説明

溶剤精製装置

【課題】有機溶剤の連続精製を実現し、基本的には吸着材の交換が必要なく、多量な有機溶剤中から酸分を安定に除去することができる装置を提供する。
【解決手段】酸分を含有する有機溶剤を吸着塔に充填された吸着材に通流させて該吸着材に酸分を吸着させる吸着工程設備と、該吸着材にアルカリ溶液を通液させて該吸着材に吸着された酸分を脱着する脱着工程設備を備え、該吸着材が粒状又は繊維状の形態をしている陰イオン交換樹脂である溶剤精製装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤から酸分を除去して溶剤を精製する装置に関し、特に各種工場や研究施設等から発生した有機溶剤含有ガスから溶剤回収装置を用いて回収した溶剤の精製に用いられる装置である。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機溶剤から酸分を除去して溶剤を精製する装置としては、蒸留精製装置が広く用いられている。すなわち、溶剤を加熱蒸発させ、沸点の違いを利用して有機溶剤と不純物を分留することで、純度の高い有機溶剤を取得することができる装置である。
【0003】
しかしながら、蒸留精製装置は大型な装置であるために広い設置スペースが必要であり、且つイニシャルコスト、ランニングコスト共に高いことが問題となっている。
かかる問題を解決するために、ゼオライトまたはアルミノシリケートを充填させた脱酸塔に有機溶剤を通液させて不純物を取り除く方法が知られているが(例えば特許文献1参照)、多量の有機溶剤を精製する場合は多量の吸着材が必要であり、吸着材が破過状態になると吸着材の交換が必要であることから、吸着材の交換労力とランニングコストが増大する面から、工場や研究施設等から回収される多量の有機溶剤の精製を行うには満足できるものではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平5−220303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術の課題を背景になされたもので、有機溶剤の連続精製を実現し、基本的には吸着材の交換が必要なく、多量な有機溶剤中から酸分を安定に除去することができる装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、従来技術の課題を解決するため、鋭意検討した結果、ついに本発明を完成するに到った。即ち本発明は以下の通りである。
1.酸分を含有する有機溶剤を吸着塔に充填された吸着材に通流させて該吸着材に酸分を吸着させる吸着工程設備と、該吸着材にアルカリ溶液を通液させて該吸着材に吸着された酸分を脱着する脱着工程設備を備え、該吸着材が粒状又は繊維状の形態をしている陰イオン交換樹脂である溶剤精製装置。
2.アルカリ水溶液を吸着材に導入させるための再生液導入経路を有する上記1に記載の溶剤精製装置。
3.水を吸着材に導入させるための水パージ導入経路を2つ有する上記1または2に記載の溶剤精製装置。
4.2つの水パージ導入経路が、吸着材に付着している有機溶剤を水パージで除去するためと、吸着材に付着しているアルカリ溶液を水パージで除去するためのものである上記3に記載の溶剤精製装置。
5.吸着塔を少なくとも2塔有し、その内の1塔が再生液導入経路からアルカリ水溶液を導入するとき、それ以外の塔が有機溶剤導入経路から有機溶剤を導入する上記1〜4のいずれかに記載の溶剤精製装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明による溶剤精製装置は、多量の酸分を高い効率で連続的に除去することができ、基本的に吸着材の交換の必要が無いため、低コストで、安定に、高い能力で有機溶剤中の酸分を除去することができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明にかかる溶剤精製装置は、酸分を含有する有機溶剤を、吸着塔に充填された吸着材に通流させて該吸着材に酸分を吸着させる吸着工程設備と、該吸着材にアルカリ溶液を通液させて該吸着材に吸着された酸分を脱着する脱着工程設備を備え、かかる工程を交互に行う溶剤精製装置であることが好ましい。かかる構造を採用することにより、処理を連続的に行うことができるからである。
【0009】
