説明

添加剤の析出方法及び析出設備

【課題】添加剤を含む洗浄廃水から添加剤を除去する。
【解決手段】洗浄廃水89は、タンク102に貯留する。温調機103は、タンク102に貯留する洗浄廃水89の温度を調節し、添加剤を含む洗浄廃水89の温度を添加剤の融点よりも低くし、且つ、洗浄廃水89を過冷却状態に保持する。ポンプ102cによってタンク102からくみ上げられた洗浄廃水89は、シャワー104を介して、洗浄廃水89の液面に流下する。洗浄廃水89の液面への流下により、添加剤の過冷却状態が解除し、添加剤の洗浄廃水89への析出が促進する。本発明は、洗浄廃水89から添加剤の析出することが可能となるため、洗浄廃水89から添加剤の除去を容易にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添加剤の析出方法及び析出設備に関する。特に、溶液製膜方法で用いられる溶媒回収ラインの洗浄廃液に含まれる添加剤の析出方法及び析出設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーフイルム(以下、フイルムと称する)は、優れた光透過性や柔軟性および軽量薄膜化が可能であるなどの特長から光学機能性フイルムとして多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレートなどを用いたセルロースエステル系フイルムは、強靭性や低複屈折率であることから、写真感光用フイルムをはじめとして、近年市場が拡大している液晶表示装置(LCD)の構成部材である偏光板の保護フイルムまたは光学補償フイルムなどに用いられている。
【0003】
主なフイルムの製造方法としては、溶融押出方法と溶液製膜方法とがある。溶融押出方法とは、ポリマーをそのまま加熱溶解させた後、押出機で押し出してフイルムを製造する方法であり、生産性が高く、設備コストも比較的低額であるなどの特徴を有する。しかし、膜厚精度を調整することが難しく、また、フイルム上に細かいスジ(ダイライン)ができるために、光学機能性フイルムへ使用することができるような高品質のフイルムを製造することが困難である。一方、溶液製膜方法は、ポリマーと溶媒とを含んだポリマー溶液(ドープ)を支持体上に流延して形成した流延膜が自己支持性を有するものとなった後、これを支持体から剥がして湿潤フイルムとし、さらに、この湿潤フイルムを乾燥させてフイルムとする方法である。溶融押出方法と比べて、光学等方性や厚み均一性に優れるとともに、含有異物の少ないフイルムを得ることができるため、LCD用途などの光学機能性フイルムは、主に溶液製膜方法で製造されている。
【0004】
この溶液製膜方法は、セルローストリアセテートなどのポリマーをジクロロメタンや酢酸メチルを主溶媒とする混合溶媒に溶解した高分子溶液(以下、ドープと称する)を調製する。更に、このドープに所定の添加剤を混合し、流延ドープを調製する。流延ドープを流延ダイより流延ビードを形成させて、キャスティングドラムやエンドレスバンドなどの支持体上に流延して流延膜を形成する(以下、流延工程と称する)。その流延膜が支持体上で冷却され、自己支持性を有するものとなった後に、支持体から膜(以下、この膜を湿潤フイルムと称する)として剥ぎ取り、この湿潤フイルムを乾燥させた(以下、乾燥工程と称する)ものをフイルムとして巻き取る。
【0005】
乾燥工程では、乾燥室において湿潤フイルムに含まれる溶媒を蒸発させる。乾燥室内の雰囲気の溶媒除去能力を一定に保つため、乾燥室の雰囲気に含まれる気体の溶媒を定期的に回収する必要がある。この気体の溶媒の回収方法として、溶媒回収ラインを用いる方法を開示している。この溶媒回収ラインは、回収した乾燥室内の雰囲気に冷却処理を施すことにより、雰囲気に含まれる溶媒を液化して回収することができる。また、溶媒が除去された雰囲気は、再び乾燥室内に送られる。こうして、溶媒回収ラインは、乾燥室内の雰囲気の溶媒除去能力を一定に保つことができる。
【0006】
ところで、セルローストリアセテート製のフイルムの代表的な添加剤であるトリフェニルホスフェート(以下、TPPと称する)は、フイルムに難燃性、透明性、耐水性、柔軟性及び非粘着性を付与する可塑剤としてはたらく。このTPPは高い沸点(399℃)であるにも関わらず、一部が乾燥工程において溶媒と共に蒸発してしまうため溶媒回収ラインにおける冷却処理の際、溶媒の液化と共にTPPの析出が生じてしまう。溶媒回収ラインで析出したTPPは冷却処理を行う冷却設備や配管などに固着し、溶媒回収ラインの処理能力の低下を誘発する恐れがある。そのため、特許文献1では、溶媒回収ラインと共に、温水等を用いてこれら冷却設備や配管を定期的に洗浄する洗浄ラインを用いることにより、溶媒回収ラインに析出した添加剤を除去している。
【特許文献1】特開2003−165866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フイルムを連続的に大量に製造することができる溶液製膜方法を行うとき、上述の洗浄ラインを用いて、溶媒回収ラインの洗浄を連続で行うことが好ましい。したがって、溶媒回収ラインの洗浄処理後に生成する洗浄廃水から添加剤を除去して、これを新たな洗浄温水として、洗浄ラインで再利用することが好ましい。このような洗浄廃水からの添加剤の除去方法として、比重分離処理方式やろ過方式などが挙げられる。
【0008】
しかしながら、比重分離処理において、洗浄廃水から添加剤が沈降する速度は高温域(60〜80℃)で遅くなる傾向にあるため、洗浄廃水から添加剤を効率の良く除去することが困難である。また、ろ過方式を用いる場合、ろ過処理の使用に伴うろ材の交換や洗浄などのメンテナンス作業が必要になる。
【0009】
本発明は、上記問題を鑑みて、洗浄廃水の再利用のために添加剤を洗浄廃水から容易に析出させる添加剤の析出方法や析出設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の添加剤の析出方法は、溶媒と添加剤とを含む溶液であって、前記添加剤の融点よりも低い温度に、且つ、過冷却状態に保持される前記溶液に衝撃を与えることを特徴とする。
【0011】
シャワーを用いて、前記溶液を流下する、或いは、前記溶液に液を流下することにより、前記衝撃を前記溶液に与えることが好ましい。また、前記添加剤がトリフェニルホスフェートを含むことが好ましい。
【0012】
本発明の添加剤の析出設備は、溶媒と添加剤とを含む溶液であって、前記添加剤の融点よりも低い温度に、且つ、過冷却状態に保持される前記溶液に衝撃を与える衝撃付与手段を備えることを特徴とする。
【0013】
前記衝撃付与手段が、前記溶液が貯留する容器に液を流下するシャワーであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
溶媒と添加剤とを含む溶液が、前記添加剤の融点よりも低い温度、且つ、過冷却状態に保持されるため、溶液中に溶解する添加剤の一部または全部が、溶解せずに分散状態となる、または、液状でありながら微細な塊となった状態となる。そして、このような状態の溶液に衝撃を与えることにより、分散状態または微細な塊となった状態の添加剤を、固形の添加剤として析出することが容易になる。したがって、本発明に依れば、洗浄廃水に析出した添加剤を除去することが容易となり、溶液製膜における洗浄廃水の再利用にかかる製造コストを抑えることができる。
