説明

温泉管理システム

【課題】 温泉利用者の不信感を払拭するために、源泉から浴槽又は飲用口に供給されている温泉の温泉成分を管理するための温泉管理システムを提供する。
【解決手段】 温泉源泉における湧出泉の密度及び温泉成分の濃度からなる群から選ばれる少なくとも1種の分析項目の値(1−1)、及び、該源泉から供給される浴槽又は飲用口における温泉の該分析項目の値(1−2)を入力する第1ステップと、第1ステップで入力された値(1−1)及び(1−2)を比較して、浴槽又は飲用口における温泉と湧出泉との同一性を判断する第2ステップと、第2ステップの結果を提示する第3ステップとを具備することを特徴とする温泉管理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温泉源泉から湧出する温泉を管理する温泉管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
温泉には、カリウム、ナトリウム、遊離二酸化炭素などの多くの温泉成分が溶存し、これら温泉成分が多くの効能を与えることが知られている。各地の温泉地では、源泉から湧出される温泉が温泉旅館などの温泉利用施設の浴槽又は飲用口に配給され、温泉利用者に提供されている。そして、温泉法施行規則では、源泉から湧出される温泉を採取して、該温泉の密度、温度、蒸気残留分及び温泉成分等を分析し、その結果を源泉名、採取年月日、分析年月日、分析機関とともに浴槽等に掲示することになっている(非特許文献1)。
最近、一部の温泉利用施設において、温泉源泉における湧出泉に、水、入浴剤、殺菌剤等を混合し、これを浴槽等に供給していることが報道され(非特許文献2)、温泉利用施設において浴槽等に供されている温泉と源泉からの湧出泉とは温泉成分が異なり、掲示されている温泉成分が大きく変わっているのではないかとの不信感を多くの温泉利用者に与えた。
【0003】
【非特許文献1】温泉法施行規則、平成14年3月22日環境省令第六号第六条(温泉の成分等の掲示)
【非特許文献2】小野 一馬「解説 ニセ温泉」読売新聞、2004年11月25日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、温泉利用者の不信感を払拭するには、例えば、温泉利用施設の管理者の信頼によるか、あるいは、非特許文献2が指摘しているように新たな法律による規制が提言されているに過ぎず、温泉利用者の不信感を払拭し得るに足る温泉管理システムは未だ提供されていない。
本発明の目的は、温泉利用者の不信感を払拭するために、源泉から浴槽又は飲用口に供給されている温泉の温泉成分を管理するための温泉管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、温泉源泉における湧出泉の密度及び温泉成分の濃度からなる群から選ばれる少なくとも1種の分析項目の値(1−1)、及び、該源泉から供給される浴槽又は飲用口における温泉の該分析項目の値(1−2)を入力する第1ステップと、第1ステップで入力された値(1−1)及び(1−2)を比較して、浴槽又は飲用口における温泉と湧出泉との同一性を判断する第2ステップと、第2ステップの結果を提示する第3ステップとを具備することを特徴とする温泉管理システムである。
【0006】
中でも、該分析項目の値の全部又は一部を電気又は光信号によって、入力するシステムであると、源泉から湧出される温泉の該分析項目の値(1−1)と浴槽又は飲用口の温泉の該分析項目の値(1−2)とが速やかに、比較・判断されて、結果が提示されることから好ましい。
さらに、分析項目の値(1−1)と分析項目の値(1−2)とが常時入力され、第3ステップが、これらの分析値を常時提示するシステムであると、温泉利用者等が浴槽又は飲用口における温泉の該分析項目の値が湧出泉の該分析項目の値と略同等であり、水、入浴剤、殺菌剤等が投与されていないことを認識することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシステムによれば、温泉源泉からの湧出泉と、該源泉から浴槽又は飲用口に供給される温泉とが密度又は温泉成分の分析項目の値によって判定されることから、浴槽又は飲用口における温泉が、湧出泉に水、入浴剤、殺菌剤等が混合されないように、容易にかつ簡便に管理することができる。また、温泉利用施設において浴槽又は飲用口における温泉と源泉からの湧出泉とは温泉成分が略同一であり、掲示されている温泉成分による効能が期待されることを科学的かつ合理的に理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本システムの第1ステップは、温泉源泉における湧出泉の密度及び温泉成分の濃度からなる群から選ばれる少なくとも1種の分析項目の値(1−1)、及び、該源泉から供給される浴槽又は飲用口における温泉の該分析項目の値(1−2)を入力するステップである。
