説明

温度調整装置

【課題】複数系統の液体の温度調整を、精密且つコストを増加せずに実行できる温度調整装置を提供する。
【解決手段】低温部31b,32b及び高温部31a,32aによって液体の温度調整を行う複数の熱交換器31,32と、圧縮機34から吐出された冷媒を高温側流通管37,41と低温側流通管40,45とに分岐させる流通管36と、低温側流通管40,45の冷媒流通量を制御する複数の低温側バルブ39,43と、高温側流通管37,41の冷媒流通量を対応する低温側バルブ39,43と連動する複数の高温側バルブ38,42と、各低温側バルブ39,43を通過した冷媒を冷却する凝縮器46と、凝縮器46から吐出された冷媒及び各高温部31a,32aから吐出された冷媒を各低温部へ導入させる冷媒レヒート部と、冷媒レヒート部において各低温部31b,32bへ導入する前に冷媒を膨張させる複数の膨張弁52,54,56とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の温度を精密に調整可能な温度調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を所定の温度に調整し、この液体を種々の産業機器に循環させて、対象物の冷却や温度調整に用いるチラー機器等の温度調整装置が知られている。
液体の温度を所定の温度に調整する温度調整装置として、特許文献1に示すように2系統の液体を温度調整可能となるように2槽の水槽が設けられている構成が開示されている。
【0003】
この温度調整装置には、2つの水槽のうち第1水槽から供給される液体を冷却する凝縮器と、この凝縮器によって第1設定温度に設定された液体を送り出す第1供給管と、第2水槽から供給される液体に第1供給管から分岐して供給される液体を混合させて第2設定温度の液体を生成して送り出す第2供給管とが設けられている。
すなわち、この温度調整装置は、凝縮器で冷却された液体を第1設定温度とし、凝縮器で冷却された液体の一部を、凝縮器を通していない液体と混合することで第2設定温度とすることで、2系統の液体の温度制御を実行している。
【0004】
また、特許文献2のヒートポンプ式チラーでは、市水とブラインの2系統の液体を温度調整することができることが開示されている。
このヒートポンプ式チラーでは、市水用の熱交換器と、ブライン用の熱交換器をそれぞれ別個に設けているが、市水又はブラインの温度調整を単独で運転するか、同時に運転するかによって、各熱交換器へ流通させる冷媒を不要な熱交換器に対してはバイパスさせるような構成となっている。
【0005】
さらに、特許文献3には、複数系統の冷水又は温水を供給することができる冷温水供給システムが開示されている。特許文献3では、2系統のシステムを例に挙げており、圧縮機から吐出された冷媒を2つの配管に分岐させ、分岐したそれぞれの配管を加熱用の回路と冷却用の回路に接続することで、冷媒を加熱又は冷却させることができる。また、加熱用の回路及び冷却用の回路のそれぞれは、複数のチラーユニットへ分岐されるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−71581号公報
【特許文献2】特開2002−318028号公報
【特許文献3】特開2004−226015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1においては、温度調整対象となる液体は圧縮機、凝縮器、蒸発器を用いた冷凍サイクルによって温度調整しておらず、また被対象物を冷却した後そのままの温度で水槽に戻している。したがって、特許文献1の構成では、2系統の精密な温度調整を実行することができないという課題がある。
【0008】
また、特許文献2の構成では、市水とブラインのそれぞれ単独運転のときには四方弁を切り換えるだけで、不使用の熱交換器側には冷媒を流通させないようにすることができる。しかし、四方弁の切り換えによってブライン側については冷却・加熱の切換が可能ではあるが、市水側では加熱のみであって冷却することができないという課題がある。
【0009】
さらに、特許文献3の構成では、圧縮機、凝縮器、蒸発器を用いた冷凍システムにより2系統の温度調整を図っているが、圧縮機に冷媒を戻す際に、内燃機関を用いた熱回収器で冷媒を所定温度に調整してから圧縮機に戻している。
