説明

清掃容易な植物栽培装置

【課題】清掃を容易でき、しかも、植物の栽培を継続しながら清掃でき、加えて、それを簡素な構成により実現できる植物栽培装置を提供する。
【解決手段】栽培用水槽1内が仕切り壁2により一方の側3ともう一方の側4とに仕切られ、一方の側3を植物栽培部として給液部6が設けられると共に、もう一方の側4に排液部7が設けられ、給液部6から植物栽培部3に供給された養液8が仕切り壁2をオーバーフローにより乗り越えてもう一方の側4に流れ込み、排液部7を通じて排出されるようになされており、該もう一方の側4に清掃除去対象物を捕獲する受け9が取外し可能に設置されている。また、植物栽培部3の底面3aがもう一方の側4に向けて斜め下方に傾斜し、仕切り壁2が取外し可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃容易な植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、野菜類等の植物を水耕栽培等で育てる植物栽培装置では、栽培過程において、植物からの老廃物や、藻、カビなどが発生することから、それらを取り除くための清掃をする必要があり、その清掃のために、従来の植物栽培装置では、栽培用水槽から養液をすべて排出し、栽培用水槽を取り出し、取り出した栽培用水槽からそれらの清掃除去対象物を除去することが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−50165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、そのような方法による清掃は、非常に厄介で、多くの時間と労力を必要とするという問題がある。のみならず、清掃を行うとなると、養液を全量廃棄することになるため、植物の栽培を継続することができなくなってしまうという問題もある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、清掃を容易にすることができ、しかも、植物の栽培を継続しながら清掃することができ、加えて、それを簡素な構成により実現することができる植物栽培装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、栽培用水槽内が、底面から立ち上がる仕切り壁により、一方の側ともう一方の側とに仕切られ、該仕切り壁を挟む前記一方の側を植物栽培部として該一方の側に給液部が設けられると共に、前記もう一方の側に排液部が設けられ、給液部から植物栽培部に供給された養液が、前記仕切り壁をオーバーフローにより乗り越えて前記もう一方の側に流れ込み、排液部を通じて排出されるようになされており、
前記もう一方の側には、養液に含まれる清掃除去対象物を捕獲する受けが取外し可能に設置され、該受けが捕獲した除去対象物を、該受けを前記もう一方の側から取り外すことで除去することができるようになされていることを特徴とする植物栽培装置によって解決される(第1発明)。
【0007】
この装置では、栽培用水槽内の一方の側である植物栽培部において植物から発生した老廃物や、藻等の清掃除去対象物は、養液とともに、仕切り壁をオーバーフローにより乗り越えてもう一方の側に流れ込み、そこに設置されている受けに捕獲される。そして、該受けは、該もう一方の側に取外し可能に設置されていることにより、該受けに捕獲された清掃除去対象物は、該受けを該もう一方の側から取り外すだけで栽培用水槽内から除去することができ、これによって清掃を容易にすることができる。なお、清掃除去対象物の取り除かれた受け、あるいは、新たな受けを、前記もう一方の側に設置すれば、元の状態に戻る。
【0008】
しかも、給液部から一方の側である植物栽培部に供給された養液が、仕切り壁をオーバーフローにより乗り越えてもう一方の側に流れ込み、排液部を通じて排出されるという養液の流れは、前記もう一方の側に受けが有るか無いかにかかわらず維持することができるものであり、受けの取外しによる清掃中であっても、養液を流し続けて、植物の栽培を継続することができる。
【0009】
加えて、栽培用水槽内を仕切り壁により一方の側ともう一方の側とに仕切り、該仕切り壁を挟む一方の側を植物栽培部として該一方の側に給液部を設け、もう一方の側に排液部を設け、もう一方の側に受けを取外し可能に設置しただけの構成であるから、清掃容易性と清掃中の栽培継続とを簡素な装置構成によって効果的に実現することができる。