より好ましい装置の構造としては、吸着工程の後に吸着材に付着した有機溶剤を除去するための前パージ工程と、脱着工程の後に吸着材に付着したアルカリ溶液を除去するための後パージ工程を行うためのパージ水導入経路を2つ有する溶剤精製装置である。
【0010】
以下、図面を参照して、本発明にかかる溶剤精製装置について詳細に説明する。図1は本発明の好ましい実施形態の例である。図1に例示した溶剤精製装置は、酸分を含有した有機溶剤が、ダンパー4、5が開のときに、水分と有機溶剤を分離する被処理有機溶剤セパレーター2より被処理有機溶剤導入ライン3を通じて、吸着材が充填された吸着塔1に送られ、精製有機溶剤排出ライン6を通じて精製有機溶剤タンク7に精製された有機溶剤が送られることで、吸着材により酸分を吸着除去して有機溶剤を精製する吸着工程を有する。
【0011】
一方で、ダンパー4、5が閉でダンパー25、26が開のとき、更にダンパー13が開であるとき、水タンク11から水ポンプ12を用い、水またはアルカリ溶液導入ライン24を通じて吸着塔1に水が送られることで、水の通流により吸着材表面に付着残存する有機溶剤を除去する前パージ工程を有することが好ましい。前パージ工程を行わずに後述する脱着工程を行っても良いが、有機溶剤を水でパージして除去することにより、脱着工程の際にアルカリ溶液の使用量を少なくすることが可能であるからである。
【0012】
前パージ工程において、水または脱着空気排出ライン27より排出されたパージ水は、有機溶剤を含むものであり、集積して焼却等してもよいが、ダンパー28を開にして戻りライン29より被処理有機溶剤セパレーター2に戻すことが好ましい。かかる方法によれば、工程数を省略でき、効率的だからである。
【0013】
次に、ダンパー13、26が閉でダンパー23を開にし、アルカリ溶液タンク21からポンプ22を用い、水またはアルカリ溶液導入ライン24を通じて吸着塔1にアルカリ溶液が送られ、吸着塔にアルカリ溶液を満たし、時間を少し置いた後にダンパー26を開にし、アルカリ溶液を抜くことで、吸着材に吸着している酸分を脱着し、吸着材を再生する脱着工程を有することが好ましい。脱着工程で使用した残アルカリ溶液は、例えば塩酸等の酸性溶液で中和処理して処理することができる。
【0014】
脱着工程において、アルカリ溶液は水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等、アルカリ性を有する水溶液であれば特に限定されるものではないが、汎用性の点において水酸化ナトリウムであることが好ましい。
【0015】
脱着工程の後に、ダンパー23が閉でダンパー13が開であるとき、水タンク11から水ポンプ12を用い、水またはアルカリ溶液導入ライン24を通じて吸着塔1に水が送られることで、水の通流により吸着材表面に付着残存するアルカリ溶液を除去する後パージ工程を有することが好ましい。後パージ工程を行わずに吸着工程を行っても良いが、アルカリ溶液を水でパージして除去することにより、回収溶剤中にアルカリ溶液の混入を防ぐことが可能であるからである。
【0016】
後パージ工程の後に吸着工程に入るが、吸着材に水が付着しているため、吸着工程初期の回収溶剤は、ダンパー28を開にして戻りライン29より被処理有機溶剤セパレーター2に戻すことが好ましい。これにより、付着水は被処理有機溶剤セパレーター2において有機溶剤と水を分離することが可能であるため、効率的である。
【0017】
上記の吸着工程→前パージ工程→脱着工程→後パージ工程を連続的に繰り返すことで、水分を含有する有機溶剤から水分を効果的且つ経済的に吸着除去できる装置となる。かかる連続的な吸着−脱着により、低コストで、安定に、高い能力で有機溶剤中の水分を除去することができる。
【0018】
本発明にかかる吸着材は、陰イオン交換樹脂が好ましい。陰イオン交換樹脂は、強塩基型I型、II型、弱塩基型と特に限定されるものではないが、後述する除去対象となる酸分によって最適な型の陰イオン交換樹脂を選定することが望ましい。
【0019】
本発明にかかる吸着材の構造は、粒状、粉体状、ポーラス状、ハニカム状、繊維状等特に限定されるものではないが、粒状または繊維状が特に好ましい。つまり、酸分を含有した有機溶剤が吸着材を通液する際、吸着材の表面積が広いほど、吸着材と酸分の接触効率が高くなりイオン交換速度が速くなる構造が粒状または繊維状である。
