説明

清掃具

【課題】液剤貯留部に収容された液剤による静水圧の作用によって液放出部から連続的に放出される液剤の放出量を、簡易な構成によって容易に調整することのできる清掃具を提供する。
【解決手段】清掃ヘッド11と柄12とからなり、清掃ヘッド11に清掃シートを取着して用いる清掃具10であって、清掃ヘッド11は、供給された液剤22を上方からの静水圧の作用によって清掃ヘッド11の底面に徐々に放出させる液徐放部15を備えており、柄12には、可撓性を有する液供給パイプ21を介して液徐放部15と連通するタンク部13が設けられており、このタンク部13は、スライド固定手段30を介して上下にスライド移動可能な状態で柄12に取り付けられている。タンク部13の固定位置を調整することにより、タンク部13に収容された液剤22による静水面Pの高さ位置を調整して、液徐放部15から連続的に放出される液剤22の放出量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃ヘッドと柄とからなり、清掃ヘッドに清掃シートを取着して用いる清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
清掃ヘッドと柄とからなる清掃具であって、清掃ヘッドの清掃クッション部に例えば液体洗浄剤やワックス等の液剤を供給して、当該清掃クッション部や清掃クッション部に取着した清掃シートを湿った状態とすることにより、床面等の被清掃面の清掃や仕上げを効率良く行えるようにした清掃具が種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
ここで、特許文献1の清掃具は、清掃ヘッドに液剤を密封収容したボトルを設け、ボトルに圧力を加えることにより、吐出バルブを介して塗布用パッド(清掃クッション部)に液剤を供給して、液剤を床面等の被清掃面に塗布するものである。また、特許文献2の清掃具は、清掃ヘッドに清掃液貯留容器を設け、清掃液貯留容器に圧力を加えることにより、清掃液貯留容器から清掃ヘッドに取着した清掃シートに液剤を供給して、清掃シートを湿潤状態にするものである。さらに、特許文献3の清掃具は、液剤を収容したキャニスタをハウジングに着脱可能に装着してキャニスタからポンプ入口に静水頭を付与し、ポンプの作動によって掃除しようとする表面に液剤を供給するものである。
【特許文献1】特開2000−70205号公報
【特許文献2】特表2005−528941号公報
【特許文献3】特表2003−510118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、清掃クッション部や清掃シートを湿った状態として床面等の被清掃面の清掃や仕上げを行うようにした上記特許文献1、特許文献2の清掃具では、いずれも、清掃ヘッドに設置したボトルや清掃液貯留容器に、人力によって直接圧力を負荷して、ノズルから液剤を吐出させるものである。このため、例えば圧力を負荷した直後は多量の液剤が被清掃面に塗布されるが、その後に再び圧力を負荷するまでの間に、徐々に塗布される液剤が少なくなること等により、塗布量にバラツキが生じやすくなって、液剤を安定した状態で略均等に被清掃面に塗布することが困難になる。またポンプの作動によって液剤を供給するようにした特許文献3の清掃具では、ポンプを設けることでその構成が複雑になる。
【0005】
これに対して、本願発明者らは、液剤を収用する液剤貯留部を清掃ヘッドの上方に設けると共に、被圧流体を徐々に放出させる機能を有する液放出部を清掃ヘッドに設け、液剤貯留部に収容された液剤の水頭差によって常時負荷される静水圧を利用して、人力や動力を加えなくても、簡易な構成によって液放出部から液剤を安定した状態で徐々に放出させながら被清掃面に塗布できるようにした清掃具を開発している。
【0006】
このような清掃具では、同じ水頭差でも液剤の種類によって静水圧の作用により連続的に放出される液剤の放出量が異なる場合がある。また清掃作業の内容に応じて連続的に放出される液剤の放出量を調整する必要を生じる場合がある。したがって、簡易な構成及び操作によって、静水圧の作用により放出される液剤の放出量を調整できるようにする新たな技術の開発が望まれている。
