説明

温度センサ

【課題】 耐振動性が高い温度センサを提供することを目的とする。
【解決手段】 温度センサ100は、感温素子110と、金属芯線121及びこれを絶縁保持する保護管123を有するシース部材120と、保護管123を金属チューブ130を介して間接的に保持する保持部材140と、保持部材140に固定され、保護管123の基端部123kk等を包囲すると共にリード線150が内挿された包囲部材160とを備える。そして、温度センサ100は、保護管123と包囲部材160との間に介在して、これらを互いに固定し、包囲部材160等の材質よりも密度が小さい材質からなる固定部材170を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度を検知する感温素子を備える温度センサに関し、特に、感温素子の電極線に接続した金属芯線を保護管内に絶縁保持したシース部材と、このシース部材を内挿保持する保持部材と、この保持部材に固定され、少なくとも保護管の基端部を包囲する包囲部材とを備える温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、温度を検知する感温素子と、保護管内に金属芯線を絶縁保持したシース部材と、シース部材を内挿保持する保持部材と、保護管の基端部等を包囲する包囲部材とを有する形態の温度センサが知られている。例えば、特許文献1にこのような温度センサが開示されている(特許文献1の図1等参照)。シースピン(シース部材)の芯線(金属芯線)は、その先端部及び基端部が外筒(保護管)からそれぞれ突出し、先端部で感温素子の電極線に接続すると共に、基端部で外部回路接続用のリード線に接続している。このリード線は、スリーブ(包囲部材)に内挿され、ゴムブッシュを介してスリーブに固定されている。また、シースピンは、その両端の間の部分がリブ(保持部材)に内挿され、リブの先端側端部において溶接固定されている。また、スリーブは、その先端部がリブに溶接固定されている。但し、シースピンの基端側の部分は、スリーブなどに固定されていない。
【0003】
このような温度センサは、例えば自動車の排ガス管に取り付けて使用する場合、排ガス管の振動に伴って自身も振動する。しかるに、前記のようにシースピンはこれを包囲するスリーブに固定されてないため、包囲部材の内部でシース部材が大きく振動する。このような状況下で温度センサを使用し続けると、金属疲労によりシース部材のうち金属芯線の基端部が断線する場合がある。
【0004】
これに対し、特許文献1の第3実施形態で示された温度センサ(特許文献1の図3も参照)では、シースピンとスリーブとがSUS304からなるスペーサ(固定部材)を介して互いに固定されている。このため、シースピン単独での振動が抑制されるので、金属芯線の断線を防止できる。
【0005】
【特許文献1】特許第3555492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スペーサにSUS304からなるものを用いると、シースピン、スリーブ及びスペーサの全体の重量が増加するので、この三者からなる部位の共振周波数が下がる。すると、使用時に掛かる振動によって、スリーブはリブの突出部に溶接固定されているので、この突出部の根元を支点とした片持ち状に大きく振動する場合がある。このような状況下で温度センサを使用し続けると、リブの突出部の根元やその近傍部位に破損が生じる場合がある。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、耐振動性が高い温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その解決手段は、温度によって電気的特性が変化する感温部、及び、この感温部に接続した電極線を有する感温素子と、自身の芯線先端部で前記電極線に接続した金属芯線、及び、前記芯線先端部を突出させた状態で金属芯線を絶縁保持する保護管を有するシース部材と、自身の貫通孔内に前記保護管が内挿された状態でこの保護管を直接または他部材を介して間接的に保持する保持部材と、前記保持部材に固定され、少なくとも前記保護管の基端部を包囲する包囲部材と、を備える温度センサであって、前記保護管と前記包囲部材との間に介在し、これら保護管と包囲部材とを互いに固定する固定部材であって、前記包囲部材の材質よりも密度が小さい材質からなる固定部材を備える温度センサである。
【0009】
