説明

溶解槽配管洗浄装置

【課題】セル内に設置された溶解槽の連通管目皿に付着したスラッジ及び底部配管に堆積したスラッジを遠隔操作で洗浄及び点検するのに好適な溶解槽配管洗浄装置を実現する。
【解決手段】溶解槽2を構成するバレル2b、2cとスラブ2aにおける連通管目皿2eと底部配管2fを前記バレル内に挿入した治具によって洗浄及び点検する溶解槽配管洗浄装置において、前記治具は、クレーン吊り具8と、高圧水噴射ノズル部9cとカメラ9dを備えた連通管目皿点検洗浄ロッド9と、この連通管目皿点検洗浄ロッドにネジ結合する補助ロッド10と、高圧水噴射ノズル部11cを備えた底部配管洗浄ロッド11と、反射鏡部12cを備えた底部配管点検ロッド12と、共用延長ロッド13とを備え、クレーン吊り具8の下に補助ロッドまたは共用延長ロッド13を介して連通管目皿点検洗浄ロッド9または底部配管洗浄ロッド11または底部配管点検ロッド12を連結して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解槽の連通管目皿や底部配管を洗浄するための溶解槽配管洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再処理施設には、使用済燃料を溶解する複数基の溶解槽が設置されており、各溶解槽は、2本のバレル(使用済燃料のせん断片を受け入れて溶解する円筒型溶解部)とスラブ(溶解液を留めておき、かつ、計装配管等が収納されている平板型貯液部)を備える。バレルとスラブは、それぞれ、連通管と呼ばれる複数段の配管で接続されており、一部の連通管には連通管目皿と呼ばれる金網が設置されている。また、各バレルの底部には、底部配管(使用済燃料の溶解液及び洗浄廃液を送液する)が接続されている。
【0003】
溶解槽のスラブ及びバレル内部には、使用済燃料の溶解運転に伴ってスラッジが堆積するため、溶解槽の機能を維持するために槽内の洗浄が必要となる。しかし、溶解槽は高線量率のセル内に設置されており、作業者が直にアクセスすることができない。そのため、溶解槽の洗浄には、セル外から遠隔操作するスラッジ回収装置(特許文献1)、高圧水を噴射する溶解槽洗浄装置(非特許文献1、2)が提案されている。しかし、これらの装置は、スラブ及びバレルの底部を洗浄するための装置であり、バレルに接続された連通管目皿や底部配管の内部を直接洗浄することはできない。
そのため、既存の装置(特許文献1、非特許文献1及び2)による連通管目皿に付着したスラッジの除去(洗浄)は困難であった。
また、底部配管の洗浄は、当該系統の取り合い部からの重力流を利用した純水供給により、配管内部のスラッジを押し出し、その後、スラッジ回収装置で行っていたが、配管内部に固着したスラッジや配管に詰まったスラッジに対しては、効果がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−148390号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本原子力学会、2008年秋の大会予稿集 疋田 敬一、他、“溶解槽洗浄装置の開発(1)高圧水式洗浄装置の開発”
【非特許文献2】日本原子力学会、2008年秋の大会予稿集 照沼 宏隆、他、“溶解槽洗浄装置の開発(2)高圧水式洗浄装置の実機適用”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
使用済燃料のせん断時の溶解槽の排気は、バレルからスラブを経て換気されることから、連通管目皿には、微粉末等が付着することとなる。また、バレル底部には、使用済燃料の溶解液及び洗浄廃液を送液するための配管(サイフォン又はスチームジェットによる送液)が配置されており、これらの配管内部にはスワーフバスケットを通過したスラッジ等が堆積する。
【0007】
連通管目皿や底部配管の洗浄及び点検用の治具には次のような課題がある。
(1)洗浄及び点検用の治具には信頼性の高い技術が必要である。
(2)セル内で使用する洗浄及び点検用の治具は、セル内に設置したマニピュレータとクレーンによって遠隔操作が可能な形状、構造であることが必要である。なお、セル内でのクレーンの吊り込み移動高さは、最大2.1mであり、吊りフックは、バレル底部(共通のセル床下から約7m)まで下降することができる。
(3)連通管目皿は、バレルの中間部(共通のセル床下から約3m)の位置に設置されており、当該位置でのバレルの直径は270mmと比較的に広い環境にあることから、この環境に適した洗浄及び点検用の治具とすることが望ましい。
(4)底部配管はバレル底部にあり、当該位置でのバレル直径は100mmと狭隘な環境であることから、狭隘な環境での洗浄及び点検作業に適合することが必要である。
(5)セル内で使用した洗浄及び点検用の治具は、高放射性廃棄物となることから、部品の共用化や耐久性を高めて、廃棄物の量を低減することが必要である。なお、セル内の廃棄物容器に収容できる寸法は、φ690mm×766mm以下である。
【0008】
本発明の目的は、セル内に設置された溶解槽の連通管目皿に付着したスラッジ及び底部配管に堆積したスラッジを遠隔操作で洗浄及び点検するのに好適な溶解槽配管洗浄装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
溶解槽を構成するバレルとスラブにおける連通管目皿と底部配管を前記バレル内に挿入した治具によって洗浄及び点検する溶解槽配管洗浄装置において、
前記治具は、クレーン吊り具と、高圧水噴射ノズルとカメラを備えた連通管目皿点検洗浄ロッドと、この連通管目皿点検洗浄ロッドにネジ結合する補助ロッドと、高圧水噴射ノズルを備えた底部配管洗浄ロッドと、反射鏡を備えた底部配管点検ロッドと、共用延長ロッドとを備え、
連通管目皿点検洗浄治具は、前記クレーン吊り具の下に複数本の前記共用延長ロッドと前記補助ロッドにネジ結合した前記連通管目皿点検洗浄ロッドを連結した構成とし、
底部配管洗浄治具は、前記クレーン吊り具の下に複数本の前記共用延長ロッドと底部配管洗浄ロッドを連結した構成とし、
底部配管点検治具は、前記クレーン吊り具の下に複数本の前記共用延長ロッドと底部配管点検ロッドを連結した構成とする。
【0010】