入力される分析項目は1種でもよいが、2種以上の分析項目であると、より正確に管理されることから好ましい。
【0009】
分析項目の値(1−1)は、図1に示したように、源泉からの湧出泉(1)を分析することによって求める値であり、分析項目の値(1−2)は、該源泉から供給される浴槽又は飲用口における温泉(図1には岩風呂式浴槽における温泉が示されている。以下、総称して浴槽泉という場合がある。)を分析することによって求める値である。
分析項目は、湧出泉(1)及び浴槽泉(2)について同じ種類の分析項目であり、このことにより、第2ステップにおいて分析項目の値を比較・判定することができるのである。
【0010】
温泉成分の濃度以外の分析項目である密度の測定方法としては、例えば、ピクノメーターを用いて一定容積を採取した試料の質量を天秤で測定して、質量と容積の比として算出する方法などが挙げられる。
【0011】
温泉成分の濃度及び密度以外の分析項目として、温度、蒸留残留物などを分析して第1ステップで入力してもよい。
蒸発残留物は溶存物質量の目安となるもので、その測定方法としては、通常、試料をそのまま蒸発乾固したときの蒸発残留物を天秤で測定して、蒸発残留物(mg)/試料(kg)によって求めることができる。
【0012】
温泉成分とは、温泉法別表に記載された物質種であり、例えば、水素イオン(pH)、カリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオン(II・III)、マンガンイオン、アルミニウムイオン、塩化物イオン、硫酸イオン、遊離二酸化炭素、炭酸水素イオン、炭酸イオン、ホウ酸、メタケイ酸、硫化水素、チオ硫酸イオン、イオウ、ヒ素、銅イオン、フッ化物イオン、鉛イオン、総水銀、カドミニウム、ヨウ化イオン、臭化物イオン、ラドン、ラジウム等が挙げられる。
【0013】
pHの測定方法としては、通常、pH計が用いられ、電気又は光信号等としてデータを取り出すことができることから好ましい。
【0014】
カリウムイオン、ナトリウムイオンの分析方法としては、例えば、炎光法、イオンクロマト法などが挙げられ、中でも、イオンクロマト法は、共存物質の妨害を避けることができ、他の陽イオンについても同時に分析ができることから好ましい。
【0015】
マグネシウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオン(II・III)、マンガンイオン、アルミニウムイオン分析方法としては、例えば、キレート滴定法、比色法、原子吸光法、ICP発光分光分析法等が挙げられる。中でも、ICP発光分光分析法は、誘導結合プラズマ中に試料を霧化して導入し、熱エネルギーにより励起されて発生する光を分光して元素特有のスペクトルに分けて測定することから、高感度で分析精度も高く定量でき、測定値は電気又は光信号等としてデータを取り出すことができることから好ましい。
【0016】
塩化物イオンの分析方法としては、例えば、モール滴定法、イオン電極法、イオンクロマト法などが挙げられる。中でも、イオンクロマト法は、他の陰イオンと同時分析が可能であり、また、測定値が電気又は光信号等としてデータを取り出すことができることからも好ましい。
【0017】
硫酸イオンの分析方法としては、例えば、バリウム重量法、比濁法、イオンクロマト法などが挙げられるが、中でも、イオンクロマト法は、他の陰イオンと同時分析が可能であり、また、測定値が電気又は光信号等としてデータを取り出すことができることからも好ましい。
【0018】
遊離二酸化炭素の分析方法としては、例えば、試料に過剰のアルカリを加えて酸で逆滴定する方法などが挙げられ、炭酸水素イオン及び炭酸イオンの分析方法としては、例えば、フェノールフタレイン及びメチルレッドブロムクレゾールグリーン混合指示薬を用いて塩酸標準溶液で滴定を行い分離定量する方法などが挙げられる。これらの滴定法は電位差滴定装置を用いてもよい。この場合は、測定値が電気又は光信号等としてデータを取り出すことができることから好ましい。
【0019】
ホウ酸、メタケイ酸の分析方法としては、例えば、比色法、ICP発光分光分析法等が挙げられ、中でも、ICP発光分光分析法は、誘導結合プラズマ中に試料を霧化して導入し、熱エネルギーにより励起されて発生する光を分光して、目的元素特有のスペクトルに分けて測定することから、高感度で分析精度の高い定量ができ、測定値も電気又は光信号等としてデータを取り出すことができることから好ましい。