本発明によれば、保護管と包囲部材とを固定する固定部材が、包囲部材の材質よりも密度(比重)が小さい材質からなる。これにより、シース部材、包囲部材及び固定部材の全体の重量が軽くなるので、これら三者からなる部位の共振周波数が高くなる。このため、この温度センサの使用時に掛かる振動による共振が生じにくく、また、振動も小さくなる。従って、振動によって保持部材と包囲部材の固定部位やその近傍部位などに破損が生じるのを防止できるなど、温度センサの耐振動性を高くできる。
【0010】
なお、本発明において、「密度」とは、単位体積あたりの質量を指す。
「保持部材」は、前記のように、その貫通孔内に保護管が内挿された状態で、これを直接または他部材を介して間接的に保持するものであればよい。保持部材が保護管を保持する保持部位は、適宜変更できる。また、保持部材が保護管を保持する形態としては、保持部材と保護管とを直接または他部材を介して溶接したり、保持部材と保護管とを直接または他部材を介して接着剤等で固着したり、加締めにより直接または他部材を介して保持部材を保護管に固定したり、直接または他部材を介して保持部材に保護管を圧入して固定する形態などが挙げられる。
【0011】
「包囲部材」は、前記のように、保持部材に固定されているが、直接保持部材に固定されていても、或いは、他部材を介して間接的に固定されていてもよい。また、包囲部材が保持部材に固定される固定部位も、適宜変更できる。また、包囲部材を保持部材に固定する形態としては、包囲部材と保持部材とを直接または他部材を介して溶接したり、包囲部材と保持部材とを直接または他部材を介して接着剤等で固着したり、包囲部材と保持部材とを直接または他部材を介して加締めにより互いに固定したり、直接または他部材を介して包囲部材と保持部材とを圧入により固定する形態などが挙げられる。
【0012】
「固定部材」は、前記のように、保護管と包囲部材との間に介在して、これらを互いに固定するものであるが、固定部材の配置場所は適宜変更できる。また、固定部材を介して保護管と包囲部材とを固定する形態としては、固定部材と保護管及び固定部材と包囲部材を溶接したり、固定部材と保護管及び固定部材と包囲部材を接着剤等で固着したり、固定部材を介して保護管と包囲部材とを加締めにより固定したり、固定部材を保護管と包囲部材との間に圧入して固定する形態などが挙げられる。
【0013】
また、他の解決手段は、温度によって電気的特性が変化する感温部、及び、この感温部に接続した電極線を有する感温素子と、自身の芯線先端部で前記電極線に接続した金属芯線、及び、前記芯線先端部を突出させた状態で金属芯線を絶縁保持する保護管を有するシース部材と、自身の貫通孔内に前記保護管が内挿された状態でこの保護管を直接または他部材を介して間接的に保持する保持部材と、前記保持部材に固定され、少なくとも前記保護管の基端部を包囲する包囲部材と、を備える温度センサであって、前記保護管と前記包囲部材との間に介在し、これら保護管と包囲部材とを互いに固定する固定部材であって、前記保護管の材質よりも密度が小さい材質からなる固定部材を備える温度センサである。
【0014】
本発明によれば、保護管と包囲部材とを固定する固定部材が、保護管の材質よりも密度が小さい材質からなる。これにより、シース部材、包囲部材及び固定部材の全体の重量が軽くなるので、これら三者からなる部位の共振周波数が高くなる。このため、この温度センサの使用時に掛かる振動による共振が生じにくく、また、振動も小さくなる。従って、振動によって保持部材と包囲部材の固定部位やその近傍部位に破損が生じるのを防止できるなど、温度センサの耐振動性を高くできる。
【0015】
また、他の解決手段は、温度によって電気的特性が変化する感温部、及び、この感温部に接続した電極線を有する感温素子と、自身の芯線先端部で前記電極線に接続した金属芯線、及び、前記芯線先端部を突出させた状態で金属芯線を絶縁保持する保護管を有するシース部材と、自身の貫通孔内に前記保護管が内挿された状態でこの保護管を直接または他部材を介して間接的に保持する保持部材と、前記保持部材に固定され、少なくとも前記保護管の基端部を包囲する包囲部材と、を備える温度センサであって、前記保護管と前記包囲部材との間に介在し、これら保護管と包囲部材とを互いに固定する固定部材であって、前記シース部材全体の平均密度よりも密度が小さい材質からなる固定部材を備える温度センサである。
【0016】