そして、各連結は、連結する上側のロッドの下端部に設けた係止ピンと、連結する下側のロッドの上端部に設けた上連結部によって切り離し自在に行う構成とし、
前記上連結部は、上側のロッドを挿入する挿入穴と、この挿入穴に挿入した上側のロッドの係止ピンを嵌入して係合させるL字状の係止ピン係合鉤の手溝と、係止ピン係合鉤の手溝に嵌入して鉤部に係合させた係止ピンを抜け止めするように該係止ピンを係止するようにロッドに摺動可能に嵌合した係止リングを備えた構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の溶解槽配管洗浄装置によれば、溶解槽における連通管目皿と底部配管を効率的に洗浄してスラッジを除去することができ、治具の着脱(連結と分離)が簡単であることから洗浄及び点検作業の大幅な時間短縮が可能となった。
【0012】
また、連通管目皿と底部配管の洗浄と点検に使用する治具は、高圧給水ホース(20m)と共用延長ロッドを共用していることから、保管場所の省スペースが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】再処理施設のセル内に設置された3基の溶解槽とその配管系及び遮蔽窓と、各遮蔽窓に対応させてセル内に設置したマニピュレータと、クレーンをセル壁の一部を開披して開示する斜視図である。
【図2】溶解槽におけるスラブとバレルと連通管と連通管目皿及び底部配管の関係を示す断面図である。
【図3】バレルに対応させて設けたステラップを示す図であり、(a)はステラップを倒した状態を示す正面図、(b)はその上面図、(c)はステラップを起立させた状態を示す正面図、(d)はその上面図である。
【図4】抜け止め治具を示す図であり、(a)は正面図、(b)はその左側面図、(c)は上面図である。
【図5】ステラップと抜け止め治具の組み合わせ状態を示す図であり、(a)は起立させたステラップに抜け止め治具を設置した状態を示す正面図、(b)はその上面図、(c)は起立させたステラップに共用延長ロッドを係合させて抜け止め治具により係止した状態を示す正面図、(d)はその上面図である。
【図6】クレーン吊り具を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図7】連通管目皿点検洗浄ロッドを示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図8】補助ロッドを示す図であり、(a)は正面図、(b)はその上面図、(c)は側面図、(d)はその上面図である。
【図9】補助ロッドにおける上連結部におけるロッド本体を示す図であり、(a)は正面図、(b)はその上面図、(c)は側面図、(d)はその上面図である。
【図10】補助ロッドの上連結部における係止リングを示す図であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は斜め側面図、(d)は側面図である。
【図11】連通管目皿点検洗浄ロッドの上連結部と補助ロッドの下連結部の連結状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図12】底部配管洗浄ロッドを示す図であり、(a)は正面図、(b)はその上面図、(c)は側面図、(d)はその上面図である。
【図13】底部配管点検ロッドを示す図であり、(a)は正面図、(b)はその上面図、(c)は側面図、(d)はその上面図である。
【図14】共用延長ロッドを示す図であり、(a)は正面図、(b)はその上面図、(c)は側面図、(d)はその上面図である。
【図15】補助ロッドの上連結部にクレーン吊り具の連結ロッドを対向させた状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図16】補助ロッドの上連結部にクレーン吊り具の連結ロッドを挿入し、係止ピンを係止ピン係合鉤の手溝に嵌入させた状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図17】補助ロッドの上連結部に挿入したクレーン吊り具の連結ロッドを回転させて係止ピンを係止ピン係合鉤の手溝の鉤部の奥に移動させて係止リングの係止溝上に対向させた状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図18】補助ロッドの上連結部に対するクレーン吊り具の連結ロッドの連結を完了した状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図19】クレーン吊り具と連通管目皿点検洗浄ロッドと補助ロッドを連結する治具組立作業説明図であり、(a)はクレーン吊り具と補助ロッドの連結作業説明図、(b)は連通管目皿点検洗浄ロッドと補助ロッドの連結作業説明図、(c)は組み立て途中の治具を吊り上げた状態を示す図である。
【図20】治具組立作業説明図であり、(a)はステラップを倒したバレルに連通管目皿点検洗浄ロッドを挿入した状態を示す正面図、(b)は連通管目皿点検洗浄ロッドを挿入したバレルに対応するステラップを起立させて補助ロッドのロッド本体を係止溝に嵌入すると共に抜け止め治具を差し入れて抜け止めする作業状態を示す正面図である。
【図21】治具組立作業説明図であり、(a)はクレーンの吊りフックを下降させて補助ロッドの鍔をステラップ上に抜け止め治具を介在させて着座させた状態を示す正面図、(b)はステラップ上に着座した補助ロッドの係止リングを押し下げてクレーン吊り具を切り離した状態を示す正面図である。
【図22】治具組立作業説明図であり、(a)はクレーン吊り具と一本目の共用延長ロッドの連結作業説明図、(b)は一本目の共用延長ロッドと二本目の共用延長ロッドの連結作業説明図、(c)は組み立て途中の治具を吊り上げた状態を示す図である。
【図23】治具組立作業説明図であり、(a)はクレーンで吊り下げた2本の共用延長ロッドにおける下側の共用延長ロッドの下連結部をステラップ上に着座している治具の補助ロッドの上連結部に連結した状態を示す正面図、(b)はステラップと補助ロッドの間に介在されている抜け止め治具を取り除く作業を示す正面図である。
