湿式多色現像装置
【目的】 感光体ドラムの周上に配置が可能で、帯電、露光から現像迄の時間及び現像から転写迄の時間が各色で一定で、色切り替えが短時間で行え、混色の生じない湿式多色現像装置を実現する。
【構成】 湿式現像剤をN色用いて現像する湿式多色現像装置において、N個の現像ローラー42をフレーム40に観覧車状に配置して、所望の現像ローラー42を静電潜像に近接配置できるようにする。フレーム40は、N個の液室に分割されており、各液室より独立に現像液排出経路55が設けられている。現像剤排出経路55と現像剤回収経路56、57とは分離している。フレーム40に支持されないN個の現像剤吐出手段58が、現像ローラー42と静電潜像担持体1の近接部の近傍に配置さている。
【構成】 湿式現像剤をN色用いて現像する湿式多色現像装置において、N個の現像ローラー42をフレーム40に観覧車状に配置して、所望の現像ローラー42を静電潜像に近接配置できるようにする。フレーム40は、N個の液室に分割されており、各液室より独立に現像液排出経路55が設けられている。現像剤排出経路55と現像剤回収経路56、57とは分離している。フレーム40に支持されないN個の現像剤吐出手段58が、現像ローラー42と静電潜像担持体1の近接部の近傍に配置さている。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子写真方式の複写機やプリンタ等の記録装置に用いられ、絶縁性キャリア液体中に帯電粒子が分散して構成される湿式現像剤をN色(Nは、2以上の整数。以下同じ)用いて静電潜像を顕像化する湿式多色現像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の湿式多色現像装置としては、図18に示すように、静電記録紙100の幅方向に有したスリットより現像液を吐出させて静電潜像の顕像化を行うスリット型現像装置101a〜101dを、静電記録紙搬送方向に、記録色の数程順次配置しているものが知られている(特開昭62−59983)。また図19に示すように感光体ドラム200に近接配置された現像装置201に各異なる色の現像液を順次供給排出していくものも知られている(実開昭64−59273)。これらの従来例をそれぞれ図18、図19に示す。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】図18に示した従来のスリット型のものは、主に記録紙に直接トナー像を形成する多色のプロッタに利用されている。この場合静電潜像担持体である静電記録紙100は現像領域においては、曲率なく(すなわち平面状に)支持されて搬送されている。静電記録紙下方に記録紙面に対して平行に配置された複数のスリット型現像装置101a、101b、101c、101dが上下しながら、各色の現像剤を噴出し、所望の箇所に、所望のトナー像を形成する。スリット型の現像装置を利用した場合、後段のスクイズ装置102において、静電潜像の顕像化にあずからなかった余剰の現像剤を、負圧を利用して静電潜像担持体とスクイズ装置とを密着させてスリットより回収している。負圧を利用するためには、静電潜像担持体と現像装置とを密着させる必要があるが、プロッタの場合は静電潜像担持体が、可撓性を有する静電記録紙であるため、問題は生じなかった。
【0004】しかしながら可撓性のない静電潜像担持体である感光体ドラムを、上記のスリット型現像装置で顕像化する際には、スクイズ装置と感光体ドラムを感光体ドラムの感光層を傷つけることなく密着させ余剰の現像剤を回収することが困難となっていた。さらには、曲率を有する感光体ドラム周囲に、前記の複数のスリット型現像装置を多段に配置することも困難であった。また感光体ドラム周囲に前記のスリット型現像装置を多段に配置できたとしても、感光体ドラムが、被帯電位置もしくは被露光位置から被現像位置位置に達する迄の時間が各色毎に異なるため、感光体ドラム帯電減衰特性の経時劣化を考慮した上で、全色で一様なトナーの付着特性を得ることが困難となる。さらにまた、被現像位置から被転写位置に感光体ドラムが移動する時間も各色毎に異なるため、各色毎の付着トナーの湿潤状態が異なり、全色で一様な転写特性を得ることも困難となる。
【0005】また図19に示した感光体ドラム200に近接するローラーを利用する現像装置201では、ある色の現像剤が現像装置の容器202内に供給され、その色の現像が終了後、容器より当該色の貯蔵容器204i(i=a、b、c、d)に回収される。その後、次色の現像剤が現像装置の容器202内に導かれ、次色の現像が行われる。そのため混色を防ぐには、前色の現像剤をすべて貯蔵容器204に回収しおわるまでは、次色の現像剤を現像装置201に導くことができず、色切り替えに時間を要していた。さらには、同一現像装置の容器202に異なる色の現像剤が導かれるため、各色に他色の現像剤が微量ではあるが混入し、経時的に各色の現像剤に濁りが生じるのは避けられなかった。
【0006】本発明の目的は、かかる問題点を解決し、感光体ドラムの周上に配置が可能で、帯電、露光から現像迄の時間及び現像から転写迄の時間が各色で一定で、色切り替えが短時間で行え混色の生じない湿式多色現像装置を実現することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の湿式多色現像装置は、回転する静電潜像担持体上の静電潜像をN色の湿式現像剤を用いて現像するものであって、前記静電潜像担持体の軸線と平行な軸線を中心として回動可能に設けられたフレームと、このフレームに対して回転可能にかつ前記静電潜像担持体と平行に設けられたN本の現像ローラーと、前記フレームを移動させて前記N本の現像ローラーの内の任意の現像ローラーを前記静電潜像担持体に対向させるフレーム移動手段と、前記静電潜像担持体とこれに対向している現像ローラーとの間にN色の内の任意の湿式現像剤を独立して供給する現像剤供給手段を備えたことを特徴とする。
【0008】ここで、静電潜像担持体と現像ローラーとの対向には、近接対向する場合と、当接対向する場合とを含むものとする。
【0009】
【実施例】本発明の実施例について説明する。
【0010】図14は、本発明の湿式多色現像装置を備えた第1の電子写真プリンタの断面図である。
【0011】この電子写真プリンタは、アルミ素管にアモルファスセレンの薄層蒸着してなる静電潜像担持体である感光体ドラム1の周囲に帯電装置2、露光装置3、第1色から第4色のすなわちイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色の現像が可能な湿式多色現像装置4、転写ドラム5、圧力ローラー6、クリーニング装置7、除電装置8が順次配置されている。
【0012】上記の構成により記録紙への画像形成が以下のように行われる。
【0013】圧力ローラー6を破線で示す位置の圧力解除状態に置かれる。矢印Aで示される方向に感光体ドラム1が回転する。帯電工程、露光工程を経て、感光体ドラム1上に、第1色目のイエローの静電潜像が形成される。上記静電潜像は、湿式多色現像装置4で第1色目のイエローの現像剤を用いて、イエローのトナー像が形成される。引続き、感光体ドラム1上の前記イエローのトナー像が、転写ドラム5に静電的に転写される。感光体ドラム1は、クリーニング工程、除電工程を経て、再び帯電工程へ移る。以下同様にして、感光体ドラム1上に第2色目のマゼンダの静電潜像が形成され、第2色目のマゼンダの現像剤によりマゼンダのトナー像が形成され、転写ドラム5に第1色目のイエローのトナー像に重ねて第2色目のマゼンダのトナー像が静電的に転写される。さらに、第3色、第4色のシアン、ブラックのトナー像が転写ドラム5上に重ねて転写されて、転写ドラム上にフルカラー(多色)のトナー像が形成される。給紙装置20より搬出された記録紙21は、転写ドラム5上の4色のトナー像の形成に合わせて、転写領域に搬送される。
【0014】次に、圧力ローラ6が実線で示す加圧状態となって記録紙21を介して転写ドラム5を押圧し、トナー像が転写ドラム5から記録紙21に転写される。
【0015】記録紙21は、転写工程を経た後、剥離爪9により転写ドラム5から剥離され、熱定着装置10においてキャリア液が蒸発させられ、更にトナー像が固着させられ、排紙トレイ22に収納される。
【0016】図1は、本発明の第1の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す左方向よりみた斜視図、図2は左側面図、図3は右方向よりみた斜視図、図4は右側面図である。本実施例では前述したようにイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色の現像剤を使用して、フルカラー画像を形成する。円盤状の左右の側板401に円周方向を4分割する仕切り板402が設けられ、湿式多色現像装置のフレーム40が形成されている。これにより4個の開口を有する4個の液室404Y、404M、404C、404Kが形成されている。フレーム支持手段である左右の支持アーム41a、41bは、図示しないステーで係合されており、フレーム40を回転自在に支持している。現像電極部材であって、導電性金属材質からなる4本の異なる現像ローラー42Y、42M、42C、42Kが、フレーム40の回転軸部403に対して放射線状に等距離の位置に、側板401に対して回転可能に支持されて配置される。フレーム40が回転することで、所望の現像ローラー42が選択される。左右の支持アーム41a、41bは、図示しない電子写真プリンタの本体匡体に対して軸39で回動可能に支持されており、支持アーム41a、41bを回動させることでもフレーム40が移動可能となっている。以下フレーム移動手段について説明する。フレーム移動手段は、上述したように、現像ローラー42と感光体ドラム1の対向及び対向解除を行う支持アーム回動手段と、所望の現像ローラー42を選択するフレーム回転手段からなる。先ず支持アーム回動手段について説明する。
