説明

減圧雰囲気下で銅箔を巻き取るための巻き取り芯

【課題】減圧雰囲気下における銅箔ウェブ巻き取りにおいて、シワの発生を防止できる巻き取り芯。
【解決手段】減圧雰囲気下で銅箔ウェブを巻き取るための巻き取り芯であり、幅方向中心から両端方向に向かって外径が大径化する中央部を備えた巻き取り芯であって、好ましくは巻き取ろうとする銅箔の長さをL[m]、厚みをT[m]、幅をWとしたとき、巻き取り芯の幅方向中心部の最小外径Rと、ウェブと接する範囲内での巻き取り芯の最大外径R’がR×0.01 ≧ (R’−R) ≧ Z×0.001
但し、


であり、ウェブと接する範囲内での巻き取り芯の最大外径の位置が、ウェブの端部からW/4以内の距離に存在し、厚みTが5〜200μmである巻き取り芯及びそれを使用した巻き取り方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧雰囲気下におけるウェブ巻き取り技術に関し、詳細には、減圧雰囲気下において銅箔ウェブを巻き取るための巻き取り芯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
減圧雰囲気下において、ロール・ツウ・ロール搬送方式で銅箔や基板等のウェブ基材(幅広で長尺な素材)を搬送しながら乾式成膜して巻き取るウェブハンドリング技術は、例えば特許文献1に開示されているように公知である。しかしながら、このような搬送方式で搬送されるウェブの厚さを完全に均一にすることは困難であり、特に銅箔ではウェブ中心部と両端部での厚み差が生じやすい。また、搬送ロールのアライメントを完全に調整することも困難である。そして、このようなウェブ厚みの不均一やミスアライメントは、搬送経路中のフリースパン(ロール支持のない範囲)部分で、ウェブに長尺方向に略平行な波板状のくぼみを生じさせる。この長尺方向に略平行なくぼみが巻き取り直前に存在すると、巻き取り芯上にくぼみが乗り上げ、その上にさらに材料が巻かれることによって長尺方向に伸びる巻きシワとなる。巻き取り芯上に発生した巻きシワは転写されて、巻き取られるウェブの全長に渡るシワの原因となる。
【0003】
搬送ロール間のシワであれば、搬送ロールの表面材質をウェブとの摩擦力が小さい材質に変更するなどして波板状くぼみがシワとならないようにすることができる。しかし巻芯ではウェブ同士が接触するため、巻芯材質を変更してもシワを防ぐことはできない。
大気中のウェブハンドリングで巻き取り芯上に発生する巻きシワを防止するため、例えば特許文献2では、巻き取り部分にタッチロールを設置してシワを防止する工夫が提案されている。また特許文献3では、巻き取り芯をクラウン状(中央部の径を大きくするテーパが形成されている)にすることで巻きシワを防止する工夫も示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−118835号公報
【特許文献2】特開2008−302418号公報
【特許文献3】特開2004−098095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大気圧下で従来のウェブハンドリング技術を実施する場合、巻き取られるウェブに波状くぼみが存在していても、巻き取られるウェブと巻き取り芯上に巻き取られたウェブ間に気体が存在してウェブ同士があまり密着しないため、波状くぼみは端部に押しやられて巻きシワが発生しにくかった。しかし、従来技術を減圧雰囲気下や真空中で行うと、ウェブ同士が密着して巻き取られるため、波状くぼみはウェブ同士を引き離す際に生じる高い摩擦力に阻まれて、ウェブ端部に逃げられずに巻きシワが頻繁に発生する問題があった。そして、上記特許文献2の方法では、設備の改造を伴うためコストがかかり、かつ減圧雰囲気下での巻きシワ発生問題は解決できなかった。また、特許文献3の場合、巻き取り芯中央のクラウン部でウェブ同士が密着しやすいため、減圧雰囲気下での巻きシワは更に顕著であった。
