説明

溶融金属供給装置

【課題】ダクト内の清掃の作業性を確保しながら、なお且つダクト内での溶融金属のレベル変動量を大きくすることが出来、またダクトの出口から吐出される溶融金属の流速の極端な低下を来さない溶融金属供給装置。
【解決手段】ダクト1を通して溶融金属12を搬送先に供給する溶融金属供給装置において、ダクト1の出口内にその内径を細径化する円筒状のアダプタ15を着脱自在に嵌め込む。アダプタ15は、ダクト1との隙間を埋めることが出来、着脱を容易にするため、その外周に耐熱性パッキン18を巻いてダクト1に嵌め込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融したアルミニウムや亜鉛等の溶融金属を搬送するために使用される溶融金属供給装置に関する。特に運転停止時のダクト内の清掃が容易なようにダクトの内径を確保しながら、運転時におけるダクトの出口付近での溶融金属のレベル変動の検知を容易にし、また比較的少ない溶融金属の流量でも溶融金属の流速を確保してダクトの出口での溶融金属の切れを良くすることが出来る溶融金属供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアルミニウム鋳造の分野では鋳型等の搬送先に溶融金属を供給するために、電磁誘導作用により溶融金属に推力を与えて搬送する溶融金属用誘導電磁ポンプを用いた容器供給装置が使用されている。このような溶融金属用誘導電磁ポンプは、磁性体製のヨークにコイルを巻いた誘導子により筒状のダクト内部に移動磁界を発生させて溶融金属に推力を与え、供給する形式の誘導形電磁ポンプが主流である。
【0003】
このような容器供給装置に使用される誘導形電磁ポンプは、例えば下記特許文献2(特開2006−341281号公報)に記載されている。溶融金属が流れる管状のダクトは、耐熱性及び耐蝕性を有する筒状のセラミックス等のダクトからなり、そのダクトの外周に移動磁界を発生するため、ヨークにコイルを巻いた誘導子を配置し、管状のダクトの内部に誘導子により発生した磁界の磁路となる磁性体のコアを配置している。コアは耐熱性及び耐蝕性を有する筒状のセラミックス等の保護管により覆われている。従って、溶融金属の流路は管状のダクトと保護管との間に形成される環状部分となり、これにより、この種の誘導電磁ポンプは環状流路形誘導電磁ポンプと呼ばれている。
【0004】
このような溶融金属用誘導電磁ポンプを使用した溶融金属供給装置は、間欠的に毎回一定量の溶融金属をダイキャスト装置や重力鋳造装置等の搬送先に供給するのに用いられる。誘導電磁ポンプの駆動により、溶融金属を供給するときは、ダクトはヒータにより加熱され、ダクト内はそれを通る溶融金属が凝固しないように溶融金属の融点以上の温度が維持される。他方、誘導電磁ポンプの駆動を停止し、溶融金属の供給を停止しているときは、ヒータによるダクトの加熱も停止する。
【0005】
ところが、誘導電磁ポンプの駆動を停止し、溶融金属の供給を停止すると共に、ヒータによるダクトの加熱を暫く停止した後、暫くしてから再度ヒータによりダクトを加熱し、設定温度になった後、誘導電磁ポンプを駆動し、溶融金属の供給を開始すると、ダクト内に溶融金属の酸化物の厚膜片が混ざることがある。この溶融金属の酸化物の厚膜片は、ダクト内の溶融金属の流通の妨げとなったり、或いは酸化物の厚膜片が目的の供給先に搬送され、鋳物の品質低下等の問題を引き起こす。そこで、溶融金属の供給開始時には、この溶融金属の酸化物の除去作業が必要となる。
【0006】
ダクト内の清掃は、棒の先端に取り付けたスクレーパやブラシ等をダクトの中に挿入して行う。このため、この清掃作業の観点からはダクトの内径が大きい方が清掃の作業性の点では好ましい。
一方でダクト内での溶融金属のレベル制御は、ダクト内の溶融金属の液面の高さを検知することで行う。ダクト内の溶融金属を上昇−下降させたとき、同じ容積の溶融金属でもダクトの内径が大きいと、その分だけ溶融金属の液面の変動量は小さくなる。このため、センサにより検知される溶融金属の液面の変動量も小さくなる。この結果、溶融金属のレベル制御の精度を高くし難い。
【0007】
