説明

添加剤を含有するタバコ煙フィルターまたはフィルターエレメント

タバコ煙フィルターで、繊維、フィラメントまたはフィルムとしての表面上に添加剤を有し、このタバコ煙フィルターの吸込み抵抗とタバコ煙フィルター中の添加剤の質量が、次式(I)Mad/Δp>1mg/daPA(I)(式中、Δpは吸込み抵抗[daPA]で、これは7.8mmのフィルター径での換算値として使用され、Madは前記添加剤の質量[mg])を満たすものが、開示されている。さらにこのタバコ煙フィルターは、チャネル構造を有し、フィルター材料は2次元構造体として提供されている。前記タバコ煙フィルターは喫煙中の吸込み抵抗が低く、濾過効果が特に高く、製造が比較的容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタバコ煙フィルターまたはフィルターエレメントに関し、これらは一体に構成され、紡糸されること、または処理されてフィルムになることが可能なポリマー系またはポリマー混合物系の、繊維、フィラメントまたはフィルムおよび1つまたはそれより多くの添加剤を含有する。
【背景技術】
【0002】
上記タイプのタバコ煙フィルターは当分野で知られているものである。ここで、「一体に」とは、本タバコ煙フィルターが、長軸方向に一様に作製されており、かつフィルターエレメントをこれ以上特定化しなくても、製造できるようになっていることと理解すべきである。ここで、いわゆる「チャンバーフィルター」と異なる重要な違いがある。すなわち、「チャンバーフィルター」では、長手方向に互いに距離をおいた従来からのフィルター材料からのフィルターエレメントどうしの間に配した包み紙によって、外周方向に限定されたチャンバーを作成するものとなっている。このチャンバーは、粒状活性炭等の添加剤で充填してもよい。
【0003】
これまで、特に多孔性エレメントを効率的に使用できるフィルター構造を設計しようという試みが数多くなされてきた。当該チャンバーフィルターの構造は、含まれている活性炭の効率的利用という点では不利である。つまり、このチャンバーへの充填程度に制限があり、かつ活性炭粒が比較的粗いため、煙の一部はチャンバーの未充填の部分を通り抜けてしまい、その結果、活性炭と直接接触しないことになる。さらに活性炭は、細粒化すると吸込み抵抗が増大し、この状態は喫煙者にとって容認しにくいため、任意に細粒化できないのである。この点、EPA−0 014 477に記載されたフィルター構造はこれよりは有利に機能する。この構造では、フィルター材の繊維またはフィラメント内で確実に活性炭粒子がほぼ均一に分布するように、粒状活性炭をフィルターエレメント内で分散させており、ここではまた、繊維またはフィラメントも、均一に分布されている。しかし、こうして煙の通り抜けをなくしても、前述の粒子をタバコ煙フィルターに確実に付着させるためには、添加剤粒子を粗くすることがなお必要である。したがってこのフィルター構造にも、粗い活性炭粒子に起因する不利益が伴う。
【0004】
タバコ煙フィルターまたはそれらの使用法に関して、および本発明の背景について以下に説明する。フィルター付きタバコは、その吸い口端部にタバコ煙フィルターがあり、これによって、シガレットのタバコ燃焼生成物の少なくとも一部分を遮断して、喫煙中の燃焼生成物の吸入を防ぐものである。他方で、タバコ煙フィルターがタバコ煙の風味に与える影響は、喫煙者から肯定的な評価を受けるようなものにすべきである。フィルター付きタバコには、タバコ煙フィルターが多孔性粒子状添加剤で処理されたものがある。このようなタバコ煙フィルターまたはタバコ煙フィルターエレメントは、粒子状添加剤を含まないタバコ煙フィルターと比較して、そのフィルター性能が増大される。この効果は多くの場合、多孔性添加剤がそれらの細孔内表面でガス状燃焼生成物を優先的に吸着し、煙中のこれらの濃度が減少するということで説明がつく。この種のタバコ煙フィルターの中で最も代表的なのは、多孔性粒子状添加剤として活性炭を使用するというものである。他には、DE−A−2 658 479に記述されているようなタバコ煙フィルターで、シリコン、アルミニウム、マグネシウム、鉄、および/またはチタン等の種々金属の酸化物、水酸化物および/または酸化物の水和物を含有するものがある。このような多孔性粒子状添加剤のガス状煙成分に対する接近容易性は、その有効性にとって決定的重要性を持つ。例えば、微細分割された多孔性物質のフィルター性能は、それより粗い粒子状物質のフィルター性能に比べ、特に良好なことが見出されている。このチャンバーフィルターの不利な点は、製造コストが高いことである。