【0020】
硫化水素の分析方法としては、例えば、ヨウ素滴定法、酢酸カドミウム滴定法、炭酸カドミウム滴定法等が挙げられ、中でも、試薬の取り扱い、安全性の面からヨウ素滴定法が好ましい。
チオ硫酸イオンの分析方法としては、例えば、メチレンブルー比色法などが挙げられる。
硫黄の分析方法としては、例えば、ヨウ素滴定法、臭素酸化滴定法等が挙げられるが、中でも、ヨウ素滴定法が簡便で好ましい。
【0021】
ヒ素、銅イオン、鉛イオンの分析方法としては、例えば、比色法、原子吸光法、ICP発光分光分析法等が挙げられる。中でも、ICP発光分光分析法は、誘導結合プラズマ中に試料を霧化して導入し、熱エネルギーにより励起されて発生する光を分光して、目的元素特有のスペクトルに分けて測定することから、高感度で分析精度の高い定量ができ、測定値も電気又は光信号等としてデータを取り出すことができることから好ましい。
【0022】
フッ化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンの分析方法としては、例えば、イオン電極法、比色法、イオンクロマト法が挙げられる。中でも、イオンクロマト法は、陰イオンを同時に分析することができ、測定値も電気又は光信号等としてデータを取り出すことができることから好ましい。
【0023】
総水銀の分析方法としては、例えば、還元気化法、金アマルガム原子吸光法などが挙げられ、中でも、試料に還元試薬を加えて発生する還元水銀蒸気を原子吸光法で測定する還元気化法が安価で操作性もよいことから好ましい。
【0024】
ラドン、ラジウムの分析方法としては、例えば、液体シンチレーションカウンターで測定する方法などが挙げられる。
【0025】
また、入浴剤、殺菌剤等の混入が懸念される場合は、例えば、入浴剤、殺菌剤等を液液分配、固層抽出等により分取・精製工程を経て、分光分析法、液体クロマトグラフ法、赤外分光分析法等で測定する方法が挙げられる。通常は汎用性の高い液体クロマトグラフ法が用いられる。
【0026】
第1ステップにおける入力方法としては、例えば、分析機器(図1の4又は5)で分析された値を電気又は光信号等のまま、有線(図1の6)又は無線(図示せず)を介して、本システム(3)の入力部に入力する方法(以上、図1)、例えば、入力部としてコンピュータのキーボードなどを用いて入力する方法、例えば、図6のように分析機器によって得られた分析項目の値をコンピュータ(図6の11)からインターネットや電話回線などのネットワーク(10)を通じて、本システム(3)の入力部に入力する方法等が例示される。
また、本システムの入力部に、分析項目の値のみならず、試料の採取時間、試料の測定時間、データの入力時間を入力してもよい。ここで入力される時間の単位は、例えば、年月日まででもよいし、時分秒であってもよい。
時間が第1ステップで入力される分析項目の値と同時に入力したり、本システムが入力部に分析項目の値を受け入れた時間を本システムが記憶するなどして、その結果を第3ステップで提示できるようにメモリで格納されることが好ましい。
【0027】
入力部に電気又は光信号等として与えられる値を直接、電気又は光信号等のまま、本システムに入力する方法とは、例えば、図2において説明すると、pHの分析値は、上述したように電気又は光信号等として入力することができることから、有線又は無線によって、電気又は光信号等を本システムの入力部を介してCPU(central processing unit )に入力する方法などである。さらに、図6の如く、分析機関のコンピュータ(11)からネットワーク(10)を介して本システム(3)に入力してもよい。
具体的に水素イオン濃度をpH計から直接、電気又は光信号等のまま入力する方法を示すと、pH計が持つ外部出力端子からの電流値又は電圧値の電気又は光信号等がpH値と相関しており、該電気又は光信号等を本システムの入力部が受け入れ、本システムのCPUがpH値に換算してメモリにpH値を格納する方法である。
本システムが直接、電気又は光信号等のまま入力する方法を少なくとも1種の物質種について実施すると、本システムにおいて常時測定可能な物質種が存在することになり、常時、該物質種の濃度を比較及び提示させることにより、浴槽泉と湧出泉とが、同一であることを常に示すことができることから好ましい。
【0028】
本発明の第2ステップは、第1ステップで入力された値(1−1)及び(1−2)を比較して、浴槽又は飲用口における温泉と湧出泉との同一性を判断するステップである。