また、ダクトの内径が大きいと、その分だけダクト内での溶融金属の流速が遅くなる。このため、搬送する溶融金属の流量が小さいと、内径の大きいダクトの中では溶融金属の流速が小さくなり、部分的な流れの停滞が起こりやすい。特にダクトの出口で溶融金属の流速が遅いと、ダクトから吐出される溶融金属の垂れや雫等の停滞が生じやすい。粘性流体である溶融金属のいわゆる「切れ」が悪くなる。これが原因で一定量の溶融金属を供給する必要がある場合に、溶融金属のダクトからの吐出量にばらつきが出る原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−012024号公報
【特許文献2】特開2006−341281号公報
【特許文献3】特開平05−285638号公報
【特許文献4】特開平05−042357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述した従来の溶融金属供給装置と溶融金属供給方法における課題に鑑み、簡単な手段により、ダクト内の清掃の作業性を確保しながら、なお且つダクト内での溶融金属のレベル変動量を大きくすることが出来、またダクトの出口から吐出される溶融金属の流速の極端な低下を来さない溶融金属供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本件発明は、ダクト1内にその内径を細径化するための円筒状のアダプタ15を嵌め込むことにより、その目的を達成するものである。
すなわち、本発明による溶融金属供給装置は、ダクト1を通して溶融金属12を搬送先に供給する溶融金属供給装置において、ダクト1内にその内径を細径化する円筒状のアダプタ15を着脱自在に嵌め込んだものである。
【0011】
アダプタ15をダクト1に着脱自在に嵌め込むことで、ダクト1の内径を細径化することが出来るので、ダクト1内で溶融金属12を上昇−下降させた時に、ダクト1内における溶融金属12のレベル変動を大きくすることが出来る。これにより、ダクト1内における溶融金属12のレベル変動量の把握が容易になる。
【0012】
また、アダプタ15をダクト1に嵌め込むことで、その部分ではダクト1の中を流れる溶融金属12の流速を早くすることが出来る。これにより、ダクト1内での溶融金属12の停滞を防止することが出来る。特にその出口での溶融金属12の垂れや雫等の停滞が生じにくくなり、溶融金属12のいわゆる切れが良くなる。
他方、ダクト1内を清掃するときは、アダプタ15をダクト1から取り外せば、ダクト1の内径を広げることが出来、ダクト1の内径が均一な直管となる。よってダクト1内の清掃も容易となる。
【0013】
アダプタ15は、ダクト1の特に溶融金属12の出口付近に嵌め込むことが好ましい。その理由は、第一にダクト1の出口付近での溶融金属12のレベル変動を把握するということにある。第二にダクトの出口から流出する溶融金属12の流速を速くし、ダクト1の出口における溶融金属12の垂れや雫等の停滞を防ぐことにある。第三にアダプタ15をダクト1の溶融金属12の出口付近に嵌め込めば、ダクト1の清掃時のアダプタ15の着脱も容易であるということにある。
【0014】
アダプタ15は、ダクト1との隙間を埋めることが出来、着脱を容易にするため、その外周に耐熱性パッキン18を巻いてダクト1に嵌め込むとよい。このような耐熱性パッキン18としては、例えばアルミナ−シリカ系繊維の表面に水ガラスと共に窒化硼素粒子を付着させたものを挙げることが出来る。このような耐熱性パッキン18をダクト1とアダプタ15との間に挿入することにより、ダクト1とアダプタ15との隙間に溶融金属が浸入せず、ダクト1、1’が冷却した後でもアダプタ15をダクト1から容易に抜き出すことが出来る。
【発明の効果】
【0015】
以上説明した通り、本発明による溶融金属12供給装置では、ダクト1の中を流れる溶融金属12の流量に応じて、ダクト1を細径のものに交換することなく、アダプタ15の嵌め込みだけで溶融金属12の流速を調整することが出来る。具体的には、ダクト1の出口での溶融金属12のレベル変動を大きく出来ることにより、溶融金属12のレベル変動量を容易に把握することが出来る。また、ダクト1の出口における溶融金属12の吐出速度を速くすることが出来るので、溶融金属12の停滞を防止することが出来る。その一方で、アダプタ15を外すことで、ダクト1内の清掃の容易性を妨げない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】溶融金属用誘導電磁ポンプを使用した溶融金属供給装置の一実施例を示す断面図である。
【図2】同溶融金属のアダプタ部分を拡大して示した断面図である。
【図3】同溶融金属の供給装置に使用するアダプタの例を示す半断面斜視図である。