本発明によれば、保護管と包囲部材とを固定する固定部材が、シース部材全体の平均密度よりも密度が小さい。これにより、シース部材、包囲部材及び固定部材の全体の重量が軽くなるので、これら三者からなる部位の共振周波数が高くなる。このため、この温度センサの使用時に掛かる振動による共振が生じにくく、また、振動も小さくなる。従って、振動によって保持部材と包囲部材の固定部位やその近傍部位に破損が生じるのを防止できるなど、温度センサの耐振動性を高くできる。
【0017】
更に、上記のいずれかに記載の温度センサであって、前記保護管は、前記保持部材の貫通孔の基端よりも基端側に位置する基端側保護部を含み、前記固定部材は、この基端側保護部の長手方向中央よりも基端側に配置されてなる温度センサとすると良い。
【0018】
固定部材が、保護管の基端側保護部の長手方向中央よりも先端側、例えば、保持部材の貫通孔の基端付近に配置されていたとした場合、保護管は、この固定部材よりも基端側の部位で固定されていないために、使用時に、この保護管のうち固定部材よりも基端側の部位が振動することがある。そうすると、例えば、保護管の基端から金属芯線の芯線基端部が突出し、外部回路接続用のリード線と接続しているものでは、振動により、金属芯線の芯線基端部が破断するおそれがある。
これに対し、本発明では、固定部材として密度が小さく軽いものを用いた上で、この固定部材を保護管の基端側保護部のうち、長手方向中央よりも基端側に配置している。このようにすることで、保護管をより基端側で固定部材を介して包囲部材に固定できるので、使用時に保護管(保護基端部)が大きく振動するのを防止できる。従って、例えば、保護管の基端から金属芯線の芯線基端部が突出し、外部回路接続用のリード線と接続しているものでも、金属芯線の芯線基端部が断線するのを効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1〜図3に本実施形態1に係る温度センサ100を示す。なお、この温度センサ100は、図1〜図3において、下方が軸線AX方向先端側、上方が軸線AX方向基端側である。この温度センサ100は、例えば内燃機関の排気管に取り付けて、測定対象ガス(排気ガス)の温度を検出するのに利用できる。温度センサ100は、感温素子110、シース部材120、金属チューブ130、保持部材140、包囲部材160、固定部材170、ナット部材180等から構成されている。
【0020】
このうち感温素子110は、図1及び図3に示すように、温度によって電気的特性(電気抵抗値)が変化するサーミスタ焼結体(感温部)111と、このサーミスタ焼結体111の電気的特性の変化を取り出すために自身の一部がサーミスタ焼結体111に埋設されると共に、残部が軸線AX方向基端側に突出する一対の電極線113,113とから構成されている。
【0021】
シース部材120は、図1に示すように、導電性金属からなり、軸線AX方向に延びる一対の金属芯線121,121と、軸線AX方向に延びる筒状をなす金属製の保護管123とを有する。保護管123は、この金属芯線121,121の芯線先端部121s,121s及び芯線基端部121k,121kをそれぞれ先端側及び基端側に突出させた状態で、この金属芯線121,121を絶縁保持している。具体的には、保護管123と金属芯線121,121との間隙に図示しない絶縁粉末を充填して、保護管123と金属芯線121,121とを絶縁すると共に、金属芯線121,121同士の間を絶縁している。
【0022】
金属芯線121,121は、その芯線先端部121s,121sにおいて上記感温素子110の電極線113,113と、抵抗溶接により電気的に接続している(図1及び図3参照)。一方、金属芯線121,121は、その芯線基端部121k,121kにおいて、外部回路(具体的には、車両の電子制御装置(ECU))接続用のリード線150,150と電気的に接続する加締め端子151,151の端子先端部151s,151sに、抵抗溶接により電気的に接続している(図1参照)。リード線150,150は、耐熱ゴム製のグロメット153の内部を貫通した状態で、後述する包囲部材160に内挿されて保持されている。
【0023】
感温素子110及びシース部材120の先端側シース部120sは、金属チューブ130により覆われている(図1〜図3参照)。この金属チューブ130は、耐腐食性金属(本実施形態ではSUS310S)からなる鋼板の深絞り加工により形成してなり、軸線AX方向に延び、チューブ先端部130sが閉塞し、チューブ基端部130kが解放した有底筒状をなす。また、この金属チューブ130は、軸線AX方向中央よりも先端側の所定位置に第1段差部130dを有する一方、軸線AX方向中央よりも基端側の所定位置に第2段差部130eを有する。そして、金属チューブ130は、第1段差部130dと第2段差部130eとの間の部分に比べ、第1段差部130dから先端側が小径で、第2段差部130eから基端側が大径な形態とされている。金属チューブ130のチューブ先端部130s内には、前述の感温素子110が収容され、チューブ先端部130sと感温素子110との間には、非晶質のシリカにアルミナ骨材を含有した絶縁材からなるセメント131が充填されている(図1及び図3参照)。このセメント131は、温度センサ100の使用時に感温素子110が揺動するのを防止するものである。
