説明

湿度検出装置、及び湿度検出装置の窓ガラスへの取り付け方法

【課題】作業者が異なっても確実に窓ガラスに対して固定可能な湿度検出装置を提供する。
【解決手段】各種センサ161a、162、163が実装された回路基板122を有する被収納部材120を収納した上ケース110と、窓ガラス101に固定された固定部材130とを準備する。板ばね140を上ケース110内に配設し、窓ガラス101に向かってガラス温度センサ161aを付勢させるとともに、上ケース110の内壁面を付勢させる。熱伝導部161b、161c、161dをガラス温度センサ161aと窓ガラス101との間に配設し、熱伝導を良好にするとともに、板ばね140の付勢力を吸収させる。この状態で、係止部材150を上ケース110に形成されたガイド溝111、及び固定部材130に形成された爪部132の切欠き部132a内に挿入し、上ケース110を固定部材130に係止させて湿度検出装置100を窓ガラス101に組み付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空気の湿度を検出する湿度検出装置、及びその湿度検出装置を窓ガラスへ取り付ける取り付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、湿度検出装置として、特許文献1記載のものが知られている。特許文献1記載の湿度検出装置は、室内空気の相対湿度を検出する湿度センサ、室内空気の温度を検出する空気温度センサ、及び窓ガラスの温度を検出するガラス温度センサが実装された回路基板と、その回路基板を内部に収納するケースと、ケースと窓ガラスとを貼り付け固定する接着シートとを備えている。ガラス温度センサは、回路基板の窓ガラス側の主面に設けられている。また、ガラス温度センサと窓ガラスとの間には、ガラス温度センサ側から順に、熱伝導良好なセンサ側熱伝導シート、薄い熱伝導率の良い金属部材、ガラス側熱伝導シートが配設されている。接着シートとガラス側熱伝導シートとは略同一平面上に位置しており、ガラス側熱伝導シートは、ケースの窓ガラス貼り付け前に接着シートよりも突出するようになっている。
【0003】
また、ケースに対して回路基板は、螺子にて締結固定され、この状態で、ガラス温度センサがセンサ側熱伝導シートに僅かにめり込む程度に押し当たるようになっている。そして、回路基板が組み付けられたケースを窓ガラスに貼り付ける際には、作業者は、周りの接着シートにケースと窓ガラスとを接着する為に必要な押し付け力がかかるように、ケースを窓ガラスに対して押し付けることで、ガラス側熱伝導シートがガラス面に押し付けられて変形するようになっている。
【特許文献1】特開2008−94380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の湿度検出装置を窓ガラスに貼り付ける際、ケースを窓ガラスに対して押し付ける作業者の押し付け力を管理し難いといった問題点がある。その理由として、ケースを窓ガラスに対して押し付ける押し付け力は、湿度検出装置を窓ガラスに貼り付ける作業者の力加減によって異なってしまう為である。
【0005】
具体的に、作業者の押す力がケースと窓ガラスとを接着する為に必要な押し付け力に満たない場合、ガラス側熱伝導シートは、接着シートよりも僅かに厚くなっている為、接着シートの接着力よりも、ケースとガラス面とを離間させる方向に作用するガラス側熱伝導シートの弾性力が勝ることが生じ得る。その結果、湿度検出装置が窓ガラスから脱離してしまうといった虞がある。一方、作業者の押す力がケースと窓ガラスとを接着する為に必要な押し付け力より過剰である場合、ケースに過剰な押し付け力がかかってしまい易くなる。その結果、ケースの変形や窓ガラス、車両へダメージを与えるなどといった不具合が生じる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、作業者が異なっても確実に窓ガラスに対して固定可能な湿度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に係る発明は、室内空気の相対湿度を検出する湿度検出手段(162)と、室内空気の温度を検出する空気温度検出手段(163)と、窓ガラス(101)の温度を窓ガラス(101)からの熱伝導により検出するガラス温度検出手段(161)と、湿度検出手段(162)、空気温度検出手段(163)、及びガラス温度検出手段(161)の出力値に基づいて窓ガラス(101)の表面における相対湿度を演算するガラス表面相対湿度演算手段(167)とを備える湿度検出装置であって、湿度検出手段(162)、空気温度検出手段(163)、ガラス温度検出手段(161)、及びガラス表面相対湿度演算手段(167)を収納するとともに、少なくともガラス温度検出手段(161)を窓ガラス(101)と相対可能となる位置に配置する収納部(110)と、窓ガラス(101)に固定可能にされるとともに、収納部(110)とは別体に構成される固定部(130)と、収納部(110)と固定部(130)とを係止組み付けする係止手段(150)とを備え、係止手段(150)は、収納部(110)の固定部(130)への接合後に、収納部(110)の固定部(130)への接合方向と交差する交差方向から収納部(110)と固定部(130)とを係止組み付けする構成とされ、収納部(110)、係止手段(150)、及び固定部(130)は、係止手段(150)による組み付けによってガラス温度検出手段(161)が窓ガラス(101)に押圧されるようにガラス温度検出手段(161)を固定部(130)側へ所定の加重で押圧する押圧機構(111、132、152)を備えていることを特徴とする。
【0009】
これによれば、作業者は、収納部(110)を窓ガラス(101)に対して押し付ける必要が無いので、窓ガラス(101)に対する作業者の押し付け力を管理し易くなる。その結果、作業者が異なっても確実に窓ガラス(101)の表面温度を検出可能な位置にガラス温度検出手段(161)を固定することが可能となる。ここで、接合方向と交差する交差方向は、接合方向と直交する方向が好ましい。また、接合方向と交差する交差方向は、接合方向と直行する方向に対して傾斜する方向であっても良い。
【0010】
また、請求項2に係る発明では、係止手段(150)は、収納部(110)の内部に摺動挿入される構成とされ、押圧機構(111、132、152)は、収納部(110)、及び固定部(130)に内装されていることを特徴とする。
【0011】
これによれば、係止手段(150)は、収納部(110)の内部の挿入され、押圧機構(111、132、152)は、収納部(110)及び固定部(130)に内装される為、湿度検出装置(100)の意匠性の向上を図ることが可能となる。
【0012】
また、請求項3に係る発明では、係止手段(150)は、収納部(110)の外観と連続した意匠外面を有する意匠部(151)を備え、係止手段(150)が収納部(110)の内部に挿入された際に、意匠外面と収納部(110)の外面と連続した意匠となることを特徴とする。