【0005】
他にも、タバコ煙フィルター内に微細粒状添加剤が付着可能であることを示すフィルター構造が知られている。米国特許第3,043,736号および同2,881,770号に記載されたタバコ煙フィルターは、酢酸セルロースの継ぎ目のない捲縮フィラメントの束からなり、それは、包み紙によってフィルター筒内へ組み込まれており、さらに個々のフィラメントが微細分割された活性炭で被覆されている。微細粒子状添加剤の塗布装置になりうるものは、以下のように分類できる。
a)添加剤を水性媒体または揮発性有機展色剤や可塑剤の流体中に懸濁させて塗布する装置、
b)微小な粒子状物質からなる添加剤(あらかじめ接着剤または可塑剤で湿っていることもある)の吹付装置、
c)ラテックスエマルションを用いて、添加剤を塗布する装置
d)あらかじめ接着剤または可塑剤で湿っているフィラメントまたは糸の束を、微細分割された活性炭流動床に通すことによって、塗布する装置。
これに関しては、DE 127 4 946が参照できる。
【0006】
上記方法によって製造されたタバコ煙フィルターは、添加剤の付着したフィラメントが、好ましくは長手方向に配され、統計分布的接触部位において、接着剤または可塑剤の作用によって、とびとびに結合され、さらにタバコ煙が流れることにより、隣り合うフィラメントどうしの間に、ほぼ長手方向の小スペースが、フィルター全体に均等分布して形成されることによって、特徴づけられている。
【0007】
この従来技術で挙げられた例では、このようにして製造され粒子状添加剤で処理されたタバコ煙フィルターであっても、粒子状添加剤を含まない比較フィルターと同様に、高い吸込み抵抗を有することを、明瞭に示している。結局、多量の添加剤を均等に有しながら、かつ、吸込み抵抗が低いというフィルターは、以上の方法では製造できないということである。
【0008】
また別のタバコ煙フィルターでは、活性炭を添加した紙フィルターが使用されている。これらの含有微小粒径活性炭は、製紙工程のなかで紙に付着する。同時に、フィルター材料の製造において、生地を形成し、ボビン上に巻取り、続いて処理装置に送る。フィルターまたはタバコ製造業者は、ボビンからこの生地を取り出し、ロッド状の物品にして、次いでそれをフィルターロッド機の型部において、軸方向に横断するように圧縮するべく、紙で包み、フィルターロッドの最終的な長さにカットする。この生地は、必須ではないものの通常、ロッド状にする前に、クレーピング装置で生地の流れ方向と平行にひだを寄せる。このひだにより、一方で材料密度が低下し、他方でフィルターの吸込み抵抗に効果が生じる。低材料密度で長手方向に配されたチャネル状領域がフィルターまたはフィルターエレメントの相当な部分にわたって延びたチャネル構造が、このような二次元構造体材料にひだを付けて製造したフィルターの特徴である。これらのチャネルでは、それらより高い材料密度のフィルター材料と境界を成す。さらに、このフィルターの吸込み抵抗は構造上の特性として比較的低いものとなっている。
【0009】
しかしながら、これらの二次元構造体フィルターが、酢酸セルロースでできていない、または部分的にしか酢酸セルロースでできていない場合、煙の風味は否定的な評価を受けることが多い。その上、酢酸セルロースタバコフィルタで知られたことであるが、このようなフィルターは、フェノールまたはニトロソアミンを特定的にフィルター内にとどめておくことができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明は、一体型にそして上述のように構成された、タバコフィルターまたはフィルターエレメントを改良し、付着された微細分割吸着剤の影響をできる限り小さくし、それにもかかわらず、多量の粒子状添加剤を付着させたときに吸込み抵抗が低くなるようにすることを目的とする。フィルター材料として、特に、酢酸セルロースを使用するとよい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、本発明の目的は、以下のことによって達成される。
a)添加剤が、繊維、フィラメントまたはフィルムの表面に存在し、
b)タバコ煙フィルターの吸込み抵抗とタバコ煙フィルター中の添加剤質量が、次式(I)
Mad/ΔP>1mg/daPA (I)
