説明

溶接ビード切削部検出用照明装置

【課題】1つの照明装置で1つの測定領域に対しビード移動方向で三段階に変わる輝度を付与し、溶接ビード切削部の表面性状に対する適応照度範囲を広げ、ビードをより正確に検出して、溶接ビード切削幅の測定精度を向上させる。
【解決手段】溶接ビード切削部11を含む測定領域にエリア光を照射する照明器1を1つの筐体2に内蔵した溶接ビード検出用照明装置において、筐体の光射出口部2Aに、照明器から発した光の一部を反射させて該反射した中の正反射光を前記測定領域のビード移動方向12の三分割部の一端側の一部(A部)に入射させ、前記反射した中の乱反射光を前記三分割部の中央側の一部(B部)に入射させ、前記三分割部の他端側の一部(C部)には前記正反射光及び乱反射光を入射させない反射面4Aを有するフード4を配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ビード切削部検出用照明装置に関し、特に電縫鋼管の電縫溶接部の外面ビード切削後のビード切削部の検出を効果的に向上させる、溶接ビード切削部検出用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電縫管の溶接ビード切削後の形状を計測する際にスリット光とITVカメラによる光切断方法を持って鋼管ビード切削部の映像を捕らえる溶接ビード切削形状計測方法においてその断面形状映像を細線化処理し断面形状を算出しその断面形状の輝度により切削部と非切削部である母材とを区別し、その区別した切削部中央値と切削部右端の値と切削部左端の値とを求め、この三つの計測値をもとに左右計測値と母材中央値とをもって切削深さ量を算出し左右計測値をもって切削傾き量を算出することでビード切削形状を精度良く測定できることを特徴とする電縫管溶接ビード切削形状計測方法が記載されている。
【0003】
特許文献1の方法はスリット光による撮影画像を用いるものであるが、溶接ビード切削幅のみが測定対象であるときは、スリット(線)光ではなくエリア(面)光による撮影画像が用いられる場合もある。いずれにしても、その原理は、測定したい外面ビード切削部周辺に照明器で光を照射し、該照射した部位をカメラで撮影し、該撮影した画像をもとに、切削部と非切削部とで光の反射率に差があることを利用して、受光レベル(輝度)の差によってビード部の境界を検出するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2618303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電縫鋼管の電縫溶接部の探傷性能は、ビード切削後の溶接ビード幅の測定精度に大きく影響され、この測定精度が悪いと電縫溶接部の探傷性能の向上は望めない。ビード切削幅測定にあたり、スリット光、エリア光のいずれの撮影画像を用いる場合でも、輝度による切削部の境界検出を行うが、その際、溶接ビード切削部の表面性状は、管素材板幅の変動、切削部の境界近傍の性状、水乗り等の環境条件、管円周方向の捩れ等によって変化するため、切削部の撮影画像が不明瞭なものとなる場合が少なからずある。そのため信号処理として測定値の移動平均、異常データの排除など多くの演算処理が必要となっている。しかし、演算により平均化処理することで、溶接ビード切削幅の細かな変動を正確に測定することが困難であり、そのため電縫溶接部の探傷性能向上には限界があるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は上記課題を解決するために、鋭意検討し、以下の知見を得た。
溶接ビード切削幅の測定では、切削部をその長手方向の一方向に移動させつつ測定を行うが、測定領域を、同じ明るさで照らして測定していると、前述の表面性状変化により、切削部の境界を正確に検出できない場合が多い。
しかし、或る表面性状の切削部の撮影画像のコントラストが弱いときに、照明器の明るさを変化させると撮影画像のコントラストが適正化し、切削部の境界を正確に検出できるようになることが多い。そして、撮影画像のコントラストが適正になる明るさは切削部の表面性状によって異なる。
【0007】
よって、測定領域をビード長手方向に複数設けてそれらの間で照明器の明るさを違えてやれば、適正なコントラストの得られる表面性状の種類数が増えるので、表面性状の変化に対応できて、溶接ビード切削幅の測定精度が向上する。
ところが、いざ測定領域を複数設けるとなると、カメラと照明器とを適正に組合わせた装置が複数必要となり、コストがかかる問題や、複数の装置の個々の取付け精度の確保乃至確認や複数の装置間の機差の補正等が非常に困難であるという問題に加え、画像処理の際に、複数の装置から出力される撮影画像データの中のどれを優先して処理するかを決めるロジックを作成するのも非常に困難であるという問題があって、実用化は極めて難しい。
【0008】
そこで、発明者は、更に検討を続け、その結果、1つの装置のみで、1つの測定領域に対しビード移動方向で三段階に変わる輝度を付与できる装置構成に想到し、本発明をなした。
すなわち本発明は、溶接ビード切削後の外面ビード切削幅測定のための溶接ビード切削部検出用として、溶接ビード切削部を含む測定領域にエリア光を照射する照明器を1つの筐体に内蔵した溶接ビード切削部検出用照明装置において、前記筐体の光射出口部に、照明器から発した光の一部を反射させて該反射した中の正反射光を前記測定領域のビード移動方向の三分割部の一端側の一部に入射させ、前記反射した中の乱反射光を前記三分割部の中央側の一部に入射させ、前記三分割部の他端側の一部には前記正反射光及び乱反射光を入射させない反射面を有するフードを配設したことを特徴とする溶接ビード切削部検出用照明装置である。
