説明

清掃部材保持具およびその製造方法

【目的】 軽量化および機械的強度の増強化が図れ、とくに、握り具合が改善できる清掃部材保持具を提供する。
【構成】 合成樹脂製のグリップ部4を備えた清掃部材保持具1において、横断面形状が略逆U字形に成形された合成樹脂製のグリップ部4の両立ち下がり部41,41を、各下端41a,41a同志が互いに接触もしくは接触に近い状態になるように内側方へ曲げてある。従って、両立ち下がり部41,41の間に中空部Sが存在し、中実体のものよりも軽量化が図れるうえ、略逆U字形のものと同等の強度が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばモップ状物などの清掃部材が着脱可能に装着される清掃部材保持具およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モップ状物などの清掃部材が着脱可能に装着される清掃部材保持具では、清掃部材が装着される保持片部とグリップ部とを合成樹脂により一体形成するようになっている。この合成樹脂製の清掃部材保持具におけるグリップ部については、従来より、握りやすく、かつ外観的に整った中実構造を採用しているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−225933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1に記載されるようなモップ保持具は、グリップ部が合成樹脂により中実体に成形されるから、グリップ部が比較的重くなって扱いにくいという指摘がある。更に、合成樹脂製のグリップ部を中実体に成形する場合、成形時の樹脂のひけによって外観が損なわれやすいという難点があり、成形時に中実体内部に気泡が入ることによって、強度の低下を招くおそれがあった。
【0004】
このため、最近では、成形時の樹脂のひけが押さえられ、十分な強度が得られるように、グリップ部を横断面形状が略逆U字形になるように成形する手法が取られる。しかし、これは、略逆U字形の両立ち下がり部間が開放されているので、グリップ部を握った際に手のひらの一部が前記開放部から内空部に入り込み、良好なフィット感が得られないという問題がある。
【0005】
この発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、機械的強度の増強化および軽量化が図れることは元より、握り具合が改善できる清掃部材保持具およびその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を達成するためになされたものであり、本発明の第1の形態は、合成樹脂製のグリップ部を備えた清掃部材保持具において、横断面形状が略逆U字形に成形された合成樹脂製のグリップ部の両立ち下がり部を、各下端同志が互いに接触もしくは接触に近い状態になるように内側方へ曲げてあることを特徴とする清掃部材保持具である。
【0007】
本発明の第2の形態は、合成樹脂製のグリップ部を備えた清掃部材保持具の製造方法であって、合成樹脂により前記グリップ部の横断面形状が略逆U字形になるように成形するとともに、成形時の樹脂における力学的作用により両立ち下がり部を内側方へ曲げ変形させて、両立ち下がり部の各下端同志を互いに接触もしくは接触に近い状態に設定することを特徴とする清掃部材保持具の製造方法である。
【0008】
本発明の第3の形態は、合成樹脂製のグリップ部を備えた清掃部材保持具の製造方法であって、合成樹脂により前記グリップ部の横断面形状が略逆U字形になるように成形し、ついで、このグリップ部成形体の両立ち下がり部を強制的に内側に変形させることにより、該グリップ部成形体の両立ち下がり部の各下端同志を互いに接触もしくは接触に近い状態に設定することを特徴とする清掃部材保持具の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の形態によれば、グリップ部の横断面形状が略逆U字形に成形されるとともに、両立ち下がり部が内側方へ曲がっているので、両立ち下がり部間の中空部の存在によって中実体のものよりも軽量化が図れるうえ、略逆U字形のものと同等の強度が確保される。とくに、前記両立ち下がり部における各下端同志が互いに接触もしくは接触に近い状態になっているから、使用者が握った際の手のひらが両立ち下がり部間の内空部に入り込むようなこともなく、恰も円筒体を握っているような良好なフィット感を得ることができる。なお、清掃部材は塵埃のような被清掃物を払拭したり粘着捕集する部材であり、例えばモップ等のクロス体、スポンジ体、ブラシ体などから選択される。