【0017】電子写真プリンタ本体の匡体に対して軸39で支持された支持アーム41bの一端には、リンク機構43を介してソレノイド44が係合されている。ソレノイド44に入力される電気信号に応じて、支持アーム41b、41aの姿勢が決まり、フレーム40は、とりうる2つの位置のうち一方の位置に定まる。2つの位置の内一方は、図4に示すように側板401に支持された4本の現像ローラー42の内一本を感光体ドラム1に微小間隙を介して近接対向させる位置であり、他方は、図5に示すように、前記の現像ローラー42の近接対向を解除する位置である。前記微小間隙は、現像ローラー42の外径より微小量大きい外径を有して、各現像ローラー42端部近傍に回転自在に支持されたレースリング45を感光体ドラム1に当接させることにより形成される。
【0018】次にフレーム回転手段について説明する。
【0019】右側の側板401には、回転軸部403と同軸上に歯車46が固定されている。この歯車46には、2つの中間歯車47、48及び歯車31を介して、フレーム回転制御用モーター32より動力が伝達される。ここで前段の中間歯車48の回転中心は、支持アーム41bの回動中心軸39と同軸上に設定されており、フレーム40のとる位置によらず歯車46への動力伝達が可能となっている。これにより、フレーム40が、支持アーム41a、41bに対して回転駆動され、フレーム回転制御用モーター32に入力される電気信号により、4本の現像ローラー42のうち所望のものが選択され、支持アーム回動手段による動作とあわせて、感光体ドラム1と対向させることができる。
【0020】続いて現像ローラー回転手段について図1、図2を用いて説明する。4本の現像ローラー42の一端には、それぞれ歯車50Y、50M、50C、50Kが固定されている。これら4つの歯車と、左側の側板401の回転軸部403に回転自在に支承された中間歯車51がかみ合っている。この中間歯車51には、さらに2つの中間歯車52、53及び歯車33を介して現像ローラー回転制御用モーター34より動力が伝達され、現像ローラー42が回転する。ここで前段の中間歯車53の回転中心は、支持アーム41aの回動中心軸39と同軸上に設定されており、フレーム40のとる位置によらず歯車50Y、50M、50C、50Kへの動力伝達が可能となり、現像ローラー42を回転駆動することが可能となっている。
【0021】続いて現像剤の回収、搬送について説明する。フレーム40の回転軸部403の端部には、4本のL字型をした現像剤排出管55Y、55M、55C、55Kが設けられている。フレーム40の各液室と各現像剤排出管55とは、フレーム40の回転軸部403内部に設けられた図示しない4本の通路で結ばれており、現像剤は、各液室より現像剤排出管55に導かれて排出される。これら現像剤排出管55及び図示しない通路により現像剤排出経路が構成されている。図で示されるように各現像剤排出管55はフレーム40の回転軸方向にはそれぞれ長さが異なっているが、前記回転軸と直交する方向には互いの長さが等しい。ある現像ローラー42i(i=Y、M、C、K)が、感光体ドラム1と対向位置にある時、その現像ローラー42iが配置されているフレーム40の液室404i(i=Y、M、C、K)と結ばれている現像剤排出管55i(i=Y、M、C、K)の排出口は、鉛直方向に向く。現像剤排出管55群の下方には現像剤回収容器56が配置されている。現像剤回収容器56は、フレーム40の回転軸方向に4個の開口を有して4個の液室に分割されている。現像剤回収容器56の各室の底部より、各色の現像剤貯蔵容器80i(i=Y、M、C、K)に現像剤回収管57i(i=Y、M、C、K)が接続されている。これらにより、各色の現像剤は、各液室より各色の現像剤排出管55、現像剤回収容器56、現像剤回収管57に導かれて、各色の現像剤貯蔵容器80に排出される。
【0022】また感光体ドラム1とフレーム40の対向位置近傍に並置された各色の現像剤吐出ヘッド58i(i=Y、M、C、K)に、各色の現像剤貯蔵容器80i(i=Y、M、C、K)ポンプ81i(i=Y、M、C、K)を通じて、各色の現像剤が供給可能となっている。
【0023】上記の構成に於て、カラー画像の形成が以下のように行われる。プリンタが画像信号入力待ちの状態では、フレーム40は、上述したとりうる2つの位置の内、図5で示されるように現像ローラー42と感光体ドラム1との近接対向が解除された位置にある。プリンタに画像信号が入力されるかもしくは、内部で信号が形成された段階で、フレーム回転制御用モーター32に信号が入力される。これによりイエローの現像を行う現像ローラー42Yが、感光体ドラム1と対向する位置にくるようにフレーム40が所定の角度回転する。引き続いて、ソレノイド44に信号が入力されて、支持アーム41が回動し、現像ローラー42Yを感光体ドラム1に近接対向させる位置にフレーム40が移動する。次に現像ローラー回転制御用モーター34に信号が入力され現像ローラー42Yおよびその他の現像ローラー42が回転する。前記現像ローラー42Yの回転方向は、矢印Bで示されるごとく感光体ドラム1の回転方向に対してアゲインスト方向である。ここで、現像剤吐出ヘッド58Yよりイエローの現像剤が、現像ローラー42Yと感光体ドラム1の近接領域にむけて吐出される。吐出された現像剤は、感光体ドラム1と現像ローラー42Yの間で形成される微小な間隙に、表面張力により現像ローラー42Y長手方向全域にわたって滞留する。現像ローラー42Yには、図示しない現像バイアス電圧印加手段により、所定の現像バイアスが印加されている。感光体ドラム1上に形成される静電潜像が有する電位と現像ローラー42Yの有する現像バイアスとの電位差に応じて、前記の微小間隙で現像電界が発生する。上述したように前記の微小間隙には、現像剤が滞留しているため、現像剤中に分散しているイエローのトナー粒子により、静電潜像が顕像化される。現像ローラー42Yは、感光体ドラム1に対してアゲインスト回転をしているため、顕像化と同時に感光体ドラム1に付着する余剰現像剤の除去もおこなわれる。イエローの現像工程中、現像剤吐出ヘッド58Yより現像剤は吐出し続けられるが、前記の微小間隙に滞留可能な現像剤量は限られるため、滞留しきれない現像剤は下方に流下する。各現像ローラ42には、クリーニングブレード59が当接しており、現像ローラー42に付着する現像剤をせきとめ、前記の感光体ドラム1と現像ローラー42との近接領域の下流側(感光体ドラム1回転方向基準)に持ち込まれることを妨げている。クリーニングブレードの材質としては、ウレタンゴム、セルロイドがある。ここにおいても、クリーニングブレード59によりせき止められた現像剤は流下し、前記の滞留しきれない現像剤と共に、現像剤排出管55へと導かれる。このとき現像剤排出管55Yの排出口は、鉛直方向に向いており、現像剤回収容器56のイエローの液室の開口部に対向している。現像剤排出管55−Yに導かれた現像剤は、現像剤回収容器56のイエロー室に流下し、現像剤回収管57Yを通り、図示しない現像剤貯蔵容器へと還流する。イエローの静電潜像がすべて顕像化されると、イエローの現像剤の吐出が止められ、現像ローラー42の回転も止められる。続いて支持アーム41が回動し、現像ローラー42Yと感光体ドラム1との近接対向が解除されるようにフレーム40が移動する。続いて、現像ローラー42Mが感光体ドラム1と対向する位置にくるようにフレーム40が所定の角度回転する。再び支持アーム41が回動し、現像ローラー42Mを感光体ドラム1に近接対向させる位置にフレーム40が移動する。引き続いて、現像ローラー42Mおよびその他の現像ローラー42が回転し、現像剤吐出ヘッド58Mよりマゼンダの現像剤が、現像ローラー42Mと感光体ドラム1との近接領域に吐出され、イエローの場合と同様にマゼンダの静電潜像の顕像化が行われる。以下同様にしてフレーム40、現像ローラー42が、回転もしくは移動し、シアン、ブラックの静電潜像の顕像化が行われる。ブラックの顕像化が行われた後、ブラックの現像剤吐出が止められ、現像ローラー42Kの回転もとめられ、現像ローラー42Kと感光体ドラム1の近接対向が解除され、次画像の画像信号入力待機状態となる。または、現像ローラー42Kと感光体ドラム1の近接対向を解除した後、さらにフレーム40を回転させて現像ローラー42−Yと感光体ドラム1を対向させる位置にして、次画像の画像信号入力待機状態としてもよい。この場合は次画像を形成する際に、現像ローラー42Yと感光体ドラム1を近接対向させるためのフレーム40の回転を行う必要がなくなる。本実施例では、湿式多色現像装置のフレーム40を回転させることにより、感光体ドラムの周上に配置が可能で、帯電、露光から現像迄の時間及び現像から転写迄の時間が各色で一定としている。現像装置のフレームを回転系とすると現像装置のフレームに接続される現像剤搬送系の管のねじれの問題が生じるが、本実施例では、現像剤の回収部分から吐出部分までの現像剤搬送系を回転系から分離することで前記の問題を解決している。従って、一定方向のみに湿式多色現像装置のフレーム40を回転させることで、次々にフルカラーの画像を形成を行うことができる。すなわち湿式多色現像装置のフレーム40を逆回転させる必要はないため、フレーム40の回転制御もきわめて容易である。また現像剤排出時には、現像剤排出管55の排出口が現像剤回収容器56の各液室開口部に最近接して対向するように構成されているため、現像剤の混色は生じない。
