説明

清掃具

【課題】衝突時の弾性緩衝体の分離を抑制した状態で所期の衝突緩衝機能を良好に発揮させ、且つ、製造コストの低廉化を図る。
【解決手段】清掃部1を備えた基台2の外周面2aに、これの全周にわたって外方に開口する環状の装着溝7が形成され、この装着溝7には、基台2の外周面2aよりも外方に突出する環状の弾性緩衝体8が、当該弾性緩衝体8の弾性復元力で前記装着溝7の内面7aに密着する状態で嵌合装着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基台にブラシ毛やスポンジ等の清掃部が設けられている清掃具の緩衝技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の清掃具では、基台の外周面が清掃対象箇所及びその周囲に存在するタイルや鏡等に衝突することに起因する損傷を抑制することが要望されている。
そのため、従来では、基台の外周面よりも外方に突出する緩衝部分と基台の樹脂成形時に埋設状態で固着される埋設部分とを備えた環状の弾性緩衝体を製作し、この弾性緩衝体を基台の成形金型内に装着した状態でのインサート成形により、基台と弾性緩衝体とを一体化していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の清掃具では、前記弾性緩衝体を基台の成形金型内に装着した状態でのインサート成形により、基台と弾性緩衝体とを一体化しているため、基台の成形時の工程数が増加するとともに、成形金型自体が複雑化するため、清掃具の製造コストが高騰化していた。
【0005】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、衝突時の弾性緩衝体の離脱を抑制した状態で所期の衝突緩衝機能を良好に発揮することができ、且つ、製造コストの低廉化を図ることのできる清掃具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による第1の特徴構成は、清掃部を備えた基台の外周面に、これの全周にわたって外方に開口する環状の装着溝が形成され、この装着溝には、基台の外周面よりも外方に突出する環状の弾性緩衝体が、当該弾性緩衝体の弾性復元力で前記装着溝の内面に密着する状態で嵌合装着されている点にある。
【0007】
上記構成によれば、前記基台の外周面に形成された装着溝に弾性緩衝体を嵌合装着した状態では、この弾性緩衝体の表面側は基台の外周面よりも外方に突出し、且つ、弾性緩衝体の嵌合部側は、当該弾性緩衝体の弾性復元力で装着溝の内面に密着しているから、他物との衝突時の衝撃力を緩和することができるとともに、この衝突時の離脱方向の外力に対して弾性緩衝体を装着溝に嵌合装着した状態に維持することができる。
【0008】
しかも、前記基台と弾性緩衝体とを各別に製造して、基台の装着溝に弾性緩衝体を嵌合装着するだけであるから、従来に比して前記基台の成形金型の簡素化と成形時の工程数の削減とを図ることができる。
【0009】
したがって、衝突時の弾性緩衝体の離脱を抑制した状態で所期の衝突緩衝機能を良好に発揮することのできる清掃具を製造コスト面で有利に提供することができる。
【0010】
本発明による第2の特徴構成は、前記基台の装着溝が、細幅の底面側装着溝とこれよりも広幅の表面側装着溝とから構成されているとともに、前記弾性緩衝体の嵌合部が、前記底面側装着溝に嵌合装着される細幅の底面側嵌合部と、前記表面側装着溝に嵌合装着される広幅の表面側嵌合部とから構成されている点にある。
【0011】
上記構成によれば、前記装着溝の細幅の底面側装着溝と広幅の表面側装着溝との間に存在する段差面から弾性緩衝体の表面までの緩衝厚み及び緩衝幅が大きくなり、例えば、前記基台の装着溝及び弾性緩衝体の嵌合部が、本発発明の細幅の底面側装着溝と同じ幅に形成されている場合に比して、緩衝機能を高めることができるとともに、前記広幅の表面側嵌合部が装着溝の中間深さにまで達するから、弾性緩衝体をそれに作用する捩れ等の離脱力に抗して嵌合装着状態に良好に維持することができる。
