説明

測定装置

【課題】故障の発生を防止しつつ製造コストを低減する。
【解決手段】測定用プローブ3,3を介して入力した電気信号に基づいて電圧測定および電流測定を実行する測定部と、電圧測定および電流測定の実行を指示する指示操作が可能な操作部と、電圧測定を実行する際に測定用プローブ3の接続端子31を接続させるためのV端子18aと、電流測定を実行する際に接続端子31を接続させるためのA端子18bと、電圧測定および電流測定を実行する際に接続端子31を接続させるためのCOM端子18cと、電圧測定の実行が指示されたときにその旨を報知する報知部と、指先50による押圧操作に応じて報知の状態を解除する解除スイッチ16とを備え、解除スイッチ16は、A端子18bに各接続端子31が接続されている状態において解除スイッチ16に対する指先50による押圧操作が規制されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定用プローブを介して入力した電気信号に基づいて電圧測定および電流測定を行う測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の測定装置として、特許第3583832号公報において出願人が開示した電気測定器が知られている。この電気測定器は、ロータリスイッチで構成されて本体に取り付けられたファンクションスイッチを備えて構成されている。また、本体には、テストリードを挿通可能なCOM端子、V端子、mA端子およびA端子が配設されている。ファンクションスイッチは、本体に対して回転可能に取り付けられ、回転操作により、電源OFF、Vレンジ、mAレンジおよびAレンジを選択することが可能となっている。また、ファンクションスイッチには、回転操作(選択した測定レンジ)に連動してV端子、mA端子およびA端子に対するテストリードの接続を規制する接続規制手段が設けられている。この場合、接続規制手段は、本体の内側に配置されて、ファンクションスイッチに対する回転操作に連動して回転するように構成された円盤を備え、この円盤には、長円形状の貫通孔が形成されている。この電気測定器では、電源OFFおよびVレンジが選択されているときには円盤の貫通孔がV端子の対向部位に位置して、他の端子に対するテストリードの接続を規制する。また、mAレンジが選択されているときにはmA端子の対向部位に貫通孔が位置して、他の端子に対するテストリードの接続を規制し、Aレンジが選択されているときにはA端子の対向部位に貫通孔が位置して、他の端子に対するテストリードの接続を規制する。このため、この電気測定器では、測定レンジに対応する端子にのみテストリードを接続することができるため、測定レンジに対応しない端子に接続されたテストリードを介して過大な電流が流れて内部回路を損傷する事態を回避することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3583832号公報(第2−3頁、第1−3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の従来の電気測定器には、改善すべき以下の問題点がある。すなわち、この電気測定器では、接続規制手段によって測定レンジに対応しない端子に対するテストリードの接続を規制している。しかしながら、この接続規制手段は、複数の部品を組み合わせて比較的複雑に構成されている。このため、接続規制手段の製作に要する費用の分、電気測定器の製造コストが上昇するという課題が存在する。また、構成が複雑な分、接続規制手段の故障が発生し易くなるおそれがあるという課題も存在する。
【0005】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、故障の発生を防止しつつ製造コストを低減し得る測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載の測定装置は、一対の測定用プローブを介して入力した電気信号に基づいて電圧測定および電流測定を実行する測定部と、当該測定部に対して前記電圧測定および前記電流測定の実行を指示する指示操作が可能な操作部と、前記電圧測定を実行する際に1つの前記測定用プローブの接続端子を接続させるための電圧入力端子と、前記電流測定を実行する際に1つの前記測定用プローブの接続端子を接続させるための電流入力端子と、前記電圧測定および前記電流測定を実行する際に他の1つの前記測定用プローブの接続端子を接続させるための共通入力端子とを備えた測定装置であって、前記指示操作によって前記電圧測定の実行が指示されたときにその旨を報知する報知部と、解除操作行使体による解除操作に応じて前記報知の状態を解除する解除部とを備え、前記解除部は、前記電流入力端子に前記接続端子が接続されている状態において前記解除部に対する前記解除操作行使体による前記解除操作が規制されるように構成されている。
【0007】