【0007】
本発明は、液剤貯留部に収容された液剤による静水圧の作用によって液放出部から連続的に放出される液剤の放出量を、簡易な構成によって容易に調整することのできる清掃具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、清掃ヘッドと柄とからなり、清掃ヘッドに清掃シートを取着して用いる清掃具であって、前記清掃ヘッドは、供給された液剤を上方からの静水圧の作用によって前記清掃ヘッドの底面に徐々に放出させる液放出部を備えており、前記柄には、可撓性を有する液供給パイプを介して前記液放出部と連通する液剤貯留部が設けられており、該液剤貯留部は、スライド固定手段を介して上下にスライド移動可能な状態で前記柄に取り付けられており、前記液剤貯留部の前記柄に沿った固定位置を調整することにより、前記液剤貯留部に収容された前記液剤による静水面の高さ位置を調整する清掃具を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の清掃具によれば、液剤貯留部に収容された液剤による静水圧の作用によって液放出部から連続的に放出される液剤の放出量を、簡易な構成によって容易に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1及び図2に示す本発明の好ましい一実施形態に係る清掃具10は、清掃ヘッド11に着脱交換可能に取着される使捨て用の清掃シート(図示せず。)を液体洗浄剤やワックス等の液剤によって湿らせた状態で、例えば床面を被清掃面として清掃作業や仕上げ作業を行う際に用いられる。また、本実施形態の清掃具10は、清掃ヘッド11の上方に配置されて、液剤22を収容する液剤貯留部としてのタンク部13が、柄12の周面に支持された状態で取り付けられている。このタンク部13から、可撓性を有する液供給パイプ21を介して清掃ヘッド11に設けられた液放出部としての液徐放部15(図5、図6参照)に液剤22を供給すると共に、タンク部13に収容された液剤22による静水圧の作用によって、液徐放部15から液剤を放出させて清掃作業や仕上げ作業を行うことができるようになっている。そして、本実施形態の清掃具10は、静水圧の作用によって液徐放部15から放出される液剤22の放出量を、容易に調整することのできる機能を備えている。
【0011】
すなわち、本実施形態の清掃具10は、清掃ヘッド11と柄12とからなり、清掃ヘッド11に清掃シート(図示せず。)を取着して用いる清掃具であって、図2及び図3(a),(b)にも示すように、清掃ヘッド11は、供給された液剤22を上方からの静水圧の作用によって清掃ヘッド11の底面に徐々に放出させる液放出部としての液徐放部15を備えており、柄12には、可撓性を有する液供給パイプ21を介して液徐放部15と連通する液剤貯留部としてのタンク部13が設けられており、このタンク部13は、スライド固定手段30を介して上下にスライド移動可能な状態で柄12に取り付けられており、タンク部13の柄12に沿った固定位置を調整することにより、タンク部13に収容された液剤22による静水面Pの高さ位置を調整して、液徐放部15から連続的に放出される液剤22の放出量を調整することができるようになっている。
【0012】
本実施形態では、清掃ヘッド11と柄12は、公知の各種のユニバーサルジョイント18を介して連結されている。これによって、柄12は、清掃ヘッド11に対してその向きを垂直面に沿った前後方向に変えるだけでなく、前後左右の4方向へ変えることができると共に、360°のいずれの方向に対しても回動でき、しかも清掃ヘッド11のヘッド角を調整できるようなっている。
【0013】
