説明

湯はり装置、室温上昇抑制装置、及びこれら複合システム

【課題】簡易な構造であり、省エネルギー化を図ることができる湯はり装置等を提供する。
【解決手段】本発明の湯はり装置10は、浴槽1へ湯はりを行う湯はり装置である。給水源に連通した給水路11と、この給水路11の下流端に連通した内部水路21を有し、この内部水路21を通過する水を太陽熱によって温める集熱器20と、内部水路21の下流端と浴槽1とを連通する給湯路12とを備えており、内部水路21を1回のみ通過して温められたお湯を浴槽1へ湯はりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湯はり装置、室温上昇抑制装置、及びこれら複合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には従来の湯はり装置が開示されている。この湯はり装置は、太陽熱温水器と全自動給湯機とを備えている。太陽熱温水器は、内部に形成された内部水路を通過する水を太陽熱によって温める集熱器と、集熱器で温められたお湯を貯留する貯湯槽とを有している。全自動給湯機は、貯湯槽に貯留したお湯を導入し、適温のお湯にして浴槽に湯はりする。このように、この湯はり装置は、太陽熱を利用して経済的に浴槽に湯はりすることができる。
【0003】
特許文献2には従来の室温上昇抑制装置が開示されている。この室温上昇抑制装置は、家屋等の屋根部に設置し、外気を流通させる第1空気通路、室内空気を流通させる第2空気通路、及び第1空気通路と第2空気通路とを区分する隔壁を備えている。隔壁は第1空気通路側の面に形成された保水部を有している。第1空気通路は外気を流通させるためのファンを有している。第2空気通路は、室内空気を流通させるためのファンを有している。この室温上昇抑制装置は、保水部に保水した水が第1空気通路を流通する外気によって蒸発する際の蒸発潜熱によって隔壁を冷却する。冷却された隔壁によって第2空気通路内を流通する室内空気を冷却する。これにより、この室温上昇抑制装置は室温の上昇を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−118248号公報
【特許文献2】特開2002−130740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の湯はり装置では、集熱器で温めたお湯を貯留するための貯湯槽と、貯湯槽のお湯を浴槽に湯はりするための全自動給湯機とが必要である。このように、この湯はり装置は他の装置と連動して浴槽に湯はりをするものである。また、この湯はり装置は浴槽に湯はりする際、全自動給湯機を駆動してお湯を適温にするため、電気やガス等のエネルギーが必要となる。
【0006】
また、特許文献2の室温上昇抑制装置では、第1空気通路、第2空気通路、及び隔壁等が設けられており構造が複雑である。また、第1空気通路及び第2空気通路に空気を流通させるためにファンを駆動するため、電気等のエネルギーが必要となる。また、第1空気通路を流通する外気によって保水部に保水した水を蒸発させるため、蒸発効率が低い。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、簡易な構造で省エネルギー化を図ることができる湯はり装置、室温上昇抑制装置、及びこられ複合システムを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の湯はり装置は、浴槽へ湯はりを行う湯はり装置であって、
給水源に連通した給水路と、
この給水路の下流端に連通した内部水路を有し、この内部水路を通過する水を太陽熱によって温める集熱器と、
前記内部水路の下流端と前記浴槽とを連通する給湯路とを備えており、
前記内部水路を1回のみ通過して温められたお湯を前記浴槽へ湯はりすることを特徴とする。
【0009】
この湯はり装置は、貯湯槽を備えず、かつ全自動給湯機を介さずに集熱器で温められたお湯を浴槽へ直接、湯はりすることができる。このように、この湯はり装置は、給水源と浴槽との間に集熱器を接続した簡易な構造で、太陽熱エネルギーの損失を抑え、浴槽へ効率的に湯はりすることができる。