【0010】
本発明の第2の形態によれば、グリップ部を合成樹脂により横断面形状が略逆U字形になるように成形する際に、両立ち下がり部に対応する部位と他の部位とが肉厚不均一になるようにするか、または樹脂の流れ方向とその直角方向の収縮率の異方性によるよう樹脂注入口を考慮するか、さらには金型冷却が不均一になるよう成形金型を設計しておけば、成形時の樹脂の不均一な収縮によって厚い両立ち下がり部が自動的に内側方へ曲げ変形することができる。即ち、成形時の樹脂における力学的作用を利用してグリップ部の加工を行うから、特殊な曲げ手段を導入しなくても所望のグリップ構造を容易に実現することができる。
【0011】
本発明の第3の形態によれば、グリップ部を合成樹脂により横断面形状が略逆U字形になるように成形し、この後、このグリップ部成形体の両立ち下がり部を強制的に内側方へ曲げ変形させるから、曲げ変形量を任意に調整でき、所望のグリップ形状を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1はこの発明の実施形態にかかる清掃部材保持具が適用されたハンディ形清掃用具を示す分解斜視図、図2は図1のX−X線に沿った清掃用具の断面図、図3は同じく清掃部材保持具を示す底面図である。図1〜図3において、このハンディ形清掃用具10は、清掃部材保持具1と清掃部材50とからなる。
【0013】
前記清掃部材保持具1は、モップ状物である清掃部材50を着脱可能に装着するものであり、保持片部2と、この保持片部2の基端部2a側に位置する清掃部材押さえ部3と、保持片部2の基端部2aから後方へ延びるグリップ部4とが合成樹脂を射出成形することにより一体形成されている。なお、清掃部材50は、厚手の布からなる基材部51aの下面全域および全周縁に糸ないしは紐状物51bが縫い付けられており、また、上面には、ブリッジ状の被保持部51cが縫い付けられている。
【0014】
前記保持片部2は、前記清掃部材50の被保持部51cに差し込むためのものであり、全体の平面形状が長楕円のへら状に形成されている。この保持片部2は、中央に長楕円形の空所20を形成することにより、外側方へ円弧状に湾曲し、かつ各長手方向の両端で一体に連成された一対の弾性辺部21,21を存在させてあり、前記被保持部51cに差し込むと、一対の弾性辺部21,21が内側方へ弾性変形し、その弾性復帰力で被保持部51cが装着されるようになっている。勿論、この保持片部2の構成は、この一対の弾性辺部21,21を有するものに限られるものではなく、形状などを含めて任意のものを採用可能である。
【0015】
前記清掃部材押さえ部3は、前記清掃部材50の被保持部51cに差し込まれる保持片部2とにより、該被保持部51cを上下方向から挟着するものであり、前記保持片部2の上面よりも僅かに高い位置、具体的には、図2に示すように前記保持片部2上との間に清掃部材50の被保持部51cの厚み分が入り込む程度の隙間分を存した高い位置ある。
【0016】
この清掃部材押さえ部3は、前記グリップ部4の基端部4aの前端面から前方へ一体に突出する一対の弾性突出片31,31からなり、これら弾性突出片31,31の各先端部には、円弧状の清掃部材押さえ用湾曲部31a,31aが形成されている。勿論、この清掃部材押さえ部3についても、上記のような一対の弾性突出片31,31を設けるものに限らず、任意の構成のものを採用可能である。
【0017】
前記グリップ部4は、前記保持片部2の基端部2aから後方上空へ向かって延びており、把持しやすいように、長手方向で全体的にバナナ状に湾曲成形されている。このグリップ部4は、図1のY−Y線で示す横断面形状が図4に示すように、略逆U字形になっており、その両立ち下がり部41,41は、各下端41a,41a同志が互いに接触する状態に内側方へ曲がっている。勿論、両立ち下がり部41,41を、各下端41a,41a間に僅かな隙間が存在する程度、つまり接触に近い状態に、内側方へ曲げたものであってもよい。