清掃ヘッド11は、図4に示すように、略矩形平面形状を備えるように成形された合成樹脂製のヘッド本体19の下面側に、底面17aが平坦な略矩形平面形状の弾性面となった清掃クッション17を装着して形成される。ヘッド本体19の上面部の中央部分には、ユニバーサルジョイント18を介して柄12が連結しており、清掃時に柄12からの押圧力を受けて、清掃クッション17の底面17aは、清掃シートを介在させつつ被清掃面に適度に押し付けられた状態で接触する。
【0014】
また、ヘッド本体19の上面部には、ジグザグ状のスリット20aが形成された柔軟な弾性材料からなる公知のシート保持部20が、当該上面部の周縁部分に配置されて4箇所に設けられている。例えば下面側の清掃クッション部17を覆うようにして清掃シート(図示せず。)を清掃ヘッド11に巻き付けた後に、清掃シートの端縁部を、スリット20aを介してシート保持部20に押し込むことにより、清掃シートが清掃ヘッド11に着脱交換可能に容易に取着される。
【0015】
さらに、ヘッド本体19の上面部には、ユニバーサルジョイント18に隣接して、後述する装着用凹嵌部25の中央部と対応する位置に、パイプ挿通スリーブ26が上方に突出して設けられている。このパイプ挿通スリーブ26には、液供給パイプ21の下端部が挿通されて、後述する液徐放機構16のパイプ装着部24に装着される。
【0016】
そして、ヘッド本体19の内部には、図5に示すように、液溜まり部14と液徐放部15とからなる液徐放機構16が設けられている。本実施形態では、液徐放機構16は、着脱交換可能なカートリッジタイプの部材からなる。液徐放機構16は、図6(a),(b)に示すように、系着蓋14aによって両端が閉塞されると共に、下面開口の両側縁部に内側に折れ曲がった係止リブ14bが各々設けられた、略倒立U字形の断面形状を有する管状のタンク部分である合成樹脂製の液溜まり部14と、略T字形の断面形状を有する、例えば樹脂焼結体、フェルト、連泡スポンジ、パルプ、不織布、ゴム等の多孔質素材からなる液徐放部15とによって構成される。
【0017】
ここで、液徐放機構16の液徐放部15は、液溜まり部14を介してタンク部13と連通しており、タンク部13から液溜まり部14に供給された液剤22を上方からの静水圧の作用によって通過させる際に、例えば多孔質素材による多数の微細流路による表面張力によって、液剤22の通過速度を抑制し、液剤22を滲み出させるようにして全体から略均等に放出させる機能を備えている。このような機能を効果的に発揮できるように、液剤22の放出量は0.01〜0.5g/secが好ましく、0.02〜0.4g/secが更に好ましく、0.04〜0.3g/secが特に好ましい。液剤22の放出量は、多孔質素材との界面張力や粘度といった液剤の物性や、細孔径の大きさや空隙率といった多孔質素材の状態を適宜選択することで調整できる。液剤22の多孔質素材における透液度を適宜選定したり、液剤22の液剤放出面積を適宜最適に設計することでも濡れ掃除に要求される放出量を適宜調整することができる。また、多孔質素材の空気の透し易さの指標となる透気度は0.5〜200μm/(Pa・sec)が好ましく、1.0〜100が更に好ましく、1.0〜50が特に好ましい。
【0018】
液徐放部15は、略T字形の断面形状の天面部15aを、係止リブ14bに支持させて液収容部14の内部に配置すると共に、略T字形の断面形状の脚部15bを、両側の係止リブ14bの間のスリット状の開口から下方に突出させた状態で、液溜まり部14に一体として取り付けられる。これによって、カートリッジタイプの液徐放機構16は、側面から見た形状が帯板形状を有するように形成される。
【0019】
本実施形態では、液溜まり部14は、例えば0.5〜2cc程度の容量を有しており、これの中央部分から上方に突出して、パイプ装着部24が設けられている。このパイプ装着部24には、液供給パイプ21の下端部が液密な状態で着脱可能に装着される。液溜まり部14は、タンク部13から、液供給パイプ21及びパイプ装着部24を介して液徐放機構16に局所的に供給される液剤22を、当該液溜まり部14による貯留領域の全体に拡げて貯留することにより、いわゆるバッファ機能を発揮して、液徐放部15の天面部15aの全体に亘って上方から均等な静水圧が負荷されるようにする。