【0010】
また、本発明の湯はり装置は、浴槽へ湯はりを行う湯はり装置であって、
給水源に連通した給水路と、
この給水路の下流端に連通した内部水路を有し、この内部水路を通過する水又はお湯を太陽熱によって温める集熱器と、
前記内部水路の下流端と前記浴槽とを連通する給湯路と、
前記浴槽と前記内部水路の上流端とを連通する循環路と、
前記浴槽内に貯留したお湯を前記循環路、前記内部水路、前記給湯路及び前記浴槽に循環させる第1送水手段とを備えていることを特徴とする。
【0011】
この湯はり装置は浴槽内に貯留したお湯を集熱器との間で循環することによって、太陽熱をより利用した湯はりをすることができる。つまり、この湯はり装置は、浴槽内のお湯を長時間、適温に維持することができる。また、日射量が少ない時でも、浴槽内に貯留したお湯を集熱器との間で循環させることにより、適温のお湯を浴槽に湯はりすることができる。また、この湯はり装置は、集熱器の内部水路の下流端と浴槽とを連通する給湯路の他に、浴槽と内部水路の上流端とを連通する循環路と第1送水手段とを備えれば、浴槽内に貯留したお湯を集熱器との間で循環することができ、簡易な構造で実現することができる。
【0012】
したがって、本発明の湯はり装置は、簡易な構造で省エネルギー化を図ることができる。
【0013】
前記給水路に設けられ、前記内部水路へ供給する水の流量を調整する流量調整手段を備え得る。この場合、この湯はり装置は流量調整手段によって内部水路へ供給する水の流量を調整することができる。このため、この湯はり装置は、集熱器で水を所望の湯温に温め、浴槽へ湯はりすることができる。つまり、この湯はり装置は、夏場等の太陽放射の大きい時に集熱器で温められるお湯が熱すぎたり、冬場等の太陽放射の小さい時に集熱器で温められるお湯が冷たすぎたりしてしまうことを防止し、適温のお湯を浴槽に湯はりすることができる。
【0014】
前記内部水路から前記給湯路に流出する湯温を検出する湯温検出器を備え、この湯温検出器が検出した湯温に応じて前記流量調整手段を調整し、前記内部流路へ供給する水の流量を調整し得る。この場合、湯温検出器で検出した湯温が高いと流量調整手段が内部水路へ供給する水の流量を多くして給湯路に流出する湯温を下げ、湯温検出器で検出した湯温が低いと流量調整手段が内部水路へ供給する水の流量を少なくして給湯路に流出する湯温を上げることができる。
【0015】
前記内部水路から前記給湯路に流出する湯温を検出する水温検出器を備え、前記給水源は送水流量を変更することができる第2送水手段によって構成されており、前記湯温検出器が検出した湯温に応じて前記第2送水手段の送水流量を調整し、前記内部水路へ供給する水の流量を調整し得る。この場合、湯温検出器で検出した湯温が高いと第2送水手段の送水流量を多くして給湯路に流出する湯温を下げ、湯温検出器で検出した湯温が低いと第2送水手段の送水流量を少なくして給湯路に流出する湯温を上げることができる。
【0016】
本発明の室温上昇抑制装置は、居室の室温上昇を抑制する室温上昇抑制装置であって、
屋上に設置し、上面を大気に開放した水槽と、
この水槽と浴槽の残り湯を吸込む吸込み口とを連通する揚水路と、
この揚水路に設けた揚水手段とを備えており、
前記揚水手段を駆動して、前記浴槽の残り湯を前記水槽に揚水して貯留し、貯留した前記残り湯が蒸発する際の蒸発潜熱を大気に放出することにより、前記居室の室温上昇を抑制することを特徴とする。
【0017】
この室温上昇抑制装置は、屋上に設置する水槽と、浴槽の残り湯をこの水槽に貯留するための揚水路及び揚水手段とを備える簡易な構造で居室の室温上昇を抑制することができる。また、この室温上昇抑制装置は、屋上に設置した水槽の上面を大気に開放しているため、外気風に暴露されることで蒸発効率を高く維持することができる。このため、太陽熱による居室の室温上昇を効率的に抑制することができる。特に、夏季においては、日射熱が主として屋根から居室に入るため、熱の侵入経路の最上流で遮熱・放熱することでより効果的に室温の上昇を抑制することができる。また、この室温上昇抑制装置は居室の室温上昇を抑制するために浴槽の残り湯を有効的に利用することができる。
【0018】