【0010】
第1発明において、植物栽培部となる前記一方の側の底面が、前記もう一方の側に向けて斜め下方に傾斜していると共に、前記仕切り壁が取外し可能であるとよい(第2発明)。
【0011】
この場合は、仕切り壁を取り外すことにより、一方の側である植物栽培部の底面側にたまった清掃除去対象物をもう一方の側に移動させることができ、しかも、前記一方の側の底面はもう一方の側に向けて斜め下方に傾斜しているので、一方の側の底面側にたまった清掃除去対象物を、その傾斜を利用して、容易にもう一方の側に移動させることができて、清掃対象箇所を該もう一方の側に集中させることができて、清掃を容易にすることができる。なお、仕切り壁を取り外して行う清掃は、養液を流して植物の栽培を継続しつつ行ってもよいし、養液を流さず栽培停止状態して行うようにしてもよい。後者の場合は、洗浄水を流すようにしてもよい。
【0012】
第1,2発明において、前記栽培用水槽が、上下方向に複数段となるよう備えられており、各段の栽培用水槽は前記もう一方の側が同じ側に位置して備えられているとよい(第3発明)。
【0013】
この場合は、水平方向における設置スペースを小さくすることができるのみならず、各段の栽培用水槽に対する清掃を同じ側からのアクセスで行うことができて清掃を容易にすることができる。
【0014】
第1〜第3発明において、前記栽培用水槽の植物栽培部の直上に栽培用光源が設けられているとよい(第4発明)。
【0015】
この場合は、栽培用光源により植物の光合成を促進することができることはいうまでもなく、更に、そのような栽培用光源が備えられていても、清掃対象物は前記もう一方の側の受けに捕獲されるし、また、仕切り壁が取り外せることと一方の側の底面の傾斜とにより清掃除去対象物を前記もう一方の側に集中させやすく、そのため、清掃がそのような栽培用光源の存在によって妨げられることはなく、清掃を容易にすることができる。
【0016】
第4発明において、受けの直上に滅菌用紫外線ランプが備えられているとよい(第5発明)。この場合は、滅菌用紫外線ランプによって養液の液質を清浄化することができる。特に、滅菌用紫外線ランプは、清掃除去対象物が捕獲される受けの直上に備えられているので、効果的に浄化することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の植物栽培装置は、以上のとおりのものであるから、清掃を容易にすることができ、しかも、植物の栽培を継続しながら清掃することができ、加えて、それを簡素な構成により実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態の植物栽培装置を示すもので、図(イ)は断面側面図、図(ロ)は分解断面側面図である。
【図2】図(イ)は栽培中の植物栽培装置を示す断面側面図、図(ロ)は清掃方法の一つを示す断面側面図、図(ハ)はもう一つの清掃方法を示す断面側面図である。
【図3】実施形態の植物栽培装置の全体構成を示す断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1に示す実施形態の植物栽培装置は、水耕栽培式のものからなっており、1は栽培用水槽であり、該栽培用水槽1は、平面視方形状をしていて、底板の周囲が側壁で囲まれたものからなり、内部の底面から立ち上がる仕切り壁2により、相対的に広い一方の側3と相対的に狭いもう一方の側4とに仕切られ、仕切り壁2を挟む前記一方の側3には、栽培ベッド5が設置されて植物栽培部が形成されていると共に、給液部6が設けられ、また、前記もう一方の側4には排液部7が設けられ、図2(イ)に示すように、給液部6から植物栽培部3に供給された養液8が、仕切り壁2をオーバーフローにより乗り越えてもう一方の側4に流れ込み、排液部7を通じて排出されるようになされている。
【0021】
そして、上記のもう一方の側4には、養液に含まれる清掃除去対象物、例えば植物からの老廃物、藻、カビ等を捕獲する受け9が取外し可能に設置され、該受け9が捕獲した除去対象物を、図2(ロ)に示すように、該受け9を前記もう一方の側4から取り外すことで除去することができるようになされている。
【0022】