しかし、このような構成では、内燃機関や熱回収器を用いているので部品点数が増加し、コスト増に繋がるという課題がある。さらに、この構成では内燃機関を駆動させるためのエネルギー(燃料)が必要となってくるので、燃料費がかさむという問題もあり、且つ省エネという観点からも問題がある。
【0010】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、複数系統の液体の温度調整を、精密且つコストを増加せずに実行することができる温度調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成すべく、以下の構成を備える。
すなわち、本発明にかかる温度調整装置によれば、複数系統の液体の温度を調整する温度調整装置であって、各系統毎に設けられ、低温の冷媒が流入する低温部及び高温の冷媒が流入する高温部を有し、低温部と高温部によって温度調整対象の液体の温度調整を行う、複数の熱交換器と、冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機から吐出された冷媒を、温度調整対象の液体の系統毎に分岐させ、分岐されて各前記熱交換器方向に流入する冷媒を、さらに前記熱交換器の各高温部へ流入させる高温側流通管と各低温部へ流入させる低温側流通管に分岐させるように設けられた流通管と、低温部方向へ冷媒を流通させる各低温側流通管の中途部に設けられ、低温部方向への冷媒の流通量を制御する、複数の低温側バルブと、高温部方向へ冷媒を流通させる各高温側流通管の中途部に設けられ、高温部方向への冷媒の流通量を、同一の熱交換器の前記低温側バルブの開度と合わせて100%の開度となるように前記低温側バルブと連動して制御する、複数の高温側バルブと、各前記低温側バルブを通過した冷媒を合流させ、各低温側流通管内の冷媒をまとめて冷却する凝縮器と、前記凝縮器から吐出された冷媒及び各前記高温部から吐出された冷媒を、各低温部へ導入させる冷媒レヒート部と、冷媒レヒート部において各低温部へ導入する前に冷媒を膨張させる複数の膨張弁と、各前記低温部から吐出された冷媒を合流させて、前記圧縮機に戻すように配設されている戻り管とを具備することを特徴としている。
【0012】
このような構成を採用することによる作用は以下の通りである。
複数系統の熱交換器に対して1台の圧縮機で圧縮した冷媒を高温側と低温側とに分配してその割合で温度制御を行うので、精密な温度調整を実行することができる。また、各高温部から吐出された冷媒を低温部へ流入させる冷媒レヒートを採用することにより、圧縮機に戻す冷媒を再加熱するヒータや内燃機関等の必要が無く、部品点数の削減や省エネ化を図ることができる。
【0013】
また、各前記熱交換器から吐出される液体の温度を測定する、複数の液体温度センサと、各前記温度センサによって測定された温度に基づいて、該当する熱交換器へ冷媒を供給する低温側バルブ及び高温側バルブの開度を制御する制御部とを具備することを特徴としてもよい。
この構成によれば、各熱交換器の高温部と低温部に流入させる冷媒の割合を変更することにより、精密な温度制御が可能である。
【0014】
さらに、各前記低温部の冷媒流入口側に、流入する冷媒の温度を測定する冷媒温度センサを具備し、前記制御部は、前記冷媒温度センサによって測定された温度に基づいて、各前記膨張弁の開度を制御することを特徴としてもよい。
この構成によれば、各熱交換器の低温部へ流入する冷媒の温度を調整することができるので、各熱交換器の低温部における過冷却の防止及び高温化の防止を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる温度調整装置によれば、複数系統の液体の精密な温度調整を、高コストとならずに実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態にかかる温度調整装置の構成を示す説明図である。
【図2】第2の実施形態にかかる温度調整装置の構成を示す説明図である。
【図3】第3の実施形態にかかる温度調整装置の構成を示す説明図である。
【図4】第4の実施形態にかかる温度調整装置の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を図1に基づいて詳細に説明する。