【図24】組み上がった連通管目皿点検洗浄治具をクレーンで吊り上げ、ステラップを倒して連通管目皿点検洗浄ロッドの高圧水噴射ノズル部及び反射鏡が連通管目皿に対向する位置まで下降させた状態を示す正面図である。
【図25】治具組立作業説明図であり、(a)はクレーン吊り具と共用延長ロッドの連結作業説明図、(b)は共用延長ロッドの下に底部配管洗浄ロッドを連結する連結作業説明図、(c)は組み立て途中の底部配管洗浄治具を吊り上げた状態を示す図である。
【図26】治具組立作業説明図であり、(a)はステラップを倒したバレルに底部配管洗浄ロッドを挿入した状態を示す正面図、(b)は底部配管洗浄ロッドを挿入したバレルに対応するステラップを起立させて共用延長ロッドのロッド本体を係止溝に嵌入すると共に抜け止め治具を差し入れて抜け止めする作業状態を示す正面図である。
【図27】治具組立作業説明図であり、(a)はクレーンの吊りフックを下降させて共用延長ロッドの鍔をステラップ上に抜け止め治具を介在させて着座させた状態を示す正面図、(b)はステラップ上に着座した共用延長ロッドの係止リングを押し下げてクレーン吊り具を切り離した状態を示す正面図である。
【図28】組み上がった底部配管洗浄治具をクレーンで吊り上げ、ステラップを倒して底部配管洗浄ロッドの高圧水噴射ノズル部が底部配管に対向する位置まで下降させた状態を示す正面図である。
【図29】組み上がった底部配管点検治具を使用して行う底部配管点検状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の溶解槽配管洗浄装置において、洗浄は、溶解槽の洗浄で実績のある高圧水噴射方式とし、点検は、耐放射線カメラもしくは市販のCCDカメラを使用して行う構成とする。
【0015】
治具は、セル内でのクレーンの吊り込み移動高さが2.1mであることから、約7mもしくは約3mの長さの一体構造ではなく、また、廃棄物容器への収容を考慮して、760mm/本のロッドを切り離し自在に連結する構成とする。
【0016】
治具として、連通管目皿点検洗浄ロッドと、底部配管洗浄ロッドと、底部配管点検ロッドと、共用延長ロッドと、補助ロッドと、クレーン吊り具とを備える。なお、補助ロッドは、連通管目皿点検洗浄ロッドを連結するためのものであるが、補助ロッドの下連結部に設けてある、連通管目皿点検洗浄ロッド連結用のネジ穴及び係止ピンのうち、該係止ピンは、共用延長ロッドの係止ピンと同形状であり、底部配管洗浄ロッド又は底部配管点検ロッドの共用延長ロッドとしても使うことができる。
【0017】
連通管目皿点検洗浄ロッドは高圧水噴射ノズルとカメラを備え、底部配管洗浄ロッドは高圧水噴射ノズルを備え、底部配管点検ロッドは反射鏡を備え、共用延長ロッドは前記連通管目皿点検洗浄ロッドにネジ結合した補助ロッド又は底部配管洗浄ロッド又は底部配管点検ロッドの上端に複数段に連結して前記連通管目皿点検洗浄ロッド又は底部配管洗浄ロッド又は底部配管点検ロッドをバレル2b、2cの所定の位置まで下降させることができる治具を構成する。
【0018】
連通管目皿の洗浄及び点検は、連通管目皿点検洗浄ロッドと補助ロッドと2本の共用延長ロッドを連結して構成した治具を使用して行い、底部配管の洗浄及び点検は、底部配管洗浄ロッド又は底部配管点検ロッドと9本の共用延長ロッドを連結して構成した治具を使用して行う構成とする。なお、9本の共用延長ロッドのうち1本は補助ロッドを共用延長ロッドとして使用する。
【0019】
ロッドの連結方式は、マニピュレータによる遠隔操作性を高めるために、係止ピンを嵌入して係合させるL字状の係止ピン係合鉤の手溝とばねと係止リングを利用し、ロッド下端部の係止ピンをロッド上端部から係止ピン係合鉤の手溝に挿し込んで回転させることにより係止ピン係合鉤の手溝に係合させ、ばねの力で押し当てられる係止リングの係止溝によって係止ピンを抜け止めしてロッド同士を嵌合係止(連結)する構成とした。また、各ロッドには、マニピュレータ把持部を設けてハンドリング性を高める。
【0020】
連通管目皿洗浄に関しては、底部配管の洗浄(点検)に使用する2本の共用延長ロッド、1本の補助ロッドを共用すると共に、バレルの直径が270mmと比較的広い環境であることから、点検しながら洗浄することができる複合構成とする。また、従来の高圧水噴射ノズルは噴射方向への直線流路部が少なく噴射方向への水勢が小さく洗浄効果が少ないことから、噴射ノズルを1本として噴射方向への直線流路部を長(130mm)く構成することにより、治具内での高圧水流の乱流を抑制して噴射打力を高める(0.12MPa 従来の10倍)。また、コスト低減のために、連通管目皿洗浄ロッドと補助ロッドの接続部は、ネジ結合構成とするとともに、補助ロッドは、共用延長ロッドとしても使用できる構成とする。
【0021】
バレル底部は直径が100mmであることから、ここに挿入する高圧水を噴射して洗浄する洗浄ロッドと鏡を備えた点検ロッドは、複合構成とすることが困難であり、したがって、別々に構成する。
【0022】
治具を構成する各ロッドは、廃棄物容器へ収容することができる寸法とすると共にステンレス製とし、さらに、連通管目皿洗浄と底部配管洗浄のための高圧給水ホース(長さ20m)は、両治具へ選択的にカプラ接続することで共用化する。各ロッドは、強度を確保しつつ軽量化を図るために管材を使用する。
【実施例】
【0023】
図1は、再処理施設のセル内に設置された3基の溶解槽とその配管系及び遮蔽窓と、各遮蔽窓に対応させてセル内に設置したマニピュレータと、クレーンとをセル壁の一部を開披して示している。また、図2は、この溶解槽におけるスラブとバレルと連通管と連通管目皿及び底部配管の関係を示している。
【0024】
セル1の室内は、上下2段に分割され、下段の室1aに設置される各溶解槽2は、スラブ2aと、このスラブ2aの両側に設置したバレル2b、2cと、スラブ2aとバレル2b、2cを接続する複数段の連通管2dと、一部の連通管2dに設置した連通管目皿2eを備える。
【0025】
各バレル2b、2cの底部には、サイフォン又はスチームジェットに連なる底部配管2fが接続されている。
【0026】
各バレル2b、2cの頭部は、上段の室1bの床1cに開口し、この開口に嵌合する蓋2gを取り外すことによりこの開口から洗浄又は点検用の治具を内部に挿入することができる構成である。
