説明

測定対象の検査方法、及び装置

本発明は測定対象を検査するための方法に関するものであって、測定対象(2,12)は、走査プローブ型測定デバイスの測定プローブ(10)を使用する走査型プローブ顕微鏡法によって検査され、かつ上記測定対象(2,12)における少なくとも1つの小区分(1)は、光学的測定系に関連する観察領域において当該光学的測定系によって光学的に検査され、走査型プローブ顕微鏡法による上記検査によってもたらされる、上記測定対象(2,12)における少なくとも1つの上記小区分(1)による上記観察領域の範囲外への変位は、上記測定対象(2,12)における少なくとも1つの上記変位した小区分(1)が、上記変位を特徴付けるデータ信号を処理する再調整デバイスによって上記観察領域内に再配置されるといった手法によって補正される方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、走査プローブ測定装置の測定プローブを用いた走査型プローブ顕微鏡検査法によって測定対象が検査され、かつ当該測定対象における少なくとも1つの小区分が、光学的測定系に関連する観察領域において当該光学的測定系によって光学的に検査される、測定対象の検査方法に関する。さらに、本発明は、上記方法を実施することが出来る装置に関連する。
【0002】
〔背景技術〕
走査型プローブ顕微鏡(SPM)は、測定対象又は披検査試料と呼ばれる試料の上を測定プローブが走査する技術であり、測定プローブと試料との間の距離に依存する相互作用を介して、形が測定される。また物質のコントラストや他の試料情報を得ることもできる。この測定技術の最も有名な例は、原子間力顕微鏡(AFM)及び走査トンネル顕微鏡(STM)である。さらなる例としては、走査型近接場光顕微鏡(SNOM)及び走査型光子間力顕微鏡(SPhM)がある。
【0003】
測定対象の画像化に加えて、距離分光学は、あらゆる技術においてもう一つの重要な測定方法である。ここで測定プローブが試料に対して配置される。具体的には、垂直な距離、または空間における任意の方向、または平面的に配置され、相互作用が測定される。原子間力顕微鏡の場合、この方法は、例えば、分子間力、すなわち、測定プローブに結合する1つ分子と、試料に結合する他の分子との分子間力を測定するために用いられる。例えば、試料上に測定プローブを引き下げて、結合に待機させることによって、分子内力を測定することも可能である。その後、試料が配置される土台から測定プローブを取り外し、上記力を記録することができる。さらなる測定が行われてもよく、当該測定は、2点間又は数点間の距離に関する相互作用を測定することによって、一部実施される。
【0004】
蛍光顕微鏡などの光学的方法は、例えば特定の蛍光マーカーによる標識粒子によって、例えば被検査試料の組成についての情報を提供することができる。その上、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)は、例えば、お互いに関係する2つの標識分子の局在性を可能にする。
【0005】
仮にSPMが測定方法として用いられる場合、例えば上述の距離分光モードにおいて、測定対象の移動が頻繁に実施されると、試料における蛍光又は他の光学的特性に対して影響がある。これらの特性を光学的に観察できるように、試料の光学的測定のために用いられる光学的測定系の観察領域、好ましくはその焦点は、測定対象の光学的検査区域と重なり合わなくてはならない。測定対象はまた、例えば測定目標を用いて、光学的測定系によって検出され得るように、光軸の十分な近傍になくてはならない。走査型プローブ顕微鏡を用いた検査では、測定対象の移動のための様々なシナリオが考えられる。当該シナリオでは、測定対象と測定目標との間の距離が変更され、その結果、測定対象が、例えば測定目標の集束面など、光学的測定系の観察領域から外へ移動されることがあり得る:
−試料と測定プローブとの間の距離を変更するために、試料のための支持は、例えば圧電手段によって移動される。光学的に測定される対象、特に試料の小区分が試料にしっかりと繋がっている場合、ピンボケの原因となる。
【0006】
−試料と測定プローブとの間の距離を変更するための圧電手段によって、測定プローブが移動される。光学的に測定される対象がしっかりと測定プローブと繋がっている場合、ピンボケの原因となる。
【0007】
−測定対象が作用力によって変更又は移動された試料の一部である場合、可動部に関わらずピンボケが起こる。
【0008】
距離分光法において伸張幅は、大抵100μmまたはそれ以上であり、ピンボケはさらなる光学的検査のために受け入れられない。
【0009】
〔本発明の要約〕
