説明

湯灌槽

【課題】湯灌に使用した湯水の排出性向上を図る。
【解決手段】遺体を洗い清める際に用いる湯灌槽1であって、略長方形の底壁2と、底壁2の周囲に立設された周壁3とを備え、底壁2の後方側に排水口4が設けられている。底壁2の幅方向内側領域には、幅方向中央部から幅方向外側に向かって徐々に低位に変位する凸曲面状の膨出部6が形成され、底壁2の幅方向両端部には、膨出部6よりも低位に位置した排水溝7が形成されている。膨出部6および排水溝7の双方は、前方側から後方側に向かって徐々に低位に変位したテーパ状をなして長手方向に沿って延び、かつ排水口4よりも前方側で終端している。底壁2のうち、膨出部6および排水溝7の終端部の後方側に隣接した領域にすり鉢状の凹部8を設け、この凹部8の底部に排水口4を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯灌の儀に用いられる湯灌槽に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、葬儀においては、遺体を納棺するのに先立って、遺体を洗い清めるための儀式(湯灌の儀)が執り行われる場合がある。湯灌の儀は、例えば、次のような手順で行われる。まず、網目状の担架(表裏に開口した無数の穴を有する担架)に遺体を安置した後、この担架を、排水口が設けられた略長方形の底壁と、底壁の周囲に立設された周壁とを備えた湯灌槽の頂部に懸架・載置する。そして、この状態で、遺体に湯水を浴びせ、遺体全体を洗い清める。
【0003】
ところで、湯灌に使用した湯水、すなわち遺体を洗い清めて湯灌槽内に流れ落ちる湯水(以下、これを「湯灌水」とも称す)は、遺体に付着していた汚垢、排泄物、毛髪および繊維屑等、固体状の汚物を多量に含む。そのため、何ら対策を講じなければ、湯灌槽の底壁に設けた排水口から湯灌水が円滑に排出されず、湯灌の儀を円滑に行い得ないという問題がある。また、湯灌槽の底壁上に固体状の汚物が残留し、湯灌の儀終了後の清掃作業に多大な手間を要するという問題もある。
【0004】
このような問題点を緩和もしくは解消すべく、以下に示す特許文献1のような湯灌槽が提案されている。詳しくは、略長方形の底壁と、底壁の周囲に立設された周壁と、底壁の後方側に設けられた排水口とを有する湯灌槽であって、底壁の幅方向中央部に、長手方向に延びかつ前方よりも後方が低くなるように傾斜した排水溝が形成されており、この排水溝の後方端部に排水口が設けられたものである。さらに、排水溝は、排水口に近づくにつれて徐々に幅狭になるように形成されている。このような構成によれば、固体状の汚物を含む湯灌水が排水口に効率良く集中するため、湯灌水が湯灌槽から効率良く排出され、上述の問題が緩和もしくは解消されるものと期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3658214号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された湯灌槽にも改良の余地がある。すなわち、遺体に浴びせられた湯水の大半は、遺体に沿うようにして、底壁の幅方向外側領域(幅方向両端部)に流れ落ちるが、排水溝を底壁の幅方向中央部に設けた特許文献1の湯灌槽では、底壁上に流れ落ちた湯灌水が、排水溝、ひいては排水孔に到達し難く、依然として排水効率に難がある。また、湯灌水に含まれる固体状の汚物が排水溝内で残留・堆積した場合、排水溝が底壁の幅方向中央部に設けられた特許文献1の湯灌槽では、湯灌の儀終了後の清掃作業に手間を要するという問題もある。