【0015】
また、本発明の添加剤の析出設備によれば、溶媒と添加剤とを含む溶液であって、前記添加剤の融点よりも低い温度に、且つ、過冷却状態に保持される前記溶液に衝撃を与える衝撃付与手段を備えるため、溶液中での分散を回避しつつ、添加剤を溶液中に析出することが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[ポリマー]
以下、本発明においてドープを調製する際に使用する原料について説明する。本実施形態では、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、セルローストリアセテート(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、AおよびBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90重量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。ただし、本発明に用いることができるポリマーは、セルロースアシレートに限定されるものではない。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0017】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位および6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
【0018】
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、2位のアシル置換度と称する)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、3位のアシル置換度と称する)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、6位のアシル置換度と称する)である。
【0019】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位および6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位,3位および6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
【0020】
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは、0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、より溶解性に優れた溶液(ドープ)を作製することができる。特に、非塩素系有機溶媒を使用すると、優れた溶解性を示し、低粘度で濾過性に優れるドープを作製することができる。
【0021】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター綿,パルプ綿のどちらから得られたものでもよいが、リンター綿から得られたものが好ましい。
【0022】
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定はされない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどが挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
【0023】
[溶媒]
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)およびエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明においてドープとは、ポリマーを溶媒に溶解または分散させることで得られるポリマー溶液または分散液を意味している。
【0024】
上記のハロゲン化炭化水素の中でも、炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フイルムの機械的強度および光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対して2〜25重量%が好ましく、より好ましくは、5〜20重量%である。アルコールとしては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0025】
最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない溶媒組成も検討されている。この場合には、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく、これらを適宜混合して用いる場合もある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステルおよびアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステルおよびアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−および−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も溶媒として用いることができる。
【0026】
[添加剤]
本発明で用いられる添加剤としては、可塑剤、紫外線吸収剤などがある。本発明のドープに用いられる添加剤としては、沸点が120℃以上のものを用いることが好ましい。添加剤の沸点が120℃未満であると、前述した添加剤除去方法を行う際に、溶媒と添加剤が同時に液化してしまい、その添加剤の除去処理が困難になる場合があるからである。可塑剤としては、リン酸エステル系(例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートなど)、フタル酸エステル系(例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、グリコール酸エステル系(例えば、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなど)及びその他の可塑剤を用いることができる。なお、本発明に用いられる添加剤のうちの1つにトリフェニルホスフェートを用いることが好ましい。
【0027】
ドープには、紫外線吸収剤を添加することもできる。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物及びその他の紫外線吸収剤を用いることができる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。