【0012】
本発明による第3の特徴構成は、前記基台の装着溝における表面側装着溝のうち、他物との衝突頻度が高い部位の溝部が他の部位の溝部よりも広幅に構成され、この広幅表面側装着溝部に対応する前記弾性緩衝体の表面側嵌合部の一部が、前記広幅表面側装着溝部に密着状態で嵌合装着可能な広幅表面側嵌合部分に形成されている点にある。
【0013】
上記構成によれば、他物との衝突頻度が高い部位の装着溝の表面側装着溝における溝幅及びこれに密着状態で嵌合装着される弾性緩衝体の表面側嵌合部の幅が他の部位よりも広幅に構成されているため、前記装着溝の表面側装着溝及び弾性緩衝体の表面側嵌合部の幅が全周で同一幅に構成されている場合に比して、他物との衝突頻度が高い部位での緩衝機能を高めることができるとともに、装着溝と弾性緩衝体との幅広い密着による弾性緩衝体の離脱抑制作用と、装着溝の表面側装着溝及び弾性緩衝体の表面側嵌合部の途中に存在する幅変化部位による溝長手方向でのずれ抑制作用とにより、弾性緩衝体を外力に抗して所期の嵌合装着状態に良好に維持することができる。
【0014】
本発明による第4の特徴構成は、前記弾性緩衝体の表面側嵌合部の広幅表面側嵌合部分の表面には、当該広幅表面側嵌合部分に連続する細幅表面側嵌合部分の表面よりも外方に突出する緩衝突条が形成されている点にある。
【0015】
上記構成によれば、前記弾性緩衝体の表面側嵌合部の広幅表面側嵌合部分の表面に突出形成された緩衝突条による緩衝厚みの増加により、他物との衝突頻度が高い部位での緩衝機能を効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態を示す清掃具の全体側面図
【図2】(a),(b)は弾性緩衝体の平面図と側面図
【図3】(a),(b)は図2のIIIa−IIIa線断面図とIIIb−IIIb線断面図
【図4】(a),(b)は弾性緩衝体装着時の要部の拡大側面図と弾性緩衝体取外し時の要部の拡大側面図
【図5】(a),(b)は基台の前部における拡大分解図と拡大組立図
【図6】(a),(b)は基台の後部における拡大分解図と拡大組立図
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
図1は、清掃具の一例である浴室用洗浄ブラシを示し、清掃部の一例である多数のブラシ毛1が下面側に植設されている平面視略五角形の合成樹脂製(例えば、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等)の基台2の上面にブラケット3を突設し、このブラケット3に、柄取付け筒部4の前端部を水平軸芯周りで揺動自在に枢支ピン5にて枢着するとともに、前記柄取付け筒部4には、伸縮操作可能な伸縮柄6が脱着可能に嵌合装着されている。
【0018】
前記柄取付け筒部4には、基台2の後半部2B側の水平上面と略平行になる姿勢と図1に示すように前記水平上面に対して設定角度で傾斜する姿勢とに選択的に係合保持可能な操作部4Aが設けられている。
【0019】
前記伸縮柄6は、合成樹脂製のグリップ6Aを備えたアルミニウム合金製の第1連結柄6Bと、当該第1連結柄6Bに伸縮自在に挿嵌されるアルミニウム合金製の第2連結柄6Cとを主要構成として備えている。
【0020】
前記第1連結柄6Bの先端部には、第2連結柄6Cを伸縮範囲の任意の位置で締付け固定並びに固定解除操作可能な操作部6Dが設けられているとともに、前記第2連結柄6Cの先端部には、前記基台2側の柄取付け筒部4に対して所定の嵌合連結位置にまで挿嵌したとき、前記柄取付け筒部4に形成した係止孔(図示せず)を通して外部に突出する状態で係合する係合解除操作可能な係止部6Eが設けられている。
【0021】