本実施形態の温度調整装置30は、2つの水槽11,12に貯留された液体(水)を別個に温度調整できる。1つの水槽11,12は下部で連通しており、各水槽は恒温水の行き来が自由である。温度調整装置30によって温度調整されたそれぞれの水を1ch恒温水、2ch恒温水の2系統として、複数台の産業機器等に供給可能である。
【0018】
1ch恒温水は、1ch恒温水配管13を流通しており、1ch恒温水配管13の中途部には1ch恒温水を所定温度に調整するための熱交換器31が設けられている。1ch恒温水は、熱交換器31を流通する冷媒によって、所定温度に調整される。
2ch恒温水は、2ch恒温水配管14を流通しており、2ch恒温水配管14の中途部には2ch恒温水を所定温度に調整するための熱交換器32が設けられている。2ch恒温水は、熱交換器32を流通する冷媒によって、所定温度に調整される。
【0019】
熱交換器31,32はそれぞれ高温部31a,32aと低温部31b,32bとを有しており、高温部31a,32aを流通する高温の冷媒と、低温部31b,32bを流通する低温の冷媒によって、1ch恒温水及び2ch恒温水を所定温度に調整する。
【0020】
また、本実施形態では、1ch恒温水は低温部31bを通過して冷却された後に、高温部31aを通過して加熱されて所定温度に調整されている。2ch恒温水も同様に、まず低温部32bを通過して冷却された後に、高温部32aを通過して加熱されて所定温度に調整されている。
ただし、各恒温水を熱交換器の高温部及び低温部を通過させる順序は、上記の順序に限定されるものではない。
【0021】
1ch用の水槽11の底面に接続された1ch恒温水配管13の中途部には、1ch恒温水を熱交換器31方向へ送り込むための圧送ポンプ15が設けられている。
同様に、2ch用の水槽12の底面に接続された2ch恒温水配管14の中途部には、2ch恒温水を熱交換器32方向へ送り込むための圧送ポンプ16が設けられている。
【0022】
1ch用の水槽11には自動給水口9が設けられ、2ch用の水槽12内のフロートスイッチ8により一定の水位となるように自動給水が可能である。
1ch用の水槽11には、外部機器から戻った恒温水を水槽11に供給する導入管18が接続され、同様に2ch用の水槽12には外部機器から戻った恒温水を水槽12に供給する導入管19が接続されている。
【0023】
また、1ch恒温水配管13の出口側近傍から導入管18にかけてバイパス管7が設けられ、このバイパス管7の中途部にはバイパス弁6が設けられている。バイパス弁6は1chの恒温水を外部機器に供給時は閉となっているが、1chの恒温水を当該温度調整装置30内を循環させない場合には、開とすることで導入管18へ戻った恒温水を1ch恒温水配管13の出口側近傍にバイパスさせることができる。
【0024】
2ch恒温水配管14の出口側近傍から導入管19にかけてバイパス管5が設けられ、このバイパス管5の中途部にはバイパス弁4が設けられている。バイパス弁4は2chの恒温水を外部機器に供給時は閉となっているが、2chの恒温水を当該温度調整装置30内を循環させない場合には、開とすることで導入管19へ戻った恒温水を2ch恒温水配管14の出口側近傍にバイパスさせることができる。
【0025】
続いて、各熱交換器31,32へ流通させる冷媒の冷凍サイクル回路について説明する。
冷凍サイクル回路は、1台の圧縮機34と、圧縮機34から吐出された冷媒を1ch用と2ch用に分岐させ、さらに各熱交換器31,32の高温部側と低温部側とに分岐させる流通管36とを有している。つまり、本実施形態の2系統の恒温水を温度調整するために、1台の圧縮機34で圧縮された吐出された冷媒は、4つに分岐されるように設けられている。
【0026】
さらに、1ch恒温水配管13及び2ch恒温水配管14には、ドレンを排出するドレン配管2,3が接続されている。
【0027】
なお、各熱交換器31,32において、各高温部31a,32aが冷凍サイクル回路の凝縮器に該当し、凝縮器では気体状の高温で高圧の冷媒が、恒温水との間で熱交換して凝縮されて液化される。
各低温部31b,32bが冷凍サイクル回路の蒸発器に該当し、蒸発器では後述する膨張弁52,54,56によって低圧となった冷媒が、恒温水との間で熱交換して蒸発気化される。
【0028】
