説明

測定器

【課題】予圧力を従来よりも簡単に調整でき予圧力の誤調整を防止して正しい測定力で測定できる測定器を提供すること。
【解決手段】本体1に軸方向へ移動可能に設けられたスピンドル3と、この移動方向へ所定ストロークで相対移動可能に接続され、かつ、任意の位置で本体1に固定可能に設けられたスリーブ6と、この内部に収納されスピンドル3を被測定物に当接する方向へ付勢する加圧ばね7と、スリーブ6に螺合して設けられ付勢力を可変する調整ねじ8とを備え、調整ねじ8の外周に軸方向に沿って設けられ付勢力を表示する目盛と、スリーブ6に固定され基準マークを有する基点部材32と、本体1に固定され調整ねじ8および基点部材32を覆うカバー34とを設け、カバー34には、スリーブ6が所定位置より被測定物側にある時、基準マークがカバー34から露出しない開孔部39を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルを被測定物に当接させ、その時のスピンドルの移動位置から被測定物の寸法や形状を測定する測定器に関する。詳しくは、本体と、この本体に軸方向へ移動可能に設けられたスピンドルとを有し、スピンドルを軸方向へ移動させながら被測定物に当接させ、その時のスピンドルの移動位置から被測定物の寸法や形状を測定する測定器において、測定力が可変の測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
本体に移動可能に設けられたスピンドルを被測定物に当接させ、その時のスピンドルの移動位置を検出して、被測定物の寸法や形状を測定する測定器、例えば、マイクロメータでは、本体の一端側に設けられたアンビルとスピンドルとの間に被測定物を挟持する際、被測定物の材質や形状に応じた最適な測定力でスピンドルを被測定物に当接させるための測定力可変機構を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
測定力可変機構は、略円筒状のスリーブと、シンブルと、略円柱状の調整ねじと、コイル形状の加圧ばねと、予圧力表示手段とを備えている。
【0003】
スリーブは、本体に軸方向へ移動可能に、かつ、回転不能に設けられている。また、スリーブは、スピンドルの移動方向と同方向へスピンドルと相対移動が所定ストロークだけ可能に接続されている。
シンブルは、本体の定位置に回転可能に設けられ、スリーブを軸方向へ進退させるようにスリーブと螺合されている。
調整ねじは、基端部外周がスリーブの内周に螺合されており、他端部が本体より露出して設けられている。
【0004】
加圧ばねは、スリーブ内部に収納され、スピンドルの他端部と調整ねじの基端部との間に加圧されて設けられており、スピンドルを被測定物の方向へ付勢している。
予圧力表示手段は、調整ねじの他端部外周軸方向に沿って設けられた目盛と、本体に設けられ調整ねじを覆うカバーとを備えている。目盛はカバーから露出され目視可能に設けられ、カバーには基準マークが設けられている。
【0005】
予圧力の調整にあたっては、スリーブに螺合した調整ねじの螺合位置を変えて、調整ねじからスピンドルまでの距離を変化させ、その間に収納された加圧ばねの圧縮量、つまり加圧ばねの予圧力を変化させる。この時、調整ねじの他端部外周軸方向に沿って設けられた目盛とスリーブとの相対距離が変わり、カバーに固定された基準マークが指し示す目盛の位置から加圧ばねの予圧力を読み取る。この目盛を確認しながら、調整ねじの螺合位置を調整できるので、加圧ばねの予圧力を所定の大きさに調整することができる。
【0006】
測定にあたっては、被測定物をアンビルとスピンドルとの間に位置させた後、シンブルを回すと、それに螺合されたスリーブは、本体に対してスピンドルの軸方向へ移動可能かつ回転不能に設けられているから、スリーブ、調整ねじ、加圧ばねおよびスピンドルが一体となって同方向へ移動される。スピンドルの先端が被測定物に当接したのち、さらに、シンブルを回してスリーブを同方向へ移動させると、スピンドルはこれ以上移動することができないので、加圧ばねが圧縮されていく。この際、加圧ばねの圧縮量に比例した力がスピンドルを介して被測定物に付勢されていく。
【0007】