【0020】
また、液溜まり部14の内部には、これの天端部の内側から下方に突出して、サポートリブ14cが、液溜まり部14の軸方向に間隔をおいて複数設けられている。サポートリブ14cは、その先端を液徐放部15の天面部15aの上面に当接させ、清掃時に清掃ヘッド11に負荷される押圧力によって、被清掃面からの反力で液徐放部15が上方に移動して液溜まり部14の内部に過度に押し込まれるのを防止する。なお、サポートリブ14cに代えて液溜まり部14の軸方向に延在する段差を設けても良い。
【0021】
そして、本実施形態では、液溜まり部14と液徐放部15とからなる液徐放機構16は、図5に示すように、ヘッド本体19の内部に着脱交換可能に取り付けられる。すなわち、本実施形態では、ヘッド本体19の内部には、例えばユニバーサルジョイント18と、ヘッド本体19の一方の長辺に沿った部分の一対のシート保持部20との間において、清掃ヘッド11の長手方向と略平行に配置されて、ヘッド本体19の下面側に向けて開口する装着用凹嵌部25が設けられている(図4参照)。例えばパイプ装着部24に液供給パイプ21の下端部を装着した状態で、装着用凹嵌部25の下方から、液溜まり部14を上方に配置しつつカートリッジタイプの液徐放機構16を嵌め込むようにして挿入し、例えば装着用凹嵌部25の両端部分に設けた系着凹部23に、液溜まり部14の両端の系着蓋14aの部分を各々係止した状態で、バネ等の付勢手段を介して進退可能な系着突起27を係着することにより、液徐放機構16をヘッド本体19の内部に容易に取り付けることができる。
【0022】
図7(a),(b)に示すように、ヘッド本体19の下面を覆って清掃クッション17が装着されている。清掃クッション17には、ヘッド本体19の装着用凹嵌部25と対応する位置に、液徐放機構16と同程度の幅を有するスリット溝28が開口形成されている。液徐放機構16が、このスリット溝28に、清掃ヘッド11の清掃クッション17による底面17aの側から差し込まれて、当該底面17aと面一又は略面一になるように配置されることになる。
【0023】
これによって、液徐放部15の脚部15bの下端15cは、清掃時の清掃ヘッド11への押圧力によって、清掃クッション部17の底面17aと共に被清掃面に接触することになる。ここで、液徐放部15の下端15cは、無荷重の状態でのクッション部17の底面17aからの突出高さsが例えば0mmよりも大きく、且つ2mmよりも小さい僅かな突出高さで、クッション部17の底面17aから下方に出ていることが好ましい。液徐放部15の下端15cが僅かな突出高さでクッション部17の底面17aから下方に出ていることにより、清掃ヘッド11への押圧力によって液徐放部15から徐放される液剤22の量を調整することが可能になる。一方、清掃ヘッド11への押圧力が負荷されても、液徐放部15の下端15cの周囲には清掃クッション部17が存在するので、液徐放部15が潰れすぎることなく、適度な量の液剤22の徐放が可能になる。
【0024】
ユニバーサルジョイント18を介して清掃ヘッド11に連結される柄12は、図1に示すように、例えば合成樹脂製のパイプ部材からなり、清掃具10を用いて立った状態で清掃作業を行うのに適した、例えば50〜120cm程度の長さを有している。また柄12の上端部には、把持部29が設けられている。さらに、柄12には、これの周面に支持させて、タンク部13が上下にスライド移動可能に取り付けられていると共に、これの軸方向に沿って、タンク部13と清掃ヘッド11に設けられた上述の液徐放機構16の液溜まり部14とを連通する液供給パイプ21が配設されている。
【0025】
タンク部13は、好ましくは透明な合成樹脂を用いて底面が閉塞された円筒形状に形成されており、後述するスライド固定手段30のスライドスリーブ部31に一体接合されて、スライドスリーブ部31の移動に伴ない柄12に沿って上下にスライド移動可能な状態で取り付けられている。タンク部13は、例えば20〜100cc程度の内容量を有している。タンク部13の底面中央にはパイプ連結スリーブ32が下方に突出して設けられている。パイプ連結スリーブ32に液供給パイプ21の上端部が連結されて液供給パイプ21がタンク部13と連通し、液供給パイプ21に液剤を供給できるようになっている。