【0028】
さらにドープには、必要に応じて種々の添加剤、例えば、離型剤、剥離促進剤、フッ素系界面活性剤などをドープの調製前から調製後のいずれかの段階で添加してもよい。
【0029】
なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。また、溶媒および可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
【0030】
[溶液製膜工程]
本発明に係る添加剤除去設備を用いたフイルム製造設備10を図1に示し、セルロースアシレートフイルムの製造方法について説明する。
【0031】
フイルム製造設備10は、バンドゾーン11と乾燥ゾーン12とに分けられる。ドープ13が仕込まれている仕込みタンク14が、ポンプ15とフィルタ16とを介してフイルム製造設備10に接続している。また、仕込みタンク14には、撹拌棒17が取り付けられ、ドープ13を均一にする。前述したTACと溶媒とを混合し、TACが溶媒へ溶解したものをドープ13とする。ドープ13には、可塑剤及び紫外線吸収剤などの添加剤を混合することもできる。本発明において、ドープ13を調製する溶媒には、市販品の溶媒にフイルム製造設備10から回収された溶媒を混合して使用することができる。溶媒の回収については、後述する。
【0032】
図1において、バンドゾーン11には、ローラ20、21に掛け渡された流延バンド22が設けられており、この流延バンド22は、図示しない駆動装置により回転する。流延バンド22の上には、流延ダイ23が設けられている。ドープ13は、仕込みタンク14からポンプ15により送液され、フィルタ16で不純物が除去された後に流延ダイ23に送られる。流延ダイ23は、ドープ13を流延バンド22上に流延する。ドープ13は流延バンド22で搬送されながら徐々に乾燥し、剥ぎ取りローラ24によって流延バンド22から剥ぎ取られフイルム25が形成される。さらに、フイルム25は、テンタ26により所定の幅に引き伸ばされ、搬送されながら乾燥される。
【0033】
バンドゾーン11内では、ドープ13中の溶媒は、蒸発してガスとなって熱交換器40に送り出される。バンドゾーン11内では、乾燥初期であるため多量の溶媒が蒸発するため、多量の蒸発した有機溶媒を含んだガスは凝縮器41で凝縮液化され、液体は、回収溶媒42として凝縮回収される。また、液化しなかったガスは、送風器43により熱交換器40に送られて、加熱器45で加熱されて再度バンドゾーン11に送られ、乾燥風として再利用される。
【0034】
テンタ26から乾燥ゾーン12に送られたフイルム25は、乾燥ゾーン12内で、複数のローラ27に巻き掛けられて乾燥する。乾燥後のフイルム25は、巻き取り機28に巻き取られる。乾燥ゾーン12内の温度は、50〜150℃の範囲に制御されていることが、フイルム25の均一な乾燥のために好ましい。
【0035】
乾燥ゾーン12内で蒸発した溶媒を含み熱風であるガス(以下、熱風ガスと称する)50は、熱交換器51に送り込まれた後に、送風器52により冷却器53、前処理活性炭54、除湿器55、送風器56と順次送風される。この熱風ガス50が、熱交換器51、送風器52、冷却器53を通過する工程(以下、添加剤除去工程と称する)については、後で詳細に説明する。更に、前処理活性炭54は、添加剤除去工程を経た熱風ガス50に含まれる添加剤を取り除く。次に、除湿器55によって熱風ガス50中に含まれる水分が除去される。さらに、熱風ガス50は、送風器56により吸着層57、58、59のいずれかに切替バルブ(図示しない)により選択的に送られ、熱風ガス50中に含まれていた蒸発した有機溶媒が吸着層57、58、59によって吸着される。また、吸着処理後の熱風ガス50は、温度調節器60により所定の温度に調節され、ガス61となる。その後にガス(以下、冷風ガスと称する)61は、送風器62により熱交換器51に送り込まれ、前述した熱風ガス50と熱交換がなされ加熱された後に、加熱器63によって所定の温度まで加熱され、再度、乾燥ゾーン12内に送り込まれ、乾燥風として再利用される。このようにして、乾燥ゾーン12内の空気に含まれる溶媒の濃度を一定量に抑えることが可能となり、結果として、一定の溶媒除去能力を維持することができる。
【0036】
吸着層57、58、59に吸着された蒸発有機溶媒成分は、脱着ガス64により脱着し、凝縮器65へ送り出される。脱着ガス64は凝縮器65で凝縮液化され、液体は回収溶媒66として吸着回収される。また、凝縮器65で液化しないガス成分は、再度、送風器56に送り出され、吸着層57、58、59に送り込まれる。また、回収溶媒66は、図示しない溶媒処理装置により精製溶媒と廃液とに分別される。精製溶媒は、前述した回収溶媒42と共に、調製器に送り込まれる。調製器では、回収溶媒42、68の成分調整がなされ、前述したドープ調製溶媒として、仕込みタンク14に送られる。なお、廃液は、廃棄処理される。
【0037】
[添加剤除去工程]
添加剤除去工程について、熱交換器51、送風器52や冷却器53の要部を拡大した図2を参照して説明する。図2(A)に示すように、熱交換器51では、冷風ガス61との熱交換により、熱交換器51内の熱風ガス50の温度が下がる。ここで、熱風ガス50の温度が下がり過ぎると、熱交換器51との接触により熱風ガス50の温度が低下し、結果的に、添加剤が液化または固化し、熱交換器51のガスライン(図示しない)を閉塞するおそれがある。また、逆に熱交換器51において熱交換がほとんど行われないままの熱風ガス50を冷却器53に送風すると、冷却器53内で、熱風ガス50から添加剤が液化または固化し、冷却器53のラインを閉塞するおそれが生じる。そこで、本発明の添加剤除去工程においては、温度調節器60(図1参照)の温度調節器能を用いることで、熱交換器51の出口(2次側)51aの温度を制御することが好ましい。出口51aの温度T0は、熱風ガス50中に含まれる蒸発した添加剤の中で最も固形分率の高い物質の融点Mとしたときに、(M−20)≦T0≦Mの範囲にすることが好ましい。これは、最も固形分率が高い添加剤が、添加剤除去工程中のラインに固化付着すると、その工程中に与える影響が最も大きいためである。このように最も固形分率が高い添加剤の固化付着を抑制することにより、熱交換器51、冷却器53のガスラインの閉塞が抑制される。
【0038】
冷却器53には、熱風ガス50が通過するガス経路81が備えられ、ガス経路81には、所定の温度に保持される水(以下、冷水と称する)85を通す冷水配管86が取り付けられている。なお、図では冷水配管86は、1本のみを図示したが冷却効率の点からは、多数の冷水配管86が取り付けられていることが好ましい。なお、冷水85は、冷凍機(図示しない)で冷却され、約7℃の温度になる。ガス50は、冷水配管86により温度が下がり、蒸発していた添加剤の一部が液化し、冷却器53のガス経路81、冷水配管86の表面に付着する。なお、冷水85は、冷水配管86を通った後に、冷水戻り87となって冷凍機に送られ、再度冷凍機によって冷水として再生される。
【0039】