したがって、本発明の室温上昇抑制装置は、簡易な構造であり、省エネルギー化及び節水化を図ることができる。
【0019】
前記水槽はオーバーフロー部を有し得る。この場合、オーバーフロー部から水槽に滞留する水を容易に排水することができる。このため、水槽に貯留する水が設定水量以上にならないため、屋上に過剰な重量がかかることを防止することができる。
【0020】
前記水槽は最大貯水時の水深が3cm〜6cmになるように前記オーバーフロー部が形成され得る。発明者らは実験により上面を大気に開放した水槽において、太陽熱によって一日で蒸発する水の水深が3cm〜6cmであることを知得した。このため、水槽の最大貯水時の水深を3cm〜6cmにすることにより、水槽に貯留した水を一日で蒸発させることができるため、長時間、水槽に水が貯留することを防止することができる。これにより、水槽に貯留した水にボウフラや藻等が発生する等の衛生面での問題の発生を防止することができる。
【0021】
前記オーバーフロー部は、前記水槽に連結してこの水槽に滞留する水を排水する排水管と、この排水管と前記水槽との接続部分に設けた越流堰とから構成され得る。この場合、越流堰の高さで水槽の最大貯水時の水深を容易に設定することができる。
【0022】
本発明の湯はり及び室温上昇抑制複合システムは、前記湯はり装置を利用して浴槽に湯はりを行い、この浴槽の残り湯を吸込む吸込み口を前記室温上昇抑制装置の前記揚水路に連通していることを特徴とする。
【0023】
この湯はり及び室温上昇抑制複合システムは、上述したように簡易な構造であり、省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1の湯はり及び室温上昇抑制複合システムを示す概略図である。
【図2】実施例2の湯はり及び室温上昇抑制複合システムを示す概略図である。
【図3】実施例3の湯はり及び室温上昇抑制複合システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の湯はり装置、室温上昇抑制装置、及びこれら複合システムを具体化した実施例1〜3の図面を参照しつつ説明する。
【0026】
<実施例1>
実施例1の湯はり及び室温上昇抑制複合システムは、図1に示すように、湯はり装置10と、室温上昇抑制装置50とを備えている。
【0027】
湯はり装置10は、給水路11と、集熱器20と、給湯路12とを備えている。給水路11は給水源である図示しない水道に上流端を連通している。また、給水路11は、開閉弁40と、流量調整手段である流量調整弁14とが設けられている。開閉弁40は制御装置Cからの開閉信号により給水路11を開閉することができる。流量調整弁14は、開閉弁40の下流側に設けられ、制御装置Cからの制御信号により給水路11を流れる水の流量を変更することができる。
【0028】
集熱器20は給水路11の下流端に連通した内部水路21を有している。また、集熱器20は内部水路21を通過する水を太陽熱によって温めることができる。集熱器20は建物のベランダVに配置されている。集熱器20の受光面積は3m2〜4m2であればよいため、ベランダVに配置することができる。
【0029】
給湯路12は内部水路11の下流端と浴槽1とを連通している。給湯路12は湯温検出器15が設けられている。湯温検出器15は、内部水路11から給湯路12に流出する湯温を検出し、その検出信号を制御装置Cに送ることができる。
【0030】
浴槽1は外側面を保温材2によって覆われた保温機能を有するものである。このため、浴槽1に湯はりされたお湯の湯温の低下を抑制することができる。浴槽1は水位センサー5を有している。水位センサー5は浴槽1の水位を検出し、その検出信号は制御装置Cに送ることができる。
【0031】
次に、このように構成された湯はり装置10の湯はり動作を説明する。
【0032】