【0013】
これによれば、更に、湿度検出装置(100)の意匠性の向上を図ることが可能となる。
【0014】
また、請求項4に係る発明では、収納部(110)は、ガラス温度検出手段(161)を固定部(130)側へ弾性変形して付勢するとともに、収納部(110)の内壁面(110a)を付勢する弾性部材(140)を備え、押圧機構(111、132、152)は、係止手段(150)による組み付け時に、弾性部材(140)の付勢力に抗してガラス温度検出手段(161)を固定部(130)側へ押圧する構成とされていることを特徴とする。
【0015】
これによれば、ガラス温度検出手段(161)を固定部(130)側へ押圧する所定の加重を管理し易くなる。その理由としては、弾性部材(140)の付勢力が、ガラス温度検出手段(161)を固定部(130)側へ押圧する所定の加重であるためである。
【0016】
また、請求項5に係る発明では、弾性部材(140)とガラス温度検出手段(161)とが同一軸線上に配置されていることを特徴とする。
【0017】
これによれば、ガラス温度検出手段(161)を偏り無く、固定部(130)側へ押圧することが可能となる。
【0018】
また、請求項6に係る発明では、収納部(110)は、湿度検出手段(162)、空気温度検出手段(163)、ガラス温度検出手段(161)、及びガラス表面相対湿度演算手段(167)が設けられた基板(122)と、基板(122)の反固定部(130)側には、弾性部材(140)を押さえるために設けられ門型に形成された押さえ部(121)とを収納しており、弾性部材(140)は、押さえ部(121)と収納部(110)の内壁面(110a)との間に介在されていることを特徴とする。
【0019】
これによれば、各種センサを1つの収納部(110)に収納することができ、車両への搭載作業などを容易にすることが可能となる。
【0020】
また、請求項7に係る発明では、収納部(110)には、内部に空気を流通させる複数の流通口(110i)が周面に設けられ、弾性部材(140)は、V字状の板ばね(40)であり、板ばね(40)は、対向する流通口(110i)間を通過する空気の通風方向と略平行に配置されていることを特徴とする。
【0021】
これによれば、対抗する流通口(110i)間を空気が通風し易くなる。
【0022】
また、請求項8に係る発明では、収納部(110)の対向する内面(110c)には、交差方向に延びる一対の溝部(111)が形成され、係止手段(150)は、溝部(111)を摺動する摺動部(152)を備え、固定部(130)には、溝部(111)内に接合方向から挿入され、摺動部(152)と係合する係合部(132)を備え、押圧機構(111、132、152)は、溝部(111)と摺動部(152)と係合部(132)とを含んで構成され、摺動部(152)が溝部(111)に沿って摺動し、摺動部(152)が係合部(132)と係合することで摺動部(152)が溝部(111)の溝内面を押圧し、収納部(110)が固定部(130)側へ移動することでガラス温度検出手段(161)を固定部(130)側へ押圧される構成とされていることを特徴とする。
【0023】
これによれば、簡素な構成で、ガラス温度検出手段(161)を固定部(130)側へ押圧することが可能となる。
【0024】
また、請求項9に係る発明では、溝部(111)は、浅溝(111d)と浅溝(111d)よりも溝深さが深い深溝(111e)とを備えており、摺動部(152)は、浅溝(111d)を摺動する浅溝摺動部(152a)と、深溝(111e)を摺動するとともに浅溝摺動部(152a)よりも厚肉の深溝摺動部(152b)を備えており、係合部(132)は、深溝摺動部(152b)と対向する切欠き部(132a)を有する爪部(132)であり、浅溝摺動部(152a)と深溝摺動部(152b)とが浅溝(111d)、及び深溝(111e)に沿って摺動し、深溝摺動部(152b)が爪部(132)の切欠き部(132a)と係合することで浅溝摺動部(152a)、及び深溝摺動部(152b)の少なくとも一方が浅溝(111d)、及び深溝(111e)の少なくとも一方の溝内面を押圧する構成とされていることを特徴とする。
【0025】
これによれば、更に簡素な構成で、ガラス温度検出手段(161)を固定部(130)側へ押圧することが可能となる。
【0026】
また、請求項10に係る発明では、収納部(110)は、固定部(130)側の縁部に、係合部(132)を挿通可能であって溝部(111)と連通する連通口(110h)を備えており、係合部(132)は、連通口(110h)を介して溝部(111)に突出する構成とされていることを特徴とする。
【0027】
これによれば、簡素な構成で、係合部(132)を溝部(111)内に接合方向から挿入することが可能となる。
【0028】
また、請求項11に係る発明では、溝部(111)は、さらに係合部(132)を収容可能な収容溝(111f)を備えており、収容溝(111f)は、連通口(110h)と連続していることを特徴とする。
【0029】
これによれば、更に簡素な構成で、係合部(132)を溝部(111)内に接合方向から挿入することが可能となる。
【0030】
また、請求項12に係る発明では、ガラス温度検出手段(161)は、ガラス温度センサ(161a)と、窓ガラス(101)に接触しガラス温度センサ(161a)と窓ガラス(101)との熱伝導を良好にするとともに、押圧機構(111、132、152)の押圧力を吸収する熱伝導部(161b、161c、161d)とを備えることを特徴とする。
【0031】
これによれば、熱伝導部(161b、161c、161d)がガラス温度センサ(161a)にかかる押圧力を吸収するので、ガラス温度センサ(161a)に対する負荷を軽減することが可能となる。
【0032】
また、請求項13に係る発明では、熱伝導部(161b、161c、161d)は、扁平かつ熱伝導良好な金属部材(161b)と、金属部材(161b)の両面に配設された熱伝導シート(161c、161d)とを有することを特徴とする。
【0033】
これによれば、金属部材(161b)が熱伝導部(161b、161c、161d)にかかる押圧力を吸収するので、ガラス温度センサ(161a)に対する負荷を、更に軽減することが可能となる。
【0034】
また、請求項14に係る発明では、固定部(130)は、窓ガラス(101)に接着手段(134)を用いて貼付固定されていることを特徴とする。
【0035】
これによれば、窓ガラス(101)の適所に容易に固定部(130)を取り付け固定することが可能となる。
【0036】
また、請求項15に係る発明は、上記に記載の湿度検出装置の窓ガラスへの取り付け方法であって、予め窓ガラス(101)に固定された固定部(130)に対し、湿度検出手段(162)、空気温度検出手段(163)、ガラス温度検出手段(161)、及びガラス表面相対湿度演算手段(167)を収納するとともに、少なくともガラス温度検出手段(161)を窓ガラス(101)と相対可能となる位置に配置した収納部(110)を所定方向から接合する接合工程と、収納部(110)の固定部(130)への接合後に、収納部(110)の固定部(130)への接合方向と交差する交差方向から係止手段(150)を組み付けて、収納部(110)と固定部(130)とを組み付けるとともに、収納部(110)及び固定部(130)の押圧機構(111、132、152)により、ガラス温度検出手段(161)を窓ガラス(101)に押圧する組み付け工程とを備えることを特徴とする。