そして、図2〜図6に示すように、前記基台2の外周面2aに、これの全周にわたって外方に開口する環状の装着溝7が形成され、この装着溝7には、基台2の外周面2aよりも外方に突出する平面視略五角形の環状で、且つ、前記装着溝7の中心線に沿っての縦断面での内面輪郭形状及び装着溝7の中心線に対して直交する横断面での内面形状と同一又は略同一に形成された軟質エラストマ樹脂製の弾性緩衝体8が、当該弾性緩衝体8の弾性復元力で前記装着溝7の内面7aに密着する状態で着脱可能に嵌合装着されている。
【0022】
前記弾性緩衝体8は、基台2の外周面2aの最大輪郭部位を乗り越え移動可能な状態にまで拡大(拡径)側に弾性変形操作可能で、前記基台2の装着溝7に弾性緩衝体8を嵌合装着した状態では、この弾性緩衝体8の表面側は基台2の外周面2aよりも外方に突出し、且つ、弾性緩衝体8の嵌合部側は、当該弾性緩衝体8の弾性復元力によって装着溝7の内面7aに密着しているから、他物との衝突時の衝撃力を緩和することができるとともに、この衝突時の外力に対して弾性緩衝体8を装着溝7に嵌合させた初期の装着状態に維持することができる。
【0023】
前記基台2の装着溝7は、細幅の底面側装着溝7Aとこれよりも少し広幅の表面側装着溝7Bとから構成されているとともに、前記弾性緩衝体8の嵌合部が、前記底面側装着溝7Aに密着状態で嵌合装着される細幅の底面側嵌合部8Aと、前記表面側装着溝7Bに密着状態で嵌合装着される広幅の表面側嵌合部8Bとから構成されている。
【0024】
前記基台2の装着溝7における表面側装着溝7Bのうち、洗浄時に他物との衝突頻度が高い部位となる平面視V字状の前半部2Aにおける前端から約7割弱に相当する領域(基台2の前半部2Aの全領域でも、5割の領域でもよい。その領域は他物との衝突頻度に応じて任意に設定することができる。)の溝部7Baが、それに連続する他の領域(部位)の溝部7Bbよりも広幅に構成され、この広幅表面側装着溝部7Baに対応する前記弾性緩衝体8の表面側嵌合部8Bの一部が、前記広幅表面側装着溝部7Baに密着状態で嵌合装着可能な広幅表面側嵌合部分8Baに形成されている。
【0025】
つまり、前記装着溝7における表面側装着溝7Bは、基台2の前半部2Aにおける前端から衝突頻度の高い領域に基づいて設定された特定部位(前半部2Aの略7割弱の寸法を隔てた部位)を境界にして、他物との衝突頻度が高い前方側を広幅の表面側装着溝部7Baに構成し、衝突頻度の低い前記特定部位よりも後方側を細幅の表面側装着溝部7Bbに構成してある。
【0026】
また、前記弾性緩衝体8の表面側嵌合部8Bも、上述の表面側装着溝7Bと同様に、基台2の前半部2Aにおける前端から衝突頻度の高い領域に基づいて設定された特定部位を境界にして、他物との衝突頻度が高い前方側を広幅の表面側嵌合部分8Baに構成し、衝突頻度の低い前記特定部位よりも後方側を細幅の表面側嵌合部分8Bbに構成してある。
【0027】
前記弾性緩衝体8の表面側嵌合部8Bの広幅表面側嵌合部分8Baの表面8aには、当該広幅表面側嵌合部分8Baに連続する細幅表面側嵌合部分8Bbの表面よりも外方に突出する緩衝突条8Cが、前記弾性緩衝体8の長手方向に沿う姿勢で一体形成されている。
【0028】
前記弾性緩衝体8の表面側嵌合部8Bにおける広幅表面側嵌合部分8Baと細幅表面側嵌合部分8Bbとの境界部分の上下両面は傾斜面8bに構成されているとともに、前記装着溝7の表面側装着溝7Bにおける広幅の表面側装着溝部7Baと細幅の表面側装着溝部7Bbとの境界部分の内面も、弾性緩衝体8の傾斜面8bと密着可能な傾斜面7bに構成されている。
【0029】
そして、前記特定部位を境にして、他物との衝突頻度が高い部位の装着溝7の表面側装着溝7Bにおける表面側装着溝部7Baの溝幅及びこれに密着状態で嵌合装着される弾性緩衝体8の表面側嵌合部8Bにおける表面側嵌合部分8Baの幅が、他の表面側装着溝部7Bbの溝幅及び表面側嵌合部分8Bbの幅よりも広幅に構成されているため、前記装着溝7の表面側装着溝7Bの溝幅及び弾性緩衝体8の表面側嵌合部8Bの幅が全周で同一幅に構成されている場合に比して、他物との衝突頻度が高い部位での緩衝機能を高めることができるとともに、装着溝7と弾性緩衝体8との幅広い密着による弾性緩衝体の離脱抑制作用と、装着溝7の表面側装着溝7B及び弾性緩衝体8の表面側嵌合部8Bの途中に存在する傾斜面7b,8bでの幅変化による溝長手方向でのずれ抑制作用とにより、弾性緩衝体8を外力に抗して所期の嵌合装着状態に良好に維持することができる。
