説明

溶融ポリカーボネートの離型性を向上させるためのアルキルエステル末端基を組み込む方法

アルキルエステル末端封鎖ポリカーボネートは向上した離型性を有しており、遊離末端OH基を有するポリカーボネートを、対称活性化カーボネート及びアルキルエステルを含む末端封鎖剤と化合させることで、末端封鎖剤はポリカーボネートの遊離ヒドロキシル末端基の少なくとも一部と反応して任意に置換された脂肪族エステル末端基を含む末端封鎖ポリカーボネートを生成する段階を含んでなる方法で製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ポリカーボネート樹脂の末端封鎖方法及びかかる方法で有用な末端封鎖組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートは耐衝撃性のような機械的性質に優れると共に耐熱性及び透明性にも優れ、工業的用途で広く使用されている。ポリカーボネートの製造方法としては、ホスゲンをビスフェノールAのような芳香族ジオールと直接に反応させる方法(界面重合法ともいう)又はビスフェノールのような芳香族ジヒドロキシ化合物及びジフェニルカーボネートのようなジアリールカーボネートを溶融状態でエステル交換反応させる方法(溶融重縮合法ともいう)が知られている。
【0003】
溶融エステル交換法で製造されるポリカーボネートは、一般に、界面法で製造されるポリカーボネートに比べてかなりのレベル(7〜50%)の未封鎖連鎖を含んでいる。これらの未封鎖連鎖は得られるポリカーボネートの性質に多大の影響を及ぼすことがあり、したがって未封鎖連鎖のままで終わる重合反応中又は重合反応後にジフェニルカーボネート(DPC)より封鎖効率の高い末端封鎖剤を含めることが多くの場合に望ましい。さらに、ポリカーボネートを製造する場合には、色合い、耐熱性及び耐加水分解性のようなポリマー特性についてポリカーボネートを改良するための末端封鎖剤を使用することも試みられている。
【0004】
米国特許第5696222号には、末端封鎖剤としての非対称置換フェノールエステル又はカーボネート、特にサリチル酸誘導体である末端封鎖剤の存在下での二価フェノールとジアリールカーボネートとの溶融エステル交換反応による末端封鎖ポリカーボネートの製造方法が記載されている。欧州特許公開第0980861号には、かかる誘導体の別の製造方法が開示されている。これらの末端封鎖剤は、1種の(活性化)サリチレート及び1種の非活性化サリチレートから導かれる。かかる末端封鎖剤は有効であるが、欠点がないわけではない。詳しくは、かかる非対称カーボネートは、その製造のために2つの独立した段階(一方のフェノールからクロロギ酸エステルを生成し、次いで第二のフェノールと縮合させること)を必要とする。このような二段階法は、末端封鎖剤のコストを顕著に増加させる。この方法の追加の欠点は、このようにして製造された非対称混成カーボネートが痕跡量の窒素含有及びハロゲン含有不純物並びに反応で使用したフェノールの一方又は両方から導かれる対称カーボネートで汚染されている場合が多いことである。その結果、重合のために好適な品質をもった材料を得るためには、精製は不可欠であると共に困難であることが多い。
【0005】
このように、末端封鎖剤のコストを最小限に抑えながら、また末端封鎖剤の純度を最大にすると共に方法の効率を高めながら、ポリカーボネートの末端基としてアルキルエステルを組み込む方法を発見することは有益であろう。
【特許文献1】米国特許第5696222号明細書
【特許文献2】欧州特許公開第0980861号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0132957号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0068086号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0087756号明細書
【特許文献6】米国特許第4323668号明細書
【特許文献7】米国特許第5091591号明細書
【特許文献8】米国特許第5151491号明細書
【特許文献9】米国特許第5276129号明細書
【特許文献10】米国特許第5525701号明細書
【特許文献11】米国特許第6177536号明細書
【特許文献12】米国特許第6252038号明細書
【特許文献13】米国特許第6300459号明細書
【特許文献14】米国特許第6303734号明細書
【特許文献15】米国特許第6399739号明細書
【特許文献16】米国特許第6403754号明細書
【特許文献17】米国特許第6410777号明細書
【特許文献18】米国特許第6417291号明細書
【特許文献19】米国特許第6420512号明細書
【特許文献20】米国特許第6420588号明細書
【特許文献21】米国特許第6469192号明細書
【特許文献22】米国特許第6500914号明細書
【特許文献23】米国特許第6506871号明細書
【特許文献24】米国特許第6518391号明細書
【特許文献25】米国特許第6525163号明細書
【特許文献26】米国特許第6548623号明細書
【特許文献27】米国特許第6590068号明細書
【特許文献28】米国特許第6600004号明細書
【特許文献29】米国特許第6653434号明細書
【特許文献30】米国特許第6706846号明細書
【特許文献31】米国特許第6710156号明細書
【特許文献32】米国特許第6723823号明細書
【特許文献33】米国特許第6734277号明細書
【特許文献34】米国特許第6747119号明細書
【特許文献35】米国特許第3442854号明細書
【特許文献36】米国特許第5026817号明細書
【特許文献37】米国特許第5097002号明細書
【特許文献38】米国特許第5142018号明細書
【特許文献39】米国特許第5340905号明細書
【特許文献40】米国特許第5696222号明細書
【特許文献41】米国特許出願公開第2003/0105271号明細書
【特許文献42】米国特許出願公開第2003/0120025号明細書
【特許文献43】特開平10−101786号公報
【特許文献44】特開平10−101787号公報
【特許文献45】特開平11−302228号公報
【特許文献46】特開2002−309015号公報
【特許文献47】特開平05−009282号公報
【特許文献48】国際公開第03/040208号パンフレット
【特許文献49】国際公開第03/106149号パンフレット
【特許文献50】特開2000−129112号公報
【特許文献51】欧州特許第0764673号明細書
【特許文献52】欧州特許公開第0976772号明細書
【特許文献53】欧州特許公開第0985696号明細書
【特許文献54】特開平05−009283号公報
【特許文献55】特開平06−157739号公報
【発明の開示】
【0006】
本出願人らは、本発明の末端封鎖剤を用いてアルキルエステル末端封鎖ポリカーボネートを製造するための優れた方法を決定した。本発明の一実施形態は、末端封鎖ポリカーボネートの製造方法であって、
遊離末端OH基を有するポリカーボネートを、対称活性化カーボネート及び化合物Aを含む末端封鎖剤と化合させる段階を含んでなり、化合物Aが次式の構造を有するか、
【0007】
【化1】