【0037】
これによれば、作業者は、収納部(110)を窓ガラス(101)に対して押し付ける必要が無いので、窓ガラス(101)に対する作業者の押し付け力を管理し易くなる。その結果、作業者が異なっても確実に窓ガラス(101)の表面温度を検出可能な位置にガラス温度検出手段(161)を固定することが可能となる。ここで、接合方向と交差する交差方向は、接合方向と直交する方向が好ましい。また、接合方向と交差する交差方向は、接合方向と直行する方向に対して傾斜する方向であっても良い。
【0038】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態における湿度検出装置100の構造について、図1から図7を用いて説明する。図1は、本実施形態における湿度検出装置100の設置位置を示す斜視図である。図2は、本実施形態における湿度検出装置100の縦断面図である。図3、及び図4は、本実施形態における湿度検出装置100を一方から見た分解斜視図である。ここで、図1に示す湿度検出装置100は、窓ガラス101に取り付けせずに組み付けたものを示している。
【0040】
本実施形態の湿度検出装置100は、車両の窓ガラス101に取り付けられ、窓ガラス101の表面における相対湿度を検出するものである。湿度検出装置100は、各種センサ161a、162、163を収納する上ケース110(収納部)、及び板ばね140(付勢部)によって付勢された状態で上ケース110内に移動可能(非拘束状態で)に収納される被収納部材120を備えている。さらに、上ケース110とは、別体に構成され、窓ガラス101に固定される固定部材130、及び上ケース110を固定部材130に対して係止させる係止部材150を備えている。
【0041】
図5は、本実施形態における上ケース110を他方から見た斜視図である。上ケース110は、樹脂にて、高さの低い薄型の略直方体状に形成されている。上ケース110は、内部に形成された内部空間を囲むように天井壁110aと第1〜第3の側壁110b〜110dを備えている。上ケース110には、天井壁110aと対向して被収納部材120を内部に収納する為の収納口110eが開口している。上ケース110の第1〜第3側壁110b〜110dには、車室内の空気を内部空間に流通させる流通口として、複数の長孔状の通風スリット110iが形成されている。各側壁110b〜110dのスリット110iは、上ケース110の内部空間を介してスリット110i間を空気が直線状に流れるように対向配置されている。上ケース110の第1側壁110bには、係止部材150が挿入される挿入口110fが形成されている。また、上ケース110には、第1側壁110bと対向するように、湿度検出装置100と外部機器とを電気的に接続する為の後述するコネクタ164が挿入されるコネクタ開口部110gが形成されている。ここで、外部機器とは、例えば、車室内を空調する空調制御装置や、車両の電源である車両電源などである。
【0042】
また、挿入口110fが形成された第1側壁110bの両隣の第2、第3側壁110c、110dの対向する内面には、溝部である一対のガイド溝111が互いに対向するように形成されている。ガイド溝111は、上ケース110の底面と平行に、換言すれば、湿度検出装置100の窓ガラス101への取り付け状態で窓ガラス101の平面方向と平行になるように挿入口110fから延びて形成されている。ガイド溝111には、その延設方向に、所定間隔毎に3つの凸部111a、111b、111cが形成されている。具体的には、凸部111a、111b、111cは、ガイド溝111の延設方向において、挿入口110fから所定長さに亘って形成された第1凸部111aと、第1凸部111aから所定間隔を置いて形成され、所定長さに亘って形成された第2凸部111bと、第2凸部111bから所定間隔を置いて形成され、ガイド溝111における挿入口110fと反対側の端部まで延びる第3凸部111cとを備えている。第1〜第3凸部111a、111b、111cは、上ケース110の内方側に互いに面一となる平面を備え、隣接する凸部111a、111b、111cに対向する部位に、溝底に向かって傾斜する傾斜面が形成されている。また、第1〜第3凸部111a、111b、111cは、ガイド溝111の溝幅方向においては、ガイド溝111における上ケース110の挿入口110f側端部から所定長さ、つまり、溝幅の途中まで形成されている。この第1〜第3凸部111a、111b、111cにより、ガイド溝111には、凸部111a、111b、111cの上ケース110内方側の平面を溝底とする浅溝111dと、凸部の上ケース110底面側であって浅溝111dより深い深溝111eと、各凸部間に形成され、深溝111eと同じ溝深さとなる収容溝111fとが形成されている。
【0043】
上ケース110の収納口110eの縁を構成する第2側壁110c、及び第3側壁110dの底面には、ガイド溝111と連通する4つの連通口110hが形成されている。連通口110hは、第2側壁110cの底面、及び第3側壁110dの底面にそれぞれ2つずつ形成されている。尚、連通口110hの数は、各側壁110c、110dに3つ以上でも1つでも良い。連通口110hは、ガイド溝111の収容溝111fと直線上になるように配置され、収容溝111fの溝底と連通口110hの内面の一部とは、面一となっている。図2において、図2に示す断面は、上ケース110の断面であり、他の構成部品については、側面を示している。
【0044】
被収納部材120及び板ばね140は、上ケース110内に収納配置され、被収納部材120は、押さえ部121、回路基板122、及び下ケース123を備えている。押さえ部121は、それぞれ離れて配置された3つの柱部121aを備え、3つの柱部121aは、その一端同士をつなぐ橋部121bによって、一体に形成されている。本実施形態では、押さえ部121は、樹脂によって成形されている。押さえ部121の各柱部121aにおける橋部121bと反対側の端部には、接合プレート121cが形成され、柱部121aの接合プレート121cは、回路基板122の縁部に対して、3箇所にて当接しており、螺子124にて結合されている。よって、押さえ部121の中央部に位置する橋部121bと回路基板122の中央部との間には、空間が形成されており、押さえ部121は、橋部121bが回路基板122に実装される各種センサ161a、162、163と干渉しないように形成されている。この結果、押さえ部121は、3つ又のブリッジ状(アーチ状)に形成されている。橋部121bの反回路基板122側上ケース110の天井壁110a側の面と、上ケース110の天井壁110aとの間には、板ばね140が設けられている。