また、請求項2記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、前記解除部は、前記電流入力端子と前記共通入力端子との間に配設され、前記電流入力端子および前記共通入力端子は、当該電流入力端子および当該共通入力端子の双方に前記各接続端子がそれぞれ接続されている状態において当該各接続端子間の隙間への前記解除操作行使体の挿入を規制可能な位置に配設されている。
【0008】
また、請求項3記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、前記解除部に対する前記解除操作行使体の接触を規制するための突起部を備え、前記解除部は、前記電流入力端子と前記突起部との間に配設され、前記電流入力端子および前記突起部は、当該記電流入力端子に前記接続端子が接続されている状態において当該接続端子と当該突起部との間の隙間への前記解除操作行使体の挿入を規制可能な位置に配設されている。
【0009】
また、請求項4記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、前記電流入力端子に前記接続端子が接続されている状態において前記解除部を被覆すると共に当該電流入力端子に当該接続端子が接続されていない状態において当該解除部に対する被覆を解除する第1カバーを備えている。
【0010】
また、請求項5記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、前記測定用プローブを備え、前記測定用プローブの前記接続端子には、前記電流入力端子に当該接続端子が接続されている状態において前記解除部を被覆する第2カバーが配設されている。
【0011】
また、請求項6記載の測定装置は、請求項1から5のいずれかに記載の測定装置において、前記指示操作によって前記電圧測定の実行が指示されている状態において前記電流入力端子と当該測定装置内における予め決められた電気部品との接続を切断し、前記解除部に対する前記解除操作が行われたときに前記電流入力端子と前記電気部品とを接続する接断部を備えている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の測定装置では、電圧測定の実行が指示されたときにその旨を報知する報知部と、解除操作行使体による解除操作に応じて報知の状態を解除する解除部とを備え、電流入力端子に接続端子が接続されている状態では解除部に対する解除操作行使体による解除操作が規制される。つまり、この測定装置は、複雑な構成の接続規制手段を用いることなく、報知の状態の解除を行うために電流入力端子から接続端子を取り外させることで、誤った接続状態を解消させるように構成されている。このため、この測定装置によれば、複雑な構成の接続規制手段を備えていない分、製造コストを十分に低減することができる。また、この測定装置によれば、複雑な構成の接続規制手段を備えていないため、接続規制手段の動作不良等に起因する故障の発生を確実に防止することができる。
【0013】
また、請求項2記載の測定装置では、電流入力端子と共通入力端子との間に解除部が配設され、電流入力端子および共通入力端子の双方に各接続端子がそれぞれ接続されている状態において各接続端子間の隙間への解除操作行使体の挿入を規制可能な位置に電流入力端子および共通入力端子が配設されている。このため、この測定装置によれば、電流入力端子に接続端子が接続されている状態において解除部に対する解除操作を規制する機能を、専用の部材や機構を設けることなく簡易な構成で実現することができる結果、製造コストをさらに削減することができる。
【0014】
また、請求項3記載の測定装置では、電流入力端子と突起部との間に解除部が配設され、電流入力端子に接続端子が接続されている状態において接続端子と突起部との間の隙間への解除操作行使体の挿入を規制可能な位置に電流入力端子および突起部が配設されている。このため、この測定装置によれば、電流入力端子に接続端子が接続されている状態において解除部に対する解除操作を規制する機能を、突起部を配設しただけの簡易な構成で実現することができる結果、製造コストをさらに削減することができる。
【0015】
また、請求項4記載の測定装置は、電流入力端子に接続端子が接続されている状態において解除部を被覆すると共に電流入力端子に接続端子が接続されていない状態において解除部に対する被覆を解除する第1カバーを備えている。このため、この測定装置によれば、電流入力端子に接続端子が接続されている状態において解除部に対する解除操作を規制する機能を、簡易な構成の第1カバーだけで実現することができる結果、製造コストをさらに削減することができる。
【0016】
また、請求項5記載の測定装置では、電流入力端子に接続端子が接続されている状態において解除部を被覆する第2カバーが測定用プローブの接続端子に配設されている。このため、この測定装置によれば、電流入力端子に接続端子が接続されている状態において解除部に対する解除操作を規制する機能を、測定用プローブの接続端子に第2カバーを配設しただけの簡易な構成で実現することができる結果、製造コストをさらに削減することができる。
【0017】
