説明

温度検出システム及び温度検出方法

【課題】温度検出システムを構成する温度検知機能と通知機能とを簡単な回路構成で実現する。
【解決手段】測定対象の温度変化を検出する温度検出システム100において、弾性率が温度依存性を有する材料で構成された振動膜を備え、振動膜が振動したときの振動量の変化に基づいて温度変化を検出するスピーカ101と、振動膜を振動させるための駆動信号を供給する信号送出部103と、を備える。振動膜を利用して温度変化を検出する機能及び温度変化を通知する機能を実現することができるため、簡単な回路構成で温度検出システムを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の温度変化を検出する温度検出システム及び温度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温度の測定だけではなく、温度の変化を外部に知らせる機能を搭載した装置が知られている。例えば、室内の温度を監視し、室内の温度が予め設定した温度に到達したときに、外部に警告音などを通知することで、温度の変化を外部に知らせる装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の装置は、現在の温度を検出する温度センサと、温度センサにより検出した温度が予め設定した温度に到達したときにアラームにより通知するスピーカとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−49770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、温度変化を検出するための機能と、アラームにより温度変化を通知する機能とをそれぞれ別々のデバイスで構成している。このため、実装に際しては、これらのデバイスを接続するためのインターフェースを含め、実装に必要なデバイスが多くなり回路構成が複雑になるという問題がある。また、複数のデバイスを実装するため実装面積が大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、温度検出システムを構成する温度検出機能と通知機能とを簡単な回路構成で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る温度検出システムは、測定対象の温度変化を検出する温度検出システムにおいて、
弾性率が温度依存性を有する材料で構成された振動膜を備え、前記振動膜が振動したときの振動量の変化に基づいて温度変化を検出する温度検出手段と、
前記振動膜を振動させるための駆動信号を供給する駆動手段とを備える。
【0008】
本発明に係る温度検出方法は、測定対象の温度変化を検出する温度検出方法において、
弾性率が温度依存性を有する材料で構成された振動膜を振動させるための駆動信号を供給するステップと、
前記振動膜が振動したときの振動量の変化に基づいて温度変化を検出するステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、弾性率が温度依存性を有する材料で構成された振動膜の振動量が、温度変化に応じて変化することを利用して、温度変化を検出する機能及び温度変化を通知する機能を実現している。温度変化を検出する機能は、振動膜に温度変化を付与し、これにより振動膜の弾性率を変化させて振動膜の振動量を変化させることにより実現される。また、温度変化を通知する機能は、振動膜の振動量を変化させて音圧を変化させることにより実現される。このように本発明によれば、振動膜を利用して2つの機能を実現することにより、簡単な回路構成で温度検出システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る温度検出システムの構成を示す図である。
【図2】図1に示した温度検出システムを構成するスピーカの概略構成を示す図である。
【図3】振動膜の特性を示す図である。
【図4】振動量の振動を検出して温度変化を通知する温度検出システムの構成を示す図である。
【図5】温度検出処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る温度検出システム100を図面を参照して説明する。図1は温度検出システム100の構成を示すブロック図である。温度検出システム100は、スピーカ101と、スピーカ101へ駆動信号を送出する信号送出部103と、信号送出部103に電源を供給する電源105とを備える。
【0012】
図2はスピーカ101の断面を概略的に示す図である。スピーカ101は、振動膜201と、振動膜201に固定された環状のボイスコイル203と、ボイルコイル203に対向するマグネット205とを備える。信号送出部103から送出された駆動信号がボイスコイル203に供給されると、振動膜201が振動し、これにより外部へ音が放出される。
【0013】