【0026】
また、タンク部13には、上端開口を着脱可能に覆って、好ましくは気液置換逆止弁33を備える蓋部材34が取り付けられている。蓋部材34を着脱することにより、タンク部13に液体洗浄剤やワックス等の液剤22を適宜補充することが可能になる。なお、蓋部材34は、例えば螺合方式や嵌合方式によって、タンク部13の上端部に着脱可能に容易に装着することができる。
【0027】
本実施形態では、スライド固定手段30は、例えば図3(a)に示すように、柄12にスライド移動可能に装着されるスライドスリーブ部31と、このスライドスリーブ部31に設けられた開放操作部35とからなる。開放操作部35は、スライドスリーブ部31の外周面に突設した支持リブ36に回動可能にピン接合されている。開放操作部35は、支持リブ36を挟んだ一方に設けられた例えばコイルスプリング37による弾性付勢力によって、支持リブ36を挟んだ他方に設けられた係止部38を柄12に押し付け、当該係止部38を柄12の外周面に係止することにより、スライドスリーブ部31及びこれに取り付けられたタンク部13を、柄12に沿った所定の高さ位置に固定する。
【0028】
また、本実施形態では、係止部38は、例えばその当接面が、柄12の外周面との摩擦係数の大きなゴム材料等によって構成されている。コイルスプリング37による弾性付勢力によって当接面を柄12に押し当てて密着させることにより、当該当接面が摩擦力によって柄12の外周面に係止される。これによって、スライドスリーブ部31及びタンク部13を、柄12に沿った所定の高さ位置に強固に保持することが可能になる。
【0029】
さらに、本実施形態では、スライドスリーブ部31及びタンク部13が柄12に固定された状態から、開放操作部35の支持リブ36を挟んだ一方を、コイルスプリング37による弾性付勢力に抗して押圧操作すれば、係止部38の当接面が柄12の外周面から離間して摩擦力によって係止した状態が解除される。これによって、スライドスリーブ部31及びタンク部13を柄12に沿って上下方向にスライド移動させることが可能になる。またスライドスリーブ部31及びタンク部13がスライド移動可能な状態から、開放操作部35の支持リブ36を挟んだ一方への押圧操作を解除すれば、コイルスプリング37の弾性付勢力によって開放操作部35の係止部38が再び柄12の外周面に密着することにより係止されて、スライドスリーブ部31及びタンク部13を、柄12に沿った所定の高さ位置に再度固定することが可能になる。
【0030】
なお、スライド固定手段30としては、図3(a)に示す開放操作部35の係止部38を柄12の外周面に密着させて係止させるものの他、図3(b)に示すように、柄12の外周面に軸方向に沿って連続係止刃39を設けておき、支持リブ36を挟んだ他方に設けられた係止爪を係止部38として、この係止爪による係止部38を連続係止刃39の所定の位置に開放可能に係止することにより、タンク部13を柄12に沿った所定の高さ位置に固定するもの等、その他の種々のスライド固定手段30を採用することができる。
【0031】
タンク部13と、清掃ヘッド11に設けられた液徐放部15とを連通する液供給パイプ21は、図1及び図2に示すように、例えば可撓性を有する合成樹脂製のチューブ材料からなる。液供給パイプ21は、その上端部がタンク部13のパイプ連結スリーブ32に連結されると共に、好ましくは柄12の外周面に突設された複数のガイドスリーブ40に挿通されることにより案内されて、柄12に沿って下方に延設配置される。液供給パイプ21の下端部は、ヘッド本体19の上面部に設けられたパイプ挿通スリーブ26を介してヘッド本体19の内部に挿入され、公知の各種の取付け治具を用いて液徐放機構16のパイプ装着部24に液密な状態で装着される(図5参照)。これによって、タンク部13と液徐放部15とは、液供給パイプ21及び液徐放機構16の液溜まり部14を介して互いに連通することになり、タンク部13に収容された液剤22の静水圧によって常時負荷される上方からの圧力によって、液徐放部15から清掃ヘッド11の底面に、液剤22を連続的に徐々に放出させることが可能になる。