【0024】
また、金属チューブ130の第1段差部130dの内側には、シース部材120の保護管123が当接している。また、金属チューブ130は、軸線AX方向中央付近において周方向の2カ所で径方向内側に加締められて保持部位133が形成され、これにより、金属チューブ130とシース部材120の保護管123とが互いに固定されている。
【0025】
金属チューブ130のチューブ基端部130kは、保持部材140の貫通孔140cに内挿され、保持部材140に保持されている(図1及び図2参照)。この保持部材140は、先端側(図中、下方)に位置し、径方向外側に突出する台座部140fと、この台座部140fの基端側(図中、上方)に位置し、軸線AX方向に延びる筒部140gとからなる。
このうち、台座部140fは、先端側に向かうにつれて小径となるテーパ部140tを有する環状に形成されている。このテーパ部140tは、図示しない排気管のセンサ取付部に対応したテーパ形状をなす。つまり、テーパ部140tは、排気管のセンサ取付部に配置される際には、テーパ部140tがセンサ取付部に直接密着することで、排気ガスが排気管外部へ漏出するのを防止する形態とされている。
【0026】
一方、保持部材140の筒部140gは、先端側(図中、下方)に位置する第1段部140g1と、これの基端側(図中、上方)に位置し、この第1段部140g1よりも肉厚が薄く外径が僅かに小さくされた第2段部140g2とからなる二段形状をなす。このうち第2段部140g2は、金属チューブ130のチューブ基端部130kを内挿した状態で、径方向内側に向けて加締められており、更に、金属チューブ130のチューブ基端部130kとの間で互いに溶接され、第1溶接部141が形成されている。このような加締め及び溶接により、金属チューブ130が保持部材140に固定されている。
なお、保護管123のうち、保持部材140における貫通孔140cの基端140kよりも基端側の部分(図2中の破線ABよりも上側の部分)が基端側保護部123kである。
【0027】
次に、包囲部材160について説明する。シース部材120のうち保護管123の基端部123kk等を含む基端側シース部120kと、加締め端子151,151と、グロメット153及びリード線150,150の先端側の一部とは、軸線AX方向に延びる筒状をなす金属製の包囲部材160により覆われている。
包囲部材160の包囲先端部160sは、保持部材140のうち筒部140gの第1段部140g1を覆っている。これら包囲先端部160sと第1段部140g1とは、第2溶接部(固定部位)143で互いに溶接され固定されている。包囲部材160のうち、この第2溶接部143よりも基端側の部分(図2中の破線ACよりも上側の部分)が基端側包囲部160kである。そして、この基端側包囲部160kのうち最も基端側に位置する包囲基端部160kkは、径方向内側に加締められて、その内側に配置されたグロメット153を保持している。
【0028】
包囲部材160とシース部材120の保護管123との間には、筒状をなす固定部材170が介在している(図1参照)。本実施形態1では、この固定部材170は、軽量な金属、具体的にはアルミニウム(密度2.68g/cm3 )からなる。一方、前述の包囲部材160は、密度が7.90g/cm3 であるSUS310Sからなり、保護管123も、密度が7.90g/cm3 であるSUS310Sからなり、また、シース部材120全体の平均密度は4.24g/cm3 である。従って、固定部材170の密度は、包囲部材160、保護管123及びシース部材120全体のいずれの密度よりも小さくされている。
【0029】