【0007】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、湯灌に使用した湯水の排出性向上、および湯灌の儀終了後に執り行われる清掃作業の作業効率向上を図り得る湯灌槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために創案された本発明は、遺体を洗い清める際に用いる湯灌槽であって、略長方形の底壁と、底壁の周囲に立設された周壁とを備え、底壁の長手方向一端側に排水口が設けられたものにおいて、底壁は、その幅方向内側領域に、底壁の幅方向中央部から幅方向外側に向かって徐々に低位に変位する凸曲面状の膨出部を有すると共に、その幅方向両端部に、膨出部よりも低位に位置した排水溝を有し、膨出部および排水溝の双方は、長手方向他端側から長手方向一端側に向かって徐々に低位に変位したテーパ状をなして底壁の長手方向に沿って延び、かつ排水口よりも長手方向他端側で終端し、底壁のうち、膨出部および排水溝の終端部の長手方向一端側に隣接した領域にすり鉢状の凹部を設け、この凹部の底部に排水口を設けたことを特徴とする。なお、本発明でいう「長手方向一端側」および「長手方向他端側」とは、それぞれ、上記の特許文献1でいう後方側および前方側に対応し、主に遺体の足先および頭部が配置される側を意味する。
【0009】
上記のように、本発明に係る湯灌槽では、底壁の幅方向内側領域に凸曲面状の膨出部が設けられると共に、底壁の幅方向両端部に膨出部よりも低位に位置した排水溝が設けられる。すなわち、底壁のうち、湯灌に使用した湯水(遺体を洗い清めた湯水。以下、これを簡略化して「湯灌水」とも称す。)の大半が流れ落ちる幅方向両端部に排水溝が設けられることから、従来の湯灌槽に比べて排水効率を向上することができる。底壁の幅方向内側領域に湯灌水が流れ落ちても、この湯灌水は、凸曲面状の膨出部に沿うようにして排水溝に向かって円滑に流動する。仮に、排水溝内に、湯灌水に含まれる固体状の汚物が残留・堆積等しても、底壁の幅方向両端部に排水溝が設けられている分、湯灌の儀終了後の清掃作業を効率的に行い得る。また、膨出部および排水溝の双方は、長手方向他端側から排水口が設けられた長手方向一端側に向かって徐々に低位に変位したテーパ状をなして底壁の長手方向に沿って延び、かつ、排水口よりも長手方向他端側で終端しており、底壁のうち、膨出部および排水溝の終端部に隣接した領域をすり鉢状の凹部に形成したことから、湯灌水は、最終的に凹部に流れ込み、凹部の底部に設けた排水口を介して湯灌槽外に順次排出される。以上のことから、本発明によれば、湯灌に使用した湯水の排出性向上、および湯灌の儀終了後に執り行われる清掃作業の効率化が図られる。
【0010】
上記構成の湯灌槽において、膨出部および排水溝の双方は、底壁の長手方向に沿って同一幅に形成することができる。このようにすれば、長手方向の各部における湯灌水の流動性に差が生じ難くなるので、湯灌水の流動性が良好に維持される。
【0011】
また、上記構成の湯灌槽において、底壁の裏面には、伸縮自在の脚部を取付けても良い。このようにすれば、脚部の長さを適宜調整することによって、湯灌槽の姿勢を任意に設定することができる。そのため、例えば当該湯灌槽を平坦でない場所で使用する場合においても湯灌水の排出性を担保することができる。脚部は、例えば底壁裏面の四隅近傍に取付けることができるが、湯灌槽の姿勢を適切に保持することができれば特に限定されず、底壁裏面の3箇所又は5箇所以上に取付けることもできる。
【0012】
また、上記構成の湯灌槽において、底壁の長手方向所定位置に幅方向に延びた隔壁を立設することにより、遺体の胴部以下を洗い清めた湯水が流れ落ちる主槽と、遺体の頭部を洗い清めた湯水が流れ落ちる洗髪槽とに区画することができる。そして、上記の主槽を画成する底壁に上記の排水口、膨出部および排水溝を設ける一方、上記の洗髪槽を画成する底壁には、上記の排水口とは別個の排水口を設けることができる。洗髪槽を画成する底壁に上記の排水口とは別個の排水口を設ければ、湯灌水に含まれる固体状の汚物のうち多くの部分を占める頭髪の移動(流動)距離を短くすることができる。そのため、湯灌水の排出効率を一層向上することができる。なお、洗髪槽は、例えば湯水の貯留槽として用いることもでき、貯留した湯水に入浴剤等を投入しておけば臭気を緩和する上でも有効となる。
【発明の効果】
【0013】
以上に示すように、本発明によれば、この種の湯灌槽において、湯灌に使用した湯水の排出性向上、および湯灌の儀終了後に執り行われる清掃作業の作業効率向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る湯灌槽の全体構造を示す図であって、(a)図は同平面図、(b)図は同側面図、(c)図は同正面図である。