【0020】
本発明にかかる吸着材の運転は、図2のように吸着塔を2つ以上設けた連続除去可能なシステムを採用することが好ましいが、除去すべき含有酸分の量、被処理有機溶剤の量等を勘案して、間欠運転としてもよい。含有酸分の量あるいは被処理有機溶剤の量が少ない条件では、連続運転であることまで要求されず、運転コストを削減できるからである。
【0021】
本発明において精製可能な被処理有機溶剤は、酢酸エチル、酢酸メチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、2−プロパノール等酸分ではない有機溶剤であれば特に限定されるものではなく、多種の有機溶剤において適応可能である。
【0022】
本発明において除去可能な酸分は、強酸である塩酸、硫酸、過塩素酸、弱酸である硝酸、酢酸、ギ酸、炭酸等であり、除去対象の酸分の酸解離定数値によって最適な陰イオン交換樹脂を選定することが好ましい。例えば、強酸の場合は弱塩基型陰イオン交換樹脂が適しており、弱酸の場合は強塩基型陰イオン交換樹脂が好ましい。更に、脱着再生に用いるアルカリ溶液が塩化ナトリウム水溶液を用いることが好ましいため、交換基がOH型の陰イオン交換樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
本発明において精製可能な有機溶剤は、フィルムを積層させるドライラミネート工程等、多分野における工場等から排出される有機溶剤を含有したガスを、溶剤回収処理装置を用いて回収される有機溶剤にも適応可能である。
例えば、図3に示すような溶剤回収処理装置は、被処理ガス41がファン42より導入されて吸着塔に充填されている活性炭素繊維材44で有機溶剤が吸着し、清浄ガス46として外気に排出される吸着工程と、活性炭素繊維材44にスチーム45を導入することで有機溶剤を脱着し、コンデンサー47で冷却凝縮してセパレーター48で溶剤と水を分離し、回収溶剤49を回収する脱着工程があり、吸着工程と脱着工程を交互に行うことで連続的に処理可能なシステムである。排ガス中に酸分が混入する場合も多く、有機溶剤から酸分を除去できる本発明の溶剤精製装置を適用することが可能である。
【実施例】
【0024】
以下、実施例から本発明の詳細を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、評価は下記の方法により行った。
(有機溶剤中の酸分除去の評価方法)
0.1重量%濃度の酸分を含有する各種有機溶剤を一定流量で流し、精製有機溶剤排出ライン6からサンプリングした精製後の有機溶剤中の酸分濃度を測定した。
(酸分濃度評価方法)
吸着材入口・出口の酸分濃度をガスクロマトグラフにより分析し、測定した。
(パージ水中の溶剤濃度評価方法)
吸着材出口のパージ水中の溶剤(酢酸エチル、トルエン)濃度をイオンクロマトグラフィー分析法により分析し、測定した。
【0025】
[実施例1]
1.5mmφで厚み90mmの吸着塔に、平均粒形0.5mmの陰イオン交換樹脂(DOWEX MARATHON 550A(OH)、ダウ・ケミカル株式会社製)の吸着材を15重量g充填させ、図1の1槽型溶剤精製装置のシステムフローに組み立て、0.13重量%の酢酸を含む酢酸エチルを導入した。その際の出口酢酸濃度の経時変化を確認した結果、SV=35(1/h)のとき初期の出口酢酸濃度は0.0001重量%以下であり、その後9分間は酢酸濃度が0.0001重量%以下と良好な吸着能を示した。また、出口平均酢酸濃度が0.02重量%になるまでに12分間要した。
【0026】
前パージ工程として、水パージ導入経路から水を吸着塔に導入した。その際の出口水中の酢酸エチル濃度を測定したとき、SV=20(1/h)のとき吸着材体積の4倍量の水量で吸着材に付着している酢酸エチルを95%以上除去可能と良好な除去性能を示した。
次に、脱着工程として、4重量%濃度の塩化ナトリウム水溶液を吸着材体積分吸着塔に導入し、10分間静置した後アルカリ溶液を抜いた。
続いて、後パージ工程として、水パージ導入経路から水を吸着塔に導入した。その際の出口水中の水酸化ナトリウム濃度を測定したとき、SV=20(1/h)のとき吸着材体積の4倍量の水量で吸着材に付着している水酸化ナトリウムを95%以上除去可能と良好な除去性能を示した。
【0027】
