説明

温室

【課題】 温室はビニールハウス等とも呼ばれ、冬場であっても夏の野菜(茄子やキュウリ等)を生育するため単に圃場を囲い外気から遮断し、透明な屋根や壁面からの太陽光で内部空間を暖めている。しかし、これだけではとても冬場に所定温度まで昇温できないため、通常は重油や灯油を燃焼させてその燃焼ガスにて空気を加熱することによって温室内を昇温している。この方法では燃焼を停止すると、比較的早期に室内温度が下がるため長期間燃焼させなければならず、大きな経済負担となっていた。そこで、本発明は、ランニングコストをほとんどかけずに、温室効果を発揮する温室を提供する。
【解決手段】 植物を育成する温室であって、太陽光を取り入れる屋根及び壁面の一部又は全部をソーラーパネルにし、該ソーラーパネルからの電力により発熱する電気ヒーターを温室内土壌に埋設したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物を育成する温室、特に農家が時期外れの野菜や草花を植生するための温室は、我が国においては農業の大きな部分を占めている。この温室(ビニールハウス等も含む)は、冬場であっても夏の野菜(茄子やキュウリ等)を生育するため単に圃場を囲い外気から遮断し、透明な屋根や壁面からの太陽光で内部空間を暖めている。
【0003】
また、これだけではとても冬場に所定温度まで昇温できないため、通常は重油や灯油を燃焼させてその燃焼ガスにて空気を加熱することによって温室内を昇温している。
【0004】
しかし、この方法では燃焼を停止すると、比較的早期に室内温度が下がるため長期間燃焼させなければならず、大きな経済負担となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、ランニングコストをほとんどかけずに、温室効果を発揮する温室を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような状況に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明温室を完成したものであり、その特徴とするところは、植物を育成する温室であって、太陽光を取り入れる屋根及び壁面の一部又は全部をソーラーパネルにし、該ソーラーパネルからの電力により発熱する電気ヒーターを温室内土壌に埋設した点にある。
【0007】
ここでいう植物を育成する温室とは、通常の家庭用温室、観賞用の草花を育成する温室、野菜等を栽培するビニールハウス等を含めたものである。太陽光を取り入れる部分がプラスチックシートでもガラスでもよい。
【0008】
この太陽光を取り入れる部分の一部又は全部をソーラーパネルにしている。ここでソーラーパネルとは、太陽光によって直接発電するもので太陽電池モジュールとも呼ばれている。通常は半導体で構成されている。しかし、太陽光で発電するものであればどのようなものでもよく、市販されているもので十分である。本発明では、温室内部に光を透過するため、通常ソーラーパネルの裏面に設けられている光を遮断するようなプレートは設けていない。よって、太陽光の大部分はソーラーパネルを通過して温室内部に照射される。パネルを設けるのは、一部でもよく、その場合には屋根の全部又は一部が好適である。
【0009】
また、強度的な問題があれば、ガラス、ビニールシート、網等の支持具と併せ(重ねて)て使用することもできる。重ねる場合、どちらが外側でもよい。
【0010】
電気ヒーターとは、そこに通電すれば発熱するものであり、一定以上の温度にならないものが好適である。例えば、市販されている自己制御型ヒーターと呼ばれるものである。これは、カーボン導体又は半導体製の面状又は線状発熱体の抵抗が温度によって変化することを利用したもので、温度が上昇すると抵抗が大きくなり発熱量が減少し自己制御するものである。よって、特別な制御システムが不要になる。
電気ヒーターは線状であるが、面状のものでもよい。
【0011】
ソーラーパネルの必要面積は、季節や地域、育成する植物によって異なるが、おおむね屋根全体をソーラーにすれば十分である。
【0012】
昇温する温度としては、15〜25℃程度が好適である。これは、植物の根の部分が、最も生育しやすい温度であると考えられるためである。
【0013】
この電気ヒーターを土壌の適当な深さの位置に水平に適当な間隔を置いて敷設していけばよい。埋設深さは、自由であり育成する植物によって適宜選べばよいが、地表から30〜80cm程度が好適である。
敷設の状態(平面視)は、線状の場合、1本の電熱線から20〜50cm程度離して平行に敷設するのがよい。この離す距離も発電の程度や埋設深さ、敷設場所の平均気温、植える植物の種類等によって適宜定めればよい。面状の場合にはそのヒーターの性能や特性によって敷設方法を考えればよく、自由である。
【0014】