このような固定部材170は、包囲部材160の基端側包囲部160kのうち、軸線AX方向中央よりも基端側に位置する第1固定部位160j1の内側に配置されている。また、固定部材170は、保護管123の基端側保護部123kのうち、軸線AX方向中央123eよりも基端側であって、包囲部材160の第1固定部位160j1に対応して位置する第1保護部位123j1の周囲を覆うようにして配置されている。そして、包囲部材160の第1固定部位160j1は、固定部材170及び保護管123の第1保護部位123j1に向けて径方向内側に加締められており、これにより、包囲部材160とシース部材120(保護管123)が固定部材170を介して互いに固定されている。
【0030】
ナット部材180は、六角ナット部180pとネジ部180qとを有する。このナット部材180は、包囲部材160の周囲に回動自在に嵌挿されている。温度センサ100を排気管のセンサ取付部に取り付ける際には、保持部材140のテーパ部140tがセンサ取付部のテーパ部(図示しない)に当接するように温度センサ100を配置した後、このナット部材180のネジ部180qをセンサ取付部の内周に形成されたネジ溝(図示しない)に螺合させる。つまり、このナット部材180とセンサ取付部のテーパ部との間に、保持部材140の台座部140fを狭持して、温度センサ100を排気管のセンサ取付部に固定する。
【0031】
以上で説明したように、本実施形態1では、保護管123と包囲部材160とを固定する固定部材170が、包囲部材160、保護管123及びシース部材120全体のいずれの密度よりも小さくされている。このため、保護管123、包囲部材160及び固定部材170の全体の重量が軽くなるので、これら三者からなる部位の共振周波数が高くなる。このため、この温度センサ100を排ガス管に取り付けて使用しても、排ガス管等の振動による共振が生じにくく、また、振動も小さくなる。従って、振動によって保持部材140と包囲部材160の固定部位である第2溶接部143やその近傍部位などに破損が生じるのを防止でき、温度センサ100の耐振動性を高くできる。
【0032】
更に、本実施形態1では、固定部材170を、保護管123の基端側保護部123kのうち、軸線AX方向中央123eよりも基端側の第1保護部位123j1の周囲に配置している。このため、保護管123をより基端側で固定部材170を介して包囲部材160に固定できるので、使用時に、保護管123の基端側保護部123kのうち、第1保護部位123j1よりも基端側の部分が大きく振動するのを防止でき、シース部材120の金属芯線121,121の芯線基端部121k,121kが断線するのを効果的に防止できる。
なお、本実施形態1の温度センサ100は、公知の手法により製造することができる。
【0033】
(実施形態2)
次いで、第2の実施の形態について説明する。なお、上記実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図4に本実施形態2の温度センサ200を示す。この温度センサ200は、固定部材270が上記実施形態1の固定部材170と異なる。それ以外は基本的に上記実施形態1と同様である。
【0034】
本実施形態2に係る固定部材270は、耐熱性樹脂、具体的にはPTFE(密度2.16g/cm3 )からなり、筒状をなす。一方、前述したように、包囲部材160の密度は7.90g/cm3 であり、保護管123の密度は7.90g/cm3 であり、また、シース部材120全体の平均密度は4.24g/cm3 である。従って、固定部材270は、包囲部材160、保護管123及びシース部材120全体のいずれの密度よりも小さくされている。
【0035】
この固定部材270は、包囲部材160とシース部材120の保護管123との間に介在している。より具体的には、固定部材270は、包囲部材160の基端側包囲部160kのうち、軸線AX方向中央よりも基端側に位置する第2固定部位160j2の内側に配置されている。また、この固定部材270は、保護管123の基端側保護部123kのうち、軸線AX方向中央123eよりも基端側であって、包囲部材160の第2固定部位160j2に対応して位置する第2保護部位123j2の周囲の他、金属芯線121,121の芯線基端部121k,121kと、加締め端子151,151のうち、グロメット153から先端側に突出する端子先端部151s,151sとを覆っている。包囲部材160の第2固定部位160j2は、固定部材270の先端側の部分及び保護管123の第2保護部位123j2に向けて径方向内側に加締められており、これにより、包囲部材160とシース部材120(保護管123)とが固定部材270を介して互いに固定されている。
【0036】