具体的には、例えば、(I)湧出泉と浴槽又は飲用口における温泉とが同一であると判断される、分析項目の値(1−1)と分析項目の値(1−2)との差の許容範囲を入力するステップ(2−1);分析項目の値(1−1)と分析項目の値(1−2)との差の絶対値を算出するステップ(2−2);及びステップ(2−2)で算出された絶対値とステップ(2−1)で入力された許容範囲に基づいて湧出泉と浴槽又は飲用口における温泉とが同一であると判断するステップ(2−3)を有するステップ、(II)第2ステップが、湧出泉と浴槽又は飲用口における温泉とが同一であると判断される、分析項目の値(1−1)と分析項目の値(1−2)との比の許容範囲を入力するステップ(2−1’);分析項目の値(1−1)と分析項目の値(1−2)との比を算出するステップ(2−2’);及びステップ(2−2’)で算出された比とステップ(2−1’)で入力された許容範囲に基づいて湧出泉と浴槽又は飲用口における温泉とが同一であると判断するステップ(2−3’)を有するステップなどが挙げられる。
【0029】
第2ステップが(I)の場合、ステップ(2−1)は、通常、第1ステップの分析誤差の範囲をそのまま入力すればよいが、例えば、分析項目が硫化水素(H2S)や遊離二酸化炭素である場合、源泉から浴槽又は飲用口に温泉が移動する際に、値が減少する場合があり、このステップでは、この減少量を見込んで入力する。そして、ステップ(2−1)で入力された値は、通常、CPUを介してメモリや外部記憶装置に格納される。
ステップ(2−2)において、差の絶対値が小さいほど、湧出泉と浴槽泉とは同一であることを意味する。
ステップ(2−3)は、ステップ(2−2)の差の絶対値がステップ(2−1)の許容範囲に属すれば、湧出泉と浴槽泉とは同一であると判断し、属さなければ湧出泉と浴槽泉とは同一ではないと判断する。
【0030】
第2ステップが(II)の場合、ステップ(2−1’)のステップは、通常、第1ステップの分析誤差の比をそのまま入力すればよいが、前記と同様に値が減少する場合には、このステップでは、この減少量または減少する割合を見込んで入力する。そして、ステップ(2−1’)で入力された値は、通常、CPUを介してメモリや外部記憶装置に格納される。
ステップ(2−2’)の比が1に近いほど、湧出泉と浴槽泉とは同一であることを意味する。
ステップ(2−3’)は、ステップ(2−2’)の比がステップ(2−1’)の許容範囲内であれば、湧出泉と浴槽泉とは同一であると判断し、許容範囲外であれば湧出泉と浴槽泉とは同一ではないと判断する。
【0031】
前記(I)及び(II)では分析項目の値の1つ1つについて判断する場合を例示したが、全ての分析項目の値が同一でなければ、温泉源と浴槽泉とは同一であると判断されない場合には、全ての分析項目の値が同一と判断されたら、湧出泉と浴槽泉とは同一であると判断するステップをさらに有することが好ましい。
【0032】
第3ステップは、第2ステップの結果を提示するステップであり、通常、ディスプレーなどの提示部により提示がされる。分析項目の値について湧出泉と浴槽泉とが同一ではないと判断されれば、アラーム音などで温泉管理者等に提示したり、源泉と浴槽との供給管(図1の7)を自動弁等で閉止する装置が接続されていてもよい。
図3には、提示部がのディスプレーであり、その提示例を示した。図3の分析項目には、分析される温泉成分が提示され、分析結果の源泉の項には、図1の1で採取された湧出
泉の分析結果(電気又は光信号等として入力される場合には4の電極の結果)が示される。分析結果の浴槽の項には、図2で採取された浴槽泉の分析結果(電気又は光信号等として入力される場合には5の電極の結果)が示される。許容範囲の項には、前記ステップ(2−1)及びステップ(2−1’)で入力される値が示され、湧出泉と浴槽泉の分析結果が同一であると判断される許容範囲内であれば、判定の項に「同一」と提示される。
【0033】
さらに、第1ステップにおいて、試料の採取日時、分析項目の測定日時等を入力するステップを有する場合には、図3に例示したように、採取日時、測定日時等を提示するようにしてもよい。
図3のpH(水素イオン)やNa+(ナトリウムイオン)のように電気又は光信号等によって常時分析結果が得られる場合には、第3ステップにおいて、時間単位又は分単位で分析結果を提示することにより、常時測定していることを提示できることから好ましい。
また、その他の項目のように、分析機関によって分析された結果を後日入力する場合には、その分析結果を測定日とともに提示するようにすれば、最新の分析結果をただちに提示できる。
さらに、図3に例示したように、複数の温泉成分の濃度が同一であることを示すことにより、湧出泉と浴槽泉とが同一であることが容易に判断されることから、その旨を提示してもよい。
【0034】