なお、この冷凍サイクル回路を循環する冷媒の例としては、フロン類、プロパン、イソブタン、シクロペンタン等の炭化水素、アンモニア、炭酸ガス等を用いることができる。
【0029】
次に、1ch側の回路から説明する。
1ch側の高温部31aへ冷媒を流通させる高温側流通管37は、高温側バルブ38を介して、1ch側の熱交換器31の高温部31aに接続されている。
また、1ch側の低温側流通管40には、1ch側の高温側流通管37の高温側バルブ38と連動して動作する低温側バルブ39が設けられている。高温側バルブ38と低温側バルブ39の制御は、高温部31aへの冷媒の流通量と低温部31bへの冷媒の流通量との和が、常に一定となるように行われる。例えば、1ch側に全体に流通させる冷媒量を100としたときに、高温部31aへの冷媒流通量と低温部31bへの冷媒流通量の和が常に100となるように、高温側バルブ38と低温側バルブ39の開度が合わせて100%となるように制御が行われる。制御するのは、後述する第1制御部60である。
【0030】
2ch側の回路も上記と同様である。
2ch側の高温部32aへ冷媒を流通させる高温側流通管41は、高温側バルブ42を介して、2ch側の熱交換器32の高温部32aに接続されている。
また、2ch側の低温側流通管45には、2ch側の高温側流通管41の高温側バルブ42と連動して動作する低温側バルブ43が設けられている。高温側バルブ42と低温側バルブ43の制御は、高温部32aへの冷媒の流通量と低温部32bへの冷媒の流通量との和が、常に一定となるように行われる。例えば、2ch側に全体に流通させる冷媒量を100としたときに、高温部32aへの冷媒流通量と低温部32bへの冷媒流通量の和が常に100となるように、高温側バルブ42と低温側バルブ43の開度が合わせて100%となるように制御が行われる。制御するのは、後述する第2制御部62である。
【0031】
1ch側の低温側流通管40及び2ch側の低温側流通管45は、それぞれの低温側バルブ39、43の下流側で合流し、1本の低温側流通管44として設けられる。この低温側流通管44は凝縮器46に接続され、低温側流通管44内を流通する冷媒は冷却され凝縮する。
凝縮器46は、外部から導入される冷却水と低温側流通管44内の冷媒とを熱交換することによって、冷媒を冷却液化する。
この冷却水が流通する冷却水流通管48には、冷却水温センサ49と、制水弁50が設けられている。冷却水温センサ49は、冷却水の冷え過ぎなどによる結露防止のために冷却水温を測定している。冷却水温センサ49の測定温度が所定温度以下のときに、第1制御部60または第2制御部62が警報を出す等の制御を実行する。制水弁50と圧縮機34とは配管85が接続されており、配管85を流通する圧縮機34の吐出ガスの圧力に基づいて、制水弁50の開度調整が自動的に行われる。
凝縮器46によって冷却された冷媒は、膨張弁52(凝縮器側の膨張弁)を通過することにより膨張して低圧化し、さらに冷却される。
【0032】
なお、熱交換器31の高温部31aを通過した冷媒は、膨張弁54(特許請求の範囲でいう高温部出口側膨張弁)を通過することにより膨張して冷却される。
同様に、熱交換器32の高温部32aを通過した冷媒は、膨張弁56(高温部出口側の膨張弁)を通過することにより膨張して冷却される。
【0033】
そして、凝縮器46から膨張弁52を経て冷却された冷媒と、高温部31aから出て膨張弁54を経て冷却された冷媒と、高温部32aから出て膨張弁56を経て冷却された冷媒とが合流するような配管が設けられている。そして、これら合流した冷媒は、各熱交換器31,32の低温部31b,32bに分岐して導入される。このように各高温部31a,32aから出た熱交換後の冷媒を、各低温部31b,32bへ流入させるための配管が形成されている部位が特許請求の範囲でいう冷媒レヒート部55である。
高温部31a,32aから吐出されて凝縮した冷媒を、圧縮機34に戻す前に低温部31b,32bに導入させて蒸発させることによって、熱回収器やヒータなどが不要となり部品点数を削減することができ、さらに加熱用の別のエネルギーを使用することもないので省エネにも寄与することができる。
【0034】
各低温部31b,32bに導入され、各恒温水から吸熱した冷媒は、各低温部31b,32bから吐出された後、合流して1本の戻り管58内を圧縮機34方向に流通する。