また、請求項6記載の測定装置は、電圧測定の実行が指示されている状態において電流入力端子と測定装置内における予め決められた電気部品との接続を切断し、解除部に対する解除操作が行われたときに電流入力端子と上記の電気部品とを接続する接断部を備えている。つまり、この測定装置では、電圧測定の実行が指示されたときには、解除部に対する解除操作がされない限り接断部によって電流入力端子と上記の電気部品との接続が切断されている。このため、この測定装置によれば、例えば、報知部の故障に起因して報知が行われない場合においても、電圧入力端子に対する接続端子の誤った接続に起因する電気部品の損傷を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】テスタ1の構成を示す平面図である。
【図2】テスタ1の構成を示す構成図である。
【図3】解除スイッチ16、V端子18a、A端子18bおよびCOM端子18cの位置関係を説明する第1の説明図である。
【図4】解除スイッチ16、V端子18a、A端子18bおよびCOM端子18cの位置関係を説明する第2の説明図である。
【図5】テスタ1の使用方法を説明する第1の説明図である。
【図6】テスタ1の使用方法を説明する第2の説明図である。
【図7】テスタ1の使用方法を説明する第3の説明図である。
【図8】テスタ71の構成を説明する第1の説明図である。
【図9】テスタ71の構成を説明する第2の説明図である。
【図10】テスタ101の構成を説明する第1の説明図である。
【図11】テスタ101の構成を説明する第2の説明図である。
【図12】テスタ201の構成を説明する第1の説明図である。
【図13】テスタ201の構成を説明する第2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0020】
最初に、図1に示すテスタ1の構成について説明する。テスタ1は、測定装置の一例であって、同図に示すように、本体部2および一対の測定用プローブ3,3を備えて構成されている。
【0021】
本体部2は、図2に示すように、測定部11、操作部13、報知部15、解除スイッチ(解除部)16、接断スイッチ(接断部)17、V端子(電圧入力端子)18a、A端子(電流入力端子)18b、COM端子(共通入力端子)18c(以下、V端子18a、A端子18bおよびCOM端子18cを区別しないときには「入力端子18」ともいう)、表示部19および制御部20を備えて構成されている。
【0022】
測定部11は、各入力端子18を介して入力した電気信号に基づいて電圧測定および電流測定を行い、測定データDmを出力する。
【0023】
操作部13は、図1に示すように、本体部2の正面パネル2aに配設された操作ダイヤル13aを備え、この操作ダイヤル13aを回動させる回動操作(指示操作)によって測定部11に対して各測定(この例では、電圧測定および電流測定)のいずれかの実行を指示することが可能に構成されている。また、操作部13は、指示操作(回動操作)によってテスタ1をオフ状態にすることが可能に構成されている。
【0024】
また、操作部13は、指示操作に応じて各入力端子18と測定部11との接続および非接続を切り替える。さらに、操作部13は、指示操作によって指示された測定の種類を示す操作信号So1を制御部20に出力する。
【0025】
報知部15は、制御部20の制御に従って作動して、操作部13を用いた指示操作によって電圧測定の実行が指示されたときにその旨を報知する。具体的には、報知部15は、電圧測定の実行が指示されたときに制御部20の制御に従って発光するLED15a(図2参照)と、このときに制御部20の制御に従って警告音を出力するブザー15b(同図参照)とを備えて構成されている。この場合、LED15aは、解除スイッチ16(図4参照)の下部に配設されている。このため、LED15aの発光時には、解除スイッチ16が発光するように視認される。なお、LED15aの発光、ブザー15bからの警告音の出力、および表示部19による後述する文字情報の表示の1つ以上が行われている状態を以下「報知状態」ともいう。
【0026】
解除スイッチ16は、解除操作を行使するための解除操作行使体としての指先50による押圧操作(解除操作の一例)がされたときに(図6参照)報知状態を解除する機能を有している。具体的には、解除スイッチ16に対して押圧操作がされたときに操作信号So2が出力され、これに応じて制御部20が報知部15を制御して報知状態を解除する(LED15aによる発光、およびブザー15bによる警告音の出力を停止させ、後述する文字情報の表示を終了させる)。また、解除スイッチ16は、図3,4に示すように本体部2の正面パネル2aにおけるA端子18bとCOM端子18cとの間に配設されている。また、解除スイッチ16は、その下部に配設されているLED15aの発光を視認可能とするために、透明または半透明に形成されている。
【0027】
