説明

測定器

【課題】 外部入力に依存せずにあらかじめ設定した値でかつ時間によって変化する値を演算結果として格納する手段を追加した測定器を実現する。
【解決手段】 値が変化する折線パターン信号を生成する折線処理手段と、
外部信号を入力し、この外部信号を前記折線パターン信号を用いて演算処理する演算処理手段と、
を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部信号を入力して演算処理する機能を有する測定器に関する。この測定器は、フィールドで発生した事象等をデータとして取り込んで演算処理し、それをデータベースに保存してから外部メディアや記録紙などに出力する。ここで、演算処理とは四則演算,大小比較,データ積算,データ平均等の汎用的な演算を指す。
【背景技術】
【0002】
演算処理機能を有する測定器に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−245583号公報
【0004】
図10は、演算処理機能を有する従来の測定器の構成例を示す機能ブロック図である。ブロック1は演算処理機能を有する測定器である。2a…2nはフィールドのセンサであり、測定値PVa…PVnが外部信号として測定器1に入力される。3はネットワークであり、これに接続された外部PC4a…4nからの外部信号が通信回線を介して測定器1に入力される。
【0005】
5は、この測定器を操作するユーザである。6は、演算結果の外部出力手段である記録紙、7はFD等のメディア、8は表示器、9は警報器である。
【0006】
測定器1において、11はユーザ5の操作をインターフェースするパネルカードである。12は測定値PVa…PVnをインターフェースするA/Dカード、13はこのA/Dカードの出力を演算処理用データに変換するA/D処理部である。14はネットワーク3との通信をインターフェースする通信I/Fカード、15はこの通信I/Fカードの出力を演算処理用データに変換する通信処理部である。
【0007】
16は演算処理手段であり、パネルカード11からの操作信号、A/D処理部13及び通信処理部15からの外部信号を入力し、所定の演算(データの加算,減算,大小比較,積算等)を実行し、演算結果をデータベース17に格納する。18は演算処理の各種設定値やパラメータ等を保持する演算設定部である。
【0008】
19は出力部であり、データベース17に保存されたデータはこの出力部をインターフェースとして記録紙出力カード20、外部メディアカード21、表示カード22、警報カード23に出力され、これらを介して記録紙6、FD等のメディア7、表示器8、警報器9に外部出力される。更に、通信処理部15は、この出力部19をインターフェースとして演算結果をネットワーク3の外部PC4a…4nに配信する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の測定器における演算処理では、その入力値が外部信号(フィールド及びネットワーク入力)に依存する。よって、データベースに格納される演算結果についても外部信号に依存した結果となる。従来測定器では、外部信号に依存せずにあらかじめ設定した値でかつ時間によって変化する値を演算結果として格納する手段はなかった。
【0010】
従って本発明が解決しようとする課題は、外部入力に依存せずにあらかじめ設定した値でかつ時間によって変化する値を演算結果として格納する手段を追加した測定器を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を達成するために、本発明の構成は次の通りである。
(1)値が変化する折線パターン信号を生成する折線処理手段と、
外部信号を入力し、この外部信号を前記折線パターン信号を用いて演算処理する演算処理手段と、
を備えたことを特徴とする測定器。
【0012】
(2)前記折線処理手段は、折線タイマ処理手段からの折線時間と、折線設定手段からの折線値とを取得して前記折線パターン信号を生成することを特徴とする(1)に記載の測定器。
【0013】
(3)前記折線設定手段は、折線時間設定値と、この設定値に対応した折線値設置値を定義したテーブルで構成されることを特徴とする(2)に記載の測定器。
【0014】
(4)前記折線タイマ処理手段は、ユーザの指令でクリア、開始、停止の少なくともいずれかの操作が実行されることを特徴とする(3)に記載の測定器。
【0015】
(5)前記外部信号は、プロセスの測定値又はネットワークを介して取得する入力値であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の測定器。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果がある。
(1)設定値である折線ポイント(折線時間と折線値から構成)から作成される折線パターンと、折線タイマによるカウント値から、常に同一の折線値が作成される。 これを演算処理の入力とすることで、常に一定のパターンの演算結果を得ることができる。
(2)折線時間は、ユーザによってクリア,開始停止が出来るのでその常に一定のパターンの演算結果をユーザが制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明を適用した測定器の一実施形態を示す機能ブロック図である。図10で説明した従来測定器と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。以下、本発明の特徴部につき説明する。
【0018】
点線のブロック100が本発明で追加された折線処理手段である。この機能は、あらかじめ設定した時間によって変化する値を、他の外部信号に追加して演算処理手段16に入力して外部信号との演算処理も可能とし、測定器での演算処理について機能拡張するものである。
【0019】
折線処理手段100において、101は折線生成手段であり、あらかじめ設定された折線設定値(時間と折線値の設定を一組とする折線ポイント情報)を折線設定手段102より取得して折線パターンを作成し、折線タイマ処理手段103からのカウントアップする折線時間により折線値を演算処理手段16の入力値として出力する。ここで使われる折線タイマ手段は、ユーザ5の操作によって、パネルカード11を介してクリア,開始,停止が可能とされている。
【0020】
図2は、折線生成手段101にて作成される折線パターンの例を示す特性図である。この特性図において横軸は折線タイマ処理手段103から与えられる折線時間、縦軸は折線設定手段102の設定で与えられる折線値である。
【0021】
図3は、折線設定手段102の設定内容の例を示すテーブルであり、折点P0,P1,P2,P3に対応した、折線時間設定値t0,t1,t2,t3及び折線値設定値v0,v1,v2,v3が定義されている。
【0022】
図4は、折線タイマ処理手段103から折線生成手段101に送られる折線時間tの例を示す特性図であり、ユーザ5の操作により時刻δ1で動作停止を行い、時刻δ2で動作開始を行った場合を示し、時刻δ1から時刻δ2の期間に折線時間tの増加が停止される。