湯はり装置10は、所定の時刻(例えば、正午)になると、制御装置Cが開閉弁40を開弁し、湯はりを開始する。給水源の給水圧(水道の水道圧)によって、水が給水路11を流れ、集熱器20の内部水路21に流入する。内部水路21に流入した水は集熱器20によって太陽熱に温められながら下流側へ流れる。湯温検出器15が制御装置Cに送る検出信号に基づいて、制御装置Cから流量調整弁14に制御信号が送られる。つまり、制御装置Cは、内部水路21から給湯路12に流出する湯温が設定温度より低ければ、流量調整弁14が給水路11を流れる水の流量(内部水路21へ供給する水の流量)を少なくし、内部水路11から給湯路12に流出する湯温が設定温度より高ければ、流量調整弁14が給水路11を流れる水の流量(内部水路21へ供給する水の流量)を多くするように制御する。このように、この湯はり装置10は、湯温検出器15で検出した湯温に応じて内部水路11へ供給する水の流量を調整することができるため、より確実に設定温度のお湯を浴槽1へ湯はりすることができる。内部水路11で温められたお湯は給湯路12を流れて浴槽1に流入し、湯はりが行われる。
【0033】
ここで、仮に日射量を600W/m2とし、集熱器20の集熱効率を70%とすると、浴槽1へ湯はりする湯量160Lを30°C沸き上げるには、集熱器20の受光面積が3m2の場合には、約4.4時間を要し、集熱器20の受光面積が4m2の場合には、約3.3時間を要することになる。
【0034】
制御装置Cは、浴槽1内のお湯の水位が設定水位になると、浴槽1の水位センサー5の検出信号を受けて開閉弁40を閉弁し、湯はりを終了する。
【0035】
このように、湯はり装置10は、貯湯槽や全自動給湯機等を備えず、集熱器20の内部水路11を1回のみ通過して温められたお湯を浴槽1へ直接、湯はりする。このため、湯はり装置10は、給水源と浴槽1との間に集熱器20を接続した簡易な構造で、太陽熱以外(化石由来)のエネルギーの消費を抑え、浴槽1へ効率的に湯はりすることができる。また、入浴時に浴槽1に貯留したお湯を追い炊き装置等で加温する場合でも、浴槽1に太陽熱によって温められたお湯が湯はりされているため、そのエネルギーは少なくて済む。
【0036】
したがって、実施例1の湯はり装置は、簡易な構造で省エネルギー化を図ることができる。
【0037】
室温上昇抑制装置50は、水槽51と、揚水路52と、揚水手段である第3ポンプ60とを備えている。水槽51は、屋上Rの居室Lの上方を覆うように設置し、上面を大気に開放している。また、水槽51はオーバーフロー部70を有している。オーバーフロー部70は水槽51に連結して水槽51に滞留する水を排水する排水管71と、この排水管71と水槽51との接続部分に設けた越流堰72とから構成されている。越流堰72は水槽51の最大貯水時の水深が3cm〜6cmになるように形成されている。
【0038】
このように、水槽51がオーバーフロー部70を有することにより、水槽51に貯留する水が設定水量以上にならないため、屋上Rに過剰な重量がかかることを防止することができる。また、水槽51の最大貯水時の水深を3cm〜6cmとしたことにより、水槽51に貯留した水は一日で太陽熱によって蒸発させることができるため、長時間、水槽51に水が滞留することを防止することができる。これにより、水槽51に貯留した水にボウフラや藻等が発生することを防止することができる。また、越流堰72により、水槽51の最大貯水時の水深を容易に設定することができる。
【0039】
揚水路52は水槽51と浴槽1の残り湯を吸い込む吸込み口4とを連通している。吸い込み口4は浴槽1の下面に設けられている。第3ポンプ60は揚水路52に設けられている。第3ポンプ60は制御装置Cからの制御信号により設定時間、駆動して浴槽1の残り湯を水槽51へ供給する。
【0040】
次に、このように構成された室温上昇抑制装置50の室温の上昇を抑制する動作を説明する。
【0041】
室温上昇抑制装置50は、所定の時刻(例えば、午前9時)になると、制御装置Cが第3ポンプ60を設定時間、駆動する。これによって、揚水路52を介して浴槽1の残り湯が水槽51へ揚水される。この際、仮に水槽51内に雨水等が残留していたとしても、オーバーフロー部70から余剰水は排水されるため、水槽51に貯留する水が設定水量以上にならない。
【0042】