図2(B)に示すように、冷却器53のガス経路81内に洗浄水88を送液することにより、冷水配管86の表面に付着した添加剤を溶解し、除去することができる。添加剤を溶解した洗浄水88は、洗浄廃水89として、洗浄廃水処理ライン100へ送られる。洗浄廃水処理ライン100へ送られた洗浄廃水89には洗浄廃水処理が施され、洗浄廃水89に含まれる添加剤などの不純物が除去される。この洗浄廃水処理によって、不純物が除去された洗浄廃水89は、加熱等により所定範囲の温度に調節され、洗浄水88として再利用される。
【0040】
洗浄水88の温度は、添加剤の融点より高く、且つ、水の沸点未満であることが好ましい。洗浄水88の温度が添加剤の融点以下になると、冷水配管86に付着する添加剤を除去しにくいため好ましくない。一方、洗浄水88の温度が水の沸点以上になると、洗浄排水処理ライン100のポンプの一次側等にて、洗浄水88が沸騰するおそれがあるため好ましくない。したがって、添加剤がTPPである場合には、洗浄水88の温度は、50℃以上99℃以下であることが好ましく、80℃以上90℃以下であることがより好ましい。
【0041】
洗浄廃水処理ライン100は、図3のように、洗浄廃水89を貯留するタンク102と、タンク102内の洗浄廃水89の温度を調節する温調機103と、タンク102へ洗浄廃水89を流下するシャワー104とを備える。温調機103は、洗浄廃水89が過冷却状態になるように、且つ、その温度が添加剤の融点より低くなるように、タンク102内の洗浄廃水89の温度を調整する。洗浄廃水89の過飽和の程度は、洗浄廃水89に溶解する添加剤が、溶解せずに分散状態となる、または、液状でありながら微細な塊となった状態となるための駆動力となることから、これを式1で表される析出指数X1として定め、この析出指数X1が所定の範囲になるように洗浄廃水89の温度を調節することが好ましい。ここで、第1温度A1とは、温調機103により調節される洗浄廃水89の温度であり、第2温度A2とは、洗浄廃水89に含まれる添加剤量が全て洗浄廃水89に溶解する範囲の温度のうち最低の温度である。
(式1)X1=A2−A1
この析出指数X1が0℃以上20℃以下であることが好ましく、5℃以上10℃以下であることがより好ましい。X1が0℃未満である場合には、洗浄排水89に溶解する添加剤が、分散状態または微細な塊の状態とならず、X1が20℃を超えると、洗浄排水89の冷却負荷、及び再加熱負荷が大きくなり、エネルギー消費量が増加し、好ましくない。
【0042】
また、タンク102内の洗浄廃水89の温度は、溶媒の融点以上、添加剤の融点以下であることが好ましい。洗浄廃水89の温度が、添加剤の融点以上である場合には、添加剤の過冷却状態を維持することが困難になり、添加剤が固化せずに溶媒中に分散してしまい、洗浄廃水89から添加剤の除去が困難になるため好ましくない。
【0043】
過冷却状態とは、相転移が起こるはずの温度以下に冷却しても、もとの相のままに留まっている状態のことをいう。そして、本明細書では、溶液中に溶解する添加剤の一部または全部が、溶解せずに分散状態となる、または、液状でありながら微細な塊となった状態を、それぞれ過冷却状態に含む。
【0044】
タンク102は、配管102aを介してガス経路81と接続する。配管102aは、ガス経路81で生成した洗浄廃水89をタンク102へ送液する。タンク102は、配管102bを介してシャワー104と接続する。配管102bには、ポンプ102cが備えられる。ポンプ102cは、配管102bを介して、タンク102に貯留する洗浄廃水89を、所定の流速でシャワー104へ送液する。シャワー104から流出する洗浄廃水89の流速は、0.1m/秒以上10m/秒以下であることが好ましく、1m/秒以上5m/秒以下であることがより好ましい。シャワー104から流出する洗浄廃水89の流速が0.1m/秒未満である場合には、洗浄廃水89から添加剤が十分に析出せず、また、析出物に気泡が付着しないため好ましくない。シャワー104から流出する洗浄廃水89の流速が10m/秒より大きい場合には、ポンプ102cの負荷が大きいこと、また、洗浄廃水89中の析出物が粉砕されやすくなり、洗浄廃水89からの除去が困難になるため好ましくない。
【0045】
シャワー104は、洗浄廃水89を流入するための流入孔と、洗浄廃水89を流出するための流出孔と、流入孔と流出孔とを接続する内部孔を備える。流入孔は、配管102bと接続する。シャワー104から流下した洗浄廃水89は、水滴となって、タンク102における洗浄廃水89の液面に一定角度で滴下する。また、シャワー104は、流出孔とタンク102に貯留する洗浄廃水89の液面との距離がH1になるように配される。このH1が、5cm以上20cm以下であることが好ましい。H1が5cm未満である場合には、洗浄廃水89の液面において、洗浄廃水89が滴下する面積が不足するため、洗浄廃水89中に流下するときに、気泡を効果的に生成することができない。一方、H1が、20cmより大きい場合には、水圧の減衰により析出物の析出促進作用が弱くなるため好ましくない。また、配管102b及びシャワー104の内部孔などの温度を温調機103により調節し、配管102bやシャワー104内を通ずる洗浄廃水89を過冷却状態且つ添加剤の融点よりも低い温度に保持することが好ましい。
【0046】
タンク102には、洗浄廃水89から析出し、気泡が付着し水面に浮上する析出物をさらうスクレーパ106を備える。スクレーパ106は、図示しない制御部と接続する。制御部の制御の下、スクレーパ106は、タンク102に貯留する洗浄廃水89の液面近傍をさらうように移動し、洗浄廃水89に析出した析出物や不純物などをさらう。こうして、スクレーパ106によりさらわれた析出物等は、廃水108として、タンク102の近傍に配される廃棄タンク109に送り出される。この廃水108に廃棄処理を施しても良いし、再利用のための処理を施しても良い。
【0047】
また、タンク102は、配管110を介してガス経路81と接続する。配管110は、ポンプ110aとフィルタ110bとヒータ110cとを備える。フィルタ110bは、残留する添加剤を洗浄廃水89から取り除く。ヒータ110cは、洗浄廃水89を所定の温度まで加熱する。こうして、洗浄廃水89が洗浄水88となる。ポンプ110aは、配管110を介して、洗浄廃水処理により洗浄廃水89から生成した洗浄水88をガス経路81へ送液する。
【0048】
次に洗浄廃水処理の詳細について説明する。シャワー104に送られた洗浄廃水89は、流出孔を介して、タンク102に貯留する洗浄廃水89の液面に流下する。洗浄廃水89の流下により、洗浄廃水89に含まれる添加剤の過冷却状態が解除される。過冷却状態の程度、すなわち、洗浄廃水89に溶解している添加剤の量と洗浄廃水89の溶解度との差が、過冷却状態が解除したときの添加剤の析出の駆動力となる。したがって、過冷却状態の添加剤を含む洗浄廃水89に洗浄廃水89を流下することより、添加剤の過冷却状態を解除し、添加剤の析出をより顕著に発現することができる。
【0049】
