入路74へ導水され(矢印108)、側面視にて点Pの左側の外周部82へ向かう排水は、底面88から上方へ切り立つ外周部82の側面102(図2を参照のこと)に沿って左右に迂回した(矢印110)後に流入路74の先端部から流入路74へ導水される(矢印106)。なお、鍔部70の外周部82へ向かって流れ込む排水が多量の場合には、側面視にて点Pの左側の外周部82へ向かう排水は、側面102から乗り上げて導水傾斜面76上に流れ込んだ後に流入路74へ導水される。このようにして、排水枡14内へ流入した排水のほとんどが、導水傾斜面76により流入路74へ集められる。
【0045】
次に、流入路74へ導水された排水は、旋回流路72へ流れ込んで旋回流路72を旋回する(矢印104)。
【0046】
次に、旋回流路72を旋回する排水は、旋回流となって毛髪を伴いながら捕捉部68内へ落とし込まれる。そして、捕捉部68内へ落とし込まれた排水は、捕捉部68の上面80に流入して通水孔78を通過し、毛髪は、環状等にまとめられた状態で上面80に残って捕捉される。また、排水は、捕捉部68内で保水されることなく、通水孔78から流出される。
【0047】
よって、旋回流を生じさせた排水を捕捉部68内へ落とし込ませることにより、この排水を小さい流入角度(水平面に対する排水の流入方向の角度)で捕捉部68の上面80に流入させることができる。これにより、毛髪が倒れた状態で環状等にまとめられて捕捉部68の上面80に捕捉される。すなわち、捕捉した毛髪が、立った状態で捕捉部68の通水孔78に刺さることがなくなり、通水孔78に絡み付き難くなる。これにより、ヘアキャッチャー16を清掃する際に、捕捉部68から毛髪が取り除き易くなる。
【0048】
また、排水を流入路74から旋回流路72へ流すことにより、旋回流路72に一方向の旋回流を発生させるので、ヘアキャッチャー16へ流れ込む排水の流量が少ない場合においても、旋回流を発生させることができる。また、ヘアキャッチャー16へ流れ込む排水のほとんどが、導水傾斜面76により流入路74へ集められるので、ヘアキャッチャー16へ流れ込む排水の流量がより少ない場合においても、旋回流を効率よく発生させることができる。
【0049】
また、導水傾斜面76は、流入路74へ向かう傾斜勾配より小さく旋回流路72へ向かって傾斜しているので、導水傾斜面76から旋回流路72へ流れ込む排水よりも、導水傾斜面76から流入路74へ流れ込む排水の割合を大きくすることができる。これによって、旋回流路72に排水の旋回流を効果的に発生させることができる。
【0050】
また、鍔部70の点Pの高さが、排水枡14の底面88の高さと同じになっているので、鍔部70の外周部82の側面102により、ヘアキャッチャー16へ流れ込む排水の多くを流入路74の先端部から導水することができるので、旋回流路72に、排水の旋回流を効果的に発生させることができる。
【0051】
また、排水は、捕捉部68内で保水されることなく通水孔78から流出されるので、通水孔78の孔径を保水可能な大きさにしなくてもよい。すなわち、通水孔78の孔径を小さくする必要がないので、通水孔78の孔径を大きくして高い通水性を確保することができる。
【0052】
また、捕捉部68上面の通水孔78の周りに第1凹部としてのテーパー部92を形成して孔壁130の上部を幅狭にすることにより、テーパー部92が形成されていない(孔壁130の上部を幅狭にしない)場合と比べて、孔壁130の上端面の面積を小さくすることができる。これによって、孔壁130の上端面と、混入物としての毛髪との接触する面積を小さくすることができるので、捕捉した毛髪が捕捉部68の上面80にへばり付き難くなる。これにより、ヘアキャッチャー16を清掃する際に、捕捉部68から毛髪が取り除き易くなる。
【0053】
また、捕捉部68上面の通水孔78の周りに、第1凹部としてのテーパー部92を形成することにより、第1凹部には段差面がないので、排水を残さずに孔壁130上部から流れ落とすことができる。これにより、孔壁130上部にカビが発生すること等を防ぐことができる。
【0054】
特に、本発明の実施形態では、隣り合うテーパー部92の周壁頂部(上端部)が一致して稜線96を形成しているので、孔壁130の上端面の面積をより小さくすることができ、また、高い水切り効果が期待できる。
【0055】
また、捕捉部68上面の通水孔78の周りに、第1凹部としてのテーパー部92を形成することにより、通水孔78の内壁面を、傾斜面と鉛直面、又は傾斜面のみで構成することができる。すなわち、テーパー部92が形成されていない通水孔78と比べて、通水孔78を構成する鉛直面の面積を小さくする又は無くすることができる。これによって、通水孔78に進入した排水の表面張力を小さくして通水性を向上させることができ、捕捉部68から排水が排出された後に、通水孔78に排水が残ってしまうことを防ぐことができる。
【0056】