加圧ばねが圧縮され、スピンドルとスリーブの相対距離が一定量に達する、つまり、測定力が所定の大きさに達すると、スピンドルに設けられた検知スイッチが作動され、そのことが表示部に表示される。このように表示部の表示によって測定力が所定の大きさに達したことを読み取ることができるので、この時のスピンドルの移動位置を検出すれば、所定の測定力で被測定物の寸法や形状を測定することができる。
【0008】
【特許文献1】特開2002−107101号公報(第8頁〜第9頁、図11、図12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の特許文献1に記載された、測定力可変機構を有する測定器では、本体に対してスリーブを移動させた場合、スリーブと一体となって調整ねじに設けられた目盛も、本体に対して移動される。一方、基準マークは、カバーを介して本体に固定されたままである。つまり、スリーブを本体に対して移動させた場合、目盛と基準マークとの相対位置が変化してしまう。このため、加圧ばねの予圧力を正しく調整するには、必ずスリーブを所定位置、例えば、スリーブの移動範囲内でスピンドルが被測定物から最大に離れる位置に移動させてから予圧力を調整する必要があり、調整が煩雑となっていた。
また、前記測定力可変機構では、スリーブの位置には無関係に調整ねじの螺合位置を変えることができるため、スリーブを前記所定位置以外の位置に移動させたまま、予圧力を調整してしまうことがあり、正確に測定力を調整することができないことがあった。
【0010】
本発明の目的は、予圧力を従来よりも簡単に調整できるとともに、予圧力の誤調整を防止でき、正しい測定力で測定できる測定器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の測定器は、本体と、この本体に軸方向へ移動可能に設けられたスピンドルと、このスピンドルの移動方向と同方向へ所定ストロークでそのスピンドルと相対移動可能に接続され、かつ、任意の位置で前記本体に固定可能に設けられたスリーブと、このスリーブ内に収納され前記スピンドルを被測定物に当接する方向へ付勢する付勢手段と、前記スリーブに螺合して設けられ前記付勢手段の付勢力を可変する付勢力可変部材とを備え、前記スピンドルを軸方向へ移動させながら被測定物に当接させ、その時のスピンドルの移動位置から被測定物の寸法や形状を測定する測定器において、前記付勢力可変部材の外周に軸方向に沿って設けられ前記付勢手段の付勢力を表示する目盛と、前記スリーブに固定され前記目盛の基準マークを有する基点部材と、前記本体に固定され前記付勢力可変部材および前記基点部材を覆うカバーとを備え、前記カバーには、前記スリーブが所定位置より被測定物側にある時は、前記基準マークが覆われ、前記スリーブが所定位置より被測定物の反対側にある時は、前記目盛および前記基準マークを露出させる開孔部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、スリーブが所定位置より被測定物の反対側にある時は、どの位置にスリーブがあっても目盛と基準マークがカバーから露出されるので、目盛と基準マークを確認しながら、予圧力を調整することができる。よって、従来のように予圧力を調整する度にスリーブを所定位置、例えば、スリーブの移動範囲内でスピンドルが被測定物から最大に離れる位置に移動させる必要がなく、従来よりも簡単に予圧力を調整することができる。
【0013】
一方、スリーブを所定位置より被測定物側へ移動させると、目盛と基準マークはスリーブと一体となって同方向へ移動され、少なくとも基準マークがカバーで隠れて見えなくなるので、スリーブが所定位置より被測定物側にある時は、予圧力の調整を規制できる。つまり、スリーブが所定位置より被測定物側にある時は、予圧力の調整ができないという注意を測定者に喚起させることができる。よって、予圧力の誤調整を防止する効果がある。
また、付勢力可変部材と基点部材がカバーで覆われているから、測定中に付勢力可変部材に接触して付勢力可変部材の螺合位置が変動するのを防止できる。よって、測定力のばらつきも未然に防止できる。
【0014】
本発明の測定器では、前記スリーブに、前記付勢力可変部材がそのスリーブから外れることを規制するストッパ部材が設けられていることが好ましい。
従来、付勢力可変部材を加圧ばねが緩む方向へ誤って調整範囲以上に移動させた場合に、付勢力可変部材がスリーブから外れてしまうことがあった。