接断スイッチ17は、図2に示すように、A端子18bと操作部13との間に配置されて、制御部20の制御に従って作動する。この場合、接断スイッチ17は、操作部13を用いた指示操作によって電圧測定の実行が指示されている状態において、A端子18bとテスタ1内の電気部品(予め決められた電気部品であって、例えば、A端子18bとCOM端子18cとの間に配設されている電流検出用抵抗R)との接続を切断する。また、接断スイッチ17は、指示操作によって電圧測定の実行が指示されている状態において解除スイッチ16に対する押圧操作が行われたときは、A端子18bと上記の電気部品とを接続する(つまり、接続を復帰させる)。
【0028】
V端子18a、A端子18bおよびCOM端子18cは、図3〜図5に示すように、測定用プローブ3の接続端子31を挿入可能に構成されている。この場合、V端子18aは、電圧測定を実行する際に測定用プローブ3,3の一方における接続端子31を接続させるための入力端子であって、図1,3に示すように、本体部2の正面パネル2aにおける左側に配設されている。また、A端子18bは、電流測定を実行する際に測定用プローブ3,3の一方における接続端子31を接続させるための入力端子であって、図1,3に示すように、正面パネル2aにおける右側に配設されている。
【0029】
また、COM端子18cは、電圧測定および電流測定を実行する際に測定用プローブ3,3の他方における接続端子31を接続させるための入力端子であって、図1,3に示すように、正面パネル2aにおけるV端子18aとA端子18bとの間に配設されている。このテスタ1では、電圧測定を実行する際には、V端子18aおよびCOM端子18cに測定用プローブ3,3の各接続端子31を1つずつ接続させ、電流測定を実行する際には、A端子18bおよびCOM端子18cに測定用プローブ3,3の各接続端子31を1つずつ接続させる。
【0030】
また、このテスタ1では、A端子18bおよびCOM端子18cの双方に測定用プローブ3,3の各接続端子31がそれぞれ接続されている状態では、両端子18b,18cの間に配設されている解除スイッチ16に対する指先50による押圧操作が規制されるように構成されている。具体的には、このテスタ1では、図3,4に示すように、A端子18bおよびCOM端子18cの双方に測定用プローブ3,3の各接続端子31がそれぞれ接続されている状態では、両接続端子31間の隙間への指先50(解除操作行使体)の挿入を規制可能な位置に、A端子18bおよびCOM端子18cが配設されている。より具体的には、このテスタ1では、一例として、JISC0922に規定されている検査プローブ(一体形試験指)が、A端子18bおよびCOM端子18cにそれぞれ接続されている各接続端子31間の隙間に挿入できないように、この隙間が12mm以下となる位置に両端子18b,18cが配設されている。
【0031】
表示部19は、図1に示すように、本体部2の正面パネル2aに配設されて、制御部20から出力される表示データDd(図2参照)を入力して、測定値(電流値および電圧値)を表示する。また、表示部19は、報知部としても機能して、制御部20から出力される文字情報用の表示データDdを入力して、電圧測定の実行が指示された旨を示す文字情報を表示する。
【0032】
制御部20は、操作部13から出力される操作信号So1に従って測定部11および報知部15を制御する。この場合、制御部20は、電圧測定の実行が指示された旨を示す操作信号So1が操作部13から出力されたときには、報知部15のLED15aを発光させると共に、報知部15のブザー15bに対して警告音を出力させる。また、制御部20は、電圧測定の実行が指示された旨を示す操作信号So1が操作部13から出力されたときには、接断スイッチ17を制御して、A端子18bおよびCOM端子18cの間に配設されている電流検出用抵抗R(テスタ1内における予め決められた電気部品)とA端子18bとの接続を切断させる。
【0033】
また、制御部20は、解除スイッチ16から出力される操作信号So2に従って報知部15および接断スイッチ17を制御する。この場合、制御部20は、解除スイッチ16から操作信号So2が出力されたときには、LED15aによる発光、およびブザー15bによる警告音の出力を停止させる。また、制御部20は、解除スイッチ16から操作信号So2が出力されたときには、接断スイッチ17を制御して、A端子18bと上記の電流検出用抵抗Rとを接続させる。
【0034】
また、制御部20は、測定部11から出力される測定データDmに基づいて測定値表示用の表示データDdを出力することにより、表示部19に測定値を表示させる。また、制御部20は、電圧測定の実行が指示された旨を示す操作信号So1が操作部13から出力されたときには、文字情報用の表示データDdを出力することにより、その旨を報知するための文字情報を表示部19に表示させ、解除スイッチ16から操作信号So2が出力されたときには、この文字情報の表示を終了させる。
【0035】
次に、テスタ1を用いての測定方法について、図面を参照して説明する。
【0036】
