説明

減少した粒子損失を有する水銀分注デバイス

極めて減少した粒子損失を有し、かつ、水銀放出化合物と、塑性金属又は合金と、任意にゲッタ物質との粉末の混合体を具備する、水銀分注器(10;20)を説明する。糸状の断面を有し、長さが長いが同じ断面を有する製造された製品を切断することにより得られる水銀分注デバイス(10;20)であって、金属コンテナー(11;21)及び粉末の混合体(12;22)を備え、粉末の混合体(12;22)が加熱による水銀の放出のために適した少なくとも一つの物質並びに金属又は合金を備え、前記混合体がコンテナーの内部に配置される、水銀分注デバイス(10;20)。前記金属又は合金が130HVよりも低いビッカース硬度を有し、その質量%が粉末混合体の総質量の10%よりも低く、かつ、前記金属又は合金の粉末のサイズが水銀化合物の粉末のサイズよりも大きくない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、極めて減少した粒子損失を有する水銀分注デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
水銀分注器は、蛍光灯の製造に著しく有用である。公知のように、これらのランプは、これらの作用のために、数から数百ヘクトパスカル(hPa)までの圧力の希ガスと、水銀蒸気の存在とを含む、気体の混合体を必要とする。
【0003】
ランプの現在の製造工程は、元素を投与するできる限り高い精度を保証する、水銀を追加するためのシステムの使用を必要とする。この要求は、ランプの動作を可能にするための所定の最小限の値を下回らない水銀の量を有し、かつ、同時に、水銀の毒性を前提として、水銀の使用に関する国際基準に合致するために、可能な限り少ない水銀の量を有するという、反対の需要から来ている。これらの極端な投与精度の要求は、液晶ディスプレー(LCD)のバックライトに使用されるランプの場合に、合致することは著しく難しい。現実に、これらのランプは、周囲照明に用いられる物とは違い数ミリメートルの直径を有し、ひいては、体積が非常に小さい。したがって、数ミリグラムの水銀量の正確、かつ、再現性のある投与を必要とする。
【0004】
本願出願人の名称による国際特許出願公開第WO98/53479号公報は、完全に閉じていない金属コンテナーを備える水銀分注器であって、チタニウム及び水銀の化合物(好ましくは、化学式TiHgを有する)と、ゲッタ物質(getter material)、すなわち金属(好ましくは、ジルコニウム)又は合金(好ましくは、遷移金属の中から選ばれた1又はそれ以上の他の元素を伴うジルコニウム、及びアルミニウム)との粉末の混合体を含む金属コンテナーを備える水銀分注器を開示する。ランプの製造において、例えば水、酸素、水素、及び酸化炭素などの存在がその作業を危険に曝すおそれがあり、ゲッタ物質は、これらの微量の気体を吸着する特性を有する。約800〜900℃の温度での加熱により、これらの分注器は、含有する水銀のほぼすべてを放出する、ひいては、ランプに導入される元素の正確な制御を可能にする。具体的に、産業の視点から、上述の公開公報の中で説明されたそれらの中でもっとも有用な分注器は、約1mmの幅及び任意の長さの台形の断面を有する糸状に製造された製品を切断することにより得られる分注器である。そのような型の分注器は、金属の細長い板に適切なローラーを通過させ、細長い板を平らな底面を有するV字形状断面にする段階と、このようにして得られた上方開口溝を上述の粉末混合体によって充填する段階と、細長い板の上方の端部の間に、約200〜400マイクロメートル(μm)で可変の幅のスリットを形成するように、粉末の表面上へ細長い板の端部を折り返す段階と、このようにして得られた製造された製品の粉末をスリットの幅と同じ幅を有するローラーにより圧縮する段階と、最後に、糸状に製造された製品を所望の長さに切断する段階と、を含む工程を通して製造される。このように製造された分注器は、正確な水銀投与の能力及びその減少された横のサイズに起因して近年に素晴らしい商業的成功を挙げ、いわゆる“二重締め付け(double pinch−off)”工程において、分注器がLCDバックライトの製造において用いられることを正確な水銀投与の能力及びその減少された横のサイズが可能にし、前述の特許公開公報の明細書の一部である図7に関連し説明される。
【0005】
さらに、この型の分注器は、ランプ自体の内部にこれらの分注器を有するように設計されるランプに用いてもよく、そのような構造は、前述の国際特許出願公開WO98/53479で説明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの分注器に伴う課題は、ある場合において、最初の糸状に製造された製品から分注器を得るための切断工程が、圧縮された粉末のパッケージを不安定にするおそれがあることである。これは、いくらかの粒子の損失、具体的には切断後に露出される粉末パッケージの2面からの損失を生じるおそれがある。したがって、二重締め付け工程が実行されるとき、そのように作り出された粉末は、製造されたランプの密閉のためにガラス管が圧縮及び溶接される領域に到達するおそれがある。もしこのような事態が起きれば、密閉は完全ではなく(具体的には、密閉域に存在する可能性のある漏れ又は溶かされたガラス内への粒子の混入により発生した気泡に起因する)、ランプは捨てられなければならない。水銀分注器がランプの中で使用されるように設計されているときは、粒子の損失は、その特性を台無しにするおそれがあり、例えばダークスポットの形成の原因となる。