圧縮機34の上流側には、アキュムレータ59が設けられている。アキュムレータ59を用いることにより、蒸発できなかった液体のままの冷媒を分離し、気体となっている冷媒のみを圧縮機34へ導入させることができる。
【0035】
次に、制御系について説明する。
本実施形態の温度調整装置30は、1ch用の第1制御部60と、2ch用の第2制御部62の2つの制御部を備えている。各制御部60,62は、CPU及びメモリを備えており、予めメモリに記憶されているプログラムに基づいてCPUが所定動作を実行する。
なお、ここでは、2つの制御部60,62を設けた実施形態を説明するが、制御部60,62の数自体は2つに限定するものではない。
【0036】
圧縮機34から吐出された高温の冷媒の温度を測定する吐出温度センサ65が、流通管36の圧縮機34近傍に設けられている。吐出温度センサ65で測定された温度データは、第1制御部60(又は第2制御部62でもよい)に入力される。
第1制御部60は、吐出温度センサ65で測定された温度データに基づき、予め設定された温度以上であると判断した場合には、回路保護のため圧縮機34の回転数を減少させるべく、制御信号を圧縮機34に設けられたインバータ64に出力する。
【0037】
また、1ch恒温水配管13において熱交換器31から吐出した部位には、1ch恒温水の温度を検出する出口温度センサ66が設けられている。出口温度センサ66によって測定された温度データは、第1制御部60に入力される。
【0038】
第1制御部60では、入力してきた1ch恒温水の温度に基づいて、高温側バルブ38と低温側バルブ39とを連動させて開度を調整する。例えば、1ch恒温水の出口温度が所定温度よりも高温の場合には、低温側バルブ39の開度を大きくし、その分高温側バルブ38の開度を小さくする。また、1ch恒温水の出口温度が所定温度よりも低温の場合には、低温側バルブ39の開度を小さくし、その分高温側バルブ38の開度を大きくする。すなわち、熱交換器31に流入する冷媒の全体量(高温側と低温側を合わせた料)が常に一定となるように、第1制御部60は、高温側バルブ38と低温側バルブ39に制御信号を出力して温度制御を行っている。
【0039】
2ch恒温水配管14において熱交換器32から吐出した部位には、2ch恒温水の温度を検出する出口温度センサ67が設けられている。出口温度センサ67によって測定された温度データは、第2制御部62に入力される。
【0040】
第2制御部62では、入力してきた2ch恒温水の温度に基づいて、高温側バルブ42と低温側バルブ43とを連動させて開度を調整する。例えば、2ch恒温水の出口温度が所定温度よりも高温の場合には、低温側バルブ43の開度を大きくし、その分高温側バルブ42の開度を小さくする。また、2ch恒温水の出口温度が所定温度よりも低温の場合には、低温側バルブ43の開度を小さくし、その分高温側バルブ42の開度を大きくする。すなわち、熱交換器32に流入する冷媒の全体量(高温側と低温側を合わせた料)が常に一定であるように、第2制御部62は、高温側バルブ42と低温側バルブ43に制御信号を出力して温度制御を行っている。
【0041】
また、冷媒レヒート部55における各低温部31b,32bへの分岐部上流側には、凝縮器46から膨張弁52を経由した冷媒と、各高温部31a,32aから各膨張弁54,56を経由した冷媒が合流した部位における、合流した冷媒の膨張後の冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ68が設けられている。冷媒温度センサ68は、制御対象となるバルブ(膨張弁)の数に合わせて複数設けられているところが図示されているが、冷媒温度センサ68の数は1つであってもよい。
冷媒温度センサ68は、検出した冷媒の温度データを第1制御部60及び第2制御部62の双方へ入力する。
【0042】
第1制御部60では、検出された冷媒の温度に基づいて凝縮器46の下流側の膨張弁52の開度を制御するために制御信号を出力し、また検出された冷媒の温度に基づいて高温部31aから吐出された冷媒を冷却させる膨張弁54の開度を制御するために制御信号を出力する。
一方、第2制御部62では、検出された冷媒の温度に基づいて、高温部32aから吐出された冷媒を冷却させる膨張弁56の開度を制御するために制御信号を出力する。
【0043】