【0024】図6は、本発明の第2の実施例の湿式多色現像装置に用いられる現像ローラーの断面図である。
【0025】本実施例と第1の実施例の主要な相違は、各現像ローラーの構成にある。その他の、現像剤の回収部分から吐出部分までの現像剤搬送系、フレーム40及びその回転移動機構は、第1の実施例と同様であるので、それらの詳細な説明は省略する。本実施例では、各現像ローラー42は、導電性金属芯金35に弾性層36を巻き付けてなり、この弾性層36は、厚さ1mmの導電性ウレタンゴム37の表層に厚さ20μmのフッソコーティング層38を施してなる。また第1の実施例と異なり、各現像ローラーにはレースリングは、支持されていない。上記の現像ローラー構成で顕像化が以下の様にして行われる。現像ローラー以外の構成は、第1の実施例とほぼ同様であるので、図1、図2、図3、図4を用い、イエローの顕像化を行う場合を例に取り説明する。まず現像ローラー42Yが感光体ドラム1と対向するようにフレーム40が回転し、続いて支持アーム41が回動し、現像ローラー42Yが感光体ドラム1に弾性的に当接させられる。すなわち現像ローラー当接手段は第1の実施例の現像ローラー近接対向手段からレースリングを除いたものである。中間歯車51、52、53、を介して動力が伝達され現像ローラー42が回転する。このとき現像ローラー42Yおよびその他の現像ローラー42の回転方向は、感光体ドラム1に対してウイズ回転であっても、アゲインスト回転であってもよい。第1の実施例の場合と同様に現像剤吐出ヘッド58Yよりイエローの現像剤が、現像ローラー42Yと感光体のドラム1の当接領域にむけて吐出される。吐出された現像剤は、感光体ドラム1回転方向上流側の前記当接領域近傍に、表面張力により現像ローラー42Y長手方向全域に渡って滞留する。現像ローラー42Yには、図示しない現像バイアス電圧印加手段により、所定の現像バイアスが印加されている。感光体ドラム1上に形成される静電潜像が有する電位と現像ローラー42Yの有する現像バイアスとの電位差に応じて、前記の当接領域近傍で現像電界が発生する。上述したように当接領域近傍には、現像剤が滞留しているため、現像剤中に分散しているイエローのトナー粒子により、静電潜像が顕像化される。現像ローラー42Yは感光体ドラム1に弾性的に当接しながら回転しているため、顕像化にあずからず濡れ性によってのみ感光体ドラム1に付着する現像剤は、当接領域下流に通過することができず、本実施例においても顕像化と同時に感光体ドラム1上の余剰現像剤の除去もおこなわれる。イエローの現像工程中、現像剤吐出ヘッド58Yより現像剤は吐出し続けられるが、前記の当接領域近傍に滞留可能な現像剤量は限られるため、滞留しきれない現像剤は下方に流下する。現像ローラ42には、クリーニングブレード59が当接しており、現像ローラー42に付着する現像剤をせきとめ、前記の感光体ドラム1と現像ローラー42の当接接領域の下流側に持ち込まれることを妨げている。ここにおいても、クリーニングブレード59によりせき止められた現像剤は流下し、前記の滞留しきれない現像剤と共に、現像剤排出管55へと導かれる。以下第1の実施例と同様にしてマゼンタ、シアン、ブラックの顕像化が行われ、フルカラー画像が形成される。
【0026】図7、図8は、本発明の第3の実施例である湿式多色現像装置の部分斜視図及び側面図である。本実施例と第1の実施例の主要な相違点は、各色の現像ローラー42に加えて、各色の余剰現像液除去ローラー62Y、62M、62C、62Kが設けられている点である。その他の、現像剤の回収部分から吐出部分までの現像剤搬送系、フレーム40及びその回転移動機構は、第1の実施例と同様であるので、それらの詳細な説明は省略する。以下現像ローラー回転手段、余剰現像液除去ローラー回転手段について説明する。各色の現像ローラー42は、ブラケット63を介してフレーム40に回転自在に支持される。匡体回転軸部403には、大小2つのピッチ円径を有する2段中間歯車61が回転自在に支持されている。またブラケット63には、各現像ローラー42に固定された各歯車52と2段中間歯車61の小歯車とにそれぞれかみ合う中間歯車65が支持されている。現像ローラー回転制御用モーター34より、歯車33、中間歯車53、52、61、65を介して動力が伝達され、現像ローラー42が、矢印Cで示されるごとく、感光体ドラム1の回転方向とウイズ方向に回転する。余剰現像液除去ローラー62は、フレーム40に支持されている。各余剰現像液除去ローラー62に固定された各歯車72と2段中間歯車61の大歯車がかみ合っている。現像ローラー回転制御用モーター34より、歯車33、中間歯車53、52、61を介して動力が伝達され、矢印Dで示されるごとく、各余剰現像液除去ローラー62は、感光体ドラム1の回転方向とアゲインスト方向に回転する。ブラケット63は、フレーム40の回転軸部403に対して微小量回動可能に支持されている。ブラケット63が、フレーム40にバネ66で懸架されることにより、現像ローラー42が感光体ドラム1と近接対向する。またブラケット63の過剰な回動を防止するため、フレーム40には、ブラケットのまわり止めピン67が設けられている。上記の構成により、現像時、現像ローラー42と余剰現像液除去ローラー62がそれぞれ感光体ドラム1と微小間隙を有して近接対向して回転する。ここで前記微小間隙は、第1の実施例と同様にレースリング45を用いて形成されている。第1、第2の実施例と同様にして、感光体ドラム1と現像ローラー42の近接領域に、現像剤吐出ヘッド58より、現像剤が吐出されて、顕像化が行われる。各現像ローラー42、余剰液現像液除去ローラー62には、クリーニングブレード59が当接しており、ここで、不要の現像剤をせき止めている。せき止められた現像剤は、フレームの液室404の下方(フレームの回転中心方向)に流下して現像剤排出管55に導かれる。本実施例では、感光体ドラムと間隙を有して現像ローラーがウイズ回転することにより、単位時間内に現像領域に多量の現像剤を供給できるため、感光体ドラム1の周速(プロセス速度)が大きい場合でも静電潜像の顕像化が行える。本実施例では、各色の現像ローラーをブラケット63を介してフレーム40に支持する場合について述べたが、各色の余剰現像液除去ローラーをブラケットに支持させて、現像ローラーをフレームの側板に支持させる構成としてもよい。
【0027】図9は、本発明の第4の実施例である湿式多色現像装置の側面図である。フレーム40の仕切り板402の端部がコの字形に折れ曲がっている点が第1の実施例と異なる点である。イエローの現像を終了してマゼンダの現像に移る場合を例にとり説明する。イエローの静電潜像の顕像化にあずからずに液室404Y下部(フレーム回転中心方向)に流下したイエローの現像剤の一部が、現像剤排出管55Yに達せずにフレーム40の液室404Y内に残余している状態で、色切り替えのためフレーム40を回転させても、前記の残余する現像剤は、フレーム40の仕切り板402に沿って流下し、仕切り板のコの字部の凹部に貯められる。引続きフレーム40が順次回転しても、前記の残余する現像剤は、フレーム40の開口部より外部に流出することはない。従って本実施例では、色切り替えを行う場合、前色の現像剤が液室404より完全に排出されないうちに、フレーム40を回転させても問題は生じない。すなわち一層短時間で色切り替えが行える。フレーム40の仕切り板の形状以外は第1の実施例と同様であるため、それらの説明は省略する。また本実施例では、感光体ドラム1と導電性の現像ローラー42を近接対向させて現像をおこなっている場合について説明したが、第2の実施例の様に、弾性を有する現像ローラーを感光体ドラムと当接させて現像を行う構成としてもよいし、第3の実施例のように各色毎に現像ローラーと余剰現像液除去ローラーを設けて現像を行う構成としてもよい。
【0028】図15は、本発明第5の実施例の湿式多色現像装置を備えた第2の電子写真プリンタの断面図である。第1の電子写真プリンタとの主要な相違は、以下で述べる湿式多色現像装置4の構成である。その他の構成要素に関しては、第1の電子写真プリンタと同様であるため、説明は省略する。
【0029】図10は、本発明の第5の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す左方向よりみた斜視図、図11は左側面図、図12は右方向よりみた斜視図、図13は右側面図である。
【0030】本実施例と第1の実施例の主要な相違は、フレームの形状および各色の現像ローラーの配置にある。なお図中においては、第1の実施例に対応する箇所には第1の実施例と同じ番号を付す。
【0031】略扇型の左右の側板401に円周方向を4分割する仕切り板402が設けられ、湿式多色現像装置のフレーム40が形成されている。これにより4個の開口を有する4個の液室404Y、404M、404C、404Kが形成されている。フレーム支持手段である左右の支持アーム41a、41bは、図示しないステーで係合されており、フレーム40を回転自在に支持している。現像電極部材であって、導電性金属材質からなる4本の異なる現像ローラー42Y、42M、42C、42Kが、フレーム40の回転軸部403に対して放射線状に等距離の位置に、側板401に対して回転可能に支持されて配置される。フレーム40が回動することで、所望の現像ローラー42が選択される。左右の支持アーム41a、41bは、図示しない電子写真プリンタの本体匡体に対して軸39で回動可能に支持されており、支持アーム41a、41bを回動させることでもフレーム40が移動可能となっている。
【0032】フレーム移動手段は上述したように、第1の実施例と同様に支持アーム回動手段、及びフレーム回動手段である。支持アーム回動手段は、第一の実施例と全く同様であり、これにより、現像ローラー42と感光体ドラム1の対向及び対向解除がおこなわれる。以下フレーム回転手段について説明する。