本発明は、走査型プローブ測定デバイスと、光学的測定系との組み合わせによる測定対象の検査を容易にする、改良された方法および改良された装置を提供するものである。
【0010】
本発明に係る測定対象は、独立請求項1に係る方法および独立請求項17に係る装置によって達成される。本発明の有利な改良点は、従属請求項の主要素を形成する。
【0011】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡によって、かつ、走査型プローブ顕微鏡法による検査によってもたらされる、光学的測定系の観察領域に関連する測定対象の変位を、光学的に補正することによって、測定対象を検査するための可能性を提供する。その結果、同時にまたは一時的に共同して行われる走査型プローブ顕微鏡法による検査であっても、光学的測定が可能となる。このようにして、使用者は、同一の測定対象のために、組み合わせられた測定方法を利用することが容易となる。
【0012】
本発明に係るさらなる好ましい実施形態は、測定対象における少なくとも1つの小区分が光学的測定系の観察領域に再配置されるとき、観察領域が変化するように設定されることにある。
【0013】
本発明に係る適切な改良点は、観察領域が変化するように設定された場合、光学的測定系が変位することにある。
【0014】
本発明に係る有利な実施形態は、測定対象における少なくとも1つの変位した小区分が光学的測定系の観察領域に再配置されるとき、測定対象の位置決めは変化するように設定されることにある。
【0015】
本発明に係るさらなる好ましい特徴は、走査型プローブ顕微鏡法による検査からもたらされる変位の間に、測定対象の少なくとも1つの小区分が、3次元変位及び2次元平面における変位のうち少なくともいずれかの方法で観察領域から外へ変位することにある。
【0016】
本発明に係るさらなる好ましい実施形態は、変位を特徴付けるデータ信号が、走査型プローブ顕微鏡法による検査からのデータ信号によって得られることにある。
【0017】
本発明の適切な改良点は、走査型プローブ顕微鏡法による検査の間に、走査型プローブ顕微鏡法による検査からのデータ信号が、測定プローブのたわみに対するデータ信号を含むように形成されることにある。
【0018】
本発明に係る有利な実施形態は、走査型プローブ顕微鏡法による検査からのデータ信号が、走査型プローブ顕微鏡法による検査の間に、測定プローブホルダーの変位に対するデータ信号を含むように形成されることにある。
【0019】
本発明に係るさらなる好ましい特徴は、走査型プローブ顕微鏡法による検査からのデータ信号が、走査型プローブ顕微鏡法による検査の間に、測定対象の支持体の変位に対するデータ信号を含むように形成されることにある。
【0020】
本発明に係るさらなる好ましい実施形態は、走査型プローブ顕微鏡法による検査の間に、走査型プローブ顕微鏡法による検査からのデータ信号が、測定対象のモデル動作に対するデータ信号を含むように形成されることにある。
【0021】
本発明に係る適切な改良点は、走査型プローブ顕微鏡検査法による検査の間に、走査型プローブ顕微鏡法による検査からのデータ信号が、測定対象の外形変化に対するデータ信号を含むように形成されることにある。
【0022】
本発明に係る有利な実施形態は、走査型プローブ顕微鏡法による検査からのデータ信号が、分光学的な距離のデータ信号を含むように形成されることにある。
【0023】
本発明に係るさらなる好ましい特徴は、走査型プローブ顕微鏡法による検査からのデータ信号が原子力間データ信号を含むように形成されることにある。
【0024】
本発明に係るさらなる好ましい実施形態は、走査型プローブ測定デバイスを用いた、走査型プローブ顕微鏡法による検査の間に、原子間力顕微鏡法、走査トンネル顕微鏡法、走査光子力顕微鏡法、走査型近接場光学顕微鏡法のうち少なくとも1つの方法を実施することにある。
【0025】
本発明に係る適切な改良点は、光学的測定系による光学的測定の間に、光学顕微鏡法、蛍光測定法、及び吸着測定法のうち少なくとも1つの方法を実施することにある。
【0026】
本発明に係る有利な実施形態は、測定対象の少なくとも1つの小区分の光学的測定の間に、光学的測定系の焦点領域が観察領域として用いられ、かつ測定対象における少なくとも1つの変位した小区分が、再調整デバイスを用いた光学的測定系の焦点領域内に再配置されることにある。
【0027】
本発明に係る装置の改良点について以下に記載する。
【0028】