【0018】
なお、グリップ部4の横断面形状は、厳密にグリップ部4の全長すべてにわたって略逆U字形でなくても、図3に示すように、グリップ部4の長手方向の端部を残して略全長にわたって略逆U字形であれば充分である。
【0019】
ついで、前記グリップ部4の成形方法を説明する。
第1の方法としては、まず、前記略逆U字形に対応する所定の成形金型(図示せず)を用意する。この成形金型では、前記両立ち下がり部41,41の肉厚Tと他の部位とが肉厚不均一になるようにするか、または樹脂の流れ方向とその直角方向の収縮率の異方性によるよう樹脂注入口を考慮するか、さらには金型冷却が不均一になるように設計しておく。
【0020】
この成形金型に合成樹脂を注入して成形を行い、図5の実線で示すように、横断面形状が略逆U字形にグリップ部成形体4Aを成形するが、この成形時に樹脂の不均一な収縮が発生するから、前記両立ち下がり部41,41における肉厚Tと他の部位との肉厚不均一、分子配向、冷却不均一のいずれかの要因によって内側方へ引っ張られて変形し、図5の鎖線で示すように、両立ち下がり部41,41の各下端41a,41a同志が互いに接触し、これにより、前記グリップ部4が成形される。勿論、この両立ち下がり部41,41の各下端41a,41a同志は、完全に接触しなくても極く僅かな隙間が存在する程度の接触に近い状態になってもよい。
【0021】
この第1の方法では、グリップ部4を合成樹脂により横断面形状が略逆U字形になるように成形する際に、両立ち下がり部41,41に対応する部位と他の部位とが肉厚不均一になるようにするか、または樹脂の流れ方向とその直角方向の収縮率の異方性によるよう樹脂注入口を考慮するか、さらには金型冷却が不均一になるように成形金型を設計しておけば、成形時の樹脂の不均一な収縮によって両立ち下がり部41,41が自動的に内側方へ曲げ変形するから、特別に曲げ手段を導入しなくても所望のグリップ構造を容易に得ることができる。また、グリップ部4を成形する第2の方法としては、まず、前記略逆U字形に対応する所定の成形金型を用意する。
【0022】
この成形金型に合成樹脂を注入して成形を行い、図6に示すように、横断面形状が略逆U字形のグリップ部成形体4Aを成形する。そして、金型から取り出した直後の高温状態で、このグリップ部成形体4Aの両立ち下がり部41,41を図7に示すように、物理的手段により強制的に内側方へ変形させ、両立ち下がり部41,41の各下端41a,41a同志が互いに接触させる。これにより、前記グリップ部4が成形される。勿論、この両立ち下がり部41,41の各下端41a,41a同志は、完全に接触しなくても、極く僅かな隙間が存在する程度の接触に近い状態になってもよい。
【0023】
この第2の方法では、グリップ部4を合成樹脂により横断面形状が略逆U字形になるように成形してから、このグリップ部成形体4Aの両立ち下がり部41.41を強制的に内側方へ曲げ変形させるから、その変形量を任意に調整でき、もって所望のグリップ部形状を容易に得ることができる。
【0024】
つぎに、上記構成の清掃部材保持具1の使用手順を説明する。
まず、清掃部材保持具1おけるグリップ部4を把持してから、前記保持片部2を図2に示すように、清掃部材50の被保持部51cに差し込めば、前記弾性辺部21,21が該被保持部51cの内側面で幅方向外方から規制されて内側方へ弾性変形するから、それら弾性辺部21,21の各弾性復元力で前記被保持部51cの内側面に圧接して保持される。
【0025】
さらに、前記保持片部2を図2に示すように、清掃部材50の被保持部51cに差し込めば、前記清掃部材押し付け部3における一対の弾性突出片31,31が被保持部51cを上方から弾性的押し付ける。具体的には、一対の弾性突出片31,31の先端側の湾曲部31a,31aが被保持部51c上に乗り上げるから、一対の弾性突出片31,31が該被保持部51cの厚みに応じて上方へ弾性変形し、その弾性復帰力で湾曲部31a,31aが前記被保持部51cを圧接する。