【0033】右側の側板401には、回転軸部403と同軸上に歯車46が固定されている。この歯車46には、2つの中間歯車47、48及び歯車31を介して、フレーム回転制御用モーター32より動力が伝達される。ここで前段の中間歯車48の回転中心は、支持アーム41bの回動中心軸39と同軸上に設定されており、フレーム40のとる位置によらず歯車46への動力伝達が可能となっている。これにより、フレーム40が、支持アーム41a、41bに対して回動駆動され、フレーム回動制御用モーター32に入力される電気信号により、4本の現像ローラー42のうち所望のものが選択され、支持アーム回動手段による動作とあわせて、感光体ドラム1と対向させることができる。
【0034】続いて現像ローラー回転手段について図10、図11を用いて説明する。4本の現像ローラー42の一端には、それぞれ歯車50Y、50M、50C、50Kが固定されている。歯車50Y、50Mは、中間歯車73と、歯車50C、50Kは、中間歯車74とかみ合っており、さらに中間歯車73、74と中間歯車75がかみ合い、またさらに中間歯車75と左側の側板401の回転軸部403に回転自在に支承された中間歯車51がかみ合っている。この中間歯車51に、さらに2つの中間歯車52、53及び歯車33を介して、現像ローラー回転制御用モーター34より動力が伝達され、現像ローラー42が回転する。ここで前段の中間歯車53の回転中心は、支持アーム41aの回動中心軸39と同軸上に設定されており、フレーム40のとる位置によらず歯車50Y、50M、50C、50Kへの動力伝達が可能となり、現像ローラー42を回転駆動することが可能となっている。
【0035】続いて現像剤の回収、搬送について説明する。フレーム40の回転軸部403の端部には、可撓性を有した各現像剤排出管55Y、55M、55C、55Kの一端が接続されている。フレーム40の各液室と各現像剤排出管55とは、フレーム40の回転軸部403内部に設けられた図示しない4本の通路で結ばれている。各現像剤排出管55i(i=Y、M、C、K)の他端は、各色の現像剤貯蔵容器80i(i=Y、M、C、K)接続されている。これらにより、各色の現像剤は、各液室より各色の現像剤排出管55に導かれて、各色の現像剤貯蔵容器80に排出される。
【0036】また感光体ドラム1とフレーム40の対向位置近傍に並置された各色の現像剤吐出ヘッド58i(i=Y、M、C、K)に、各色の現像剤貯蔵容器80i(i=Y、M、C、K)ポンプ81i(i=Y、M、C、K)を通じて、各色の現像剤が供給可能となっている。
【0037】上記の構成に於て、カラー画像の形成が、第1の実施例とほぼ同様にして以下のように行われる。すなわち色切り替え時には、現像剤吐出ヘッド58からの現像剤の吐出を停止し、現像ローラー42と感光体ドラムとの対向を解除状態にして、フレーム40を回動させ、所望の現像ローラー42を選択する。現像時には、所望の現像ローラー42と感光体ドラム1とを対向させて、現像ローラー42を回転させ、対向領域近傍に現像剤を供給し、感光体ドラム1上の静電潜像を顕像化する。図11では、マゼンダの現像が行われている状態が示されている。各色毎に上記の工程が繰り返され、カラー画像の形成が行われる。
【0038】但し、第4色目すなわち最終色(図中ではブラック)の現像が終了して、次画像の第1色目の現像に移る場合の色切り替え時のみ、フレーム40の回動方向が、他の色切り替え時と逆方向にされる。
【0039】本実施例では、第1の実施例と比較して、フレーム40の回転角度が小さく、360度以上回転することも無い。従って、可撓性を有する各現像剤排出管55を用いることで、第1の実施例で用いた現像剤回収容器を利用せずに、各現像剤排出管55を直接各現像剤貯蔵容器80に接続することができる。さらには液室404の開口部が鉛直方向下方を向くこともない。このことは、現像液の液ダレを防止することに対して有効であり、ひいては、電子写真プリンタの設置姿勢の余裕度を向上させることができる。
【0040】また本実施例でも、第1の実施例と同様に湿式多色現像装置のフレーム40を回動させることにより、感光体ドラム1の周上に配置が可能で、帯電、露光から現像迄の時間及び現像から転写迄の時間が各色で一定としている。
【0041】また本実施例の構成において、現像ローラー42の構成のみを第2の実施例と同様にして、現像ローラー42を感光体ドラム1と当接させながら現像を行ってもよい。
【0042】図16は、本発明の湿式多色現像装置を備えた第3の電子写真プリンタの断面図である。感光体ドラムを用いる代わりに感光体ベルトを用いた点が第1、第2の電子写真プリンタとの主要な相違である。その他の構成要素に関しては、第1と第2の電子写真プリンタと同様であるので、第1のプリンタと同じ番号を付して、説明は省略する。静電潜像担持体として感光体ベルト110を用いた場合でも、本発明の第1から第5の実施例で述べた湿式多色現像装置4を適用できる。図17は、本発明の湿式多色現像装置を備えた第4の電子写真プリンタの断面図である。静電像担持体として、感光体ドラムを用いずに、誘電体ドラム111を用いた点が、これまで述べてきた電子写真プリンタとの主要な相違である。イオンフローヘッドや、静電ヘッドからなる静電潜像形成装置140により、一様帯電、選択的露光のプロセスを経ずに、誘電体ドラム111上に直接静電潜像が形成される。その他の構成要素に関しては、第1と第2の電子写真プリンタと同様であるので、第1のプリンタと同じ番号を付して、説明は省略する。静電潜像担持体として誘電体ドラム111を用いた場合でも、本発明の第1から第5の実施例で述べた湿式多色現像装置4を適用できる。誘電体ドラムを用いた場合には、遮光の必要がなくなり、誘電体ドラム111の誘電層の材質を選択することで、ドラムの寿命を延ばすことも可能となる。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、静電潜像担持体の周上に配置が可能で、帯電、露光から現像迄の時間及び現像から転写迄の時間が各色で一定で、色切り替えが短時間で行え、混色の生じない湿式多色現像装置を実現できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す左方向よりみた斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す左側面図である。
【図3】本発明の第1の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す右方向よりみた斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す右側面図である。
【図5】現像ローラーと感光体ドラムとの近接対向解除状態を示す右側面図である。
【図6】本発明の第2の実施例である湿式多色現像装置に用いられる現像ローラーの構成を示す断面図である。
【図7】本発明の第3の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す、部分斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す側面図である。
【図9】本発明の第4の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す側面図である。
【図10】本発明の第5の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す左方向よりみた斜視図である。
【図11】本発明の第5の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す左側面図である。
【図12】本発明の第5の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す右方向よりみた斜視図である。
【図13】本発明の第5の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す右側面図である。
【図14】本発明の湿式多色現像装置を用いた第1の電子写真プリンタの構成を示す断面図である。
【図15】本発明の湿式多色現像装置を用いた第2の電子写真プリンタの構成を示す断面図である。
【図16】本発明の湿式多色現像装置を用いた第3の電子写真プリンタの構成を示す断面図である。
【図17】本発明の湿式多色現像装置を用いた第4の電子写真プリンタの構成を示す断面図である。
【図18】従来のスリット型の湿式多色現像装置の構成を示す図である。
【図19】従来の現像ローラーを利用した湿式多色現像装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 感光体ドラム
4 湿式多色現像装置
40 フレーム
41 支持アーム
42 現像ローラー
55 現像剤排出管
56 現像剤回収容器
58 現像剤吐出ヘッド
62 余剰現像液除去ローラー
63 ブラケット
80 現像剤貯蔵容器