本発明に係るさらなる好ましい特徴は、再調整デバイスが、光学的測定系における変位可能箇所の少なくとも1つを変位させるための光学的測定系の位置決めデバイスを特徴とすることにある。再調整デバイスによる全光学的測定系を再調整することにもあり、すなわち、光学的測定系の3次元変位である。このことは、例えば、走査プローブ顕微鏡法による検査の間に、測定プローブ及び測定対象の小区分もまた観察領域と関連して共に変位される場合にも特徴付けられる。
【0029】
本発明に係るさらなる好ましい実施形態は、再調整デバイスが、測定プローブの変位のための走査プローブ測定デバイスにおける測定デバイスの位置決めデバイスを特徴とすることにある。
【0030】
本発明に係る適切な改良点は、再調整デバイスが、測定対象の変位のための測定対象支持体における位置決めデバイスを特徴とすることにある。
【0031】
本発明に係る有利な実施形態は、走査プローブ顕微鏡法による測定対象に対する検査のとき、再調整デバイスに測定対象のたわみを測定するための測定デバイスを配置することにある。
【0032】
本発明に係るさらなる好ましい特徴は、走査型プローブ顕微鏡法による測定対象に対する検査のとき、再調整デバイスに測定対象のホルダーにおける変位を測定するための測定デバイスを配置することにある。
【0033】
本発明に係るさらなる好ましい実施形態は、走査型プローブ顕微鏡法による測定対象に対する検査のとき、再調整デバイスに走査型プローブ測定デバイスにおける測定プローブの変位を測定するための測定デバイスを配置することにある。
【0034】
本発明に係る適切な改良点は、再調整デバイスが、データ信号から得られる再調整データ信号を発生させる制御デバイスを特徴とすることにある。上記制御デバイスは、観察領域の外に測定対象の少なくとも1つの小区分を変位させることを特徴とする。
【0035】
本発明に係る有利な実施形態は、走査型プローブ測定デバイスが、原子力顕微鏡、走査トンネル顕微鏡、走査光学力顕微鏡、及び走査型近接場光学顕微鏡のうち少なくとも1つの走査プローブ測定デバイスを備えることにある。
【0036】
本発明に係るさらなる好ましい特徴は、光学的測定系が、光学顕微鏡、蛍光測定デバイス、吸着測定デバイスのうち少なくとも1つの光学的測定デバイスを備えることにある。
【0037】
本発明に係るさらなる改良点は、以下にさらに詳しく記載する。
【0038】
測定対象が、例えば圧電部品により移動された場合、かつ観察される測定対象が試料に固定的に接続された場合、測定対象は例えば圧電被駆動調整素子により、枢軸と平行に同方向及び同距離分、変位されうる。圧電制御の場合、両方の部品は好ましくはセンサーと対応する制御システムを有するため、計画動作が実際に計画動作に対応し、両方の動作が同方法で実施される。試料の動作が実験前に明確に定義されていない場合、試料動作のセンサーにおける出力信号を入力信号と切替えるように、光学系における制御メカニズムを制御する必要がある。圧電による試料動作に代わる方法もまた考えられる。もちろん、この方法は光学系の動作にも適用される。代替方法が入力信号といわれる動作を行う場合、上記提示のセンサーは削除されうる。
【0039】
測定対象を動作する代わりに、あるいはそれに加えて、測定対象の前にあるレンズを動作させることにより、焦点面が動作してもよい。このことには、特に、例えばSPhMといった方法において上方に設置されたもう1つのレンズと機能する場合に有利である。
【0040】
測定プローブが試料(測定対象)に関わらず動作する場合、焦点の問題が生じる。例えば、測定対象が測定プローブと接続している場合である。この場合、上記提案の焦点の再調整が適宜適用される。
【0041】
複数の測定プローブといった特別な状況が生じた場合、例えばAFMにおけるカンチレバーを用いた場合、測定プローブの動作は一定ではない。したがって、上記動作はカンチレバーの基部を通して調節される。カンチレバーの自由端、あるいは試料に接続した先端は、動作力によりばねで画定されている平衡部から反れる。結果として、現下動作中の力により、測定対象は焦点に位置しない。したがってそのような場合、焦点部の動作は測定対象に接続した測定プローブ部分の動作と適合しなければならない。カンチレバーの場合、例えば、この焦点部はカンチレバー先端部であり、必要であれば設定されうる。カンチレバーの場合、例えば、基部の動作から、あるいは動作に向かって、カンチレバーにおける測定たわみを減算する、あるいは加算することにより、そのような補正が行われる。このことの必要条件としては、たわみに対する構造の感度測定自体がある。カンチレバーが走査プローブの顕著な例であるため、ここで例として挙げた。類似の特性を備える他の測定プローブにおいても、同様の可能性がある。
【0042】