受け9は、横断面「ひ」の字状をしていて、一方の肩部9aを栽培用水槽1の立ち上がり側壁1bに掛け、もう一方の肩部9bを仕切り壁2に掛けることで、もう一方の側4の内部に位置決め状態に保持されており、上昇変位させることで、該もう一方の側4から取り外すことができるようになされている。なお、受け9は、網状のもの、フィルター状のものなどからなっていてもよいし、桝状のものからなっていてもよいし、形態に特に制限はなく、要は、仕切り壁2をオーバーフローにより乗り越えてもう一方の側4に流れ込んできた養液に含まれる清掃除去対象物を捕獲して排液部7の方に行かせるのを抑えることができるようなものであればよい。
【0023】
また、本実施形態では、栽培用水槽1において、植物栽培部となる前記一方の側3の底面3aは、前記もう一方の側4に向けて斜め下方に傾斜している。そして、上記の仕切り壁2は、本実施形態では、その下端部が、栽培用水槽1の底面に設けられた細溝1cに差し込まれて設置されており、図2(ハ)に示すように、上方に抜くことができるようになっていて、そのように抜くことによって栽培用水槽1から取り外すことができるようになされている。
【0024】
また、本実施形態の植物栽培装置は、図3に示すように、上記の栽培用水槽1…が、上下方向に複数段となるよう備えられた構成となっていて、各段の栽培用水槽1…は前記もう一方の側4…が同じ側に位置して備えられている。10は、ポンプ等を含む養液制御部である。
【0025】
更に、本実施形態では、図1及び図3に示すように、各栽培用水槽1の植物栽培部3の直上に栽培用光源11が設けられており、また、各栽培用水槽1における受け9の直上に滅菌用紫外線ランプ12が備えられている。
【0026】
上記の植物栽培装置では、図2(イ)に示すように、栽培用水槽1内の一方の側3である植物栽培部3において植物13から発生した老廃物や、藻等の清掃除去対象物は、養液8とともに、仕切り壁2をオーバーフローにより乗り越えてもう一方の側4に流れ込み、そこに設置されている受け9に捕獲される。そして、該受け9は、該もう一方の側4に取外し可能に設置されていることにより、該受け9に捕獲された清掃除去対象物は、図2(ロ)に示すように、該受け9を該もう一方の側4から上昇させて取り外すだけで栽培用水槽1内から除去することができ、これによって清掃を容易にすることができる。
【0027】
なお、受け9は、清掃除去対象物を取り除いた後に再使用されるものであってもよいし、清掃除去対象物を捕獲した受け9はそのまま廃棄して新たな受けをもう一方の側4に設置して使用するというような用いられ方をしてもよい。
【0028】
しかも、このように、給液部6から一方の側である植物栽培部3に供給された養液8が、仕切り壁2をオーバーフローにより乗り越えてもう一方の側4に流れ込み、排液部7を通じて排出されるという養液の流れは、前記もう一方の側4に受け9が有るか無いかにかかわらず維持することができるものであり、図2(ロ)に示すように、受け9の取外しによる清掃中であっても、養液8を流し続けて、植物13の栽培を継続することができる。
【0029】
加えて、栽培用水槽1内を仕切り壁2により一方の側3ともう一方の側4とに仕切り、該仕切り壁2を挟む一方の側3を植物栽培部として該一方の側3に給液部6を設け、もう一方の側4に排液部7を設け、もう一方の側4に受け9を取外し可能に設置しただけの構成であるから、清掃容易性と清掃中の栽培継続とを簡素な装置構成によって効果的に実現することができる。
【0030】
特に、本実施形態では、図2(ハ)に示すように、仕切り壁2を取り外すことで、一方の側である植物栽培部3の底面3a側にたまった清掃除去対象物をもう一方の側4に移動させることができ、しかも、前記一方の側3の底面3aはもう一方の側4に向けて斜め下方に傾斜しているので、一方の側3の底面3a側にたまった清掃除去対象物を、その傾斜を利用して、容易にもう一方の側4に移動させることができて、清掃を容易にすることができる。
【0031】
また、本実施形態では、栽培用水槽1…が、上下方向に複数段となるよう備えられているが、各段の栽培用水槽1…は前記もう一方の側4が同じ側に位置して備えられているので、各段の栽培用水槽1に対する清掃を、同じ側からのアクセスで行うことができて、清掃を容易にすることができる。
【0032】