【0045】
回路基板122は、上ケース110の天井壁110a、及び固定部材130の底面と平行、つまり湿度検出装置100のガラス組み付け状態において、窓ガラス101の平面と平行に配置されている。回路基板122は、絶縁基板上に電気回路を構成する一般にプリント基板と称される部材である。回路基板122のうち、下ケース123側の表面には、ガラス温度センサ161aが実装され、押さえ部121側の表面には、湿度センサ162、空気温度センサ163、コネクタ164、増幅器166、演算回路167、通信回路168(図8参照)等が実装されている。
【0046】
湿度検出手段である湿度センサ162は、回路基板122の周縁に近い角部に配置されており、湿度センサ162に対して対角側の周縁に近い部分には、図示しない演算素子が配置されている。これは、演算素子の作動によって熱が発生するが、回路基板122内で極力両者を遠ざけた配置とすることにより、演算素子の発熱が湿度センサ162で検出する湿度環境に影響を及ぼすのを防ぐためである。湿度センサ162の上下は、図示しないゴアテックス製のフィルタで覆って保護している。本実施形態では、湿度センサ162として、感湿膜の誘電率が空気の相対湿度に応じて変化し、それにより、静電容量が空気の相対湿度に応じて変化する容量変化型のものが用いられている。
【0047】
ガラス温度センサ161a、及び空気温度検出手段である空気温度センサ163は、回路基板122の中央部に配置されているとともに、回路基板122の表裏にて略同軸上に配置されている。これは、窓ガラス101の近傍の代表的な空気の温湿度と、窓ガラス内面の代表的な温度とを、極力同じ環境条件として検出できるようにするためである。これによれば、より正確にガラス表面の相対湿度を算出することができる。本実施形態では、両温度センサ161a、163として、温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタが用いられている。このように、ガラス温度センサ161a、湿度センサ162、及び空気温度センサ163を1つの湿度検出装置100内で同一の回路基板122上に配置することで、車両への搭載作業などを容易にすることができる。
【0048】
回路基板122における上ケース110のコネクタ開口部110g側の端部には、コネクタ164が図示しない螺子にて締結固定されている。さらに、コネクタ164の端子は、回路基板122の電気回路と半田接合されており、回路基板122の電気回路である増幅器166、演算回路167、及び通信回路168が電気的に接続されている。コネクタ164は、略直方体状に形成され、上ケース110のコネクタ開口部110gに配設されている。コネクタ164には、図示しない外部機の配線の先端に形成されたコネクタを収容接続する為の開口164a形成されている。コネクタ164の開口164aは、コネクタ開口部110gを介して外部に露出している。
【0049】
図6は、本実施形態における下ケース123を他方から見た斜視図である。下ケース123は、回路基板122における押さえ部121の反対側に配置され、押さえ部121と回路基板122とを締結する螺子124によって共に締結されている。下ケース123は、上ケース110の収納口110eの開口形状に相似する形状であり、収納口110eの開口形状より僅かに小さく成形され、回路基板122及びコネクタ164を上ケース110と反対側から被覆している。下ケース123は、樹脂によって成形されている。
【0050】
下ケース123のガラス温度センサ161aに対向する部分である中央部には、薄い熱伝導率の良い金属部材161bが一体的にインサート成形されている。本実施形態では、この金属部材161bとして、厚さ2mmの銅板が用いられている。また、金属部材161bの表裏の両面には、熱伝導良好な(熱伝導率:3〜10W/m・K)熱伝導シート161c、161dが貼着されている。具体的に本実施形態において、金属部材161bの窓ガラス101側の面には、厚さ0.6mmのガラス側熱伝導シート161cが設けられており、金属部材161bの回路基板122側の面には、厚さ0.8mmのセンサ側熱伝導シート161dが設けられている。金属部材161b、及び熱伝導シート161c、161dは、熱伝導部に相当し、ガラス温度センサ161a、金属部材161b、及び熱伝導シート161c、161dは、ガラス温度検出手段161に相当する。
【0051】
ここで、図4に示す湿度検出装置100は、被収納部材120、及び板ばね140を組み付けた状態の分解斜視図である。図4のように、回路基板122と下ケース123とを螺子124にて締結すると、ガラス温度センサ161aがセンサ側熱伝導シート161dに僅かにめり込む程度に押し当たる構造となっている(図9参照)。ガラス温度センサ161aがセンサ側熱伝導シート161dに螺子124の締結量によって予め決められた所定量押し付けられることにより、接触面での熱伝導が良好となり、精度良く窓ガラス101の温度を検出することができる。ここで、窓ガラス101の温度は、順に、ガラス側熱伝導シート161c、金属部材161b、センサ側熱伝導シート161d、ガラス温度センサ161aへと伝熱して、ガラス温度センサ161aに支障をきたすことなく検出される。また、回路基板122に応力が掛かり難い構造となっている。その理由として、熱伝導シート161c、161d、及び金属部材161bに応力が吸収されるからである。
【0052】
固定部材130は、下ケース123の裏面側(上ケース110と反対側)に配置され、平板形状の基部131と、基部131に複数設けられた係合部である爪部132とを有している。基部131には、ガラス側熱伝導シート161cが内部に配置される長方形状の貫通孔133が形成されている。また、本実施形態における爪部132は、基部131に4つ形成されている。具体的には、爪部132は、上ケース110の第2側壁110c、第3側壁110dと対向する基部131の両縁に2つずつ所定間隔を置いて配置され、第2側壁110cの爪部132と、第3側壁110dの爪部132とは、それぞれ対向配置されている。爪部132は、上ケース110に向かって基部131の平面と直交、つまり、窓ガラス101の平面と直交する方向に突出している。また爪部132の厚さは、基部131の厚さと同じで薄い。爪部132は、上ケース110の連通口110hから上ケース110内に挿入され、連通口110hを介して収容溝111fに収容配置されている。
【0053】
爪部132には、図4に示すように切欠き部132aが形成されている。切欠き部132aは、爪部132のうち、反コネクタ164側、つまり、上ケース110における挿入口110f側を切り欠くように形成されている。よって、切欠き部132aにより、爪部132は、C字形状に形成されている。爪部132における切欠き部132aの上ケース110側の内面には、傾斜した案内面132bが形成されており、後述する係止部材150の一部を切欠き部132aの奥へ案内するようになっている。