非常に多くの場合、測定対象は基部と測定プローブとの間にあり、機械的処理により動作される。一方では、この動作は基部の相対動作及び互いに相対する測定プローブ、あるいは試料が接続された測定プローブ部分によって決定される。しかし一方では、上記動作は概して試料の特性によっても決まり、その中に測定対象、例えば蛍光体を含むものである。焦点部の動作は、アナログ方法あるいは好ましくはデジタル方法により実行される方法を用いてコントロールされる。この方法は試料のモデルと想定され、すでに上記言及した制御可能性と併せて、例えば測定対象の始動状態、あるいは試料についての他情報から垂直方向に測定対象の進行を決定しうる。デジタルソリューションはより柔軟性があるため、デジタルソリューションの方がアナログソリューションよりも好ましい。したがって、本発明はモデルを観察しうるもの、特に、実験中に適宜測定対象を焦点部に配置しうるものである。
【0043】
〔本発明の好ましい実施例についての説明〕
本発明は、描かれた図面を参照して実施例に基づき、以下により詳細に説明されるだろう。図面は以下を示している。
【0044】
図1aは、始動状態における、測定対象上に測定プローブを有する調整装置を示す概略図である。
【0045】
図1bは、伸張状態における、図1aの測定対象上に測定プローブを有する調整装置を示す図である。
【0046】
図2aは、始動状態における、測定対象上に測定プローブを有する調整装置を示す概略図である。
【0047】
図2bは、伸張状態における、図2aの測定対象上に測定プローブを有する調整装置を示す図である。
【0048】
図3aは、始動状態における、測定対象上に測定プローブを有する調整装置を示す概略図である。
【0049】
図3bは、伸張状態における、図3aの測定対象上に測定プローブを有する調整装置を示す図であって、再調整が行われている図である。
【0050】
図4aは、始動状態における、測定対象上に測定プローブを有する調整装置を示す概略図である。
【0051】
図4bは、伸張状態における、図4aの測定対象上に測定プローブを有する調整装置を示す図であって、再調整が行われている図である。
【0052】
図5aは、始動状態における、測定対象上に測定プローブを有する調整装置を示す概略図である。
【0053】
図5bは、伸張状態における、図5aの測定対象上に測定プローブを有する調整装置を示す図であって、再調整が行われている図である。
【0054】
図1aは、始動状態における、測定対象1上に測定プローブ10を有する調整装置を示す概略図である。図1bは、伸張状態における、図1aの測定対象上1に測定プローブ10を有する調整装置を示す図である。
【0055】
観察するための測定対象1は、支持部とも称されるベース3上に固定された細胞2の小区分である。ベースは、概略的に示されるフレーム20に固定されている。異なる実施形態における測定対象1は、細胞2とベース3との接点に配置されてもよい。
【0056】
その後、細胞2は、カンチレバー(片持ち梁)として設計された測定プローブ10に固定された、もう1つの細胞12と接触される。カンチレバー10は、操作目的のために、構成部品11に固定されている。構成部品11は、例えばシリコンを構成材としており、圧電部品40を介してフレーム20に、順に接続されている。通常、構成部品11と圧電部品40との間には、さらなる構成部品が存在するが、分かりやすさのために、本明細書では省略されている。追加的なフレーム20aに固定された測定対物レンズ30と、例えば市販で入手される倒立顕微鏡などの、本明細書ではより詳細には示されない光学装置とを用いて、集束面31として意図された観察領域は、測定対象1がはっきりと描かれ得るように、設定される。測定対象1が光学的に測定されるため、測定対物レンズ30は、光学的測定系の一部である。
【0057】
図1bに示すように、2つの細胞2,12間を接触させたまま、圧電部品40が短縮される場合、力はカンチレバー10に作用する。カンチレバー10は、図1bに点線で示す元の位置から、変化位置14に向かって曲がる。2つの細胞2,14がそれらの形状を変化させるため、形状修正された細胞5およびさらに形状修正された細胞15が作り出される。圧電部品40によって実現される進行は、2つの補助線18,19の間の距離によって表示される。
【0058】
測定対象1がベース3と結合し、それ故に他のフレーム20bと結合している場合、測定対象1の位置は変化しない。測定対物レンズ30が補助フレーム20aと結合しているため、カンチレバー10の動きは、測定対物レンズ30を用いて、測定対象1の光学測定の間、測定される。
【0059】
図2aは、始動状態における、測定対象1上に測定プローブ10を有する調整装置を示す概略図である。図2bは、伸張状態における、測定対象1上に測定プローブ10を有する、図2aの調整装置を示す概略図である。