このような温度センサ200も、固定部材270が、包囲部材160、保護管123及びシース部材120全体のいずれの密度よりも小さくされている。このため、保護管123、包囲部材160及び固定部材270の全体の重量が軽くなるので、これら三者からなる部位の共振周波数が高くなる。このため、この温度センサ200を排ガス管に取り付けて使用しても、排ガス管等の振動による共振が生じにくく、また、振動も小さくなる。従って、振動によって保持部材140と包囲部材160の固定部位である第2溶接部143やその近傍部位などに破損が生じるのを防止でき、温度センサ200の耐振動性を高くできる。
【0037】
更に、本実施形態2では、固定部材270を、保護管123の基端側保護部123kのうち、軸線AX方向中央123eよりも基端側の第2保護部位123j2の周囲等に配置している。このため、保護管123をより基端側で固定部材270を介して包囲部材160に固定できるので、使用時に、保護管123の基端側保護部123kのうち、第2保護部位123j2よりも基端側の部分が大きく振動するのを防止でき、シース部材120の金属芯線121,121の芯線基端部121k,121kが断線するのを効果的に防止できる。
【0038】
(実施形態3)
次いで、第3の実施の形態について説明する。なお、上記実施形態1または2と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図5に本実施形態3の温度センサ300を示す。この温度センサ300は、固定部材170の位置が上記実施形態1の温度センサ100と異なる。それ以外は基本的に上記実施形態1と同様である。
【0039】
本実施形態3に係る固定部材170自体は、上記実施形態1の固定部材170と同様である。従って、本実施形態3においても、固定部材170は、包囲部材160、保護管123及びシース部材120全体のいずれの密度よりも小さくされている。
この固定部材170は、上記実施形態1よりも先端側(図中、下方)に配置されている。具体的には、この固定部材170は、包囲部材160の基端側包囲部160kのうち、軸線AX方向中央よりも先端側に位置する第3固定部位160j3の内側に配置されている。また、この固定部材170は、保護管123の基端側保護部123kのうち、軸線AX方向中央123eよりも先端側であって、包囲部材160の第3固定部位160j3に対応して位置する第3保護部位123j3の周囲に配置されている。そして、第3固定部位160j3は、固定部材170及び保護管123の第3保護部位123j3に向けて径方向内側に加締められており、これにより、包囲部材160とシース部材120(保護管123)とが固定部材170を介して互いに固定されている。
【0040】
このような温度センサ300も、固定部材170が、包囲部材160、保護管123及びシース部材120全体のいずれの密度よりも小さくされている。このため、保護管123、包囲部材160及び固定部材170の全体の重量が軽くなるので、これら三者からなる部位の共振周波数が高くなる。このため、この温度センサ300を排ガス管に取り付けて使用しても、排ガス管等の振動による共振が生じにくく、また、振動も小さくなる。従って、振動によって保持部材140と包囲部材160の固定部位である第2溶接部143やその近傍部位などに破損が生じるのを防止でき、温度センサ300の耐振動性を高くできる。
【0041】
(調査結果)
本発明の効果を検証するために、本発明に係る上記実施形態1〜3の温度センサ100,200,300をそれぞれ用意した。
一方、比較形態1,2として、上記実施形態1の温度センサ100から固定部材170を無くした形態の温度センサ(比較形態1)と、固定部材170に代えて、包囲部材160や保護管123の材質よりも密度の大きいSUS304からなる固定部材を備えた温度センサ(比較形態2)とを用意した。
【0042】
そして、これら実施形態1〜3及び比較形態1,2の各温度センサ100,200,300等を用いて、第1の振動試験を行った。即ち、各温度センサ100,200,300等にそれぞれ常温下で100時間振動を加えた。その際、各温度センサ100,200,300等に加えた振動は、150Hz〜3000Hzの振動周波数帯域において、下限値(150Hz)と上限値(3000Hz)との間を往復するように、1秒間に1Hzの割合で振動周波数を変化させた。また、各温度センサ100,200,300等に加える振動の加速度は40Gとした。
そして、100時間振動を与えた後、各温度センサ100,200,300等のそれぞれについて、保持部材140と包囲部材160との固定部位(第2溶接部143)やその近傍部位に破損が生じたか否かを調べた。また、シース部材120の金属芯線121,121の芯線基端部121k,121kに断線が生じたか否かも調べた。