(式中、ΔPは7.8mmのフィルター径での換算値としての吸込み抵抗[daPA]を表し、Mad[mg]は添加剤の質量を表す)に従い、
c)タバコ煙フィルターがチャネル構造を有し、そして
d)フィルター材料が二次元構造体である。
【0012】
本発明の範囲において、紡糸されることまたは処理されてフィルムになることが可能なポリマー系またはポリマー混合物系の通常の繊維、フィラメントおよびフィルムを使用できる。さらに本発明の範囲では、フィルター材料として、繊維やフィラメントの二次元構造体またはフィルムが好適であり、この二次元構造体および/またはフィルムは、平滑、ひだ付き、エンボス、および/または部分的に圧縮状態となっている。
【0013】
フィルター材料が、セルロースエステル、酢酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースアセトブチレート、セルロースアセトプロピオネートおよび/またはセルロースプロピオネートから構成されていると特に好ましく、とりわけセルロースエステルのフィルター材料はしばしば用いられる。特に好ましい酢酸セルロースはおよそ1.5から3.0の置換度を有し、とりわけおよそ2.2から2.6、さらにとりわけ2.5の置換度を有する。本発明の範囲または実施の範囲では、WO 01/28369に記載のタバコ煙フィルターを使用することが特に有利であることが判明した。本発明をわずかに変形してより最適化するならば、フィラメントトリヒターに基づく繊維重量(またはフィラメント重量)/吸込み抵抗比率Sは、およそ0.7より大きいことが好ましい。ここでS値は次式、
S=(mA/ΔP7.8)/dpf [10m/daPA] (II)
(式中、mAは繊維重量[g]、ΔPは吸込み抵抗[daPA]そしてdpfはフィラメント繊度(dtex))より算出され、この吸込み抵抗は、7.8mmのフィルター径での換算値を使用する。このシガレットフィルターのフィルトローナ硬度はおよそ90%を超えている。
【0014】
さらに、繊維重量が10mg/フィルター長さ[mm]を超えず、かつ/または、フィルター材料の捲縮残留率が1.45を超えないことが好ましい。この捲縮残留率は、次式(III)
IR=10000×mA/(G×l) (III)
(式中、mAは繊維重量[g]、Gは全体繊度[g/10exp4×m]、lはフィルター長さ[mm]である)を適用する。
【0015】
最適な捲縮残留率はおよそ1.05から1.4であり、特におよそ1.1から1.3である。さらに好ましくは、フィラメント繊度に基づく繊維重量(またはフィラメント重量)/吸込み抵抗比率Sは、およそ2を超えず、特におよそ0.8から1.3の値である。
【0016】
本発明のタバコ煙フィルターにおいて、繊維重量(またはフィラメント重量)が少なくともおよそ4mg/フィルター長さ[mm]、特におよそ5から8mg/フィルター長さ[mm]であると、とりわけ有利な結果に達する。
【0017】
最適なフィルトローナ硬度に関しては、好ましくはおよそ90から95%、特におよそ91から93%となるべきである。
【0018】
本発明の範囲では、添加剤は上記目的を達成するために不可欠であり、繊維、フィラメントまたはフィルムの表面に配される。ここで特に好ましくはこれらの添加剤が粒子状であり、とりわけ300μm未満の粒径、さらにとりわけ100μm未満の粒径である。さらにまた特に好ましくは、粒径が50μm未満、とりわけ30μmの粒径が特別に良好な結果を導く。本発明は、粒子状添加剤または多孔性添加剤の選択において、特に限定されるものではない。当業者であれば、問題なく適切な添加剤を選択でき、これらは、活性炭系、金属酸化物系、金属水酸化物系および/または金属酸化物の水和物系の吸着剤としての添加剤、特にこれらの金属が、アルミニウム、シリコン、チタン、および/または、マグネシウムであるのが好ましい。個々の場合において、多孔性添加剤が、活性物質で、特に酸化防止剤、着香料および/または抗変異原性物質としての活性物質で、処理されると好ましい。
【0019】
本発明のタバコ煙フィルターへの粒子状添加剤の導入方法は、特に限定されないものの、粒子状添加剤が、バインダーによって、特に、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、水溶性エステル類またはエーテル類、デンプン、デンプン誘導体および/またはセルロースエステルによって、フィルター材料表面に固着されると好ましい。
【0020】