また、本発明では、洗浄廃水89に含有する添加剤を過冷却状態に保持した状態で、衝撃を与えるため、添加剤の洗浄廃水89からの析出を促進することができる。洗浄水88は、含有する添加剤の融点より20℃以上高いため、ガス経路81から送られる洗浄廃水89も同様に高温である。洗浄廃水89に含有する添加剤は、低温になることにより析出しやすくなる。こうして、洗浄廃水処理やスクレーパ106により、洗浄廃水89から添加剤を除去することができる。したがって、本発明の洗浄廃水処理ライン100によれば、高い効率で洗浄廃水処理を行うことが可能になる。
【0050】
また、タンク102には、タンク102内を第1範囲と第2範囲との2つの範囲に仕切る仕切り板115が設けてある。そして、配管102aを用いて、ガス通路81で生成した洗浄廃水89を第1範囲に供給し、シャワー104により第1範囲に洗浄廃水89を流下している。こうすることにより、シャワー104による衝撃を、ガス通路81からの新たな洗浄廃水89に与えることができるため、洗浄廃水89から添加剤の析出を効率よく行うことができる。
【0051】
また、添加剤を含む洗浄廃水89は洗浄液88に比べ沈降しやすい場合には、配管110を第2範囲に配することにより、第2範囲内にある洗浄廃水89の上澄み液、すなわち、シャワー104からの流下により生成した洗浄水88をガス通路81に送ることができる。更に、配管102aをタンク102の底面近傍に設けることにより、タンク102に沈降し、析出の核となる添加剤を含む洗浄廃水89をシャワー104から流下することが可能となるため、洗浄廃水89からの添加剤の析出を効率よく行うことができる。
【0052】
上記実施形態では、洗浄廃水89に衝撃を与える衝撃付与手段としてシャワー104を用いたが、本発明はこれに限られず、シャワー104の代わりに、タンク102内の洗浄廃水89を攪拌する攪拌羽を用いても良い。攪拌羽の回転数が60rpm以上600rpm以下であることが好ましい。攪拌羽の回転数が60rpm未満の場合は、十分に添加剤が析出しないため好ましくない。また、攪拌羽の回転数が600rpmを超える場合は、モータ負担が大きいこと、また、攪拌羽との接触により析出物が粉砕され、洗浄廃水89からの除去が困難になるため好ましくない。
【0053】
なお、スクレーパ106に代えて、液面近傍の析出物を所定の方向に流すことができる流動手段を用いても良い。流動手段としては、スクリューや、液面上を移動する部材でもよい。
【実施例1】
【0054】
以下、本発明について実施例1を挙げて説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。説明は本発明に係る実施例1で詳細に行い、本発明に係る実施例2、及び比較例である実施例3ないし実施例5については、後に実験条件と結果とをまとめて表1に示す。
【0055】
次に、本発明の実施例を説明する。フイルム製造に使用したポリマー溶液(ドープ)の調製に際しての配合を下記に示す。
【0056】
[組成]
セルローストリアセテート(置換度2.84、 粘度平均重合度306、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体) 100質量部
ジクロロメタン(第1溶媒) 320質量部
メタノール(第2溶媒) 83質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 3質量部
可塑剤A(トリフェニルホスフェート) 7.6質量部
可塑剤B(ジフェニルホスフェート) 3.8質量部
UV剤a:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾ
トリアゾール 0.7質量部
UV剤b:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−
クロルベンゾトリアゾール 0.3質量部
クエン酸エステル混合物(クエン酸、モノエチルエステル、ジエチルエステル、トリエチ
ルエステル混合物) 0.006質量部
微粒子(二酸化ケイ素(平均粒径15nm)、モース硬度 約7) 0.05質量部
【0057】
[セルローストリアセテート]
なお、ここで使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1質量%以下であり、Ca含有率が58ppm、Mg含有率が42ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンを15ppm含むものであった。また6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。また、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8質量%であり、その重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は160℃、結晶化発熱量は6.4J/gであった。このTACは、綿から採取したセルロースを原料として合成されたものである。以下の説明において、これを綿原料TACと称する。
【0058】
(1−1)ドープ仕込み
攪拌羽根を有する4000Lのステンレス製溶解タンクで前記複数の溶媒を混合してよく攪拌し、混合溶媒とした。なお、溶媒の各原料としては、すべてその含水率が0.5質量%以下のものを使用した。次に、TACのフレーク状粉体をホッパから徐々に添加した。TAC粉末は、溶解タンクに投入されて、最初は5m/秒の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌機及び中心軸にアンカー翼を有する攪拌機を周速1m/秒で攪拌する条件下で30分間分散した。分散開始時の温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。さらに、全体が2000kgとなるように添加剤タンク送液量を調整しながら、予め調製された添加剤溶液を添加剤タンクに送液した。添加剤溶液の分散を終了した後に、高速攪拌は停止した。そして、アンカー翼の周速を0.5m/秒としてさらに100分間攪拌し、TACフレークを膨潤させて膨潤液を得た。膨潤終了までは窒素ガスにより溶解タンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際の溶解タンクの内部は、酸素濃度が2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。また膨潤液中の水分量は0.3質量%であった。
【0059】
(1−2)溶解・濾過
膨潤液を溶解タンクからジャケット付配管に送液した。ジャケット付き配管で膨潤液を50℃まで加熱して、更に2MPaの加圧下で90℃まで加熱し、完全溶解した。このときの加熱時間は15分であった。次に溶解された液を温調機で36℃まで温度を下げ、公称孔径8μmの濾材を有する濾過装置を通過させドープ(以下、濃縮前ドープと称する)を得た。この際、濾過装置における1次側圧力は1.5MPa、2次側圧力を1.2MPaとした。高温にさらされるフィルタ、ハウジング及び配管はハステロイ(商品名)合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の伝熱媒体を流通させるジャケットを備えたものを使用した。