【0007】
したがって、この発明の目的は、先行技術の欠点を克服する、改良された水銀分注器を提供することにあり、さらに具体的には、既知の糸状の分注器のすべての利点を有し、ただし、分注器に関して減少した粒子損失を有する、分注器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によれば、長さが長いが同じ断面を有する製造された製品を切断することにより得られる、糸状の断面を有する水銀分注デバイス(10;20)であって、
− 金属コンテナー(11;21)、及び、
− 混合体(12;22)であって、前記コンテナーの内部に配置されており、加熱による水銀の放出のために適した少なくとも一つの物質並びに金属又は合金を含む粉末の前記混合体
を備える水銀分注デバイス(10;20)において、前記金属又は合金が130HVよりも低いビッカース硬度を有し、前記金属又は合金の質量%が粉末混合体の総質量の10%よりも低く、かつ、前記金属又は合金の粉末のサイズが混合体の他の粉末のサイズよりも大きくないことを特徴とする、水銀分注器の使用により、これら及び他の成果は達せられる。
【発明の効果】
【0009】
本願発明者は、類似の既知の分注器に用いられる粉末混合体への上述の硬度の金属又は合金の添加が、分注器自体を製造する切断作用により端部から発生するおそれのある粒子損失の減少を可能にすることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の分注器の第1の実施形態を示す図。
【図2】この発明による、分注器の第2の有力な実施形態を示す図。
【図3】この発明の分注器及び先行技術の分注器による粉末損失試験の結果をグラフで示した図。
【図4】図3で示された実施例とは別の分注配合及び金属充填を伴う、この発明の分注器及び先行技術の分注器による粉末損失試験の結果をグラフで示した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明は、以上の図を参照して説明される。
【0012】
図1及び図2において、描かれた構成要素の寸法及び寸法比は、粉末の表現及びそれらのサイズに特に、かつ、包括的に関連して、これらの図の可読性を向上するために変更される。
【0013】
この発明の分注器は、1.5mmよりも小さい直径を有する円に概ね内接しうる断面と、数ミリメートルの長さの、細長い形状を有する。切断されることによりこの発明の分注器が得られるであろう糸状に製造された製品が水銀の一様な線形充填を有するので、分注器の長さは、ランプの中に導入されなくてはならない水銀の量に依存する。
【0014】
図1は、この発明の分注器の第1の実施形態を示す。分注器10は、分注器の、側面ともまた言及できる面の全長にわたってスリット13を残すために、前述のとおり粉末12の混合体の周りで細長い金属の板を折ることにより製造された金属コンテナー11の形状をなす。一般的には、スリット13の幅は、200〜400μmである。スリットは、スリットと同じ幅を有する円筒状のローラーによって粉末を圧縮するために(分注器10が切断することにより得られる糸状に製品の製造時に)も使用され、ひいては粉末のパッケージの中に凹部14を形成する。
【0015】
図2は、この発明の分注器の第2の実施形態を示す。この場合、分注器20は、端部の開口を除いて完全に閉鎖されているコンテナー21の形状をなし、これらの端部は最初に製造される糸状の製品から分注器を得るための切断により作り出される。この型の分注器は、糸状の最終的な直径に対して大きな直径を有する金属管の中への粉末混合物22を充填し、糸状に製造された製品を得るためにこの組体を引き抜き(drawing)、この製造された製品から所望の長さの小片を切断することによって製造してもよい。しかしながら、好ましくは、糸状に製造された製品は、混合物22で筒を満たすことより始まり、圧力ローラーの連続体にそれを通過させることにより得られる。この圧力ローラーは各通過時に製造された製品の断面積を減少し、様々なローラーの間で前進させる。分注器20のこの製造方法は、引き抜き方法に好ましい。なぜならば、引き抜き方法に関して、ローラーによる工程が本願出願人の名称により米国特許第6,679,745号公報に開示されているように、より一様、かつ、再現性のある水銀の線形充填を得ることが可能になると認められるからである。
【0016】
完全に閉鎖した分注器構造を製造する他の方法は、細長い板の端部同士を隣接させること又はそれらを重ねることにより、スリット型構造について説明された分注器に似た工程によりなされる。とりわけ、この後者の工程は、多角形の断面を伴う完全に閉鎖された水銀分注器の製造に有用である。
【0017】