図3は振動膜201の特性を示す図であり、縦軸はヤング率Eを示しており、縦軸は温度Tを示している。振動膜201を構成する材料は、弾性率が温度依存性を有する特性を有している。振動膜201の材料のヤング率Eは、振動膜201に付与される温度がt1のときE1を示し、温度がt2のときのE2を示している。温度変化に関わらず弾性率が略一定の特性を示す振動膜(図中破線)と比較して、振動膜201を構成する材料は、弾性率の温度依存性が高い材料である。
【0014】
振動膜の振動量を表す式(1)に示されるように、温度が変化しても重量M及び断面2次モーメントIは一定である。したがって、ヤング率Eが1/2になれば振動膜の振動量は2倍になる。振動量が変化することによる音圧の変化を検出することで、温度変化を検出することができる。ここで、音圧の変化を人間の聴覚で弁別するためには、振動膜201に付与される温度変化が10℃に対して弾性率の変化が10パーセント以上であることが好ましい。このような材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンを選択することができるが、上記特性を満たすものであれば、これらの材料に限定されることはない。
【0015】
【数1】

【0016】
なお、人間の聴覚で弁別できる音圧は周波数によって異なり、同じ音圧でも周波数が異なると弁別できる音圧も異なる。スピーカ101から放出される音の周波数は、信号送出部103から供給される駆動信号により選択することができる。信号送出部103は、人間の聴覚で弁別できる範囲の周波数となる駆動信号を送出する。
【0017】
以上説明した実施形態によれば、温度変化を検出する機能と温度変化を通知する機能とをスピーカ101に搭載することで、簡単な回路構成で上記2つの機能を実現することができる。すなわち、温度変化を検出する機能は、スピーカ101を構成する振動膜201に温度変化を付与して振動膜201の弾性率を変化させ、そして振動膜201の振動量を変化させることで実現される。また、温度変化の通知機能は、振動膜の振動量を変化させてスピーカ101から放出される音の圧力(音圧)を変化させることで実現される。
【0018】
なお、振動膜201は、10℃の温度変化に対して弾性率が10パーセント以上変化する材料で構成されることが好ましい。これにより、人間の聴覚で弁別できる程度の音圧が放出される。このような材料として、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンが選択される。
【0019】
なお、スピーカ101から放出された音を分析して温度変化を通知するようにシステムを構成することもできる。
【0020】
図4は振動量の振動を検出して温度変化を通知する温度検出システム400の構成を示す図である。図4において、温度検出システム400は、スピーカ101を構成する振動膜201の振動量を検出する振動検出部401と、振動検出部401で検出した振動量の検出結果に基づいて温度変化を通知するかどうかを判断する制御部403と、制御部403で判断した結果に基づいて温度変化を通知する通知部405とを備える。
【0021】
振動検出部401は、振動膜201の変化に応じて変化する音圧を検知して温度変化を検出する。なお、振動検出部401が、振動膜201の変化に応じて変化するインピーダンスを検出することにより温度変化を検出するように構成されるようにしてもよい。
【0022】
制御部403は、振動検出部401で検出した検出結果を予め設定した閾値と比較し、温度変化を通知するかどうかを判断する。温度変化を通知すると判断した場合は、制御部403は通知部405へ通知する通知信号を生成する。そして制御部403は通知信号を通知部405へ供給する。
【0023】
通知部405は、制御部403から供給される通知信号に基づいて温度変化を通知するために、表示機能、報知機能、振動機能、メール送信機能等を搭載する。通知部405に搭載される機能としては、上記機能を一つまたは複数組み合わせることができる。
【0024】
表示機能として、液晶画面等の表示装置を利用して温度変化の内容(温度変化を示す数字やアイコンなど)を表示装置に表示させる機能がある。報知機能として、ブザーを利用してビープ音などの警報音を報知したり、スピーカを利用して音楽などの音を報知する機能がある。振動機能として、振動子を利用して振動子を振動させて通知する機能がある。メール送信機能として、温度変化の内容(温度変化を示す数字や温度変化を示す記号など)をメール送信して通知する機能がある。なお、温度変化率(温度上昇率及び温度下降率)など温度変化の内容を詳細に通知するように構成されるものでもよい。この場合、音や振動のパターンを予め複数設定しておき、温度変化の内容に応じて選択した音や振動パターンにより温度変化の内容が通知するように構成されるものでもよい。
【0025】