【0060】
(1−3)濃縮・濾過・脱泡・添加剤
このようにして得られた濃縮前ドープを80℃で常圧とされたフラッシュ装置内でフラッシュ蒸発させて、蒸発した溶媒を凝縮器で回収した。フラッシュ後のドープの固形分濃度は、21.8質量%となった。なお、凝縮された溶媒はドープ調製用溶媒として再利用すべく回収装置で回収した。再生装置で再生した後に溶媒タンクに送液した。回収装置,再生装置では、蒸留や脱水を行った。フラッシュ装置のフラッシュタンクには攪拌軸にアンカー翼を備えた攪拌機(図示しない)を設け、その攪拌機により周速0.5m/秒でフラッシュされたドープを攪拌して脱泡を行った。このフラッシュタンク内のドープの温度は25℃であり、タンク内におけるドープの平均滞留時間は50分であった。このドープを採取して25℃で測定した剪断粘度は、剪断速度10(秒−1)で450Pa・sであった。
【0061】
次に、このドープに弱い超音波を照射することにより泡抜きを実施した。その後にポンプを用いて1.5MPaに加圧した状態で、濾過装置を通過させた。濾過装置では、最初公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルタを通過させ、ついで同じく10μmの焼結繊維フィルタを通過させた。それぞれの1次側圧力は1.5MPa,1.2MPaであり、2次側圧力は1.0MPa,0.8MPaであった。濾過後のドープ温度を36℃に調整して2000Lのステンレス製仕込みタンク13内に原料ドープを送液して貯蔵した。仕込みタンク13は中心軸にアンカー翼を備えた攪拌機を有しており、周速0.3m/秒で常時攪拌を行った。なお、濃縮前ドープからドープを調製する際に、ドープ接液部には、腐食などの問題は全く生じなかった。
【0062】
(1−4)吐出・直前添加・流延・ビード減圧
図1に示すフイルム製造設備10を用いてフイルム25を製造した。仕込みタンク13内のドープ13を高精度のギアポンプで濾過装置へ送った。このギアポンプは、ポンプ39bの1次側を増圧する機能を有しており、1次側の圧力が0.8MPaになるようにインバーターモータによりギアポンプの上流側に対するフィードバック制御を行い送液した。ギアポンプは容積効率99.2%、吐出量の変動率0.5%以下の性能であるものを用いた。また、吐出圧力は1.5MPaであった。そして、濾過装置を通ったドープ13を流延ダイ23に送液した。
【0063】
流延ダイ23は、幅が1.8mであり乾燥されたフイルム25の膜厚が80μmとなるように、流延ダイ23の吐出口でドープ13の流量を調整して流延を行った。また流延ダイ23の吐出口からのドープ13の流延幅を1700mmとした。ドープ13の温度を36℃に調整するために、流延ダイ23にジャケット(図示しない)を設けてジャケット内に供給する伝熱媒体の入口温度を36℃とした。
【0064】
流延ダイ23とはすべて、製膜中には36℃に保温した。流延ダイ23は、コートハンガータイプのダイを用いた。流延ダイ23には、厚み調整ボルトが20mmピッチに設けられており、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。このヒートボルトは、予め設定したプログラムによりギアポンプの送液量に応じたプロファイルを設定することもでき、フイルム製造ライン20に設置した赤外線厚み計(図示しない)のプロファイルに基づいた調整プログラムによってフィードバック制御も可能な性能を有するものを用いた。端部20mmを除いたフイルムにおいては、50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向における厚みのばらつきが3μm/m以下となるように調整した。また、全体厚みは±1.5%以下に調整した。
【0065】
また、流延ダイ23の1次側には、この部分を減圧するための減圧チャンバ51を設置した。この減圧チャンバ51の減圧度は、流延ビードの前後で1Pa〜5000Paの圧力差が生じるように調整され、この調整は流延速度に応じてなされる。その際に、流延ビードの長さが20mm〜50mmとなるように流延ビードの両面側の圧力差を設定した。また、減圧チャンバ51は、流延部周囲のガスの凝縮温度よりも高い温度に設定できる機構を具備したものを用いた。ダイ吐出口におけるビードの前面部、背面部にはラビリンスパッキン(図示しない)を設けた。また、流延ダイのダイ吐出口の両端には開口部を設けた。さらに、流延ダイ23には、流延ビードの両縁の乱れを調整するためのエッジ吸引装置(図示しない)を取り付けた。
【0066】
(1−5)流延ダイ
流延ダイ23の材質は、熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下の析出硬化型のステンレス鋼を用いた。これは、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316製と略同等の耐腐食性を有するものであった。また、ジクロロメタン,メタノール,水の混合液に3ヶ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有していた。流延ダイ23の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは1.5mmに調整した。流延ダイ23のリップ先端の接液部の角部分については、Rはスリット全巾に亘り50μm以下になるように加工されているものを用いた。流延ダイ23内部でのドープ13の剪断速度は1(1/秒)〜5000(1/秒)の範囲であった。また、流延ダイ23のリップ先端には、溶射法によりWC(タングステンカーバイト)コーティングをおこない硬化膜を設けた。
【0067】
(1−6)金属支持体
支持体として幅2.1mで長さが70mのステンレス製のエンドレスバンドを流延バンド22として利用した。流延バンド22は、厚みが1.5mm、表面粗さが0.05μm以下になるように研磨した。その材質はSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度を有するものを用いた。流延バンド22の全体の厚みムラは0.5%以下であった。流延バンド22は、2個の回転ローラ20,21により駆動させた。その際の流延バンド22の搬送方向における張力が1.5×105 N/m2 になるように調整した。また、流延バンド22と回転ローラ20,21との相対速度差が0.01m/分以下になるように調整した。このときに、流延バンド22の速度変動を0.5%以下とした。また1回転の幅方向の蛇行が、1.5mm以下に制限されるように流延バンド22の両端位置を検出して制御した。流延ダイ23の直下におけるダイリップ先端と流延バンド22との上下方向の位置変動は200μm以下にした。流延バンド22は、風圧変動抑制手段(図示しない)を有したベルトゾーン11内に設置した。この流延バンド22上に流延ダイ23からドープ13を流延した。
【0068】