このように、冷媒レヒート部55における、各低温部31b,32bへの分岐前の冷媒温度に基づき、各膨張弁52,54,56の開度を調整することで各低温部31b,32bへ導入される冷媒の温度調整をすることができる。
このため、各低温部31b,32bが過冷却になったり、高温状態になってしまうことを防止することができる。
【0044】
また、圧縮機34の上流側には、アキュムレータ59から吐出された冷媒の温度を測定する吸入温度センサ70が設けられている。吸入温度センサ70で測定された温度データは、第1制御部60及び第2制御部62に入力される。吸入温度センサ70の数は、制御部の数に合わせて2つ設けられているところが図示されているが、吸入温度センサ70は1つであってもよい。
吸入温度センサ70は、圧縮機34の保護用に設けられており、圧縮機34の吸入前の冷媒温度が予め設定された所定温度以下になったことを検出した第1制御部60及び第2制御部62は、圧縮機34の回転数を減少させるべく、制御信号を圧縮機34に設けられたインバータ64に出力する。
【0045】
圧縮機34の下流側には、圧縮機34から吐出された高温高圧の冷媒圧力を検出する圧力センサ72と、所定圧力以上を検出した場合に圧縮機34の駆動を停止できるように制御する圧力スイッチ74とが設けられている。
圧力センサ72は、作業者の目視用に設けられており、危険な圧力になったことを作業者が認識させることができる。また、圧力スイッチ74は、所定圧力以上になったときには電気接点をオフすることができる。この電気接点を圧縮機34の駆動電源と直列に配置させることで、圧縮機34からの吐出冷媒が高圧になって危険なときは、圧力スイッチ74が自動的に圧縮機34の電源をオフして圧縮機34の駆動を停止させることができる。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、図2に基づいて、温度調整装置の第2の実施形態について説明する。
なお、上述した第1の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する場合もある。
第2の実施形態と第1の実施形態との違いは、冷媒レヒート部55における、膨張弁の配置位置にある。第2の実施形態では、各高温部31a,32aから吐出された冷媒を合流した後に、1台の膨張弁76によって膨張させている点が、第1の実施形態と異なっている。凝縮器46から吐出された冷媒は、冷媒レヒート部55で合流する前に膨張弁52によって膨張させている点は第1の実施形態と同様である。
このような第2の実施形態によれば、第1の実施形態よりも膨張弁の数が減らすことができるので、コスト的に有利である。
【0047】
また、第2の実施形態では、合流した冷媒の膨張後の冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ68は、膨張弁52から吐出した冷媒と膨張弁76から吐出した冷媒の合流位置よりも下流側に設けられている。冷媒温度センサ68は、検出した冷媒の温度データを第2制御部62へ入力している。第2制御部62では、検出された冷媒の温度に基づいて、高温部31a,32aから吐出された冷媒を冷却させる膨張弁76の開度を制御するための制御信号、及び凝縮器46の下流側の膨張弁52の開度を制御するための制御信号を出力する。このように、各低温部31b,32bへ導入される冷媒温度を調整することで、各低温部31b,32bの過冷却や高温化を防止できる。
ただし、本実施形態における各膨張弁76,52の開度制御は、第2制御部62が実行することに限定するものではない。
【0048】
(第3の実施形態)
次に、図3に基づいて、温度調整装置の第3の実施形態について説明する。
なお、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する場合もある。
本実施形態では、各高温部31a,32aから吐出された冷媒と、凝縮器46から吐出された冷媒とを合流させた後、各低温部31b,32bへ冷媒を導入すべく分岐させた各配管82,83に膨張弁を設けている。
すなわち、配管82における低温部31bへの冷媒の導入前に膨張弁77が設けられており、配管83における低温部32bへの冷媒の導入前に膨張弁78が設けられている。