再度吸着工程として、0.13重量%の酢酸を含む酢酸エチルを導入した。その際の出口酢酸濃度の経時変化を確認した結果、SV=35(1/h)のとき初期の出口酢酸濃度は0.0001重量%以下であり、その後7.5分間は酢酸濃度が0.0001重量%以下であり、出口平均酢酸濃度が0.02重量%になるまでに10分間要した。これより、初期性能と比較解析したとき、塩化ナトリウム水溶液を用いたときの陰イオン交換樹脂の再生率が80%と良好な再生率を示した。
【0028】
本実施例の溶剤精製装置により精製された酢酸エチルは、吸着工程→前パージ工程→脱着工程→後パージ工程の吸脱着サイクルを繰り返すと、酢酸エチル中の出口平均酢酸濃度は0.02重量%以下を維持することが可能であった。吸着と脱着を連続して精製するため、性能低下がなく安定して高効率で精製が可能である。
【0029】
[実施例2]
1.5mmφで厚み90mmの吸着塔に、平均粒形0.5mmの陰イオン交換樹脂(DOWEX MARATHON 550A(OH)、ダウ・ケミカル株式会社製)の吸着材を15重量g充填させ、図1の1槽型溶剤精製装置のシステムフローに組み立て、0.07重量%の酢酸を含む酢酸エチルを導入した。その際の出口酢酸濃度の経時変化を確認した結果、SV=2.5(1/h)のとき初期の出口酢酸濃度は0.0001重量%以下であり、その後4.5hは酢酸濃度が0.0001重量%以下と良好な吸着能を示した。また、出口平均酢酸濃度が0.02重量%になるまでに5.2h要した。
【0030】
前パージ工程として、水パージ導入経路から水を吸着塔に導入した。その際の出口水中の酢酸エチル濃度を測定したとき、SV=20(1/h)のとき吸着材体積の4倍量の水量で吸着材に付着している酢酸エチルを95%以上除去可能と良好な除去性能を示した。
次に、脱着工程として、4重量%濃度の塩化ナトリウム水溶液を吸着材体積分吸着塔に導入し、10分間静置した後アルカリ溶液を抜いた。
続いて、後パージ工程として、水パージ導入経路から水を吸着塔に導入した。その際の出口水中の水酸化ナトリウム濃度を測定したとき、SV=20(1/h)のとき吸着材体積の4倍量の水量で吸着材に付着している水酸化ナトリウムを95%以上除去可能と良好な除去性能を示した。
【0031】
再度吸着工程として、0.07重量%の酢酸を含む酢酸エチルを導入した。その際の出口酢酸濃度の経時変化を確認した結果、SV=2.5(1/h)のとき初期の出口酢酸濃度は0.0001重量%以下であり、その後3.5hは酢酸濃度が0.0001重量%以下であり、出口平均酢酸濃度が0.02重量%になるまでに4h要した。これより、初期性能と比較解析したとき、塩化ナトリウム水溶液を用いたときの陰イオン交換樹脂の再生率が80%と良好な再生率を示した。
【0032】
本実施例の溶剤精製装置により精製された酢酸エチルは、吸着工程→前パージ工程→脱着工程→後パージ工程の吸脱着サイクルを繰り返すと、酢酸エチル中の出口平均酢酸濃度は0.02重量%以下を維持することが可能であった。吸着と脱着を連続して精製するため、性能低下がなく安定して高効率で精製が可能である。
【0033】
[実施例3]
1.5mmφで厚み90mmの吸着塔に、平均粒形0.5mmの陰イオン交換樹脂(DOWEX MARATHON 550A(OH)、ダウ・ケミカル株式会社製)の吸着材を15重量g充填させ、図1の1槽型溶剤精製装置のシステムフローに組み立て、ドライラミネート工程から排出された排気ガスを図3に示す溶剤回収処理装置で回収した回収有機溶剤(主要4成分:酢酸エチル95重量%、水分3.0重量%、トルエン1.8重量%、酢酸0.1%)を吸着塔に導入した。その際の出口酢酸濃度の経時変化を確認した結果、SV=2.5(1/h)のとき初期の出口酢酸濃度は0.0001重量%以下であり、その後3.1hは酢酸濃度が0.0001重量%以下と良好な吸着能を示した。また、出口平均酢酸濃度が0.02重量%になるまでに3.6h要した。
【0034】
前パージ工程として、水パージ導入経路から水を吸着塔に導入した。その際の出口水中の酢酸エチル濃度を測定したとき、SV=20(1/h)のとき吸着材体積の4倍量の水量で吸着材に付着している酢酸エチルを95%以上除去可能と良好な除去性能を示した。
次に、脱着工程として、4重量%濃度の塩化ナトリウム水溶液を吸着材体積分吸着塔に導入し、10分間静置した後アルカリ溶液を抜いた。