本システムの第3ステップはホームページなどにより提示してもよい。図6のように、本システム(3)からネットワーク(10)を介して、例えば、温泉利用者、旅行センター、官公庁、温泉組合などの監視機関などの端末(12)に提示できるようにしてもよい。
また、得られたデータを適宜、選択して温泉法の定める分析書として出力するようにしてもよい。具体的には、本発明のシステムの入力部から温泉分析書の必須項目を入力したのちメモリに保存され、本システムに入力された分析項目の値もメモリに保存され、温泉法の定める分析書のフォーマットでメモリに保存された値を出力すればよい。
出力例を図7の1〜4に示す。
【0035】
また、本システムは、プログラムで表すことができる。図2は本発明のプログラムを実行するコンピュータシステムの一例であり、図4は本発明のプログラムをフローチャートとして表した例示である。以下、本発明のプログラムを説明する。
本システムが、第1ステップが前記されたステップ(1―1)及びステップ(1−2)を含む場合、S(1−1)及びS(1−2)が実行される。
続いて、本システムが(I)の場合、S(2―1)がまず入力され、続いて、S(2―2)の演算が実行される。S(1―1)、S(1−2)及びS(2−1)は順番を入れ替えてもよい。
次に、第2ステップであるS(2−3)にて、ある分析項目の値について、湧出泉と浴槽泉とが同一か否かの判断が実行される。
続いて、第3ステップが実施される。S(2−3)が許容範囲内であれば、S(3―1)にて「同一である」旨の提示がされ、S(2−3)が許容範囲外であればS(3−2)にて「同一ではない」旨の提示が実行される。
そして、複数の分析項目について、分析、提示されることが好ましいことから、S(4)にて、次の分析項目の値の入力があれば第1ステップを実行し、必要なければ終了する旨の判断を実行する。
【0036】
本システムの異なる実施態様として図5のフローシートが例示される。この例はすべての分析項目の値が同一と判断さればS(3―1)にて「同一である」旨の提示がされ、少なくとも1つの分析項目の値が同一でないと判断されればS(3−2)にて「同一ではない」旨の提示が実行され、終了するフローである。
図からも明らかなように、S(2−3)の判断までは同じフローであり、その判断が許容範囲内であれば次に分析項目の値の入力が実施され、その判断が許容範囲外であれば、ただちに第3ステップが実行されてS(3―1)にて「同一ではない」旨の提示がされる。これ以上の物質種の追加がなければ、湧出泉と浴槽泉とが同一であると判断され、S(4)が実行され、終了する。
【0037】
上記プログラムは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにコンピュータ上でソフトウェアによって実現してもよい。
すなわち、コンピュータは、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、図4又は図5に示される各処理を実現するソフトウェアである制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記コンピュータに供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0038】
また、図6に例示したように、上記コンピュータを通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された搬送波あるいはデータ信号列の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本システムは、浴槽又は飲用口に供給されている温泉に、水、入浴剤、殺菌剤等が投与されていないことを、迅速、簡便に温泉利用者に提示することができる。また、これら投与していないことを科学的、合理的に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】温泉源泉、浴槽及び本システムの関係を表した図面
【図2】本システムの例
【図3】第3ステップの提示例
【図4】本システムのフローシートの一例
【図5】図4とは異なる本システムのフローシートの一例
【図6】ネットワークを含む本システムの例
【図7】温泉分析書の出力例
【符号の説明】
【0041】
1 :温泉源泉
2 :浴槽
3 :本システム
4 :温泉源泉からの湧出泉を分析する電極
5 :浴槽における温泉(浴槽泉)を分析する電極
6 :電極から本システムに電気又は光信号等を伝達する有線
7 :源泉から浴槽に温泉を供給する管
10:ネットワーク
11:分析機関から分析値をネットワークを介して入力するためのコンピュータ