【図4】溶融金属用誘導電磁ポンプを使用した溶融金属供給装置の他の実施例のアダプタ部分を拡大して示した断面図である。
【図5】溶融金属用誘導電磁ポンプを使用した溶融金属供給装置の他の実施例を示す断面図である。
【図6】溶融金属用誘導電磁ポンプを使用した溶融金属供給装置の他の実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明では、溶融金属12を供給するダクト1内にその内径を細径化するような円筒形のアダプタ15を着脱自在に嵌め込むことにより、ダクト1内での溶融金属12の上下動や流速確保し、なおかつそのアダプタ15をダクト1から取り外すことにより、ダクト1内の清掃の容易性を損なわないものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例をあげて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明による溶融金属用電磁ポンプを使用した溶融金属供給装置の一実施例を示すものである。
溶融金属12を入れた溶融金属槽11の底部近くの斜めの壁面13に給湯口が開口しており、この給湯口にフランジ状の継手を介して給湯方向に向けて斜め上向きに真っ直ぐなポンプ側ダクト1が接続されている。さらにこのポンプ側ダクト1には、それを延長するように給湯側ダクト1’がフランジ継手等の継手5、5’を介して接続されている。この先の給湯側ダクト1’は、図示してないバネ等により手前のポンプ側ダクト1に押しつけられ、継手5、5’の間に挿入された耐熱性のガスケットにより継手5、5’の部分のシール性が確保されている。これらのダクト1、1’は、セラミック等の耐熱性、耐蝕性のある材料で作られており、保温のため外側にヒータ9が巻かれ、溶融金属12の融点以上の温度に加熱されるようになっている。
【0019】
手前のポンプ側ダクト1の周囲には、磁性体製のヨークにコイルを巻回した誘導子14が配置されている。またこのポンプ側ダクト1の中には、その中心軸が一致するように磁性体製の円柱体からなるコア2が配置されている。このコア2は、両端が閉じられた円筒形の保護管3の中に収納されており、ポンプ側ダクト1の中の溶融金属12と直接接触しないようになっている。保護管3は、セラミック等の耐熱性、耐蝕性のある材料で作られており、その中のコア2の周囲にクッション材としてアルミナ、マグネシア等のセラミック繊維或いはセラミック粉末等の充填材8が充填されている。
【0020】
保護管3の給湯側ダクト1’に近い一端部の周囲にフランジ6が延設され、このフランジ6の外周に近い部分が前記ポンプ側ダクト1と給湯側ダクト1’とを接続する継手5、5’の間に挟持されている。これにより、コア2がポンプ側ダクト1の中心に位置するよう保持されている。ポンプ側ダクト1と給湯側ダクト1’は、その外周に設けた保温用のマイクロヒータ等からなるヒータ9により加熱される。フランジ6には、溶融金属12の通路となる複数の円弧状の通過孔7が設けられている。
【0021】
このような溶融金属供給装置におけるダクト1、1’のうち、特に溶融金属12の吐出側となる給湯側ダクト1’の出口部分にアダプタ15を着脱自在に嵌め込む。
図3はこのアダプタ15を示す。このアダプタ15は、ダクト1の内径よりやや小さな外径を有しており、図示のものはダクト15の内径に合わせて直な均一な外径となっている。このダクト1の内径は、ダクト1の奥側、すなわち溶融金属12の流れの手前側となる部分に、手前から先側にいくに従って次第に径が小さくなるようなテーパ状の案内部17を有し、その先は均一な内径のストレート状の流路部16となっている。この流路部16の内径は必ずしも均一である必要は無いが、ダクト1内の溶融金属12のレベル変動をリニアに把握出来る点では内径が均一であることが好ましい。
【0022】
アダプタ15の外周面に耐熱性パッキン18が巻かれる。この耐熱性パッキンとしては、例えばアルミナ−シリカ系繊維の表面に水ガラスと共に窒化硼素粒子を付着させたものを挙げることが出来る。例えば、このような耐熱性パッキン材を帯状としてアダプタ15の外周面に巻き付ける。
【0023】