更に、栽培用水槽1の植物栽培部3の直上には栽培用光源11が設けられているので、植物13の光合成を促進することができるのはもちろん、そのような栽培用光源11が備えられていても、清掃対象物は前記もう一方の側4の受け9に捕獲されるし、また、仕切り壁2が取り外せることと一方の側3の底面3aの傾斜とにより清掃除去対象物を前記もう一方の側4に集中させやすく、そのため、清掃がそのような栽培用光源11の存在によって妨げられることはなく、清掃を容易にすることができる。
【0033】
また、受け9の直上に滅菌用紫外線ランプ12が備えられているので、該滅菌用紫外線ランプ12によって養液の液質を清浄化することができる。特に、滅菌用紫外線ランプ12は、清掃除去対象物が捕獲される受け9の直上に備えられているので、効果的に浄化することができる。特に、受け9を光触媒塗布フィルターで構成する場合には、光触媒の作用で浄化を効果的なものにすることができる。なお、滅菌用紫外線ランプ12を使用する場合は、該ランプ12からの紫外線が植物栽培部3の方に入り込まないよう、反射板等を設ける等の措置を講ずるようにするとよい。
【0034】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、栽培用水槽1…が上下方向に複数段となるよう備えられているが、第3発明関係を除いて、一つの栽培用水槽1のみによって構成されていてもよいし、複数の栽培用水槽で構成される場合も水平方向に並列状態に並べて構成するようにしてもよいし、栽培用水槽1の配列や数に制限はない。栽培用水槽1の形態についても、特に制限はない。
【0035】
また、第2発明関係を除き、植物栽培部となる前記一方の側3の底面3aが水平で、かつ、仕切り壁2が取外しできないものであってもよく、その場合であっても、受け9を利用して清掃除去対象物を捕獲して清掃することができる。
【0036】
更に、上記の実施形態では、水耕栽培の場合を示したが、土耕栽培をはじめとする各種栽培に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…栽培用水槽
2…仕切り壁
3…一方の側(植物栽培部)
3a…傾斜底面
4…もう一方の側
6…給液部
7…排液部
8…養液
9…受け
11…栽培用光源
12…滅菌用紫外線ランプ
13…植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培用水槽内が、底面から立ち上がる仕切り壁により、一方の側ともう一方の側とに仕切られ、該仕切り壁を挟む前記一方の側を植物栽培部として該一方の側に給液部が設けられると共に、前記もう一方の側に排液部が設けられ、給液部から植物栽培部に供給された養液が、前記仕切り壁をオーバーフローにより乗り越えて前記もう一方の側に流れ込み、排液部を通じて排出されるようになされており、
前記もう一方の側には、養液に含まれる清掃除去対象物を捕獲する受けが取外し可能に設置され、該受けが捕獲した除去対象物を、該受けを前記もう一方の側から取り外すことで除去することができるようになされていることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
植物栽培部となる前記一方の側の底面が、前記もう一方の側に向けて斜め下方に傾斜していると共に、前記仕切り壁が取外し可能である、請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記栽培用水槽が、上下方向に複数段となるよう備えられており、各段の栽培用水槽は前記もう一方の側が同じ側に位置して備えられている請求項1又は2に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記栽培用水槽の植物栽培部の直上に栽培用光源が設けられている請求項1乃至3のいずれか一に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記受けの直上に滅菌用紫外線ランプが備えられている請求項4に記載の植物栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−125161(P2012−125161A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277352(P2010−277352)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】