コンテナーを形成する金属は、空気中において安定している如何なる金属でもよい。好ましくは、加工がし易く、かつ、分注器の使用が二重締め付け工程を用いた外部水銀供給源及びいくつかの型のランプでは内部に常在するデバイスの両方として、あるいは分注器の使用が想定されるランプに望ましくない気体が進入すること防ぐために、加熱による低気体排出特性を有する金属が用いられる。好ましい金属は、スチール、ニッケル又はニッケルをめっきした鉄である。製造された分注器の金属の厚さは、1/10ミリメートルの桁であり、一般的にはおよそ0.1〜0.3mmを備える。
【0018】
図1及び図2で各々12及び22と参照番号を付けられた、この発明の分注器に用いられる粉末の混合体は、加熱により水銀の蒸気を放出することのできる物質と、特別な機械的特性を有する金属又は合金で形成される。
【0019】
水銀放出化合物はアマルガムであり得る。しかしながら、これらの化合物は、およそ100℃及び200℃の間の温度で既に元素の放出を開始することにより特徴付けられており、それにより、アマルガムの使用は、分注器が水銀を放出するために加熱されるための段階を除いてこれらの温度には決して達しない、ランプの製造工程に用いられる分注器の製造のためのみに可能である。好ましいのは、チタニウム及びジルコニウムの両方又は一方を伴う水銀の化合物の使用である。例えば、化合物は、米国特許第3,657,589号公報に開示される一般式TiZrHg及び具体的には化合物TiHg、又は国際特許出願公開第2006/008771 A1号公報に開示される化合物、具体的にはTi22.5−Cu30−Cr5.5−Hg42の質量%配合を有する化合物を有する。これらの化合物は、250μmよりも小さく、好ましくは125μmよりも小さい粒子サイズを有する粉末の形状でこの発明の分注器に用いられる。
【0020】
混合体の第2の成分は、ビッカース硬度試験法によって測定された硬度が130HVよりも低い金属又は合金である。その他の説明としては、これらの金属又は合金は塑性成分としても定義される。ビッカース硬度は、硬度が測定される必要のある物質の表面の上にピラミッド形状をしたダイヤモンドのチップ(基準の形状とサイズを有する)を置き、あらかじめ決められた時間だけあらかじめ決められた荷重をチップに印加し、表面上にチップによりつけられた印のサイズを測定するという、金属技術では一般的な方法で測定される。ビッカース硬度の値は、「HV」という標識記号の前に置かれた数字により表示される。もっとも一般的な測定条件においては、チップに印加される荷重は30kgであり、荷重は10〜15秒間印加される。
【0021】
これらの条件は、本明細書で説明されるすべての試験において使用され、この発明を定義するビッカース硬度がこれらの条件下で得られることを前提とするべきである。本願発明者は、分注器を得る製品の製造上の取り扱いの間に、これらの硬度の値を有する金属又は合金の粉末が、適切な変形の特性を有することを確認した。このようにして、金属又は合金の粉末は、水銀化合物の粒子が染み込み、粉末は粒子の“接着剤”として働く。この発明の目的に適した金属の例は、鉛、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、インジウム、錫、チタニウム及びニッケルである。好ましくは、ランプの汚染を避けるために約800〜900℃の温度(水銀の排出をさせるために分注器が加熱される温度)で、蒸気を発生しない金属が使用される。金属は、分注器の製造工程及び1度使用された分注器の廃棄を容易にするために毒性がなく、かつ、コストの低い金属を含むのが好ましい。さらなるこれらの選択基準によれば、錫(30〜60HVの硬度を有する)、アルミニウム(20〜50HV)、銅(50〜90HV)、チタニウム(60〜80HV)、及びニッケル(100〜130HV)が好ましい。それらの配合によって、合金は、極めて様々な硬度を有する。この発明に有用な合金は、アルミニウム−銅合金であり、例えば、約130HV(又はそれよりも低い)の硬度を有するアルミニウムを質量で25%(又はそれよりも多く)含む合金、約60〜130HVの硬度を有する銅−亜鉛合金、又は約30〜80質量%の錫を含む銅−錫合金である。
【0022】
分注器からの粒子損失の減少を達成するために、粉末混合体の総質量の0.5〜10%の低百分率の塑性金属又は合金が必要とされる。質量%で0.5%よりも少ない使用によっては、塑性成分の量は、“接着”効果を得るには少なすぎる一方で、10%よりも多い量では、さらなる利点をもたらすことなく、水銀化合物の量の無用な減少を招来する。好ましくは、塑性成分は、粉末混合体の質量で2〜5%を構成する。
【0023】
質量比に加えて、粉末の保持効果は、混合体を形成する物質の粉末の寸法比にもよる。過度のサイズを有する塑性成分の粉末は、塑性成分が存在しない混合体の比較的広い領域において、極めて不均一な混合体を招来するおそれがあり、それゆえ、その役割を果たさない。その一方で、本願発明者は、塑性成分の過度に細かい粉末も、混合体の最良の均一性を保証するものであるが、分注器の切断端部からの粉末損失の減少を達成しないことを観察した。この発明の目的を達成するために、塑性成分の粉末は、水銀化合物の粉末のサイズよりも大きくなく、かつ、好ましくは、水銀化合物の粉末のサイズの0.2〜0.8倍のサイズを有さなくてはならないことが確認されている。
【0024】