【0032】
また、本実施形態では、液供給パイプ21には、タンク部13のパイプ連結スリーブ32に連結される上端部と、上段のガイドスリーブ40との間に挟まれる部分において、当該液供給パイプ21を螺旋状に曲折させることにより、弛み吸収部41が形成されている。タンク部13を柄12に沿って上下に移動させるのに伴って、液供給パイプ21を柄12に沿わせた状態を保持しつつ、この弛み吸収部41において余剰分の液供給パイプ21を吸収したり、この弛み吸収部41から必要な長さ分の液供給パイプ21を繰り出したりすることができるようになっている。
【0033】
さらに、本実施形態では、液供給パイプ21や液供給パイプ21が接続されるタンク部13の底部に、液供給パイプ21による供給流路を開閉する開閉バルブ(図示せず。)が設けられている。開閉バルブは、例えばタンク部13の底部に設けられた開閉レバー(図示せず。)の操作によって容易に開閉することができる。開閉バルブの開閉操作によって、例えば清掃具10の使用時における、タンク部13と液徐放部15とを液供給パイプ21を介して連通させて液徐放部15に静水圧を負荷しつつ液剤22を供給可能な状態と、例えば清掃具10の非使用時における、タンク部13と液徐放部15との液供給パイプ21を介した連通を遮断し、液溜まり部14に静水圧が負荷されないようにして液剤22の供給をストップした状態とを、容易に切り替えることができるようになっている。
【0034】
上述の構成を備える本実施形態の清掃具10では、清掃作業や仕上げ作業を行う際には、清掃クッション部17の底面17aを覆うようにして清掃シートを清掃ヘッド11に取り付け、開閉バルブを開放して、液徐放機構16の液溜まり部14及び液徐放部15に静水圧を負荷すると共に、タンク部13から液溜まり部14に液剤22を連続供給可能な状態とする。これによって、清掃シートには、液剤22が液徐放機構16の液徐放部15の全体から略均等に徐々に供給されることになり、清掃シートは適度な湿潤状態を保持して、床面等の被清掃面に液剤を略均等に塗布しつつ清掃作業や仕上げ作業を安定した状態で効率良く行うことが可能になる。
【0035】
一方、本実施形態の清掃具10では、例えば液剤22の種類によっては同じ水頭差H(図2参照)でも静水圧の作用によって液徐放部15から連続的に放出される液剤22の放出量が異なる場合がある。また清掃作業の内容に応じて、連続的に放出される液剤22の放出量を調整する必要を生じる場合がある。これに対して、本実施形態の清掃具10では、タンク部13を、スライド固定手段30を介して上下にスライド移動可能な状態で柄12に取り付けただけの簡易な構成によって、タンク部13に収容された液剤22による静水圧の作用によって液徐放部15から連続的に放出される液剤22の放出量を容易に調整することが可能になる。
【0036】
液剤22としては、水やワックス、界面活性剤溶液、オイル等がある。液剤は種類により粘度や濡れ性(界面張力)が異なる。例えば粘度が高くなると同じ水頭圧でも放出量が小さくなる。このように液剤の種類によって放出量が変化する為、使用者の所望する液剤の放出量は、液剤の種類によって水頭圧の高さを変化させる事で適宜コントロールする事が出来る。
【0037】