(式中、Rは枝分れC〜C40アルキル基及び線状C〜C40アルキル基からなる群から選択され、Rは水素、枝分れC〜C40アルキル基、線状C〜C40アルキル基、C〜C30アリール基及びC〜C30アラルキル基からなる群から選択される。)
或いは化合物Aが式C(COCOR)(式中、RはC10〜C40アルキル基又はC10〜C40アルケニル基である。)を有するエステル化ポリオールである結果、末端封鎖剤はポリカーボネートの遊離ヒドロキシル末端基の少なくとも一部と反応して任意に置換された脂肪族エステル末端基を含む末端封鎖ポリカーボネートを生成する方法を提供する。
【0008】
本発明は、先行技術に比べていくつかの利点を有している。本発明は、高レベルのアルキルエステル末端封鎖連鎖を有するポリカーボネートを製造するための優れた方法を提供する。連鎖の高レベル末端封鎖は、得られるポリカーボネートの高い安定性を与える。対称活性化カーボネートと成分(A)との組合せを末端封鎖剤として使用することで、アルキルエステル末端封鎖反応は最小限の時間及び費用で高い完結レベルまで進行することが見出された。
【0009】
アルキルエステルは、ブレンドを形成するための添加剤としてポリカーボネートに添加された場合、ポリカーボネートの優れた離型性を始めとするいくつかの有益な性質を与える。しかし、ブレンドを形成するための添加剤として添加された場合、アルキルエステルはポリカーボネートからの「プレートアウト」を起こして型上に沈積することで、表面上に副生物を有する成形物品を生じることがある。アルキルエステルを末端基としてポリカーボネートの固有部分とすることで、成形ポリカーボネート製品の製造に際し、所望の離型性を保ちながら「プレートアウト」が最小限に抑えられる。「プレートアウト」を最小限に抑えることにより、装置又は成形物品からの「プレートアウト」のクリーニングのために操業を停止する必要がなくなるので、製造プロセスはさらに能率化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の好ましい実施形態及びその実施例に関する以下の詳しい説明を参照することで本発明の理解を深めることができよう。
【0011】
本明細書及び特許請求の範囲では多くの用語を用いるが、これらは以下の意味をもつものと定義される。
【0012】
単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。
【0013】
「任意」又は「任意には」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象が起こる場合と起こらない場合を包含する。したがって、「任意に置換された」という用語は、分子中の炭素原子が水素置換基のみを有していてもよいし、或いは所望に応じて他の置換基を有していてもよいことを意味する。一般に、前後関係から明らかでない限り、アルキル又はアリールのような用語は記載された種類の置換基及び非置換基の両方を包含する。
【0014】
「ポリカーボネート」とは、1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物から導かれる繰返し単位を組み込んだポリカーボネートをいい、コポリエステルカーボネート(例えば、レソルシノール、ビスフェノールA及びドデカン二酸から導かれる繰返し単位を含むポリカーボネート)を包含する。本願の明細書及び特許請求の範囲中のいかなる部分も、前後関係から明らかに限定されない限り、ポリカーボネートを1種のジヒドロキシ残基のみに限定すると解すべきでない。したがって、本願は2種、3種、4種又はそれ以上の種類のジヒドロキシ化合物の残基を含むコポリカーボネートを包含する。
【0015】
「溶融ポリカーボネート」とは、ジアリールカーボネートと1種以上のジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応で製造されるポリカーボネートをいう。
【0016】
本明細書中で使用する「触媒系」とは、溶融ポリカーボネートの製造に際してジヒドロキシ芳香族化合物とジアリールカーボネートとのエステル交換反応を触媒する単数又は複数の触媒をいう。
【0017】
「触媒有効量」とは、触媒が触媒性能を示す量をいう。
【0018】
「ジヒドロキシ芳香族化合物」とは、1以上の芳香環上に2つのヒドロキシ基を含む芳香族化合物(例えば、ビスフェノールAのようなビスフェノール又はレソルシノールのようなジヒドロキシベンゼン)を意味する。
【0019】
「ジヒドロキシ化合物」は、ジヒドロキシ芳香族化合物のみに限定されない。
【0020】
本明細書中で「BPA」は、ビスフェノールA又は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと定義される。
【0021】
「芳香族基」とは、1以上の芳香族基を含む原子価1以上の基をいう。芳香族基の例には、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニレン及びビフェニルがある。この用語は、芳香族成分及び脂肪族成分の両方を含む基(例えば、ベンジル基)を包含する。
【0022】
「脂環式基」とは、環状であるが芳香族でない原子配列を含む原子価1以上の基をいう。かかる配列は、窒素、硫黄及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。脂環式基の例には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロフラニルなどがある。
【0023】
本願の明細書及び特許請求の範囲中の数値、特にポリマー組成物に関する数値は、特性の異なる個別のポリマーを含み得る組成物に関する平均値を表している。さらに、かかる数値は、同じ有効数字桁数に換算した場合に同一である数値、及びその値を求めるために本願で使用する測定技術の実験誤差未満だけしか記載の値と異ならない数値も包含すると理解すべきである。
【0024】
方法:
本発明は、末端封鎖ポリカーボネートの製造方法であって、
遊離末端OH基を有するポリカーボネートを、対称活性化カーボネート及び化合物Aを含む末端封鎖剤と化合させる段階を含んでなり、化合物Aが次式の構造を有するか、
【0025】
【化2】