例えば、測定対象体に供給されている電圧の値を測定する際には、各入力端子18に測定用プローブ3,3の接続端子31を接続(挿入)し、次いで、電圧測定の実行を指示する指示操作を操作部13を用いて行う。具体的には、操作部13の操作ダイヤル13aを回動操作して、図1に示すように、本体部2の正面パネル2aに記載されている電圧測定を示す文字(同図に示す「ACV」の文字)の位置に操作部13のマークMを位置合わせする。
【0037】
この際に、操作部13が、各入力端子18と測定部11とを接続させると共に、指示操作によって指示された測定の種類(この例では、電圧測定)を示す操作信号So1を制御部20に出力する。続いて、制御部20が、操作部13から出力された操作信号So1に従い、報知部15のLED15aを発光させると共に、報知部15のブザー15bに対して警告音を出力させる。また、制御部20は、操作信号So1に従い、電圧測定の実行が指示された旨を示す文字情報用の表示データDdを表示部19に出力し、その文字情報(例えば、「電圧測定モードです」の文字情報)が表示部19に表示される。これにより、電圧測定の実行が指示された旨が測定者に対して報知される(報知状態となる)。
【0038】
また、制御部20は、操作信号So1に従い、接断スイッチ17を制御して、A端子18bおよびCOM端子18cの間に配設されている電流検出用抵抗R(テスタ1内における予め決められた電気部品)とA端子18bとの接続を切断させる。
【0039】
この場合、このテスタ1では、解除スイッチ16に対して押圧操作を行うことで、上記した報知状態を解除する(発光の停止、警告音の出力停止、および文字情報の表示終了をさせる)ことができる。このため、測定の開始に先立ち、解除スイッチ16に対する押圧操作を行う。
【0040】
ここで、図3,4に示すように、A端子18bおよびCOM端子18cに測定用プローブ3,3の各接続端子31を接続したとき、つまり、電圧測定を実行する際の正しい接続状態としてのV端子18aおよびCOM端子18cへの各接続端子31の接続とは異なる誤った接続状態で接続端子31を接続したとき(誤接続をしたとき)には、両接続端子31の間の隙間への指先50の挿入が規制されて、解除スイッチ16に対して押圧操作をすることができないこととなる。この状態を解消して解除スイッチ16に対して押圧操作を行うためには、図5に示すように、例えば、接続端子31をA端子18bから取り外して、図6に示すように、その接続端子31をV端子18aに接続する。これにより、解除スイッチ16に対する指先50による押圧操作が可能となる。次いで、図7に示すように、解除スイッチ16に対する押圧操作を行う。この際に、解除スイッチ16が操作信号So2を制御部20に出力する。
【0041】
続いて、制御部20は、操作信号So2に従い、LED15aによる発光、ブザー15bによる警告音の出力を停止させると共に、表示部19による文字情報の表示を終了させる(報知状態を解除させる)。また、制御部20は、操作信号So2に従って接断スイッチ17を制御して、A端子18bと上記の電流検出用抵抗Rとを接続させる。
【0042】
上記したように、このテスタ1では、電圧測定の際にA端子18bおよびCOM端子18cに測定用プローブ3,3の各接続端子31がそれぞれ接続された誤った接続状態(誤接続の状態)のままでは、解除スイッチ16に対して押圧操作をすることができず、報知状態の解除を行うには、必然的にA端子18bから接続端子31を取り外す必要がある。このため、このテスタ1では、このような誤った接続状態を確実に解消することが可能となっている。
【0043】
次いで、測定用プローブ3,3の各先端部32を測定対象体の接触対象部位に接触させる。この際には、測定部11が、測定用プローブ3,3を介して入力した電気信号に基づいて電圧測定を行い、測定した測定データDmを出力する。次いで、制御部20は、測定部11から出力された測定データDmに基づいて測定値表示用の表示データDdを表示部19に出力する。これにより、図1に示すように、表示部19に電圧の測定値が表示される。
【0044】
ここで、A端子18bおよびCOM端子18cに接続端子31を接続した誤った接続状態で、高電圧が供給されている測定対象体に測定用プローブ3,3を接触させたときには、テスタ1内の電気部品(上記した電流検出用抵抗R)に過大な電流が流れて電気部品が損傷するおそれがあるが、このテスタ1では、このような誤った接続状態が確実に解消されているため、電気部品の損傷を確実に防止することが可能となっている。この場合、このテスタ1は、上記したように、報知状態の解除を行うためにA端子18bから接続端子31を取り外させることで、誤った接続状態を解消させるように構成されている。このため、このテスタ1では、複雑な構成の接続規制手段を用いる従来の構成と比較して、このような接続規制手段を備えていない分、製造コストを低減することが可能となっている。また、複雑な構成の接続規制手段を備えていないため、接続規制手段の動作不良等に起因する故障の発生を確実に防止することが可能となっている。
【0045】