水槽51に貯留した残り湯は太陽熱によって蒸発する。この際の蒸発潜熱を大気に放出することにより、居室L内が太陽熱によって温められず、居室L内の室温上昇を抑制することができる。また、水槽51が上面を大気に開放しているため、蒸発効率を高く維持することができる。このため、この室温上昇抑制装置50は太陽熱による居室L内の室温上昇を効率的に抑制することができる。また、この室温上昇抑制装置50は居室Lの室温上昇を抑制するために浴槽1の残り湯を有効に利用することができる。
【0043】
したがって、実施例1の室温上昇抑制装置50は、簡易な構造であり、省エネルギー及び水資源の有効利用を図ることができる。
【0044】
このように、湯はり装置10及び室温上昇抑制装置50を備えた複合システムは、浴槽1に貯留したお湯の加温、及び居室Lの冷房に要するエネルギーを少なくすることができる。特に、勤労単身者が居住する住居においては、夏季における帰宅後の浴槽1の加温と居室の冷房に要するエネルギーの消費が大きな割合を占めている、このため、単身者用住居に、この湯はり装置10及び室温上昇抑制装置50を備えた複合システムを備えることにより、省エネルギー化の効果を大きくすることができる。
【0045】
<実施例2>
実施例2の湯はり及び室温上昇抑制複合システムは、図2に示すように、湯はり装置110が浴槽1内に貯留したお湯を集熱器20との間で循環するようにした点で実施例1と相違する。他の構成は実施例1と同様であり、同一の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0046】
湯はり装置110は、循環路13と、第1送水手段である第1ポンプ30とを備えている。循環路13は、上流端を浴槽1の循環口3に連通し、下流端を給水路11の流量調整弁14より下流側に連通している。このように、循環路13は給水路11を介して集熱器20の内部水路21の上流端に連通している。
【0047】
第1ポンプ30は送水流量を変更することができるものである。このため、第1ポンプ30は、制御装置Cの制御信号により、浴槽1内の貯留したお湯を集熱器20の内部水路21に送水する流量を変更することができる。また、第1ポンプ30は、集熱器20がベランダVに配置され、浴槽1との高低差が少ないため、浴槽1から集熱器20の内部水路21に送水する際の駆動エネルギーは少なくて済む。このため、第1ポンプ30は消費電力の少ない小型のものにすることができる。
【0048】
次に、このように構成された湯はり装置110の湯はり動作を説明する。
【0049】
湯はり装置110は、所定の時刻(例えば、正午)になると、制御装置Cが開閉弁40を開弁し、湯はりを開始する。湯はり装置110は、浴槽1内のお湯が設定水位になるまでは実施例1と同様の動作を行う。つまり、制御装置Cは、浴槽1内のお湯の水位が設定水位になると、浴槽1の水位センサー5の検出信号を受けて開閉弁40を閉弁する。
【0050】
浴槽1に設けられた湯温センサー6が制御装置Cに送る検出信号に基づいて、制御装置Cから第1ポンプ30に制御信号が送られる。つまり、制御装置Cは、浴槽1内の湯温が設定温度以下である場合、第1ポンプ30の駆動を開始し、浴槽1内の湯温が設定温度以上である場合、第1ポンプ30の駆動を停止する。また、第1ポンプ30は、給湯路12にも設けられた湯温検出器15によっても制御される。つまり、制御装置Cは、内部水路21から給湯路12に流出する湯温が設定温度より低ければ、第1ポンプ30の送水流量を少なくし、内部水路11から給湯路12に流出する湯温が設定温度より高ければ、第1ポンプ30の送水流量を多くするように制御する。
【0051】
この湯はり装置110は、浴槽1内に貯留したお湯を集熱器20との間で循環することによって、太陽熱を充分利用した湯はりをすることができる。つまり、この湯はり装置110は、浴槽1内のお湯を長時間、適温に維持することができる。また、日射量が少ない時でも、浴槽1内に貯留したお湯を集熱器20との間で循環させることにより、適温のお湯を浴槽に湯はりすることができる。このように、この湯はり装置110は電気やガス等のエネルギーを利用せずに適温のお湯を浴槽に湯はりすることができる。また、この湯はり装置110は、集熱器20の内部水路21の下流端と浴槽1とを連通する給湯路の他に、浴槽1と内部水路21との上流端とを連通する循環路13と第1ポンプ30とを備えれば、浴槽1内に貯留したお湯を集熱器との間で循環することができ、簡易な構造で実現することができる。