【0060】
図2aにおける始動状況は、構成部品11がフレーム20に直接固定されており、かつベース3が別の圧電部品40bを介して、もう一方のフレーム20aに固定されているという事実は別として、図1aにおける状況と実質的に一致している。ここでもまた、ベース3と別の圧電部品40bとの間に配置され得る他の構成部品は、一般性を制限することなく、省略されている。
【0061】
図2bに示すように、圧電部品40bが短縮される場合、カンチレバー10と細胞2,12とは、再度曲がる。しかしながら、測定対象1は、もはや集束面31には配置されないが、むしろ平面32内に配置され、かつ低い光学質で測定対物レンズ30によって追加的に撮像される。画像化の質は当然ながら、工程に非常に依存し、該工程は、2つの補助線18,19によって、ここで再度表示される。
【0062】
図3aは、始動状態における、測定対象1上に測定プローブ10を有する調整装置を示す概略図である。図3bは、伸張状態における、測定対象1上に測定プローブ10を有する、図3aの調整装置を示す図であって、再調整が行われている図である。
【0063】
図3aにおける始動状況は、図2aにおける状況と実質的に一致している。異なることは、光学的測定のための測定対物レンズ30は、制御機構51を解して移動され得る、垂直な調節デバイス50に取り付けられていることのみである。さらに、センサー52が提供され、該センサー52を用いて、別の圧電部品40bの軌跡または、細胞2もまた測定されるのが好ましい。
【0064】
図3bには、他の圧電部品40bが短縮されている状況を示している。センサー52を用いて、上記偏位は測定され、対応するデータ信号が制御機構51に伝達される。その後、制御機構51は、調節デバイス50を介して測定対物レンズ30の動きを引き起こす。その結果、測定対象1はもう一度測定対物レンズ30の観察領域内に再度配置されるように、変化させられた集束面33が生じる。これは、測定対象1が、測定対物レンズ30の焦点内に常にあることを確実にする。
【0065】
図4aは、始動状態における、測定対象1上に測定プローブ10を有する調整装置を示す概略図である。図4bは、伸張状態における、測定対象1上に測定プローブ10を有する図4aの調整装置を示す概略図であって、再調整が行われた図である。
【0066】
この実施形態においては、カンチレバー10の動きに加えてさらに、走査型プローブ顕微鏡法を用いた検査によって、もたらされるカンチレバーのたわみについても説明する。
【0067】
図4aは、始動状態を示しており、図1aにおける状況と酷似している。違いは、測定対象1と集束面31との配置にあり、また、調節デバイス50、制御機構51、レーザー60、そして他のセンサー61、およびセンサーユニット152もまた備える調節デバイスにある。他のセンサー61としては、例えば2−セグメントフォトダイオードが挙げられる。
【0068】
図4bにおいて、圧電部品40が短縮され、その結果、新しい位置が測定対象1のために得られる。測定対象1は、必要とされる、変更された集束面33(観察領域)を作り出す。しかしながら、カンチレバー10のたわみに起因する、集束面31と偏位した集束面33との間の距離、すなわち、2つの補助線18,19間の距離は、圧電部品40によってもたらされた移動ほどは重要ではない。加えて、上記距離は、センサーユニット52からのデータ信号、また他のセンサー61からのデータ信号、ひいては、カンチレバー10のたわみの指示の提供によって、説明される。本実施形態において、上記たわみは、光ポインターによって測定される。この測定では、レーザー60を用いて、カンチレバー10上にレーザー測定ビーム65の焦点を合わせ、反射されたビーム66を追加的なセンサー61によって受光し、その値を求める。このような方法によって、カンチレバーのたわみを測定すること自体は、当業者に知られており、それ故本明細書では、さらに詳細な説明を必要としない。加えて、光ポインターの原理、さらにはたわみを測定するための方法も知られており、同様に用いられてもいる。例えば、光学干渉計を用いた偏位測定が挙げられる。
【0069】
図5aは、始動状態における、測定対象1上に測定プローブ10を有する調整装置を示す概略図である。図5bは、伸張状態における、測定対象1上に測定プローブ10を有する図5aの調整装置を示す図であって、ここでは再調整が行われている。
【0070】
測定対象1は、細胞2内における作用力若しくは拡大膨張の結果として動くといった方法で、又は少なくともカンチレバー10及び/若しくはベース3と関連して動くといった方法で、細胞2と関連している。