【図2】図1(a)中のA−A線矢視断面図である。
【図3】(a)図は図1(a)中のB−B線矢視断面図、(b)図は図1(a)中のC−C線矢視断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る湯灌槽の全体構造を示す図であって、(a)図は同平面図、(b)図は同側面図である。
【図5】図4(a)中のA−A線矢視断面図である。
【図6】(a)図は図4(a)中のB−B線矢視断面図、(b)図は図4(a)中のC−C線矢視断面図、(c)図は図4(a)中のD−D線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1(a)〜(c)に、本発明の第1実施形態に係る湯灌槽の全体構造を示す。同図に示す湯灌槽1は、排水口4が設けられた略長方形状(角丸長方形状)の底壁2と、底壁2の周囲に立設された周壁3とで空間部が画成されたものである。周壁3は、底壁2の長手方向両端部に立設された前壁3aおよび後壁3bと、底壁2の幅方向(長手方向と直交する方向)両端部に立設された一対の側壁3c,3cとで構成される。前壁3a、後壁3bおよび一対の側壁3c,3cは、何れも、上方から下方に向かって徐々に内側に傾斜したテーパ状に形成され、かつその下端部は滑らかな曲面を介して底壁2に繋がっている。また、各側壁3cは、滑らかな曲面を介して前壁3aおよび後壁3bと繋がっている。このような構成を有する周壁3と底壁2とは、例えばFRP(繊維強化プラスチック)で一体成形されている。なお、以下の説明においては、前壁3aが設けられ、遺体の頭部が安置される側を「前方側」といい、後壁3bが設けられ、遺体の足先が安置される側を「後方側」という。「後方側」および「前方側」は、それぞれ、本発明でいう長手方向一端側および長手方向他端側に対応する。
【0017】
図3(a)に示すように、底壁2の幅方向内側領域には、底壁2の幅方向中央部から幅方向外側に向かって徐々に低位に変位した凸曲面状の膨出部6が設けられている。この膨出部6は、図1(a)(b)に示すように、底壁2の前方端を始点として長手方向に沿って延びており、底壁2の前方端から所定寸法後方側に離隔した位置にて終端している。また、底壁2の幅方向両端部(幅方向外側領域)には、膨出部6よりも低位に位置するようにして底壁2の長手方向に沿って延びた排水溝7,7が設けられている。各排水溝7は、膨出部6と側壁3cとの間に形成され、膨出部6と同様に、底壁2の前方端を始点とし、底壁2の前方端から所定寸法後方側に離隔した位置にて終端している。膨出部6および排水溝7は、図3(a)に示すように、長手方向と直交する方向の断面において、滑らかに繋がった連続曲面で構成されている。
【0018】
図1(b)および図2に示すように、膨出部6および排水溝7の双方は、前方側から後方側に向かって徐々に低位に変位したテーパ状をなし、かつ、幅寸法が長手方向に沿って(全長に亘って)同一値に形成されている。なお、膨出部6の後方端部6aの傾斜角は、膨出部6のその他の領域の傾斜角よりも大きくなっている。
【0019】
底壁2のうち、膨出部6および排水溝7の終端部(後方端部)6a,7aの後方側に隣接した領域、より詳しくは、膨出部6および排水溝7の終端部6a,7aと後壁3bとの間に介在する後方端部領域にはすり鉢状の凹部8が凹設されており、この凹部8の底部(最低位)に、底壁2の表裏面に開口した排水口4が設けられている。底壁2の後方端部領域には、前方端部が膨出部6および排水溝7の終端部6a,7aに繋がり、前方側から後方側に向かって徐々に低位に変位した第1テーパ部2aと、後方側から前方側に向かって徐々に低位に変位した第2テーパ部2bと、幅方向外側から幅方向内側に向かって徐々に低位に変位した左右一対の第3テーパ部2c,2cとが設けられており、これらテーパ部2a〜2cですり鉢状の凹部8が構成されると共に、テーパ部2a〜2cの下端部で排水口4が画成される[図2及び図3(b)を参照]。
【0020】