また、このテスタ1では、上記したように、電圧測定の実行が指示されたときには、解除スイッチ16に対する押圧操作がされない限り接断スイッチ17によって電流検出用抵抗RとA端子18bとの接続が切断されている。このため、このテスタ1では、例えば、報知部15や表示部19の故障などに起因して、発光、警告音の出力、および文字情報の表示などによる電圧測定の実行が指示されている旨の報知がされない場合においても、接続端子31の誤接続に起因する電気部品の損傷が確実に防止される。
【0046】
続いて、測定対象体に流れている電流の値を測定する際には、V端子18aから接続端子31を取り外して、A端子18bに接続する。次いで、操作部13の操作ダイヤル13aを回動操作して、電流測定の実行を指示し、続いて、測定用プローブ3,3の先端部32を測定対象体の接触対象部位に接触させる。この際に、測定用プローブ3,3および電流検出用抵抗Rを介して電流が流れて、電流検出用抵抗Rの両端に電気信号(電圧)が発生する。この場合、測定部11が、電流検出用抵抗Rの両端に発生した電気信号(測定用プローブ3,3を介して入力した電気信号)に基づいて電流測定を行い、測定データDmを出力する。続いて、制御部20が測定部11から出力された測定データDmに基づいて測定値表示用の表示データDdを出力することにより、表示部19に電流の測定値が表示される。
【0047】
このように、このテスタ1では、電圧測定の実行が指示されたときにその旨を報知する報知部15および表示部19と、指先50による押圧操作に応じて報知状態を解除する解除スイッチ16とを備え、A端子18bに測定用プローブ3の接続端子31が接続されている状態では解除スイッチ16に対する指先50による押圧操作が規制される。つまり、このテスタ1は、複雑な構成の接続規制手段を用いることなく、報知状態の解除を行うためにA端子18bから接続端子31を取り外させることで、誤った接続状態を解消させるように構成されている。このため、このテスタ1によれば、複雑な構成の接続規制手段を備えていない分、製造コストを十分に低減することができる。また、このテスタ1によれば、複雑な構成の接続規制手段を備えていないため、接続規制手段の動作不良等に起因する故障の発生を確実に防止することができる。
【0048】
また、このテスタ1では、A端子18bとCOM端子18cとの間に解除スイッチ16が配設され、両端子18b,18cの双方にそれぞれ接続されている各接続端子31の間の隙間への指先50の挿入を規制できる位置に両端子18b,18cが配設されている。このため、このテスタ1によれば、A端子18bに接続端子31が接続されている状態において解除スイッチ16に対する押圧操作を規制する機能を、専用の部材や機構を設けることなく簡易な構成で実現することができる結果、製造コストをさらに削減することができる。
【0049】
また、このテスタ1は、電圧測定の実行が指示されている状態においてA端子18bとテスタ1内における予め決められた電気部品(上記の例では、電流検出用抵抗R)との接続を切断し、解除スイッチ16に対する押圧操作が行われたときにA端子18bと上記の電気部品とを接続する接断スイッチ17を備えている。つまり、このテスタ1では、電圧測定の実行が指示されたときには、解除スイッチ16に対する押圧操作がされない限り接断スイッチ17によってA端子18bと上記の電気部品との接続が切断されている。このため、このテスタ1によれば、例えば、報知部15等の故障に起因して報知が行われない場合においても、入力端子18に対する接続端子31の誤った接続に起因する電気部品の損傷を確実に防止することができる。
【0050】
なお、測定装置は、上記したテスタ1には限定されない。例えば、図8,9に示すテスタ71を採用することができる。以下の説明において、上記したテスタ1と同じ構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。このテスタ71は、両図に示すように、正面パネル2aに配設された突起部81を備えている。この突起部81は、解除スイッチ16に対する指先50の接触を規制するための部材であって、解除スイッチ16を挟んでA端子18bに隣接するように配設されている。つまり、このテスタ71では、A端子18bと突起部81との間に解除スイッチ16が配設されている。この場合、A端子18bおよび突起部81は、A端子18bに接続端子31が接続されている状態において接続端子31と突起部81との間の隙間への指先50の挿入を規制可能な位置に配設されている。より具体的には、一例として、JISC0922に規定されている検査プローブが、A端子18bに接続されている各接続端子31と突起部81との間の隙間に挿入できないように、この隙間が12mm以下となる位置にA端子18bおよび突起部81が配設されている。
【0051】
このテスタ71では、図8に示すように、A端子18bに接続端子31が接続されている状態では解除スイッチ16に対する指先50による押圧操作が規制されるように構成されている。このため、このテスタ71においても、複雑な構成の接続規制手段を用いることなく、報知状態の解除を行うためにA端子18bから接続端子31を取り外させることで、誤った接続状態を解消させることができるため、複雑な構成の接続規制手段を備えていない分、製造コストを十分に低減することができると共に、接続規制手段の動作不良等に起因する故障の発生を確実に防止することができる。