回転ローラ20,21は、流延バンド22の温度調整を行うことができるように、内部に伝熱媒体を送液できるものを用いた。流延ダイ23側の回転ローラ21には5℃の伝熱媒体を流し、他方の回転ローラ20には乾燥のために40℃の伝熱媒体を流した。流延直前の流延バンド22中央部の表面温度は15℃であり、その両側端の温度差は6℃以下であった。なお、流延バンド22には、表面欠陥がないものが好ましく、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm〜30μmのピンホールは1個/m2以下、10μm未満のピンホールは2個/m2以下であるものを用いた。
【0069】
(1−7)流延乾燥
バンドゾーン11の温度は、温調設備を用いて35℃に保った。流延バンド22上に流延されたドープ13から形成された流延膜には、最初に流延膜に対して平行に流れる乾燥風を送り、流延膜を乾燥した。この乾燥風からの流延膜への総括伝熱係数は24kcal/(m2・hr・℃)であった。乾燥風の温度は、流延バンド22上部の上流側の送風口からは135℃の乾燥風を送風した。また下流側の送風口からは140℃の乾燥風を送風し、流延バンド22下部の送風口からは65℃の乾燥風を送風した。それぞれの乾燥風の飽和温度は、いずれも−8℃付近であった。流延バンド22上での乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、この酸素濃度を5vol%に保持するために空気を窒素ガスで置換した。また、バンドゾーン11内の溶媒を凝縮回収するために、凝縮器(コンデンサ)を設け、その出口温度を−10℃に設定した。
【0070】
流延後5秒間は乾燥風が、直接に流延ビード及び流延膜に当たらないように遮風板を設置して、流延ダイ23近傍の静圧変動を±1Pa以下に抑制した。流延膜52中の溶媒比率がフイルム25として剥ぎ取った。なお、この乾量基準による溶媒含有率は、サンプリング時におけるフイルム重量をx、そのサンプリングフイルムを乾燥した後の重量をyとするとき{(x−y)/y}×100で算出される値である。また剥取テンションは1×102N/m2あり、剥取不良を抑制するために流延バンド22の速度に対して剥取速度(剥取ローラドロー)は100.1%〜110%の範囲で適切に調整した。剥ぎ取ったフイルム25の表面温度は15℃であった。流延バンド22上での乾燥速度は、平均60質量%(乾量基準溶媒)/分であった。乾燥により発生した溶媒ガスは−10℃の凝縮器66で凝縮液化して回収装置で回収した。回収された溶媒は、水分量が0.5%以下となるように調整した。また、溶媒が除去された乾燥風は、再度加熱して乾燥風として再利用した。フイルム25を渡り部のローラを介して搬送し、テンタ式乾燥機26に送った。この渡り部では送風機から40℃の乾燥風をフイルム25に送風した。なお、渡り部のローラで搬送している際に、フイルム25に約30Nのテンションを付与した。
【0071】
(1−8)テンタ搬送・乾燥・耳切
テンタ式乾燥機26に送られたフイルム25は、クリップでその両端を固定されながらテンタ式乾燥機26の乾燥ゾーン内を搬送され、この間に乾燥風により乾燥された。クリップは、20℃の伝熱媒体の供給により冷却した。クリップの搬送は、チェーンで行い、そのスプロケットの速度変動は0.5%以下であった。また、テンタ式乾燥機26内を3ゾーンに分け、それぞれのゾーンの乾燥風温度を上流側から90℃,110℃,120℃とした。乾燥風のガス組成は−10℃における飽和ガス濃度とした。テンタ式乾燥機26内での平均乾燥速度は120質量%(乾量基準溶媒)/分であった。テンタ式乾燥機26の出口ではフイルム25内の残留溶媒量が7質量%となるように、乾燥ゾーンの条件を調整した。テンタ式乾燥機26内では搬送しつつ幅方向に延伸も行った。なお、この延伸前のフイルム25の幅を100%としたとき、延伸後の幅が103%となるように延伸した。剥取ローラ24からテンタ式乾燥機26の入口に至るまでの延伸率(テンタ駆動ドロー)は102%とした。
【0072】
テンタ式乾燥機26内での延伸率は、クリップによる噛み込み開始位置から10mm以上離れた位置の任意の2点における各実質延伸率の差異が10%以下であり、かつ20mm離れた任意の2点の延伸率の差は5%以下であった。また、テンタ式乾燥機26の入口から出口までの長さに対する、クリップ挟持開始位置から挟持解除位置までの長さの割合は90%とした。テンタ式乾燥機26内で蒸発した溶媒は−10℃の温度で凝縮させ液化して回収した。凝縮回収用に凝縮器(コンデンサ)を設け、その出口温度は−8℃に設定した。そして凝縮溶媒は、含まれる水分量が0.5質量%以下に調整されて再使用された。そして、テンタ式乾燥機26からフイルム25として送り出した。
【0073】
テンタ式乾燥機26の出口から30秒以内にフイルム25の両端の耳切を耳切装置で行った。NT型カッターにより両側50mmの耳をカットし、カットした耳はカッターブロワ(図示しない)によりクラッシャ35aに風送して平均80mm2 程度のチップに粉砕した。このチップは、再度ドープ調製用原料としてTACフレークと共にドープ製造の際の原料として利用した。テンタ式乾燥機26の乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、酸素濃度を5vol%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。後述する乾燥室で高温乾燥させる前に、100℃の乾燥風が供給されている予備乾燥室(図示しない)でフイルム25を予備加熱した。
【0074】
(1−9)後乾燥・除電
フイルム25を乾燥ゾーン12で高温乾燥した。乾燥ゾーン12を4区画に分割して、上流側から120℃,130℃,130℃,130℃の乾燥風を送風機(図示しない)から給気した。フイルム25のローラ36aによる搬送テンションを100N/mとして、最終的に残留溶媒量が0.3質量%になるまで約10分間乾燥した。ローラ36aのラップ角度(フイルムの巻き掛け中心角)は、90度および180度とした。ローラ36aの材質はアルミ製もしくは炭素鋼製であり、表面にはハードクロム鍍金を施した。ローラ36aの表面形状はフラットなものとブラストによりマット化加工したものとを用いた。ローラ36aの回転によるフイルム位置の振れは、全て50μm以下であった。また、テンション100N/mでのローラ撓みは0.5mm以下となるように選定した。
【0075】
乾燥したフイルム25を第1調湿室(図示しない)に搬送した。乾燥ゾーン12と第1調湿室との間の渡り部には、110℃の乾燥風を給気した。第1調湿室には、温度50℃、露点が20℃の空気を給気した。さらに、フイルム25のカールの発生を抑制する第2調湿室(図示しない)にフイルム25を搬送した。第2調湿室では、フイルム25に直接90℃,湿度70%の空気をあてた。
【0076】
(1−10)ナーリング、巻取条件