底壁2の裏面には、伸縮自在の脚部5が取付けられている。本実施形態では、裏面2の四隅近傍の4箇所に脚部5を取付けている。このように、伸縮自在の脚部5を取付けておけば、各脚部5の長さを適宜調整することによって湯灌槽1の姿勢を任意に設定することができる。そのため、例えば当該湯灌槽1を平坦でない場所で使用する場合においても、湯灌槽1の姿勢を適切に保持し、湯灌水の排出性を担保することができる。なお、伸縮自在の脚部5の取付け態様はこれに限定されず、底壁2裏面の3箇所又は5箇所以上に取付けることもできる。
【0021】
湯灌槽1の底壁2に設けた排水口4には排水管(図示せず)が接続可能となっており、排水口4から湯灌槽1外に排出される湯灌水は、排水管を介して回収タンク(図示せず)に回収されるようになっている。また、周壁3の外壁面には、給湯用ホースやシャワー等(何れも図示せず)を取付けるための取付け部を設けても良い。
【0022】
湯灌槽1は主に以上の構成を具備し、湯灌の儀は、例えば次のようなて手順で執り行われる。まず、各脚部5の長さを適宜調整して、湯灌槽1を適切な姿勢で設置する。次いで、遺体を、図示外の網目状の担架に安置した後、当該担架を湯灌槽1の頂部に懸架する。そして、この状態で、図示しない貯湯タンクから供給される湯水を遺体に浴びせ、遺体全体を洗い清める。
【0023】
以上に示すように、本発明に係る湯灌槽1においては、底壁2の幅方向内側領域に凸曲面状の膨出部6が設けられると共に、底壁2の幅方向両端部に膨出部6よりも低位に位置した排水溝7が設けられる。すなわち、底壁2のうち、湯灌水の大半が流れ落ちる幅方向両端部に排水溝7,7が設けられることから、従来の湯灌槽に比べて排水効率を向上することができる。湯灌水は、底壁2の幅方向内側領域にも流れ落ちるが、底壁2の幅方向内側領域には、凸曲面状の膨出部6が設けられていることから、膨出部6に流れ落ちた湯灌水は排水溝7に向かって円滑に流動する。仮に、排水溝7内に、湯灌水に含まれる固体状の汚物が残留・堆積等しても、底壁2の幅方向両端部に排水溝7が設けられている分、湯灌の儀終了後に執り行われる清掃作業を、従来の湯灌槽に比べて効率的に行い得る。特に、膨出部6および排水溝7を、図3(a)に示すように、滑らかに繋がった連続曲面で構成すれば、排水溝7のうち、膨出部6および側壁3cとの境界部に異物が残留し難く、仮に残留しても清掃作業を容易に行い得る。
【0024】
また、膨出部6および排水溝7の双方は、前方側から後方側に向かって徐々に低位に変位したテーパ状をなして底壁2の長手方向に沿って延びることから、底壁2上に流れ落ちた湯灌水は、底壁2の後方側、すなわち排水口4に向かっても円滑に流動する。さらに、膨出部6および排水溝7の双方は排水口4よりも前方側で終端し、底壁2のうち、膨出部6および排水溝7の後方端部6a,7aの後方側に隣接した領域にはすり鉢状の凹部8が設けられていることから、湯灌水は、最終的に凹部8に流れ込み、凹部8の底部に設けた排水口4を介して湯灌槽1外に順次排出される[以上、湯灌水の流れについては、図1(a)および図3(a)(b)中に示す先端黒塗り矢印を参照]。なお、凹部8はすり鉢状に形成されており、十分な容積を確保し得ることから、凹部8に流れ込んだ湯灌水が、前方側(排水溝7側)に逆流するような事態も可及的に防止される。
【0025】
底壁2上に流れ落ちる湯灌水は、遺体に付着していた汚垢、排泄物、毛髪および繊維屑等、固体状の汚物を多量に含むが、本発明に係る湯灌槽1であれば、上記したように、底壁2上に流れ落ちた湯灌水が排水口4に向かって円滑に流動する。そのため、底壁2上に、湯灌水に含まれる固体状の汚物が残留・堆積し難くなる。従って、湯灌作業、さらには湯灌の儀終了後に執り行われる清掃作業の効率化が図られる。
【0026】
図4〜図6に、本発明の第2実施形態に係る湯灌槽10を示す。なお、当該湯灌槽10において、上述した湯灌槽1に準ずる構成には共通の参照番号を付して重複説明を省略することとし、異なる構成についてのみ詳述する。
【0027】
図4〜図6に示す湯灌槽10が、上述した本発明の第1実施形態に係る湯灌槽1と異なる主な点は、底壁2の長手方向の所定位置に幅方向に延びた隔壁12を立設することにより、当該湯灌槽10を、主に遺体の胴部以下を洗い清めた湯水が流れ落ちる主槽11と、主に遺体の頭部を洗い清めた湯水が流れ落ちる洗髪槽13とに区画した点にある。
【0028】