(式中、Rは枝分れC〜C40アルキル基及び線状C〜C40アルキル基からなる群から選択され、Rは水素、枝分れC〜C40アルキル基、線状C〜C40アルキル基、C〜C30アリール基及びC〜C30アラルキル基からなる群から選択される。)
或いは化合物Aが式C(COCOR)(式中、RはC10〜C40アルキル基又はC10〜C40アルケニル基である。)を有するエステル化ポリオールである結果、末端封鎖剤はポリカーボネートの遊離ヒドロキシル末端基の少なくとも一部と反応して任意に置換された脂肪族エステル末端基を含む末端封鎖ポリカーボネートを生成する方法を提供する。
【0026】
ヒドロキシ末端停止ポリカーボネートの製法は特に限定されず、当技術分野で公知であり、例えば、K.J.SaundersのOrganic Polymer Chemistry(1973年、Chapman and Hall Ltd.)並びに米国特許第3442854号、同第5026817号、同第5097002号、同第5142018号、同第5151491号及び同第5340905号を始めとする多数の米国特許に記載されている。
【0027】
ヒドロキシ末端停止ポリカーボネートは、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート源の溶融重縮合で製造できる。かかる反応はバッチモード又は連続モードで実施できる。反応を実施する装置は、任意適宜のタイプのタンク、管又はカラムであり得る。連続法は、通常、1以上の連続攪拌槽型反応器及び1以上の仕上反応器の使用を伴う。
【0028】
「溶融法又はエステル交換法条件」という用語は、本発明の方法に従って使用されるジアリールカーボネートとジヒドロキシ化合物との反応を生起させるのに必要な条件を意味することが理解されよう。反応温度は、通例は150〜350℃、さらに好ましくは180〜310℃の範囲内にある。圧力は、大気圧であるか、大気圧を超える圧力であるか、或いは重合反応の初期には例えば2気圧ないし15トルの圧力範囲にあると共に、後期には例えば15〜0.1トルの範囲内の減圧であり得る。反応時間は、一般には0.1〜10時間、好ましくは0.1〜5時間の範囲内にある。
【0029】
末端封鎖剤:
本発明の末端封鎖剤は、アルキルエステル(化合物A)及び対照活性化カーボネートを含んでいる。化合物Aは次式の構造を有するか、
【0030】
【化3】

(式中、Rは枝分れC〜C40アルキル基及び線状C〜C40アルキル基からなる群から選択され、Rは水素、枝分れC〜C40アルキル基、線状C〜C40アルキル基、C〜C30アリール基及びC〜C30アラルキル基からなる群から選択される。)或いは化合物Aは式C(COCOR)(式中、RはC10〜C40アルキル基又はC10〜C40アルケニル基である。)を有するエステル化ポリオールである。
【0031】
化合物Aの好ましい組成物は、通例、安価であると共に使用が容易であるという理由からステアリン酸である。しかし、他の種類の化合物も使用に適している。式(A)を有する化合物の例の非限定的リストには、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リグノセリン酸、エイコサン酸、これらの酸のアルキルエステル、そのアリールエステル、及びこれらの混合物(例えば、獣脂脂肪酸)が含まれる。さらに、グリセロールモノステアレート及びペンタエリトリトールテトラステアレート(PETS)も化合物Aの好適な例である。
【0032】
末端封鎖剤はまた、対称活性化カーボネートも含んでいる。本明細書中で使用する「活性化カーボネート」という用語は、エステル交換反応に対してジフェニルカーボネートより反応性の高いジアリールカーボネートとして定義される。かかる活性化カーボネートは下記の一般式を有する。
【0033】
【化4】

式中、Arは6〜30の炭素原子を有する置換芳香族基である。好ましい対称活性化カーボネートは、下記のさらに具体的な一般式を有する。
【0034】
【化5】

式中、Q及びQ’の各々は同一の活性化基であり、A及びA’の各々は同一の芳香環である。R及びR’の各々は、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、アルキルアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン又はカルボアルコキシのような同一の置換基である。R及びR’基の数は整数であり、0から(芳香環A又はA’上の置換可能な水素原子の数)−(数n又はn’)に等しい最大値までであり得る。芳香環上のR及びR’置換基の数、種類及び位置は、それがカーボネートを不活性化してジフェニルカーボネートより反応性の低いカーボネートを生じることがない限り、特に限定されない。
【0035】
活性化基Q及びQ’の非限定的な例は、下記に示す構造を有するアルコキシカルボニル基、ハロゲン、ニトロ基、アミド基、スルホン基、スルホキシド基及びイミン基である。
【0036】
【化6】

活性化カーボネートの非限定的な具体例には、ビス(o−メトキシカルボニルフェニル)カーボネート、ビス(o−クロロフェニル)カーボネート、ビス(o−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(o−アセチルフェニル)カーボネート、ビス(o−フェニルケトンフェニル)カーボネート、ビス(o−ホルミルフェニル)カーボネートがある。対称活性化カーボネートに関する好ましい構造は、次式の構造を有するエステル置換ジアリールカーボネートである。
【0037】
【化7】

