説明

湿式粉塵吸着装置

【課題】壁際や装置間に簡易に設置することができるパネル形の湿式粉塵吸着装置を提供する。
【解決手段】門形の枠体1と、該枠体の上辺部に水平に設けた注水樋4と、該注水樋上に設けられた放水管10と、該注水樋から吊下することにより前記枠体内に張設したネット5と、枠体1の下辺部に設けられネット5の下縁部を浸漬させている水受槽7と、水受槽の水を放水管10に循環させる電動ポンプ8とからなり、放水管10から放出された水をネット5に沿って流下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁際や装置間に簡易に設置することができるパネル形の湿式粉塵吸着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば空気中に紙粉が舞い上がる段ボール紙加工工場においては、製品に紙粉その他の粉塵が付着することで商品価値が著しく下がってしまうという問題がある。そのために、エアーカーテンにより粉塵を遮断、吸収することが考えられるが、一般にエアーカーテンは、天井部や床部に格別な工事を要し工場の建屋構造をも考慮しないと設置できないため設置費用が非常に高くなるという問題があるとともに、移動が容易でないという問題がある。
【0003】
また、下記特許文献1には、壁体の前面に設けられた散水装置から該壁体の表面に水を散水することにより、粉塵を除去する湿式の粉塵除去装置が示されている。また特許文献2には、穀物乾燥機の排気口の外側に設けられた湾曲状の枠体にネットを張設し、該ネットに対しシャワー装置から散水することにより、排風中の塵埃を除去する装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−62194号公報
【特許文献2】実公平6−41621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが上記特許文献1、2に示された粉塵除去装置は、散水装置を壁体の前面やネットの上部に設けるものであったので、厚さが増し、設置のために広いスペースを要し、既存の装置間や壁際の狭いスペースに設置し難いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る湿式粉塵吸着装置は上記課題を解決しようとするもので、門形の枠体と、該枠体の上辺部に水平に設けた注水樋と、該注水樋上に設けられた放水管と、該注水樋から吊下することにより前記枠体内に張設したネットと、前記枠体の下辺部に設けられ前記ネットの下縁部を浸漬させている水受槽と、該水受槽の水を前記放水管に循環させる電動ポンプとからなり、該放水管から放出された水を前記ネットに沿って流下させるようにしたことを特徴とする。
また、本発明に係る湿式粉塵吸着装置は、門形の枠体と、該枠体の上辺部に水平に設けた注水樋と、該枠体の上辺部より吊下することにより片面を前記注水樋の水平な一側縁と摺接させて該枠体内に張設されたネットと、前記枠体の下辺部に設けられ前記ネットの下縁部を浸漬させている水受槽と、該水受槽の水を前記注水樋に循環させる電動ポンプとからなり、前記注水樋の一側縁から水を溢出させることで該水を前記ネットに沿って均一に流下させるようにしたことを特徴とする。
また、本発明は上記湿式粉塵吸着装置において、ネットは、吸湿性の繊維材からなり、方形状の網目の一辺の径が2mm〜4mmのものであることを特徴とする。
また、本発明は上記湿式粉塵吸着装置において、電動ポンプによる循環水量を適宜設定することにより、該網目に水膜が形成されるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記構造の湿式粉塵吸着装置は、薄いパネル形に出来るので、設置スペースが要らず、狭い工場でも段ボール紙加工装置等の傍に容易に設置でき、効率よく粉塵を吸着する。また、この湿式粉塵吸着装置は、ポンプで少量の水を循環させるだけでよいので、消費電力は少なく、運転時に発生する騒音も小さく、静かな環境が維持されることから、エコロジーでもある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る湿式粉塵吸着装置の正面図。
【図2】図1の湿式粉塵吸着装置の平面図。
【図3】図1のA−A線断面図。
【図4】図1のB−B線断面拡大図。
【図5】ネットの一部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に図面に従い実施形態を説明する。図1〜図3に示したように、枠体1は角パイプを正面長方形状に枠組みすることにより形成され、該枠体1の下部に移動用のキャスター2を備えた脚部3が設けられ、該脚部3によって該枠体1が門形起立状態に支持される。4は横断面形状が略J字形の注水樋で、図4にも示したように該注水樋はその一側上縁部4aを該枠体1の上辺部に固着することにより一側縁4bが長手方向に対し略々水平なるように支持される。5は吸湿性の繊維材からなるネットで、該ネット5の一辺を該枠体の上辺部に設けられた吊杆1aに止着して吊下することにより、該ネット5の片面を前記注水樋の一側縁4bと摺接させ、該ネット5のその摺接部より下方を枠体1の内側に垂らしている。なお、6は該ネット5の両側辺を枠体1の両側支柱部に引き留めることにより、該ネット5を該枠体1内に張っている複数の止紐である。