【0026】
これにより、清掃部材50の被保持部51cが前記湾曲部31aと前記保持片部2とで挟着されて保持される。そして、グリップ部4を把持したままで家具や机などを清掃部材50で拭き掃除することができる。この場合、グリップ部4の横断面形状が略逆U字形であるから、比較的軽く扱いやすい。また、このグリップ部4における両立ち下がり部41,41aが内側方へ曲がっており、各下端41a,41a同志が略接触状態であるから、恰もパイプ状と同様の強度が確保される。
【0027】
とくに、グリップ部4を把持した際に両立ち下がり部41,41a間の内空部Sに手のひらの一部が入り込んだりすることもなく、とても良好なフィット感を得ることができる。前記両立ち下がり部41,41aを円弧の軌跡に沿って内側方への曲げれば、一層フィット感が良好になる。
【0028】
なお、清掃作業が終了すれば、清掃部材50を持って清掃部材保持具1が相対的に後退するように引き抜き操作すれば、清掃部材50の被保持部51cから前記保持片部2を簡単に抜くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
ところで、前記実施形態では、清掃部材50を保持する保持片部2とグリップ部4とが一体形成されたハンディ形のもので説明したが、この発明は、実施形態での構成に限定されるものではなく、保持片部2に対してグリップ部4が別体形成されたものであっても、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施形態にかかる清掃部材保持具が適用された清掃用具を示す分解斜視図である。
【図2】図1のX−X線に沿った断面図である。
【図3】同じく清掃部材保持具における底面図である。
【図4】図1のY−Y線に沿ったグリップ部の断面図である。
【図5】第1の成形方法の説明図である。
【図6】第2の成形方法によるグリップ部成形体を示す断面図である。
【図7】図6のグリップ部成形体に対する曲げ加工の説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 清掃部材保持具
2 保持片部
2a 基端部
3 清掃部材押さえ部
4 グリップ部
4A グリップ部成形体
4a 基端部
10 ハンディ形清掃用具
20 空所
21 弾性辺部
31 弾性突出片
31a 湾曲部
41 立ち下がり部
41a 下端
50 清掃部材
51a 基材部
51b 紐状物
51c 被保持部
S 内空部
T 肉厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製のグリップ部を備えた清掃部材保持具において、横断面形状が略逆U字形に成形された合成樹脂製のグリップ部の両立ち下がり部を、各下端同志が互いに接触もしくは接触に近い状態になるように内側方へ曲げてあることを特徴とする清掃部材保持具。
【請求項2】
合成樹脂製のグリップ部を備えた清掃部材保持具の製造方法であって、合成樹脂により前記グリップ部の横断面形状が略逆U字形になるように成形するとともに、成形時の樹脂における力学的作用により両立ち下がり部を内側方へ曲げ変形させて、両立ち下がり部の各下端同志を互いに接触もしくは接触に近い状態に設定することを特徴とする清掃部材保持具の製造方法。
【請求項3】
合成樹脂製のグリップ部を備えた清掃部材保持具の製造方法であって、合成樹脂により前記グリップ部の横断面形状が略逆U字形になるように成形し、ついで、このグリップ部成形体の両立ち下がり部を強制的に内側に変形させることにより、該グリップ部成形体の両立ち下がり部の各下端同志を互いに接触もしくは接触に近い状態に設定することを特徴とする清掃部材保持具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−239317(P2006−239317A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63007(P2005−63007)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000133445)株式会社ダスキン (119)
【Fターム(参考)】