【0052】
また、このテスタ71によれば、A端子18bに接続端子31が接続されている状態において解除スイッチ16に対する押圧操作を規制する機能を、突起部81を配設しただけの簡易な構成で実現することができる結果、製造コストをさらに削減することができる。
【0053】
また、図10,11に示すテスタ101を採用することができる。以下の説明において、上記したテスタ1,71と同じ構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。このテスタ101は、両図に示すように、正面パネル2aにおけるA端子18bとCOM端子18cとの間においてスライド可能に構成されたカバー(第1カバー)41を備えている。このカバー41は、図10に示すように、A端子18bに対して接続端子31が接続されている状態では、COM端子18c側(同図において左側)に位置して解除スイッチ16を被覆する。また、カバー41は、図外の付勢部材(例えば、バネ)によってCOM端子18c側からA端子18b側に向けて付勢されており、図11に示すように、A端子18bから接続端子31が取り外されたときには(非接続状態では)、付勢部材の付勢力によってA端子18b側にスライドして解除スイッチ16の被覆を解除する。
【0054】
つまり、このテスタ101では、図10に示すように、A端子18bに接続端子31が接続されている状態では解除スイッチ16をカバー41によって被覆して解除スイッチ16に対する指先50による押圧操作が規制されるように構成されている。このため、このテスタ101においても、複雑な構成の接続規制手段を用いることなく、報知状態の解除を行うためにA端子18bから接続端子31を取り外させることで、誤った接続状態を解消させることができるため、複雑な構成の接続規制手段を備えていない分、製造コストを十分に低減することができると共に、接続規制手段の動作不良等に起因する故障の発生を確実に防止することができる。
【0055】
また、このテスタ101によれば、A端子18bに接続端子31が接続されている状態において解除スイッチ16に対する押圧操作を規制する機能を、簡易な構成のカバー41だけで実現することができる結果、製造コストをさらに削減することができる。なお、カバー41は、解除スイッチ16を覆った状態において解除スイッチ16の下部に配設されているLED15aの発光を視認可能とするために、透明または半透明に形成するのが好ましい。
【0056】
また、図12,13に示すテスタ201を採用することができる。なお、以下の説明において、上記したテスタ1,101と同じ構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。このテスタ201は、測定用プローブ3,3に代えて、両図に示す測定用プローブ103,103を備えている。この場合、測定用プローブ103の接続端子131には、図12に示すように、カバー(第2カバー)51が配設されている。また、このテスタ201では、解除スイッチ16がA端子18bの外側(同図における右側の位置であって、COM端子18cから離反する側の位置)に配設されている。
【0057】
このテスタ201では、図12に示すように、測定用プローブ103の接続端子131がA端子18bに接続されている状態において、カバー51が解除スイッチ16を被覆する。また、図13に示すように、A端子18bから接続端子131が取り外されている状態(非接続状態)において、解除スイッチ16の被覆が解除されて、解除スイッチ16に対する指先50による押圧操作が可能となる。つまり、このテスタ201では、A端子18bに測定用プローブ103の接続端子131が接続されている状態では指先50による解除スイッチ16に対する押圧操作が規制されるように構成されている。このため、このテスタ201においても、複雑な構成の接続規制手段を用いることなく、報知状態の解除を行うためにA端子18bから接続端子31を取り外させることで、誤った接続状態を解消させることができるため、複雑な構成の接続規制手段を備えていない分、製造コストを十分に低減することができると共に、接続規制手段の動作不良等に起因する故障の発生を確実に防止することができる。
【0058】
また、このテスタ201によれば、A端子18bに接続端子31が接続されている状態において解除スイッチ16に対する押圧操作を規制する機能を、測定用プローブ103の接続端子131にカバー51を配設しただけの簡易な構成で実現することができる結果、製造コストをさらに削減することができる。なお、カバー51は、解除スイッチ16を覆った状態において解除スイッチ16の下部に配設されているLED15aの発光を視認可能とするために、透明または半透明に形成するのが好ましい。
【0059】