【0071】
図5aではまた、始動状態を示しており、図4aに示すものとは少々の特徴のみによって異なっている。一方では、測定対象1は、細胞2中の中心部に配置されている。さらに、制御機構51は、例えば電子メモリなどのモデル成分70と関連している。モデル成分70は、走査型プローブ顕微鏡法を用いた検査の間、作用力および全行程の機能として、測定対象1の垂直的方向のモデルに関して、電子的に評価することのできる情報を含む。この情報から、測定対象1の位置は、走査型プローブ顕微鏡法を用いた測定の結果として測定され得るため、焦点は再調整され得る。モデル成分70と、好ましくは制御機構51とは、コンピュータによって実行されることが好ましい。例えば温度または細胞2のpHなどの、さらなるパラメータが含まれてもよい。しかしながら、本明細書では本発明を明確に示すために、これらのパラメータは示されていない。補助的事項は、光学的測定系によって測定された光学信号の評価によって提供されてもよい。
【0072】
図5bでは、動作のモデルを示している。測定対象1は情報へ向かって動いており、変化した集束面33は、首尾よく配置されている。しかしながら、検査の始動において、集束面33の新たな位置に対する、集束面31の距離は、2つの補助線18,19によって示された動作行程とは、大幅に異なってもよい。上記動作行程は顕微鏡の評価ユニットを含むことなしに実現されてもよい。
【0073】
本発明の1つの利点は、例えば走査型プローブ顕微鏡法を用いた検査において接触を断つとき、および、シャッターが蛍光分子の退色などを防ぐときの停止の間などの、非常に特殊な時に、光学的測定を行うことが出来ることである。
【0074】
この構成において、仮にベース3がカンチレバー10の代わりに移動する場合、または測定対象1が上部細胞12に配置される場合、若しくは2つの細胞2,12の間に配置される場合でさえ、状況は同様となるだろう。言い換えると、偏位の補助、カンチレバーのたわみ、および光学的な他のパラメータを有するモデルを用いることによって、測定対象1の行程、すなわちその正確かつ適切である局所的位置を事前に計算することができる。
【0075】
両側にある2つの細胞2,12の図は、単に形態の例示に過ぎない。例えば、カンチレバー10上の1つの細胞、およびベースのように一様にコーティングされた試料など、他の形態を提供することも可能である。
【0076】
走査型プローブ顕微鏡による検査の結果としてもたらされる検査対象1の変位は、加圧によって起こることもあり得る。
【0077】
上述において開示された本発明の特徴、請求項、および図面は、単独であっても、種々の実施形態における本発明を実施するために任意に組み合わせた場合にも重要である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1aは、始動状態における、測定対象上に測定プローブを有する調整装置を示す概略図である。図1bは、伸張状態における、図1aの測定対象上に測定プローブを有する調整装置を示す図である。
【図2】図2aは、始動状態における、測定対象上に測定プローブを有する調整装置を示す概略図である。図2bは、伸張状態における、図2aの測定対象上に測定プローブを有する調整装置を示す図である。
【図3】図3aは、始動状態における、測定対象上に測定プローブを有する調整装置を示す概略図である。図3bは、伸張状態における、図3aの測定対象上に測定プローブを有する調整装置を示す図であって、再調整が行われている図である。
【図4】図4aは、始動状態における、測定対象1上に測定プローブ10を有する調整装置を示す概略図である。図4bは、伸張状態における、測定対象1上に測定プローブ10を有する図4aの調整装置を示す概略図であって、再調整が行われた図である。
【図5】図5aは、始動状態における、測定対象1上に測定プローブ10を有する調整装置を示す概略図である。図5bは、伸張状態における、測定対象1上に測定プローブ10を有する図5aの調整装置を示す図であって、再調整が行われた図である。
【図1a】

【図1b】

【図2a】

【図2b】

【図3a】

【図3b】

【図4a】

【図4b】

【図5a】

【図5b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象を検査するための方法であって、
測定対象(2,12)は、走査プローブ型測定デバイスの測定プローブ(10)を使用する走査型プローブ顕微鏡法によって検査され、
かつ上記測定対象(2,12)における少なくとも1つの小区分(1)は、光学的測定系に関連する観察領域において、当該光学的測定系によって光学的に検査され、