式中、RはC〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20芳香族基であり、Rはハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基、C〜C20芳香族基、C〜C20アルコキシ基、C〜C20シクロアルコキシ基、C〜C20アリールオキシ基、C〜C20アルキルチオ基、C〜C20シクロアルキルチオ基、C〜C20アリールチオ基、C〜C20アルキルスルフィニル基、C〜C20シクロアルキルスルフィニル基、C〜C20アリールスルフィニル基、C〜C20アルキルスルホニル基、C〜C20シクロアルキルスルホニル基、C〜C20アリールスルホニル基、C〜C20アルキルカルボニル基、C〜C20シクロアルキルカルボニル基、C〜C20アリールカルボニル基、C〜C60アルキルアミノ基、C〜C60シクロアルキルアミノ基、C〜C60アリールアミノ基、C〜C40アルキルアミノカルボニル基、C〜C40シクロアルキルアミノカルボニル基、C〜C40アリールアミノカルボニル基又はC〜C20アシルアミノ基であり、bは各々独立に0〜4の整数である。置換基COの1以上は、好ましくはカーボネート基に対してオルト位に結合している。
【0038】
好ましいエステル置換ジアリールカーボネートの例は対称活性化ジアリールカーボネートであり、特に限定されないが、ビス(メチルサリチル)カーボネート(BMSC)(CAS登録番号82091−12−1)、ビス(エチルサリチル)カーボネート、ビス(プロピルサリチル)カーボネート、ビス(ブチルサリチル)カーボネート、ビス(ベンジルサリチル)カーボネート、ビス(メチル−4−クロロサリチル)カーボネートなどがある。表1を参照されたい。
通例、分子量が低くて蒸気圧が高い点で、BMSCが溶融ポリカーボネートの合成で使用するのに好ましい。
【0039】
【表1】