本発明は、減圧雰囲気下における銅箔ウェブ巻き取りにおいて、シワの発生を防止し、長時間安定して操業できるウェブハンドリングに適した巻き取り芯を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、幅方向中心部の外径よりも端部の外径が大きい巻き取り芯を使用することにより、減圧雰囲気下での銅箔ウェブの巻き取りにおいて、シワの発生を著しく防止できることを発見し、本発明を完成した。本発明は、下記構成を有する。
(1) 減圧雰囲気下で銅箔ウェブを巻き取るための巻き取り芯であり、幅方向中心から両端方向に向かって外径が大径化する中央部を備えた巻き取り芯。
(2) 巻き取ろうとする銅箔の長さをL[m]、厚みをT[m]としたとき、巻き取り芯の幅方向中心部の最小外径Rと、ウェブと接する範囲内での巻き取り芯の最大外径R’が
R×0.01 ≧ (R’−R) ≧ Z×0.001
但し、
【数1】

である(1)に記載の巻き取り芯。
(3) 巻き取ろうとする銅箔ウェブの幅をWとしたとき、ウェブと接する範囲内での巻き取り芯の最大外径の位置が、ウェブの端部からW/4以内の距離に存在する(1)又は(2)に記載の巻き取り芯。
(4) 銅箔ウェブ厚みが5〜200μmである(1)〜(3)いずれかに記載の巻き取り芯。
(5) 上記(1)〜(4)いずれかに記載の巻き取り芯を使用した巻き取り方法。
【発明の効果】
【0007】
巻き取り芯の回転周期は幅方向ならどの位置であっても同一であるので、外径が大きいほど周速度は大きい。一方、搬送中のウェブは、搬送速度の速い方へスライドする性質を有する。理論によって本発明を限定するものではないが、巻き取り芯の外径に差違がある場合、ウェブには、外径が大きく周速度が大きい方向に向かう応力が働く。巻き取り芯の外径が幅方向中心からウェブ両端部に向かって大径化している場合、ウェブ上の波板状くぼみは両端へ向かって働く応力により伸ばされ、巻きシワが発生しにくくなる。その結果、本発明の巻き取り芯を使用すると、減圧雰囲気下において、銅箔の巻き取りを長時間安定して操業できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一例であり、両端部の径が中心部より大きくなる逆クラウンが形成されている巻き取り芯の特徴を強調した概略図である。
【図2】本発明の別の一例の巻き取り芯の概略図である。
【図3】本発明の巻き取り芯を使用する銅箔スパッタリング成膜装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の巻き取り芯は、減圧雰囲気下でウェブを巻き取るために使用される。減圧雰囲気とは、大気圧以下のことを言い、例えばスパッタリング等の操作を行う際の圧力である0.8〜0.05Pa、更には0.5〜0.1Paでも可能である。
本発明の巻き取り芯は、幅方向中心から両端方向に向かって外径が大径化する中央部を備える。中央部は、漸進的に大径化しても、幅方向中心から端部に向かって所定の距離まで同一外径で、中心から所定距離を超えると外径が漸進的に大径化してもよい。両端方向への大径化により得られる形状は、逆クラウン型でもテーパ型でもよい。
巻き取り芯の形状は、外径が幅方向中心から漸進的に大径化して両端部が最大外径となっている基本型であってもよいし(図1:タイプ(1))、幅方向中心から両端方向に向かって外径が漸進的に大径化し、中心から一定距離Yを超えた後は小径化している改変型でもよい(図2:タイプ(2))。タイプ(2)の場合、Y点は、巻き取られるウェブの両端部より外側に存在しても内側に存在してもよく、ウェブ両端部と一致していてもよい。Y点が、巻き取られるウェブの両端部より外側に存在する場合、タイプ(1)の巻き取り芯と本質的に同じ効果が得られる。
なお、本発明の巻き取り芯の外径は、外径の相違によりウェブに働く応力が発生するため、中心から幅方向に左右均等であることは当然である。
【0010】
外径の差:
本発明の巻き取り芯は、幅方向中心から両端方向に向かって外径が大径化するため、幅方向中心の外径とウェブ両端部に対応する巻き取り芯の外径に差が生じる。この外径の差が大きいほど、ウェブを両端に引き延ばす力が大きくなり、巻きシワを抑制する効果は大きい。