【0043】
その結果、実施形態1〜3の温度センサ100,200,300は、いずれも、保持部材140と包囲部材160との固定部位(第2溶接部143)やその近傍部位に破損がなく、かつ、シース部材120の金属芯線121,121の芯線基端部121k,121kに断線も生じなかった。
これに対し、固定部材170を無くした比較形態1の温度センサでは、シース部材120の金属芯線121,121の芯線基端部121k,121kに断線が認められた。但し、保持部材140と包囲部材160との固定部位(第2溶接部143)若しくはその近傍部位での破損は生じていなかった。
また、密度の大きいSUS304からなる固定部材を備えた比較形態2の温度センサでは、保持部材140と包囲部材160との固定部位(第2溶接部143)若しくはその近傍部位に破損が認められた。但し、シース部材120の金属芯線121,121の芯線基端部121k,121kに断線は生じていなかった。
【0044】
このような調査結果から、本実施形態1〜3のように、保護管123と包囲部材160とを固定部材170,270を介して固定することにより、シース部材120の金属芯線121,121の芯線基端部121k,121kに断線が生じるのを防止できることが判る。更に、本実施形態1〜3のように、固定部材として密度の小さい材質からなる固定部材170,270を用いて保護管123と包囲部材160とを固定することにより、振動によって保持部材140と包囲部材160との固定部位(第2溶接部143)やその近傍部位に破損が生じるのを防止できることが判る。
【0045】
次に、実施形態1〜3の各温度センサ100,200,300を用いて、上記第1の振動試験よりも更に過酷な条件で第2の振動試験を行った。即ち、各温度センサ100,200,300にそれぞれ常温下で100時間振動を加えた。その際、各温度センサ100,200,300に加えた振動は、150Hz〜8000Hzの振動周波数帯域において、下限値(150Hz)と上限値(8000Hz)との間を往復するように、1秒間に1Hzの割合で振動周波数を変化させた。また、各温度センサ100,200,300等に加える振動の加速度は20Gとした。
そして、上記第1の振動試験と同様に、各温度センサ100,200,300のそれぞれについて、保持部材140と包囲部材160との固定部位(第2溶接部143)やその近傍部位に破損が生じたか否かを調べた。また、シース部材120の金属芯線121,121の芯線基端部121k,121kに断線が生じたか否かも調べた。
【0046】
その結果、実施形態1,2の温度センサ100,200は、上記第1の振動試験の場合と同様に、保持部材140と包囲部材160との固定部位(第2溶接部143)やその近傍部位に破損がなく、かつ、シース部材120の金属芯線121,121の芯線基端部121k,121kに断線も生じていなかった。
これに対し、実施形態3の温度センサ300は、保持部材140と包囲部材160との固定部位(第2溶接部143)やその近傍部位に破損は生じていなかったが、シース部材120の金属芯線121,121の芯線基端部121k,121kに、上記第1の振動試験では生じなかった断線が認められた。
【0047】
このような調査結果から、実施形態1,2のように、固定部材170,270を、保護管123の基端側保護部123kのうち長手方向中央123eよりも基端側に配置することにより、シース部材120の金属芯線121,121の芯線基端部121k,121kに断線が生じるのをより効果的に防止できることが判る。
【0048】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態1〜3に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
実施形態1〜3では、それぞれ1つの固定部材170,270により包囲部材160と保護管123とを固定しているが、複数の固定部材を用いて、これらを固定してもよい。
また、実施形態1〜3では、保持部材140と保護管123とを金属チューブ130を介して固定しているが、保護部材140と保護管123とを直接固定する形態とすることもできる。
また、実施形態1〜3では、軸線AX方向に延びる棒状の温度センサ100,200,300を例示したが、その形態は適宜変更できる。例えば、ナット部材180よりも基端側の部分を屈曲させてL字状等とした温度センサにおいても、本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施形態1に係る温度センサの部分破断断面図である。