この発明の分注器に用いられる粉末の混合体は、2つの上述した成分に追加して他の成分を含んでもよい。例えば、好ましくは、混合体は、製造が終了したランプの中又はそれらの製造段階の間に存在する気体を吸収するためのゲッタ物質の粉末を含む。この分野で広く知られているように、好ましいゲッタ物質は、例えば、ニオビウム、バナジウム、及びハフニウムなどの金属であり、かつ、好ましくは、チタニウム及びジルコニウム、又は遷移元素、アルミニウム若しくは希土類元素を伴うジルコニウムの合金である。好ましいゲッタ物質は、約16質量%のアルミニウムを含んだ合金Zr−Al又は合金Zr−Co−A(ここで、AはY、La又は希土類元素の中から選択された1又はそれ以上の元素を指す)であり、これらは本願出願人の名称による米国特許第5,961,750号公報において説明されている。ゲッタ物質粒子のサイズは、水銀化合物の粒子のサイズに類似する。
【0025】
分注器に存在する粉末混合体が3つ(又はそれよりも多く)の成分を含んでなるとき、質量での塑性成分の量は、混合体の総質量の0.5〜10%(好ましくは、2〜5%)を必ず含まなければならない。
【実施例】
【0026】
この発明は以下の実施例によって、さらに説明されることになる。
【0027】
(実施例1)
本文明細書において説明された工程に引き続いて、水銀分注器のそれぞれのサンプルは、図1に示される形状を有し、かつ、Ti22.5−Cu30−Cr5.5−Hg42(St545という名称で本願出願人により販売される)の質量%配合を有する水銀化合物と、Zr84−Al16(St101という名称で本願出願人により販売される)の質量%配合を有するゲッタ合金(getter alloy)と、参考サンプルの中には存在していないアルミニウムとの粉末の混合体を含み、製造される。粉末の平均サイズは、それぞれ、水銀化合物及びゲッタ合金については180μmよりも小さく、アルミニウムについては125μmよりも小さい。様々なサンプルに用いられる混合体の質量%構成は表2で示される。
【0028】
【表1】

【0029】
混合体の様々な配合にかかわらず、すべてのサンプルは、同条件下で準備され、具体的には、粉末パッケージの中で凹部を形成する円筒形状ローラーに同じ圧縮荷重が印加され、かつ、同じ工具及び同じ印加される強さで最初の糸状に製造される製品からサンプルが切断されることにより、準備される。
【0030】
サンプルのこれらのシリーズについて(各型について、300の小片、長さ8mm)、10〜40分の間の、加振台の上でサンプルを加振し試験の開始時と終了時との間の質量の差を粒子損失として計測することにより、粒子損失試験は行われた。粒子損失試験は、サンプルごとに5回、測定が繰り返された。
【0031】
試験の結果は、図3のグラフにより示される。サンプルの各シリーズについて、2本の曲線が示され、上方及び下方の曲線がサンプルのそのシリーズについて時間とともに推移する粒子損失の最大値及び最小値に当てはまる(粉末混合体の総質量に対する質量%として表現される)。番号1、2及び3は表1の中の数字に対応を有するサンプルのシリーズに関する曲線を示すのに対し、文字“C”は参考サンプルに関する2本の曲線を指す。“max”という下付き文字を有する曲線は、サンプルの所定のシリーズの最大粒子損失値を指すのに対し、“min”という下付文字を有する曲線は、最小粒子損失値を指す。
【0032】
(実施例2)
実施例1と同様に、水銀分注器の様々なサンプルは、図1で示される形状を有し、かつ、チタニウム水銀化合物(St505という名称で本願出願人により販売される)と、質量%配合Zr84−Al16を有するゲッタ合金(St101という名称で本願出願人により販売される)と、参考サンプルの中には存在しないアルミニウムとの粉末の混合体とを含み、製造される。様々なサンプルに用いられる混合体の質量%構成は表2で示される。
【0033】
【表2】

【0034】
試験の結果は、図4のグラフにより示される。この場合において、参照番号4はこの発明についてのサンプルに関する曲線を示すのに対して、ラベル“C1”は参考サンプルに関する2本の曲線を指し、その配合は表2において示され、この場合においても、“max”という下付き文字を有する曲線は、サンプルの所定のシリーズの最大粒子損失値を指すのに対し、“min”という下付文字を有する曲線は、最小粒子損失値を指す。
【0035】
図3及び図4の曲線は、この発明のサンプルが参考サンプルよりも著しく低い粒子損失を有し、かつ、粒子損失の量の可変性が低いことも示す。減少する粒子損失に加えて、粒子損失量の可変性が低いという特性は、ランプの工業的生産に有用である。なぜならば、このことは水銀投与の高い再現性を有することを可能にするからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さが長いが同じ断面を有する製造された製品を切断することにより得られる、糸状の断面を有する水銀分注デバイス(10;20)であって、
− 金属コンテナー(11;21)、及び、
− 混合体(12;22)であって、前記コンテナーの内部に配置されており、加熱による水銀の放出のために適した少なくとも一つの物質並びに金属又は合金を含む粉末の前記混合体
を備える水銀分注デバイス(10;20)において、
前記金属又は合金が130HVよりも低いビッカース硬度を有し、