12:ネットワークを介して提示される本システムの第3ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温泉源泉における湧出泉の密度及び温泉成分の濃度からなる群から選ばれる少なくとも1種の分析項目の値(1−1)、及び、該源泉から供給される浴槽又は飲用口における温泉の該分析項目の値(1−2)を入力する第1ステップと、第1ステップで入力された値(1−1)及び(1−2)を比較して、浴槽又は飲用口における温泉と湧出泉との同一性を判断する第2ステップと、第2ステップの結果を提示する第3ステップとを具備することを特徴とする温泉管理システム。
【請求項2】
温泉成分が、水素イオン(pH)、カリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオン(II・III)、マンガンイオン、アルミニウムイオン、塩化物イオン、硫酸イオン、遊離二酸化炭素、炭酸水素イオン、炭酸イオン、ホウ酸、メタケイ酸、硫化水素、チオ硫酸イオン、イオウ、ヒ素、銅イオン、フッ化物イオン、鉛イオン、総水銀、カドミニウム、ヨウ化イオン、臭化物イオン、ラドン及びラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の温泉成分であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
分析項目の値の全部又は一部を電気又は光信号によって、入力するシステムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
第2ステップが、湧出泉と浴槽又は飲用口における温泉とが同一であると判断される、分析項目の値(1−1)と分析項目の値(1−2)との差の許容範囲を入力するステップ(2−1);分析項目の値(1−1)と分析項目の値(1−2)との差の絶対値を算出するステップ(2−2);及びステップ(2−2)で算出された絶対値とステップ(2−1)で入力された許容範囲に基づいて湧出泉と浴槽又は飲用口における温泉とが同一であると判断するステップ(2−3)を有するステップであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
第2ステップが、湧出泉と浴槽又は飲用口における温泉とが同一であると判断される、分析項目の値(1−1)と分析項目の値(1−2)との比の許容範囲を入力するステップ(2−1’);分析項目の値(1−1)と分析項目の値(1−2)との比を算出するステップ(2−2’);及びステップ(2−2’)で算出された比とステップ(2−1’)で入力された許容範囲に基づいて湧出泉と浴槽又は飲用口における温泉とが同一であると判断するステップ(2−3’)を有するステップであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
第3ステップが、さらに、浴槽又は飲用口における温泉に含まれる温泉成分の濃度、及び湧出泉に含まれる温泉成分の濃度を提示するシステムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
第1ステップが、さらに、試料の採取日時、及び/又は、分析項目の測定日時を入力するステップを有し、かつ、第3ステップが該日時を提示するシステムであることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
第1ステップで入力される分析項目が複数であり、第3ステップが、第2ステップにおいて全ての分析項目が同一であると判断された場合のみ同一である旨を提示することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
第3ステップが、ネットワークを介して提示するシステムであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
温泉源泉における湧出泉の密度及び温泉成分の濃度からなる群から選ばれる少なくとも1種の分析項目の値(1−1)、及び、該源泉から供給される浴槽又は飲用口における温泉の該分析項目の値(1−2)を入力する第1ステップと、第1ステップで入力された値(1−1)及び(1−2)を比較して、浴槽又は飲用口における温泉と湧出泉との同一性を判断する第2ステップと、第2ステップの結果を提示する第3ステップとを具備することを特徴とする温泉管理プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載の温泉管理プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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