しかし、外径の差が大きいとウェブ中央に生じるたるみが大きくなり、ウェブ幅方向に平行な巻き締まりシワが発生する。理論によって本発明を限定するものではないが、巻き締まりシワの発生する機構は下記の通りと考えられる。巻き取り時に、巻かれたウェブは多少スリップして巻き締まる。巻き取り芯の外径が大きな部分に対応するウェブ部は巻き締めにより巻き取り芯に密着する一方、外径が小さな中央部に巻かれたウェブ部は弛んだ状態で外側から巻き締められる。すると小径の中央部に巻き取られたウェブ弛み部分は、巻き締め圧力により逃げ場がなくなり、複数箇所で幅方向に平行に(長尺方向に直角に)、通常は、芯に接触している最初に巻き取られたウェブから外側のウェッブ表面に向けて形成される凸形状となり、最終的にウェッブ幅方向に平行な、横方向の巻き締まりシワを形成する。この巻き締まりシワは、次々と巻き取られる外側ウェブへ転写され、横幅方向の巻き締まりシワが周期的に発生する。巻き締まりシワは、上記の他、巻き取り張力が大きすぎる場合にも巻き取られた銅箔内で芯へ向かう巻き取りコイルの内部応力が大きくなって発生することもある。
【0011】
巻きシワ抑制効果が大きく、かつ巻き締まりシワも強く発生させない、本発明の巻き取り芯の外径の差、即ち、巻き取り芯の幅中心部の外径である最小外径Rと、巻き取り芯がウェブと接する範囲内での最大外径R’との差(R’−R)は、目的の銅箔の長さをL[m]、厚みをT[m]としたとき、下記範囲内であることが望ましい。
R×0.01 ≧ (R’−R) ≧ Z×0.001
但し、
【数2】

【0012】
[外径差の上限]
(R’−R)が大きすぎると巻き締まりシワが発生する。巻き締まりシワが発生しないようにするためには、外周面全体に銅箔が密着しなければならない。そのためにはRの部分と比較してR’の部分では(R’−R)×πの長さだけ銅箔が伸びなければならない。一般的な搬送張力下での銅箔の伸びは1.0%程度以下であることから(R’−R)/Rは0.01以下であることが望ましい。すなわちR×0.01≧(R’−R)であることが望ましい。
本発明の巻き取り芯の外径(R)は、特に限定されるものではないが、典型的には70〜700mm、樹脂製であると例えば80〜520mmである。
【0013】
[外径差の下限]
(R’−R)が小さすぎると巻きシワ抑制効果が得られない。巻きシワを抑制するためには、(R’−R)が巻き取ろうとする銅箔コイルの外径の0.1%以上であることが望ましい。なお、巻き取ろうとする銅箔コイルの外径Zは、上記式で概算することができる。
上記式中、本発明の巻き取り芯に巻かれる銅箔厚み(T)は特に限定されるものではないが、典型的には5〜200μm、好ましくは6〜100、更に好ましくは6〜50μmである。5μm未満であると箔が切れやすくなる一方、200μmを超えると通常の巻き取り芯を使用しても巻き取りシワが発生しにくいため、本発明の効果は確認できない。
本発明の巻き取り芯に巻かれる銅箔長さ(L)は特に限定されるものではなく、銅箔厚みとの関係で選択されるが、典型的には100〜30,000m、好ましくは500〜20,000mである。例えば、厚み9μmであると、長さ200〜20,000m、厚さ33μmであると長さ100〜5,000mである。短いと生産効率が下がり、長いと銅箔コイルが重く、かつ外径が大きくなるため操作性に劣る。
なお、巻き取り芯は、銅箔を巻き取り、中心の回転軸を抜いた銅箔コイルの形態で使用される。そのため、巻き取り芯は、特定の銅箔厚み、長さを巻き取るための銅箔コイル製品用に設計されており、銅箔コイルの外径は、巻き取り芯の外径R、巻き取られる銅箔の厚みT及び長さLによって特定される。銅箔コイルの外径が大きくなるに従い、本発明の巻き取り芯の外径差は大きくすることができるが、上記範囲内であるとシワの発生は効果的に抑制できる。銅箔コイルの外径は大きいので、本発明の巻き取り芯の外径差による影響は数値的に無視できるレベルである。
【0014】
[銅箔の重量]
本発明の巻き取り芯に巻き取られる銅箔の重量(L×W×T×d)は、1,500kg〜15kg、1,000kg〜50kgの範囲であることが望ましい。但し、目的の銅箔の幅をW[m]、密度をd[kg/m3]とする。1,500kgを超えると巻き取り最終段階でシワが発生しやすく、15kg未満であると生産性の観点から好ましくない。