【0054】
固定部材130における上ケース110の反対側には、接着シート134が貼着されており、固定部材130は、窓ガラス101に接着シート134によって接着されている。接着シート134は、固定部材130を窓ガラス101の例えば図示しないルームミラー上側部などに貼り付け固定している。本実施形態では、接着シート134として、厚さ0.5mm程度の両面接着シートが用いられている。接着シート134は、固定部材130の基部131と略同じ形状をしている。接着シート134を用いることで、窓ガラス101の適所に固定部材130を容易に取り付け固定することができる。
【0055】
ここで、接着シート134は、図2に示すように、接着シート134に囲まれたガラス側熱伝導シート161cより僅かに薄い。その為、ガラス側熱伝導シート161cは、接着シート134から僅かに浮き出るようになっており、固定部材130を窓ガラス101に貼り付けた際、ガラス側熱伝導シート161cが確実にガラス面に押し付けられるようになっている(図9参照)。これによれば、ガラス側熱伝導シート161cの接着が十分でない場合においても、ガラス側熱伝導シート161cがずれて脱落してしまうような不具合を防ぐことができる。
【0056】
弾性部材である板ばね140は、その両端が同一方向に折り曲げられ、略V字状に形成されている。板ばね140の両端は、上ケース110の天井壁110aを付勢している。板ばね140の中央は、押さえ部121の橋部121bの天井壁110a側(反回路基板122側)の面を付勢している。板ばね140は、押さえ部121の橋部121bに形成された係合突起121dに対して、板ばね140に形成された係合孔141が係合することにより、押さえ部121に対して固定されている。これによって、湿度検出装置100の窓ガラス101への組み付け状態で板ばね140は、窓ガラス101の平面方向に移動することができないようになっている。板ばね140とガラス温度センサ161aとは、同一軸線上に配置されている。
【0057】
図7は、本実施形態における係止部材150を他方から見た斜視図である。係止手段である係止部材150は、挿入口110fと係合する位置に配置され、上ケース110のガイド溝111、及び固定部材130の爪部132に係合するようになっている。係止部材150は、樹脂によって、Uの字形状に成形されている。Uの字形状は具体的に、上ケース110の挿入口110fと同じ形状をした意匠部の意匠壁部151と、意匠壁部151の両端に摺動部として形成され、ガイド溝111の延説方向に延びる一対のガイド溝摺動部152とを有して構成されている。
【0058】
意匠壁部151は、挿入口110fに挿着され、側壁110b〜110dと連続する意匠面を有するように外観が形成され、上ケース110に形成されたスリット110iと同様のスリット153が複数形成されている。さらに、意匠壁部151の内面には、意匠壁部151の強度の向上を図るリブ154がスリット153の長手方向に沿って形成されている。
【0059】
ガイド溝摺動部152は、上ケース110のガイド溝111に挿着されており、薄肉の浅溝摺動部152aと、厚肉の深溝摺動部152bとを備えている。浅溝摺動部152aは、ガイド溝摺動部152の外観をなしており、ガイド溝111の延設方向の長さと略同じ長さの細長い形状である。浅溝摺動部152aは、上ケース110の浅溝111dに挿入されており、浅溝111dの溝深さと略同一の肉厚に形成されている。浅溝摺動部152aは、浅溝111dの溝幅より僅かに小さく形成されている。
【0060】
一対の浅溝摺動部152aの外側の面には、それぞれ深溝摺動部152bが形成されている。深溝摺動部152bは、一対の浅溝摺動部152aの外側の面に2つずつ突出形成されている。深溝摺動部152bは、ガイド溝111の延設方向に延びる細長形状で、深溝111eの溝深さと略同一の肉厚に形成されている。浅溝摺動部152aの底面(固定部材130側の面)と、深溝摺動部152bの底面(固定部材130側の面)とは、連続している。深溝摺動部152bは、深溝111eの溝幅より僅かに小さく形成されており、また、固定部材130の爪部132に形成された切欠き部132aの幅(係止部材150の挿入方向と直交する方向の寸法)より僅かに小さく形成されている。深溝摺動部152bは、上ケース110の収容溝111fに収容された爪部132の切欠き部132aに挿入されている。ガイド溝摺動部152における深溝摺動部152bの形成位置は、収容溝111fに収容された状態の切欠き部132aに挿入可能な位置である。深溝摺動部152bの挿入方向先端は、丸みを帯びて形成されている。具体的には、深溝摺動部152bの挿入方向の上ケース110側の先端面152cは、図4に示すように傾斜した形状で、切欠き部132aに係合容易になるように形成されている。ここで、ガイド溝111、爪部132、及びガイド溝摺動部152は、押圧機構に相当する。
【0061】
次に、本実施形態における湿度検出装置100の電気制御のシステム構成を、図8を用いて説明する。図5は、本実施形態における湿度検出装置100の電気的ブロック図である。
【0062】
まず、各種センサ161a、162、163の出力信号を、それぞれ増幅器166で増幅して各種演算回路167に加える。各種演算回路167とは、相対湿度演算回路167a、空気温度演算回路167b、ガラス温度演算回路167c、及びガラス表面相対湿度演算回路167dである。また、ガラス表面相対湿度演算回路167dとは、相対湿度演算回路167aの演算値、空気温度演算回路167bの演算値、及びガラス温度演算回路167cの演算値に基づいてガラス表面相対湿度を演算する演算回路である。そして、ガラス表面相対湿度演算回路167dの演算値を、通信回路168を通して空調制御装置の空調ECU102に出力するようになっている。これによれば、窓ガラス101の曇りに直結する窓ガラス表面相対湿度を演算することができるので、この窓ガラス101における表面相対湿度の演算値を用いて、空調装置の防曇制御を最適に実行させることができる。ここで、各種演算回路167は、ガラス表面相対湿度演算手段に相当する。
【0063】
次に、本実施形態における湿度検出装置100を窓ガラス101に取り付ける取り付け工程について図9から図11を用いて説明する。図9、及び図10は、本実施形態における湿度検出装置100の縦断面図である。図11は、本実施形態における湿度検出装置100の窓ガラス101への取り付け方法を示す斜視図である。
【0064】
まず、湿度検出装置100を窓ガラス101に取り付ける前工程として、コネクタ164が図示しない螺子にて締結された回路基板122と、金属部材161bが取着された下ケース123と、押さえ部121とを用意し、被収納部材120を組み立てる。つまり、押さえ部121の柱部121aと回路基板122と下ケース123とを螺子124にて締結固定する。このとき、被収納部材120は、回路基板122のガラス温度センサ161aと下ケース123の金属部材161bとの間にセンサ側熱伝導シート161dを挟んで組み立てられる。具体的には、ガラス温度センサ161aがセンサ側熱伝導シート161dに僅かにめり込む程度に押し当たるように組み立てられる。