この発明によれば、スリーブに付勢力可変部材を螺合した後、ストッパ部材を設置するので、スプリングが緩む方向へ付勢力可変部材を調整範囲以上に移動させたとしても、付勢力可変部材がストッパ部材と当接して脱落を防止することができる。よって、予圧力の調整時に誤って付勢力可変部材が脱落しないようにできる。
【0015】
本発明の測定器では、前記ストッパ部材は、前記付勢力可変部材と螺合する前記スリーブのねじを使用して、そのスリーブに螺合されていることが好ましい。
この発明によれば、付勢力可変部材と螺合されたスリーブのねじを使用してストッパ部材をスリーブに螺合させる。同じねじを使うことで、スリーブおよびストッパ部材は、部品の複雑さが緩和され、容易に製造できる。
【0016】
本発明の測定器では、前記カバーは、筒状で基端部が本体に接続され、他端部には前記付勢力可変部材の螺合位置を移動させるための第1の開孔部が形成され、筒部外周には前記目盛および前記基準マークを露出させるための第2の開孔部が形成されていることが好ましい。
この発明によれば、第2の開孔部から目盛と基準マークを目視しながら、第1の開孔部から付勢力可変部材の螺合位置を移動させることができるので、予圧力を容易に調整することができるとともに、カバーを簡便な形状とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態のデジタル式マイクロメータの正面図である。図2は、本実施形態のデジタル式マイクロメータの本体他端部の断面図である。図3は、本実施形態のデジタル式マイクロメータの予圧力表示手段の平面図である。図4は、本実施形態のデジタル式マイクロメータのスリーブを移動させた場合の本体他端部の断面図である。図5は、本実施形態のデジタル式マイクロメータのスリーブを移動させた場合の予圧力表示手段の平面図である。
【0018】
図1において、本実施形態のデジタル式マイクロメータには、U字形状に形成された本体1と、この本体1の一端側内端面に設けられたアンビル2と、本体1の他端に軸方向に移動可能に設けられアンビル2との間に被測定物を挟持するスピンドル3と、本体1の内部に設けられスピンドル3の移動位置を電気的信号として検出する図示しない位置検出手段と、本体1の中央部に設けられ検出されたスピンドル3の移動位置をデジタル表示するデジタル表示部4とを備えている。
【0019】
本体1の内部には、図2に示すように、前記スピンドル3と、このスピンドル3の他端部に螺合された連結部材5と、この連結部材5によりスピンドル3と連結されたスリーブ6と、このスリーブ6の内部に収納された付勢手段としての加圧ばね7と、スリーブ6に螺合された付勢力可変部材としての調整ねじ8と、この調整ねじ8がスリーブ6から外れることを規制するストッパ部材としてのストップねじ9と、本体1の他端部外周に設けられスリーブ6を軸方向へ移動させるシンブル10と、本体1の他端部に設けられ予圧力を表示する予圧力表示手段11とが設けられている。
【0020】
スピンドル3の他端部には、キーピン支持部材12が嵌合されており、このキーピン支持部材12の外周面にはキーピン13が突設されている。このキーピン13が摺動自在に嵌合するキー溝14が、本体1の他端部に軸方向に沿って形成されている。これにより、スピンドル3は軸方向へは移動可能であるが、回転が規制された状態で本体1に保持されている。
【0021】
連結部材5は、略円柱状であり、スピンドル3の他端面に螺合されるねじ部15と、スリーブ6の基端部開孔部の鍔部内面に当接するフランジ部16と、これらを連結する中間部17とを備えている。つまり、スピンドル3とスリーブ6とが両者の移動方向に所定ストロークで相対移動できるように構成されている。
【0022】
スリーブ6は、略円筒状で、本体1の内部に軸方向移動可能に収納され、外周面には本体1の他端部のキー溝14に摺動するキーピン18が突設されている。これにより、スリーブ6は軸方向へは移動可能であるが、回転が規制された状態で本体1に保持されている。
加圧ばね7は、コイル形状で、連結部材5のフランジ部16と調整ねじ8の基端部の間に加圧されて設けられており、連結部材5を介してスピンドル3を被測定物に当接する方向へ付勢している。
【0023】
調整ねじ8は、略円柱状で、基端部外周には雄ねじ52が形成され、スリーブ6の内周面に形成された雌ねじ53に螺合されている。調整ねじ8の基端内部には、加圧ばね7の他端部を受けるばね受け部材19が設けられている。このばね受け部材19は、加圧ばね7を受ける鍔部と、調整ねじ8の内底面に球面で接する球面部とを有する。