【0015】
巻き取り芯の最大径の位置:
ウェブと接する範囲内での巻き取り芯の最大外径の位置がウェブの両端部に近いほど、巻きシワ抑制効果が高い。従って、ウェブ幅をWとしたときウェブ端部からW/4以下、好ましくは端部からW/10以下の位置に、ウェブと接する範囲内での巻き取り芯の最大径部分が存在することが望ましい。ウェブ端部からW/4を超える内側に最大径部分が存在する場合、シワが抑制されるウェブ幅は全幅の50%以下となり、生産性の観点から好ましくない。
【0016】
本発明の巻き取り芯に巻かれる銅箔ウェブは、どのような銅箔又は銅合金箔でもよく、例えば圧延銅箔、電解銅箔等の銅箔であり、規格品としては例えば、タフピッチ銅箔が挙げられる。
【0017】
巻き取り芯の中心を貫通している、回転軸を通すための空洞の内径は、装置、芯材料の強度、銅箔厚みや巻き取り数により適宜選択される。
本発明の巻き取り芯で銅箔ウェッブを巻きとった後の、巻き取りコイル外径Zは、巻き取り芯の外径Rを基準とすると例えば1.1R〜5R、好ましくは1.25R〜2.5Rである。10Rを超えると体積が大きくなり減圧槽内で扱いづらくなる。一方、1.1Rより小さいとコイル単重(1個のコイル当たり巻き取られる銅箔重量)が小さくなるため、生産性の観点から好ましくない。
【0018】
銅箔スパッタリング成膜装置内での本発明の巻き取り芯の使用例を、図3を利用して説明する。
図3は、本発明の巻き取り芯13を備えた成膜装置20の模式図である。成膜装置20は、搬送ロール11、12及び巻き取り芯10、13と、冷却ドラム21と、カソード部22〜25とを備えている。
巻き取り芯10は一般的な巻き取り芯であり、長尺状の銅箔30が巻き付けられており、ここから銅箔30が所定の張力により送り出される。
搬送ロール11により銅箔30は冷却ドラム21へ搬送される。
【0019】
冷却ドラム21、スパッタリングカソード22〜25でスパッタ部が構成され、搬送された銅箔30がスパッタリング成膜処理される。
冷却ドラム21は、搬送ロール11から搬送された銅箔30を受け、搬送しながら、銅箔30表面がスパッタリングされている間、銅箔30を冷却する。
【0020】
スパッタリングカソード22〜25は、冷却ドラム21で搬送される銅箔30の表面にスパッタリング処理を行い、スパッタリング処理後の銅箔30は搬送ロール12により、巻き取り芯13へ搬送される。
【0021】
本発明の巻き取り芯13は、搬送ロール12から搬送された銅箔30を受け取り、ロール状に巻き取る。ここで、銅箔厚みの不均一やミスアライメントにより、搬送ロール12から巻き取り芯13の間のフリースパンで、銅箔12に長尺方向に略平行な波板状のくぼみが発生する場合があるが、巻き取り芯13の外径が中心部から銅箔両端部に向かって大径化しているので、波板状くぼみは巻き取り芯13上で両端へ向かって働く応力により伸ばされ、巻きシワが発生せずに長時間安定して操業できる。
【0022】
なお、減圧雰囲気下において、銅箔ウェブハンドリングを長時間安定して操業するためには、搬送ロール、巻き取り芯のミスアライメント、銅箔ウェブの形状、及び、搬送張力を、当業者の通常行う設計事項として適宜調整して、より良好にシワの発生を抑制する。
【0023】
(搬送張力)
搬送張力の上限は、シワの発生しない搬送張力の最大値であり、ロールミスアライメント、銅箔形状にもよるが、一般に20kg/mm2程度であり、好ましくは10kg/mm2程度である。一方下限は、スリップ、蛇行、巻きずれ等の問題が発生しない最低の張力であるが、一般的には1.5kg/mm2程度であり、好ましくは2.5kg/mm2程度である。
【実施例】
【0024】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を提供するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0025】
発明例及び比較例として、巻き取り芯に銅箔ウェブを巻き取り、シワの発生を評価した。下記に銅箔及び巻き取り時の搬送条件を記載する。
(銅箔)