繊維、フィラメントおよびフィルムの表面は以下のようにさらに最適化してもよい。例えば、表面上の添加剤が、濾過助剤機能を、特に有機酸類、酸性カルボン酸エステル類、ポリフェノールおよび/またはポルフィリン誘導体として濾過助剤機能を果たしてもよい。タバコ煙フィルターまたはフィルターエレメントを構成する、フィルム材となる繊維、フィラメントおよびフィルム、あるいは繊維、フィラメントおよびフィルムは、内部にさらなる添加剤を含有し、特性の向上をはかってもよい。これらの添加剤は、好ましくは、可塑剤、つや消し剤、顔料および/または安定剤である。可塑剤を含有させることは特に有効である。好ましくは、繊維またはフィラメントまたはフィルム内に、0から15重量%、特に5から12重量%存在する。推奨されるべきは、該可塑剤がトリアセチン、二酢酸エチレングリコール、および/または、ジエチルシトレートとして存在する。これに加えて、本発明のタバコ煙フィルターは、光反応性添加剤、特に平均粒径が2μm未満の微細分割されたアナターセ型酸化チタンとしての光反応性添加剤を含有してもよい。
【0021】
上述した本発明の示唆するところの特徴b)によって、ある顕著な特性がもたらされる。この特徴によれば、本発明において、タバコ煙フィルターの吸込み抵抗およびタバコ煙フィルター中の添加剤の質量は、次式(I)、Mad/ΔP7.8>1mg/daPA(I)(式中、ΔPは吸込み抵抗[daPA]で、これは7.8mmのフィルター径での換算値として使用され、Madは添加剤の質量[mg]である)に従うことが要求される。とりわけ好ましくは、Mad/ΔPの比率が2mg/daPaを超え、特に3mg/daPaを超える。
【0022】
本発明で請求された一体型タバコ煙フィルターまたはフィルターエレメントのチャネル構造は、本発明をさらに差別化する重要な特徴である。チャネル構造では、縦方向に配されたチャネル状領域が、低い材料密度を有して、フィルターまたはフィルターエレメントの相当の範囲にわたって延びていることが、指摘される。これらのチャネルは、それらより高い材料密度のフィルター材料と境界を成している。本発明では特に、このチャネル構造は、二次元構造体のフィルター材料を使用することとする。
【0023】
当業者であれば、問題なく、そしてこれ以上の技術情報を必要とすることなく、本発明の一体型タバコ煙フィルターまたは一体型タバコ煙フィルターエレメントを製造できる。以下に、特に適切な方法を述べる。本発明のタバコ煙フィルターを製造するに当たり、スペースフィルターの慣習的方法に従い、ベールから取り出したトウは空気流で調製される。実際の活性化工程前の中間工程で、表面での二軸方向に可能な限り高い強度を有する不織布が製造されてスプールに巻きつけられ、添加剤で活性化される。タバコ煙フィルターの適切な製造方法であればいずれも、繊維表面に粉体を分布させるために適用可能である。特に、a)添加剤を水性液または揮発性有機展色剤や可塑剤液体中に懸濁させてフィラメントに塗布させる装置(それぞれの場合において、バインダーが添加されてもよい)およびb)微小粒子から成る添加剤をフィラメントに吹きつける装置(このフィラメントは、あらかじめ接着剤または可塑剤で湿らせておいても良い)が適切である。これらとは別に、あるいはさらに加えて、溶融接着剤により粒子状添加剤を確実に付着させることができる(この接着剤は、粒子状添加剤と共にもしくは別に塗布され、あるいは短時間加熱することによって活性化される)。
【0024】
本発明のタバコ煙フィルターは連続製造され、最初のフィルターロッドからある特定長さに切断される。このように限定長さを有する個々のエレメントはそれ自体で、シガレット用タバコ煙フィルターとして使用可能である。しかしながら、(二重または三重の)組み合わせシガレットフィルターの一部品として、少なくとももうひとつ別のフィルターエレメントと並んで長手方向に配されて使用されると好ましい。たとえば本発明による単一フィルターエレメントが、セルロースアセテート繊維束の一様なロッド状といった通常の外観を有する長手方向に配された吸い口エレメントと組み合わせて使用されると好ましい。
【0025】
本発明による利点を要約すると、本発明の示唆するところに従い、微細分割された添加剤をタバコ煙フィルターへ導入でき、その際に先行技術の比較製品とは逆に、喫煙中の吸込み抵抗を特に低下させることが可能であることが判明した。そして本発明のフィルターで特に高い濾過性能を達成できることも分かった。
【0026】