さらに、本発明太陽発電を補完する目的で、風力発電装置を設けてもよい。設ける場所は屋上が好ましい。これは、冬場等で雨や曇が多く日照時間が少ない場合に電力をバックアップするためのものである。通常屋上に置ける小さいものでも1台100W〜700W程度の能力はあるため、100m2当たり1〜数台程度で十分である。
【0015】
本発明システムは、基本的には冬場に稼働するものであって、土壌温度が15℃や20℃以上では不要の可能性が高い。よって、土壌温度が所定以上になれば自動的に、電源投入先が切り替わり、風呂用の給湯器等の電源に使用するようにしてもよい。自動的でなく人が季節や気温を考慮して手動で切り替えてもよい。
【0016】
本発明温室は、発電装置からの電気によって土壌中に埋め込んだヒーターが発熱し土壌を昇温するものである。ヒーターが自己制御型であれば、システム自体には制御装置は不要である。
これは、自己制御型であれば発電過剰で土壌温度が上がりすぎることがなく、また発電不足の場合であっても、土壌自体が蓄熱するため、急激に温度が下がらないためである。
【0017】
太陽光発電の場合、夜間は発電しないため、通常は比較的大きな容量の蓄電池を設けて、夜間用の電源を確保するのが普通である。しかし、本発明では、上記した通り、土壌自体が大きな熱容量を持っているため、夜間に発熱を停止しても急激に温度が下がらず、翌朝まである程度の温度を保っている。これが、温室内の空気のみ昇温している従来のものと大きく異なる点である。
このことを見いだしたのが本発明のスタートでもある。このため、全体の装置が比較的安価になったのである。
【0018】
しかし、簡単な制御装置や蓄電池を設けてもよい。例えば、発電効率がよく、電気が過剰になるような場合や、地域では、蓄電池に電気を貯める、他の用途に使用する等が可能である。
また、断線その他の故障を検知して、一定の場所に警報を出すシステムを追加してもよい。
【0019】
本発明は通常の土壌の温室でもよいが、土壌として多孔質のものを用いた方がよい。軽石の小さな粒(1〜10mm程度)等のようなものである。ポーラスの部分に空気や水が溜まり断熱効果が大きいためである。
【発明の効果】
【0020】
本発明温室には次のような効果がある。
(1) まったくランニングコストをかけずに、温室内土壌が一定以上の温度になるため、冬場でも種々の植物の生育を維持できる。植物で一番重要な根の部分の温度を確保するため効果が大きい。灯油や重油代の大きな軽減になる。
(2) 土壌が大きな熱容量を保有しているため、夜間等でヒーターが停止した場合でも地中温度を維持できため、空気温度が下がっても植物の生育にあまり影響がないのである。
(3) 複雑な運転管理や制御がほとんど不要である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明温室の1例を示す部分斜視図である。
【図2】図1の内部を示す部分断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下図面に示す実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明温室1の概略を示す部分斜視図である。全体はビニール2で封止され、入口3が設けられている。そして、屋根の一部がソーラーパネル4になっている。よって、屋根の上に太陽発電装置を置いたものとは異なる。
この例で屋根の南側の部分のみソーラーパネルにしている。これは、寒冷地等ではもっと増やせばよい。
【0024】
図2は、ソーラーパネルからの電気によって発熱する線状ヒーター5を土壌中に敷設したところの部分断面図である。屋根のソーラーパネル4から地中の電気ヒーター6とがコード7で接続されている。電気ヒーター5の埋設深さはここでは60cmで行った。
【0025】
この例は大阪であるが、冬場でも夏の野菜ができ、重油等の燃料は著しく軽減できた。
【符号の説明】
【0026】
1 温室
2 塩化ビニールシート(又はガラス)
3 ドア
4 ソーラーパネル
5 土壌
6 電気ヒーター
7 コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を育成する温室であって、太陽光を取り入れる屋根及び壁面の一部又は全部をソーラーパネルにし、該ソーラーパネルからの電力により発熱する電気ヒーターを温室内土壌に埋設したことを特徴とする温室。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−213633(P2010−213633A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65367(P2009−65367)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(594005968)
【Fターム(参考)】