【0052】
したがって、実施例2の湯はり装置も、簡易な構造であり、省エネルギー化を図ることができる。
【0053】
<実施例3>
実施例3の湯はり及び室温上昇抑制複合システムは、図3に示すように、湯はり装置210の給水源が送水流量を変更することができる第2送水手段である第2ポンプ40である点で実施例2と相違する。他の構成は、実施例2と同様であり、同一の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0054】
この湯はり装置210は、給水路11の循環路13の下流端が連通している部分よりも上流側に第2ポンプ40を設けている。第2ポンプ40は、制御装置Cからの制御信号により内部水路21に送水する流量を変更することができる。
【0055】
次に、このように構成された湯はり装置210の湯はり動作を説明する。
【0056】
湯はり装置210は、所定の時刻(例えば、正午)になると、制御装置Cが第2ポンプ40の駆動し、湯はりを開始する。第2ポンプ40の送水圧によって、水が給水路11を流れ、集熱器20の内部水路21に流入する。内部水路21に流入した水は集熱器20によって太陽熱に温められながら下流側へ流れる。湯温検出器15が制御装置Cに送る検出信号に基づいて、制御装置Cから第2ポンプ40に制御信号が送られる。つまり、制御装置Cは、内部水路21から給湯路12に流出する湯温が設定温度より低ければ、第2ポンプ40が内部水路21へ送水する水の流量を少なくし、内部水路11から給湯路12に流出する湯温が設定温度より高ければ、第2ポンプ40が内部水路21へ送水する水の流量を多くするように制御する。このように、この湯はり装置210は、湯温検出器15で検出した湯温に応じて内部水路11へ送水する水の流量を調整することができるため、より確実に適温のお湯を浴槽1へ湯はりすることができる。内部水路11で温められたお湯は給湯路12を流れて浴槽1に流入し、湯はりが行われる。制御装置Cは、浴槽1内のお湯の水位が設定水位になると、浴槽1の水位センサー5の検出信号を受けてポンプ40の駆動を停止する。
【0057】
このように、実施例3の湯はり装置も、簡易な構造であり、省エネルギー化を図ることができる。
【0058】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1〜3に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1〜3では、制御装置からの制御信号により流量を変更させることができる流量調整弁を給水路に設けたが、特定の流量に固定されたものであってもよい。この場合、浴槽に湯はりされるお湯が高温にならないよう、給水路を流れる流量が多めになるように流量調整弁を選択するとよい。
(2)実施例1〜3では、内部水路から給湯路に流出する湯温を検出する湯温検出器を備えたが、湯温検出器を備えなくてもよい。
(3)実施例1〜3では、湯はり装置と室温上昇抑制装置との複合システムを採用したが、湯はり装置、又は室温上昇抑制装置のどちらか一方のみを採用してもよい。
(4)実施例3では、送水流量を変更することができる第2ポンプによって、内部水路へ水を供給したが、送水流量を変更することができないポンプであってもよい。この場合、ポンプの下流側に流量調整手段を設けて、内部水路へ供給する水の流量を調整するとよい。
(5)実施例1〜3では、太陽熱のみによって温めたお湯を浴槽に湯はりしたが、湯はりしたお湯の湯温が下がった際に追い炊きする追い炊き装置を設けてもよい。この場合でも、浴槽に湯はりされたお湯は、太陽熱によって温められているため、追い炊きに要するエネルギーを少なくすることができる。
(6)実施例1〜3では、湯はり装置は外側面を保温材によって覆われた保温機能の高い浴槽に対して湯はりしたが、保温機能が低い浴槽に対して湯はりしてもよい。
(7)実施例1〜3では、外側面を保温材によって覆った浴槽を採用したが、外側面に真空層を形成する等、他の構成によって浴槽に保温機能を付与するものであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…浴槽