【0009】
本発明では、前記測定領域を撮影するカメラを前記筐体に内蔵したものが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1つの照明装置で1つの測定領域に対しビード移動方向で三段階に変わる輝度を付与できるから、溶接ビード切削部の表面性状に対する適応照度範囲が広がり、ビードをより正確に検出できるようになって、溶接ビード切削幅の測定精度が向上する。従って、本発明を電縫鋼管の電縫溶接部に適用した場合、電縫溶接部の探傷性能の向上に寄与する。しかも、照明装置が1つだけであるから、装置の据付、調整や照明器の経時劣化に対するチューニング等も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す模式図であり、(a)は側面断面模式図、(b)は正面断面模式図である。
【図2】図1の実施形態によるエリア光撮影画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態の一例を示す模式図である。この例は、電縫鋼管10の溶接ビード切削部(略してビード切削部)11への適用例である。図示のように、本発明では、ビード切削部11を含む測定領域にエリア光を照射する照明器1を1つの筐体2に内蔵した溶接ビード検出用照明装置において、筐体2の光射出口部2Aに、照明器1から発した光の一部を反射させて該反射した中の正反射光を前記測定領域のビード移動方向12の三分割部の一端側の一部であるA部に入射させ、前記反射した中の乱反射光を前記三分割部の中央側の一部であるB部に入射させ、前記三分割部の他端側の一部であるC部には前記正反射光及び乱反射光を入射させない(照射器1からの直射光のみ入射させる)反射面4Aを有するフード4を配設した。
【0013】
これにより、A部は直射光と正反射光とで照射され、B部は直射光と乱反射光とで照射され、C部は直射光のみで照射される。正反射光の光強度は乱反射光のそれより高い。その結果、図2に示すように、ビード切削部11の測定領域の輝度は、A部が最高(最も明るい)、B部が中間、C部が最低(最も暗い)となって、ビード移動方向12で三段階に変化する。
【0014】
一方、非切削部13の測定領域の輝度は、直射光と正反射光とで照射された領域、直射光と乱反射光とで照射された領域、直射光のみが照射された領域で、領域の違いによる輝度の差が明確には生じないということが分かった。
したがって、撮影画像では、A部、B部、C部のいずれかの領域において、ビード切削部11と非切削部13との境界の輝度差が大きくなるので、ビード切削部を含む領域に入射光量の異なるA部、B部、C部の3領域を設けて光を照射し、A部、B部、C部のうちビード切削部11と非切削部13との境界の輝度差が最も大きくなる領域について、ビード幅方向の輝度分布を解析することにより、正確にビード切削部の幅を計測することができる。
【0015】
本発明では、照射する光は、相直交するビード移動方向とビード幅方向との二方向に広がる必要があるから、一次元的にしか広がらないスリット光では用をなさず、二次元的に広がるエリア光を用いるに限る。
尚、図1の例では、照明器1に加えてカメラ3も筐体2に内蔵したが、これに限定されず、カメラ3は筐体2の外に設置してもよい。尤もその場合は、照明器1とカメラ3との相対位置合わせの作業性が多少低下すると予想される。又、図1の例では、筐体2内に照明器1を2つ配設してビード切削部11にその幅方向の左右両側から光を照射するようにしたが、これに限らず、筐体2内の照明器1は1つであっても3つ以上であってもよい。
【0016】
尚、カメラ3は、撮影画像データを、図示しない画像処理装置に伝送する。画像処理装置は、伝送された撮影画像データからA部、B部、C部のそれぞれについてビード幅方向の輝度分布を生成し、輝度変化の大きさが第1位と第2位になる二位置をビード切削部の両端であると同定することでビード切削部検出を行う。そして、同定されたビード切削部の両端間の距離を求め、これをビード切削幅の測定値とする。かかるデータ処理を行うためのデータ処理機能の詳細は通常の技術の範囲内であるので、詳しい説明は省略する。
【符号の説明】
【0017】
1 照明器
2 筐体
2A 光射出口部
3 カメラ
4 フード
4A 反射面
10 電縫鋼管
11 ビード切削部(溶接ビード切削部)
12 ビード移動方向
13 非切削部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ビード切削後の外面ビード切削幅測定のための溶接ビード切削部検出用として、溶接ビード切削部を含む測定領域にエリア光を照射する照明器を1つの筐体に内蔵した溶接ビード切削部検出用照明装置において、前記筐体の光射出口部に、照明器から発した光の一部を反射させて該反射した中の正反射光を前記測定領域のビード移動方向の三分割部の一端側の一部に入射させ、前記反射した中の乱反射光を前記三分割部の中央側の一部に入射させ、前記三分割部の他端側の一部には前記正反射光及び乱反射光を入射させない反射面を有するフードを配設したことを特徴とする溶接ビード切削部検出用照明装置。
【請求項2】
測定領域を撮影するカメラを前記筐体に内蔵した請求項1に記載の溶接ビード切削部検出用照明装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−157882(P2012−157882A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18914(P2011−18914)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)