【0010】
7は枠体1の下辺部に設けられネット5の下縁部を浸漬させている長方形状の水受槽、8は該水受槽内の一端部に設けられた電動ポンプである。また、10は前記注水樋4の上部に水平に設けられた放水管で、該放水管10の一端に揚水管11が連結され、電動ポンプ8の吐出口側に該揚水管11を連結している。なお、該放水管10には定間隔で散水口12が形成されている。また、該放水管10の他端に帰戻管13が連結され、該帰戻管の途中に水量調節バルブ14が設けられ、該帰戻管の下端開口を前記水受槽7内の他端部に臨ましている。なお、15は水受槽7内の前記電動ポンプの吸水口に配置された活性炭からなる浄水用フィルターで、水受槽7内に溜まった水が該浄水用フィルター15を通って電動ポンプ8に吸引されるようにしている。
【0011】
このように構成した装置では、電動ポンプ8を作動させることにより水受槽7中の水が揚水管11を通して放水管10に揚水され、該放水管10の散水口12からネット5に向けてその水が散水される。なお、該ネット5を通り抜けた水は注水樋4上に受けられる。そして注水樋4上に受けられた水は、該注水樋4の一側縁4bから溢出ることによりネット5に沿って均一に流下する。なお、前記水量調節バルブ14を操作することにより、帰戻管13を通る戻水量が調節されるので、これにより放水管10から散水される水量を適宜調節することができる。このため、ネット5に沿って流下する水により該ネット5の網目に水膜が形成されるように、この水量を適宜調節するのが望ましい。
【0012】
なお、図5に示したように、ネット5は、縦方向の繊維束5aと横方向の繊維束5bとから略々正方形の網目が形成され、該網目に水膜が形成され易いようにするため、該網目の一辺の長さが2mm〜4mmであるようにしている。また、該ネット5は、同図に示されるように、縦方向の繊維束5aは1本であるのに対し、横方向には2本の繊維束5bが該繊維束5aを挟むように織られていることから、水が縦方向よりも横方向に流れ易くなり、その結果、流下する水が該ネット5上に水膜を形成した状態で長時間滞留し易くなるように配慮されている。
【0013】
この湿式粉塵吸着装置は、段ボール紙加工装置等の傍に設置すれば、該加工装置等から発散した粉塵がネット5に付着し、該粉塵は該ネット5を流下する水と共に水受槽7に流れ落ちる。また、水受槽7に溜まった水は、浄水用フィルターを経て電動ポンプ8に吸引され前記放水管10に再循環される。
【0014】
このように本発明に係る湿式粉塵吸着装置は、門形枠体内にネットが張設された薄いパネル形のものであるので、軽量で移動が容易であると共に、段ボール紙加工装置の傍や壁際、機械装置間などの狭いスペースにも簡易に設置することができ、その機械装置から飛散した粉塵を効率よく吸着することができる。また、この湿式粉塵吸着装置は、運転に際し電動ポンプで少量の水を循環させるだけでよいので、消費電力が少なく、発生する騒音も小さく、静かな環境が維持され、メンテナンスも容易であるなど、種々の利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明に係るパネル形の湿式粉塵吸着装置は、ネットに沿って流下する水が滝のようにも見えて涼しげであるので、粉塵吸着を目的とするだけでなく、室内或いは室外においてクーラーとして利用できる可能性もある。また、背面に例えば電飾ランプを設ければ、流下する水によって光が乱反射し綺麗であるので、ディスプレイ装置として利用できる可能性もある。
【符号の説明】
【0016】
1 枠体
4 注水樋
5 ネット
5a,5b 繊維束
7 水受槽
8 電動ポンプ
10 放水管
14 水量調節バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
門形の枠体と、該枠体の上辺部に水平に設けた注水樋と、該注水樋上に設けられた放水管と、該注水樋から吊下することにより前記枠体内に張設したネットと、前記枠体の下辺部に設けられ前記ネットの下縁部を浸漬させている水受槽と、該水受槽の水を前記放水管に循環させる電動ポンプとからなり、該放水管から放出された水を前記ネットに沿って流下させるようにしたことを特徴とする湿式粉塵吸着装置。
【請求項2】
門形の枠体と、該枠体の上辺部に水平に設けた注水樋と、該枠体の上辺部より吊下することにより片面を前記注水樋の水平な一側縁と摺接させて該枠体内に張設されたネットと、前記枠体の下辺部に設けられ前記ネットの下縁部を浸漬させている水受槽と、該水受槽の水を前記注水樋に循環させる電動ポンプとからなり、前記注水樋の一側縁から水を溢出させることで該水を前記ネットに沿って均一に流下させるようにしたことを特徴とする湿式粉塵吸着装置。
【請求項3】
ネットは、吸湿性の繊維材からなり、方形状の網目の一辺の長さが2mm〜4mmのものであることを特徴とする請求項1または2に記載した湿式粉塵吸着装置。
【請求項4】
電動ポンプによる循環水量を適宜設定することにより、該網目に水膜が形成されるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載した湿式粉塵吸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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