4…吸込み口
10、110、210…湯はり装置
11…給水路
12…給湯路
13…循環路
14…流量調整弁(流量調整手段)
15…湯温検出器
20…集熱器
21…内部水路
30…第1ポンプ(第1送水手段)
40…第2ポンプ(第2送水手段)
50…室温上昇抑制装置
51…水槽
52…揚水路
60…第3ポンプ(揚水手段)
70…オーバーフロー部
71…排水管
72…越流堰
L…居室
R…屋上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽へ湯はりを行う湯はり装置であって、
給水源に連通した給水路と、
この給水路の下流端に連通した内部水路を有し、この内部水路を通過する水を太陽熱によって温める集熱器と、
前記内部水路の下流端と前記浴槽とを連通する給湯路とを備えており、
前記内部水路を1回のみ通過して温められたお湯を前記浴槽へ湯はりすることを特徴とする湯はり装置。
【請求項2】
浴槽へ湯はりを行う湯はり装置であって、
給水源に連通した給水路と、
この給水路の下流端に連通した内部水路を有し、この内部水路を通過する水又はお湯を太陽熱によって温める集熱器と、
前記内部水路の下流端と前記浴槽とを連通する給湯路と、
前記浴槽と前記内部水路の上流端とを連通する循環路と、
前記浴槽内に貯留したお湯を前記循環路、前記内部水路、前記給湯路及び前記浴槽に循環させる第1送水手段とを備えていることを特徴とする湯はり装置。
【請求項3】
前記給水路に設けられ、前記内部水路へ供給する水の流量を調整する流量調整手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の湯はり装置。
【請求項4】
前記内部水路から前記給湯路に流出する湯温を検出する湯温検出器を備え、この湯温検出器が検出した湯温に応じて前記流量調整手段を調整し、前記内部流路へ供給する水の流量を調整することを特徴とする請求項3記載の湯はり装置。
【請求項5】
前記内部水路から前記給湯路に流出する湯温を検出する湯温検出器を備え、前記給水源は送水流量を変更することができる第2送水手段によって構成されており、前記水温検出器が検出した水温に応じて前記第2送水手段の送水流量を調整し、前記内部水路へ供給する水の流量を調整することを特徴とする請求項1又は2記載の湯はり装置。
【請求項6】
居室の室温上昇を抑制する室温上昇抑制装置であって、
屋上に設置し、上面を大気に開放した水槽と、
この水槽と浴槽の残り湯を吸込む吸込み口とを連通する揚水路と、
この揚水路に設けた揚水手段とを備えており、
前記揚水手段を駆動して、前記浴槽の残り湯を前記水槽に揚水して貯留し、貯留した前記残り湯が蒸発する際の蒸発潜熱を大気に放出することにより、前記居室の室温上昇を抑制することを特徴とする室温上昇抑制装置。
【請求項7】
前記水槽はオーバーフロー部を有していることを特徴とする請求項6記載に室温上昇抑制装置。
【請求項8】
前記水槽は最大貯水時の水深が3cm〜6cmになるように前記オーバーフロー部が形成されていることを特徴とする請求項7記載の室温上昇抑制装置。
【請求項9】
前記オーバーフロー部は、前記水槽に連結してこの水槽に滞留する水を排水する排水管と、この排水管と前記水槽との接続部分に設けた越流堰とから構成されていることを特徴とする請求項7または8記載の室温上昇抑制装置。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の湯はり装置を利用して浴槽に湯はりを行い、この浴槽の残り湯を吸込む吸込み口を前記請求項6乃至9のいずれか1項記載の室温上昇抑制装置の前記揚水路に連通していることを特徴とする湯はり及び室温上昇抑制複合システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−159207(P2012−159207A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17060(P2011−17060)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(599002043)学校法人 名城大学 (142)