【0023】
図5は、図4の折線時間を入力する折線生成手段101の折線値の変化を示す特性図である。時刻δ1からδ2の期間、折線値vは、時刻δ1の値を保持し、時刻δ2以降は折線設定手段102の設定値に従い変化する。
【0024】
図6は、折線信号を入力する本発明測定器の信号処理手順を説明するフローチャートである。ステップS1乃至ステップS8が折線タイマ処理手段の信号処理、ステップS9,S10が折線生成手段の信号処理、ステップS11,S12が演算処理手段の信号処理である。
【0025】
処理が開始されると、ステップS1では、ユーザからのタイマクリア要求がチェックされる。クリア要求がある場合には、ステップS2で折線時間をゼロにしてステップS9にジャンプし、クリア要求がない場合にはステップS3に進む。
【0026】
ステップS3では、ユーザの折線開始要求がチェックされる。折線開始要求がある場合には、ステップS4で折線タイマ状態は実行中であり、ステップS9にジャンプし、開始要求がない場合にはステップS5に進む。
【0027】
ステップS5では、ユーザの折線停止要求がチェックされる。折線停止要求がある場合には、ステップS6で折線タイマ状態は停止中であり、ステップS7に進み、停止要求がない場合にはそのままステップS7に進む。
【0028】
ステップS7では、折線タイマ状態がチェックされる。実行中であればステップS8で折線時間を更新してステップS9に進み、折線タイマ状態が停止中であればステップS9にジャンプする。
【0029】
折線生成手段は、ステップS1乃至S8の情報を保存し、ステップS9で折線ポイントの設定値と折線時間からパターンを作成し、ステップS10で図5に例示した折線値を作成し、これを演算処理手段に渡す。
【0030】
演算処理手段では、ステップS11で渡された折線入力値を使い演算処理を実施し、ステップS12で演算結果をデータベースに保存して処理を終了する。
【0031】
図6のフローチャートでは、演算処理手段16に対する入力が、折線処理手段からの入力値のみの場合について説明しているが、演算処理手段16は折線入力値と外部信号を入力した混合演算を実施することができる。
【0032】
混合演算の実用例としては、いままでの測定器では、ある基準値に対してA/D入力値が越えているかどうかの警報機能について、その基準値は時刻に対して一定値(ただし途中での警報基準値の設定変更時は除く)であったが、今回の折線値を基準値としてA/D入力値との比較を行い、それを警報機能とするならば、基準値を時刻に対して変化させる警報処理が実現可能となる。
【0033】
図7は、本発明の他の実施形態を示すイメージ図である。この実施形態では、AD入力又は通信入力(in1)と折線入力(in2)とを乗算演算した演算出力out(out=in1xin2)をデータベースに保存する。
【0034】
図8は、図7における演算入力値(in1,in2)及び演算出力値の波形図である。特徴としては、折線入力がオンオフの2値信号で与えられ、折線入力が実質的にタイマースイッチの役目をしており、AD入力又は通信入力(in1)を強制的にゼロとする演算を実現している。
【0035】
図9は、図7の構成による演算を実行する場合の信号処理手順を説明するフローチャートである。図6で説明したフローチャートと基本的には同一であるが、ステップS11´の処理が折線入力値,A/D入力値又は通信入力値を入力値として演算処理を実行する点が図6のステップS11(折線入力のみの演算処理)と異なる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を適用した測定器の一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】折線生成手段にて作成される折線パターンの例を示す特性図である。
【図3】折線設定手段の設定内容の例を示すテーブルである。
【図4】折線タイマ処理手段から折線生成手段に送られる折線時間の例を示す特性図である。
【図5】図4の折線時間を入力する折線生成手段の折線値の変化を示す特性図である。
【図6】折線信号を入力する本発明測定器の信号処理手順を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の他の実施形態を示すイメージ図である。
【図8】図7における演算入力値(in1,in2)及び演算出力値の波形図である。
【図9】図7の構成による演算を実行する場合の信号処理手順を説明するフローチャートである。
【図10】演算処理機能を有する従来の測定器の構成例を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0037】
1 測定器
2a…2n センサ
3 ネットワーク
4a…4n 外部PC
5 ユーザ
6 記録紙
7 メディア
8 表示器
9 警報器
11 パネルカード
12 A/Dカード
13 A/D処理部
14 通信I/Fカード
15 通信処理部
16 演算処理手段
17 データベース
18 演算設定部
19 出力部
20 記録紙出力カード
21 外部メディアカード
22 表示カード
23 警報カード
100 折線処理手段
101 折線生成手段
102 折線設定手段
103 折線タイマ処理手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
値が変化する折線パターン信号を生成する折線処理手段と、
外部信号を入力し、この外部信号を前記折線パターン信号を用いて演算処理する演算処理手段と、
を備えたことを特徴とする測定器。
【請求項2】
前記折線処理手段は、折線タイマ処理手段からの折線時間と、折線設定手段からの折線値とを取得して前記折線パターン信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の測定器。
【請求項3】
前記折線設定手段は、折線時間設定値と、この設定値に対応した折線値設置値を定義したテーブルで構成されることを特徴とする請求項2に記載の測定器。
【請求項4】
前記折線タイマ処理手段は、ユーザの指令でクリア、開始、停止の少なくともいずれかの操作が実行されることを特徴とする請求項3に記載の測定器。
【請求項5】
前記外部信号は、プロセスの測定値又はネットワークを介して取得する入力値であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の測定器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−162542(P2006−162542A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358160(P2004−358160)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)