図5は図4に示した温度検出システム400における温度検出処理の流れを示している。温度検出処理が開始されると、振動検出部401が振動検出を実行する(ステップS501)。その後、制御部403が振動数の変化を音圧又はインピーダンスの変化で検出し、音圧又はインピーダンスが予め設定した閾値よりも大きいかどうかを判断する(ステップS502)。音圧又はインピーダンスが予め設定した閾値よりも大きいと判断した場合は(ステップS502:Yes)、制御部403は通知信号を生成する(ステップS503)。その後、通知部405は通知信号に基づいて、表示機能、報知機能、振動機能又はメール機能等の通知機能を実行する(ステップS504)。
【0026】
上記実施形態によれば、振動膜の振動量の変化を音圧又はインピーダンスで分析し、分析結果に基づいて温度変化を通知するかどうかを判断するシステムを実現することができる。
【0027】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0028】
(付記1)測定対象の温度変化を検出する温度検出システムにおいて、
弾性率が温度依存性を有する材料で構成された振動膜を備え、前記振動膜が振動したときの振動量の変化に基づいて温度変化を検出する温度検出手段と、
前記振動膜を振動させるための駆動信号を供給する駆動手段と、を備える温度検出システム。
【0029】
(付記2)前記温度検出手段は、前記振動膜と、前記振動膜に固定されたボイスコイルと、前記ボイスコイルに対向する磁石とを備えるスピーカにより構成され、
前記駆動手段は、前記ボイスコイルに電気信号を供給する付記1に記載の温度検出システム。
【0030】
(付記3)前記温度検出手段は、前記スピーカを構成する前記振動膜の振動量の変化で温度変化を検出し、前記振動膜の振動量に応じて変化する音を前記スピーカから放出する付記2に記載の温度検出システム。
【0031】
(付記4)前記振動膜は、10℃の温度変化に対して弾性率が10パーセント以上変化する材料で構成される付記1乃至3のいずれかに記載の温度検出システム。
【0032】
(付記5)前記振動膜は、ポリエチレンで構成される付記1乃至4のいずれかに記載の温度検出システム。
【0033】
(付記6)前記振動膜は、ポリプロピレンで構成される付記1乃至4のいずれかに記載の温度検出システム。
【0034】
(付記7)測定対象の温度変化を検出する温度検出方法において、
弾性率が温度依存性を有する材料で構成された振動膜を振動させるための駆動信号を供給するステップと、
前記振動膜が振動したときの振動量の変化に基づいて温度変化を検出するステップと、を含む温度検出方法。
【符号の説明】
【0035】
100 温度検出システム
101 スピーカ
103 信号送出部
105 電源
201 振動膜
203 ボイスコイル
205 マグネット
400 温度検出システム
401 振動検出部
403 制御部
405 通知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の温度変化を検出する温度検出システムにおいて、
弾性率が温度依存性を有する材料で構成された振動膜を備え、前記振動膜が振動したときの振動量の変化に基づいて温度変化を検出する温度検出手段と、
前記振動膜を振動させるための駆動信号を供給する駆動手段と、を備える温度検出システム。
【請求項2】
前記温度検出手段は、前記振動膜と、前記振動膜に固定されたボイスコイルと、前記ボイスコイルに対向する磁石とを備えるスピーカにより構成され、
前記駆動手段は、前記ボイスコイルに電気信号を供給する請求項1に記載の温度検出システム。
【請求項3】
前記温度検出手段は、前記スピーカを構成する前記振動膜の振動量の変化で温度変化を検出し、前記振動膜の振動量に応じて変化する音を前記スピーカから放出する請求項2に記載の温度検出システム。
【請求項4】
前記振動膜は、10℃の温度変化に対して弾性率が10パーセント以上変化する材料で構成される請求項1乃至3のいずれか一項に記載の温度検出システム。
【請求項5】
前記振動膜は、ポリエチレンで構成される請求項1乃至4のいずれか一項に記載の温度検出システム。
【請求項6】
前記振動膜は、ポリプロピレンで構成される請求項1乃至4のいずれか一項に記載の温度検出システム。
【請求項7】
測定対象の温度変化を検出する温度検出方法において、
弾性率が温度依存性を有する材料で構成された振動膜を振動させるための駆動信号を供給するステップと、
前記振動膜が振動したときの振動量の変化に基づいて温度変化を検出するステップと、を含む温度検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−180060(P2011−180060A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46346(P2010−46346)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】