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子写真方式の複写機やプリンタ等の記録装置に用いられ、絶縁性キャリア液体中に帯電粒子が分散して構成される湿式現像剤をN色(Nは、2以上の整数。以下同じ)用いて静電潜像を顕像化する湿式多色現像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の湿式多色現像装置としては、図18に示すように、静電記録紙100の幅方向に有したスリットより現像液を吐出させて静電潜像の顕像化を行うスリット型現像装置101a〜101dを、静電記録紙搬送方向に、記録色の数程順次配置しているものが知られている(特開昭62−59983)。また図19に示すように感光体ドラム200に近接配置された現像装置201に各異なる色の現像液を順次供給排出していくものも知られている(実開昭64−59273)。これらの従来例をそれぞれ図18、図19に示す。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】図18に示した従来のスリット型のものは、主に記録紙に直接トナー像を形成する多色のプロッタに利用されている。この場合静電潜像担持体である静電記録紙100は現像領域においては、曲率なく(すなわち平面状に)支持されて搬送されている。静電記録紙下方に記録紙面に対して平行に配置された複数のスリット型現像装置101a、101b、101c、101dが上下しながら、各色の現像剤を噴出し、所望の箇所に、所望のトナー像を形成する。スリット型の現像装置を利用した場合、後段のスクイズ装置102において、静電潜像の顕像化にあずからなかった余剰の現像剤を、負圧を利用して静電潜像担持体とスクイズ装置とを密着させてスリットより回収している。負圧を利用するためには、静電潜像担持体と現像装置とを密着させる必要があるが、プロッタの場合は静電潜像担持体が、可撓性を有する静電記録紙であるため、問題は生じなかった。
【0004】しかしながら可撓性のない静電潜像担持体である感光体ドラムを、上記のスリット型現像装置で顕像化する際には、スクイズ装置と感光体ドラムを感光体ドラムの感光層を傷つけることなく密着させ余剰の現像剤を回収することが困難となっていた。さらには、曲率を有する感光体ドラム周囲に、前記の複数のスリット型現像装置を多段に配置することも困難であった。また感光体ドラム周囲に前記のスリット型現像装置を多段に配置できたとしても、感光体ドラムが、被帯電位置もしくは被露光位置から被現像位置位置に達する迄の時間が各色毎に異なるため、感光体ドラム帯電減衰特性の経時劣化を考慮した上で、全色で一様なトナーの付着特性を得ることが困難となる。さらにまた、被現像位置から被転写位置に感光体ドラムが移動する時間も各色毎に異なるため、各色毎の付着トナーの湿潤状態が異なり、全色で一様な転写特性を得ることも困難となる。
【0005】また図19に示した感光体ドラム200に近接するローラーを利用する現像装置201では、ある色の現像剤が現像装置の容器202内に供給され、その色の現像が終了後、容器より当該色の貯蔵容器204i(i=a、b、c、d)に回収される。その後、次色の現像剤が現像装置の容器202内に導かれ、次色の現像が行われる。そのため混色を防ぐには、前色の現像剤をすべて貯蔵容器204に回収しおわるまでは、次色の現像剤を現像装置201に導くことができず、色切り替えに時間を要していた。さらには、同一現像装置の容器202に異なる色の現像剤が導かれるため、各色に他色の現像剤が微量ではあるが混入し、経時的に各色の現像剤に濁りが生じるのは避けられなかった。
【0006】本発明の目的は、かかる問題点を解決し、感光体ドラムの周上に配置が可能で、帯電、露光から現像迄の時間及び現像から転写迄の時間が各色で一定で、色切り替えが短時間で行え混色の生じない湿式多色現像装置を実現することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の湿式多色現像装置は、回転する静電潜像担持体上の静電潜像をN色の湿式現像剤を用いて現像するものであって、前記静電潜像担持体の軸線と平行な軸線を中心として回動可能に設けられたフレームと、このフレームに対して回転可能にかつ前記静電潜像担持体と平行に設けられたN本の現像ローラーと、前記フレームを移動させて前記N本の現像ローラーの内の任意の現像ローラーを前記静電潜像担持体に対向させるフレーム移動手段と、前記静電潜像担持体とこれに対向している現像ローラーとの間にN色の内の任意の湿式現像剤を独立して供給する現像剤供給手段を備えたことを特徴とする。
【0008】ここで、静電潜像担持体と現像ローラーとの対向には、近接対向する場合と、当接対向する場合とを含むものとする。
【0009】
【実施例】本発明の実施例について説明する。
【0010】図14は、本発明の湿式多色現像装置を備えた第1の電子写真プリンタの断面図である。
【0011】この電子写真プリンタは、アルミ素管にアモルファスセレンの薄層蒸着してなる静電潜像担持体である感光体ドラム1の周囲に帯電装置2、露光装置3、第1色から第4色のすなわちイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色の現像が可能な湿式多色現像装置4、転写ドラム5、圧力ローラー6、クリーニング装置7、除電装置8が順次配置されている。
【0012】上記の構成により記録紙への画像形成が以下のように行われる。
【0013】圧力ローラー6を破線で示す位置の圧力解除状態に置かれる。矢印Aで示される方向に感光体ドラム1が回転する。帯電工程、露光工程を経て、感光体ドラム1上に、第1色目のイエローの静電潜像が形成される。上記静電潜像は、湿式多色現像装置4で第1色目のイエローの現像剤を用いて、イエローのトナー像が形成される。引続き、感光体ドラム1上の前記イエローのトナー像が、転写ドラム5に静電的に転写される。感光体ドラム1は、クリーニング工程、除電工程を経て、再び帯電工程へ移る。以下同様にして、感光体ドラム1上に第2色目のマゼンダの静電潜像が形成され、第2色目のマゼンダの現像剤によりマゼンダのトナー像が形成され、転写ドラム5に第1色目のイエローのトナー像に重ねて第2色目のマゼンダのトナー像が静電的に転写される。さらに、第3色、第4色のシアン、ブラックのトナー像が転写ドラム5上に重ねて転写されて、転写ドラム上にフルカラー(多色)のトナー像が形成される。給紙装置20より搬出された記録紙21は、転写ドラム5上の4色のトナー像の形成に合わせて、転写領域に搬送される。
【0014】次に、圧力ローラ6が実線で示す加圧状態となって記録紙21を介して転写ドラム5を押圧し、トナー像が転写ドラム5から記録紙21に転写される。
【0015】記録紙21は、転写工程を経た後、剥離爪9により転写ドラム5から剥離され、熱定着装置10においてキャリア液が蒸発させられ、更にトナー像が固着させられ、排紙トレイ22に収納される。
【0016】図1は、本発明の第1の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す左方向よりみた斜視図、図2は左側面図、図3は右方向よりみた斜視図、図4は右側面図である。本実施例では前述したようにイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色の現像剤を使用して、フルカラー画像を形成する。円盤状の左右の側板401に円周方向を4分割する仕切り板402が設けられ、湿式多色現像装置のフレーム40が形成されている。これにより4個の開口を有する4個の液室404Y、404M、404C、404Kが形成されている。フレーム支持手段である左右の支持アーム41a、41bは、図示しないステーで係合されており、フレーム40を回転自在に支持している。現像電極部材であって、導電性金属材質からなる4本の異なる現像ローラー42Y、42M、42C、42Kが、フレーム40の回転軸部403に対して放射線状に等距離の位置に、側板401に対して回転可能に支持されて配置される。フレーム40が回転することで、所望の現像ローラー42が選択される。左右の支持アーム41a、41bは、図示しない電子写真プリンタの本体匡体に対して軸39で回動可能に支持されており、支持アーム41a、41bを回動させることでもフレーム40が移動可能となっている。以下フレーム移動手段について説明する。フレーム移動手段は、上述したように、現像ローラー42と感光体ドラム1の対向及び対向解除を行う支持アーム回動手段と、所望の現像ローラー42を選択するフレーム回転手段からなる。先ず支持アーム回動手段について説明する。
【0017】電子写真プリンタ本体の匡体に対して軸39で支持された支持アーム41bの一端には、リンク機構43を介してソレノイド44が係合されている。ソレノイド44に入力される電気信号に応じて、支持アーム41b、41aの姿勢が決まり、フレーム40は、とりうる2つの位置のうち一方の位置に定まる。2つの位置の内一方は、図4に示すように側板401に支持された4本の現像ローラー42の内一本を感光体ドラム1に微小間隙を介して近接対向させる位置であり、他方は、図5に示すように、前記の現像ローラー42の近接対向を解除する位置である。前記微小間隙は、現像ローラー42の外径より微小量大きい外径を有して、各現像ローラー42端部近傍に回転自在に支持されたレースリング45を感光体ドラム1に当接させることにより形成される。
【0018】次にフレーム回転手段について説明する。
【0019】右側の側板401には、回転軸部403と同軸上に歯車46が固定されている。この歯車46には、2つの中間歯車47、48及び歯車31を介して、フレーム回転制御用モーター32より動力が伝達される。ここで前段の中間歯車48の回転中心は、支持アーム41bの回動中心軸39と同軸上に設定されており、フレーム40のとる位置によらず歯車46への動力伝達が可能となっている。これにより、フレーム40が、支持アーム41a、41bに対して回転駆動され、フレーム回転制御用モーター32に入力される電気信号により、4本の現像ローラー42のうち所望のものが選択され、支持アーム回動手段による動作とあわせて、感光体ドラム1と対向させることができる。