ストップねじ9は、円筒状で基端部の外周に雄ねじ54が形成されスリーブ6の他端部内周の雌ねじ53に螺合されている。調整ねじ8をスリーブ6から外れる方向に調整範囲以上に移動させた時に、ストップねじ9の基端部の調整ねじ8に対向する面に調整ねじ8が当接されるので、調整ねじ8がスリーブ6から外れるのを防止している。
【0024】
シンブル10は、略円筒状で、本体1の外周に回転可能に設けられた内筒21と、この内筒21の外周にコイルばね22を介して回転可能に設けられた外筒23とから構成されている。内筒21の内周面には、螺旋溝24が形成され、この螺旋溝24にキーピン18が摺動可能に係合されている。これにより、外筒23を回転させると、その回転がコイルばね22を介して内筒21に伝達される結果、キーピン18およびキー溝14の作用によって、スリーブ6が軸方向へ移動されるようになっている。
【0025】
本体1の内部には、スピンドル3とスリーブ6とが所定距離だけ接近したことを検知する検知スイッチ25が設けられており、図1に示すように、デジタル表示部4の一部には、検知スイッチ25が作動したことを表示する表示部26が設けられている。
検知スイッチ25は、図2に示すように、キーピン支持部材12にねじ止めされている電極板ばね27と、スリーブ6に嵌合されている絶縁駒28とから構成されている。
【0026】
電極板ばね27は、絶縁駒28に接しているが、測定力が所定値に達した時、つまり、加圧ばね7が所定量圧縮された時に絶縁駒28から外れ、導電性部材からなるスリーブ6に接して、ホールド指令が出力されるように構成されている。ホールド指令の信号は、電線29を介して図示しない位置検出手段に送られ、表示部26に測定力が所定値に達したことが表示されるとともに、デジタル表示部4の表示値がホールドされるように構成されている。
【0027】
予圧力表示手段11は、図2および図3に示すように、調整ねじ8の外周に回転調整可能かつ軸方向へ位置調整可能に設けられた表示筒31と、円筒状でストップねじ9を介してスリーブ6に設けられた基点部材32と、本体1に固定され調整ねじ8、表示筒31および基点部材32を覆うカバー34とを備えている。
表示筒31には止めねじ35が螺合され、その止めねじ35が調整ねじ8の途中に形成された環状溝36内に突出、当接されている。これにより、止めねじ35の位置を変えることにより、表示筒31が調整ねじ8の外周に回転調整可能かつ軸方向へ位置調整可能になっている。
基点部材32の基端側は、ストップねじ9の外周に嵌合されている。他端部は、表示筒31の基端部の一部を覆っている。
【0028】
カバー34は、本体1の後端部に螺合されたシンブル固定部材43と、このシンブル固定部材43に回動可能かつ止めねじ45によって固定可能に設けられた筒状のカバー部材44とから構成されている。
カバー部材44の他端部には調整ねじ8の螺合位置を変えるための第1の開孔部38が設けられ、外周には第2の開孔部39が設けられ、さらに、外周には表示筒31に螺合された止めねじ35を調整するための孔40が設けられている。
表示筒31の外周には、図3に示すように、その軸方向に沿って目盛41および数値42が設けられている。目盛41および数値42とともに、基点部材32の他端部およびその他端部に設けられた基準マーク33が第2の開孔部39から露出されており、基準マーク33が指し示す目盛41の数値を読み取ることができる。
【0029】
予圧力の調整にあたっては、第1の開孔部38よりドライバー等を挿入し、調整ねじ8の他端部に形成された溝51にドライバー等の先端部を係合し、調整ねじ8を回転させる。すると、スリーブ6に螺合した調整ねじ8の螺合位置が変わり、調整ねじ8からスピンドル3までの距離が変わるので、その間に収納された加圧ばね7の圧縮量、つまり加圧ばね7の予圧力を変化させることができる。この時、表示筒31の外周軸方向に沿って設けられた目盛41と基点部材32に設けられた基準マーク33との相対距離が変わり、基準マーク33が指し示す目盛41から加圧ばね7の予圧力を読み取る。このように、目盛41を確認しながら、調整ねじ8の螺合位置を調整して、加圧ばね7の予圧力を所定の大きさに調整する。
【0030】