すなわち、本実施形態によれば、清掃ヘッド11に設けられた液放出部としての液徐放部15は、上方からの静水圧による放出圧力によって液剤22を清掃ヘッド11の底面に徐々に放出させるようになっており、タンク部13に収容された液剤22の静水面Pは、スライド固定手段30を介してタンク部13を柄12に沿って上下にスライド移動させ、所定の高さ位置に固定することにより、容易に調整することができるので、水頭差H(図2参照)を容易に変化させることが可能になる。そして、水頭差Hを変化させることにより、液徐放部15からの静水圧による放出圧力を調整して、液徐放部15から連続的に放出される液剤22の放出量を容易に調整することが可能になる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、液放出部としての液徐放部は、液溜まり部と液徐放部とからなるカートリッジタイプの液徐放機構を清掃ヘッドに装着して設けられるものである必要は必ずしもなく、清掃ヘッドに一体として組み込んだものであっても良い。液徐放部のみを着脱交換可能に形成しても良い。また液放出部は、樹脂焼結体、フェルト、連泡スポンジ、パルプ、不織布、ゴム等の多孔質素材からなる液徐放部である必要は必ずしも無く、例えば多数の微細な孔から液剤を徐々に放出させる機能を有するシャワー機構等のその他の種々の液放出部であっても良い。液剤貯留部は、スライドスリーブ部に固定されたタンク部である必要は必ずしも無く、例えばスライドスリーブ部にボトル取り付け部を設けて、カートリッジタイプのボトル容器を着脱交換可能に組みつけて用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る清掃具の斜視図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る清掃具の側面図である。
【図3】(a),(b)は、スライド固定手段を例示する要部断面図である。
【図4】清掃ヘッドの構成を説明する斜視図である。
【図5】カートリッジタイプの液徐放機構の清掃ヘッドへの取り付け状況を説明する断面図である。
【図6】カートリッジタイプの液徐放機構の構成を説明する、(a)は部分破断側面図、(b)は(a)のA−Aに沿った断面図である。
【図7】清掃ヘッドの構成を説明する、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 清掃具
11 清掃ヘッド
12 柄
13 タンク部(液剤貯留部)
14 液溜まり部
15 液徐放部(液放出部)
16 液徐放機構
21 液供給パイプ
22 液剤
30 スライド固定手段
31 スライドスリーブ部
32 パイプ連結スリーブ
33 気液置換逆止弁
34 蓋部材
35 開放操作部
36 支持リブ
37 コイルスプリング
38 係止部
39 連続係止刃
40 ガイドスリーブ
41 弛み吸収部
P 静水面
H 水頭差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃ヘッドと柄とからなり、清掃ヘッドに清掃シートを取着して用いる清掃具であって、
前記清掃ヘッドは、供給された液剤を上方からの静水圧の作用によって前記清掃ヘッドの底面に徐々に放出させる液放出部を備えており、
前記柄には、可撓性を有する液供給パイプを介して前記液放出部と連通する液剤貯留部が設けられており、該液剤貯留部は、スライド固定手段を介して上下にスライド移動可能な状態で前記柄に取り付けられており、前記液剤貯留部の前記柄に沿った固定位置を調整することにより、前記液剤貯留部に収容された前記液剤による静水面の高さ位置を調整する清掃具。
【請求項2】
前記スライド固定手段は、前記柄にスライド移動可能に装着されるスライドスリーブ部と、該スライドスリーブ部に設けられた開放操作部とからなり、該開放操作部は、弾性付勢力により前記柄に押し付けられて係止部を前記柄の外周面に係止した状態から、前記弾性付勢力に抗して操作することにより係止した状態を解除する開放機構を備える請求項1記載の清掃具。
【請求項3】
前記係止部は前記柄の外周面への摩擦力によって前記柄に係止される請求項2記載の清掃具。
【請求項4】
前記係止部は係止爪であり、該係止爪による係止部を柄の周面に設けた連続係止刃に係止することによって係止部が前記柄に係止される請求項2記載の清掃具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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