【0027】
また、この各バレル2b、2cの頭部開口に対応して、上段の室1bの床1cには、前記蓋2gを操作するときに使用するステラップ3を備える。このステラップ3は、具体的には後述するが、蓋2gの操作と洗浄又は点検用治具の操作に使用する。
【0028】
各溶解槽2のせん断時の排気はバレル2b、2cからスラブ2aを経て、上段の室1bのガス配管4を介して廃ガス処理工程に送り、処理される。また、バレル2b、2cには分配器5から供給配管5aを介して使用済燃料片を供給する構成である。
【0029】
また、前記蓋2gは、その上端が摘み2gに結合されて蓋本体2gを摺動可能に貫通する連結棒2gの下端に結合されたプラグ2gを備える。このプラグ2gは、下降位置では前記供給配管5aとバレル内の連通を遮断し(図2におけるバレル2cに示す状態)、引き上げてステラップ3に係止した上昇位置では前記供給配管5aとバレル内を連通(図2におけるバレル2bに示す状態)させるように機能する。
【0030】
上段の室1bには、各バレル2b、2cの頭部に対応する位置に遮蔽窓1dと、各遮蔽窓1dに対応させて室内に設置したマニピュレータ6を備え、天井にはクレーン7を備える。
【0031】
ステラップ3は、図3に示すように、床1c上に起伏可能に両端部を軸支して設置した帯状の湾曲金具で、倒すとバレル2b、2cの開口を避けるように伏した状態となり、起こすとバレル2b、2cの開口の上に起立して自立する。そして、このステラップ3の中央部には、起立してバレル2b、2cの開口の上に位置した状態で該開口の中心上に位置するように帯状体の側縁に開口する係止溝3aを備える。この係止溝3aは、ステラップ3を倒したときに上向きに開口する側の縁に形成する。
【0032】
また、このステラップ3は、図4に示すように、抜け止め治具3bを備える。この抜け止め治具3bは、ステラップ3の係止溝3aに挿入して係止した洗浄又は点検用治具が該係止溝3aから抜け出るのを防止するための治具であり、金属平板で略四角形に構成した本体3bの一辺の縁に開口して該辺に対して直角方向に伸びるように前記係止溝3aと対応する溝3bを備え、この溝3bを形成した一辺は下側に折り曲げてステラップ3の側縁に係止させる係止縁3bとし、反対側の一辺部にはマニピュレータ6により把持するための摘み3bを備える。
【0033】
図5は、起立させたステラップ3に抜け止め治具3bを係止させた状態を示しており、抜け止め治具3bは、(a)、(b)に示すようにステラップ3に係合させ、ステラップ3の係止溝3aに係合した共用延長ロッド13(詳細は後述する。)を抜け止めするときには(c)、(d)に示す状態となる。
【0034】
治具を構成するためのクレーン吊り具と、連通管目皿点検洗浄ロッドと、補助ロッドと、底部配管洗浄ロッドと、底部配管点検ロッドと、共用延長ロッドは、次のように構成する。
【0035】
図6は、クレーン吊り具8を示している。このクレーン吊り具8は、クレーン7の吊りフックを係合させる環状部8aと、後述する連通管目皿点検洗浄ロッドにネジ結合した補助ロッド又は底部配管洗浄ロッド又は底部配管点検ロッド又は共用延長ロッドの頭部(上連結部)に嵌入する連結ロッド8bと、嵌入したロッド頭部に係止する係止ピン8cを備える。
【0036】
図7は、連通管目皿点検洗浄治具を構成するための連通管目皿点検洗浄ロッド9を示している。この連通管目皿点検洗浄ロッド9は、管材で構成したロッド本体9aと、このロッド本体の上端部を後述する補助ロッドに連結する上連結部9bと、ロッド本体9aの下端部に横向きに設置した高圧水噴射ノズル部9cと、ロッド本体9aの中部に該ロッド本体9aに沿って下向きに設置したカメラ(耐放射線性カメラ又はCCDカメラ)9dと、カメラ9dの下方に位置させて前記高圧水噴射ノズル部9cの噴射方向(横向き方向)の環境光像を前記カメラ9dの方向に反射させる反射鏡9eと、高圧水噴射ノズル部9cへの高圧給水系統9fと、この連通管目皿点検洗浄ロッド9を床面に起立させるための脚部9gを備える。
【0037】
ロッド本体9aの上連結部9bは、補助ロッドの下端部を上から該ロッド本体9aに挿入して連結するときに補助ロッドの係止ピンを嵌入するように該ロッド本体9aの上端に開口させて形成した係止ピン係合溝9bと、挿入した補助ロッドを該ロッド本体9aに共締め結合する2本の結合ネジ9bを備える。
【0038】
高圧水噴射ノズル部9cは、ロッド本体9aの下端に結合した支持板9cの下面に横向きに噴射ノズル9cを取り付けた構成である。噴射ノズル9cは、水平(横)方向の流路が可及的に長くなるように構成する。
【0039】
カメラ9dは、ロッド本体9aの中部に間隔をおいて結合した2つの支持具9d、9dに該ロッド本体9aに沿わせて下向きに設置する。
【0040】
反射鏡9eは、前記支持板9cの上に45度の角度で上向きに設置し、横方向(連通管目皿2eの方向)の光像を前記カメラ9dの方向に反射させる。
【0041】
高圧給水系統9fは、上端部にカプラ9fが取り付けてあり、高圧給水ホース9f(底部配管洗浄ロッドと共用)の着脱が可能であり、前記支持板9c及び支持具9d、9dによって前記ロッド本体9aに沿わせて支持した高圧給水配管9fを備える。
【0042】
脚部9gは、支持板9cの下面に横向きに設置された噴射ノズル9cの両横に並べて垂下するように支持板9cに2枚の金属板9g、9gを取り付けて構成する。
【0043】
ガイド管9hは、小口径の管内カメラや高圧給水ホースをガイドすることが可能であり、また、連通管目皿に付着したスラッジが高圧水で洗浄できない場合は、市販のワイヤー式配管洗浄機をガイドすることで、より強力な洗浄が可能な構成となっている。
【0044】
図8は、前記連通管目皿点検洗浄ロッド9に連結して連通管目皿点検洗浄治具を構成するための補助ロッド10を示している。また、図9は、補助ロッド10における上連結部におけるロッド本体を示している。そして、図10は、補助ロッド10の上連結部における係止リングを示している。
【0045】
この補助ロッド10は、ロッド本体10aの下端部に前記連通管目皿点検洗浄ロッド9のロッド本体9aにおける上連結部9bに挿入して連結する下連結部10bを備え、上端部にはクレーン吊り具や共用延長ロッドを連結するための上連結部10cを備え、中間部には補助ロッド10をマニピュレータ6によって把持するための把持部10dを備える。