【0040】
あるジアリールカーボネートが活性化されるかされないかを判定するための一方法は、あるジアリールカーボネートとp−(1,1,3,3−テトラメチル)ブチルフェノールのようなフェノールとの間でモデルエステル交換反応を実施することである。このフェノールが好ましいのは、それがただ1つの反応部位を有し、低い揮発性を有し、ビスフェノールAに類似した反応性を有するからである。モデルエステル交換反応は、通常は水酸化ナトリウム又はナトリウムフェノキシドの水溶液であるエステル交換触媒の存在下において、あるジアリールカーボネート及びp−(1,1,3,3−テトラメチル)ブチルフェノールの融点より高い温度で実施される。エステル交換触媒の好ましい濃度は、フェノール又はシアリールカーボネートのモル数を基準にして約0.001モル%である。また、好ましい反応温度は200℃である。しかし、好都合な反応速度を得るため、条件及び触媒濃度の選択は反応体の反応性及び反応体の融点に応じて調整できる。反応温度に対する唯一の制約は、その温度が反応体の分解温度より低くなければならないことである。反応温度が反応体を揮発させて反応体のモルバランスに影響を及ぼす場合には、封管が使用できる。反応体の平衡濃度の測定は、反応の進行中に反応混合物の試料を採取し、次いでHPLC(高圧液体クロマトグラフィー)のような当業者に公知の検出方法を用いて反応混合物を分析することで行う。反応器から試料を取り出した後に反応が継続しないよう、特別の注意を払う必要がある。これは、氷浴中で試料を冷却すると共に、HPLC溶媒系の水相中に酢酸のような反応停止酸を使用することで達成される。反応混合物を冷却することに加え、反応試料中に反応停止酸を直接導入することが望ましい場合もある。HPLC溶媒系の水相中の酢酸の好ましい濃度は0.05%(v/v)である。平衡定数は、平衡に達したときの反応体及び生成物の濃度から求められる。反応混合物の試料採取に際して反応混合物中の成分の濃度がほとんど又は全く変化しない一点に達した場合、平衡に達したものと考える。平衡定数は、当業者に公知の方法により、平衡時における反応体及び生成物の濃度から求めることができる。1を超える相対平衡定数(Ktest/KDPC)を有するジアリールカーボネートは、ジフェニルカーボネートより好ましい平衡状態を有すると見なされ、活性化カーボネートである。他方、1以下の平衡定数を有するジアリールカーボネートは、ジフェニルカーボネートと同じ又はそれより好ましくない平衡状態を有すると見なされ、活性化されていないと見なさる。エステル交換反応を実施する場合には、ジフェニルカーボネートに比べて非常に高い反応性を有する対称活性化カーボネートを使用することが一般に好ましい。好ましいのは、ジフェニルカーボネートの平衡定数の10倍以上の平衡定数を有する活性化カーボネートである。
【0041】
カーボネート基に対してオルト位に存在する場合、活性化カーボネートを生じないと予想される非活性化基の若干の非限定的な例は、アルキル基、シクロアルキル基及びシアノ基である。非活性化カーボネートの若干の非限定的な具体例は、ビス(o−メチルフェニル)カーボネート、ビス(p−クミルフェニル)カーボネート、ビス(p−(1,1,3,3−テトラメチル)ブチルフェニル)カーボネート及びビス(o−シアノフェニル)カーボネートである。これらの構造の非対称的な組合せも、非活性化カーボネートを生じると予想される。
【0042】
カーボネートは、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステル又はジカルボン酸ハロゲン化物から導くこともできる。かかる構成繰返し単位は、通例はポリエステル−ポリカーボネート単位である。ジカルボン酸の非限定的な例には、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸などがある。ジカルボン酸エステルの非限定的な例には、ジフェニルセバケート、ジフェニルテレフタレート、ジフェニルイソフタレート、ジフェニルデカンジオエート、ジフェニルドデカンジオエートなどがある。ジカルボン酸ハロゲン化物の非限定的な例には、塩化テレフタロイル、塩化イソフタロイル、塩化セバコイル、塩化デカンジオイル、塩化ドデカンジオイルなどがある。かかるポリエステル−ポリカーボネート単位は、本発明に係る共重合ポリカーボネート中50モル%まで、好ましくは30モル%以下の割合で存在し得る。
【0043】
末端封鎖反応プロセス:
本発明の方法の一実施形態に従えば、末端封鎖剤は遊離ヒドロキシル末端基を有する予備生成ポリカーボネートポリマーと化合される。末端封鎖剤はポリカーボネートの末端ヒドロキシ基を迅速に封鎖する。予備生成ポリカーボネートポリマーは任意の種類のポリカーボネートであってよく、溶融エステル交換反応で製造できる。
【0044】
ポリカーボネートに末端封鎖剤を添加する方法は特に限定されない。例えば、末端封鎖剤はバッチ反応器又は連続反応器系において反応生成物としてのポリカーボネートに添加できる。一実施形態では、末端封鎖剤は連続反応器系中の後段反応器(即ち、重合器)の直前又は直後において溶融ポリカーボネートに添加される。第二の実施形態では、末端封鎖剤は連続反応器系中の最後の重合器の後で反応押出しにより添加される。第三の実施形態では、それは連続反応器系中の第一及び第二の重合器の間で添加される。第四の実施形態では、末端封鎖剤は第二の反応器と第一の重合器との間で添加される。第五の実施形態では、末端封鎖剤を添加するポリカーボネートは2000ダルトン以上、さらに好ましくは2000〜15000ダルトン、さらに一層好ましくは6000〜13000ダルトン、さらに一段と好ましくは7000〜12000ダルトンの数平均分子量Mを有する。第六の実施形態では、末端封鎖剤を添加するポリカーボネートは25%以上のヒドロキシル末端基含有量、さらに好ましくは40%以上のヒドロキシル末端基含有量を有する。
【0045】
本発明の一実施形態では、末端封鎖剤は、250〜300℃の温度及び0.1〜1.0mbarの圧力での押出しに先立って遊離ヒドロキシル末端基を含むポリカーボネートに添加される。脱揮発分型押出機で反応押出しを実施することで本発明の末端封鎖ポリカーボネートが得られる。
【0046】
末端封鎖剤中の対称活性化カーボネート及び成分(A)の相対量は、所望の生成物特性に応じて変化し得る。一般に、対称活性化カーボネートと成分(A)とのモル比は、好適には0.1〜10、さらに好ましくは0.5〜2.0、さらに一層好ましくは0.9〜2.0、さらに一段と好ましくは1.1〜2.0である。
【0047】
末端封鎖ポリカーボネートはなお、未回収フェノール、末端封鎖反応に対する副反応の副生物などと共に未反応の末端封鎖剤、などを少量含み得る。一実施形態では、末端封鎖ポリカーボネートは500ppm未満、さらに好ましくは200ppm未満のオルト置換フェノールを含んでいる。本発明の別の実施形態では、末端封鎖ポリカーボネートは本発明の末端封鎖剤の未反応化合物(A)を500ppm未満、さらに好ましくは100ppm未満含んでいる。別の実施形態では、末端封鎖ポリカーボネートは末端2−(アルコキシカルボニル)フェニル、2−(フェノキシカルボニル)フェニル、2−(ベンジルオキシカルボニル)フェニル及び2−ベンゾイルフェニル基を2500ppm未満、さらに好ましくは1000ppm未満含んでいる。
【0048】
任意の末端停止剤/末端封鎖剤:
本発明の一実施形態では、先行技術に係る追加/任意の末端停止剤/末端封鎖剤も使用できる。末端停止剤の例には、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、及び当技術分野で公知の他の末端封鎖剤がある。
【0049】
本発明の方法の一実施形態では、必要に応じて枝分れ剤が使用される。枝分れ剤は公知であり、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸無水物及びこれらの混合物であり得る3以上の官能基を含む多官能性有機化合物を包含し得る。その具体例には、トリメリト酸無水物、トリス−p−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビスフェノール、トリス−フェノールTC(1,3,5−トリス((p−ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス−フェノールPA(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エチル)−α,α−ジメチルベンジル)フェノール)及びベンゾフェノンテトラカルボン酸がある。
【0050】
任意の触媒:
ポリカーボネート合成は、エステル交換反応を促進するための触媒の存在下で実施できる。その例には、アルカリ金属及びアルカリ土類金属自体又はその酸化物、水酸化物、アミド化合物、アルコラート及びフェノラート、塩基性金属酸化物(例えば、ZnO、PbO及びSb)、有機チタン化合物、可溶性マンガン化合物、含窒素塩基性化合物、カルシウムやマグネシウムや亜鉛や鉛やスズやマンガンやカドミウムやコバルトの酢酸塩、並びに複合触媒系(例えば、含窒素塩基性化合物とホウ素化合物、含窒素塩基性化合物とアルカリ金属(アルカリ土類金属)化合物、及び含窒素塩基性化合物とアルカリ金属(アルカリ土類金属)化合物とホウ素化合物)がある。
【0051】
ポリカーボネート中の他の任意成分:
本発明では、得られるポリカーボネートはさらに、一般に当技術分野で使用される熱安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、潤滑剤、防曇剤、天然油、合成油、ワックス、有機充填材及び無機充填材を含み得る。
【0052】
また、成形物品及び成形物品の製造方法を提供することも本発明の態様であり、かかる方法は、
(i)遊離末端OH基を有するポリカーボネートを、対称活性化カーボネート及び化合物Aを含む末端封鎖剤と化合させる段階であって、化合物Aが次式の構造を有するか、
【0053】
【化8】