さらに、これまでの最新技術における対応比較製品とは対照的に、本発明の一体型タバコ煙フィルターは、比較的容易に製造できる。さらに、前述のチャンバーフィルターのように、いくつかのフィルターエレメントからの費用のかかる製造も不要である。特にフィルター材料が酢酸セルロースから構成される場合、煙の風味はとりわけ肯定的な評価を受ける。フェノール類を選択的に滞らせる効果も認められた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明を実施例によって、より詳しく記述する。
【実施例1】
【0028】
(本発明のフィルターの調製)
規格2,1Y48(フィラメント繊度2.33dtexおよび全体の繊度53333dtex)のフィルタートウを、ハンブルグのハウニ(Hauni)社による従来からの延伸機KDF2で調製し、8%のトリアセチンを吹付けた。最小幅250mmのフィルタートウウェブを、ガイドローラーから出し、加熱された一対のカレンダーローラーへ導入し、有効線圧40kg/cmで圧延した。溝付きカレンダーローラーは、径230cmおよび幅350mmで、1cm当たり10個の溝が彫られている。他方のローラーは溝付きではない。これらはシリコン油で150℃まで加熱される。溝は、0.4mmの上幅および0.5mmの深さの台形である。
【0029】
このようにして調製された不織布を、カレンダーローラーから出した後、スプールに巻きつける。この不織布のスプールを従来からのフーラード(Foulard)で巻きをはずし、活性炭の水性懸濁液を満たした浴に通す。このようにして、不織布を下向きに5cmまで懸濁液に浸漬し、次いで、ガイドローラーで上向きに方向を変える。懸濁液の浴から出すときに、過剰な懸濁液は一対のスクイズローラによって圧搾して除去する。このスクイズローラは10m/分の速度で駆動され、不織布の懸濁液中の移動が一様となるようにする。不織布は、スクイズローラから出した後に、150℃の温度で循環式エアードライヤーを通過させる。ドライヤーは、4メートルの乾燥部を有しており、これによって、懸濁液の乾燥、および不織布上の活性炭固着を、確実に行う。
【0030】
活性炭が添加された不織布を、ドライヤーから出して、ハンブルグのコーバー(Korber)社によって取り扱われている従来からのKDF2において、吸込ノズルへ導入させて、ストランドにし、包み紙で巻き126mmのフィルター長さに切断した。フィルターロッド径は7.8mmに調節された。
【比較例1】
【0031】
(フィルタートウへの炭素粒子散布による活性炭フィルターの調製)
規格2,1Y48(フィラメント繊度2.33dtexおよび全体の繊度53333dtex)のフィルタートウを、ハンブルグのハウニ(Hauni)社の従来からの延伸機KDFで調製し、8%のトリアセチンを吹付けた。最小幅200mmのフィルタートウウェブを、ガイドローラーから出し、散布用ノズルを介して案内し、およそ250μmの粒径の活性炭粒子状物質を用いて、空気流で処理した。この目的のために、活性炭粉体を取入口接続部に計量秤で連続的に投入し、散布用ノズルへのパイプラインを介して、圧縮空気で吹付けた。散布用ノズルは吸引力によって、フィルタートウウェブの取入および排出のためだけの開口部を有したボックスに包囲されており、周囲環境へのカーボン粉塵のいかなる排出も回避され、このことにより有利性をもたらしている。活性炭の供給量をフィルタートウウェブの速度に適応させることにより、フィルタートウウェブ上の活性炭の量は、非常に正確に調節できる。フィルタートウウェブをこの装置から出し、ハンブルグのコーバー(Korber)社の取り扱う従来からのKDF2において50m/分のストランド速度で、吸込ノズルでストランドにし、包み紙で巻き126mmのフィルター長さに切断した。フィルターロッド径は7.8mmに調節された。
【0032】
吸込み抵抗の測定結果および活性炭の質量を表に示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸されることまたは処理されてフィルムになることが可能なポリマー系またはポリマー混合物系の繊維、フィラメントまたはフィルム、および1つまたはそれより多くの添加剤を含有する、一体に構成されたタバコ煙フィルターまたはフィルターエレメントであって、
a)添加剤が、繊維、フィラメントまたはフィルムの表面に存在しており、
b)タバコ煙フィルターの吸込み抵抗とタバコ煙フィルター中の添加剤質量が、次式(I)
Mad/ΔP>1mg/daPA (I)