【0046】
下連結部10bは、ロッド本体10aが前記連通管目皿点検洗浄ロッド9のロッド本体9aにおける上連結部9bに挿入可能な太さであり、係止ピン係合溝9bに嵌入する係止ピン10bと、ロッド本体9aに共締め結合する2本の結合ネジ9bを貫通させる2つのネジ穴10bを備える。なお、補助ロッド10の下連結部10bは、前記連通管目皿点検洗浄ロッド9のロッド本体9aにおける上連結部9b以外では後述する底部配管洗浄ロッドにおける上連結部又は底部配管点検ロッドの上連結部又は共用延長ロッドのロッド本体における上連結部の挿入穴に挿入可能な太さであり、それぞれの係止ピン係合鉤の手溝に嵌入する係止ピン10bを備えることで、該補助ロッドは共用延長ロッドとしても使用できる。
【0047】
また、上連結部10cは、共用延長ロッドの下端部を上からロッド本体10aに挿入して連結するときに共用延長ロッドのロッド本体を挿入する挿入穴10cと、挿入されるロッド本体に設けられている係止ピンを嵌入するように該ロッド本体10aの上端に開口させて形成したL字状の係止ピン係合鉤の手溝10cと、該係止ピン係合鉤の手溝10cに嵌入して鉤部に係合させた係止ピンを抜け止めするように該係止ピンを係止するようにロッド本体10aに摺動可能に嵌合した係止リング10cと、ロッド本体10aに形成した鍔10cと前記係止リング10cの間に介在させて該係止リング10cを係止ピン係合鉤の手溝10cの方向に押し出す圧縮ばね10cを備える。
【0048】
把持部10dは、ロッド本体10aを貫通して該ロッド本体10aの両側に突出した四角形の環状棒10dによって構成する。
【0049】
本体ロッド10aに対する係止リング10cの嵌合は、本体ロッド10aに嵌着した抜け止めピン10cを係止リング10cに形成した縦長の抜け止め穴10c31に係合させることによって抜け止め及び回転止めし、係止リング10cの上端縁に形成した係止溝10c32は、係止ピン係合鉤の手溝10cの鉤部の奥に係合した係止ピンを嵌入係止して抜け止めする。
【0050】
前記係止リング10cは、該係止リング10cを圧縮ばね10cの押力に逆らってマニピュレータによって押し下げ操作するときに使用(把持)する鍔10c33を備える。
【0051】
図11は、連通管目皿点検洗浄ロッド9の上連結部9bと補助ロッド10の下連結部10bの連結状態を示している。この連通管目皿点検洗浄ロッド9は、このように補助ロッド10を連結して使用する。
【0052】
図12は、底部配管洗浄治具を構成するための底部配管洗浄ロッド11を示している。この底部配管洗浄ロッド11は、管材で構成したロッド本体11aと、このロッド本体11aの上端部を後述する共用延長ロッドに連結する上連結部11bと、ロッド本体11aの下端部に横向きに設置した高圧水噴射ノズル部11cと、ロッド本体11aの中間部に底部配管洗浄ロッド11をマニピュレータ6によって把持するための把持部11dを備え、更に、下端には底部配管洗浄ロッド11を床面に起立させるための脚部11eを備える。
【0053】
上連結部11bは、前述した補助ロッド10に構成した上連結部10cと同様に構成する。
【0054】
高圧水噴射ノズル部11cは、ロッド本体11aの下端に結合した脚部11eの上に横向きに噴射ノズル11cを取り付けて構成する。そして、噴射ノズル11cには、前記連通管目皿点検洗浄ロッド9における噴射ノズル9cと同様に高圧給水ホース9fをカプラ11c2に接続して給水する。なお、高圧給水ホース9fは目皿点検洗浄ロッドと共用である。
【0055】
把持部11dは、前述した補助ロッド10に構成した把持部10dと同様に構成する。
【0056】
脚部11eは、ロッド本体11aの下端に下面が水平状態となるように結合した円形の金属板11eによって構成する。
【0057】
図13は、底部配管点検治具を構成するための底部配管点検ロッド12を示している。この底部配管点検ロッド12は、管材で構成したロッド本体12aと、このロッド本体12aの上端部を後述する共用延長ロッドに連結する上連結部12bと、ロッド本体12aの下端部に横向きに設置した反射鏡部12cと、ロッド本体12aの中間部に底部配管点検ロッド12をマニピュレータ6によって把持するための把持部12dを備え、更に、下端には底部配管点検ロッド12を床面に起立させるための脚部12eを備える。
【0058】
上連結部12bは、前述した補助ロッド10に構成した上連結部10cと同様に構成する。
【0059】
反射鏡部12cは、ロッド本体12aの下端に結合した脚部12eの上に反射面を上向きにして45度傾けて反射鏡12cを取り付けて構成する。
【0060】
把持部12dは、前述した補助ロッド10に構成した把持部10dと同様に構成する。
【0061】
脚部12eは、ロッド本体12aの下端に下面が水平状態となるように結合した円形の金属板12eによって構成する。
【0062】
図14は、共用延長ロッド13を示している。この共用延長ロッド13は、管材で構成したロッド本体13aと、このロッド本体13aの上端部を前記クレーン吊り具8の連結ロッド8bや同様に構成した別の共用延長ロッドを連結する上連結部13bと、ロッド本体13aの下端部に設けた下連結部13dと、ロッド本体13aの中間部に共用延長ロッド13をマニピュレータ6によって把持するための把持部13cを備える。
【0063】
上連結部13bは、前述した補助ロッド10に構成した上連結部10cと同様に構成する。
【0064】
把持部13cは、前述した補助ロッド10に構成した把持部10dと同様に構成する。
【0065】
下連結部13dは、ロッド本体13aが前記連通管目皿点検洗浄ロッド9のロッド本体9aにおける上連結部9b又は前記補助ロッド10のロッド本体10aにおける上連結部10c又は前記底部配管洗浄ロッド11のロッド本体11aにおける上連結部11b又は前記底部配管点検ロッド12のロッド本体12aの上連結部12b又は同様に構成した別の共用延長ロッドのロッド本体における上連結部の挿入穴に挿入可能な太さであり、それぞれの係止ピン係合鉤の手溝に嵌入する係止ピン13dを備える。