(式中、Rは枝分れC〜C40アルキル基及び線状C〜C40アルキル基からなる群から選択され、Rは水素、枝分れC〜C40アルキル基、線状C〜C40アルキル基、C〜C30アリール基及びC〜C30アラルキル基からなる群から選択される。)
或いは化合物Aが式C(COCOR)(式中、RはC10〜C40アルキル基又はC10〜C40アルケニル基である。)を有するエステル化ポリオールである結果、末端封鎖剤はポリカーボネートの遊離ヒドロキシル末端基の少なくとも一部と反応して任意に置換された脂肪族エステル末端基を含む末端封鎖ポリカーボネートを生成する段階と、
(ii)段階(i)で生成した末端封鎖ポリカーボネートから成形物品を形成する段階と
を含んでなる。
【実施例】
【0054】
以上、本発明を詳しく説明してきたが、以下に実施例を示す。これらの実施例は本発明の技術的範囲を限定するものではなく、単に本発明を例示し代表するものと解すべきである。
【0055】
出発原料ポリカーボネート:
すべての実施例で、グレードAの出発ポリカーボネートを使用した。この出発原料は、下記の特性を有する連続反応器系において溶融法で製造した。
【0056】
【表2】


実施例中では、以下の測定を行った。
【0057】
a)分子量:塩化メチレン中の1mg/mlポリマー溶液をポリスチレン標準に対してGPC分析することでM及びMを測定した。次いで、ポリカーボネートのM及びM測定値をポリカーボネートとポリスチレン標準との間の保持体積の差について補正した。
【0058】
b)遊離OH含有量をNMR分光法で測定した。
【0059】
c)アルキルエステル末端基の導入量をNMR分光法で測定した。
【0060】
d)末端封鎖レベルを遊離OH含有量及びM値から算出した。
【0061】
実施例1
バッチ反応管に、25gのポリカーボネートA、0.9241g(3.25×10−3モル)のステアリン酸、及び0.5364g(1.62×10−3モル)のビス(メチルサリチル)カーボネート又はbMSCを窒素下で仕込んだ。かくして、ステアリン酸はポリカーボネートAの遊離OH含有量に対して1.0のモル比で添加し、bMSCはポリカーボネートAの遊離OH含有量に対して0.5のモル比で添加した。混合物を270℃の温度に加熱し、10分間攪拌した。溶融混合段階後、0.5mbarの圧力で系に真空を加え、反応を40分間継続させた。反応段階後、反応管から無色のポリマーを回収した。結果を表2に示す。
【0062】
実施例2
実施例1を繰り返したが、1.0728g(3.25×10−3モル)のビス(メチルサリチル)カーボネート又はbMSCを添加する代わりに0.9656g(2.92×10−3モル)のbMSCを反応管に仕込んだ。反応段階後、反応管から無色のポリマーを試料採取した。結果を表2に示す。
【0063】
実施例3
実施例1を繰り返したが、1.0728g(3.25×10−3モル)のビス(メチルサリチル)カーボネート又はbMSCを添加する代わりに1.0728g(3.25×10−3モル)のbMSCを反応管に仕込んだ。反応段階後、反応管から無色のポリマーを試料採取した。結果を表2に示す。
【0064】
実施例4
実施例1を繰り返したが、1.0728g(3.25×10−3モル)のビス(メチルサリチル)カーボネート又はbMSCを添加する代わりに1.6093g(4.87×10−3モル)のbMSCを反応管に仕込んだ。反応段階後、反応管から無色のポリマーを試料採取した。結果を表2に示す。
【0065】
実施例5
実施例3を繰り返したが、ステアリン酸を添加する代わりに0.6507g(3.25×10−3モル)のラウリン酸を反応管に仕込んだ。反応段階後、反応管から無色のポリマーを試料採取した。結果を表2に示す。
【0066】
実施例6
実施例3を繰り返したが、ステアリン酸を添加する代わりに0.1015g(3.25×10−3モル)のエイコサン酸を反応管に仕込んだ。反応段階後、反応管から無色のポリマーを試料採取した。結果を表2に示す。
【0067】
実施例7
実施例3を繰り返したが、ステアリン酸を添加する代わりに0.9697g(3.25×10−3モル)のメチルステアレート及び1.0728g(3.248×10−3モル)のbMSCを反応器に仕込んだ。反応段階後、反応管から無色のポリマーを試料採取した。結果を表2に示す。
【0068】
実施例8
実施例3を繰り返したが、ステアリン酸を添加する代わりに1.1714g(3.25×10−3モル)のフェニルステアレート及び1.0728g(3.25×10−3モル)のbMSCを反応器に仕込んだ。反応段階後、反応管から無色のポリマーを試料採取した。結果を表2に示す。
【0069】
比較例1
実施例3の手順を繰り返したが、末端封鎖剤を使用しなかった。結果を表2に示す。
【0070】
比較例2
実施例7の手順を繰り返したが、0.9241g(3.25×10−3モル)のステアリン酸のみを反応器に仕込んだ。結果を表2に示す。
【0071】
比較例3
実施例7の手順を繰り返したが、0.9697g(3.25×10−3モル)のメチルステアレートのみを反応器に仕込んだ。結果を表2に示す。
【0072】
比較例4
実施例8の手順を繰り返したが、1.1714g(3.25×10−3モル)のフェニルステアレートのみを反応器に仕込んだ。結果を表2に示す。
【0073】
【表3】