走査型プローブ顕微鏡法による上記検査よってもたらされる、上記測定対象(2,12)における少なくとも1つの上記小区分(1)の上記観察領域の範囲外への変位は、上記測定対象(2,12)における少なくとも1つの上記変位した小区分(1)が、上記変位を特徴付けるデータ信号を処理する再調整デバイスによって上記観察領域内に再配置されることによって補正される方法。
【請求項2】
上記測定対象(2,12)における少なくとも1つの上記小区分(1)が、上記光学的測定系の上記観察領域内に再配置されるとき、上記観察領域が変化するように設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記観察領域が変化するように設定されるとき、上記光学的測定系は変位することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記測定対象(2,12)における少なくとも1つの上記変位した小区分(1)が、上記光学的測定系の上記観察領域内に再配置されるとき、上記測定対象(2,12)の位置決めは、変化するように設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
上記測定対象(2,12)における少なくとも1つの上記小区分(1)は、走査型プローブ顕微鏡法による上記検査によってもたらされる上記変位の間に、三次元的な変位および2次元平面における変位のうち少なくとも1つの方法によって、上記観察領域から外へ変位することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
上記変位を特徴付けるデータ信号は、走査型プローブ顕微鏡法による上記検査からのデータ信号から得られることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
走査型プローブ顕微鏡法による上記検査からの上記データ信号は、走査型プローブ顕微鏡法による上記検査の間における、上記測定プローブ(10)のたわみに対するデータ信号を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
走査型プローブ顕微鏡法による上記検査からの上記データ信号は、走査型プローブ顕微鏡法による上記検査の間における、測定プローブホルダー(11)の変位に対するデータ信号を含むことを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
走査型プローブ顕微鏡法による上記検査からの上記データ信号は、走査型プローブ顕微鏡法による上記検査の間における、上記測定対象(2,12)の支持体(3)の変位に対するデータ信号を含むことを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
走査型プローブ顕微鏡法による上記検査からの上記データ信号は、走査型プローブ顕微鏡法による上記検査の間における、上記測定対象(2,12)のモデル動作に対するデータ信号を含むことを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
走査型プローブ顕微鏡法による上記検査からの上記データ信号は、走査型プローブ顕微鏡法による上記検査の間における、上記測定対象(2,12)の外形変化に対するデータ信号を含むことを特徴とする請求項6から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
走査型プローブ顕微鏡法による上記検査からの上記データ信号は、原子間力データ信号を含むことを特徴とする請求項6から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
走査型プローブ顕微鏡法による上記検査からの上記データ信号は、分光学的な距離のデータ信号を含むように形成されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記走査型プローブ測定デバイスを用いた、走査型プローブ顕微鏡法による上記検査の間のとき、原子間力顕微鏡法、走査トンネル顕微鏡法、走査光子力顕微鏡法、および走査型近接場光学顕微鏡法のうち少なくとも1つの方法を実施することを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
上記光学的測定系による上記光学的測定のとき、光学顕微鏡、蛍光測定法、および吸着法のうち少なくとも一つの方法を実施することを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