前記金属又は合金の質量%が粉末混合体の総質量の10%よりも低く、かつ、
金属又は合金の粉末のサイズが水銀放出物質の粉末の約0.2〜0.8倍のサイズを備えることを特徴とする、
水銀分注デバイス(10;20)。
【請求項2】
デバイスの面の全長にわたって200〜400μmの幅のスリット(13)を有する台形の断面と、スリット(13)に一致するように配置された粉末を圧縮することにより得られる粉末混合体(12)の中の凹部(14)とを有する、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項3】
完全に閉じられた円又は多角形の断面を有する、請求項1に記載のデバイス(20)。
【請求項4】
コンテナーがスチール、ニッケル又はニッケルをめっきした鉄の中から選択された金属で作られた、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
完成した分注器のコンテナーの金属の厚さが約0.1〜0.3mmからなる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記水銀放出物質がチタニウム及びジルコニウムの両方又は一方を伴う水銀の化合物である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記水銀放出物質が化合物TiHg及び質量%配合Ti22.5−Cu30−Cr5.5−Hg42を有する化合物の間から選択される、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記水銀放出物質の粉末が250μmよりも小さい粒子サイズを有する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
前記粒子サイズは125μmよりも小さい、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記金属又は合金が鉛、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、インジウム、錫、チタニウム、ニッケル、アルミニウムを質量で少なくとも25%含むアルミニウム−銅合金、銅−亜鉛合金、及び錫を質量で30〜80%含む銅−錫合金の中から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記金属又は合金が粉末混合体の総質量の0.5%よりも高い質量%で存在する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記質量%が2%〜5%の、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記混合体がゲッタ物質の粉末をも含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記ゲッタ物質がジルコニウム、チタニウム、ニオビウム、バナジウム、ハフニウム、及びに遷移元素、アルミニウム又は希土類元素の中から選択される1又は複数の元素を伴うジルコニウムの合金の中から選択される、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記合金がアルミニウムを質量で約16%含むジルコニウム−アルミニウム合金、並びにおおよそ質量%配合Zr80−Co15−A5を有し、ここでAはY、La又は希土類元素の中から選択される1又はそれ以上の元素を指す、Zr−Co−A合金の間から選択される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記ゲッタ物質の粉末が250μmよりも小さい粒子サイズを有する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項17】
130HVよりも低いビッカース硬度を有する金属又は合金が粉末の総質量の0.5%よりも高い質量%で存在する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項18】
前記質量%が2〜5%の、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
請求項1に記載の水銀分注デバイスを備えるランプ。
【請求項20】
二重締め付け工程によってランプを製造するための方法であって、前記工程が請求項1に記載の水銀分注デバイスを用いて実行される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−507203(P2011−507203A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538609(P2010−538609)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067454
【国際公開番号】WO2009/080569
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(500275854)サエス ゲッターズ ソチエタ ペル アツィオニ (54)