この湯灌槽10において、底壁2のうち主槽11を画成する領域には、上記した膨出部6、排水溝7およびすり鉢状の凹部8が設けられている。従って、主槽11においては、上述した本発明の第1実施形態に係る湯灌槽1にて得られる作用効果が有効に享受される。
【0029】
一方、底壁2のうち洗髪槽13を画成する領域はすり鉢状に形成され、その底部に、上記の排水口4とは別個の排水口14が設けられている。このように、洗髪槽13を画成する底壁2に、主槽11を画成する底壁2に設けた排水口4とは別個の排水口14を設ければ、湯灌水に含まれる固体状の汚物のうち多くの部分を占める頭髪の移動(流動)距離を短くすることができるので、湯灌水の排出効率を一層向上することができる。これにより、底壁2上に固体状の汚物が一層残留・堆積し難くなり、湯灌の儀終了後に執り行われる清掃作業が一層容易化されるというメリットがある。また、洗髪槽13は、湯水の貯留槽として用いることができる。従って、例えば遺体の胴部以下を洗い清めている最中に洗髪槽13内に湯水を溜めておき、かつこの湯水に入浴剤等を投入しておけば、臭気を緩和する上でも有効となる。
【0030】
なお、第2の収容空間13内には、図4(a)や図6(c)に示すような荷台15を設置しても良い。この荷台15は、湯灌の儀に際して用いる洗剤等の小物置き場として活用し得るものである。
【0031】
以上で説明した本発明に係る湯灌槽1,10は、底壁2の裏面に伸縮自在の脚部5が取付けられていることから、貯湯タンクや回収タンクと共に車両(湯灌車)にて運搬され、移動式の湯灌サービスを提供する場合に特に好適な構成である。もちろん、本発明に係る湯灌槽1,10は、定点設置する場合にも好ましく用いることができる。湯灌槽1,10を定点設置する場合、底壁2の裏面に取付けるべき脚部は伸縮しないものであっても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 湯灌槽
2 底壁
3 周壁
4 排水口
5 脚部
6 膨出部
7 排水溝
8 凹部
10 湯灌槽
11 主槽
12 隔壁
13 洗髪槽
14 排水口
15 荷台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺体を洗い清める際に用いる湯灌槽であって、略長方形の底壁と、該底壁の周囲に立設された周壁とを備え、前記底壁の長手方向一端側に排水口が設けられたものにおいて、
前記底壁は、その幅方向内側領域に、前記底壁の幅方向中央部から幅方向外側に向かって徐々に低位に変位する凸曲面状の膨出部を有すると共に、その幅方向両端部に、前記膨出部よりも低位に位置した排水溝を有し、
前記膨出部および前記排水溝の双方は、長手方向他端側から長手方向一端側に向かって徐々に低位に変位したテーパ状をなして前記底壁の長手方向に沿って延び、かつ前記排水口よりも長手方向他端側で終端し、
前記底壁のうち、前記膨出部および前記排水溝の終端部の長手方向一端側に隣接した領域にすり鉢状の凹部を設け、この凹部の底部に前記排水口を設けたことを特徴とする湯灌槽。
【請求項2】
前記膨出部および前記排水溝の双方が、前記底壁の長手方向に沿って同一幅に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の湯灌槽。
【請求項3】
前記底壁の裏面に、伸縮自在の脚部が取付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の湯灌槽。
【請求項4】
前記底壁の長手方向所定位置に幅方向に延びた隔壁を立設することにより、遺体の胴部以下を洗い清めた湯水が流れ落ちる主槽と、遺体の頭部を洗い清めた湯水が流れ落ちる洗髪槽とに区画し、
前記主槽を画成する底壁に前記排水口、前記膨出部および前記排水溝を設けると共に、前記洗髪槽を画成する底壁に前記排水口とは別個の排水口を設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の湯灌槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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