このような第3の実施形態によれば、第1の実施形態よりも膨張弁の数が減らすことができるので、第1の実施形態と比較すればコスト的に有利である。
【0049】
また、第3の実施形態では、合流した冷媒の膨張後の冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ68は、配管82,83における各膨張弁77,78の下流側、すなわち各低温部31b,32bの導入口の直前に設けられている。
図3に示す実施形態では、低温部31bの導入口の直前の冷媒温度センサ68は、検出した冷媒の温度データを第1制御部60へ入力している。一方、低温部32bの導入口の直前の冷媒温度センサ68は、検出した冷媒の温度データを第2制御部62へ入力している。
【0050】
第1制御部60では、検出された冷媒の温度に基づいて低温部31bの冷媒の導入口の直前の膨張弁77の開度を制御するために制御信号を出力する。第2制御部62では、検出された冷媒の温度に基づいて、低温部32bの冷媒の導入口の直前の膨張弁78の開度を制御するために制御信号を出力する。
このように、各低温部31b,32bへ導入される冷媒温度を調整することで、各低温部31b,32bの過冷却や高温化を防止できる。
ただし、本実施形態における各膨張弁77,78の開度制御は、それぞれ第1制御部60と第2制御部62が実行することに限定するものではない。
【0051】
(第4の実施形態)
次に、図4に基づいて、温度調整装置の第4の実施形態について説明する。
なお、上述した第1の実施形態〜第3の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する場合もある。
本実施形態においては、冷媒レヒート部55において、凝縮器46から吐出された冷媒をまず、低温部31bへ導入させる側の配管80と、低温部32bへ導入させる側の配管81とに分岐させる。
【0052】
凝縮器46から吐出された冷媒を低温部31bへ導入させる配管80には、高温部31aから吐出された冷媒が合流する。そして、合流した冷媒を膨張して冷却する膨張弁77が、低温部31bの導入口の直前に設けられている。
一方、凝縮器から吐出された冷媒を低温部32bへ導入させる配管81には、高温部32aから吐出された冷媒が合流する。そして、合流した冷媒を膨張して冷却する膨張弁78が、低温部32bの導入口の直前に設けられている。
【0053】
また、第4の実施形態では、合流した冷媒の膨張後の冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ68は、配管80,81における各膨張弁77,78の下流側、すなわち各低温部31b,32bの導入口の直前に設けられている。
図4に示す実施形態では、低温部31bの導入口の直前の冷媒温度センサ68は、検出した冷媒の温度データを第1制御部60へ入力している。一方、低温部32bの導入口の直前の冷媒温度センサ68は、検出した冷媒の温度データを第2制御部62へ入力している。
【0054】
第1制御部60では、検出された冷媒の温度に基づいて低温部31bの冷媒の導入口の直前の膨張弁77の開度を制御するために制御信号を出力する。第2制御部62では、検出された冷媒の温度に基づいて、低温部32bの冷媒の導入口の直前の膨張弁78の開度を制御するために制御信号を出力する。
このように、各低温部31b,32bへ導入される冷媒温度を調整することで、各低温部31b,32bの過冷却や高温化を防止できる。
ただし、本実施形態における各膨張弁77,78の開度制御は、それぞれ第1制御部60と第2制御部62が実行することに限定するものではない。
【0055】
(他の実施形態)
上述してきたような各実施形態では、2系統の恒温水の温度制御を実行すべく2つの熱交換器31,32を設けている。しかし、本発明としては温度制御対象は2系統に限定されるものではないので、熱交換器の数は2つに限定されるものではなく、温度調整対象となる液体の系統数に合わせて設けることが必要である。
例えば、3系統の恒温水の温度制御を実行する場合には、制御対象の恒温水の系統数に合わせた数である3つの熱交換器を設け、3つの熱交換器の高温部から出た冷媒を、圧縮機に戻す前に、各低温部へ導入させるようにし、冷媒レヒートを行うようにする。
【0056】
さらに、各実施形態では、2系統の恒温水の温度制御を実行すべく、2つの制御部を設けた場合について説明した。