前記耐熱性パッキン18は、より具体的には、分散媒中に水ガラスを含む窒化硼素のスラリを、アルミナ−シリカ系繊維にしみこませることにより、アルミナ−シリカ系繊維の表面に水ガラスと共に窒化硼素粒子を付着させたものである。水ガラスを水に溶解し、この水ガラスの希釈溶液に窒化硼素粉末を分散してスラリを作る。このスラリにメチルアルコールを添加し、このスラリをアルミナ−シリカ系繊維に染みこませる。水ガラスの溶液は、原料の水ガラスが水に2〜5重量%溶解する。窒化硼素のスラリは、窒化硼素粉末が水ガラス溶液に20〜30重量%分散する。また、メチルアルコールは、全体に対して30〜60重量%の割合で添加される。
【0024】
図1に示すように、この耐熱性パッキン18を外周に装着したアダプタ15を前記給湯側ダクト1の出口からその出口側端部に嵌め込む。この状態で、前記耐熱性パッキン18によりアダプタ15の外周と給湯側ダクト1’の内周とのシール性を確保する。
この状態では、ポンプ側ダクト1’の出口付近の内径がアダプタ15により減径されることにより、誘導子14で溶融金属槽11から溶融金属12をポンプ側ダクト1から給湯側ダクト1’へと汲み上げた時に、ポンプ側ダクト1’の出口付近での溶融金属12のレベル変動量が大きくなる。これにより、センサー等(図示せず)でポンプ側ダクト1’内の溶融金属12のレベルを検知するときのレベルの変位検知量が大きくなり、検知しやすくなる。また、溶融金属12を給湯側ダクト1’の出口から吐出する時も、ポンプ側ダクト1’の出口付近での溶融金属12の流速が大きくなるため、溶融金属12のいわゆる垂れや雫等の停滞が生じにくくなり、粘性流体である溶融金属12のいわゆる「切れ」が良くなる。これにより、溶融金属12の供給を開始或いは停止した時のポンプ側ダクト1’の出口付近での溶融金属12の吐出−停止を反応良く行うことが出来る。
【0025】
これを図2によりより分かり易く説明すると、ポンプ側ダクト1’及びアダプタ15の流路平面断面積をAhとし、誘導子14で容積Vの溶融金属12を押し上げたとき、流路内での溶融金属12の押し上げ高さhはh=V/Ahで表される。アダプタ15の流路平面断面積Ahはポンプ側ダクト1’の流路平面断面積Ahより小さいため、誘導子14で同じ容積Vの溶融金属12を押し上げたとき、アダプタ15の部分での押し上げ高さhは、ポンプ側ダクト1’のアダプタ15が無い部分の押し上げ高さhより大きくなる。
【0026】
また、ポンプ側ダクト1’及びアダプタ15の流路断面積をAとし、誘導子14で流量Q(単位時間当たり移動容積)の溶融金属12を流したとき、溶融金属12の流速vはv=Q/Aで表される。アダプタ15の流路断面積Aはポンプ側ダクト1’の流路断面積Aより小さいため、誘導子14で同じ流量Qの溶融金属12を流したとき、アダプタ15の部分での流速vは、ポンプ側ダクト1’のアダプタ15が無い部分の流速vより速くなる。
このような原理で、アダプタ15により溶融金属12の押し上げ高さh、流速vを高く、速くすることが出来る。
【0027】
アダプタ15の外周面と給湯側ダクト1’の内周面とに離型剤を塗布し、さらにそれらの間に耐熱性パッキン18を挿入し、その隙間を埋めることにより、溶融金属12の供給時にアダプタ15と給湯側ダクト1’との隙間に溶融金属12が浸入しにくい。また浸入しても、耐熱性パッキン18に浸透するため、その溶融金属12が硬化しても、アダプタ15を給湯側ダクト1’から引き抜く時に、硬化した溶融金属12が強固に結着せず、アダプタ15を抜き取ることの障害とはならない。
【0028】
これに対して、図4に示した実施形態は、前述のような耐熱性パッキン18を使用せずに給湯側ダクト1’の出口にアダプタ15を着脱自在に嵌め込んだ例である。この実施形態では、前述のようにアダプタ15の外周面と給湯側ダクト1’の内周面とに離型剤を塗布するが、アダプタ15の外周に耐熱性パッキン18は巻かずに、アダプタ15を給湯側ダクト1’の出口に直接嵌め込んでいる。アダプタ15の外周面と給湯側ダクト1’の出口内周面とが密に接するようにそれらの内外径の嵌め合い寸法をとる。さらにアダプタ15の端部を、その外径が給湯側ダクト1’の出口内径より大きくなるようなフランジ形とし、その部分をホースバンドのようなリング状の固定具19で給湯側ダクト1’の先端部に固定する。
【0029】
図5は、本発明による溶融金属用誘導電磁ポンプを使用した溶融金属供給装置の他の実施例を示す断面図である。この図3の実施例は、溶融金属用誘導電磁ポンプのポンプ側ダクト1を垂直に設置し、その下端を溶融金属12の液面からその中に差し込んだ例である。誘導子14は溶融金属12の液面より上にある。従ってこの場合は、溶融金属12を汲み上げるとき、誘導子14による推進力が作用する高さまで溶融金属12をポンプ側ダクト1の中に押し上げる必要がある。その手段としては、給湯側ダクト1’側からの空気吸引によるダクト1、1’内の減圧等の手段を挙げることが出来る。