【0020】続いて現像ローラー回転手段について図1、図2を用いて説明する。4本の現像ローラー42の一端には、それぞれ歯車50Y、50M、50C、50Kが固定されている。これら4つの歯車と、左側の側板401の回転軸部403に回転自在に支承された中間歯車51がかみ合っている。この中間歯車51には、さらに2つの中間歯車52、53及び歯車33を介して現像ローラー回転制御用モーター34より動力が伝達され、現像ローラー42が回転する。ここで前段の中間歯車53の回転中心は、支持アーム41aの回動中心軸39と同軸上に設定されており、フレーム40のとる位置によらず歯車50Y、50M、50C、50Kへの動力伝達が可能となり、現像ローラー42を回転駆動することが可能となっている。
【0021】続いて現像剤の回収、搬送について説明する。フレーム40の回転軸部403の端部には、4本のL字型をした現像剤排出管55Y、55M、55C、55Kが設けられている。フレーム40の各液室と各現像剤排出管55とは、フレーム40の回転軸部403内部に設けられた図示しない4本の通路で結ばれており、現像剤は、各液室より現像剤排出管55に導かれて排出される。これら現像剤排出管55及び図示しない通路により現像剤排出経路が構成されている。図で示されるように各現像剤排出管55はフレーム40の回転軸方向にはそれぞれ長さが異なっているが、前記回転軸と直交する方向には互いの長さが等しい。ある現像ローラー42i(i=Y、M、C、K)が、感光体ドラム1と対向位置にある時、その現像ローラー42iが配置されているフレーム40の液室404i(i=Y、M、C、K)と結ばれている現像剤排出管55i(i=Y、M、C、K)の排出口は、鉛直方向に向く。現像剤排出管55群の下方には現像剤回収容器56が配置されている。現像剤回収容器56は、フレーム40の回転軸方向に4個の開口を有して4個の液室に分割されている。現像剤回収容器56の各室の底部より、各色の現像剤貯蔵容器80i(i=Y、M、C、K)に現像剤回収管57i(i=Y、M、C、K)が接続されている。これらにより、各色の現像剤は、各液室より各色の現像剤排出管55、現像剤回収容器56、現像剤回収管57に導かれて、各色の現像剤貯蔵容器80に排出される。
【0022】また感光体ドラム1とフレーム40の対向位置近傍に並置された各色の現像剤吐出ヘッド58i(i=Y、M、C、K)に、各色の現像剤貯蔵容器80i(i=Y、M、C、K)ポンプ81i(i=Y、M、C、K)を通じて、各色の現像剤が供給可能となっている。
【0023】上記の構成に於て、カラー画像の形成が以下のように行われる。プリンタが画像信号入力待ちの状態では、フレーム40は、上述したとりうる2つの位置の内、図5で示されるように現像ローラー42と感光体ドラム1との近接対向が解除された位置にある。プリンタに画像信号が入力されるかもしくは、内部で信号が形成された段階で、フレーム回転制御用モーター32に信号が入力される。これによりイエローの現像を行う現像ローラー42Yが、感光体ドラム1と対向する位置にくるようにフレーム40が所定の角度回転する。引き続いて、ソレノイド44に信号が入力されて、支持アーム41が回動し、現像ローラー42Yを感光体ドラム1に近接対向させる位置にフレーム40が移動する。次に現像ローラー回転制御用モーター34に信号が入力され現像ローラー42Yおよびその他の現像ローラー42が回転する。前記現像ローラー42Yの回転方向は、矢印Bで示されるごとく感光体ドラム1の回転方向に対してアゲインスト方向である。ここで、現像剤吐出ヘッド58Yよりイエローの現像剤が、現像ローラー42Yと感光体ドラム1の近接領域にむけて吐出される。吐出された現像剤は、感光体ドラム1と現像ローラー42Yの間で形成される微小な間隙に、表面張力により現像ローラー42Y長手方向全域にわたって滞留する。現像ローラー42Yには、図示しない現像バイアス電圧印加手段により、所定の現像バイアスが印加されている。感光体ドラム1上に形成される静電潜像が有する電位と現像ローラー42Yの有する現像バイアスとの電位差に応じて、前記の微小間隙で現像電界が発生する。上述したように前記の微小間隙には、現像剤が滞留しているため、現像剤中に分散しているイエローのトナー粒子により、静電潜像が顕像化される。現像ローラー42Yは、感光体ドラム1に対してアゲインスト回転をしているため、顕像化と同時に感光体ドラム1に付着する余剰現像剤の除去もおこなわれる。イエローの現像工程中、現像剤吐出ヘッド58Yより現像剤は吐出し続けられるが、前記の微小間隙に滞留可能な現像剤量は限られるため、滞留しきれない現像剤は下方に流下する。各現像ローラ42には、クリーニングブレード59が当接しており、現像ローラー42に付着する現像剤をせきとめ、前記の感光体ドラム1と現像ローラー42との近接領域の下流側(感光体ドラム1回転方向基準)に持ち込まれることを妨げている。クリーニングブレードの材質としては、ウレタンゴム、セルロイドがある。ここにおいても、クリーニングブレード59によりせき止められた現像剤は流下し、前記の滞留しきれない現像剤と共に、現像剤排出管55へと導かれる。このとき現像剤排出管55Yの排出口は、鉛直方向に向いており、現像剤回収容器56のイエローの液室の開口部に対向している。現像剤排出管55−Yに導かれた現像剤は、現像剤回収容器56のイエロー室に流下し、現像剤回収管57Yを通り、図示しない現像剤貯蔵容器へと還流する。イエローの静電潜像がすべて顕像化されると、イエローの現像剤の吐出が止められ、現像ローラー42の回転も止められる。続いて支持アーム41が回動し、現像ローラー42Yと感光体ドラム1との近接対向が解除されるようにフレーム40が移動する。続いて、現像ローラー42Mが感光体ドラム1と対向する位置にくるようにフレーム40が所定の角度回転する。再び支持アーム41が回動し、現像ローラー42Mを感光体ドラム1に近接対向させる位置にフレーム40が移動する。引き続いて、現像ローラー42Mおよびその他の現像ローラー42が回転し、現像剤吐出ヘッド58Mよりマゼンダの現像剤が、現像ローラー42Mと感光体ドラム1との近接領域に吐出され、イエローの場合と同様にマゼンダの静電潜像の顕像化が行われる。以下同様にしてフレーム40、現像ローラー42が、回転もしくは移動し、シアン、ブラックの静電潜像の顕像化が行われる。ブラックの顕像化が行われた後、ブラックの現像剤吐出が止められ、現像ローラー42Kの回転もとめられ、現像ローラー42Kと感光体ドラム1の近接対向が解除され、次画像の画像信号入力待機状態となる。または、現像ローラー42Kと感光体ドラム1の近接対向を解除した後、さらにフレーム40を回転させて現像ローラー42−Yと感光体ドラム1を対向させる位置にして、次画像の画像信号入力待機状態としてもよい。この場合は次画像を形成する際に、現像ローラー42Yと感光体ドラム1を近接対向させるためのフレーム40の回転を行う必要がなくなる。本実施例では、湿式多色現像装置のフレーム40を回転させることにより、感光体ドラムの周上に配置が可能で、帯電、露光から現像迄の時間及び現像から転写迄の時間が各色で一定としている。現像装置のフレームを回転系とすると現像装置のフレームに接続される現像剤搬送系の管のねじれの問題が生じるが、本実施例では、現像剤の回収部分から吐出部分までの現像剤搬送系を回転系から分離することで前記の問題を解決している。従って、一定方向のみに湿式多色現像装置のフレーム40を回転させることで、次々にフルカラーの画像を形成を行うことができる。すなわち湿式多色現像装置のフレーム40を逆回転させる必要はないため、フレーム40の回転制御もきわめて容易である。また現像剤排出時には、現像剤排出管55の排出口が現像剤回収容器56の各液室開口部に最近接して対向するように構成されているため、現像剤の混色は生じない。
【0024】図6は、本発明の第2の実施例の湿式多色現像装置に用いられる現像ローラーの断面図である。
【0025】本実施例と第1の実施例の主要な相違は、各現像ローラーの構成にある。その他の、現像剤の回収部分から吐出部分までの現像剤搬送系、フレーム40及びその回転移動機構は、第1の実施例と同様であるので、それらの詳細な説明は省略する。本実施例では、各現像ローラー42は、導電性金属芯金35に弾性層36を巻き付けてなり、この弾性層36は、厚さ1mmの導電性ウレタンゴム37の表層に厚さ20μmのフッソコーティング層38を施してなる。また第1の実施例と異なり、各現像ローラーにはレースリングは、支持されていない。上記の現像ローラー構成で顕像化が以下の様にして行われる。現像ローラー以外の構成は、第1の実施例とほぼ同様であるので、図1、図2、図3、図4を用い、イエローの顕像化を行う場合を例に取り説明する。まず現像ローラー42Yが感光体ドラム1と対向するようにフレーム40が回転し、続いて支持アーム41が回動し、現像ローラー42Yが感光体ドラム1に弾性的に当接させられる。すなわち現像ローラー当接手段は第1の実施例の現像ローラー近接対向手段からレースリングを除いたものである。中間歯車51、52、53、を介して動力が伝達され現像ローラー42が回転する。このとき現像ローラー42Yおよびその他の現像ローラー42の回転方向は、感光体ドラム1に対してウイズ回転であっても、アゲインスト回転であってもよい。第1の実施例の場合と同様に現像剤吐出ヘッド58Yよりイエローの現像剤が、現像ローラー42Yと感光体のドラム1の当接領域にむけて吐出される。吐出された現像剤は、感光体ドラム1回転方向上流側の前記当接領域近傍に、表面張力により現像ローラー42Y長手方向全域に渡って滞留する。現像ローラー42Yには、図示しない現像バイアス電圧印加手段により、所定の現像バイアスが印加されている。感光体ドラム1上に形成される静電潜像が有する電位と現像ローラー42Yの有する現像バイアスとの電位差に応じて、前記の当接領域近傍で現像電界が発生する。上述したように当接領域近傍には、現像剤が滞留しているため、現像剤中に分散しているイエローのトナー粒子により、静電潜像が顕像化される。現像ローラー42Yは感光体ドラム1に弾性的に当接しながら回転しているため、顕像化にあずからず濡れ性によってのみ感光体ドラム1に付着する現像剤は、当接領域下流に通過することができず、本実施例においても顕像化と同時に感光体ドラム1上の余剰現像剤の除去もおこなわれる。イエローの現像工程中、現像剤吐出ヘッド58Yより現像剤は吐出し続けられるが、前記の当接領域近傍に滞留可能な現像剤量は限られるため、滞留しきれない現像剤は下方に流下する。現像ローラ42には、クリーニングブレード59が当接しており、現像ローラー42に付着する現像剤をせきとめ、前記の感光体ドラム1と現像ローラー42の当接接領域の下流側に持ち込まれることを妨げている。ここにおいても、クリーニングブレード59によりせき止められた現像剤は流下し、前記の滞留しきれない現像剤と共に、現像剤排出管55へと導かれる。以下第1の実施例と同様にしてマゼンタ、シアン、ブラックの顕像化が行われ、フルカラー画像が形成される。