(式中、ΔP7.8は7.8mmのフィルター径での換算値としての吸込み抵抗[daPA]を表し、Madは添加剤の質量[mg])に従い、
c)フィルター材料は二次元構造体として存在する
ことを特徴とする、タバコ煙フィルターまたはフィルターエレメント。
【請求項2】
前記フィルター材料が、繊維またはフィラメントの二次元構造体またはひだ付き(gefaltet)フィルムであり、この二次元構造体および/またはフィルムが、平滑、ひだ付き、エンボス、および/または部分的に圧縮状態であることを特徴とする、請求項1に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項3】
前記フィルター材料がセルロースエステルから構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項4】
前記セルロースエステルが、酢酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースアセトブチレート、セルロースアセトプロピオネート、および/または、セルロースプロピオネートであることを特徴とする、請求項3に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項5】
前記酢酸セルロースがおよそ1.5から3.0の置換度、とりわけおよそ2.2から2.6の置換度を有することを特徴とする、請求項4に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項6】
ad/ΔPの比率が、2mg/daPaを超え、特に3mg/daPaを超えることを特徴とする、請求項1から5のうちいずれか1項に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項7】
繊維、フィラメントまたはフィルムの表面上の前記添加剤が粒子状であり、特に、粒径が300μm未満であることを特徴とする、請求項1から6のうちいずれか1項に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項8】
前記添加剤の粒径が100μm未満、特に50μm未満、とりわけ30μm未満であることを特徴とする、請求項7に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項9】
前記粒子状の添加剤が多孔性添加剤であり、特に、活性炭系、金属酸化物系、金属水酸化物系および/または金属酸化物の水和物系の吸着剤としての多孔性添加剤であることを特徴とする、請求項7または8に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項10】
前記金属酸化物、水酸化物および/または金属酸化物の水和物の金属が、アルミニウム、シリコン、チタン、および/または、マグネシウムであることを特徴とする、請求項9に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項11】
前記多孔性添加剤が活性物質で、特に、酸化防止剤、着香料および/または抗変異原性物質としての活性物質で処理されることを特徴とする、請求項9または10に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項12】
繊維、フィラメントおよびフィルムの表面上の前記添加剤が濾過助剤、特に有機酸類、酸性カルボン酸エステル類、ポリフェノール、および/またはポルフィリン誘導体類としての濾過助剤であることを特徴とする、先行する請求項の少なくとも1項に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項13】
前記粒子状添加剤が、バインダーによって、特にポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、水溶性エステルまたはエーテル類、デンプン、デンプン誘導体および/またはセルロースエステル類、とりわけ平均アセチル化度がおよそ0.3から1を有する酢酸セルロースによって、フィルター材料の表面上に固着されていることを特徴とする、請求項7から12の少なくとも1項に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項14】