【0066】
図15〜図18は、クレーン吊り具と補助ロッドの連結、クレーン吊り具と共用延長ロッドの連結又は共用延長ロッド同士の連結方法を示している。ここでは、クレーン吊り具と補助ロッドの連結を例示して説明する。他の連結も同様である。
【0067】
図15は、補助ロッド10の上連結部10cにクレーン吊り具8の連結ロッド8bを対向させた状態を示している。マニピュレータ6により、クレーン吊り具8をクレーン7の吊りフックに吊り下げ、補助ロッド10を把持した状態である。連結ロッド8bは、上連結部10cの挿入穴10cの中心上に位置させ、係止ピン8cの向きを係止ピン係合鉤の手溝10cの開口の向きに整合させる。
【0068】
図16は、クレーン吊り具8を下降させて補助ロッド10の上連結部10cの挿入穴10cに該クレーン吊り具8の連結ロッド8bを挿入し、係止ピン8cを係止ピン係合鉤の手溝10cに嵌入させた状態を示している。この状態では、上連結部10cの係止リング10cは、連結ロッド8bの係止ピン8cに下向き押されることにより圧縮ばね10cを圧縮させて下降状態となる。
【0069】
図17は、補助ロッド10の上連結部10cの挿入穴10cに挿入したクレーン吊り具8の連結ロッド8bを回転させて係止ピン8cを係止ピン係合鉤の手溝10cの鉤部の奥に移動させて係止リング10cの係止溝10c32上に対向させた状態で、係止リング10cが圧縮ばね10cの伸力によって上昇する直前の状態を示している。
【0070】
図18は、補助ロッド10の上連結部10cに対するクレーン吊り具8の連結ロッド8bの連結を完了した状態を示している。この状態は、補助ロッド10の上連結部10cの挿入穴10cに挿入したクレーン吊り具8の連結ロッド8bを回転させて係止ピン8cを係止ピン係合鉤の手溝10cの鉤部の奥に移動させて係止リング10cの係止溝10c32上に対向させることで、係止リング10cが圧縮ばね10cの伸力によって上昇して、係止ピン8cを係止溝10c32に嵌入させることにより該係止ピン8cを係止ピン係合鉤の手溝10cの鉤部から抜け止めした状態である。なお、詳細は後述するが、クレーン吊り具8と補助ロッド10の連結終了後、連通管目皿点検洗浄ロッド9と補助ロッド10をネジ接続により連結する。
【0071】
このクレーン吊り具8と補助ロッド10の連結解除は、係止リング10cの鍔10c33をマニピュレータ6で把持して圧縮ばね10cを圧縮するように下降させて係止ピン8cを係止溝10c32による係止から解放し、クレーン吊り具8を回転させて連結ロッド8bの係止ピン8cを補助ロッド10の係止ピン係合鉤の手溝10cの鉤部外に移動させることにより、クレーン吊り具8を引き上げて連結ロッド8bを上連結部10cの挿入穴10cから引き抜くようにして行う。
【0072】
前述した治具を使用して行う連通管目皿点検洗浄について説明する。この連通管目皿点検洗浄は、連通管目皿点検洗浄ロッドを最下に位置するように連結して構成した連通管目皿点検洗浄治具を点検洗浄対象のバレルに挿し入れることによって行う。この連通管目皿点検洗浄に使用する連通管目皿点検洗浄治具は、具体的には、マニピュレータ6とクレーン7を使用してクレーン吊り具8と連通管目皿点検洗浄ロッド9と補助ロッド10と共用延長ロッド13を連結して構成する。
【0073】
図19は、クレーン吊り具8と連通管目皿点検洗浄ロッド9と補助ロッド10を連結する治具組立作業を示している。
【0074】
(a)に示すクレーン吊り具8と補助ロッド10の連結作業では、マニピュレータ6により、クレーン吊り具8をクレーン7の吊りフックに吊り下げ、補助ロッド10を把持し、クレーン吊り具8の連結ロッド8bを補助ロッド10の上連結部10cに挿し込んで連結する。
【0075】
(b)に示す連通管目皿点検洗浄ロッド9と補助ロッド10の連結作業では、マニピュレータ6により、高圧水給水系統9fに高圧給水ホース9fを接続し、カメラ9dを取り付けた連通管目皿点検洗浄ロッド9を床面に起立させ、クレーン7で吊り下げたクレーン吊り具8と補助ロッド10の連結体を下降させて補助ロッド10の下連結部10bを連通管目皿点検洗浄ロッド9の上連結部9bに挿し込んでネジ結合する。
【0076】
(c)に示す作業では、組み立て途中の治具をクレーン7で吊り上げて移動する。
【0077】
図20〜図24は、組み立て途中の治具をクレーン7で吊り上げて点検洗浄対象のバレル2bに挿入して連通管目皿点検洗浄ロッド9の高圧水噴射ノズル部9c及び反射鏡9eを連通管目皿2eに対向させる治具組立作業を示している。具体的には、図20の(a)は、ステラップ3を倒したバレル2bに連通管目皿点検洗浄ロッド9を挿入した状態を示し、(b)は、連通管目皿点検洗浄ロッド9を挿入したバレル2bに対応するステラップ3を起立させて補助ロッド10のロッド本体10aを係止溝3aに嵌入すると共に抜け止め治具3bを差し入れて抜け止めする作業状態を示している。図21の(a)は、クレーン7の吊りフックを下降させて補助ロッド10の鍔10cをステラップ3上に抜け止め治具3bを介在させて着座させた状態を示し、(b)は、ステラップ3上に着座した補助ロッド10の係止リング10cを押し下げてクレーン吊り具8を切り離した状態を示している。図22は、クレーン吊り具8と2本の共用延長ロッド13を連結する治具組立作業を示しており、(a)は、クレーン吊り具8と一本目の共用延長ロッド13の連結作業を示し、(b)は、一本目の共用延長ロッド13と二本目の共用延長ロッド13の連結作業を示し、(c)は、組み立て途中の治具を吊り上げた状態を示している。図23の(a)は、クレーン7で吊り下げた2本の共用延長ロッド13における下側の共用延長ロッド13の下連結部13dをステラップ3上に着座している治具の補助ロッド10の上連結部10cに連結した状態を示し、(b)は、ステラップ3と補助ロッド10の間に介在されている抜け止め治具3bを取り除く作業を示している。そして、図24は、組み上がった連通管目皿点検洗浄治具をクレーン7で吊り上げ、ステラップ3を倒して連通管目皿点検洗浄ロッド9の高圧水噴射ノズル部9c及び反射鏡9eが連通管目皿2eに対向する位置まで下降させた状態を示している。
【0078】