【0065】
次に、被収納部材120を構成する押さえ部121の橋部121bと上ケース110の天井壁110aとの間に板ばね140を挟み、板ばね140の係合孔141に、押さえ部121の係合突起121dを係合させて、上ケース110内に被収納部材120を収納する。ここで、湿度検出装置100は、上ケース110と被収納部材120とを締結するねじ等の締結手段を備えていない為、上ケース110に収納された被収納部材120は、上ケース110に拘束されていない位置移動可能な状態となる。ただし、下ケース123の形状は、上ケース110の収納口110eに相似する形状であり、収納口110eより僅かに小さい形状である為、収納口110eの縁部に規制され、収納口110eの開口面に沿って動くことはない。被収納部材120は、板ばね140に負荷を加え弾性変形させることで、上ケース110の天井壁110aと相対しつつ接離する方向に位置移動することができる。
【0066】
また、ガラス側熱伝導シート161cを下ケース123における金属部材161bの窓ガラス101側の面に貼着する。板ばね140が弾性変形していない状態においては、ガラス側熱伝導シート161cは、上ケース110からはみ出している。ガラス側熱伝導シート161cが上ケース110からはみ出す量であるはみ出し量は、固定部材130の基部131の厚さと接着シート134の接着時の厚さとの和より大きい。このようにして、上ケース110に対して、被収納部材120、及び板ばね140が収納された構成部品が用意される。
【0067】
そして、取り付け工程の説明として、まず、被収納部材120が収納された上ケース110を窓ガラス101に取り付ける準備として、図11(a)のように、固定部材130を窓ガラス101に接着シート134により貼り付ける。固定部材130を窓ガラス101に貼り付ける際の押し付け力Pは、窓ガラス101を破損することのない押し付け力で、かつ、固定部材130に対して上ケース110、被収納部材120、板ばね140、係止部材150を取り付けても、これらが組み付けした湿度検出装置100が窓ガラス101から脱離しない押し付け力であればよい。換言すると、押し付け力Pは、窓ガラス101を破損に至らしめる押し付け力P1より小さく、湿度検出装置100を窓ガラス101に取り付けると湿度検出装置100が窓ガラス101から脱離する押し付け力P2より大きければ良い。数式で示すと、P2<P<P1である。この押し付け力Pの範囲は、非常に広く、固定部材130を窓ガラス101に貼り付ける作業者が異なっても、全ての作業者がその範囲内の押し付け力にて貼り付けが可能な程度である。
【0068】
そして、図11(b)のように、窓ガラス101に固定された固定部材130に、被収納部材120を収納した上ケース110を接合する。まず、固定部材130の爪部132を、上ケース110の収容溝111f内へ連通口110hから挿入する。挿入された爪部132は、収容溝111fの側面によって、上ケース110の奥へ案内される。そして、ガラス側熱伝導シート161cが窓ガラス101に接触するまで、爪部132は、収容溝111f内に挿入され、ガラス側熱伝導シート161cと窓ガラス101とが接触することにより、接合工程が完了した状態となる。
【0069】
次に、ガラス側熱伝導シート161cと窓ガラス101とを接触させた状態で、係止部材150を挿入口110fから上ケース110内に挿入する。具体的には、係止部材150の浅溝摺動部152aを、上ケース110の浅溝111d内に挿入口110fから挿入する。浅溝摺動部152aは、浅溝111dの側面(溝底)に案内されて浅溝111dの奥へ挿入される。浅溝摺動部152aを浅溝111d内に挿入すると、深溝摺動部152bが、上ケース110の深溝111e内に挿入口110fから挿入される。深溝摺動部152bは、深溝111eの側面(溝底)に案内されて奥へ挿入される。そして、係止部材150を上ケース110内へ窓ガラス101の平面方向に沿ってスライドさせていくと、深溝摺動部152bの先端面152cが、固定部材130の爪部132の案内面132bに接触する。つまり、板ばね140が弾性変形していない状態においては、深溝摺動部152bは、爪部132の切欠き部132aの奥へ挿入されていない状態である。図9は、上記の接合工程後、係止部材150をガイド溝111の途中まで挿入した状態における湿度検出装置100の縦断面図を示している。また、図11(b)に関しても、この状態における湿度検出装置100の斜視図を示している。
【0070】
さらに、深溝摺動部152bの先端面152cと爪部132の案内面132bとが接触した状態で、係止部材150を上ケース110の奥へ押し込むと、深溝摺動部152bは、傾斜する先端面152cが案内面132bに案内されて、切欠き部132aの奥へ移動する。深溝摺動部152bが切欠き部132aの奥へ挿入されると、浅溝摺動部152aの窓ガラス101側の底面が、浅溝111dの窓ガラス101側の溝内面に押さえ付けられる。浅溝111dの溝内面にて窓ガラス101側へ押さえ付けられた上ケース110は、窓ガラス101側に押さえ付けられる。
【0071】
上ケース110は、窓ガラス101側に押さえ付けられるとともに、板ばね140を介して被収納部材120を窓ガラス101側に押し付ける。ここで、ガラス側熱伝導シート161cは、窓ガラス101に接触している状態である為、被収納部材120は、ガラス側熱伝導シート161cの変形量ΔT1において、窓ガラス101側に押さえ付けられて移動する。つまり、上ケース110における窓ガラス101側への移動量ΔT1と、被収納部材120における窓ガラス101側への移動量ΔT2との差が、板ばね140の変形量ΔTとなる。数式で示すと、ΔT1―ΔT2=ΔTである。
【0072】
板ばね140は、変形量ΔTに基づき、被収納部材120を窓ガラス101側に押し付ける。そして、係止部材150は、係止部材150の意匠壁部151が上ケース110の挿入口110fに取着され、意匠壁部151の外面と上ケース110の側壁110b〜110dの外面とが面一になるまで上ケース110内に挿入され、意匠壁部151が挿入口110fに接触することにより、取り付け工程が完了した状態となる。図10は、この組み付け工程後の状態における湿度検出装置100の縦断面図を示している。また、図11(c)に関しても、この状態における湿度検出装置100の斜視図を示している。
【0073】
本実施形態における湿度検出装置100は、まず、固定部材130を窓ガラス101に取り付ける準備時の押し付け力Pは、湿度検出装置100を窓ガラス101に取り付けると湿度検出装置100が窓ガラス101から脱離する押し付け力P2より大きく、窓ガラス101を破損に至らしめる押し付け力P1より小さければ良い。また、上ケース110を固定部材130に取り付ける時には、上ケース110は、固定部材130に係止させる係止部材150によって取り付けられる為、上ケース110が窓ガラス101方向に押し付けられることはない。その結果、作業者が異なっても確実に窓ガラス101の表面温度を検出可能な位置にガラス温度センサ161aが固定された湿度検出装置100を提供することが可能となる。