【0026】図7、図8は、本発明の第3の実施例である湿式多色現像装置の部分斜視図及び側面図である。本実施例と第1の実施例の主要な相違点は、各色の現像ローラー42に加えて、各色の余剰現像液除去ローラー62Y、62M、62C、62Kが設けられている点である。その他の、現像剤の回収部分から吐出部分までの現像剤搬送系、フレーム40及びその回転移動機構は、第1の実施例と同様であるので、それらの詳細な説明は省略する。以下現像ローラー回転手段、余剰現像液除去ローラー回転手段について説明する。各色の現像ローラー42は、ブラケット63を介してフレーム40に回転自在に支持される。匡体回転軸部403には、大小2つのピッチ円径を有する2段中間歯車61が回転自在に支持されている。またブラケット63には、各現像ローラー42に固定された各歯車52と2段中間歯車61の小歯車とにそれぞれかみ合う中間歯車65が支持されている。現像ローラー回転制御用モーター34より、歯車33、中間歯車53、52、61、65を介して動力が伝達され、現像ローラー42が、矢印Cで示されるごとく、感光体ドラム1の回転方向とウイズ方向に回転する。余剰現像液除去ローラー62は、フレーム40に支持されている。各余剰現像液除去ローラー62に固定された各歯車72と2段中間歯車61の大歯車がかみ合っている。現像ローラー回転制御用モーター34より、歯車33、中間歯車53、52、61を介して動力が伝達され、矢印Dで示されるごとく、各余剰現像液除去ローラー62は、感光体ドラム1の回転方向とアゲインスト方向に回転する。ブラケット63は、フレーム40の回転軸部403に対して微小量回動可能に支持されている。ブラケット63が、フレーム40にバネ66で懸架されることにより、現像ローラー42が感光体ドラム1と近接対向する。またブラケット63の過剰な回動を防止するため、フレーム40には、ブラケットのまわり止めピン67が設けられている。上記の構成により、現像時、現像ローラー42と余剰現像液除去ローラー62がそれぞれ感光体ドラム1と微小間隙を有して近接対向して回転する。ここで前記微小間隙は、第1の実施例と同様にレースリング45を用いて形成されている。第1、第2の実施例と同様にして、感光体ドラム1と現像ローラー42の近接領域に、現像剤吐出ヘッド58より、現像剤が吐出されて、顕像化が行われる。各現像ローラー42、余剰液現像液除去ローラー62には、クリーニングブレード59が当接しており、ここで、不要の現像剤をせき止めている。せき止められた現像剤は、フレームの液室404の下方(フレームの回転中心方向)に流下して現像剤排出管55に導かれる。本実施例では、感光体ドラムと間隙を有して現像ローラーがウイズ回転することにより、単位時間内に現像領域に多量の現像剤を供給できるため、感光体ドラム1の周速(プロセス速度)が大きい場合でも静電潜像の顕像化が行える。本実施例では、各色の現像ローラーをブラケット63を介してフレーム40に支持する場合について述べたが、各色の余剰現像液除去ローラーをブラケットに支持させて、現像ローラーをフレームの側板に支持させる構成としてもよい。
【0027】図9は、本発明の第4の実施例である湿式多色現像装置の側面図である。フレーム40の仕切り板402の端部がコの字形に折れ曲がっている点が第1の実施例と異なる点である。イエローの現像を終了してマゼンダの現像に移る場合を例にとり説明する。イエローの静電潜像の顕像化にあずからずに液室404Y下部(フレーム回転中心方向)に流下したイエローの現像剤の一部が、現像剤排出管55Yに達せずにフレーム40の液室404Y内に残余している状態で、色切り替えのためフレーム40を回転させても、前記の残余する現像剤は、フレーム40の仕切り板402に沿って流下し、仕切り板のコの字部の凹部に貯められる。引続きフレーム40が順次回転しても、前記の残余する現像剤は、フレーム40の開口部より外部に流出することはない。従って本実施例では、色切り替えを行う場合、前色の現像剤が液室404より完全に排出されないうちに、フレーム40を回転させても問題は生じない。すなわち一層短時間で色切り替えが行える。フレーム40の仕切り板の形状以外は第1の実施例と同様であるため、それらの説明は省略する。また本実施例では、感光体ドラム1と導電性の現像ローラー42を近接対向させて現像をおこなっている場合について説明したが、第2の実施例の様に、弾性を有する現像ローラーを感光体ドラムと当接させて現像を行う構成としてもよいし、第3の実施例のように各色毎に現像ローラーと余剰現像液除去ローラーを設けて現像を行う構成としてもよい。
【0028】図15は、本発明第5の実施例の湿式多色現像装置を備えた第2の電子写真プリンタの断面図である。第1の電子写真プリンタとの主要な相違は、以下で述べる湿式多色現像装置4の構成である。その他の構成要素に関しては、第1の電子写真プリンタと同様であるため、説明は省略する。
【0029】図10は、本発明の第5の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す左方向よりみた斜視図、図11は左側面図、図12は右方向よりみた斜視図、図13は右側面図である。
【0030】本実施例と第1の実施例の主要な相違は、フレームの形状および各色の現像ローラーの配置にある。なお図中においては、第1の実施例に対応する箇所には第1の実施例と同じ番号を付す。
【0031】略扇型の左右の側板401に円周方向を4分割する仕切り板402が設けられ、湿式多色現像装置のフレーム40が形成されている。これにより4個の開口を有する4個の液室404Y、404M、404C、404Kが形成されている。フレーム支持手段である左右の支持アーム41a、41bは、図示しないステーで係合されており、フレーム40を回転自在に支持している。現像電極部材であって、導電性金属材質からなる4本の異なる現像ローラー42Y、42M、42C、42Kが、フレーム40の回転軸部403に対して放射線状に等距離の位置に、側板401に対して回転可能に支持されて配置される。フレーム40が回動することで、所望の現像ローラー42が選択される。左右の支持アーム41a、41bは、図示しない電子写真プリンタの本体匡体に対して軸39で回動可能に支持されており、支持アーム41a、41bを回動させることでもフレーム40が移動可能となっている。
【0032】フレーム移動手段は上述したように、第1の実施例と同様に支持アーム回動手段、及びフレーム回動手段である。支持アーム回動手段は、第一の実施例と全く同様であり、これにより、現像ローラー42と感光体ドラム1の対向及び対向解除がおこなわれる。以下フレーム回転手段について説明する。
【0033】右側の側板401には、回転軸部403と同軸上に歯車46が固定されている。この歯車46には、2つの中間歯車47、48及び歯車31を介して、フレーム回転制御用モーター32より動力が伝達される。ここで前段の中間歯車48の回転中心は、支持アーム41bの回動中心軸39と同軸上に設定されており、フレーム40のとる位置によらず歯車46への動力伝達が可能となっている。これにより、フレーム40が、支持アーム41a、41bに対して回動駆動され、フレーム回動制御用モーター32に入力される電気信号により、4本の現像ローラー42のうち所望のものが選択され、支持アーム回動手段による動作とあわせて、感光体ドラム1と対向させることができる。
【0034】続いて現像ローラー回転手段について図10、図11を用いて説明する。4本の現像ローラー42の一端には、それぞれ歯車50Y、50M、50C、50Kが固定されている。歯車50Y、50Mは、中間歯車73と、歯車50C、50Kは、中間歯車74とかみ合っており、さらに中間歯車73、74と中間歯車75がかみ合い、またさらに中間歯車75と左側の側板401の回転軸部403に回転自在に支承された中間歯車51がかみ合っている。この中間歯車51に、さらに2つの中間歯車52、53及び歯車33を介して、現像ローラー回転制御用モーター34より動力が伝達され、現像ローラー42が回転する。ここで前段の中間歯車53の回転中心は、支持アーム41aの回動中心軸39と同軸上に設定されており、フレーム40のとる位置によらず歯車50Y、50M、50C、50Kへの動力伝達が可能となり、現像ローラー42を回転駆動することが可能となっている。