上記検査対象(2,12)における少なくとも1つの上記小区分の上記光学的検査のとき、上記光学的測定系の焦点領域(31)は上記観察領域として用いられ、かつ上記検査対象(2,12)における少なくとも1つの変位した上記小区分(1)は上記再調整デバイスを用いた上記光学的測定系の上記焦点領域(31)内に再配置されることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
走査プローブ顕微鏡法により測定対象(2,12)を検査するための走査プローブ測定デバイス、及び上記測定対象(2,12)を光学的に測定するための光学的測定系を使用する、上記測定対象(2,12)を検査するための装置であって、
上記走査プローブ顕微鏡法による検査からもたらされる変位の結果、上記光学的測定系の観察領域において当該光学的測定系によって光学的に検査される測定対象(2,12)における少なくとも1つの小区分(1)が、上記光学的測定系の観察領域の外に変位するときに、当該少なくとも1つの小区分(1)を再配置するように構成された再調整デバイスを備えている装置。
【請求項18】
上記再調整デバイスは、上記光学的測定系における少なくとも1つの変位可能部位(30)を変位させるための、上記光学的測定系の位置決めデバイス(40)を含むことを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
上記再調整デバイスは、上記測定プローブを変位させるための、上記走査プローブ測定デバイスにおける測定プローブの位置決めデバイス(40)からなることを特徴とする請求項17または18に記載の装置。
【請求項20】
上記再調整デバイスは、上記測定対象を変位させるための上記測定対象(2,12)の支持体(3)における位置決めデバイス(40b)からなることを特徴とする請求項16から19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
上記走査プローブ顕微鏡法による上記測定対象に対する上記検査の間に、上記再調整デバイスに、上記測定プローブ(10)のたわみを測定するための測定デバイス(60,61)が配置されることを特徴とする請求項16から20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
走査プローブ顕微鏡法による上記測定対象に対する上記検査の間に、上記再調整デバイスに、上記測定対象の上記支持体の変位を測定するための測定デバイス(52)が配置されることを特徴とする請求項16から21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
走査プローブ顕微鏡法による上記測定対象に対する上記検査の間に、上記再調整デバイスに、上記走査プローブ測定デバイスにおける上記測定プローブ(10)の変位を測定するための測定デバイス(52)が配置されることを特徴とする請求項16から22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
上記再調整デバイスは、再調整データ信号を生成するための制御デバイス(51)をそなえ、
上記再調整データ信号は、上記測定対象(2,12)における上記少なくとも1つの小区分(1)の、上記観察領域の外への変位を表すデータ信号から得られることを特徴とする請求項16から23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
原子力顕微鏡、走査トンネル顕微鏡、走査光子力顕微鏡、および走査型近接場顕微鏡のうち少なくとも1つの走査プローブ測定デバイスが、上記走査プローブ測定デバイスによって実施されることを特徴とする請求項16から24のいずれか1項に記載の装置。
【請求項26】
光学顕微鏡、蛍光測定デバイス、及び吸着測定デバイスのうち少なくとも1つの光学的測定デバイスが、上記光学的測定系によって実施されることを特徴とする請求項16から25のいずれか1項に記載の装置。

【公表番号】特表2009−511882(P2009−511882A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534858(P2008−534858)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/DE2006/001131
【国際公開番号】WO2007/041976
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(507038249)イェーペーカー インストゥルメンツ アクチエンゲゼルシャフト (4)