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、係止部材150は、収納部110の内部に摺動挿入される構成としたが、本発明はこれに限定されることは無い。例えば、係止部材150は、収納部110から外部に飛び出す構成であっても良い。
【0074】
また、上記第1実施形態では、意匠壁部151は、側壁110b〜110dと連続する意匠面を有するように外観が形成されているが、本発明はこれに限定されることは無い。例えば、意匠壁部151は、側壁110b〜110dと連続する意匠面を有していなくても良い。
【0075】
また、上記第1実施形態では、板ばね140を弾性部材として用いたが、本発明はこれに限定されることは無い。例えば、上ケース110は、押さえ部121を直接付勢する構成であっても良い。また、例えば、弾性部材として、コイルばね、クッション材等が用いられる構成であっても良い。
【0076】
また、上記第1実施形態では、板ばね140とガラス温度センサ161aとは、同一軸線上に配置されているが、本発明はこれに限定されることは無い。例えば、板ばね140とガラス温度センサ161aとは、非同一の軸線上に配置される構成であっても良い。
【0077】
また、上記第1実施形態では、回路基板122と板ばね140との間には、押さえ部121が介在しているが、本発明はこれに限定されることは無い。例えば、板ばね140は、回路基板122を直接付勢する構成であっても良い。
【0078】
また、上記第1実施形態では、上ケース110には、内部に空気を流通させる複数のスリット110iが形成されているが、本発明はこれに限定されることは無い。例えば、スリット110iは、形成されていなくても良い。
【0079】
また、上記第1実施形態では、ガラス温度検出手段として、金属部材161b、及び熱伝導シート161c、161dを備えているが、本発明はこれに限定されることは無い。例えば、金属部材161b、及び熱伝導シート161c、161dは、備えていなくても良い。また、金属部材161bは備えず、熱伝導シート161c、161dを備える構成であっても良い。
【0080】
また、上記第1実施形態では、固定部材130は、窓ガラス101に接着シート134を用いて貼付固定されているが、本発明はこれに限定されることは無い。例えば、固定部材130は、接着剤等によって窓ガラス101に固定される構成であっても良い。
【0081】
また、上記第1実施形態では、車両の前面(フロント)ガラスに配置する湿度検出装置について説明したが、車両の後部(リヤ)ガラスなどに配置する湿度検出装置に本発明を適用しても良い。また、本発明は車両以外の用途における湿度検出装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1実施形態における湿度検出装置の設置位置を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態における湿度検出装置の縦断面図である。
【図3】第1実施形態における湿度検出装置を一方から見た分解斜視図である。
【図4】第1実施形態における湿度検出装置(固定部材を除く)を一方から見た分解斜視図である。
【図5】第1実施形態における上ケースを他方から見た斜視図である。
【図6】第1実施形態における下ケースを他方から見た斜視図である。
【図7】第1実施形態における係止部材を他方から見た斜視図である。
【図8】第1実施形態における湿度検出装置の電気的ブロック図である。
【図9】第1実施形態における湿度検出装置の縦断面図である。(接合工程後)
【図10】第1実施形態における湿度検出装置の縦断面図である。(組み付け工程後)
【図11】第1実施形態における湿度検出装置の窓ガラスへの取り付け方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0083】
110…上ケース、111…ガイド溝、111d…浅溝、111e…深溝、111f…収容溝、120…被収納部材、130…固定部材、132…爪部、132a…切欠き部、134…接着シート、140…板ばね、150…係止部材、152…ガイド溝摺動部、161a…ガラス温度センサ、162…湿度センサ、163…空気温度センサ、100…湿度検出装置、101…窓ガラス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空気の相対湿度を検出する湿度検出手段(162)と、
前記室内空気の温度を検出する空気温度検出手段(163)と、
窓ガラス(101)の温度を前記窓ガラス(101)からの熱伝導により検出するガラス温度検出手段(161)と、
前記湿度検出手段(162)、前記空気温度検出手段(163)、及び前記ガラス温度検出手段(161)の出力値に基づいて前記窓ガラス(101)の表面における相対湿度を演算するガラス表面相対湿度演算手段(167)とを備える湿度検出装置であって、
前記湿度検出手段(162)、前記空気温度検出手段(163)、前記ガラス温度検出手段(161)、及び前記ガラス表面相対湿度演算手段(167)を収納するとともに、少なくともガラス温度検出手段(161)を窓ガラス(101)と相対可能となる位置に配置する収納部(110)と、
前記窓ガラス(101)に固定可能にされるとともに、前記収納部(110)とは別体に構成される固定部(130)と、
前記収納部(110)と前記固定部(130)とを係止組み付けする係止手段(150)とを備え、
前記係止手段(150)は、前記収納部(110)の前記固定部(130)への接合後に、前記収納部(110)の前記固定部(130)への接合方向と交差する交差方向から前記収納部(110)と前記固定部(130)とを係止組み付けする構成とされ、
前記収納部(110)、前記係止手段(150)、及び前記固定部(130)は、前記係止手段(150)による組み付けによって前記ガラス温度検出手段(161)が前記窓ガラス(101)に押圧されるように前記ガラス温度検出手段(161)を固定部(130)側へ所定の加重で押圧する押圧機構(111、132、152)を備えていることを特徴とする湿度検出装置。
【請求項2】
前記係止手段(150)は、前記収納部(110)の内部に摺動挿入される構成とされ、
前記押圧機構(111、132、152)は、前記収納部(110)、及び前記固定部(130)に内装されていることを特徴とする請求項1に記載の湿度検出装置。
【請求項3】
前記係止手段(150)は、前記収納部(110)の外観と連続した意匠外面を有する意匠部(151)を備え、前記係止手段(150)が前記収納部(110)の内部に挿入された際に、前記意匠外面と前記収納部(110)の外面と連続した意匠となることを特徴とする請求項2に記載の湿度検出装置。
【請求項4】