【0035】続いて現像剤の回収、搬送について説明する。フレーム40の回転軸部403の端部には、可撓性を有した各現像剤排出管55Y、55M、55C、55Kの一端が接続されている。フレーム40の各液室と各現像剤排出管55とは、フレーム40の回転軸部403内部に設けられた図示しない4本の通路で結ばれている。各現像剤排出管55i(i=Y、M、C、K)の他端は、各色の現像剤貯蔵容器80i(i=Y、M、C、K)接続されている。これらにより、各色の現像剤は、各液室より各色の現像剤排出管55に導かれて、各色の現像剤貯蔵容器80に排出される。
【0036】また感光体ドラム1とフレーム40の対向位置近傍に並置された各色の現像剤吐出ヘッド58i(i=Y、M、C、K)に、各色の現像剤貯蔵容器80i(i=Y、M、C、K)ポンプ81i(i=Y、M、C、K)を通じて、各色の現像剤が供給可能となっている。
【0037】上記の構成に於て、カラー画像の形成が、第1の実施例とほぼ同様にして以下のように行われる。すなわち色切り替え時には、現像剤吐出ヘッド58からの現像剤の吐出を停止し、現像ローラー42と感光体ドラムとの対向を解除状態にして、フレーム40を回動させ、所望の現像ローラー42を選択する。現像時には、所望の現像ローラー42と感光体ドラム1とを対向させて、現像ローラー42を回転させ、対向領域近傍に現像剤を供給し、感光体ドラム1上の静電潜像を顕像化する。図11では、マゼンダの現像が行われている状態が示されている。各色毎に上記の工程が繰り返され、カラー画像の形成が行われる。
【0038】但し、第4色目すなわち最終色(図中ではブラック)の現像が終了して、次画像の第1色目の現像に移る場合の色切り替え時のみ、フレーム40の回動方向が、他の色切り替え時と逆方向にされる。
【0039】本実施例では、第1の実施例と比較して、フレーム40の回転角度が小さく、360度以上回転することも無い。従って、可撓性を有する各現像剤排出管55を用いることで、第1の実施例で用いた現像剤回収容器を利用せずに、各現像剤排出管55を直接各現像剤貯蔵容器80に接続することができる。さらには液室404の開口部が鉛直方向下方を向くこともない。このことは、現像液の液ダレを防止することに対して有効であり、ひいては、電子写真プリンタの設置姿勢の余裕度を向上させることができる。
【0040】また本実施例でも、第1の実施例と同様に湿式多色現像装置のフレーム40を回動させることにより、感光体ドラム1の周上に配置が可能で、帯電、露光から現像迄の時間及び現像から転写迄の時間が各色で一定としている。
【0041】また本実施例の構成において、現像ローラー42の構成のみを第2の実施例と同様にして、現像ローラー42を感光体ドラム1と当接させながら現像を行ってもよい。
【0042】図16は、本発明の湿式多色現像装置を備えた第3の電子写真プリンタの断面図である。感光体ドラムを用いる代わりに感光体ベルトを用いた点が第1、第2の電子写真プリンタとの主要な相違である。その他の構成要素に関しては、第1と第2の電子写真プリンタと同様であるので、第1のプリンタと同じ番号を付して、説明は省略する。静電潜像担持体として感光体ベルト110を用いた場合でも、本発明の第1から第5の実施例で述べた湿式多色現像装置4を適用できる。図17は、本発明の湿式多色現像装置を備えた第4の電子写真プリンタの断面図である。静電像担持体として、感光体ドラムを用いずに、誘電体ドラム111を用いた点が、これまで述べてきた電子写真プリンタとの主要な相違である。イオンフローヘッドや、静電ヘッドからなる静電潜像形成装置140により、一様帯電、選択的露光のプロセスを経ずに、誘電体ドラム111上に直接静電潜像が形成される。その他の構成要素に関しては、第1と第2の電子写真プリンタと同様であるので、第1のプリンタと同じ番号を付して、説明は省略する。静電潜像担持体として誘電体ドラム111を用いた場合でも、本発明の第1から第5の実施例で述べた湿式多色現像装置4を適用できる。誘電体ドラムを用いた場合には、遮光の必要がなくなり、誘電体ドラム111の誘電層の材質を選択することで、ドラムの寿命を延ばすことも可能となる。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、静電潜像担持体の周上に配置が可能で、帯電、露光から現像迄の時間及び現像から転写迄の時間が各色で一定で、色切り替えが短時間で行え、混色の生じない湿式多色現像装置を実現できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す左方向よりみた斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す左側面図である。
【図3】本発明の第1の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す右方向よりみた斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す右側面図である。
【図5】現像ローラーと感光体ドラムとの近接対向解除状態を示す右側面図である。
【図6】本発明の第2の実施例である湿式多色現像装置に用いられる現像ローラーの構成を示す断面図である。
【図7】本発明の第3の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す、部分斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す側面図である。
【図9】本発明の第4の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す側面図である。
【図10】本発明の第5の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す左方向よりみた斜視図である。
【図11】本発明の第5の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す左側面図である。
【図12】本発明の第5の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す右方向よりみた斜視図である。
【図13】本発明の第5の実施例である湿式多色現像装置の構成を示す右側面図である。
【図14】本発明の湿式多色現像装置を用いた第1の電子写真プリンタの構成を示す断面図である。
【図15】本発明の湿式多色現像装置を用いた第2の電子写真プリンタの構成を示す断面図である。
【図16】本発明の湿式多色現像装置を用いた第3の電子写真プリンタの構成を示す断面図である。
【図17】本発明の湿式多色現像装置を用いた第4の電子写真プリンタの構成を示す断面図である。
【図18】従来のスリット型の湿式多色現像装置の構成を示す図である。
【図19】従来の現像ローラーを利用した湿式多色現像装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 感光体ドラム
4 湿式多色現像装置
40 フレーム
41 支持アーム
42 現像ローラー
55 現像剤排出管
56 現像剤回収容器
58 現像剤吐出ヘッド
62 余剰現像液除去ローラー
63 ブラケット
80 現像剤貯蔵容器
【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転する静電潜像担持体上の静電潜像をN色の湿式現像剤を用いて現像する湿式多色現像装置であって、前記静電潜像担持体の軸線と平行な軸線を中心として回動可能に設けられたフレームと、このフレームに対して回転可能にかつ前記静電潜像担持体と平行に設けられたN本の現像ローラーと、前記フレームを移動させて前記N本の現像ローラーの内の任意の現像ローラーを前記静電潜像担持体に対向させるフレーム移動手段と、前記静電潜像担持体とこれに対向している現像ローラーとの間にN色の内の任意の湿式現像剤を独立して供給する現像剤供給手段を備えたことを特徴とする湿式多色現像装置。
【請求項1】 回転する静電潜像担持体上の静電潜像をN色の湿式現像剤を用いて現像する湿式多色現像装置であって、前記静電潜像担持体の軸線と平行な軸線を中心として回動可能に設けられたフレームと、このフレームに対して回転可能にかつ前記静電潜像担持体と平行に設けられたN本の現像ローラーと、前記フレームを移動させて前記N本の現像ローラーの内の任意の現像ローラーを前記静電潜像担持体に対向させるフレーム移動手段と、前記静電潜像担持体とこれに対向している現像ローラーとの間にN色の内の任意の湿式現像剤を独立して供給する現像剤供給手段を備えたことを特徴とする湿式多色現像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
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【図18】
【図19】
【公開番号】特開平5−232777
【公開日】平成5年(1993)9月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−32225
【出願日】平成4年(1992)2月19日
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【公開日】平成5年(1993)9月10日
【国際特許分類】
【出願日】平成4年(1992)2月19日
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
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