箔種:1C
厚み:9μm、17μm、33μm
幅:605mm
長さ:200〜20000m
密度:8950kg/m3
(搬送条件)
張力:9.5kg/mm2
ラインスピード:15m/min
雰囲気:1.0×10-4Paまで真空引きしたのちArガスを導入して、巻き取りチャンバー内のArガス圧を0.10Paとした。
【0026】
(巻き取り芯)
図1のタイプ(1)に該当する逆クラウン型、図2のタイプ(2)に対応する中央部逆クラウン型の2種類の形状の巻き取り芯を準備した。比較例として、外径差のない従来の円筒型巻き取り芯を使用した。
巻きシワは巻き取り時に長尺方向に発生するので巻き取り試験中に目視確認した。巻き締まりシワは、シワ発生直後の確認は困難であるので、巻き取り完了後、巻き取り開始位置から10〜100mの距離のウェブにおいて張力をかけない状態で横幅方向のシワが周期的に存在するか目視確認して確認した。
シワの評価は、以下を基準として目視評価した。
巻きシワ○:試験中、巻きシワが発生しなかった。
巻きシワ△:巻き取り長さ100m以上で巻きシワが発生した。
巻きシワ×:巻き取り長さ100m未満で巻きシワが発生した。
巻き締まりシワ○:試験中、巻き締まりシワが発生しなかった。
巻き絞まりシワ△:巻き絞まりシワが発生したが、張力をかけた状態では判別できない程度のシワであった。
【0027】
結果を表1に示す。表中、Wは銅箔ウェブの幅(605mm)である。
実施例の巻き取り芯は全て、幅方向中心から両端方向に向かって外径が大径化する中央部を備えているので、巻きシワ及び巻き締まりシワの発生が抑えられた。外径差が好ましい範囲を超えている実施例7及び12では巻き締まりシワが発生しやすかった。外径差が好ましい範囲の下限未満である実施例3では巻き取り長さ6,000m前後で巻きシワが発生したが、従来例より巻きシワなく巻き取ることができる銅箔長さは長かった。
タイプ(1)の実施例16又は実施例6と、タイプ(2)の実施例8〜11を比較したが、いずれも良好な結果であった。
実施例8は、巻き取り芯の最大外径の位置から,幅方向中心側の範囲では巻きシワは発生しなかったが、巻き取り芯の最大外径の位置から幅方向外側の範囲では巻き取りシワが発生した。
比較例20〜23で外径差のない従来の円筒型巻き取り芯を使用すると、厚み9、17及び33μmのいずれの銅箔でも、巻き取り長さ100m以下で巻きシワが発生した。
【0028】
【表1】

【符号の説明】
【0029】
20 成膜装置
11、12 搬送ロール
10、13 巻き取り芯
21 冷却ドラム
22〜25 スパッタリングカソード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧雰囲気下で銅箔ウェブを巻き取るための巻き取り芯であり、幅方向中心から両端方向に向かって外径が大径化する中央部を備えた巻き取り芯。
【請求項2】
巻き取ろうとする銅箔の長さをL[m]、厚みをT[m]としたとき、巻き取り芯の幅方向中心部の最小外径Rと、ウェブと接する範囲内での巻き取り芯の最大外径R’が
R×0.01 ≧ (R’−R) ≧ Z×0.001
但し、
【数1】

であることを特徴とする請求項1に記載の巻き取り芯。
【請求項3】
巻き取ろうとする銅箔ウェブの幅をWとしたとき、ウェブと接する範囲内での巻き取り芯の最大外径の位置が、ウェブの端部からW/4以内の距離に存在することを特徴とする請求項1又は2に記載の巻き取り芯。
【請求項4】
銅箔ウェブ厚みが5〜200μmである請求項1〜3いずれか1項に記載の巻き取り芯。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載の巻き取り芯を使用した巻き取り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−211003(P2012−211003A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77878(P2011−77878)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】