【0030】
この図5に示した溶融金属供給装置では、前記ポンプ側ダクト1の上端にエルボ状の給湯側ダクト1’が接続されており、この給湯側ダクト1’の出口側は若干の勾配が設けられているが、水平に近い。
この給湯側ダクト1’の出口にアダプタ15が嵌め込まれている。この溶融金属供給装置の場合、給湯側ダクト1’の出口側は水平に近いため、その出口における溶融金属12のレベル検知は行わない。従ってアダプタ15は、主として給湯側ダクト1’の出口における溶融金属12の流速確保に適用される。
その他については、図1に示した実施例と同様であり、同じ部分は同じ符合で示している。
【0031】
図6は、本発明による溶融金属用誘導電磁ポンプを使用した溶融金属供給装置のさらに他の実施例を示す断面図である。この図6の実施例は、浸漬形の環状溶融金属用誘導電磁ポンプを使用した例である。このタイプの環状溶融金属用誘導電磁ポンプは誘導子14をセラミック等の耐熱性及び耐蝕性を有する材料からなる保護ケース16の中に収納し、ポンプの部分のほぼ全体を溶融金属12の中に浸漬している。保護ケース16の下端中央に溶融金属12を導入する孔があり、この部分にポンプ側ダクト1の下端が接合されている。このダクト1の下端の孔からダクト1内に溶融金属12を汲み上げる形式である。保護管3はフランジ21によりポンプ側ダクト1と給湯側ダクト1’との接続部から誘導子14の高さまで吊り下げられている。その接続部は縦方向の蓋22と横方向の蓋22’により閉じられている。コア2は、縦方向の蓋22から棒23により誘導子14の高さまで吊り下げられている。
このような構造からも明らかな通り、この浸漬型の溶融金属誘導電磁ポンプを使用した溶融金属供給装置では、図5に示した溶融金属誘導電磁ポンプのように、誘導子14にまで溶融金属12を押し上げる他の手段を必要としない。
【0032】
この図6に示した溶融金属供給装置にも、その給湯側ダクト1’の出口にアダプタ15が嵌め込まれている。この溶融金属供給装置の場合、図5により前述した溶融金属供給装置と同様に、給湯側ダクト1’は水平に近いため、アダプタ15は、主として給湯側ダクト1’の出口における溶融金属12の流速確保に適用される。
その他、誘導電磁ポンプそのものの構造及びダクト1、1’の接続は基本的に図5に示したものと同様であり、同じ部分は同じ符号で示している。その詳細は重複するので説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明による溶融金属供給装置では、例えば、ダイキャスト等の分野で精密鋳造のための溶融金属供給システムとして適用が可能である。しかも、構造や制御も簡便であり、容易に実施出来るので、定量の溶融金属12の間欠的な供給が容易に適用出来る。
【符号の説明】
【0034】
1 ポンプ側ダクト
1’ 給湯側ダクト
12 溶融金属
15 アダプタ
18 耐熱性パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクト1を通して溶融金属12を搬送先に供給する溶融金属供給装置において、ダクト1内にその内径を細径化する円筒状のアダプタ15を嵌め込んだことを特徴とする溶融金属供給装置。
【請求項2】
アダプタ15がダクト1の出口近くに嵌め込まれていることを特徴とする請求項1に記載の溶融金属供給装置。
【請求項3】
アダプタ15の外周に耐熱性パッキン18が巻かれた状態でダクト1に嵌め込まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶融金属供給装置。
【請求項4】
耐熱性パッキンが窒化ホウ素を含浸させたセラミック繊維からなることを特徴とする請求項3に記載の溶融金属供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−106268(P2012−106268A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257858(P2010−257858)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000183945)助川電気工業株式会社 (79)