【0030】
前記弾性緩衝体8を構成する軟質エラストマ樹脂製としては、天然ゴム、合成ゴム、ポリイソブチレン、ポリエチレン、シリコーン等がある。
【0031】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の第1実施形態では、清掃部の一例である多数のブラシ毛1が植設された洗浄ブラシについて説明したが、スポンジや不織布などの他の清掃部を備えた清掃具であってもよい。
【0032】
(2)上述の第1実施形態では、柄付きタイプの清掃具について説明したが、前記基台2を直接把持する又は基台2に設けた把手を把持するタイプの清掃具であってもよい。
【0033】
(3)上述の第1実施形態では、前記基台2を平面視略五角形の輪郭形状に形成したが、この基台2の輪郭形状を矩形、円形、楕円形等に構成してもよい。
前記基台2の形状は使用条件やデザイン等に基づいて適宜変更が可能である。
【0034】
(4)上述の第1実施形態では、前記基台2の装着溝7に、基台2の外周面2aよりも外方に突出する環状の弾性緩衝体8を、これの弾性復元力で装着溝7の内面7aに密着する状態で着脱可能に嵌合装着したが、この弾性緩衝体8を必要に応じて接着剤等を併用して装着溝7の内面に固着してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 清掃部(ブラシ毛)
2 基台
2a 外周面
7 装着溝
7A 細幅の底面側装着溝
7B 広幅の表面側装着溝
7Ba 広幅表面側装着溝部
8 弾性緩衝体
8A 細幅の底面側嵌合部
8B 広幅の表面側嵌合部
8Ba 広幅表面側嵌合部分
8Bb 細幅表面側嵌合部分
8C 緩衝突条
8a 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃部を備えた基台の外周面に、これの全周にわたって外方に開口する環状の装着溝が形成され、この装着溝には、基台の外周面よりも外方に突出する環状の弾性緩衝体が、当該弾性緩衝体の弾性復元力で前記装着溝の内面に密着する状態で嵌合装着されている清掃具。
【請求項2】
前記基台の装着溝が、細幅の底面側装着溝とこれよりも広幅の表面側装着溝とから構成されているとともに、前記弾性緩衝体の嵌合部が、前記底面側装着溝に嵌合装着される細幅の底面側嵌合部と、前記表面側装着溝に嵌合装着される広幅の表面側嵌合部とから構成されている請求項1記載の清掃具。
【請求項3】
前記基台の装着溝における表面側装着溝のうち、他物との衝突頻度が高い部位の溝部が他の部位の溝部よりも広幅に構成され、この広幅表面側装着溝部に対応する前記弾性緩衝体の表面側嵌合部の一部が、前記広幅表面側装着溝部に密着状態で嵌合装着可能な広幅表面側嵌合部分に形成されている請求項2記載の清掃具。
【請求項4】
前記弾性緩衝体の表面側嵌合部の広幅表面側嵌合部分の表面には、当該広幅表面側嵌合部分に連続する細幅表面側嵌合部分の表面よりも外方に突出する緩衝突条が形成されている請求項3記載の清掃具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−177442(P2011−177442A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46882(P2010−46882)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000100850)アイセン工業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】