測定にあたって、シンブル10を回転させてスリーブ6を被測定物の方向へ移動させると、スリーブ6、連結部材5およびスピンドル3が一体となって同じ方向へ移動される。スピンドル3の先端が被測定物に当接したのち、さらに、シンブル10を同方向へ回転させると、スピンドル3はこれ以上移動することができないので、スリーブ6がスピンドル3に対し相対移動し加圧ばね7が圧縮されていく。この時、スピンドル3とスリーブ6とが所定距離だけ接近すると、検知スイッチ25が作動され、そのことが表示部26に表示される。
【0031】
従って、加圧ばね7の圧縮量が一定値に達したこと、つまり、所定の測定力に達したことを表示部26の表示によって読み取ることができるから、所定の測定力で測定を行うことができる。しかも、加圧ばね7の圧縮量が所定量に達した時、デジタル表示部4の表示値が自動的にホールドされるから、スリーブ6の送り過ぎに注意を払わなくてもよく、使い勝手に優れている。
【0032】
また、測定にあたってスリーブ6を被測定物の方向へ移動させると、図4に示すように、表示筒31と基点部材32が一体となってスリーブ6と同じ方向へ移動される。すると、スリーブ6が所定位置より被測定物側に移動された時は、図5に示すように、基点部材32に設けられた基準マーク33は開孔部から露出されなくなり、表示筒31に設けられた目盛41を読み取れなくなる。つまり、スリーブ6が所定位置より被測定物の反対側にある時だけ、図3に示すように、基準マーク33が第2の開孔部39にて露出され、目盛41を読み取ることができる。
【0033】
従って、本実施形態によれば、次の効果を奏することができる。
(1)スリーブ6が所定位置より被測定物の反対側にある時は、どの位置にスリーブ6があっても目盛41と基準マーク33がカバー34から露出されるので、目盛41と基準マーク33を確認しながら、予圧力を調整することができる。よって、従来のように予圧力を調整する度にスリーブ6を所定位置、例えば、スリーブ6の移動範囲内でスピンドル3が被測定物から最大に離れる位置に移動させる必要がなく、従来よりも簡単に予圧力を調整することができる。
【0034】
(2)スリーブ6を所定位置より被測定物側へ移動させると、目盛41と基準マーク33はスリーブ6と一体となって同方向へ移動され、少なくとも基準マーク33がカバー34で隠れて見えなくなるので、スリーブ6が所定位置より被測定物側にある時は、予圧力の調整を規制できる。つまり、スリーブ6が所定位置より被測定物側にある時は、予圧力の調整ができないという注意を測定者に喚起させることができる。よって、予圧力の誤調整を防止する効果がある。
【0035】
(3)調整ねじ8がカバー34で覆われているから、測定中に調整ねじ8に接触して調整ねじ8の螺合位置が変動するのを防止できる。よって、測定力のばらつきも未然に防止できる。
【0036】
(4)カバー34には、調整ねじ8の螺合位置を移動させるための第1の開孔部38と、目盛41と基準マーク33を露出させるための第2の開孔部39とが形成されている簡便な形状なので、カバー34の製造が容易にできる。
【0037】
(5)第2の開孔部39から目盛41と基準マーク33を目視しながら、第1の開孔部38から調整ねじ8の螺合位置を移動させることができるので、予圧力を容易に調整することができる。
【0038】
(6)スリーブ6に調整ねじ8を螺合した後、ストップねじ9を設置するので、加圧ばね7が緩む方向へ調整ねじ8を調整範囲以上に移動させたとしても、調整ねじ8がストップねじ9と当接して脱落を防止することができる。よって、予圧力の調整時に誤って調整ねじ8が脱落しないようにできる。
【0039】
(7)調整ねじ8の外周に形成された雄ねじ52に螺合され、スリーブの内周に形成された雌ねじ53を使用して、ストップねじ9をスリーブ6に螺合させている。同じ雌ねじ53を使うことで、スリーブ6およびストップねじ9は、部品の複雑さが緩和され、容易に製造される。
【0040】
(8)表示筒31を、調整ねじ8の外周に対して回転調整、あるいは、軸方向へ位置調整することにより、基準となる位置に表示筒31の目盛41の基準を一致させることができる。従って、加圧ばね7の製作上のばらつき等があっても、特別な加工や新たな部材を追加することなく、基準となる位置に表示筒31の目盛41の基準を一致させることができる。
【0041】