結果:
実施例1〜8は、ポリカーボネート中にアルキルエステルを末端封鎖剤として組み込むことで無色のアルキルエステル末端封鎖ポリマーが得られることを実証している。詳しくは、実施例1〜4は、末端遊離OH基を有するポリカーボネートに脂肪酸を対称活性化カーボネートと共に添加することが、フェニルエステルを添加する先行技術の方法(比較例4)より有効にアルキルエステル末端基をポリカーボネートに導入する方法であることを例示している。特に、本発明ははるかに高率のアルキルエステル末端基の導入をもたらす。また、得られるポリカーボネートの末端封鎖レベルは、フェニルエステルを添加する先行技術の方法(比較例4)又は末端封鎖剤を添加しない対照試料(比較例1)を用いて得られるものより高い。
【0074】
実施例1〜4は、BMSC/末端封鎖剤の比が最終生成物の分子量及び末端封鎖率を決定することを実証している。その比が高いほど、分子量の残率は高くなり、末端封鎖率も高くなる。BMSCを添加しないと、分子量は許容し得ないほど低い値に低下し、末端封鎖率は許容し得ないほど低い値のままである(比較例2)。
【0075】
実施例5及び6は、本発明方法が様々な鎖長のアルキルエステル末端基を組み込むために使用できることを実証している。
【0076】
実施例7及び8は、本発明方法によれば、末端封鎖レベルをほぼ100%にまで増加させ得ることを示している(比較例3及び4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端封鎖ポリカーボネートの製造方法であって、
遊離末端OH基を有するポリカーボネートを、対称活性化カーボネート及び化合物Aを含む末端封鎖剤と化合させる段階を含んでなり、化合物Aが次式の構造を有するか、
【化1】

(式中、Rは枝分れC〜C40アルキル基及び線状C〜C40アルキル基からなる群から選択され、Rは水素、枝分れC〜C40アルキル基、線状C〜C40アルキル基、C〜C30アリール基及びC〜C30アラルキル基からなる群から選択される。)
或いは化合物Aが式C(COCOR)(式中、RはC10〜C40アルキル基又はC10〜C40アルケニル基である。)を有するエステル化ポリオールである結果、末端封鎖剤はポリカーボネートの遊離ヒドロキシル末端基の少なくとも一部と反応して任意に置換された脂肪族エステル末端基を含む末端封鎖ポリカーボネートを生成する、方法。
【請求項2】
末端封鎖剤中の対称活性化カーボネートと化合物Aとのモル比が0.5〜2.0である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
末端封鎖剤中の対称活性化カーボネートと化合物Aとのモル比が1.1〜2.0である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
末端封鎖剤の化合物Aが、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、これらの酸のアルキルエステル、及びそのアリールエステルからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
末端封鎖剤の化合物Aがステアリン酸である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
化合物Aがエステル化ポリオールであって、ペンタエリトリトールテトラステアレート(PETS)である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
末端封鎖剤の対称活性化カーボネートが次式の構造を有する、請求項1記載の方法。
【化2】

(式中、RはC〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20芳香族基であり、Rはハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基、C〜C20芳香族基、C〜C20アルコキシ基、C〜C20シクロアルコキシ基、C〜C20アリールオキシ基、C〜C20アルキルチオ基、C〜C20シクロアルキルチオ基、C〜C20アリールチオ基、C〜C20アルキルスルフィニル基、C〜C20シクロアルキルスルフィニル基、C〜C20アリールスルフィニル基、C〜C20アルキルスルホニル基、C〜C20シクロアルキルスルホニル基、C〜C20アリールスルホニル基、C〜C20アルコキシカルボニル基、C〜C20シクロアルコキシカルボニル基、C〜C20アリールオキシカルボニル基、C〜C60アルキルアミノ基、C〜C60シクロアルキルアミノ基、C〜C60アリールアミノ基、C〜C40アルキルアミノカルボニル基、C〜C40シクロアルキルアミノカルボニル基、C〜C40アリールアミノカルボニル基又はC〜C20アシルアミノ基であり、bは各々独立に0〜4の整数である。)
【請求項8】
末端封鎖剤の対称活性化カーボネートが、ビス−メチルサリチレートカーボネート(BMSC)、BPA−ビス−メチルサリチレートカーボネート、ビス−エチルサリチレートカーボネート、ビス−プロピルサリチレートカーボネート、ビス−2−ベンゾイルフェニルカーボネート、ビス−フェニルサリチルカーボネート及びビス−ベンジルサリチルカーボネートからなる群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
末端封鎖剤の対称活性化カーボネートがビス−メチルサリチレートカーボネート(BMSC)である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
末端封鎖剤の対称活性化カーボネートが、添加時にポリカーボネートの遊離末端OH基の1モル当量を基準にして0.1〜2モルの量で添加される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
末端封鎖剤の対称活性化カーボネートが、添加時にポリカーボネートの遊離末端OH基の1モル当量を基準にして0.8〜1.3モルの量で添加される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
生成されたポリカーボネートが500ppm以下の末端封鎖剤含有量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
生成されたポリカーボネートが100ppm以下の末端封鎖剤含有量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
生成されたポリカーボネートが2500ppm以下の末端2−(アルコキシカルボニル)フェニル、2−(フェノキシカルボニル)フェニル、2−(ベンジルオキシカルボニル)フェニル及び2−ベンゾイルフェニル基含有量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
生成されたポリカーボネートが1000ppm以下の末端2−(アルコキシカルボニル)フェニル、2−(フェノキシカルボニル)フェニル、2−(ベンジルオキシカルボニル)フェニル及び2−ベンゾイルフェニル基含有量を有する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
生成されたポリカーボネートが500ppm以下のオルト置換フェノール含有量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
生成されたポリカーボネートが200ppm以下のオルト置換フェノール含有量を有する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
末端封鎖剤を添加するポリカーボネートが2000ダルトン以上の数平均分子量Mを有する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
末端封鎖剤を添加するポリカーボネートが2000〜15000ダルトンの数平均分子量Mを有する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
末端封鎖剤を添加するポリカーボネートが6000〜13000ダルトンの数平均分子量Mを有する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
末端封鎖剤を添加するポリカーボネートが7000〜12000ダルトンの数平均分子量Mを有する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
末端封鎖剤を添加するポリカーボネートが25%以上のヒドロキシル末端基含有量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項23】
末端封鎖剤を添加するポリカーボネートが40%以上のヒドロキシル末端基含有量を有する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
対称活性化カーボネート及び化合物Aを含んでなる末端封鎖剤であって、化合物Aが次式の構造を有するか、
【化3】