調湿後のフイルム25は、冷却室で30℃以下に冷却した後に耳切装置(図示しない)で再度両端の耳切りを行った。搬送中のフイルム25の帯電圧は、常時−3kV〜+3kVの範囲となるように強制除電装置(除電バー)を設置した。さらにフイルム25の両端にナーリング付与ローラでナーリングの付与を行った。ナーリングはフイルム25の片側からエンボス加工を行うことで付与し、ナーリングを付与する幅は10mmであり、凹凸の高さがフイルム25の平均厚みよりも平均12μm高くなるようにナーリング付与ローラ66による押し圧を設定した。
【0077】
そして、フイルム25を巻取室に搬送した。巻取室38は、室内温度28℃,湿度70%に保持した。巻取室の内部には、フイルム25の帯電圧が−1.5kV〜+1.5kVとなるようにイオン風除電装置(図示しない)も設置した。このようにして得られたフイルム(厚さ80μm)の製品幅は、1475mmとなった。巻取ローラの径は169mmのものを用いた。
【0078】
次に、添加剤除去工程及び洗浄廃水処理の詳細について説明する。
【0079】
乾燥ゾーン12内で蒸発した溶媒を含み熱風である熱風ガス50は、熱交換器51に送り込まれた後に、送風器52により冷却器53に送風した。冷却器53では、7℃の冷水85が冷水配管86を介して熱風ガス50を冷却した。この冷却により、冷水配管86にはTPPが液化し、冷水配管86の表面にTPPが付着した。こうして、熱風ガス50からTPPが除去された。TPPが除去された熱風ガス50は、冷風ガス61となって加熱器63を介して、乾燥ゾーン12へ送られた。また、冷却器53において、TPPが付着した冷水配管86に略80℃の洗浄水88を送った。この洗浄水88は、冷水配管86に付着したTPPを除去した。そして、除去されたTPPは、洗浄温水とともに洗浄廃水89となって洗浄廃水処理ライン100へ送られた。
【0080】
洗浄廃水89は、配管102aを介してタンク102へ送った。温調機103は、タンク102に貯留する洗浄廃水89の温度A1を略40℃に保持した。また、このときの洗浄廃水89の温度A2は、略48℃であった。こうして、TPPに含まれる洗浄廃水89の温度がTPPの融点(略49℃)以下になり、且つ、過冷却状態に保持した。
【0081】
シャワー104は、1m/秒以上20m/秒以下の流速V1で洗浄廃水89をタンク102に貯留する洗浄廃水89の液面に流下した。この液の流下により、TPPに含まれる洗浄廃水89の過冷却状態が解除され、洗浄廃水89中にTPPが析出した。また、洗浄廃水89の流下により、タンク102に貯留する洗浄廃水89に気泡が発生し、この気泡がTPPの析出物に付着した。スクレーパ106は、気泡が付着して洗浄廃水89に浮上した析出物を廃水108として廃棄タンク109へ送り出し、タンク102に貯留する洗浄廃水89から洗浄水88と廃水108とにわけた。このようにして得られた洗浄水88は、配管110により、冷却器53のガス経路81に送られ、添加剤除去処理の洗浄水として再利用された。
【実施例2】
【0082】
洗浄廃水処理回収ライン100のシャワー104に代えて、タンク102内に攪拌羽を設けた。そして、この攪拌羽の回転数R1を60rpmにして、タンク102に貯留する洗浄廃水89を攪拌したこと以外は、実施例1と同様にして、溶液製膜方法、及び洗浄廃水から添加剤の除去を行った。
【実施例3】
【0083】
温調機103により、タンク102に貯留する洗浄廃水89の温度A1を略50℃に保持したこと以外は、実施例1と同様にして、溶液製膜方法、及び洗浄廃水から添加剤の除去を行った。
【実施例4】
【0084】
実施例2において、攪拌羽による攪拌を行わなかったこと以外は、実施例2と同様にして、溶液製膜方法、及び洗浄廃水から添加剤の除去を行った。
【実施例5】
【0085】
実施例2において、温調機103が、タンク102に貯留する洗浄廃水89の温度A1を略50℃に保持したこと及び攪拌羽による攪拌を行わなかった以外は、実施例2と同様にして、溶液製膜方法、及び洗浄廃水から添加剤の除去を行った。
【0086】
(評価)
上記実施例1ないし5について得られた各凝縮液からの析出物について次のような評価を行った。以下に、評価内容の詳細及び、各実施例における評価結果をまとめた表1を示す。
【0087】
1.TPPの析出
タンク102に貯留する洗浄廃水89から添加剤が析出しているか否かを調べた。洗浄廃水89からの析出物が目視にて確認できた場合には○とし、目視にて確認できなかった場合には、×とした。
【0088】
2.フィルタの寿命
洗浄廃水処理ライン100を連続運転したときに、添加剤除去用のフィルタ110bの寿命が7日以上であったものを○とし、寿命が7日未満であったものを×とした。ここでフィルタの寿命とは、許容限界差圧までの到達時間のことを指す。
【0089】
【表1】

【0090】
各実施例における評価結果について表1に示す。
【0091】
本発明により、添加剤を含む廃水の温度を添加剤の融点よりも低く、且つ廃水を過冷却状態にした後、過冷却状態を解除するための衝撃を廃水にあてることにより、添加剤を分散させずに、容易に析出することができる。したがって、廃水から添加剤を容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】フイルム製造設備の概要を示す説明図である。
【図2】(A)は、熱風ガスが冷却器により冷却される様子の概要を示す説明図である。(B)は、洗浄水により配管に付着した添加物などを溶解する様子の概要を示す説明図である。
【図3】本発明の洗浄廃水処理ラインの概要を示す説明図である。
【符号の説明】
【0093】
10 フイルム製造設備
12 乾燥ゾーン
13 ドープ
50 熱風ガス
51 熱交換器
52 送風器
53 冷却器
81 ガス配管
85 冷水
86 冷水配管
88 洗浄水
89 洗浄廃水
100 洗浄廃水処理ライン
102 タンク
102c ポンプ
103 温調機
104 シャワー
106 スクレーパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒と添加剤とを含む溶液であって、
前記添加剤の融点よりも低い温度に、且つ、過冷却状態に保持される前記溶液に衝撃を与えることを特徴とする添加剤の析出方法。
【請求項2】
シャワーを用いて、前記溶液を流下する、或いは、前記溶液に液を流下することにより、前記衝撃を前記溶液に与えることを特徴とする請求項1記載の添加剤の析出方法。
【請求項3】
前記添加剤がトリフェニルホスフェートを含むことを特徴とする請求項1または2記載の添加剤の析出方法。
【請求項4】
溶媒と添加剤とを含む溶液であって、
前記添加剤の融点よりも低い温度に、且つ、過冷却状態に保持される前記溶液に衝撃を与える衝撃付与手段を備えることを特徴とする添加剤の析出設備。
【請求項5】
前記衝撃付与手段が、前記溶液が貯留する容器に液を流下するシャワーであることを特徴とする請求項4記載の添加剤の析出設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−160514(P2009−160514A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289(P2008−289)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)