フィルム材料の前記繊維、フィラメントまたはフィルムが、特性を向上させるために内部にさらなる添加剤を含有することを特徴とする。請求項1から13の少なくとも1項に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項15】
前記さらなる添加剤が、可塑剤、マーキング剤、顔料および/または安定剤であることを特徴とする、請求項14に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項16】
繊維またはフィラメントまたはフィルム内の前記可塑剤が、およそ5から15重量%存在することを特徴とする、請求項15に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項17】
前記可塑剤が、トリアセチン、二酢酸エチレングリコール、および/または、ジエチルシトレートとして存在することを特徴とする、請求項15または16に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項18】
フィラメントトリヒター(Filamenttrichter)に基づく繊維重量(またはフィラメント重量)/吸込み抵抗の比率Sが、およそ0.7より大きく、ここでS値は次式、
S=(mA/ΔP7.8)/dpf [10m/daPA] (II)
(式中、mAは繊維重量[g]、ΔPは吸込み抵抗[daPA]そしてdpfはフィラメント繊度(dtex))より算出され、この吸込み抵抗は7.8mmのフィルター径での換算値を使用し、このシガレットフィルターのフィルトローナ硬度はおよそ90%を超えることを特徴とする先行する請求項の少なくとも1項に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項19】
前記繊維重量が10mg/フィルター長さ(mm)を超えず、かつ/または、フィルター材料の捲縮残留率(Restkrauselung)は、1.45の値を超えず、この捲縮残留率は、式(III)
IR=10000×mA/(G×l) (III)
(式中、mAは繊維重量[g]、Gは全体の繊度[g/10exp4×m]およびlはフィルター長さ[mm]である)を適用することを特徴とする、請求項18に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項20】
前記捲縮残留率が、およそ1.05から1.4、特に、およそ1.1から1.3であることを特徴とする、請求項19に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項21】
前記フィラメント繊度に基づく前記繊維重量(またはフィラメント重量)/吸込み抵抗比率Sが、およそ2の値を超えず、とりわけおよそ0.8から1.3の値であることを特徴とする、請求項18から20の少なくとも1項に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項22】
繊維重量(またはフィラメント重量)が少なくともおよそ4mg/フィルター長さ[mm]、とりわけおよそ5から8mg/フィルター長さ[mm]であることを特徴とする、請求項18から21のいずれか1項に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項23】
前記フィルトローナ硬度が、およそ90から95%、とりわけおよそ91から93%であることを特徴とする、請求項18から22の少なくとも1項に記載のタバコ煙フィルター。
【請求項24】
光反応性添加剤を、特に平均粒径が2μm未満の微細分割されたアナターセ型酸化チタンとしての光反応性添加剤を含有することを特徴とする、先行する請求項の少なくとも1項に記載のタバコ煙フィルター。

【公表番号】特表2008−515411(P2008−515411A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535091(P2007−535091)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010775
【国際公開番号】WO2006/037640
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(500017874)ローディア アセトウ ゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】