図20において、(a)に示すバレル2bに対する連通管目皿点検洗浄ロッド9の挿入は、ステラップ3を倒した後に連通管目皿点検洗浄ロッド9をバレル2bの開口上に位置するように移動させ、クレーン7の吊りフックを下降させて連通管目皿点検洗浄ロッド9をバレル2bに挿入する。そして、(b)に示すように、ステラップ3を起立させ、補助ロッド10のロッド本体10aをステラップ3の係止溝3aに嵌入すると共にロッド本体10aの上連結部10cとステラップ3の間に抜け止め治具3bの溝3bにロッド本体10aが嵌入するように該抜け止め治具3bを差し入れ、補助ロッド10がステラップ3上に安定に着座できるようにする。
【0079】
図21において、(a)に示すステラップ3上への補助ロッド10の着座は、クレーン7の吊りフックを下降させて補助ロッド10の鍔10cをステラップ3上に抜け止め治具3bを介在させて着座するように行う。そして、(b)に示すように、ステラップ3上に着座した補助ロッド10の係止リング10cを押し下げた状態でクレーン吊り具8を回転させて引き上げることにより該クレーン吊り具8を補助ロッド10から切り離す。
【0080】
図22に示す2本の共用延長ロッド13の連結は、(a)に示すように、クレーン吊り具8をクレーン7の吊りフックに吊り下げ、一本目の共用延長ロッド13をマニピュレータ6により把持して上連結部13bをクレーン吊り具8の連結ロッド8bに連結する。次に、(b)に示すように、クレーン吊り具8に連結した一本目の共用延長ロッド13の下連結部13dにマニピュレータ6により把持した二本目の共用延長ロッド13の上連結部13bを連結する。組み上げ途中の治具は、(c)に示すように、クレーン7で吊り上げて移動する。
【0081】
図23に示すクレーン7で吊り下げた2本の共用延長ロッド13における下側の共用延長ロッド13とステラップ3上に着座している治具の補助ロッド10に連結する作業では、(a)に示すように、クレーン7で吊り下げた2本の共用延長ロッド13における下側の共用延長ロッド13の下連結部13dをステラップ3上に着座している治具の補助ロッド10の上連結部10c上に移動し、クレーン7の吊りフックを下降させることにより下連結部13dを上連結部10cに挿入して回転させることにより行う。そして、(b)に示すように、クレーン7の吊りフックを上昇させることによりステラップ3と補助ロッド10の上連結部10cの間に介在させられている抜け止め治具3bを取り除く。
【0082】
図24に示す連通管目皿点検洗浄ロッド9の高圧水噴射ノズル部9c及び反射鏡9eを連通管目皿2eに対向させる作業は、ステラップ3を倒して補助ロッド10のロッド本体10aから離してバレル2bの開口上から退避させ、クレーン7の吊りフックを下降させることにより連通管目皿点検洗浄ロッド9を下降させて行う。
【0083】
そして、連通管目皿点検洗浄は、カメラ9dによる撮影映像により連通管目皿2eの目詰まり状態を観察し、高圧水噴射ノズル部9cから高圧水を噴射して連通管目皿2eを洗浄する。
【0084】
次に、バレルの底部配管洗浄について説明する。この底部配管洗浄は、底部配管洗浄ロッドを最下に位置するように連結して構成した底部配管洗浄治具を点検洗浄対象のバレルに挿し入れることによって行う。この底部配管洗浄に使用する底部配管洗浄治具は、具体的には、マニピュレータ6とクレーン7を使用してクレーン吊り具8と底部配管洗浄ロッド11と共用延長ロッド13を連結して構成する。
【0085】
図25は、クレーン吊り具8と底部配管洗浄ロッド11と共用延長ロッド13を連結する治具組立作業を示しており、(a)は、クレーン吊り具8と共用延長ロッド13の連結作業を示し、(b)は、共用延長ロッド13の下に底部配管洗浄ロッド11を連結する連結作業を示し、(c)は、組み立て途中の底部配管洗浄治具を吊り上げた状態を示している。
【0086】
(a)に示すクレーン吊り具8と共用延長ロッド13の連結作業では、マニピュレータ6により、クレーン吊り具8をクレーン7の吊りフックに吊り下げ、共用延長ロッド13を把持し、クレーン吊り具8の連結ロッド8bを共用延長ロッド13の上連結部13bに挿し込んで連結する。
【0087】
(b)に示す共用延長ロッド13と底部配管洗浄ロッド11の連結作業では、マニピュレータ6により、高圧水噴射ノズル部11cに高圧給水ホース9fを接続した底部配管洗浄ロッド11を床面に起立させ、クレーン7で吊り下げたクレーン吊り具8と共用延長ロッド13の連結体を下降させて共用延長ロッド13の下連結部13dを底部配管洗浄ロッド11の上連結部11bに挿し込んで連結する。
【0088】
(c)に示す作業では、組み上げ途中の治具をクレーン7で吊り上げて移動する。
【0089】
図26〜図28は、組み立て途中の治具をクレーン7で吊り上げて点検洗浄対象のバレル2bに挿入して底部配管洗浄ロッド11の高圧水噴射ノズル部11cを底部配管2fに対向させる治具組立作業を示している。具体的には、図26の(a)は、ステラップ3を倒したバレル2bに底部配管洗浄ロッド11を挿入した状態を示し、(b)は、底部配管洗浄ロッド11を挿入したバレル2bに対応するステラップ3を起立させて共用延長ロッド13のロッド本体13aを係止溝3aに嵌入すると共に抜け止め治具3bを差し入れて抜け止めする作業状態を示す正面図である。図27の(a)は、クレーン7の吊りフックを下降させて共用延長ロッド13の鍔13bをステラップ3上に抜け止め治具3bを介在させて着座させた状態を示し、(b)は、ステラップ3上に着座した共用延長ロッド13の係止リング13bを押し下げてクレーン吊り具8を切り離した状態を示している。そして、図28は、組み上がった底部配管洗浄治具をクレーン7で吊り上げ、ステラップ3を倒して底部配管洗浄ロッド11の高圧水噴射ノズル部11cが底部配管2fに対向する位置まで下降させた状態を示している。
【0090】
図26において、(a)に示すバレル2bに対する底部配管洗浄ロッド11の挿入は、ステラップ3を倒した後に底部配管洗浄ロッド11をバレル2bの開口上に位置するように移動させ、クレーン7の吊りフックを下降させて底部配管洗浄ロッド11をバレル2bに挿入する。そして、(b)に示すように、ステラップ3を起立させ、共用延長ロッド13のロッド本体13aをステラップ3の係止溝3aに嵌入すると共にロッド本体13aの上連結部13bとステラップ3の間に抜け止め治具3bの溝3bにロッド本体13aが嵌入するように該抜け止め治具3bを差し入れ、共用延長ロッド13がステラップ3上に安定に着座できるようにする。