しかしながら、2系統の温度制御であっても2つの制御部を設けることに限定するものではなく、また3系統以上の温度制御であっても、系統数に応じた制御部の数を設けることに限定するものではない。系統数とは無関係に1つの制御部で全てを制御してもよい。
【0057】
恒温水の水槽についても、上述した実施形態で図示したような形状に限定されるものではなく、1つの水槽から複数系統に分岐されるようなものであってもよい。
さらには、温度調整対象は水ではなく、他の液体であってもよい。
【0058】
以上本発明につき好適な実施形態を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【符号の説明】
【0059】
2,3 ドレン配管
4,6 バイパス弁
5,7 バイパス管
8 フロートスイッチ
9 自動給水口
11,12 水槽
13,14 恒温水配管
15,16 圧送ポンプ
18,19 導入管
30 温度調整装置
31,32 熱交換器
31a,32a 高温部
31b,32b 低温部
34 圧縮機
36 流通管
37,41 高温側流通管
38,42 高温側バルブ
39,43 低温側バルブ
40,44,45 低温側流通管
46 凝縮器
48 冷却水流通管
49 冷却水温センサ
50 制水弁
52,54,56,76,77,78 膨張弁
55 冷媒レヒート部
58 戻り管
59 アキュムレータ
60,62 制御部
64 インバータ
65 吐出温度センサ
66 出口温度センサ
67 出口温度センサ
68 冷媒温度センサ
70 吸入温度センサ
72 圧力センサ
74 圧力スイッチ
80,81,82,83,85 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数系統の液体の温度を調整する温度調整装置であって、
各系統毎に設けられ、低温の冷媒が流入する低温部及び高温の冷媒が流入する高温部を有し、低温部と高温部によって温度調整対象の液体の温度調整を行う、複数の熱交換器と、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
該圧縮機から吐出された冷媒を、温度調整対象の液体の系統毎に分岐させ、分岐されて各前記熱交換器方向に流入する冷媒を、さらに前記熱交換器の各高温部へ流入させる高温側流通管と各低温部へ流入させる低温側流通管に分岐させるように設けられた流通管と、
低温部方向へ冷媒を流通させる各低温側流通管の中途部に設けられ、低温部方向への冷媒の流通量を制御する、複数の低温側バルブと、
高温部方向へ冷媒を流通させる各高温側流通管の中途部に設けられ、高温部方向への冷媒の流通量を、同一の熱交換器の前記低温側バルブの開度と合わせて100%の開度となるように前記低温側バルブと連動して制御する、複数の高温側バルブと、
各前記低温側バルブを通過した冷媒を合流させ、各低温側流通管内の冷媒をまとめて冷却する凝縮器と、
前記凝縮器から吐出された冷媒及び各前記高温部から吐出された冷媒を、各低温部へ導入させる冷媒レヒート部と、
冷媒レヒート部において各低温部へ導入する前に冷媒を膨張させる複数の膨張弁と、
各前記低温部から吐出された冷媒を合流させて、前記圧縮機に戻すように配設されている戻り管とを具備することを特徴とする温度調整装置。
【請求項2】
各前記熱交換器から吐出される液体の温度を測定する、複数の液体温度センサと、
各前記温度センサによって測定された温度に基づいて、該当する熱交換器へ冷媒を供給する低温側バルブ及び高温側バルブの開度を制御する制御部とを具備することを特徴とする請求項1記載の温度調整装置。
【請求項3】
各前記低温部の冷媒流入口側に、流入する冷媒の温度を測定する冷媒温度センサを具備し、
前記制御部は、
前記冷媒温度センサによって測定された温度に基づいて、各前記膨張弁の開度を制御することを特徴とする請求項2記載の温度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−159260(P2012−159260A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20694(P2011−20694)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)