また、捕捉部68下面の通水孔78の周りに第2凹部としてのテーパー部94を形成して孔壁130の下部を幅狭にすることにより、テーパー部94が形成されていない(孔壁130の下部を幅狭にしない)場合と比べて、孔壁130の下端面の面積を小さくすることができる。これによって、孔壁130下部に付着されて残る排水を減らすことができ、残水により孔壁130下部にカビが発生すること等を防ぐことができる。また、第2凹部としてのテーパー部94を形成することにより、第2凹部には段差面がないので、孔壁130下部に付着されて残る排水を減らすことができる。
【0057】
特に、本発明の実施形態では、隣り合うテーパー部94の周壁頂部(下端部)が一致して稜線98を形成しているので、孔壁130の下端面の面積をより小さくすることができる。また、捕捉部68の下面126は、下方へ突出した湾曲面を形成しているので、稜線98を伝って残水を捕捉部68の中央部付近に集水させ、水滴を大きくして落下させることができるので、捕捉部68の下面126に付着されて残る排水をより減らすことができる。
【0058】
また、捕捉部68下面の通水孔78の周りに、第2凹部としてのテーパー部94を形成することにより、通水孔78の内壁面を、傾斜面と鉛直面、又は傾斜面のみで構成することができる。すなわち、テーパー部94が形成されていない通水孔78と比べて、通水孔78を構成する鉛直面の面積を小さくする又は無くすることができる。これによって、通水孔78に進入した排水の表面張力を小さくして通水性を向上させることができ、捕捉部68から排水が排出された後に、通水孔78に排水が残ってしまうことを防ぐことができる。
【0059】
特に、本発明の実施形態では、テーパー部92の周壁下端部と、テーパー部94の周壁上端部とが一致して菱形の孔壁130断面を形成しているので、通水孔78に進入した排水の表面張力をより小さくして通水性をより向上させることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0061】
なお、本発明の実施形態では、浴室10に設けられた排水口44に、ヘアキャッチャー16を設けた例を示したが、他の用途の排水口に設けてもよい。例えば、洗面台、台所の流し台に設けられた排水口にヘアキャッチャー16を設けてもよい。
【0062】
また、本発明の実施形態では、ヘアキャッチャー16によって、排水から毛髪を捕捉する例を示したが、本発明の実施形態のヘキャッチャー16によって、排水に混入された毛髪以外の混入物を排水から捕捉することができる。毛髪以外の混入物についても、排水の旋回流により混入物をまとめられた状態で捕捉することができる。特に、糸状の混入物であれば環状にまとめることが期待できる。
【0063】
また、水以外の液体からなる廃液に対しても本発明の実施形態のヘアキャッチャー16を適用することができる。すなわち、廃液口にヘアキャッチャー16を取り付けて、この廃液口へ排出される廃液から混入物を捕捉することができる。
【0064】
また、本発明の実施形態では、流入路74を旋回流路72の接線方向に沿って形成した例を示したが、流入路74は、旋回流路72に一方向(左旋回又は右旋回)の旋回流を発生させる方向から排水を流入させるように配置されていればよい。すなわち、流入路74は、平面視にて旋回流路72に対する法線上に沿って配置されていなければよい。流入路74を旋回流路72の接線方向に沿って形成すれば、流入路74から旋回流路72へ排水を滑らかに進入させることができ、旋回流路72を乗り越えて直接捕捉部68へ向かう排水が減るので、排水の旋回流を旋回流路72に効果的に発生させることができる。なお、流入路74は、排水が旋回流路72で左旋回するように配置してもよいし、右旋回するように配置してもよい。また、流入路74は、鍔部70上に、いくつ形成してもよい。
【0065】
また、本発明の実施形態では、鍔部70の点Pの高さを、排水枡14の底面88の高さと同じにした例を示したが、流入路74の先端部に位置する段部86の上縁の高さと、排水枡14の底面88の高さとを同じにしてもよい。
【0066】
また、本発明の実施形態では、点Pから旋回流路72の周方向半時計回りに向かって段部84上縁高さを徐々に低くした例を示したが、点Pから点Pまでの辺Qに沿って、旋回流路72と導水傾斜面76との間に仕切り壁を設けるようにしてもよい。
【0067】
また、本発明の実施形態では、捕捉部68の略全域に複数の通水孔78を形成した例を示したが、捕捉部68の一部に複数の通水孔78を形成してもよい。例えば、捕捉部68の中心部付近のみに複数の通水孔78を形成してもよい。
【0068】
また、本発明の実施形態では、通水孔78の孔形状を円形とした例を示したが、通水孔78の孔形状は、どのような形状であってもよい。通水孔78の孔形状は、通水性の高い円形とするのが好ましい。また、通水孔78の孔径は、捕捉対象となる混入物の流出を抑止できる最大の大きさ以下であればよい。通水孔78の孔径をできるだけ大きくした方が高い通水性が得られるので好ましい。
【0069】