また、LED15aの発光、ブザー15bによる警告音の出力、および表示部19による文字情報の表示の3つの形態で電圧測定の実行が指示された旨を報知する例について上記したが、これらのうちの1つまたは2つの形態でその旨を報知する構成を採用することもできる。
【0060】
また、電圧測定および電流測定を行うテスタ1に適用した例について上記したが、他の測定を行う測定装置に適用することもできる。例えば、電圧測定および電流測定に加えて抵抗測定を行う測定装置では、抵抗測定において電圧測定と同じV端子18aおよびCOM端子18cに接続端子31を接続し、入力した電気信号に基づいて電圧を測定し、その測定値(電圧値)に基づいて抵抗値を算出する。このため、電圧測定、電流測定および抵抗測定を行う測定装置に適用した構成においても、上記したテスタ1,71,101,201と同様の効果を実現することができる。
【0061】
また、A端子18bに接続端子31,131が接続されているか否かに拘わらず、電圧測定の実行が指示されたときに、その旨の報知を行う構成例について上記したが、A端子18bに接続端子31(または131)が接続され、かつ電圧測定の実行が指示されたときにのみ電圧測定の実行が指示された旨の報知を行う構成を採用することもできる。また、解除操作の一例として、指先50による押圧操作がされたときに報知状態を解除する解除スイッチ16を備えた例について上記したが、解除操作としてのスライド操作(例えば、図1における上下方向へのスライド操作)によって報知状態を解除する解除スイッチ(スライドスイッチ)を解除部として備えた構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0062】
1,71,101,201 テスタ
3, 103 測定用プローブ
11 測定部
13 操作部
13a 操作ダイヤル
15 報知部
15a LED
15b ブザー
16 解除スイッチ
17 接断スイッチ
18a V端子
18b A端子
18c COM端子
19 表示部
31,131 接続端子
41,51 カバー
50 指先
81 突起部
R 電流検出用抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の測定用プローブを介して入力した電気信号に基づいて電圧測定および電流測定を実行する測定部と、当該測定部に対して前記電圧測定および前記電流測定の実行を指示する指示操作が可能な操作部と、前記電圧測定を実行する際に1つの前記測定用プローブの接続端子を接続させるための電圧入力端子と、前記電流測定を実行する際に1つの前記測定用プローブの接続端子を接続させるための電流入力端子と、前記電圧測定および前記電流測定を実行する際に他の1つの前記測定用プローブの接続端子を接続させるための共通入力端子とを備えた測定装置であって、
前記指示操作によって前記電圧測定の実行が指示されたときにその旨を報知する報知部と、解除操作行使体による解除操作に応じて前記報知の状態を解除する解除部とを備え、
前記解除部は、前記電流入力端子に前記接続端子が接続されている状態において前記解除部に対する前記解除操作行使体による前記解除操作が規制されるように構成されている測定装置。
【請求項2】
前記解除部は、前記電流入力端子と前記共通入力端子との間に配設され、
前記電流入力端子および前記共通入力端子は、当該電流入力端子および当該共通入力端子の双方に前記各接続端子がそれぞれ接続されている状態において当該各接続端子間の隙間への前記解除操作行使体の挿入を規制可能な位置に配設されている請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記解除部に対する前記解除操作行使体の接触を規制するための突起部を備え、
前記解除部は、前記電流入力端子と前記突起部との間に配設され、
前記電流入力端子および前記突起部は、当該電流入力端子に前記接続端子が接続されている状態において当該接続端子と当該突起部との間の隙間への前記解除操作行使体の挿入を規制可能な位置に配設されている請求項1記載の測定装置。
【請求項4】
前記電流入力端子に前記接続端子が接続されている状態において前記解除部を被覆すると共に当該電流入力端子に当該接続端子が接続されていない状態において当該解除部に対する被覆を解除する第1カバーを備えている請求項1記載の測定装置。
【請求項5】
前記測定用プローブを備え、
前記測定用プローブの前記接続端子には、前記電流入力端子に当該接続端子が接続されている状態において前記解除部を被覆する第2カバーが配設されている請求項1記載の測定装置。
【請求項6】
前記指示操作によって前記電圧測定の実行が指示されている状態において前記電流入力端子と当該測定装置内における予め決められた電気部品との接続を切断し、前記解除部に対する前記解除操作が行われたときに前記電流入力端子と前記電気部品とを接続する接断部を備えている請求項1から5のいずれかに記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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