【0091】
図27において、(a)に示すステラップ3上への共用延長ロッド13の着座は、クレーン7の吊りフックを下降させて共用延長ロッド13の鍔13bをステラップ3上に抜け止め治具3bを介在させて行う。そして、(b)に示すように、ステラップ3上に着座した共用延長ロッド13の係止リング13bを押し下げた状態でクレーン吊り具8を回転させて引き上げることにより該クレーン吊り具8を共用延長ロッド13から切り離す。
【0092】
そして、図示説明は省略するが、図22を参照して説明した治具組立作業と同様にして、クレーン吊り具8に2本の共用延長ロッド13を連結し、図23を参照して説明した治具組立作業と同様にして、ステラップ3上に着座している共用延長ロッド13上に連結し、その後、連結体を引き上げて前述したと同様にしてステラップ3を倒して連結体を下降させた後にステラップ3を起立させて最上位の共用延長ロッド13を該ステラップ3上に着座させ、クレーン吊り具8を共用延長ロッド13から切り離して更に2本の共用延長ロッド13を連結してステラップ3上に着座している共用延長ロッド13上に連結する作業を繰り返すことにより、クレーン吊り具8の下に9本の共用延長ロッド13を介して底部配管洗浄ロッド11を連結した底部配管洗浄治具を構成する。なお、共用延長ロッド9本のうち1本は補助ロッドを共用延長ロッドとして使用する。
【0093】
図28は、このようにして構成した底部配管洗浄治具における底部配管洗浄ロッド11の高圧水噴射ノズル部11cがバレル2bの底部配管2fに対向するように下降させた状態を示している。この状態で、高圧水噴射ノズル部11cから高圧水を噴射させて底部配管2fを洗浄する。
【0094】
バレルの底部配管点検は、図示説明は省略するが、底部配管洗浄治具の組立作業と同様にして、底部配管点検ロッド12を最下位に連結した底部配管点検治具を組立てて行う。そして、バレル2b内には、図29に示すように、治具に沿ってカメラを吊り降ろして底部配管点検ロッド12の反射鏡12cに対向させ、反射鏡12cによって反射した底部配管2fの光像を撮影して観察に供する。
【符号の説明】
【0095】
1…セル、1a、1b…室、1c…床、1d…遮蔽窓、2…溶解槽、2a…スラブ、2b、2c…バレル、2d…連通管、2e…連通管目皿、2f…底部配管、2h…スワーフバスケット、3…ステラップ、3a…係止溝、3b…抜け止め治具、4…ガス配管、5…分配器、6…マニピュレータ、7…クレーン、8…クレーン吊り具、8b…連結ロッド、8c…係止ピン、9…連通管目皿点検洗浄ロッド、9a…ロッド本体、9b…上連結部、9b…係止ピン係合溝、9b…結合ネジ、9c…高圧水噴射ノズル部、9d…カメラ、9e…反射鏡、9f…高圧給水系統、9g…脚部、10…補助ロッド、10a…ロッド本体、10b…下連結部、10b…係止ピン、10c…上連結部、10c…挿入穴、10c…係止ピン係合鉤の手溝、10c…係止リング、10c…鍔、10c…圧縮ばね、10c…抜け止めピン、10d…把持部、11…底部配管洗浄ロッド、11a…ロッド本体、11b…上連結部、11c…高圧水噴射ノズル部、11d…把持部、11e…脚部、12…底部配管点検ロッド、12a…ロッド本体、12b…上連結部、12c…反射鏡部、12d…把持部、12e…脚部、13…共用延長ロッド、13a…ロッド本体、13b…上連結部、13c…把持部、13d…下連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解槽を構成するバレルとスラブにおける連通管目皿と底部配管を前記バレル内に挿入した治具によって洗浄及び点検する溶解槽配管洗浄装置において、
前記治具は、クレーン吊り具と、高圧水噴射ノズルとカメラを備えた連通管目皿点検洗浄ロッドと、この連通管目皿点検洗浄ロッドにネジ結合する補助ロッドと、高圧水噴射ノズルを備えた底部配管洗浄ロッドと、反射鏡を備えた底部配管点検ロッドと、共用延長ロッドとを備え、
連通管目皿点検洗浄治具は、前記クレーン吊り具の下に複数本の前記共用延長ロッドと前記補助ロッドをネジ結合した前記連通管目皿点検洗浄ロッドとを連結した構成とし、
底部配管洗浄治具は、前記クレーン吊り具の下に複数本の前記共用延長ロッドと底部配管洗浄ロッドとを連結した構成とし、
底部配管点検治具は、前記クレーン吊り具の下に複数本の前記共用延長ロッドと底部配管点検ロッドとを連結した構成とすることを特徴とする溶解槽配管洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、前記連結を行う手段は、連結する上側のロッドの下端部に設けた係止ピンと、連結する下側のロッドの上端部に設けた上連結部を備え、
前記上連結部は、上側のロッドを挿入する挿入穴と、この挿入穴に挿入した上側のロッドの係止ピンを嵌入して係合させるL字状の係止ピン係合鉤の手溝と、係止ピン係合鉤の手溝に嵌入して鉤部に係合させた係止ピンを抜け止めするように該係止ピンを係止するようにロッドに摺動可能に嵌合した係止リングを備えたことを特徴とする溶解槽配管洗浄装置。
【請求項3】
請求項2において、前記係止リングは、係止ピン係合鉤の手溝の鉤部の奥に係合した係止ピンを嵌入係止して抜け止めする係止溝を備え、係止ピン係合鉤の手溝に嵌入した係止ピンに当接するようにばねによって押し出される状態にロッド本体に嵌合することを特徴とする溶解槽配管洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate


【公開番号】特開2012−211816(P2012−211816A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77497(P2011−77497)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(505374783)独立行政法人日本原子力研究開発機構 (727)