(9)基点部材32や表示筒31が簡単な形状で個別の部品であるので、加圧ばね7の長さや弾性特性等の仕様を変更する場合に生じる目盛41や基準マーク33の変更が、容易にできる。
【0042】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態で予圧力表示手段11の構成にあたっては、目盛41等を有する表示筒31は、調整ねじ8の外周に回転調整可能かつ軸方向へ位置調整可能に設けられていると説明を行ったが、予圧力表示手段11は、調整ねじ8の外周に目盛41等を設けることで表示筒31を省略する構成としてもよい。
また、基準マーク33を有する基点部材32は、ストップねじ9を介してスリーブ6に設けられていると説明を行ったが、基点部材32は、ストップねじ9を介さないで直接スリーブ6に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、マイクロメータに利用できる他、ばねの調整機構を備えた測定器に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態にかかるデジタル式マイクロメータを示す正面図。
【図2】同上実施形態の本体他端部の断面図。
【図3】同上実施形態の予圧力表示手段の平面図。
【図4】同上実施形態のスリーブを移動させた時の本体他端部の断面図。
【図5】同上実施形態のスリーブを移動させた時の予圧力表示手段の平面図。
【符号の説明】
【0045】
1…本体
3…スピンドル
6…スリーブ
7…加圧ばね(付勢手段)
8…調整ねじ(付勢力可変部材)
9…ストップねじ(ストッパ部材)
32…基点部材
33…基準マーク
34…カバー
38…第1の開孔部
39…第2の開孔部
41…目盛
53…雌ねじ(ねじ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、この本体に軸方向へ移動可能に設けられたスピンドルと、このスピンドルの移動方向と同方向へ所定ストロークでそのスピンドルと相対移動可能に接続され、かつ、任意の位置で前記本体に固定可能に設けられたスリーブと、このスリーブ内に収納され前記スピンドルを被測定物に当接する方向へ付勢する付勢手段と、前記スリーブに螺合して設けられ前記付勢手段の付勢力を可変する付勢力可変部材とを備え、前記スピンドルを軸方向へ移動させながら被測定物に当接させ、その時のスピンドルの移動位置から被測定物の寸法や形状を測定する測定器において、
前記付勢力可変部材の外周に軸方向に沿って設けられ前記付勢手段の付勢力を表示する目盛と、
前記スリーブに固定され前記目盛の基準マークを有する基点部材と、
前記本体に固定され前記付勢力可変部材および前記基点部材を覆うカバーとを備え、
前記カバーには、前記スリーブが所定位置より被測定物側にある時は、前記基準マークが覆われ、前記スリーブが所定位置より被測定物の反対側にある時は、前記目盛および前記基準マークを露出させる開孔部が形成されていることを特徴とする測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の測定器において、
前記スリーブには、前記付勢力可変部材がそのスリーブから外れることを規制するストッパ部材が設けられていることを特徴とする測定器。
【請求項3】
請求項2に記載の測定器において、
前記ストッパ部材は、前記付勢力可変部材と螺合する前記スリーブのねじを使用して、そのスリーブに螺合されていることを特徴とする測定器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の測定器において、
前記カバーは、筒状で基端部が本体に接続され、他端部には前記付勢力可変部材の螺合位置を移動させるための第1の開孔部が形成され、筒部外周には前記目盛および前記基準マークを露出させるための第2の開孔部が形成されていることを特徴とする測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−47016(P2007−47016A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231615(P2005−231615)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】