続いて、後パージ工程として、水パージ導入経路から水を吸着塔に導入した。その際の出口水中の水酸化ナトリウム濃度を測定したとき、SV=20(1/h)のとき吸着材体積の4倍量の水量で吸着材に付着している水酸化ナトリウムを95%以上除去可能と良好な除去性能を示した。
【0035】
再度吸着工程として、溶剤回収処理装置で回収した回収有機溶剤を導入した。その際の出口酢酸濃度の経時変化を確認した結果、SV=2.5(1/h)のとき初期の出口酢酸濃度は0.0001重量%以下であり、その後2.6hは酢酸濃度が0.0001重量%以下であり、出口平均酢酸濃度が0.02重量%になるまでに3.3h要した。これより、初期性能と比較解析したとき、塩化ナトリウム水溶液を用いたときの陰イオン交換樹脂の再生率が80%と良好な再生率を示した。
【0036】
本実施例の溶剤精製装置により精製された回収有機溶剤は、吸着工程→前パージ工程→脱着工程→後パージ工程の吸脱着サイクルを繰り返すと、回収溶剤中の出口平均酢酸濃度は0.02重量%以下を維持することが可能であった。吸着と脱着を連続して精製するため、性能低下がなく安定して高効率で精製が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の溶剤精製装置は、溶剤の連続精製を実現し、基本的に吸着材の交換が必要なく、多量の酸分を高効率且つ安定に除去することができる精製装置であるため、設備増大を必要とせずに、吸着材交換作業を省略でき、コスト低減、酸分安定除去が可能である。これより、特に研究所や工場等の幅広い分野から発生する排ガスから溶剤回収処理装置を用いて回収される溶剤の精製に利用することができ、産業界に寄与することが大である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の好ましい一形態の例である、吸着塔1塔型方式の溶剤精製装置。
【図2】本発明の好ましい一形態の例である、吸着塔2塔連続吸脱着方式の溶剤精製装置。
【図3】活性炭素繊維を用いた溶剤回収処理装置。
【符号の説明】
【0039】
1:吸着塔
2:被処理有機溶剤セパレーター
3:被処理有機溶剤導入ライン
4:ダンパー
5:ダンパー
6:精製有機溶剤排出ライン
7:精製有機溶剤タンク
11:水タンク
12:水ポンプ
13:ダンパー
21:アルカリ溶液タンク
22:ポンプ
23:ダンパー
24:水またはアルカリ溶液導入ライン
25:ダンパー
26:ダンパー
27:水または脱着空気排出ライン
28:ダンパー
29:戻りライン
41:被処理ガス
42:ファン
43:吸着塔
44:活性炭素繊維材
45:スチーム
46:清浄ガス
47:コンデンサー
48:セパレーター
49:回収溶剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸分を含有する有機溶剤を吸着塔に充填された吸着材に通流させて該吸着材に酸分を吸着させる吸着工程設備と、該吸着材にアルカリ溶液を通液させて該吸着材に吸着された酸分を脱着する脱着工程設備を備え、該吸着材が粒状又は繊維状の形態をしている陰イオン交換樹脂である溶剤精製装置。
【請求項2】
アルカリ水溶液を吸着材に導入させるための再生液導入経路を有する請求項1に記載の溶剤精製装置。
【請求項3】
水を吸着材に導入させるための水パージ導入経路を2つ有する請求項1または2に記載の溶剤精製装置。
【請求項4】
2つの水パージ導入経路が、吸着材に付着している有機溶剤を水パージで除去するためと、吸着材に付着しているアルカリ溶液を水パージで除去するためのものである請求項3に記載の溶剤精製装置。
【請求項5】
吸着塔を少なくとも2塔有し、その内の1塔が再生液導入経路からアルカリ水溶液を導入するとき、それ以外の塔が有機溶剤導入経路から有機溶剤を導入する請求項1〜4のいずれかに記載の溶剤精製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−291677(P2009−291677A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145399(P2008−145399)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】