また、本発明の実施形態では、捕捉部68上面の通水孔78の周りに、第1凹部としてのテーパー部92を形成した例を示したが、孔壁130の上端面の面積を小さくできれば、孔壁130上部をどのような形状にしてもよい。すなわち、孔壁130の断面形状において、孔壁130の上部が上下方向中央部よりも幅狭に(壁厚が薄く)なっていればよい。例えば、図5(a)の断面図に示すように、稜線を形成しないようにして、捕捉部68上面の通水孔78の周りにテーパー部112を形成するようにしてもよいし、図5(b)の断面図に示すように、捕捉部68上面の通水孔78の周りにL字状の段部114を形成するようにしてもよい。
【0070】
また、本発明の実施形態では、捕捉部68下面の通水孔78の周りに、第2凹部としてのテーパー部94を形成した例を示したが、孔壁130の下端面の面積を小さくできれば、孔壁130下部をどのような形状にしてもよい。すなわち、孔壁130の断面形状において、孔壁130の下部が上下方向中央部よりも幅狭に(壁厚が薄く)なっていればよい。例えば、図5(c)の断面図に示すように、稜線を形成しないようにして、捕捉部68下面の通水孔78の周りにテーパー部116を形成するようにしてもよいし、図5(d)の断面図に示すように、捕捉部68下面の通水孔78の周りにL字状の段部118を形成するようにしてもよいし、図5(e)の断面図に示すように、テーパー部92の周壁下端部と、テーパー部94の周壁上端部との間に、鉛直面120を有するようにしてもよい。テーパー部92の周壁下端部と、テーパー部94の周壁上端部とを一致させて菱形の孔壁130断面を形成すれば、通水孔78に進入した排水の表面張力をより小さくして通水性をより向上させることができる。
【0071】
また、本発明の実施形態で示した稜線96、98は(図4を参照のこと)、鋭利に尖らせてもよいし、丸みを持たせてもよい。また、円弧の頂部によって稜線96、98を構成するようにしてもよい。
【0072】
また、本発明の実施形態では、稜線96により、平面視にて正六角形を形成し、稜線98により、背面視にて正六角形を形成した例を示したが、稜線96、98により、平面視や背面視にて正六角形以外の多角形を形成するようにしてもよい。例えば、図6、7の平面図に示すように、稜線96、98により、平面視や背面視にて四角形や三角形を形成してもよい。稜線96により平面視にて正六角形を形成し、稜線96の描く全体形状を平面視にてハニカム形状とすることにより、通水孔78を平面視にて密に配置することができる。
【0073】
また、本発明の実施形態で示した第1凹部には、図8(a)、(b)の断面図に示すように、三角形や台形等の孔壁130断面を形成するテーパー部122、124が含まれる。すなわち、図8(a)、(b)のテーパー部122、124は、「捕捉部68上面の通水孔78の周りに形成された第1凹部」を意味する。また、図8(c)〜(f)の断面図に示すように、孔壁130の左右一方のみにテーパー部132、134、136、138を形成してもよい。すなわち、図8(c)、(d)の孔壁130は、「通水孔78により捕捉部68に形成され上部が幅狭の孔壁」を意味し、図8(e)、(f)の孔壁130は、「通水孔78により捕捉部68に形成され下部が幅狭の孔壁」を意味する。
【0074】
また、本発明の実施形態では、旋回流を生じさせた排水を捕捉部68内へ落とし込ませることにより、毛髪を環状等にまとめられた状態で捕捉部68の上面80に捕捉する例を示したが、捕捉部68は、上部や下部が幅狭の孔壁を有さないものであってもよく、そのような捕捉部においてもほぼ同様の効果を得ることができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
16 ヘアキャッチャー(混入物捕捉具)
44 排水口
68 捕捉部
70 鍔部
72 旋回流路
74 流入路
76 導水傾斜面
78 通水孔
90 排水孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口に配置され、形成された通水孔へ排水を通水させるとともに該排水中の混入物を捕捉する凹状の捕捉部と、
前記捕捉部の上端部外縁から張り出し、前記排水口に取り付けられる鍔部と、
前記捕捉部の上端部外縁に沿って前記鍔部に形成された環状の旋回流路と、
前記鍔部に形成され、前記鍔部の外部から前記旋回流路へ、前記旋回流路に旋回流を一方向へ発生させる方向から排水を流入させる流入路と、
を有する混入物捕捉具。
【請求項2】
前記流入路は、前記旋回流路の接線方向に沿って形成されている請求項1に記載の混入物捕捉具。
【請求項3】
前記鍔部に形成され、前記流入路へ向かって傾斜し該流入路へ排水を導水する導水傾斜面を有する請求項1又は2に記載の混入物捕捉具。
【請求項4】
前記導水傾斜面は、前記流入路へ向かう傾斜勾配より小さく前記旋回流路へ向かって傾斜している請求項3に記載の混入物捕捉具。
【請求項5】
前記導水傾斜面に排水孔が形成されている請求項3又は4に記載の混入物捕捉具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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