(式中、Rは枝分れC〜C40アルキル基及び線状C〜C40アルキル基からなる群から選択され、Rは水素、枝分れC〜C40アルキル基、線状C〜C40アルキル基、C〜C30アリール基及びC〜C30アラルキル基からなる群から選択される。)
或いは化合物Aが式C(COCOR)(式中、RはC10〜C40アルキル基又はC10〜C40アルケニル基である。)を有するエステル化ポリオールである、末端封鎖剤。
【請求項25】
末端封鎖剤中の対称活性化カーボネートと化合物Aとのモル比が0.5〜2.0である、請求項24記載の末端封鎖剤。
【請求項26】
末端封鎖剤中の対称活性化カーボネートと化合物Aとのモル比が1.1〜2.0である、請求項25記載の末端封鎖剤。
【請求項27】
末端封鎖剤の化合物Aが、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、これらの酸のアルキルエステル、及びそのアリールエステルからなる群から選択される、請求項24記載の末端封鎖剤。
【請求項28】
末端封鎖剤の化合物Aがステアリン酸である、請求項27記載の末端封鎖剤。
【請求項29】
化合物Aがエステル化ポリオールであって、ペンタエリトリトールテトラステアレート(PETS)である、請求項24記載の末端封鎖剤。
【請求項30】
末端封鎖剤の対称活性化カーボネートが次式の構造を有する、請求項24記載の末端封鎖剤。
【化4】

(式中、RはC〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20芳香族基であり、Rはハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基、C〜C20芳香族基、C〜C20アルコキシ基、C〜C20シクロアルコキシ基、C〜C20アリールオキシ基、C〜C20アルキルチオ基、C〜C20シクロアルキルチオ基、C〜C20アリールチオ基、C〜C20アルキルスルフィニル基、C〜C20シクロアルキルスルフィニル基、C〜C20アリールスルフィニル基、C〜C20アルキルスルホニル基、C〜C20シクロアルキルスルホニル基、C〜C20アリールスルホニル基、C〜C20アルコキシカルボニル基、C〜C20シクロアルコキシカルボニル基、C〜C20アリールオキシカルボニル基、C〜C60アルキルアミノ基、C〜C60シクロアルキルアミノ基、C〜C60アリールアミノ基、C〜C40アルキルアミノカルボニル基、C〜C40シクロアルキルアミノカルボニル基、C〜C40アリールアミノカルボニル基又はC〜C20アシルアミノ基であり、bは各々独立に0〜4の整数である。)
【請求項31】
末端封鎖剤の対称活性化カーボネートが、ビス−メチルサリチレートカーボネート(BMSC)、BPA−ビス−メチルサリチレートカーボネート、ビス−エチルサリチレートカーボネート、ビス−プロピルサリチレートカーボネート、ビス−2−ベンゾイルフェニルカーボネート、ビス−フェニルサリチルカーボネート及びビス−ベンジルサリチルカーボネートからなる群から選択される、請求項30記載の末端封鎖剤。
【請求項32】
末端封鎖剤の対称活性化カーボネートがビス−メチルサリチレートカーボネート(BMSC)である、請求項31記載の末端封鎖剤。
【請求項33】
末端封鎖剤の対称活性化カーボネートがビス−メチルサリチレートカーボネート(BMSC)であり、化合物Aがステアリン酸である、請求項24記載の末端封鎖剤。
【請求項34】
成形物品の製造方法であって、
(i)遊離末端OH基を有するポリカーボネートを、対称活性化カーボネート及び化合物Aを含む末端封鎖剤と化合させる段階であって、化合物Aが次式の構造を有するか、
【化5】

(式中、Rは枝分れC〜C40アルキル基及び線状C〜C40アルキル基からなる群から選択され、Rは水素、枝分れC〜C40アルキル基、線状C〜C40アルキル基、C〜C30アリール基及びC〜C30アラルキル基からなる群から選択される。)
或いは化合物Aが式C(COCOR)(式中、RはC10〜C40アルキル基又はC10〜C40アルケニル基である。)を有するエステル化ポリオールである結果、末端封鎖剤はポリカーボネートの遊離ヒドロキシル末端基の少なくとも一部と反応して任意に置換された脂肪族エステル末端基を含む末端封鎖ポリカーボネートを生成する段階と、
(ii)段階(i)で生成した末端封鎖ポリカーボネートから成形物品を形成する段階と
を含んでなる方法。
【請求項35】
(i)遊離末端OH基を有するポリカーボネートを、対称活性化カーボネート及び化合物Aを含む末端封鎖剤と化合させる段階であって、化合物Aが次式の構造を有するか、
【化6】

(式中、Rは枝分れC〜C40アルキル基及び線状C〜C40アルキル基からなる群から選択され、Rは水素、枝分れC〜C40アルキル基、線状C〜C40アルキル基、C〜C30アリール基及びC〜C30アラルキル基からなる群から選択される。)
或いは化合物Aが式C(COCOR)(式中、RはC10〜C40アルキル基又はC10〜C40アルケニル基である。)を有するエステル化ポリオールである結果、末端封鎖剤はポリカーボネートの遊離ヒドロキシル末端基の少なくとも一部と反応して任意に置換された脂肪族エステル末端基を含む末端封鎖ポリカーボネートを生成する段階と、
(ii)段階(i)で生成した末端封鎖ポリカーボネートから成形物品を形成する段階と
を含んでなる方法で製造される成形物品。

【公表番号】特表2008−512558(P2008−512558A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531395(P2007−531395)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/032265
【国際公開番号】WO2006/031668
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【復代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
【Fターム(参考)】