前記収納部(110)は、前記ガラス温度検出手段(161)を前記固定部(130)側へ弾性変形して付勢するとともに、前記収納部(110)の内壁面(110a)を付勢する弾性部材(140)を備え、
前記押圧機構(111、132、152)は、前記係止手段(150)による組み付け時に、前記弾性部材(140)の付勢力に抗して前記ガラス温度検出手段(161)を固定部(130)側へ押圧する構成とされていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の湿度検出装置。
【請求項5】
前記弾性部材(140)と前記ガラス温度検出手段(161)とが同一軸線上に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の湿度検出装置。
【請求項6】
前記収納部(110)は、前記湿度検出手段(162)、前記空気温度検出手段(163)、前記ガラス温度検出手段(161)、及び前記ガラス表面相対湿度演算手段(167)が設けられた基板(122)と、
前記基板(122)の反前記固定部(130)側には、前記弾性部材(140)を押さえるために設けられ門型に形成された押さえ部(121)とを収納しており、
前記弾性部材(140)は、前記押さえ部(121)と前記収納部(110)の内壁面(110a)との間に介在されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の湿度検出装置。
【請求項7】
収納部(110)には、内部に空気を流通させる複数の流通口(110i)が周面に設けられ、
前記弾性部材(140)は、V字状の板ばね(40)であり、
前記板ばね(40)は、対向する前記流通口(110i)間を通過する空気の通風方向と略平行に配置されていることを特徴とする請求項4から6のいずれか1つに記載の湿度検出装置。
【請求項8】
前記収納部(110)の対向する内面(110c)には、前記交差方向に延びる一対の溝部(111)が形成され、
前記係止手段(150)は、前記溝部(111)を摺動する摺動部(152)を備え、
前記固定部(130)には、前記溝部(111)内に前記接合方向から挿入され、前記摺動部(152)と係合する係合部(132)を備え、
前記押圧機構(111、132、152)は、前記溝部(111)と前記摺動部(152)と前記係合部(132)とを含んで構成され、前記摺動部(152)が前記溝部(111)に沿って摺動し、前記摺動部(152)が前記係合部(132)と係合することで前記摺動部(152)が前記溝部(111)の溝内面を押圧し、前記収納部(110)が前記固定部(130)側へ移動することで前記ガラス温度検出手段(161)を前記固定部(130)側へ押圧される構成とされていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の湿度検出装置。
【請求項9】
前記溝部(111)は、浅溝(111d)と前記浅溝(111d)よりも溝深さが深い深溝(111e)とを備えており、
前記摺動部(152)は、前記浅溝(111d)を摺動する浅溝摺動部(152a)と、前記深溝(111e)を摺動するとともに前記浅溝摺動部(152a)よりも厚肉の深溝摺動部(152b)を備えており、
前記係合部(132)は、前記深溝摺動部(152b)と対向する切欠き部(132a)を有する爪部(132)であり、
前記浅溝摺動部(152a)と前記深溝摺動部(152b)とが前記浅溝(111d)、及び前記深溝(111e)に沿って摺動し、前記深溝摺動部(152b)が前記爪部(132)の切欠き部(132a)と係合することで前記浅溝摺動部(152a)、及び前記深溝摺動部(152b)の少なくとも一方が前記浅溝(111d)、及び前記深溝(111e)の少なくとも一方の溝内面を押圧する構成とされていることを特徴とする請求項8に記載の湿度検出装置。
【請求項10】
前記収納部(110)は、前記固定部(130)側の縁部に、前記係合部(132)を挿通可能であって前記溝部(111)と連通する連通口(110h)を備えており、
前記係合部(132)は、前記連通口(110h)を介して前記溝部(111)に突出する構成とされていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の湿度検出装置。
【請求項11】
前記溝部(111)は、さらに前記係合部(132)を収容可能な収容溝(111f)を備えており、
前記収容溝(111f)は、前記連通口(110h)と連続していることを特徴とする請求項8から10のいずれか1つに記載の湿度検出装置。
【請求項12】
前記ガラス温度検出手段(161)は、ガラス温度センサ(161a)と、前記窓ガラス(101)に接触し前記ガラス温度センサ(161a)と前記窓ガラス(101)との熱伝導を良好にするとともに、前記押圧機構(111、132、152)の押圧力を吸収する熱伝導部(161b、161c、161d)とを備えることを特徴とする請求項1から11のいずれか1つに記載の湿度検出装置。
【請求項13】
前記熱伝導部(161b、161c、161d)は、扁平かつ熱伝導良好な金属部材(161b)と、前記金属部材(161b)の両面に配設された前記熱伝導シート(161c、161d)とを有することを特徴とする請求項12に記載の湿度検出装置。
【請求項14】
前記固定部(130)は、前記窓ガラス(101)に接着手段(134)を用いて貼付固定されていることを特徴とする請求項1から13のいずれか1つに記載の湿度検出装置。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の湿度検出装置の窓ガラスへの取り付け方法であって、
予め前記窓ガラス(101)に固定された固定部(130)に対し、湿度検出手段(162)、空気温度検出手段(163)、ガラス温度検出手段(161)、及びガラス表面相対湿度演算手段(167)を収納するとともに、少なくとも前記ガラス温度検出手段(161)を前記窓ガラス(101)と相対可能となる位置に配置した収納部(110)を所定方向から接合する接合工程と、
前記収納部(110)の前記固定部(130)への接合後に、前記収納部(110)の前記固定部(130)への接合方向と交差する交差方向から係止手段(150)を組み付けて、前記収納部(110)と前記固定部(130)とを組み付けるとともに、前記収納部(110)及び前記固定部(130)の押圧機構(111、132、152)により、前記ガラス温度検出手段(161)を前記窓ガラス(101)に押圧する組み付け工程とを備えることを特徴とする湿度検出装置の窓ガラスへの取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−116005(P2010−116005A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289814(P2008−289814)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】