【図2】実施形態1に係る温度センサのうち保持部材の近傍を示す部分破断断面図である。
【図3】実施形態1に係る温度センサのうち感温素子の近傍を示す部分破断断面図である。
【図4】実施形態2に係る温度センサの部分破断断面図である。
【図5】実施形態3に係る温度センサの部分破断断面図である。
【符号の説明】
【0050】
100,200,300 温度センサ
110 感温素子
111 サーミスタ結晶体(感温部)
113 電極線
120 シース部材
120s 先端側シース部
120k 基端側シース部
121 金属芯線
121s 芯線先端部
121k 芯線基端部
123 保護管
123k 基端側保護部
123kk 基端部
123j1 第1保護部位
123j2 第2保護部位
123j3 第3保護部位
130 金属チューブ
133 保持部位
140 保持部材
140c 貫通孔
140k (貫通孔の)基端
141 第1溶接部
143 第2溶接部(固定部位)
150 リード線
151 加締め端子
153 グロメット
160 包囲部材
160s 包囲先端部
160k 基端側包囲部
160kk 包囲基端部
160j1 第1固定部位
160j2 第2固定部位
160j3 第3固定部位
170,270 固定部材
AX 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度によって電気的特性が変化する感温部、及び、この感温部に接続した電極線を有する感温素子と、
自身の芯線先端部で前記電極線に接続した金属芯線、及び、前記芯線先端部を突出させた状態で金属芯線を絶縁保持する保護管を有するシース部材と、
自身の貫通孔内に前記保護管が内挿された状態でこの保護管を直接または他部材を介して間接的に保持する保持部材と、
前記保持部材に固定され、少なくとも前記保護管の基端部を包囲する包囲部材と、
を備える温度センサであって、
前記保護管と前記包囲部材との間に介在し、これら保護管と包囲部材とを互いに固定する固定部材であって、
前記包囲部材の材質よりも密度が小さい材質からなる固定部材を備える
温度センサ。
【請求項2】
温度によって電気的特性が変化する感温部、及び、この感温部に接続した電極線を有する感温素子と、
自身の芯線先端部で前記電極線に接続した金属芯線、及び、前記芯線先端部を突出させた状態で金属芯線を絶縁保持する保護管を有するシース部材と、
自身の貫通孔内に前記保護管が内挿された状態でこの保護管を直接または他部材を介して間接的に保持する保持部材と、
前記保持部材に固定され、少なくとも前記保護管の基端部を包囲する包囲部材と、
を備える温度センサであって、
前記保護管と前記包囲部材との間に介在し、これら保護管と包囲部材とを互いに固定する固定部材であって、
前記保護管の材質よりも密度が小さい材質からなる固定部材を備える
温度センサ。
【請求項3】
温度によって電気的特性が変化する感温部、及び、この感温部に接続した電極線を有する感温素子と、
自身の芯線先端部で前記電極線に接続した金属芯線、及び、前記芯線先端部を突出させた状態で金属芯線を絶縁保持する保護管を有するシース部材と、
自身の貫通孔内に前記保護管が内挿された状態でこの保護管を直接または他部材を介して間接的に保持する保持部材と、
前記保持部材に固定され、少なくとも前記保護管の基端部を包囲する包囲部材と、
を備える温度センサであって、
前記保護管と前記包囲部材との間に介在し、これら保護管と包囲部材とを互いに固定する固定部材であって、
前記シース部材全体の平均密度よりも密度が小さい材質からなる固定部材を備える
温度センサ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の温度センサであって、
前記保護管は、前記保持部材の貫通孔の基端よりも基端側に位置する基端側保護部を含み、
前記固定部材は、この基端側保護部の長手方向中央よりも基端側に配置されてなる
温度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−261789(P2008−261789A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106000(P2007−106000)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)